説明

内視鏡の先端部

【課題】一般的な断面形状のカテーテルを用いて、ガイドワイヤの先端部分が膵胆管内等から抜け出さないようにカテーテルだけを内視鏡の処置具挿通チャンネルから抜去することができ、しかも膵胆管の損傷、閉塞或いは膵胆管からの抜去不能のリスク等のない安全な内視鏡の先端部を提供すること。
【解決手段】内視鏡の挿入部1の先端2に配置された処置具挿通チャンネル3の出口開口3b付近に、処置具挿通チャンネル3の出口開口3bを通過している通過物(30)を押圧固定するための押圧固定部材6を、挿入部1の基端側からの遠隔操作で進退駆動することができるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の先端部に関する。
【背景技術】
【0002】
膵胆管等のような細い管腔内にカテーテルを挿入して、そのカテーテルをさらに別のカテーテルに交換するカテーテル交換術等を行う際には、先ずガイドワイヤが挿通配置されたカテーテルの先端を内視鏡の処置具挿通チャンネルを経由して膵胆管等に挿入し、次いでガイドワイヤの先端部分だけを膵胆管内に残してカテーテルを抜去し、そのガイドワイヤをガイドにして別のカテーテルを挿入する手技がとられる。
【0003】
しかし、単純にガイドワイヤの先端を膵胆管内に残してカテーテルだけを抜去しようとすると、内視鏡に設けられている長い処置具挿通チャンネルからカテーテルを引き出す操作をしている際にガイドワイヤの先端部分が膵胆管から抜け出てしまい、全てを始めからやり直さなければならない場合が多々発生する。
【0004】
それを防止するために、ガイドワイヤの先端を膵胆管内で膨らませて抜け止め機能を得られるようにすることも考えられるが、膵胆管の損傷や閉塞をまねいたり、膨らんだまま元へ戻らなくなってガイドワイヤが抜去できなくなるリスクがある等の難点がある。
【0005】
そこで従来は、ガイドワイヤの手元側を内視鏡の処置具挿通チャンネルの入口部分に選択的に固定することができるようにしていた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特表2002−515305
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているようにガイドワイヤの手元側を内視鏡の処置具挿通チャンネルの入口部分に固定した状態でカテーテルだけを抜去できるようにするには、ガイドワイヤをカテーテルの外面に沿わせる必要があるので、U字溝が外面に全長にわたって形成されたカテーテル等のように特殊な断面形状のカテーテルを使用しなければならず一般的でない。
【0007】
そこで本発明は、一般的な断面形状のカテーテルを用いて、ガイドワイヤの先端部分が膵胆管内等から抜け出さないようにカテーテルだけを内視鏡の処置具挿通チャンネルから抜去することができ、しかも膵胆管の損傷、閉塞或いは膵胆管からの抜去不能のリスク等のない安全な内視鏡の先端部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の先端部は、内視鏡の挿入部の先端に配置された処置具挿通チャンネルの出口開口付近に、処置具挿通チャンネルの出口開口を通過している通過物を押圧固定するための押圧固定部材を、挿入部の基端側からの遠隔操作で進退駆動することができるように配置したものである。
【0009】
なお、処置具挿通チャンネルの出口開口が挿入部の先端の側面に配置されていて、押圧固定部材が処置具挿通チャンネルの出口開口の後端側から前端側に向かって進退自在であってもよい。
【0010】
また、押圧固定部材の後端に連結された操作ワイヤが挿入部の基端側から押し込み操作されることにより押圧固定部材が前方に移動して通過物を押圧固定し、操作ワイヤが挿入部の基端側から牽引操作されると押圧固定部材が後方に移動して通過物を押圧しない位置に退避するように構成してもよい。
【0011】
そして、押圧固定部材の少なくとも通過物に当接する部分が弾力性のある部材で形成されていてもよく、処置具挿通チャンネルの出口開口の内側に通過物の突出方向を制御するための処置具起上片が配置されていて、押圧固定部材が通過物を処置具起上片に押し付けて固定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内視鏡の挿入部の先端に配置された処置具挿通チャンネルの出口開口付近にガイドワイヤ(通過物)を押し付けてそこに押圧固定することができるので、一般的な断面形状のカテーテルを用いて、ガイドワイヤの先端部分が膵胆管内等から抜け出さないようにカテーテルだけを内視鏡の処置具挿通チャンネルから抜去することができ、ガイドワイヤの先端部分を膵胆管内に保持するための阻止力が膵胆管には加わらないので、膵胆管の損傷、閉塞或いは膵胆管からガイドワイヤが抜去不能になる等のリスクがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
内視鏡の挿入部の先端に配置された処置具挿通チャンネルの出口開口付近に、処置具挿通チャンネルの出口開口を通過している通過物を押圧固定するための押圧固定部材を、挿入部の基端側からの遠隔操作で進退駆動することができるように配置する。
【実施例】
【0014】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図3は内視鏡の全体構成を示しており、この内視鏡は可撓性の挿入部1の先端に連結された先端部本体2の側方を観察領域とするいわゆる側方視型内視鏡であって、観察窓や照明窓等が先端部本体2の側面に配置され、挿入部1の基端に操作部10が連結されている。
【0015】
挿入部1内には全長にわたって処置具挿通チャンネル3が挿通配置されていて、その入口開口3aは挿入部1と操作部10との連結部付近に斜め上方に向けて配置され、出口開口3bは観察方向と向きを合わせて先端部本体2の側面に配置されている。
【0016】
処置具挿通チャンネル3の出口開口3bの内側には、出口開口3bを通過してそこから外方に突出する処置具等の突出方向を制御するための処置具起上片4が配置されていて、処置具起上片4を回動駆動するための操作ワイヤ5は操作部10に配置された起上片操作レバー11により進退操作される。
【0017】
また、処置具挿通チャンネル3の出口開口3bの内側位置には、処置具挿通チャンネル3の出口開口3bを通っている処置具その他の通過物を押圧固定するための押圧固定部材6が配置されていて、押圧固定部材6を進退駆動するための操作ワイヤ7は操作部10に配置された固定部材操作レバー12により進退操作される。
【0018】
図2は先端部本体2付近を拡大して示す斜視図、図1はその側面断面図であり、図2に示される8は観察窓、9は照明窓である。
処置具起上片4は、図1に示されるように支軸4xを中心に回動自在に先端部本体2に取り付けられて処置具挿通チャンネル3の出口開口3bの内部空間の前端側のガイド壁になるように配置され、矢印Aで示されるように操作ワイヤ5が進退操作されると、処置具起上片4が支軸4xを中心に回動して、処置具挿通チャンネル3の出口開口3bから外方に突出する処置具等の突出方向が変化する。
【0019】
押圧固定部材6は、例えばフッ素ゴム材等のような弾力性のある材料で棒状に形成されていて、退避時には先端部本体2の後半部分に軸線と平行の向きに形成された収納孔2a内に緩く嵌挿配置され、その先端面が処置具挿通チャンネル3の出口開口3bの内部空間の後端壁付近に位置している。
【0020】
押圧固定部材6の後端部分には操作ワイヤ7の先端が連結されており、矢印Bで示されるように操作ワイヤ7が進退操作されると、押圧固定部材6が二点鎖線で示されるように収納孔2aから前方に突没し、処置具起上片4に押し付けられる位置まで押し出すことができる。なお、押圧固定部材6の後端寄りの部分を金属製にしておけば操作ワイヤ7との連結強度が向上する。
【0021】
図4〜図8は上述のように構成された内視鏡の使用状態を順に示しており、先ず図4及び図5に示されるように、ガイドワイヤ30(通過物)を内挿した状態のカテーテル20を内視鏡の処置具挿通チャンネル3に通して、その処置具挿通チャンネル3の出口開口3bから膵胆管100に向かって突出させたカテーテル20の先端部分を膵胆管100内に差し込む。カテーテル20は一般的な円形断面形状のものである。
【0022】
そして、手元側でガイドワイヤ30を動かないように押さえてカテーテル20だけを引き出す操作を行うことにより、図6に示されるように、ガイドワイヤ30の先端部分が膵胆管100内に残った状態でカテーテル20だけが処置具挿通チャンネル3内に引き戻される。
【0023】
そこで、カテーテル20が処置具挿通チャンネル3の出口開口3bの内側まで退避した状態になったら、図7に示されるように、押圧固定部材6を前方に押し出す操作を行う。すると、図8及びその斜視図である図9に示されるように、ガイドワイヤ30が押圧固定部材6により処置具起上片4に押し付けられてそこに押圧固定された状態になるので、ガイドワイヤ30の保持にさほど気をつかうことなく、膵胆管100内にガイドワイヤ30の先端を残した状態でカテーテル20だけをスムーズに処置具挿通チャンネル3から抜去することができる。
【0024】
そして、ガイドワイヤ30の先端を膵胆管100内に保持するための阻止力は内視鏡側の部材である処置具起上片4と押圧固定部材6に加わって膵胆管100に加わらないので、膵胆管100の損傷、閉塞或いはガイドワイヤ30が膵胆管100から抜去不能になる等のリスクがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例の内視鏡の先端部の側面断面図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡の先端部の斜視図である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡の全体構成を示す側面図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡の使用状態を例示する略示図である。
【図5】本発明の実施例の内視鏡の使用状態を例示する略示図である。
【図6】本発明の実施例の内視鏡の使用状態を例示する略示図である。
【図7】本発明の実施例の内視鏡の使用状態を例示する略示図である。
【図8】本発明の実施例の内視鏡の使用状態を例示する略示図である。
【図9】本発明の実施例の内視鏡の先端部にガイドワイヤが固定された状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 挿入部
2 先端部本体(挿入部の先端)
2a 収納孔
3 処置具挿通チャンネル
3b 出口開口
4 処置具起上片
6 押圧固定部材
7 操作ワイヤ
10 操作部
12 固定部材操作レバー
20 カテーテル
30 ガイドワイヤ(通過物)
100 膵胆管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部の先端に配置された処置具挿通チャンネルの出口開口付近に、上記処置具挿通チャンネルの出口開口を通過している通過物を押圧固定するための押圧固定部材を、上記挿入部の基端側からの遠隔操作で進退駆動することができるように配置したことを特徴とする内視鏡の先端部。
【請求項2】
上記処置具挿通チャンネルの出口開口が上記挿入部の先端の側面に配置されていて、上記押圧固定部材が上記処置具挿通チャンネルの出口開口の後端側から前端側に向かって進退自在である請求項1記載の内視鏡の先端部。
【請求項3】
上記押圧固定部材の後端に連結された操作ワイヤが上記挿入部の基端側から押し込み操作されることにより上記押圧固定部材が前方に移動して上記通過物を押圧固定し、上記操作ワイヤが上記挿入部の基端側から牽引操作されると上記押圧固定部材が後方に移動して上記通過物を押圧しない位置に退避する請求項1又は2記載の内視鏡の先端部。
【請求項4】
上記押圧固定部材の少なくとも上記通過物に当接する部分が弾力性のある部材で形成されている請求項1、2又は3記載の内視鏡の先端部。
【請求項5】
上記処置具挿通チャンネルの出口開口の内側に上記通過物の突出方向を制御するための処置具起上片が配置されていて、上記押圧固定部材が上記通過物を上記処置具起上片に押し付けて固定する請求項1、2、3又は4記載の内視鏡の先端部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−246984(P2006−246984A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64713(P2005−64713)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】