説明

内視鏡システム

【課題】輝度不足による狭帯域光画像の視認性の悪さを抑えるのに好適な内視鏡システムを提供すること。
【解決手段】内視鏡システムを、複数の光路と、所定の広帯域の照明光を複数の光路に供給する照明光供給手段と、複数の光路のうち少なくとも一つの光路以外の、残りの少なくとも一つの光路に供給された照明光を所定の狭帯域光に分光する分光手段と、各光路の照明光が入射する複数のライトガイドと、各ライトガイドを伝送した照明光を被写体に照射する複数の照明光学系と、から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を狭帯域光観察するために狭帯域光によって照射する内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器分野においては、体腔内に狭帯域光を照射して体腔内の特定部位の強調画像(狭帯域光画像)を生成して表示する電子内視鏡システムが知られている。この種の電子内視鏡システムの具体的構成例は、特許文献1〜3に記載されている。
【0003】
特許文献1〜3に記載の電子内視鏡システムは、分光特性の異なるフィルタを円周方向に複数配置した回転式フィルタターレットを有している。電子内視鏡システムは、回転式フィルタターレットを回転させることによって複数のフィルタを照明光路に選択的に挿入し配置する。例えば、通常のカラー画像をモニタに表示させる場合は、可視光領域全域を透過させるフィルタを光路に挿入して配置し、狭帯域光画像をモニタに表示させる場合は、特定の狭帯域光を透過させるフィルタを光路に挿入し配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−297042号公報
【特許文献2】特開昭63−309237号公報
【特許文献3】特開昭59−228834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
狭帯域光画像を生成するためには、可視光領域を含む広帯域の照明光を狭帯域光に制限する必要がある。そのため、狭帯域光観察では、広帯域光を用いる通常のカラーの内視鏡観察と比べて被写体への照明光量が少ない。従って、狭帯域光画像には暗く観察し難いという問題がある。狭帯域光画像の輝度不足は、ゲインを上げることによって解消することができる。しかし、この場合、ゲインと共にノイズも増加して画質が劣化する弊害が避けられない。このため、ゲインを上げることによる輝度不足の解消は、好適な解決策とはいえない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る内視鏡システムは、複数の光路と、所定の広帯域の照明光を複数の光路に供給する照明光供給手段と、複数の光路のうち少なくとも一つの光路以外の、残りの少なくとも一つの光路に供給された照明光を所定の狭帯域光に分光する分光手段と、各光路の照明光が入射する複数のライトガイドと、各ライトガイドを伝送した照明光を被写体に照射する複数の照明光学系とを有している。
【0007】
本発明に係る内視鏡システムによれば、被写体を複数のライトガイド及び照明光学系を通じて狭帯域光及び広帯域光の両方によって照射するため、狭帯域光だけを被写体に照射していた従来構成の問題点が解消されて(すなわち、広帯域光を併せて照射することによって照明光量不足が抑えられて)、輝度不足による狭帯域光画像の視認性の悪さが抑えられる。
【0008】
複数の光路は、例えば第一の光路と第二の光路を有している。この場合、分光手段は、第二の光路に供給された照明光を所定の狭帯域光に分光する光学フィルタを有した構成としてもよい。第一、第二の光路には、例えば、第一の光路を第一の本光路と副光路に分離する第一の光路分離手段と、第二の光路を第二の本光路と副光路に分離する第二の光路分離手段と、第一の本光路と第二の副光路を結合して第一の結合光路とする第一の結合手段と、第二の本光路と第一の副光路を結合して第二の結合光路とする第二の結合手段とが配置されている。また、複数のライトガイドは、第一の結合光路と結合する第一のライトガイドと、第二の結合光路と結合する第二のライトガイドとを有している。
【0009】
本発明に係る内視鏡システムは、第一の本光路、第一の副光路、第二の本光路、第二の副光路の各光路を遮蔽自在な光路遮蔽手段を有した構成としてもよい。
【0010】
本発明に係る内視鏡システムは、照明光学系を通じて照射された被写体を撮像する固体撮像素子を有した構成としてもよい。この場合、光路遮蔽手段は、固体撮像素子における一フレームの電荷蓄積期間中、所定の狭帯域光と、分光手段による分光がなされない光路を伝送した広帯域光とが第一、第二の各ライトガイドに交互に供給されるように第一の本光路、第一の副光路、第二の本光路、第二の副光路の各光路の遮蔽を選択的に行う構成してもよい。
【0011】
また、光路遮蔽手段は、電荷蓄積期間の所定の第一期間中、広帯域光又は狭帯域光の一方が第一のライトガイドに供給され、他方が第二のライトガイドに供給されると共に、電荷蓄積期間における第一期間終了後の残りの第二期間中、第一のライトガイドに対して、第一期間に供給されていない広帯域光又は狭帯域光の一方が供給され、他方が第二のライトガイドに供給されるように、第一の本光路、第一の副光路、第二の本光路、第二の副光路の各光路の遮蔽を選択的に行う構成としてもよい。
【0012】
本発明に係る内視鏡システムは、照明光により照射された被写体からの反射光を取り込む対物レンズをその先端面に備える内視鏡を有した構成としてもよい。また、複数の照明光学系は、第一、第二の各ライトガイドを伝送した照明光を被写体に照射する第一、第二の照明レンズを内視鏡の先端面に有した構成としてもよい。この場合、第一と第二の照明レンズは、内視鏡の先端面において例えば対物レンズを互いに挟む位置に設置されている。
【0013】
照明光供給手段は、所定の広帯域の照明光を放射する光源と、光源から放射された照明光を複数の光路に分離する照明光分離手段とを有した構成としてもよい。
【0014】
本発明に係る内視鏡システムは、光源を搭載した光源装置と、光源装置と接続され、複数のライトガイドが基端から先端に至る略全長に亘って配置された内視鏡とを有した構成としてもよい。かかる構成において、照明光分離手段は、例えば光源装置内に配置される。この場合、複数のライトガイドの各基端は、光源装置との接続部に差し込まれ、照明光分離手段によって分離された各光路と結合するように光源装置内に配される。また、照明光分離手段は、内視鏡内に配置された構成としてもよい。この場合、光源装置と内視鏡は、光源と照明光分離手段との間に配置された単一の光路を介して光学的に接続される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る内視鏡システムによれば、被写体が複数のライトガイド及び照明光学系を通じて狭帯域光及び広帯域光の両方によって照射される。そのため、狭帯域光だけを被写体に照射していた従来構成の問題点が解消されて(すなわち、広帯域光を併せて照射することによって照明光量不足が抑えられて)、輝度不足による狭帯域光画像の視認性の悪さが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプロセッサが有する分離制御部の構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電子スコープの先端面の外観を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るプロセッサが有する各開閉器のスイッチング状態と、電子スコープの先端面に設置された各配光レンズから射出される照明光との関係を示す図である。
【図5】狭帯域光画像観察モードに設定されているときに、本発明の実施形態に係る電子スコープが有する固体撮像素子における一フレームの電荷蓄積期間中に各配光レンズから射出される照明光を説明する図である。
【図6】別の実施形態に係る電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電子内視鏡システムについて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、医療用の撮像システムであり、電子スコープ100、プロセッサ200、モニタ300を有している。電子スコープ100の基端は、プロセッサ200と接続されている。プロセッサ200は、電子スコープ100が出力する画像信号を処理して画像を生成する画像信号処理装置と、自然光の届かない体腔内を電子スコープ100を介して照射する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施形態では、画像信号処理装置と光源装置とを別体で構成してもよい。
【0019】
図1に示されるように、プロセッサ200は、システムコントローラ202、タイミングコントローラ204を有している。システムコントローラ202は、電子内視鏡システム1を構成する各要素を制御する。タイミングコントローラ204は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各回路に出力する。
【0020】
ランプ208は、ランプ電源イグナイタ206による始動後、主に可視光領域から不可視である赤外領域に広がる波長域の光を放射する。ランプ208には、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプが適している。ランプ208から放射された照明光は、コリメートレンズ210によってコリメートされると共に絞り212を通過して適正な光量に制限される。
【0021】
絞り212には、図示省略されたアームやギヤ等の伝達機構を介してモータ214が機械的に連結している。モータ214は例えばDCモータであり、ドライバ216のドライブ制御下で駆動する。絞り212は、モニタ300の表示画面に表示される映像を適正な明るさにするため、モータ214によって動作して開度が変化して、ランプ208から放射された照明光の光量を開度に応じて制限する。適正とされる映像の明るさの基準は、術者によるフロントパネル218又は電子スコープ100の手元操作部(不図示)に対する輝度調節操作に応じて設定変更される。
【0022】
フロントパネル218の構成には種々の形態が想定される。フロントパネル218の具体的構成例には、プロセッサ200のフロント面に実装された機能毎のハードウェアキーや、タッチパネル式GUI(Graphical User Interface)、ハードウェアキーとGUIとの組合せ等が想定される。
【0023】
絞り212を通過した照明光は、分離制御部230に入射する。図2は、分離制御部230の光学構成を模式的に示す図である。図2に示されるように、分離制御部230は、光学フィルタ230F、ハーフミラー231A、ミラー231B、ハーフミラー232A、232B、LCB(Light Carrying Bundle)233a、233b、234a、234b、開閉器235a、235b、236a、236b、光路結合部237A、237B、LCB238A、238Bを有している。
【0024】
分離制御部230に入射した照明光は、ハーフミラー231Aによって光路OP1とOP2に分離される。光路OP1に分離された照明光は、ハーフミラー231Aによって光路OP1aとOP1bに更に分離される。以下、説明の便宜上、光路OP1aとOP1bに分離された照明光を「広帯域光」と記す。光路OP2に分離された照明光は、ミラー231Bによって光路が折り曲げられた後、光学フィルタ230Fによって特定の狭帯域光に分光される。狭帯域光は、ハーフミラー231Bによって光路OP2aとOP2bに分離される。ここで、特定の狭帯域光は、例えばヘモグロビンの吸収に適した波長域に透過ピークを持つ半値幅の狭い光である。
【0025】
光路OP1a、OP1b、OP2a、OP2bには夫々、LCB233a、233b、234a、234bが配置されている。光路OP1a、OP1bに分離された広帯域光は夫々、カップリングレンズ(不図示)を介してLCB233a、233bに入射する。光路OP2a、OP2bに分離された狭帯域光は夫々、カップリングレンズ(不図示)を介してLCB234a、234bに入射する。
【0026】
LCB233a、233b、234a、234bには夫々、開閉器(例えば光ファイバスイッチ)235a、235b、236a、236bが取り付けられている。開閉器235a、235bは夫々、LCB233a、233b内を伝播する広帯域光を透過又は遮蔽する。開閉器236a、236bは夫々、LCB234a、234b内を伝播する狭帯域光を透過又は遮蔽する。
【0027】
LCB233aと234aは、光路結合部237Aにおいて単一のLCB238Aにまとめられている。そのため、LCB238Aには、開閉器235a、236aの各スイッチング状態に応じて広帯域光又は狭帯域光の一方若しくは両方が入射する。LCB233bと234bは、光路結合部237Bにおいて単一のLCB238Bにまとめられている。そのため、LCB238Bにも、開閉器235b、236bの各スイッチング状態に応じて広帯域光又は狭帯域光の一方若しくは両方が入射する。なお、光路結合部237A、237Bにおいては夫々、LCB233aと234a、LCB233bと234bが例えば接着剤等によって束ねられたうえで、フェルール等によって保護・保持されている。
【0028】
電子スコープ100が有するLCB102A、102Bの入射端(基端)は、プロセッサ200との接続部に差し込まれ、プロセッサ200内に配されている。LCB238A、238Bに入射した照明光(広帯域光又は狭帯域光)は夫々、カップリングレンズ(不図示)を介してLCB102A、102Bの入射端に入射して、LCB102A、102B内を全反射を繰り返すことによって伝播する。LCB102A、102B内を伝播した照明光(広帯域光又は狭帯域光)は夫々、電子スコープ100の先端に配されたLCB102A、102Bの射出端から射出する。LCB102A、102Bの射出端から射出した照明光(広帯域光又は狭帯域光)は夫々、配光レンズ104A、104Bを介して被写体を照射する。
【0029】
図3は、電子スコープ100の先端面100Tの外観を示す図である。図3に示されるように、先端面100Tにおいて、配光レンズ104A、104Bは、対物レンズ106の中心を通る線(図3中一点鎖線)を挟んで対称位置に配置されている。そのため、対物レンズ106には、少なくとも一方向(図3中左右方向)においてバランスの取れた配光で照射された被写体の反射光が入射する。対物レンズ106に入射した反射光は、固体撮像素子108の受光面上の各画素で光学像を結ぶ。
【0030】
固体撮像素子108は、例えばベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの各色に応じた画像信号に変換する。変換された画像信号は、プリアンプ110による信号増幅後、内視鏡側信号処理回路112に入力する。別の実施形態では、固体撮像素子108は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであってもよい。
【0031】
タイミングコントローラ204は、システムコントローラ202によるタイミング制御に従って、内視鏡側信号処理回路112にクロックパルスを供給する。内視鏡側信号処理回路112は、タイミングコントローラ204から供給されるクロックパルスに従って、固体撮像素子108をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。
【0032】
内視鏡側信号処理回路112に入力した画像信号は、相関二重サンプリング処理によるリセット雑音及びアンプ雑音の除去、AGC(Auto Gain Control)によるゲイン調整、AD変換等の処理後、プロセッサ側信号処理回路220に入力する。
【0033】
プロセッサ側信号処理回路220に入力した画像信号は、γ補正、補間処理、色変換等の処理後、各色信号別にフレーム単位でR、G、Bの各色対応のフレームメモリ(不図示)にバッファリングされる。バッファリングされた各色信号は、タイミングコントローラ204によって制御されたタイミングでフレームメモリから掃き出されて、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換される。変換された映像信号がモニタ300に順次入力することにより、被写体の画像がモニタ300の表示画面に表示される。
【0034】
術者は、フロントパネル218又は電子スコープ100の手元操作部を通じて電子内視鏡システム1の観察モードを設定変更することができる。観察モードが設定変更されると、開閉器235a、235b、236a、236bのスイッチング制御が変更されるため、LCB102A又は102Bへの入射光の分布が広帯域光又は狭帯域光の一方の分布若しくは両方を重ねた分布の何れかに変わる。これにより、配光レンズ104A、104Bから被写体に照射される照明光の分布が変わる。図4(a)〜(e)に、各開閉器のスイッチング状態と、配光レンズ104A、104Bの各レンズから射出される照明光との関係を示す。
【0035】
(通常カラー画像観察モード)
通常カラー画像観察モードに設定されている場合、開閉器235a及び235bのスイッチング状態が透過状態に固定されると共に、開閉器236a及び236bのスイッチング状態が遮蔽状態に固定される(図4(a)参照)。そのため、配光レンズ104A、104Bの各レンズからは広帯域光が射出される。モニタ300の表示画面には、少なくとも一方向(図3中左右方向)において配光バランスの取れた通常のカラー画像が表示される。
【0036】
(狭帯域光画像観察モード)
狭帯域光観察するためには使用波長が狭帯域に制限されるため、広帯域光である白色光を用いた通常の内視鏡観察と比べて被写体への照明光量が少ない。そのため、狭帯域光画像は暗く観察し難いという問題点を抱えている。しかし、狭帯域光画像観察モードに設定されているときにモニタ300の表示画面に表示される狭帯域光画像では、本問題点が解消されている。
【0037】
図5(a)、(b)は、狭帯域光画像観察モードに設定されているときに、固体撮像素子108における一フレームの電荷蓄積期間中に配光レンズ104A、104Bの各レンズから射出される照明光を説明する図である。図5(a)は、電荷蓄積期間中に配光レンズ104Aから射出される照明光を示し、図5(b)は、同じく電荷蓄積期間中に配光レンズ104Bから射出される照明光を示す。
【0038】
システムコントローラ202は、狭帯域光画像観察モードに設定されると、一フレームの電荷蓄積期間の前半期間中、開閉器235a及び236bを透過状態にスイッチングすると共に開閉器235b及び236aを遮蔽状態にスイッチングする(図4(b)参照)。一フレームの電荷蓄積期間の後半期間中は、開閉器235a及び236bを遮蔽状態にスイッチングすると共に開閉器235b及び236aを透過状態にスイッチングする(図4(d)参照)。これにより、前半期間中、広帯域光が配光レンズ104Aから射出されると同時に狭帯域光が配光レンズ104Bから射出され、後半期間中、狭帯域光が配光レンズ104Aから射出されると同時に広帯域光が配光レンズ104Bから射出される(図5(a)、(b)参照)。
【0039】
狭帯域光画像観察モードにおいては、一フレームの画像を生成するにあたり、狭帯域光に併せて広帯域光が被写体に照射される。そのため、狭帯域光だけを被写体に照射していた従来構成の問題点が解消されて(すなわち、広帯域光を併せて照射することによって照明光量不足が抑えられて)、輝度不足による狭帯域光画像の視認性の悪さが抑えられる。
【0040】
また、狭帯域光画像観察モードにおいては、配光レンズ104A、104Bの両方のレンズから広帯域光と狭帯域光が射出されて被写体が照射される。そのため、輝度不足が解消されると共に、少なくとも一方向(図3中左右方向)において配光バランスの取れた狭帯域光画像が観察される。
【0041】
ところで、狭帯域光画像観察モードに設定されているときの各開閉器のスイッチング制御には種々のパターンが想定される。例えば、一フレームの電荷蓄積期間の前半期間中、開閉器235a及び235bを透過状態にスイッチングすると共に開閉器236a及び236bを遮蔽状態にスイッチングし(図4(a)参照)、後半期間中、開閉器235a及び235bを遮蔽状態にスイッチングすると共に開閉器236a及び236bを透過状態にスイッチングする(図4(c)参照)。すなわち、前半期間中は、配光レンズ104A、104Bの両方のレンズから広帯域光を射出し、後半期間中は、配光レンズ104A、104Bの両方のレンズから狭帯域光を射出する。
【0042】
また、例えば、一フレームの電荷蓄積期間の全期間中、開閉器235a、235b、236a、236bの全てを透過状態にスイッチングする(図4(e)参照)。この場合、照明光量が更に増加する。そのため、モニタ300の表示画面には、輝度不足がより一層解消された狭帯域光画像が表示される。
【0043】
なお、狭帯域光と広帯域光が被写体に重畳的に照射されることに伴い、モニタ300の表示画面上において狭帯域光の分光特性に対応する特定構造(ここでは血管)のコントラストが低下することが懸念される。そのため、プロセッサ側信号処理回路220は、狭帯域光画像観察モードに設定されている場合、予め用意された複数種類のカラーマトリクス係数の中から、上記狭帯域の色成分を他の色成分に対して相対的に濃くするように設定されたカラーマトリクス係数を選択して色変換処理を行う。これにより、モニタ300の表示画面には、輝度不足とコントラスト低下の両方が改善された血管の狭帯域光画像が表示される。
【0044】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば光源は、一つに限らず、光路OP1、OP2の各光路に対して別個独立に備えられていてもよい。
【0045】
また、図5の例では、長さが同じ前半期間と後半期間とで各開閉器のスイッチング状態を切り替えているが、別の実施形態では、前後半の期間に代えて、長さの異なる第一期間と第二期間とで各開閉器のスイッチング状態を切り替える構成としてもよい。
【0046】
また、別の実施形態では、一フレームの電荷蓄積期間を三つ以上の期間に区分して、各期間への切り替わり時に各開閉器のスイッチング状態を切り替える構成としてもよい。
【0047】
また、映像のフレームレートが高い場合は、奇数フレームの電荷蓄積期間の全期間中に配光レンズ104A、104Bの両方のレンズから広帯域光が射出され(図4(a)参照)、偶数フレームの電荷蓄積期間の全期間中に配光レンズ104A、104Bの両方のレンズから狭帯域光が射出される構成としてもよい(図4(c)参照)。
【0048】
また、光学フィルタ230Fは、分光特性の異なるフィルタを円周方向に複数配置した回転式フィルタターレットに置き換えてもよい。この場合、回転式フィルタターレットの回転によって光路OP2に選択的に挿入されるフィルタの分光特性に応じた複数種類の狭帯域光画像がモニタ300の表示画面に表示される。
【0049】
また、本実施形態では、配光レンズは、配光レンズ104A、104Bの二つであるが、別の実施形態では、配光バランスをより一層向上させるため、三つ以上配置されていてもよい。例えば、プロセッサ200は、二つの分離制御部230を筐体内に並列に配置し、ランプ208が放射した照明光をハーフミラー等によって分離して各分離制御部230に入射させるように構成される。電子スコープ100は、各分離制御部230に結合する二対のLCBが基端から先端に亘り配置され、各LCBの射出端からの照明光を外部に射出する4つの配光レンズが先端面Tに設置される。先端面Tにおいて、4つの配光レンズは、対物レンズ106を取り囲むように等間隔(90度間隔)で配置される。そのため、対物レンズ106には、より一層バランスの取れた配光で照射された被写体の反射光が入射する。
【0050】
また、本実施形態では、狭帯域光画像を表示する構成を採用したが、別の実施形態では、狭帯域光画像に代えて蛍光画像を表示する構成を採用してもよい。
【0051】
また、別の実施形態では、分離制御部230を電子スコープ100に配置してもよい。図6は、分離制御部230を電子スコープ100に配置した電子内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。図6に示されるように、別の実施形態の分離制御部230は、電子スコープ100の基端部(例えばプロセッサ200との接続部)に配置されている。別の実施形態においては、分離制御部230をプロセッサ200内に配置した図1の構成例と比較してLCB102A及び102Bの全長を短く設計することができる。
【0052】
また、別の実施形態において、絞り212を通過した照明光は、プロセッサ200に配置されたカップリングレンズ211を介してLCB102Cに入射し、電子スコープ100に配置された分離制御部230に入射する。すなわち、別の実施形態では、電子スコープ100とプロセッサ200とが単一のLCB102Cを通じて光学的に接続される。そのため、電子スコープ100とプロセッサ200との接続部の構造が図1の構成例と比較して簡単になる。
【符号の説明】
【0053】
1 電子内視鏡システム
100 電子スコープ
104A、104B 配光レンズ
200 プロセッサ
230 分離制御部
230F 光学フィルタ
231A、232A、232B ハーフミラー
231B ミラー
233a、233b、234a、234b、238A、238B LCB
235a、235b、236a、236b 開閉器
237A、237B 光路結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光路と、
所定の広帯域の照明光を前記複数の光路に供給する照明光供給手段と、
前記複数の光路のうち少なくとも一つの光路以外の、残りの少なくとも一つの光路に供給された照明光を所定の狭帯域光に分光する分光手段と、
各前記光路の照明光が入射する複数のライトガイドと、
各前記ライトガイドを伝送した照明光を被写体に照射する複数の照明光学系と、
を有することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記複数の光路は、
第一の光路と、
第二の光路と、
を有し、
前記分光手段は、
前記第二の光路に供給された照明光を前記狭帯域光に分光する光学フィルタ
を有し、
前記第一、第二の光路には、
前記第一の光路を第一の本光路と副光路に分離する第一の光路分離手段と、
前記第二の光路を第二の本光路と副光路に分離する第二の光路分離手段と、
前記第一の本光路と前記第二の副光路を結合して第一の結合光路とする第一の結合手段と、
前記第二の本光路と前記第一の副光路を結合して第二の結合光路とする第二の結合手段と、
が配置され、
前記複数のライトガイドは、
前記第一の結合光路と結合する第一のライトガイドと、
前記第二の結合光路と結合する第二のライトガイドと、
を有することを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記第一の本光路、前記第一の副光路、前記第二の本光路、前記第二の副光路の各光路を遮蔽自在な光路遮蔽手段
を有することを特徴とする、請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記照明光学系を通じて照射された被写体を撮像する固体撮像素子
を有し、
前記光路遮蔽手段は、
前記固体撮像素子における一フレームの電荷蓄積期間中、前記狭帯域光と前記分光手段による分光がなされない光路を伝送した前記広帯域光とが前記第一、第二の各ライトガイドに交互に供給されるように、前記第一の本光路、前記第一の副光路、前記第二の本光路、前記第二の副光路の各光路の遮蔽を選択的に行うことを特徴とする、請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記光路遮蔽手段は、
前記電荷蓄積期間の所定の第一期間中、前記広帯域光又は前記狭帯域光の一方が前記第一のライトガイドに供給され、他方が前記第二のライトガイドに供給されると共に、該電荷蓄積期間における該第一期間終了後の残りの第二期間中、該第一のライトガイドに対して、該第一期間に供給されていない該広帯域光又は該狭帯域光の一方が供給され、他方が該第二のライトガイドに供給されるように、前記第一の本光路、前記第一の副光路、前記第二の本光路、前記第二の副光路の各光路の遮蔽を選択的に行うことを特徴とする、請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記照明光により照射された被写体からの反射光を取り込む対物レンズを先端面に備えた内視鏡
を有し、
前記複数の照明光学系は、
前記第一、第二の各ライトガイドを伝送した照明光を被写体に照射する第一、第二の照明レンズ
を前記先端面に有し、
前記第一と第二の照明レンズは、前記先端面において前記対物レンズを互いに挟む位置に設置されていることを特徴とする、請求項2から請求項5の何れか一項に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記照明光供給手段は、
前記所定の広帯域の照明光を放射する光源と、
前記光源から放射された照明光を前記複数の光路に分離する照明光分離手段と、
を有することを特徴とする、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記光源を搭載した光源装置と、
前記光源装置と接続され、前記複数のライトガイドが基端から先端に至る略全長に亘って配置された内視鏡と、
を有し、
前記照明光分離手段は、前記光源装置内に配置され、
前記複数のライトガイドの各基端は、前記光源装置との接続部に差し込まれ、前記照明光分離手段によって分離された各前記光路と結合するように該光源装置内に配されていることを特徴とする、請求項7に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記光源を搭載した光源装置と、
前記光源装置と接続され、前記複数のライトガイドが基端から先端に至る略全長に亘って配置された内視鏡と、
を有し、
前記照明光分離手段は、前記内視鏡内に配置され、
前記光源装置と前記内視鏡は、前記光源と前記照明光分離手段との間に配置された単一の光路を介して光学的に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−364(P2013−364A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134697(P2011−134697)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】