説明

内視鏡の挿入部

【課題】緊縛部の外面に塗布されている接着剤が先端部本体の外周面に対しても強固に固着されて、オートクレーブ等のような厳しい環境下においても接着剤が剥離して緊縛糸が劣化、損傷することのない内視鏡の挿入部を提供すること。
【解決手段】緊縛部(11)の先側に隣接して先端部本体3の外周部の全周に、底面34が緊縛糸11と並ぶ程度の深さの接着剤充填溝を形成して、その接着剤充填溝の先端壁35を底面34に対して鈍角をなす角度で底面から立ち上がった斜面状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の挿入部に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の挿入部は一般に、観察窓等が配置された先端部本体が遠隔操作により屈曲する湾曲部の先端に連結されて、湾曲部を外装被覆する弾力性のある湾曲部外皮チューブの先端部分が先端部本体の外周面に緊縛糸で緊縛固定され、さらに緊縛糸が外表面に露出しないように緊縛部の外面に接着剤が塗布されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−166840
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述のような従来の内視鏡の挿入部においては、緊縛部の外面に塗布されている接着剤が先端部本体に対しては強固に固着されないので、オートクレーブ(高温高圧蒸気滅菌装置)等のような厳しい環境下に繰り返し晒されると、接着剤とそれにより被覆されている緊縛糸との間に蒸気が侵入して接着剤が剥離し、ひいては緊縛糸が劣化して破損することにより水漏れ事故等が発生する場合があった。
【0004】
本発明は、緊縛部の外面に塗布されている接着剤が先端部本体の外周面に対しても強固に固着されて、オートクレーブ等のような厳しい環境下においても接着剤が剥離して緊縛糸が劣化、損傷することのない内視鏡の挿入部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の挿入部は、観察窓等が配置された先端部本体が遠隔操作により屈曲する湾曲部の先端に連結されて、湾曲部を外装被覆する弾力性のある湾曲部外皮チューブの先端部分が先端部本体の外周面に緊縛糸で緊縛固定され、さらに緊縛糸が外表面に露出しないように緊縛部の外面に接着剤が塗布された内視鏡の挿入部において、緊縛部の先側に隣接して先端部本体の外周部の全周に、底面が緊縛糸と並ぶ程度の深さの接着剤充填溝を形成して、その接着剤充填溝の先端壁を底面に対して鈍角をなす角度で底面から立ち上がった斜面状に形成したものである。
【0006】
なお、接着剤充填溝の先端壁の外縁部付近が、先端部本体の外周部において径方向に盛り上がった形状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、緊縛部の先側に隣接して先端部本体の外周部の全周に、底面が緊縛糸と並ぶ程度の深さの接着剤充填溝を形成して、その接着剤充填溝の先端壁を底面に対して鈍角をなす角度で底面から立ち上がった斜面状に形成したことにより、緊縛部の外面に塗布されている接着剤が先端部本体の外周面に対しても強固に固着されて、オートクレーブ等のような厳しい環境下においても接着剤が剥離して緊縛糸が劣化、損傷することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
観察窓等が配置された先端部本体が遠隔操作により屈曲する湾曲部の先端に連結されて、湾曲部を外装被覆する弾力性のある湾曲部外皮チューブの先端部分が先端部本体の外周面に緊縛糸で緊縛固定され、さらに緊縛糸が外表面に露出しないように緊縛部の外面に接着剤が塗布された内視鏡の挿入部において、緊縛部の先側に隣接して先端部本体の外周部の全周に、底面が緊縛糸と並ぶ程度の深さの接着剤充填溝を形成して、その接着剤充填溝の先端壁を底面に対して鈍角をなす角度で底面から立ち上がった斜面状に形成する。
【実施例】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図3は内視鏡を示しており、フレキシブルな可撓管部1の先端に湾曲部2が連結され、観察窓等が配置された先端部本体3が湾曲部2の先端に連結されている。
【0010】
可撓管部1の基端に連結された操作部4には、各種の操作部材が配置されていて、湾曲操作ノブ5を回転操作することにより、湾曲部2を二点鎖線で示されるように任意の方向に任意の角度だけ屈曲させる遠隔操作を行うことができる。本発明は、そのような湾曲部2と先端部本体3の外装部分の接続部(外装接続部10)に関するものである。
【0011】
図2は湾曲部2の先端部分と先端部本体3を示しており、先端部本体3の先端面に配置された観察窓6の奥には対物光学系と固体撮像素子等が内蔵され、照明窓7の奥には照明用ライトガイドが内蔵されている。
【0012】
湾曲部2の骨組みは、短筒状の多数の関節駒21A,21B,21C…をリベット状の連結軸22で回動自在に連結して構成されていて、金属細線材を編組して形成された網状管23がその外面に被覆され、弾力性のあるゴムチューブ等からなる湾曲部外皮チューブ24によって最外面が被覆されている。25は、操作部4からの遠隔操作により牽引操作される操作ワイヤである。
【0013】
湾曲部2を構成する最先端の関節駒21Aは、先端部本体3の後端付近の細径部31に嵌合して、図示されていないビス等でそこに連結固定されている。そして、先端部本体3の細径部31の先側に隣接するチューブ固着面32の外周面が、細径部31の外径より若干太く、ただし先端部本体3の先側半部の外面露出部の外径よりは細く形成されている。
【0014】
図1は、外装接続部10を拡大して示しており、チューブ固着面32には全面にわたってシール用接着剤が塗布され、湾曲部外皮チューブ24の先端部分が、そこに後方から窄まった状態に被せられて外面から緊縛糸11できつく締め付けられて緊縛固定されている。湾曲部外皮チューブ24は、その緊縛固定部では窄まっているので、緊縛糸11はその後方の湾曲部外皮チューブ24の外周面より低く潜った位置にある。
【0015】
チューブ固着面32の前端にはチューブ固着面32から垂直に立ち上がった垂直壁33が全周にわたり形成されていて、その垂直壁33に湾曲部外皮チューブ24の先端面が当接している。
【0016】
そして、垂直壁33の先側に隣接する(したがって、緊縛部の先側に隣接する)先端部本体3の外周面には、底面34が緊縛糸11と並ぶ程度の深さの接着剤充填溝が全周に形成されて、その接着剤充填溝の先端壁35が底面34に対して鈍角をなす角度で底面34から立ち上がった斜面状に形成されている。
【0017】
その結果、図1に示されるように、湾曲部外皮チューブ24の先端付近の窄まった部分と接着剤充填溝(34,35)により全周にわたって凹溝が形成された状態になり、その内部に接着剤12が充填されている。
【0018】
その結果、外装接続部10付近に周囲の物がぶつかっても接着剤12には外力が直接加わり難いので接着剤12が破損し難い。そして、接着剤充填溝の底面34が緊縛糸11と並ぶ程度の深さで垂直壁33に隣接してその先側に形成され、それを囲む状態に接着剤12が充填されていることにより、接着剤12が先端部本体3のチューブ固着面32に対しても強固に固着されて、オートクレーブ等のような厳しい環境下においても接着剤12が剥離して緊縛糸11が劣化、損傷することがない。
【0019】
なお、接着剤充填溝の先端壁35が底面34に対して鈍角をなす角度で底面34から立ち上がった斜面状に形成されていることにより、接着剤12を硬化させる作業の際に底面34と先端壁35との境界部である角部から気泡を追い出し易くて、接着剤12の耐久性を損なわないようにすることができる。
【0020】
また、上述のように構成された内視鏡の挿入部においては、図2に示されるように、接着剤充填溝の先端壁35の外縁部36付近が先端部本体3の外周部において径方向に盛り上がった形状に形成されており、先端部本体3の先寄りの半部を細く形成して体腔内への優れた挿入性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例の外装接続部を拡大して示す側面断面図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡の挿入部の先端部分の側面断面図である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡の全体構成を示す外観図である。
【符号の説明】
【0022】
2 湾曲部
3 先端部本体
6 観察窓
10 外装接続部
11 緊縛糸(緊縛部)
12 接着剤
24 湾曲部外皮チューブ
32 チューブ固着面
34 底面(接着剤充填溝)
35 先端壁(接着剤充填溝)
36 外縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察窓等が配置された先端部本体が遠隔操作により屈曲する湾曲部の先端に連結されて、上記湾曲部を外装被覆する弾力性のある湾曲部外皮チューブの先端部分が上記先端部本体の外周面に緊縛糸で緊縛固定され、さらに上記緊縛糸が外表面に露出しないように上記緊縛部の外面に接着剤が塗布された内視鏡の挿入部において、
上記緊縛部の先側に隣接して上記先端部本体の外周部の全周に、底面が上記緊縛糸と並ぶ程度の深さの接着剤充填溝を形成して、その接着剤充填溝の先端壁を上記底面に対して鈍角をなす角度で上記底面から立ち上がった斜面状に形成したことを特徴とする内視鏡の挿入部。
【請求項2】
上記接着剤充填溝の先端壁の外縁部付近が、上記先端部本体の外周部において径方向に盛り上がった形状に形成されている請求項1記載の内視鏡の挿入部。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate