説明

内視鏡システム

【課題】光ファイバを用いて映像信号を伝送する内視鏡システムにおいて、光ファイバに不具合が生じた場合でも、突然に映像が遮断されるリスクを低減することができる内視鏡システムを提供する。
【解決手段】撮像部53は、被検物を撮像して映像信号を生成する。光ファイバ10,11は、撮像部53から出力された映像信号を伝送する。映像信号処理部31は、光ファイバ10,11によって伝送された映像信号を処理し、処理後の映像信号をモニタ4に出力する。不具合検出部99は、光ファイバ10,11の伝送状態の不具合を検出する。映像信号処理部31は、不具合検出部99が不具合を検出していない光ファイバによって伝送された映像信号のみをモニタ4に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検物内に挿入して使用される内視鏡システム、より詳しくは、光ファイバを介して映像信号を伝送する内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内視鏡システムとしては、被検物内に挿入される内視鏡スコープの先端部に設けられた撮像素子から出力される映像信号をアナログ信号のままビデオプロセッサに伝送する方式を利用したものが一般的である。一般的な内視鏡スコープの全長は数メートルに及ぶ為、アナログの映像信号が伝送中に外部ノイズの影響を受けることによりS/N比が悪くなり画質が劣化する傾向にある。特に、内視鏡システムを使用する医療現場等においては、電気メス等の装置が動作する為、通常の環境には存在しないレベルのノイズが飛び交う状況にあり、その影響は極めて大きい。
【0003】
この問題を解決する為に、特許文献1では、内視鏡スコープの先端部で撮像素子の映像信号をA/D変換し、デジタル信号で内視鏡スコープ内を伝送する方式の内視鏡システムが提案されている。デジタル化した映像信号がノイズの影響を受けても、信号のHighレベル、Lowレベルのみを認識できれば映像が乱れることは無い為、ノイズ耐性の向上を図ることができる。
【0004】
近年、撮像素子の高精細化の流れから映像信号のデータ量が増大する傾向にある。それに伴い、伝送レートの高速化が求められ、デジタル化した映像信号の振幅を低く設定する必要が生じている。その結果、映像信号をデジタル化したとしても、従来のような効果を望み難くなってきている。そこで、特許文献2では、内視鏡スコープの先端部でA/D変換した映像信号を更に光信号に変換(E/O変換)し、光ファイバにより映像信号を伝送する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−121590号公報
【特許文献2】特開2007−260066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アナログ信号を伝送する従来の内視鏡スコープや、特許文献1に開示されたような、デジタル信号を伝送する内視鏡スコープに用いられる信号伝送用の電線は、一般的に複数の細線を撚って構成されている。老朽化等の影響で電線が切断される場合に、全ての細線が同時に切れるのではなく、徐々に細線が切れて時間をかけて全ての細線が切断される可能性が高い。この為、内視鏡の使用者は、完全に電線が切断される前に、その不具合を映像のちらつき等で知り、映像が全く出なくなる前にリペア等の対応を取り得る可能性が高い。
【0007】
これに対し、特許文献2に開示されたような、光信号を伝送する内視鏡スコープに用いられる光ファイバは、一本線で構成されている。この為、老朽化等の影響で切断される場合には、電線のように時間をかけて切断されるのではなく、比較的短い伝送不安定状態から一気に伝送不通状態に移行する可能性が高い。内視鏡使用時にこの状態に移行すれば、突然映像が遮断されることになる。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、光ファイバを用いて映像信号を伝送する内視鏡システムにおいて、光ファイバに不具合が生じた場合でも、突然に映像が遮断されるリスクを低減することができる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、被検物を撮像して映像信号を生成する撮像部と、前記撮像部から出力された前記映像信号を伝送する複数の光ファイバと、前記複数の光ファイバによって伝送された前記映像信号を処理し、処理後の前記映像信号を画像表示部に出力する映像信号処理部と、前記複数の光ファイバの伝送状態の不具合を検出する不具合検出部と、を有し、前記映像信号処理部は、前記不具合検出部が不具合を検出していない前記光ファイバによって伝送された前記映像信号のみを前記画像表示部に出力することを特徴とする内視鏡システムである。
【0010】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記複数の光ファイバは、それぞれ同一の映像信号を伝送することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記画像表示部に順に表示される動画を構成する複数のフレーム画像に関し、前記複数の光ファイバはそれぞれ、個々のフレーム画像を構成する前記映像信号を伝送し、前記複数のフレーム画像を構成する全ての前記映像信号はそれぞれ、前記複数の光ファイバのうちのいずれかによって伝送され、前記映像信号処理部は、前記不具合検出部がいずれかの前記光ファイバの伝送状態の不具合を検出した場合には、不具合を検出した前記光ファイバに係る前記映像信号の代わりに、不具合を検出していない前記光ファイバに係る前記映像信号を前記画像表示部に出力することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記画像表示部に順に表示される動画を構成する複数のフレーム画像に関し、各フレーム画像は複数の領域で構成され、前記複数の光ファイバはそれぞれ、個々の領域を構成する前記映像信号を伝送し、1つの前記フレーム画像内の前記複数の領域を構成する全ての前記映像信号はそれぞれ、前記複数の光ファイバのうちのいずれかによって伝送され、前記映像信号処理部は、前記不具合検出部がいずれかの前記光ファイバの伝送状態の不具合を検出した場合には、不具合を検出した前記光ファイバに係る前記映像信号の代わりに、不具合を検出していない前記光ファイバに係る前記映像信号を前記画像表示部に出力することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の内視鏡システムは、異なるレベルの複数のテスト信号を生成するテスト信号生成部をさらに有し、前記複数の光ファイバはそれぞれ前記複数のテスト信号を伝送し、前記不具合検出部は、不具合を検出する対象の前記光ファイバで伝送された前記複数のテスト信号のエラーレートを測定し、伝送状態をチェックすることによって、前記伝送状態の不具合を検出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の内視鏡システムは、一定レベルのテスト信号を生成するテスト信号生成部をさらに有し、前記複数の光ファイバはそれぞれ前記テスト信号を伝送し、前記不具合検出部は、不具合を検出する対象の前記光ファイバで伝送された前記テスト信号を異なる受信感度で複数回受信してエラーレートを測定し、伝送状態をチェックすることによって、前記伝送状態の不具合を検出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、不具合を検出する対象の前記光ファイバが前記映像信号を伝送する周期に同期して前記レベルを変更することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、不具合を検出する対象の前記光ファイバが前記映像信号を伝送する周期に同期して前記受信感度を変更することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の内視鏡システムは、前記不具合検出部が前記複数の光ファイバのいずれかの伝送状態に不具合を検出した場合に、その旨をユーザに知らせる警報装置を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の内視鏡システムにおいて、前記複数の光ファイバがそれぞれ1mm以上離して配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、撮像部から出力された映像信号を複数の光ファイバで伝送し、不具合を検出していない光ファイバによって伝送された映像信号のみを画像表示部に出力することによって、光ファイバに不具合が生じた場合でも、突然に映像が遮断されるリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡システムの外観図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る内視鏡システムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるフレームデータの伝送の様子を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の一実施形態におけるフレームデータの伝送の様子を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の一実施形態における不具合検出に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る内視鏡システムの先端部と挿入部の接続部の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡システムの構成を示している。図1に示すように、内視鏡システム1は、映像信号を取得する為の内視鏡スコープ2と、内視鏡スコープ2で取得された映像信号を処理するビデオプロセッサ3と、ビデオプロセッサ3で処理された映像信号を画像として表示するモニタ4とを備えている。また、内視鏡スコープ2は、被検物内に挿入される撮像部を備えた先端部5と、先端部5を被検物内に導くコードである挿入部6と、挿入部6を介して先端部5の動きを操作する為の操作部7と、操作部7とビデオプロセッサ3とを繋ぐケーブルであるユニバーサルコード8と、ユニバーサルコード8とビデオプロセッサ3とを繋ぐ脱着可能なコネクタであるコネクタ部9とで構成される。
【0022】
図2は、図1に示した概略構成の内部機能を具体的に示している。
【0023】
先端部5は、水晶発振器51と、TG52と、撮像部53と、LDドライバ54,55と、LD56,57と、制御部58とを有する。水晶発振器51は、撮像部53の駆動に必要な駆動パルス(例えば、水平同期信号や垂直同期信号等)の源となる高精度なクロックを生成する。TG52は、水晶発振器51から出力されるクロックに基づき撮像部53の駆動パルスを生成する。撮像部53は、被検物を撮像して映像信号を生成し、その映像信号をチャネルTx1とチャネルTx2に分けて出力する。
【0024】
LDドライバ54,55は、レーザダイオード(LD)を駆動する信号を生成する。LD56,57は、LDドライバ54,55からの駆動信号に基づいてチャネルTx1,Tx2の映像信号を光信号に変換し、光ファイバ10,11に挿通させる。制御部58は上記各部を制御する。尚、図2では制御部58から各部に出力される制御信号の図示を省略している。
【0025】
光ファイバ10,11は、先端部5で生成されたチャネルTx1,Tx2の映像信号を光信号としてコネクタ部9に伝送する。
【0026】
コネクタ部9は、PD91,92と、TIA93,94と、リミットアンプ95,96と、ラインドライバ97,98と、不具合検出部99と、警報装置100とを有する。PD91,92は、光ファイバ10,11を介して伝送されたチャネルTx1,Tx2の光信号を電流に変換する。TIA93,94は、PD91,92からの電流を電圧に変換する。リミットアンプ95,96は、TIA93,94からの微小な信号を増幅し、二値化処理する。
【0027】
ラインドライバ97,98は、リミットアンプ95,96からの二値化信号を差動信号に変換し、ビデオプロセッサ3に差動伝送する。不具合検出部99は、リミットアンプ95,96からの信号を受けて光ファイバ10,11の伝送状態の不具合を検出する。伝送状態の不具合の具体的な検出方法については後述する。警報装置100は、不具合検出部99から“不具合有り”の情報を受けた際、警報ブザーを発する。
【0028】
ビデオプロセッサ3は、不具合検出部99からの不具合検出信号に基づきラインドライバ97,98からの映像信号を処理してモニタ4に映像を出力する映像信号処理部31を有する。詳細は後述するが、映像信号処理部31は、不具合検出部99が光ファイバ10,11のいずれかの伝送状態の不具合を検出した場合、不具合を検出していない光ファイバによって伝送された映像信号のみをモニタ4に出力する。
【0029】
次に、図3,図4を用いて、内視鏡システム1の動作をより具体的に説明する。モニタ4が表示する映像は複数フレーム(1フレーム、2フレーム、3フレーム、・・・)のフレーム画像からなり、各フレーム画像を構成する映像信号(以下、フレームデータとする)は以下のように先端部5からコネクタ部9に伝送される。
【0030】
図3は第1の伝送例を示している。内視鏡システム1は、図3(a)に示すように、チャネルTx1,Tx2に係る伝送系のそれぞれにおいて、各フレームデータを伝送している。具体的には、チャネルTx1に係る伝送系で順番が奇数のフレームのデータを伝送し、チャネルTx2に係る伝送系で順番が偶数のフレームのデータを伝送している。このようにして、各フレーム画像を構成する各フレームデータはそれぞれ、チャネルTx1,Tx2に係る伝送系のいずれかによって伝送される。
【0031】
映像信号処理部31は、不具合検出部99から“不具合無し”の信号を受けている間、図3(a)に示すように、モニタ4に表示するモニタ表示画像として奇数フレームのデータと偶数フレームのデータを交互に表示させる。しかし、映像信号処理部31は、不具合検出部99から“不具合有り”の情報を受けると、図3(b)に示すように、不具合の有る伝送系のデータに代えて、不具合の無い伝送系に係るデータをモニタ4に表示させる。
【0032】
図3(b)は、チャネルTx2に係る伝送系に不具合が発生した場合の例である。映像信号処理部31は、図3(b)に示すように、偶数のフレームデータに代えて、奇数のフレームデータを連続でモニタ4に表示させている。具体的には、2フレーム目のデータに代えて、直前の1フレーム目のデータが表示され、4フレーム目のデータに代えて、直前の3フレーム目のデータが表示される。
【0033】
図4は第2の伝送例を示している。この例では、各フレームデータは、奇数番目の走査線に対応した第1フィールドのデータと、偶数番目の走査線に対応した第2フィールドのデータとで構成される。内視鏡システム1は、図4(a)に示すように、チャネルTx1,Tx2に係る伝送系のそれぞれにおいて、各フィールドのデータを伝送している。具体的には、チャネルTx1に係る伝送系で第1フィールドのデータを伝送し、チャネルTx2に係る伝送系で第2フィールドのデータを伝送している。このようにして、各フレームデータを構成する各フィールドのデータはそれぞれ、チャネルTx1,Tx2に係る伝送系のいずれかによって伝送される。
【0034】
映像信号処理部31は、不具合検出部99から“不具合無し”の信号を受けている間、図4(a)に示すように、第1フィールドのデータと第2フィールドのデータを交互に組み合わせてフレームのデータを構成し、モニタ4に表示させる。図4(a)において、“F1”は第1フィールドを示し、“F2”は第2フィールドを示す。また、( )内の数字は走査線の順番を示す。スイまた、”第1画像”の”第1”は、撮像部53において撮影した画像の時間的な順番を示している。例えば、第1画像F1(1)は、撮像部53の第1フィールドの1番目の走査線の位置で時間的に1番目に取得された画像データを意味している。
【0035】
映像信号処理部31は、表示の1フレーム目では、奇数の走査線が第1画像の第1フィールドのデータで構成され偶数の走査線が第1画像の第2フィールドのデータで構成されたフレームデータをモニタ4に表示させる。続いて、映像信号処理部31は、表示の2フレーム目では、直前に表示した第1画像の第2フィールドのデータを第2画像の第2フィールドのデータで置き換えることによってフレームデータを生成し、そのフレームデータをモニタ4に表示させる。
【0036】
続いて、映像信号処理部31は、表示の3フレーム目では、直前に表示した第1画像の第1フィールドのデータを第2画像の第1フィールドのデータで置き換えることによってフレームデータを生成し、そのフレームデータをモニタ4に表示させる。続いて、映像信号処理部31は、表示の4フレーム目では、直前に表示した第2画像の第2フィールドのデータを第3画像の第2フィールドのデータで置き換えることによってフレームデータを生成し、そのフレームデータをモニタ4に表示させる。これ以降、映像信号処理部31は同様の動作を継続する。
【0037】
映像信号処理部31は、不具合検出部99から“不具合有り”の情報を受けると、図4(b)に示すように、不具合の有る伝送系のデータに代えて、不具合の無い伝送系に係るデータを表示させる。図4(b)は、チャネルTx2に係る伝送系に不具合が発生した場合の例である。映像信号処理部31は、図4(b)に示すように、第2フィールドのデータに代えて第1フィールドのデータを用い、第1フィールドのデータのみでフレームのデータを構成する。
【0038】
映像信号処理部31は、本来(不具合がなければ)第2フィールドのデータを表示させるタイミング(図4((a)の1フレーム及び偶数フレーム)と同じタイミングにおいて、その第2フィールドのデータを表示させるラインに、1つ上のラインと同じ第1フィールドのデータを連続して表示させる(図4(b)の1フレーム及び偶数フレーム)。
【0039】
具体的に説明すると、映像信号処理部31は、表示の1フレーム目、2フレーム目、及び、4フレーム目では、本来第2フィールドのデータを表示させるラインであった、上から数えて偶数番目のラインに、そのラインの1つ上の奇数番目のラインと同じ第1フィールドのデータを表示させる。これ以降、映像信号処理部31は同様の動作を継続する。
【0040】
このように、本実施形態に係る内視鏡システムによれば、画像をモニタ4に表示させながら光ファイバの伝送状態を確認し、不具合を検出した場合に、不具合の有る伝送に係るフレーム又はフィールドのデータの代わりに、不具合の無い伝送に係るフレーム又はフィールドのデータを用いて画像を表示させ続けることができる。この為、一部の光ファイバの伝送に不具合が生じても動画の表示が遮断されず、内視鏡使用時に伝送系の問題で突然映像が遮断されるリスクを低減することができる。また、複数の光ファイバが同じ映像データを重複して伝送することがないので、信号伝送に係る消費電力が過度に増加することがなく、発熱への影響も抑えられる。
【0041】
尚、本実施形態においては、複数の光ファイバが異なる映像データを伝送し、データを重複して伝送しないが、本発明の他の形態においては、複数の光ファイバで同一の映像信号を重複して伝送してもよい。この場合、同じデータを重複して伝送することで伝送レートが増大し、信号伝送に係る消費電力が増加し、また、高速に信号伝送できる高価な部品を多く必要としてコストが上がってしまうが、一方で、一部の光ファイバの伝送に不具合が生じても、その前後の画像の表示に全く影響を及ぼさないという効果がある。
【0042】
次に、図5のフローチャートを用いて本実施形態に係る不具合検出の流れを説明する。ここで、本実施形態に係る内視鏡システム1は、LD56,57の発光強度のレベルを10段階(出力レベル1〜出力レベル10)に設定して撮像部53からテストデータを送信することが可能であり、不具合検出部99において、このテストデータのビットエラーレートを測定できるものとする。また、不具合の判断基準として、出力レベルがレベル5以下でエラーフリー(エラー無し)であれば伝送状態が良好(不具合無し)であり、出力レベルがレベル5でエラー(エラー有り)であれば伝送状態が不良(不具合有り)であると判断できるものとする。
【0043】
以下、図5のフローチャートの各ステップについて説明する。内視鏡システム1の電源がONになると、まず、内視鏡システム1は電源投入直後の伝送状態を検出し、伝送状態が不良であれば警告ブザーを鳴らす(ステップS1〜S4)。以下、ステップS1〜S4の詳細を順に説明する。
【0044】
まず、制御部58はLD56,57の発光強度のレベル(以下、出力レベル)を5に設定する(ステップS1)。続いて、撮像部53がテストデータを生成し、そのテストデータがチャネルTx1,Tx2でコネクタ部9に送信される(ステップS2)。不具合検出部99は、受信したテストデータに基づいてビットエラーレートを算出し、エラーが発生したか否かを判定する(ステップS3)。
【0045】
エラーが発生していない(エラーフリー)場合、処理はステップS5へ進む。また、エラーが発生した場合には、不具合検出部99は警報装置100に“不具合有り”の情報を出力し、警告ブザーを鳴らす(ステップS4)。その後、処理はステップS5へ進む。
【0046】
続いて、内視鏡システム1は、撮像部53が生成した映像信号をビデオプロセッサ3に伝送してモニタ4に映像を表示する。本実施形態においては、内視鏡システム1は映像信号の1フレームのデータを送信する毎に出力レベルを変えて伝送状態検出用のテストデータを送信して映像を表示し(ステップS5〜S11)、これと並行して伝送状態のチェックも行う。以下、この詳細を順に説明する。
【0047】
まず、制御部58は出力レベルをテストデータ送信用にレベル9に設定する(ステップS5)。続いて、撮像部53がテストデータを生成し、そのテストデータがチャネルTx1,Tx2でコネクタ部9に送信される(ステップS6)。続いて、制御部58は出力レベルを映像信号伝送用にレベル10に設定する(ステップS7)。続いて、撮像部53が1フレーム分の映像信号を生成し、その映像信号がチャネルTx1,Tx2でコネクタ部9に伝送される(ステップS8)。映像信号処理部31は、前述した処理を行って映像信号をモニタ4に出力し、画像を表示させる(ステップS9)。
【0048】
続いて、制御部58は現在のテストデータ送信用の出力レベルを判定する(ステップS10)。現在のテストデータ送信用の出力レベルが1である場合、処理はステップS5に戻る。また、現在のテストデータ送信用の出力レベルが1でない場合、制御部58はテストデータ送信用の出力レベルを現在の出力レベルよりも1だけ低いレベルに設定する(ステップS11)。続いて、処理はステップS6に戻る。ステップS5〜S11の処理により、テストデータの出力レベルをレベル9からレベル1まで1レベルずつ下げ、テストデータの出力レベルが1まで下がれば再度出力レベルをレベル9に設定しながらテストデータが繰り返し送信され、その間に映像信号が出力レベル10で1フレームずつ伝送される。
【0049】
ステップS5〜S11の処理と並行して、不具合検出部99は以下の処理を行う。不具合検出部99は、受信したテストデータに基づいてビットエラーレートを算出し、エラーが発生したか否かを判定する。テストデータの出力レベルはレベル9からレベル1まで1レベルずつ下がっていくので、エラーフリーがエラーに切り替わったときに不具合検出部99はエラーの発生を検出する。そしてその切り替わりの出力レベルは、エラーとエラーフリーの境界レベルであると判断できる。本実施形態では、そのエラーフリーがエラーに切り替わった境界レベルを伝送レベルと定義する。伝送レベルの数値が小さいほど、伝送状態は良好である。モニタ4にはこの伝送レベルが表示される。
【0050】
エラーが発生した場合、不具合検出部99は、さらに、伝送レベルが5以上であるか否かを判定する。伝送レベルが5以上であった場合、不具合検出部99は、伝送状態が不良であると判断して警報装置100に“不具合有り”の情報を出力し、警告ブザーを鳴らす。これ以降、映像信号処理部31は、不具合検出部99からの不具合検出信号に基づいて、エラーが発生していないチャネルの伝送系で伝送された映像信号のみを用いてモニタ4に画像を表示させる。
【0051】
尚、本実施形態においては、LD56,57の発光強度のレベルを変えることで伝送レベルを確認したが、これに代えて、PD91,92の受信感度のレベルを変えることでも、同様に伝送レベルを確認することができる。例えば、PD91,92の受信感度のレベルを10段階(出力レベル1〜出力レベル10)に設定可能とし、撮像部53から一定の発光強度のテストデータを送信するものとすれば、図5のフローチャート(ステップS1,S5,S7,S11の出力レベルを受信感度のレベルに置き換える)と同様の流れで伝送レベルを得ることができる。
【0052】
このように、発光レベル、又は、受信感度レベルを変えてエラーレートを測定することで、不具合の有り、無しに加えて、具体的なレベルでも伝送状態を把握することができる。この為、ユーザは、より的確なタイミングで修理やメンテナンスの対応をとることができる。例えば、不具合というレベルではないが、伝送状態があまり良くない内視鏡システムを大切な手術の前にメンテナンスするような対応も可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係る不具合検出処理では、1フレーム間(フレーム伝送とフレーム伝送の間)に1つのレベルのテストデータの測定を行っているが、このように、映像信号を伝送する周期に同期し、異なったレベルのテストデータを測定するフローを採用することにより、時間を分散して複数のレベルのテストデータの測定を実施できる。この為、1フレーム間に費やすテストデータの測定時間を短く設定でき、フレームレートが高い撮影時にも伝送レベルを検出することができる。例えば、1フレーム間に全てのレベルのテストデータを測定し、伝送レベルをフレーム毎に得ようとした場合、1のレベルのテストデータの測定に1ms必要とし、伝送レベルの検出に9のテストデータの測定が必要であれば、伝送レベルの検出には9msの時間が必要になる。ここで、本実施形態にあるように、1フレーム間に1のレベルのテストデータを測定することとすれば、10のフレームをまたいで9のレベルのテストデータを測定することで伝送レベルを検出することができ、その時に必要な1フレーム間のテストデータの測定時間は1msだけで済む。例えば、フレームレートが120fpsだとすると、1フレーム間は8.3msしかないので、伝送レベルの検出に連続で9msを費やす時間的余裕は無い。
【0054】
また、本実施形態においては、伝送状態の不具合が検出されたときに伝送状態の不具合を警告ブザーによってユーザに知らせているが、この動作はリペア対応をユーザに促す効果がある。尚、本実施形態においては、ユーザに不具合を知らせる手段としてブザーを用いているが、ユーザへの警報手段(警報装置の警報手段)はこれに限定されず、モニタに警告が表示される等でもよい。
【0055】
図6は、本実施形態に係る内視鏡システム1の、先端部5と挿入部6の接続部の断面を示している。図6に示すように、先端部5は、光ファイバ10が挿入部6の外側に、光ファイバ11が挿入部6の中心部に位置するように、両方の光ファイバを離してアセンブリしている。2本の光ファイバの間隔は1mm以上であることが望ましい。
【0056】
これまで述べたように、光ファイバを複数本用いて映像信号を伝送することで、内視鏡使用時に伝送系の問題で突然映像が遮断されるリスクを低減することができるが、全ての光ファイバが同時に破断した場合にはその効果を得ることができない。図6に示すように、映像信号の伝送に用いる光ファイバを離して配置することにより、挿入部6が曲げられた場合に光ファイバにかかる力学的な負荷を光ファイバごとに異ならせることができる。この為、全ての光ファイバが同時に破断するリスクを低減することができ、内視鏡使用時に伝送系の問題で突然映像が遮断されるリスクを更に低減することができる。
【0057】
尚、本実施形態においては、図3に示したように、奇数フレームと偶数フレームに分けて、2本の光ファイバで映像信号を伝送しているが、光ファイバの本数は2本に限定されるわけではなく、状況に応じてフレームを更に分割し、伝送する光ファイバの本数を増やしてもよい。また、図4に示したように、奇数の走査線に係るフィールドと偶数の走査線に係るフィールドとに分けて映像信号を伝送しているが、このようなフィールド毎に領域を分割することに限定されるわけではなく、例えば、縦方向のラインで領域を分割する等、他の方法で領域に分割することを妨げない。尚、撮像部をCMOSセンサーで構成した場合には、映像信号の読出し領域を比較的自由に決めることができるため、伝送時に複雑な領域分割を行う場合でも、映像信号の読出し領域をこれと一致させることができ、信号処理を簡素化することができる。
【0058】
上述したように、本実施形態によれば、撮像部から出力された映像信号を複数の光ファイバで伝送し、不具合を検出していない光ファイバによって伝送された映像信号のみを表示に使用することによって、光ファイバに不具合が生じた場合でも、突然に映像が遮断されるリスクを低減することができる。
【0059】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・内視鏡システム、2・・・内視鏡スコープ、3・・・ビデオプロセッサ、4・・・モニタ(画像表示部)、5先端部、6・・・挿入部、7・・・操作部、8・・・ユニバーサルコード、9・・・コネクタ部、10,11・・・光ファイバ、51・・・水晶発振器、52・・・TG、53・・・撮像部(テスト信号生成部)、54,55・・・LDドライバ、56,57・・・LD、58・・・制御部、91,92・・・PD、93,94・・・TIA、95,96・・・リミットアンプ、97,98・・・ラインドライバ、99・・・不具合検出部、100・・・警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物を撮像して映像信号を生成する撮像部と、前記撮像部から出力された前記映像信号を伝送する複数の光ファイバと、前記複数の光ファイバによって伝送された前記映像信号を処理し、処理後の前記映像信号を画像表示部に出力する映像信号処理部と、前記複数の光ファイバの伝送状態の不具合を検出する不具合検出部と、を有し、
前記映像信号処理部は、前記不具合検出部が不具合を検出していない前記光ファイバによって伝送された前記映像信号のみを前記画像表示部に出力することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記複数の光ファイバは、それぞれ同一の映像信号を伝送することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記画像表示部に順に表示される動画を構成する複数のフレーム画像に関し、前記複数の光ファイバはそれぞれ、個々のフレーム画像を構成する前記映像信号を伝送し、前記複数のフレーム画像を構成する全ての前記映像信号はそれぞれ、前記複数の光ファイバのうちのいずれかによって伝送され、
前記映像信号処理部は、前記不具合検出部がいずれかの前記光ファイバの伝送状態の不具合を検出した場合には、不具合を検出した前記光ファイバに係る前記映像信号の代わりに、不具合を検出していない前記光ファイバに係る前記映像信号を前記画像表示部に出力することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記画像表示部に順に表示される動画を構成する複数のフレーム画像に関し、各フレーム画像は複数の領域で構成され、前記複数の光ファイバはそれぞれ、個々の領域を構成する前記映像信号を伝送し、1つの前記フレーム画像内の前記複数の領域を構成する全ての前記映像信号はそれぞれ、前記複数の光ファイバのうちのいずれかによって伝送され、
前記映像信号処理部は、前記不具合検出部がいずれかの前記光ファイバの伝送状態の不具合を検出した場合には、不具合を検出した前記光ファイバに係る前記映像信号の代わりに、不具合を検出していない前記光ファイバに係る前記映像信号を前記画像表示部に出力することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
異なるレベルの複数のテスト信号を生成するテスト信号生成部をさらに有し、
前記複数の光ファイバはそれぞれ前記複数のテスト信号を伝送し、
前記不具合検出部は、不具合を検出する対象の前記光ファイバで伝送された前記複数のテスト信号のエラーレートを測定し、伝送状態をチェックすることによって、前記伝送状態の不具合を検出することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
一定レベルのテスト信号を生成するテスト信号生成部をさらに有し、
前記複数の光ファイバはそれぞれ前記テスト信号を伝送し、
前記不具合検出部は、不具合を検出する対象の前記光ファイバで伝送された前記テスト信号を異なる受信感度で複数回受信してエラーレートを測定し、伝送状態をチェックすることによって、前記伝送状態の不具合を検出することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
不具合を検出する対象の前記光ファイバが前記映像信号を伝送する周期に同期して前記レベルを変更することを特徴とする請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
不具合を検出する対象の前記光ファイバが前記映像信号を伝送する周期に同期して前記受信感度を変更することを特徴とする請求項6に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記不具合検出部が前記複数の光ファイバのいずれかの伝送状態に不具合を検出した場合に、その旨をユーザに知らせる警報装置を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記複数の光ファイバがそれぞれ1mm以上離して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−71067(P2012−71067A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220157(P2010−220157)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】