説明

内視鏡用照明装置及び内視鏡装置

【課題】発光部材内で蛍光体を樹脂材料により封止する構成にすることで、発光効率を高めて設計自由度の高い構成にできる内視鏡用照明装置及び内視鏡装置を提供すること。
【解決手段】内視鏡用照明装置は、内視鏡挿入部の先端に設けた照明窓43A,43Bから被検体に向けて照明光を照射する。この内視鏡用照明装置は、青色半導体光源LD1と、赤色半導体光源LD2と、青色光及び赤色光を照明窓まで導光する導光部材55と、照明窓の内側で導光部材の光出射端に配置され、赤色光を実質的に吸収せず透過させ、青色光の一部を励起光として吸収して緑色系の蛍光を発すると共に残りの一部を透過させる緑色蛍光体を含んで構成された発光部材57A,57Bとを備える。この緑色蛍光体を、発光部材内で樹脂材料により封止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用照明装置及び内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡用光源装置としては、その発光源としてキセノンランプ等の白色ランプが広く使用されている。また、近年になって高効率で高輝度なレーザ光を用いるものが開発されている。レーザ光を用いる白色光源としては、例えば、青色レーザ光源と、青色レーザ光を励起光として発光する発光部材とを備えたレーザ白色光源がある。この場合の発光部材には、緑色発光の緑色蛍光体と赤色発光の赤色蛍光体が含まれており、各蛍光体は励起光を受けて緑色及び赤色に発光する。レーザ白色光源は、これら蛍光体からの発光と青色レーザ光による青色光とを混合して発光部材全体を白色に発光させ、白色の照明光を生成する。
【0003】
上記の発光部材を内視鏡挿入部の先端に配置して、レーザ白色光源を内視鏡装置に搭載した場合、内視鏡挿入部の細径化のためには発光部材をできるだけ小さくする必要がある。ところが、発光部材の外径を例えばφ1mm以下に小型化して、この小型化された微小スポットにレーザ光を照射するとき、発光部材はレーザ光に励起されて発熱する。このときの発熱は、内視鏡装置の出力が150〜200mW(1灯)程度でも150℃程度に達することがある。
【0004】
蛍光体の封止材料として、例えばフェニルシリコーン等のシリコン樹脂を用いると、発光部材が上記の高温になったときに樹脂の分解が進んでしまう。また、メタノールやエタノール、ノルマルヘキサン、ベンゼン等の溶剤の揮発が始まる。そのため、一般にレーザ光を用いる場合の発光部材は、蛍光体を耐熱性の高いガラス粉末(珪酸塩ガラス等の低融点ガラス)に混合して加熱焼結したものが使用されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、蛍光体をガラス粉末と加熱焼結する際、蛍光体は600℃もの熱に晒されて熱ダメージを受け、発光効率が低下する。また、耐熱性を要するために蛍光体の材料選択肢が狭まる不利もある。
【0006】
また、蛍光部室は、発光波長が励起光波長から離れるほどストークスロスにより発光効率が低下する。このため、青色励起光に対して赤色発光の蛍光体を用いること自体、発光効率を低下させる要因となる。また、蛍光体の発光特性は温度依存性を有し、発光による発光部材の温度上昇に伴って緑色(黄色)発光強度と赤色発光強度のバランスが変化する。その結果、発光体の温度変化によって発光の色味が変化して、照明光の色調が変化することになる。
【0007】
上記のような発光の色味変化を防ぐには、単に発光効率が高いことだけで、使用する蛍光体の組み合わせを決定するのでなく、蛍光体の温度変化に伴う発光効率の変化を各発光色で同じに設定する必要がある。しかし、図16に示すように、温度上昇に伴う各色の蛍光体の発光効率は、色毎に異なるカーブを呈する。即ち、温度上昇に伴って緑色発光の蛍光体より赤色発光の蛍光体の発光効率が低くなり、発光光量比であるR:B比は、G:B比よりも低くなる。
【0008】
この蛍光体の発光の温度依存性については、蛍光体の材料選定によってある程度軽減できるが、蛍光体の材料の選択自由度が損なわれる。例えば、YAG(イットリウム・アルミ・ガーネット)蛍光体の代わりに発光効率の高いα−サイアロン(緑色発光蛍光体)を用いる場合、このα−サイアロンと同等の温度特性を有し、発光効率の高い赤色発光の蛍光体は存在しない。そのため、近い特性の蛍光体で代用せざるを得ず、結果として発光効率の低下とばらつきの増加を招くことになる。
【0009】
更に、蛍光体を封止するための樹脂材料は、一般にレーザ光による光耐久性と耐湿性とがトレードオフの関係にある。耐湿性が高い樹脂材料は光耐久性が低いため、出射光路以外の部分等に適用され、使用範囲が限られるのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4638837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、発光部材内で蛍光体を樹脂材料により封止する構成にすることで、発光効率を高めて設計自由度の高い構成にできる内視鏡用照明装置及び内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は下記構成からなる。
(1) 内視鏡挿入部の先端に設けた照明窓から被検体に向けて照明光を照射する内視鏡用照明装置であって、
青色光を生成する青色半導体光源と、
赤色光を生成する赤色半導体光源と、
前記青色半導体光源からの青色光及び前記赤色半導体光源からの赤色光を導光する導光部材と、
前記照明窓の内側で前記導光部材の光出射端に対面して配置された発光部材と、
を備え、
前記発光部材が、前記赤色光を実質的に吸収せず透過させ、前記青色光の一部を励起光として吸収して緑色系の蛍光を発すると共に残りの一部を透過させる緑色蛍光体を含んで構成され、
前記緑色蛍光体が、前記発光部材内で樹脂材料により封止されている内視鏡用照明装置。
(2) (1)の内視鏡用照明装置を搭載した内視鏡装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の内視鏡用照明装置及び内視鏡装置は、発光部材内で蛍光体を樹脂材料により封止する構成にすることで、発光効率を高めて設計自由度の高い構成にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡及び内視鏡が接続される各装置を表す内視鏡装置の構成図である。
【図2】内視鏡装置の具体的な構成例を示す外観図である。
【図3】内視鏡先端部の外観斜視図である。
【図4】発光部材からの出射光の分光特性を示すグラフである。
【図5】(A)は第1の発光部材を模式的に示す概略構成図、(B)は第2の発光部材を模式的に示す概略構成図、(C)は第3の発光部材を模式的に示す概略構成図である。
【図6】(A)は第4の発光部材を模式的に示す概略構成図、(B)は第5の発光部材を模式的に示す概略構成図、(C)は第6の発光部材を模式的に示す概略構成図である。
【図7】第7の発光部材を模式的に示す概略構成図である。
【図8】蛍光反射膜の波長に対する透過率、反射率の特性を示すグラフである。
【図9】第8の発光部材を模式的に示す概略構成図である。
【図10】第9の発光部材を模式的に示す概略構成図である。
【図11】第10の発光部材を模式的に示す概略構成図である。
【図12】蛍光体を封止する樹脂材料の特性を示す説明図で、光耐久性と耐湿性との関係を示すグラフである。
【図13】発光部材の他の構成を示す構成図である。
【図14】発光部の外側表面を耐湿性コーティング層で覆った発光部材の構成を示す構成図である。
【図15】スリーブの内周面とカバーガラスの外周面との隙間に、耐湿性コーティング層を形成した発光部材の構成を示す構成図である。
【図16】従来構成における、温度上昇に伴う各色の蛍光体の発光効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡及び内視鏡が接続される各装置を表す内視鏡装置の構成図、図2は内視鏡装置の具体的な構成例を示す外観図である。
【0016】
内視鏡装置100は、図1に示すように、内視鏡11と、制御装置13と、モニタ等の表示部15と、制御装置13に情報を入力するキーボードやマウス等の入力部17とを備えている。制御装置13は、光源装置19と、撮像画像の信号処理を行うプロセッサ21とを有して構成される。
【0017】
内視鏡11は、本体操作部23と、この本体操作部23に連設され被検体(体腔)内に挿入される細長状の挿入部25とを備える。本体操作部23には、ユニバーサルコード27が接続されている。このユニバーサルコード27の先端は、光源装置19にライトガイド(LG)コネクタ29Aを介して接続され、また、ビデオコネクタ29Bを介してプロセッサ21に接続されている。
【0018】
図2に示すように、内視鏡11の本体操作部23には、挿入部25の先端側で吸引、送気、送水を実施するためのボタンや、撮像時のシャッターボタン等の各種操作ボタン31が併設されると共に、一対のアングルノブ33が設けられている。
【0019】
挿入部25は、基端側に配置される本体操作部23から順に、軟性部35、湾曲部37、及び先端部(内視鏡先端部)39で構成される。湾曲部37は、本体操作部23のアングルノブ33を回動することによって遠隔的に湾曲操作されて、これにより先端部39を所望の方向に向けることができる。
【0020】
図3に内視鏡先端部の外観斜視図を示した。
内視鏡先端部39には、撮像光学系の観察窓41と、照明光学系の照明窓43A,43Bが配置されている。観察窓41を挟んで配置された一対の照明窓43A,43Bから照射される照明光は、被検体に照射される。照射した照明光による被検体からの反射光は、図1に示すように、観察窓41を通じて撮像素子45で撮像される。撮像された観察画像は、プロセッサ21に接続された表示部15に適宜な画像処理を施した後に表示される。
【0021】
撮像光学系は、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等の撮像素子45と、撮像素子45に観察像を結像させるレンズ等の光学部材47とを有する。撮像素子45の受光面に結像されて取り込まれる観察像は、電気信号に変換されて信号ケーブル51を通じてプロセッサ21の撮像信号処理部53に入力され、この撮像信号処理部53で映像信号に変換される。
【0022】
プロセッサ21は、各部を統括制御する制御部63と、映像信号を生成する撮像信号処理部53とを備えている。制御部63は、撮像信号処理部53から出力される観察画像の画像データに対し、適宜な画像処理を施して表示部15に映出させる。また、光源装置19のレーザ光源LD1、レーザ光源LD2に駆動信号を出力して、各照明窓43A,43Bから所望の光量の照明光を出射させる。この制御部63は、図示しないLAN等のネットワークに接続されて、画像データを含む情報を配信する等、内視鏡装置100全体を制御する。
【0023】
内視鏡用照明装置である照明光学系は、光源装置19と、光源装置19にコネクタ29Aを介して接続される一対の光ファイバ55A,55Bと、光ファイバ55A,55Bの光出射端にそれぞれ配置した発光部材57A,57Bとを有する。光源装置19は、半導体発光素子である青色発光のレーザ光源LD1と、赤色発光のレーザ光源LD2と、各レーザ光源LD1,LD2からの出射光を合波するコンバイナ61と、合波された光を分波して各光ファイバ55A,55Bに導入する光カプラ62とを有する。
【0024】
レーザ光源LD1は、中心波長445nmの青色発光の半導体レーザであり、レーザ光源LD2は、中心波長640nmの赤色発光の半導体レーザである。これらレーザ光源LD1,LD2は、例えばブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが使用できる。
【0025】
発光部材57A,57Bは、レーザ光源LD1から出射される青色レーザ光の一部を吸収して緑色系に励起発光する蛍光体(例えば、Ca3Sc2Si3O12,(BaSr)2SiO4,(Sr,Ba)Si2O2N2,αサイアロン,βサイアロン等)を含んで構成される。これら発光部材57A,57Bからの出射光の分光特性を図4に示した。発光部材57A,57Bからは、レーザ光源LD1からの青色レーザ光65と、この青色レーザ光65が波長変換された緑色の蛍光67と、レーザ光源LD2からの赤色レーザ光69とが合成されて白色光が生成される。なお、図中点線71は、比較用として、青色レーザ光65により励起発光するYAG蛍光体の緑〜黄色の蛍光を示している。
【0026】
上記各蛍光体の特性を表1に示す。発光効率の温度特性は、(BaSr)2SiO4が比較的低くなるが、発光光量、耐湿性は共に良好であり、実使用に問題はない。なお、表中の◎はYAG蛍光体に比較して同等以上、○はほぼ同等、△は劣ること、を表している。
【0027】
【表1】

【0028】
プロセッサ21の制御部63は、レーザ光源LDを光量制御して、レーザ光源LDからレーザ光を出力させる。この出力されたレーザ光は、各光ファイバ55A,55Bに導入され、内視鏡先端部39まで導光される。光ファイバ55A,55Bに導光されたレーザ光は発光部材57A,57Bに照射され、これにより、照明窓43A,43Bから白色の照明光が出射される。
【0029】
上記のように本構成の内視鏡装置100の光源装置は、白色照明用に使用する蛍光体を緑色発光の蛍光体一種類とし、青色レーザ光と緑色蛍光、及び赤色レーザ光を所定(或いは任意)の強度比で混合して白色光を得ている。赤色レーザ光を赤色の照明光とするため、発光効率が比較的低い赤色発光の蛍光体を用いることなく、高効率で高輝度な照明光を生成できる。また、赤色光の強度を青色光の強度とは独立して制御可能になるため、照明光の色調の制御可能範囲が色空間内で拡大すると共に、より微妙な色調調整が可能となる。
【0030】
また、蛍光体で青色レーザ光を波長変換させて赤色光を生成する場合より、赤色光を赤色レーザ光源で直接生成した方が、エネルギ効率が高く、省電力で、しかも応答性良く所望の光量の照明光が得られる。
【0031】
そして、発光効率の比較的低い赤色発光の蛍光体がなくなるので、青色レーザ光を発光部材に照射した際の発光部材の発熱が小さく抑えられる。例えば蛍光体をα−サイアロンを用いた場合、レーザ光の照射時の加熱温度は、150℃から120℃程度にまで低減が可能となる。このため、特に耐熱性の高いガラス等により蛍光体を封止する必要がなくなり、加工の自由度が高い樹脂材料で封止した構成にできる。特に、150℃以下の耐熱性樹脂である、フェニルメチルシリコーンを基材とするものでは、密封性も良好な材料であり、耐光性も良好な特性を有する。つまり、気密性、水密性に優れたシリコーン系の材料を使用することで、耐湿性の低い蛍光体を利用することも可能となり、蛍光体の材料選択の自由度が向上する。
【0032】
また、樹脂材料により蛍光体を封止することで、内視鏡挿入部の先端に配置する発光部材の構造を大きく変更でき、より均一な強度分布の照明光を高効率で得られる構造にできる。例えば、蛍光体を含む発光部材の光出射面積を拡大した構成等、種々の設計変更が可能となる。
【0033】
次に、発光部材57A,57Bの具体的な構成例について説明する。
図5(A)〜(C)はそれぞれ第1〜第3の発光部材を模式的に示す概略構成図である。
<第1の発光部材の構成>
図5(A)に光ファイバ55の光出射端に配置した第1の発光部材81Aを示した。第1の発光部材81Aは、光ファイバ55の光出射端に配置される光拡散部83と、光拡散部83の光路前方に配置され緑色蛍光体が分散配置された発光部85と、発光部85の光路前方で発光部85を覆う透光性保護層となるレンズ87とを有して構成されている。この第1の発光部材81Aは、内視鏡挿入部の先端部39に固定される。
【0034】
発光部85は、その光路前方側の光出射面89は、光散乱効果を有する凹凸面で形成されている。光拡散部83は、光ファイバ55の光出射端55aから光路前方に向けて拡径するテーパ側面91を有し、全体が円錐状に形成されている。テーパ側面91は、光出射端55aから光拡散部83に入射された光の一部を全反射して光路前方に向けて出射させることで、光利用効率を向上させている。
【0035】
<第2の発光部材の構成>
図5(B)に第2の発光部材81Bを示した。第2の発光部材81Bは、発光部85の光路後方側の光入射面93が凸状に形成され、発光部85の中央部が、周辺部より厚肉に形成されている。つまり、発光部85の光路に対する垂直断面において、中央部がその周縁の領域となる周辺部より厚肉に形成されている。その他の構成は、上記第1の発光部材81Aと同様である。
【0036】
この構成によれば、発光部85の中央部が特に厚肉に形成されることで、光出射端55aから出射される光の強度が大きい領域に蛍光体をより多く配置でき、発光部85の発光強度を向上できる。即ち、光出射端55aから出射される光の強度分布は、光出射端55aの中心部分が最大となるガウス分布となる。この光強度分布における光強度の高い領域に対応して、発光部85の厚みを大きくすることで、発光に寄与する蛍光体が増加する。これにより、発光部85全体の発光強度が増加する。
【0037】
<第3の発光部材の構成>
図5(C)に第3の発光部材81Cを示した。第3の発光部材81Cは、発光部85の光路後方側の光入射面95が光散乱効果を有する凹凸面で形成されている。その他の構成は、上記第1の発光部材81Aと同様である。
【0038】
この構成によれば、発光部85の光入射面95が光散乱効果を有するため、光出射端55aからの光が光拡散部83から発光部85に入射する際、入射光の強度分布が平均化されて、発光部85全体が均一に発光する。これにより、発光部材81Cからの出射光の強度分布を均等化でき、ムラのない高品位な照明光が得られる。
【0039】
<第4の発光部材の構成>
図6(A)に第4の発光部材81Dを示した。第4の発光部材81Dは、光拡散部83が透光性樹脂材料からなり、この透光性樹脂材料からなる光拡散部83の内部に、透光性樹脂材料とは異なる材料からなる微小バブル97が混在配置されている。微小バブル97は、シリコーン樹脂やアクリル、ポリプロピレン等の樹脂材料からなるバブル、又はこれら樹脂などによる中空球で中が気体、例えば空気による空孔で構成されたものとすることができる。その他の構成は、上記第1の発光部材81Aと同様である。
【0040】
この構成によれば、光出射端55aから光拡散部83に入射された光が微小バブル97によって効率良く光拡散され、均等な光分布となって発光部85に照射される。このため、発光部85における発光強度分布がより均一となる。
【0041】
<第5の発光部材の構成>
図6(B)に第5の発光部材81Eを示した。第5の発光部材81Eは、第4の発光部材81Dの微小バブル97を、光ファイバ55の光出射端55a近傍の配置密度を、他の周辺領域より高めて配置している。
【0042】
この構成によれば、光出射端55aから出射される光の強度が大きい領域に微小バブル97をより多く配置でき、光拡散部83内における光拡散効果をより向上できる。
【0043】
<第6の発光部材の構成>
図6(C)に第6の発光部材81Fを示した。第6の発光部材81Fは、第4、第5の発光部材81D,87Eの微小バブル97を、光ファイバ55の光出射端55aを起点として光路前方に向けて延びる光軸を長軸とする回転楕円体の微小バブル99に形成している。つまり、微小バブル99を光の進行方向に対して長くなるように整列させている。また、発光部85にも前述の微小バブル97を混在配置している。これにより、光入射側に近い光強度分布の高い部分で散乱効率が高められ、光の透過損失を低減できる。
【0044】
回転楕円体の微小バブル99は、真球に近い形で形成後、加熱圧縮して潰して、封止樹脂に混入するような工程で形成できる。
【0045】
この構成によれば、微小バブル99を回転楕円体とすることで、微小バブル99に入射した光が光路後方へ散乱することを減少させ、光利用効率を向上できる。また、発光部85に微小バブル97を配置することで、発光部85内における光拡散効果が向上し、発光部85における発光強度分布がより均一となる。
【0046】
発光部85に微小バブル97を配置することで、蛍光体の密度調整が行え、蛍光体が発生する蛍光の散乱性を向上できる。微小バブル97は、シリコーン樹脂以外にも、石英ガラスのビーズを用いれば発光部85の強度を調整でき、酸化鉄を用いれば温度安定性を向上できる。また、窒化珪素を用いれば熱伝導性が向上し、珪藻土を用いれば発光部85の硬度を調整できる。
【0047】
<第7の発光部材の構成>
図7に第7の発光部材81Gを示した。第7の発光部材81Gは、光ファイバ55の光出射端55aと光拡散部83との間に、蛍光体の励起光となる青色レーザ光を透過し、蛍光体が発する緑色系の蛍光を反射する蛍光反射膜101を設けている。なお、発光部材81Gの光拡散部83、発光部85、レンズ87は、図示例においては第6の発光部材81Fと同一にしているが、他の発光部材81A〜81Eとしてもよい。
【0048】
蛍光反射膜101は、例えば、光ファイバ55の出射端面に、TiO膜を適当な厚さ(例えば、膜厚t=0.84×屈折率×設計波長(550nm))の薄膜を、スパッタ等で形成する。このようにして作製した薄膜の透過率、反射率の一特性例を図8に示した。この特性によれば、450nm付近の反射率に対して、それ以上の可視域の波長範囲の反射率を増加させることができる。
【0049】
この構成によれば、蛍光反射膜101により発光部からの蛍光が光ファイバ55を通じて光源側に戻ることを防止でき、光利用効率を向上できる。
【0050】
<第8の発光部材の構成>
図9に第8の発光部材81Hを示した。第8の発光部材81Hは、前述の発光部材81A〜81Gのレンズ87の代わりに、ガラス、サファイア等の透光性無機材料層103を設けている。また、光拡散部83における光ファイバ55の光出射端55aから発光部85までの外周面(円錐側面)に、青色レーザ光、赤色レーザ光、及び蛍光体が発する蛍光を反射する金属反射膜105を設けている。その他の構成は、第7の発光部材81G(又は発光部材81A〜81F)の構成と同様である。
【0051】
透光性無機材料層103は、図示したように出射光を拡散するレンズ状である他にも、プレート状のカバーであってもよい。この透光性無機材料層103は、発光部85の直上に透光性樹脂層107によって固定される。
【0052】
この構成によれば、透光性無機材料層103を発光部材81Hの光出射面に配置することで、内視鏡洗浄時における耐薬品性、耐摩擦性を高め、発光部材の耐久性をより高めることができる。また、光拡散部83の外周面に金属反射膜105を設けることで、光の利用効率が向上し、出射光強度を高められる。また、金属反射膜105は、光拡散部83の外周面から外光が入り込むことを防止する。
【0053】
<第9の発光部材の構成>
図10に第9の発光部材81Iを示した。第9の発光部材81Iは、前述した光ファイバ55の光出射端55aの形状を変更している他は、前述の発光部材81A〜81Gの構成と同様に構成できる。光ファイバ55は、ファイバ中心のコア部109と、コア部109の外周を覆うクラッド部111を有するシングルモード又はマルチモードの光ファイバであり、光出射端55aが光拡散部83の内部に挿入されている。また、光出射端55aでは、コア部109をクラッド部111から外側に突出させている。
【0054】
この構成によれば、光ファイバ55により導光された光は、光出射端55aの軸方向外側に突出したコア部109から出射され、光拡散部83内に拡散される。前述の発光部材においては、光ファイバ55の光出射端が軸線に垂直な断面で構成されているが、本構成においては、実質的に導光に寄与するコア部109がクラッド部111から所定長さ突出することで、コア部109の露出面積が拡大する。このため、コア部109の発光面積が増大し、光拡散性をより高めることができる。また、突出したコア部109が光拡散部83の内側に配置されることで、導光されてきた光を漏れなく光拡散部83に導入できる。更に、光拡散部83にも蛍光体を分散配置することで、発光部85からの蛍光と相まって、高強度の蛍光が得られる。
【0055】
コア部109をクラッド部111から突出させるには、例えば光ファイバの先端をフッ化水素酸等の溶液に浸漬させ、クラッド部111が表出するように溶解する工法、光ファイバの先端を円錐状に切削する工法等が利用できる。
【0056】
<第10の発光部材の構成>
図11に第10の発光部材81Jを示した。第10の発光部材81Jは、図5に示す第1の発光部材81Aの光拡散部83を板状に形成した光拡散部83Aとし、発光部53とは反対側の面の中央に光ファイバ55の光出射端55aを接続している。また、光拡散部83Aの光ファイバ55の光出射端55aとの接続面を除く背面、及び側面に、青色レーザ光、赤色レーザ光、及び蛍光体が発する蛍光を反射する金属反射膜105を設けている。なお、図示例では光拡散部83Aは前述同様に透光性樹脂材料として示しているが、空気層であってもよい。
【0057】
この構成によれば、発光部材81Jの厚みを小さくでき、よりコンパクトな構成にできる。よって、発光部材81Jの内視鏡への配置自由度が向上して、内視鏡挿入部の小型化に寄与できる。
【0058】
<発光部材の他の構成例>
次に、上記発光部材の他の構成例を説明する。
図12に蛍光体を封止する樹脂材料の特性を示す説明図で、光耐久性と耐湿性との関係を示すグラフである。一般に、耐湿性の良いシリコーン等の樹脂材料(領域A1の材料)は、耐熱性に乏しく蛍光体の封止材料としては不適である。また、光耐久性が低いためにレンズ周縁部等の光路以外の部分にしか適用できず、使用範囲が限られる。
【0059】
そこで、前述した構成のように、赤色蛍光体をなくして発光効率の高い緑色蛍光体を用い、レーザ照射時の温度上昇を抑えることで、フェニルメチルシリコーンを基材する樹脂材料(領域A2の材料)が蛍光体の封止材料として使用可能となる。フェニルメチルシリコーンは、150℃程度の耐熱性を有し、耐湿性と光耐久性をバランス良く備えて密封性が良好な材料である。
【0060】
このような光耐久性を向上した樹脂材料で蛍光体を封止することにより、発光部の光耐久性が向上する。しかし、光耐久性を更に向上させるために領域A3の材料を用いると、耐湿性の低下が無視できなくなる。内視鏡内部では、外部からの水の侵入の他、送気送水等による結露を生じることがあり、耐湿性が求められる。
【0061】
そこで本構成においては、蛍光体を封止する樹脂材料に対しては光耐久性の高い材料で構成すると共に、他の別部材によって発光部全体の耐湿性を向上させる構成にする。つまり、光耐久性と耐湿性の機能を、それぞれ別部材で実現する。
【0062】
図13に本構成の発光部材の構成図を示す。
発光部材121は、光ファイバ55の光出射端に対面して配置され緑色蛍光体が分散配置された発光部85と、発光部85の光路前方に配置された透光性保護層となるカバーガラス123と、発光部85とカバーガラス123の外周を覆い、双方を内周面で支持するスリーブ125とを有して構成されている。このスリーブ125は、内視鏡挿入部の先端部に一端側が固定され、光出射側とは反対の図示しない他端側は、スリーブ125内を水密・気密構造にされている。
【0063】
発光部85は、前述同様の緑色系の蛍光を発光する蛍光体を、図12に示す領域A3に属するメチルシリコン、特にゲル状メチルシリコン等の樹脂内に混在配置した構成である。なお、この樹脂で蛍光体を封止する際は、発光部85の外表面を外力による損傷を受けにくくするため、石英ガラスビーズや珪藻土を樹脂と混合することが好ましい。蛍光体を石英ガラスなどと混合することで、蛍光体の凝集や部分的な沈降による片寄りを防ぎ、均一に発光させることができる。
【0064】
蛍光体を封止する樹脂材料に要求される性状としては、硬さ、屈折率(光取り出し効率)、使用する波長範囲における透明性、温湿度・光に対する耐久性、ガス透過性等がある。これらの特性は上記樹脂を用いることで、いずれも良好な範囲に設定できる。
【0065】
カバーガラス123は、その光出射面123aとスリーブ125の光出射側端面125aとが同一の面上になるように配置されている。そして、カバーガラス123の光出射面123a上において、少なくとも光出射面123aの外周縁からスリーブ125の内周縁までの環状領域を含む範囲に、耐湿性を向上するための耐湿性コーティング層127が形成されている。
【0066】
耐湿性コーティング層127は、耐湿性、撥水性の高いセラミック系コーティング材料からなり、カバーガラス123とスリーブ125との界面から水分が侵入することを確実に防止する。
【0067】
この構成によれば、発光部85の蛍光体を封止する樹脂材料として耐湿性の低い材料を用いても、耐湿性コーティング層127によって水分の侵入が防止され、発光部85をスリーブ125内で水密、気密状態に維持できる。従って、高い水密性、気密性を維持しつつ、フェニルメチルシリコーンを基材する樹脂材料より更に光耐久性の高い樹脂材料を用いて蛍光体を封止し、発光部85全体の光耐久性を向上できる。
【0068】
耐湿性コーティング層127は、図13に示すようにスリーブ125の光出射側端面125aとカバーガラス123の光出射面123aに設ける構成の他にも、図14に示すように、発光部85の外側表面を耐湿性コーティング層127Aで覆う構成としてもよい。この場合には、発光部85に対して、より確実な防湿効果が得られる。
【0069】
また、図15に示すように、スリーブ125の内周面とカバーガラス123の外周面との隙間に、耐湿性コーティング層127Bを形成する構成としてもよい。この場合には、水分の通路となるカバーガラス123の外周面全体が耐湿性コーティング層127Bで封止されているので、水分の侵入をより確実に防止できる。
【0070】
また、耐湿性コーティング層127は、上記のような照明窓のみならず、観察画像を得るための観察窓に対しても適用できる。その場合、良好な撥水性により、観察画像に液適による影響が生じることを防止できる。
【0071】
上記のコーティング層としては、アルコキシシランと混合物のコーティング層、より詳細には、アルコキシ金属塩の加水分解生成物と、金属微粒子又は金属酸化微粒子の分散物を含む層で構成される(例えば特開平10-279885を参照)。
【0072】
アルコキシ金属塩によるコーティング剤は、アルコール性の加水分解・縮重合型コーティング剤で、疎水性・遮蔽性のあるガラス質の層を形成する。このコーティング層は、高硬度でしかも、耐熱性、撥水性、耐薬品性防蝕性に優れた性質を有する。このため、上記のように、コーティング膜を設けることで、耐湿性(密封性)が高められ、水分の侵入が防止される。また、コーティング層のベーキング処理時においても、銀反射膜に影響を及ぼすような不適正ガスの発生もない。
【0073】
上記アルコキシシランとしては、例えば以下の材料が挙げられる。テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランの縮合体(例えばメチルシリケート51)、テトラエトキシシランの縮合体(例えばメチルシリケート40)、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン。
【0074】
アルコキシキ金属塩を用いたコーティング層の材料としては、下記の材料を用いることができ、それぞれ特有の効果が得られる。
(A)アルコキシ金属塩と混合物(無機)
(1)SiO単独・・・艶が有り、高硬度であり、撥水性、絶縁性、擦れ耐久性に優れる。
(2)SiO+アルミナ(Al)フィラー混合・・・艶が有り、細かく、汚染防止、耐熱(膨張)性、照明光の散乱性に優れる。
(3)SiO+TiO(+アルミナ有り)・・・耐光性が向上し、抗菌性、耐熱性に優れる。
(4)更に、Agを添加・・・脱臭、抗菌、防かび効果があり、赤外線放射(放熱)性、耐蝕性に優れる。
(5)更に、ジルコニア(ZrO)を添加・・・高純度、高硬度にでき、高耐熱性、酸化防止効果がある。
(6)更に、酸化鉄を添加・・・高硬度で赤外線放射(放熱)性に優れる。
(7)CeO・・・紫外線吸収効果があり、例えば紫外線で励起させる場合に、波長変換されずに放射される紫外線を吸収する。
(8)酸化マグネシウム・・・密着性に優れる。
(9)Cu,酸化銅・・・放熱、抗菌、脱臭効果に優れる。
(10)アルミニウム
(11)チタン
(12)珪素、ボロン、窒化ホウ素BN、シアンCN等のセラミック
【0075】
(B)アルコキシ金属塩と混合物(無機と有機)
(1)アクリル・・・下地が荒れている場合に密着性が向上する(しかし、厚く形成すると剥離する)
(2)ブチラール・・・下地が荒れた金属等に好適に適用できる。
(3)フッ素
(4)シリコーン又は変性シリコーン・・・金属、樹脂、ガラスとの密着性が良好となる。
【0076】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0077】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 内視鏡挿入部の先端に設けた照明窓から被検体に向けて照明光を照射する内視鏡用照明装置であって、
青色光を生成する青色半導体光源と、
赤色光を生成する赤色半導体光源と、
前記青色半導体光源からの青色光及び前記赤色半導体光源からの赤色光を導光する導光部材と、
前記照明窓の内側で前記導光部材の光出射端に対面して配置された発光部材と、
を備え、
前記発光部材が、前記赤色光を実質的に吸収せず透過させ、前記青色光の一部を励起光として吸収して緑色系の蛍光を発すると共に残りの一部を透過させる緑色蛍光体を含んで構成され、
前記緑色蛍光体が、前記発光部材内で樹脂材料により封止されている内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、赤色レーザ光で赤色光を生成するため、発光効率が比較的低い赤色発光の蛍光体を用いることなく、高効率で高輝度な照明光を生成できる。また、赤色光の強度を青色光の強度とは独立して制御可能になるため、照明光の色調の制御可能範囲が色空間内で拡大すると共に、より微妙な色調調整が可能となる。そして、樹脂材料により蛍光体を封止することで、内視鏡挿入部の先端に配置する発光部材の構造を大きく変更でき、より均一な強度分布の照明光を高効率で得られる構造にできる。
【0078】
(2) (1)の内視鏡用照明装置であって、
前記導光部材が光ファイバからなる内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、細径な光ファイバにより、レーザ光を内視鏡挿入部を通じて内視鏡挿入部の先端の照明窓まで導光するので、内視鏡挿入部の細径化に寄与できる。
【0079】
(3) (1)又は(2)の内視鏡用照明装置であって、
前記発光部材が、前記導光部材の光出射端に配置される光拡散部と、該光拡散部の光路前方に配置され前記緑色蛍光体が分散配置された発光部と、を有して構成される内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、導光部材からの出射光が光拡散部により分散され、発光部における広い面積に均一に照射される。このため、発光部から均一強度の蛍光が取り出せる。
【0080】
(4) (3)の内視鏡用照明装置であって、
前記発光部の光路前方側が、光散乱効果を有する凹凸面で形成された内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、発光部の光路前方側を凹凸面で形成することで、発光部の光出射面積を増加させると共に出射光の出射方向をランダムにでき、強度ムラの少ない照明光が得られる。
【0081】
(5) (3)又は(4)の内視鏡用照明装置であって、
前記発光部の前記光路に対する垂直断面において、中央部が周辺部より厚肉に形成された内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、導光部材の光出射端からの出射光を、出射光強度の大きい領域に蛍光体をより多く配置できる。このため、発光部の発光強度を向上できる。
【0082】
(6) (3)〜(5)のいずれか一つの内視鏡用照明装置であって、
前記発光部の光路後方側が、光散乱効果を有する凹凸面で形成された内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、導光部材の光出射端からの光が光拡散部から発光部に入射する際、入射光の強度分布が平均化されて、発光部全体を均一に発光させることできる。これにより、発光部材からの出射光の強度分布を均等化でき、ムラのない高品位な照明光が得られる。
【0083】
(7) (3)〜(6)のいずれか一つの内視鏡用照明装置であって、
前記光拡散部が透光性樹脂材料からなり、前記光拡散部の内部に前記透光性樹脂材料とは異なる材料からなる微小バブルが混在配置された内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、導光部材の出射端から光拡散部に入射された光が微小バブルによって反射・屈折され、効率良く光拡散される。このため、均等な光分布となって発光部に照射され、発光部における発光強度分布がより均一となる。
【0084】
(8) (7)の内視鏡用照明装置であって、
前記光拡散部の前記微小バブルが、前記導光部材の光出射端の近傍を他の領域より高い密度で配置された内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、導光部材の光出射端から出射される光が、微小バブルによって効率良く拡散され、光拡散部内の光拡散効果がより向上する。
【0085】
(9) (7)又は(8)の内視鏡用照明装置であって、
前記微小バブルが、前記導光部材の光出射端を起点として光路前方に向けて延びる光軸を長軸とする回転楕円体である内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、微小バブルに入射した光が光路後方へ散乱することを減少させ、光利用効率を向上できる。
【0086】
(10) (7)〜(9)のいずれか一つの内視鏡用照明装置であって、
前記発光部に前記微小バブルが混在配置された内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、発光部にも微小バブルを設けることで、発光体内における蛍光体の密度調整が行え、蛍光体が発生する蛍光の散乱性を向上できる。
【0087】
(11) (3)〜(10)のいずれか一つの内視鏡用照明装置であって、
前記導光部材の光出射端と前記光拡散部との間に、前記青色光及び前記赤色光を透過し、前記蛍光体が発する蛍光を反射する蛍光反射膜を設けた内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、蛍光反射膜により発光部からの蛍光が光ファイバを通じて光源側に戻ることを防止でき、光源を常に安定な状態に保つことができる。また、蛍光を無駄なく利用することで、光利用効率を向上できる。
【0088】
(12) (3)〜(11)のいずれか一つの内視鏡用照明装置であって、
前記光拡散部材における前記導光部材の光出射端から前記発光部までの外周面に金属反射膜を設けた内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、金属反射膜により光拡散部材内で反射が繰り返され、光路前方に向かう光成分を増加させることでき、光利用効率を向上できる。また、光拡散部材の外周面から外光が入り込むことを防止できる。
【0089】
(13) (12)の内視鏡用照明装置であって、
前記金属反射膜が銀を含んで構成された内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、高反射率の銀を反射膜にすることで、光損失が抑えられる。
【0090】
(14) (3)〜(13)のいずれか一つの内視鏡用照明装置であって、
前記緑色蛍光体が、前記光拡散部に分散配置され、
前記導光部材の光出射端が、前記光拡散部の内部に挿入された内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、導光部材の光出射端が光拡散部の内部に配置されることで、導光された光を漏れなく光拡散部に照射できる。また、光拡散部にも緑色蛍光体が分散配置されることで、緑色蛍光体の総量を実質的に増量でき、光拡散部と発光部とから、より高強度の蛍光が得られる。
【0091】
(15) (14)の内視鏡用照明装置であって、
前記導光部材の光出射端が、光ファイバのコア部がクラッド部から軸方向外側に突出して形成された内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、軸方向外側に突出したコア部から、導光部材を導光されてきた光が、露出したコア部全体から出射され、光拡散効果が高められる。
【0092】
(16) (3)〜(15)のいずれか一つの内視鏡用照明装置であって、
前記発光部の光路前方に、前記発光部を覆う透光性無機材料層を有する内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、発光部が透光性無機材料層で覆われることで、内視鏡洗浄時における耐薬品性をより高めることができる。
【0093】
(17) (16)の内視鏡用照明装置であって、
前記透光性無機材料層が、ガラス又はサファイアからなる内視鏡用照明装置。
この内視鏡用照明装置によれば、耐摩擦性を高め、発光部材の耐久性を高めることができる。
【0094】
(18) (1)〜(17)のいずれか一つの内視鏡用照明装置を搭載した内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、内視鏡挿入部の先端に配置する発光部材の構造を大きく変更でき、より均一な強度分布の照明光を高効率で得られる。
【0095】
(19) (18)の内視鏡装置であって、
前記内視鏡挿入部の先端に、前記照明窓と該照明窓を収容する開口部とが配置され、
前記照明窓の光出射面上における、前記照明窓の外周縁と前記開口部の内周縁との間の環状領域を少なくとも含む範囲に、耐湿性コーティング層が形成された内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、照明窓の光出射面上における照明窓と開口部との間の環状領域に耐湿性コーティング層が形成されることで、この環状領域からの水分の侵入を確実に防止できる。
【0096】
(20) (18)の内視鏡装置であって、
前記発光部の外側表面が、耐湿性コーティング層で覆われた内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、発光部が耐湿性コーティング層で覆われることで、発光部に対する水分の侵入を確実に防ぐことができる。
【0097】
(21) (18)の内視鏡装置であって、
前記内視鏡挿入部の先端に、前記照明窓と、該照明窓の外周面と接合される内周面を有する開口部とが配置され、
前記照明窓の外周面と前記開口部の内周面との間に耐湿性コーティング層が形成された内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、水分の通路となる照明窓の外周面と開口部の内周面とが耐湿性コーティング層で封止されるため、水分の侵入をより確実に防止できる。
【0098】
(22) (18)〜(21)のいずれか一つの内視鏡装置であって、
前記耐湿性コーティング層が、アルコキシ金属塩の加水分解生成物、金属微粒子又は金属酸化物の微粒子の分散物を含む組成である内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、撥水性の良好な材料により水分の侵入を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0099】
11 内視鏡
19 光源装置
25 挿入部
39 先端部(内視鏡先端部)
43A,43B 照明窓
47 光学部材
55,55A,55B 光ファイバ
55a 光出射端
57A,57B 発光部材
65 青色レーザ光
67 緑色の蛍光
69 赤色レーザ光
81,81A,81B,81C,81D,81E,81F,81G,81H,81I,81J 発光部材
83,83A 光拡散部
85 発光部
87 レンズ
89 光出射面
91 テーパ側面
93 光入射面
95 光入射面
97 微小バブル
99 微小バブル
100 内視鏡装置
101 蛍光反射膜
103 無機ガラス
105 金属反射膜
107 透光性樹脂層
109 コア部
111 クラッド部
121 発光部材
123 カバーガラス
125 スリーブ
125a 光出射側端面
127,127A,127B 耐湿性コーティング層
LD1 青色レーザ光源
LD2 赤色レーザ光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡挿入部の先端に設けた照明窓から被検体に向けて照明光を照射する内視鏡用照明装置であって、
青色光を生成する青色半導体光源と、
赤色光を生成する赤色半導体光源と、
前記青色半導体光源からの青色光及び前記赤色半導体光源からの赤色光を導光する導光部材と、
前記照明窓の内側で前記導光部材の光出射端に対面して配置された発光部材と、
を備え、
前記発光部材が、前記赤色光を実質的に吸収せず透過させ、前記青色光の一部を励起光として吸収して緑色系の蛍光を発すると共に残りの一部を透過させる緑色蛍光体を含んで構成され、
前記緑色蛍光体が、前記発光部材内で樹脂材料により封止されている内視鏡用照明装置。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡用照明装置であって、
前記導光部材が光ファイバからなる内視鏡用照明装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の内視鏡用照明装置であって、
前記発光部材が、前記導光部材の光出射端に配置される光拡散部と、該光拡散部の光路前方に配置され前記緑色蛍光体が分散配置された発光部と、を有して構成される内視鏡用照明装置。
【請求項4】
請求項3記載の内視鏡用照明装置であって、
前記発光部の光路前方側が、光散乱効果を有する凹凸面で形成された内視鏡用照明装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の内視鏡用照明装置であって、
前記発光部の前記光路に対する垂直断面において、中央部が周辺部より厚肉に形成された内視鏡用照明装置。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のいずれか一項記載の内視鏡用照明装置であって、
前記発光部の光路後方側が、光散乱効果を有する凹凸面で形成された内視鏡用照明装置。
【請求項7】
請求項3〜請求項6のいずれか一項記載の内視鏡用照明装置であって、
前記光拡散部が透光性樹脂材料からなり、前記光拡散部の内部に前記透光性樹脂材料とは異なる材料の微小バブルが混在配置された内視鏡用照明装置。
【請求項8】
請求項7記載の内視鏡用照明装置であって、
前記光拡散部の前記微小バブルが、前記導光部材の光出射端の近傍を他の領域より高い密度で配置された内視鏡用照明装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載の内視鏡用照明装置であって、
前記微小バブルが、前記導光部材の光出射端を起点として光路前方に向けて延びる光軸を長軸とする回転楕円体である内視鏡用照明装置。
【請求項10】
請求項7〜請求項9のいずれか一項記載の内視鏡用照明装置であって、
前記発光部に前記微小バブルが混在配置された内視鏡用照明装置。
【請求項11】
請求項3〜請求項10のいずれか一項記載の内視鏡用照明装置であって、
前記導光部材の光出射端と前記光拡散部との間に、前記青色光及び前記赤色光を透過し、前記蛍光体が発する蛍光を反射する蛍光反射膜を設けた内視鏡用照明装置。
【請求項12】
請求項3〜請求項11のいずれか一項記載の内視鏡用照明装置であって、
前記光拡散部材における前記導光部材の光出射端から前記発光部までの外周面に金属反射膜を設けた内視鏡用照明装置。
【請求項13】
請求項12記載の内視鏡用照明装置であって、
前記金属反射膜が銀を含んで構成された内視鏡用照明装置。
【請求項14】
請求項3〜請求項13のいずれか一項記載の内視鏡用照明装置であって、
前記緑色蛍光体が、前記光拡散部に分散配置され、
前記導光部材の光出射端が、前記光拡散部の内部に挿入された内視鏡用照明装置。
【請求項15】
請求項14の内視鏡用照明装置であって、
前記導光部材の光出射端が、光ファイバのコア部がクラッド部から外側に突出して形成された内視鏡用照明装置。
【請求項16】
請求項3〜請求項15のいずれか一項記載の内視鏡用照明装置であって、
前記発光部の光路前方に、前記発光部を覆う透光性無機材料層を有する内視鏡用照明装置。
【請求項17】
請求項16記載の内視鏡用照明装置であって、
前記透光性無機材料層が、ガラス又はサファイアからなる内視鏡用照明装置。
【請求項18】
請求項1〜請求項17のいずれか一項記載の内視鏡用照明装置を搭載した内視鏡装置。
【請求項19】
請求項18記載の内視鏡装置であって、
前記内視鏡挿入部の先端に、前記照明窓と該照明窓を収容する開口部とが配置され、
前記照明窓の光出射面上における、前記照明窓の外周縁と前記開口部の内周縁との間の環状領域を少なくとも含む範囲に、耐湿性コーティング層が形成された内視鏡装置。
【請求項20】
請求項18記載の内視鏡装置であって、
前記発光部の外側表面が、耐湿性コーティング層で覆われた内視鏡装置。
【請求項21】
請求項18記載の内視鏡装置であって、
前記内視鏡挿入部の先端に、前記照明窓と、該照明窓の外周面と接合される内周面を有する開口部とが配置され、
前記照明窓の外周面と前記開口部の内周面との間に耐湿性コーティング層が形成された内視鏡装置。
【請求項22】
請求項18〜請求項21のいずれか一項記載の内視鏡装置であって、
前記耐湿性コーティング層が、アルコキシ金属塩の加水分解生成物、金属微粒子又は金属酸化物の微粒子の分散物を含む組成である内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−90674(P2013−90674A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233204(P2011−233204)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】