説明

内視鏡装置

【課題】 生体内の観察下において、観察窓の汚れ落とし機能を適切な状態に駆動制御して、振動子の振動効率の低下、振動子の早期劣化、振動子による他の内蔵物への熱的影響および消費電力の増加を抑制する内視鏡装置の提供。
【解決手段】 内視鏡装置1は、内視鏡2の挿入部11の先端に撮像モジュール34に対向して設けられた観察窓32と、観察窓32の内表面に貼着された超音波振動子37と、超音波振動子37で発生した超音波振動fを観察窓32の外表面に伝播する表面弾性波Φに変換する回折格子40と、観察窓32と観察対象物との相対距離を検知する検出手段38と、超音波振動子37の駆動停止を操作する操作手段13と、超音波振動子37を駆動させる指示信号が入力されているときに、観察窓32と観察対象物との相対距離に応じて超音波振動子37を駆動制御する制御手段52と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察窓表面に付着する汚れを容易に除去する内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年低侵襲医療を目的として内視鏡を用いた外科手術が普及している。このような内視鏡下の手術においては、血液、脂などの汚れ飛散が起こり易く、それらが、内視鏡の観察窓に付着することによって、視野が妨げられることが課題となっている。
【0003】
この課題に対する対策としては、例えば、特許文献1に開示された内視鏡装置の技術が知られている。この特許文献1には、内視鏡装置の観察窓に付着した汚れを、超音波振動またはそれを回折格子によって変換した表面弾性波によって、取り除く方法が提案されている。
【0004】
この特許文献1には、観察窓上に形成された偏向部と、それと対向する位置に設けられた超音波振動子を用いて、観察窓の表面近傍に超音波振動を伝播させ、観察窓に付着した汚れを除去する内視鏡装置の技術が開示されている。具体的に従来の内視鏡装置は、観察窓となるガラス板の外表面に偏向部として断面形状が矩形状の回折格子形状の溝が形成されており、この回折格子形状の溝の形成面(外表面)からガラス板の圧電振動子の貼着面(内表面)に向けて溝を投影した時に、圧電振動子の少なくとも一部の表面が溝の投影領域内に位置している。
【0005】
そして、ガラス板には、圧電振動子により発生した超音波振動が回折格子形状の溝により回折(偏向)されて、少なくとも一部がガラス板の前述の中心方向、つまり、撮像ユニットの観察視野領域と対向する部分の中心方向に効率的に伝播するようになり、効率よく、ガラス板上の汚れを除去することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−254571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の内視鏡装置は、振動子が駆動すると観察窓表面へ超音波振動が励振されるとともに、振動子が駆動により発熱して温度が上昇してしまう。このように高温化した振動子は、振動効率が低下するばかりか、早期劣化や近接する他の内蔵物へ熱影響を与えてしまう可能性がある。
【0008】
しかしながら、従来の内視鏡装置では、そのような対策が取られていない。さらに、内視鏡装置による生体内の観察下において不必要な状態での振動子の駆動は、電力を無駄に消費してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、生体内の観察下において、観察窓の汚れ落とし機能を適切な状態に駆動制御して、振動子の振動効率の低下、振動子の早期劣化、振動子による他の内蔵物への熱的影響および消費電力の増加を抑制する内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における一態様の内視鏡装置は、内視鏡の挿入部の先端に撮像モジュールに対向して設けられた観察窓と、前記観察窓の内表面に貼着された超音波振動子と、前記観察窓に設けられ、前記超音波振動子で発生した超音波振動を前記観察窓の外表面に伝播する表面弾性波に変換する回折格子と、前記観察窓と対向する観察対象物との相対距離を検知する検出手段と、前記超音波振動子の駆動停止を操作する操作手段と、前記操作手段により、前記超音波振動子を駆動させる指示信号が入力されているときに、前記観察窓と前記観察対象物との相対距離に応じて前記超音波振動子を駆動制御する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生体内の観察下において、観察窓の汚れ落とし機能を適切な状態に駆動制御して、振動子の振動効率の低下、振動子の早期劣化、振動子による他の内蔵物への熱的影響および消費電力の増加を抑制する内視鏡装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一態様に係る内視鏡システムの全体構成図
【図2】同、内視鏡システムの内部構成を主に示すブロック図
【図3】同、硬性内視鏡の先端部分の構成を示す断面図
【図4】同、図3のIV−IV線断面図
【図5】同、送水シースの先端部分の構成を示す断面図
【図6】同、図5の矢視VI方向の送水シースの構成を示す平面図
【図7】同、硬性内視鏡の挿入部が送水シースに挿通配置された状態を示す先端部分の斜視図
【図8】同、硬性内視鏡の先端部分の構成を示す部分断面図
【図9】同、制御部が汚れ落とし機能を実行するときのフローチャート
【図10】同、第1の変形例の検出装置の構成を示す硬性内視鏡の先端部分の部分断面図
【図11】同、図10のXI−XI線断面図
【図12】同、第2の変形例の検出装置の構成を示す硬性内視鏡の先端部分の部分断面図
【図13】同、図12のXIII−XIII線断面図
【図14】同、図12の検出装置の検出原理を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明である内視鏡装置について説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
先ず、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、例えば、腹腔鏡下外科手術を行う硬性内視鏡を例示する。また、本発明は、硬性内視鏡に限らず、生体管腔内に挿通する各種内視鏡に適用可能な構成である。
【0015】
また、図1から図14は本発明の一態様の実施の形態に係り、図1は内視鏡システムの全体構成図、図2は内視鏡システムの内部構成を主に示すブロック図、図3は硬性内視鏡の先端部分の構成を示す断面図、図4は図3のIV−IV線断面図、図5は送水シースの先端部分の構成を示す断面図、図6は図5の矢視VI方向の送水シースの構成を示す平面図、図7は硬性内視鏡の挿入部が送水シースに挿通配置された状態を示す先端部分の斜視図、図8は硬性内視鏡の先端部分の構成を示す部分断面図、図9は制御部が汚れ落とし機能を実行するときのフローチャート、図10は第1の変形例の検出装置の構成を示す硬性内視鏡の先端部分の部分断面図、図11は図10のXI−XI線断面図、図12は第2の変形例の検出装置の構成を示す硬性内視鏡の先端部分の部分断面図、図13は図12のXIII−XIII線断面図、図14は図12の検出装置の検出原理を説明するための図である。
【0016】
図1および図2に示すように、本実施の形態の内視鏡装置である内視鏡システム1は、硬性内視鏡(以下、単に内視鏡という)2と、この内視鏡2の挿入部11が内部に挿通配置される洗浄液供給手段を構成する送水シース3と、カメラコントロールユニット(CCU)5と、光源装置4と、モニタ(装置)6と、によって、主に構成されている。なお、CCU5、光源装置4およびモニタ6は、体外装置を構成している。
【0017】
内視鏡2は、硬質な挿入部11に連設された操作部12と、この操作部12に設けられた操作手段であるスイッチ類13と、操作部12から延出する複合ケーブルであるユニバーサルケーブル14と、このユニバーサルケーブル14の延出端に配設された光源コネクタ15と、この光源コネクタ15の側部から延出する電気ケーブル16と、この電気ケーブル16の延出端に配設された電気コネクタ17と、を有して構成されている。なお、光源コネクタ15は、光源装置4に着脱自在に接続される。また、電気コネクタ17は、CCU5に着脱自在に接続されている。
【0018】
CCU5は、光源装置4およびモニタ6に電気的に接続されている。このCCU5は、内視鏡2が撮像した画像データを映像信号化して、モニタ6に表示させる。さらに、CCU5は、内視鏡2の操作部12に配設されたスイッチ類13の操作信号が入力され、これら信号に基づいて、光源装置4を制御したり、生理的食塩水などの洗浄水が貯留された送水装置である送水タンク24にCCU5からエアーを送り、この送水タンク24内の洗浄水を送水シース3に送液制御したりするための制御手段である制御装置を構成している。なお、送水タンク24は、CCU5に着脱自在な送気コネクタ26が端部に設けられた送気チューブ25が接続されている。
【0019】
次に、内視鏡システム1の主に内部構成について、図2に基づいて、以下に説明する。
CCU5は、各回路および各ユニットへ電源供給するための電源51と、各処理を行う処理回路(CPU)を備えた制御部52と、制御部52からの制御信号を受けて、電源51や回路などとの接続を切替えるスイッチ回路53と、処理アルゴリズムなどを格納するメモリ54と、超音波振動子の圧電振動子37へ駆動信号を出力する電源供給系である駆動信号供給系55と、挿入部11の先端部分に配置される撮像ユニット34にクロック信号、制御信号などを送るタイミング発生回路56と、撮像ユニット34から画像信号が入力され、画像処理を行い、モニタ6へ画像処理を受けた画像信号を出力する画像処理回路57と、を備えている。
【0020】
なお、駆動信号供給系55は、基準信号を生成する信号発生回路58と、この信号発生回路58からの信号を挿入部11の先端部分に配置される圧電振動子37の駆動に必要な電力量を有する駆動信号へ増幅する増幅回路59と、を備えている。この駆動信号供給系55の信号発生回路58および増幅回路59は、それらの状態が検出回路60によってモニタされている。また、駆動信号供給系55は、制御部52により制御信号が入力され、信号発生回路58および増幅回路59が制御される。検出回路60は、信号発生回路58および増幅回路59のモニタ結果を検出信号として、制御部52に出力する。
【0021】
操作部12は、送水と共に表面弾性波Φ(図8参照)の発生/停止の指示を与えるスイッチ類13の操作に基づき入力信号が入力され、操作信号を制御部52へ出力する操作回路61を備えている。なお、CCU5は、ここでは不図示のポンプ制御回路と、コンプレッサであるポンプと、を有している。
【0022】
光源装置4は、ハロゲンランプなどの光源と、この光源を駆動する光源制御回路と、を有して構成されている(いずれも不図示)。なお、光源制御回路は、CCU5の制御部52と電気的に接続されて、この制御部52により制御される。
【0023】
次に、内視鏡2の挿入部11の先端部分の構成について、図2から図4に基づいて、以下に説明する。
内視鏡2の挿入部11は、図3から図4に示すように、挿入部外装を構成する金属製の管状部材31の先端に、観察窓であるガラス板の略円盤状の透明部材32が接着剤を介して接合されている。
【0024】
管状部材31の内部には、撮像用光学系を含む撮像モジュールである上述した撮像ユニット34と、ここでは2本の照明用のライトガイド33が配置されている。撮像ユニット34の内部には、詳細には図示しないが、結像用光学系、固体撮像素子およびそのドライバチップが組み込まれており、通信ケーブル35が根元方向へ引き出されている。
【0025】
また、透明部材32の内表面(裏面)には、観察視野を妨げない位置、つまり対向配置された撮像ユニット34の外方(ここでは外周一部から所定距離だけ離間した方向)の一領域側に、例えば、PZTからなる矩形状の超音波振動子である圧電振動子37および物体との距離を検知するための、ここでは近接センサである検出装置38が貼着されている。
【0026】
圧電振動子37には、配線36が接続され、電気的に駆動されるようになっている。つまり、圧電振動子37には、加振のための電圧を供給する配線36が内視鏡2の根元方向に引き出されている。また、圧電振動子37の透明部材32への固定は、接着剤による固定に限定することなく、半田などを用いてもよい。さらに、管状部材31と透明部材32とを、ビス留め固定しても良い。この圧電振動子37は、その共振周波数または共振周波数近傍で駆動され、超音波振動fを透明部材32内に発生させる(図8参照)。
【0027】
検出手段である検出装置38は、近接センサである。また、内視鏡システム1におけるCCU5内の制御部5には、検出装置38と電気的に接続される図示しない検出回路基板が設けられるものである。この近接センサである検出装置38には、駆動電源、検出信号などを伝送する配線39が内視鏡2の根元方向に引き出されている。この検出装置38は、内視鏡2がCCU5と電気的に接続されることで、CCU5の制御部52の検出回路基板に検出信号を出力する。なお、ここでも検出装置38の透明部材32への固定は、接着剤による固定に限定することなく、半田などを用いてもよい。
【0028】
透明部材32は、図3(図8)に示すように、内表面(裏面)に貼着された圧電振動子37に対向した外表面の位置に、超音波振動fを回折して表面弾性波Φに変換(偏向)する偏向部の回折格子40が設けられている。ここでの回折格子40は、透明部材32の外表面に形成された断面矩形状の複数の凹凸、ここでは5つの溝部40aである(図8参照)。これら溝部40aは、透明部材32の外表面に等間隔で並列形成され、それぞれが平行な直線凹部状の溝である。
【0029】
上述の圧電振動子37から発生された超音波振動fは、主として圧電振動子37の貼着面(透明部材32の内表面)に垂直な方向に伝播し、圧電振動子37に対向した透明部材32の回折格子40に入射する。この回折格子40に入射した超音波振動fは、回折格子40により透明部材32の外表面を伝播する表面弾性波Φに変換(偏向)される(図8参照)。
【0030】
また、内視鏡2の構成部品は、管状部材31と、接合された透明部材32によって封止されており、高圧蒸気による滅菌処理に耐え得る構造となっている。
さらに、本実施形態においては、透明部材32の撮像ユニット34の撮像光学系と対向する内表面は平面状としているが、撮像光学系に対向する面の一部が凸レンズ状もしくは凹レンズ形状として、撮像光学系の一部を構成しても良い。
【0031】
また、本実施の形態のライトガイド33は、ユニバーサルケーブル14へ延設され、ライトガイド33が光源コネクタ15で終端されている。そして、通信ケーブル35および配線36が電気ケーブル16を介して、電気コネクタ17に接続されている。
【0032】
つまり、内視鏡2は、ユニバーサルケーブル14および電気ケーブル16を介して、ライトガイド33が光源制御回路を含む光源装置4の光源に、撮像ユニット34から引き出された通信ケーブル35がCCU5の画像処理回路57に、圧電振動子37から引き出された配線36がCCU5の加振手段を構成する駆動信号供給系55に、夫々接続される構成となっている。
【0033】
次に、送水シース3について図1、図5および図6に基づいて、以下に説明する。
送水シース3は、先端部材を備えた被覆チューブ21と、この被覆チューブ21の基端に連設された接続部22と、この接続部22の側部から延出する送水チューブ23と、を有して構成されている。なお、送水チューブ23の延出端は、送水タンク24に接続されている。この送水タンク24には、CCU5の送気コネクタ26に一端が接続された送気チューブ25の他端が接続されている。
【0034】
送水シース3の被覆チューブ21は、チューブ本体41と、このチューブ本体41の先端に嵌着された略円筒形状の先端部材42と、を有して構成されている。チューブ本体41の肉厚部分の一部には、送水用の断面円形状の送水路43が1つ形成されている。この送水路43は、接続部22まで配設され、この接続部22を介して送水チューブ23と連通している。先端部材42は、チューブ本体41の送水路43に対向する位置の開口端面に沿った板体である、ひさし部44を有している。
【0035】
このように構成された送水シース3は、送水路43が送水タンク24と送水チューブ23を介して連通するように接続される。そして、送水タンク24内の洗浄水である生理食塩水などは、ポンプ制御回路によって制御されるポンプからのエアーにより送水タンク24内の圧力が上昇されることで、送水路43中に送液されて挿入部11の先端に設けられた透明部材32の表面へ流れるようになっている。
【0036】
以上に説明した本実施の形態の内視鏡システム1は、図7に示すように、内視鏡2の挿入部11が送水シース3の被覆チューブ21に挿通配置され、例えば、腹腔鏡下外科手術に用いられる。
【0037】
以上に説明した本実施の形態の内視鏡2は、生体内の観察/手術の際に、挿入部11の先端と生体組織との相対距離を近接センサである検出装置38が検出しており、先端部(透明部材32の表面)と生体組織との相対距離が所定の一定値以内になったことを検出したとき、駆動中の汚れ落とし機能および汚れ落とし機能の駆動開始を停止する。このときに、制御部52が実行する一制御例を図9のフローチャートを用いて以下に詳しく説明する。
具体的には、内視鏡システム1の電源が投入され、汚れ落とし機能の駆動スイッチがONされると(ステップS1)、制御部52に駆動制御される検出装置38の測距機能が起動される(ステップS2)。このステップS2の検出装置38の起動により生体組織との距離の計測を行い、その計測距離(測定値信号)が制御部52に入力される。
【0038】
制御部52は、検出装置38の計測距離と撮像ユニット34が備える所定の被写界深度を比較演算して、それらの大小を判定する(ステップS3)。このとき、制御部52は、観察対象物である測定対象物(生体組織)と挿入部11の先端(透明部材32の表面)の距離が、所定の距離である撮像ユニット34の被写界深度より大きい場合、汚れ落とし機能を駆動して(ステップS4)、ステップS7のルーチンに移行する。
【0039】
なお、汚れ落とし機能とは、制御部52が圧電振動子37を設定された所定の強度で駆動させて、圧電振動子37から発生された超音波振動fが回折格子40により表面弾性波Φに変換(偏向)されて透明部材32の外表面を伝播すると共に、透明部材32の表面に送水されて洗浄される機能である。この操作は、上述したように、スイッチ類13の操作で行なわれる。
【0040】
一方、制御部52は、測定対象物と挿入部11の先端との計測距離が、所定の距離である撮像ユニット34の被写界深度より小さければ、汚れ落とし機能をここでは駆動せず、さらに、測定対象物と挿入部11の先端との計測距離が0(ゼロ)、つまり、透明部材32の表面が生体組織に接触しているか否かを判定する(ステップS5)。
【0041】
このとき、制御部52は、測定対象物と挿入部11の先端との計測距離が0(ゼロ)でない場合、圧電振動子37を設定された通常強度よりも低く設定された所定の低強度に駆動制御して(ステップS6)、ステップS7のルーチンに移行する。
【0042】
一方、制御部52は、測定対象物と挿入部11の先端との計測距離が0(ゼロ)となる接触した状態である場合、圧電振動子37を駆動せずに、ステップS7のルーチンに移行する。ステップS7において、制御部52は、スイッチ状態の確認、つまり、スイッチ類13から信号が入力されているか確認する。
【0043】
そして、制御部52は、スイッチ類13から信号が入力された状態の汚れ落とし機能がONとなっている場合、上述のステップS2のルーチンに戻り、ステップS2からステップS8をループする。つまり、制御部52は、スイッチ類13から汚れ落とし機能を駆動する信号が入力されている状態では、ステップS2からステップS8をループする。
【0044】
一方、制御部52は、スイッチ類13から汚れ落とし機能を駆動する信号が非入力のOFFとなっている場合、検出装置38の測距機能をOFFして汚れ落とし機能の駆動を終了する(ステップS9)。
【0045】
以上に説明したように本実施の形態の内視鏡システム1は、汚れ落とし機能がONしているとき、ここでは近接センサである検出装置38により、測定対象物(生体組織)と挿入部11の先端(透明部材32の表面)との距離を計測し、汚れ落とし機能の駆動の判断する制御を行なう。つまり、内視鏡システム1は、スイッチ類13の操作により汚れ落とし機能が駆動指示(ON)されているときに、透明部材32の表面が生体組織に接触すると圧電振動子37が停止するように制御する。
【0046】
さらに、内視鏡システム1は、撮像ユニット34の被写界深度を外れた距離に内視鏡2の透明部材32の表面が生体組織に近接すると、圧電振動子37を通常強度よりも低い所定の強度に駆動制御する。
【0047】
このように本実施の形態の内視鏡システム1は、生体内の観察下において、撮像ユニット34の被写界深度内に生体組織と透明部材との相対距離が含まれていないときに、圧電振動子37が不必要に高温とならないように適切な状態に停止または低強度に駆動制御し、圧電振動子37が不要に高温化しないようにすることで、圧電振動子37の振動効率の低下、早期劣化、この圧電振動子37による他の内蔵物への熱的影響および消費電力の増加を抑制することができる。
【0048】
(第1の変形例)
上述の検出装置38は、図10および図11に示すような静電容量式の近接センサの構成としても良い。
【0049】
本変形例の検出装置38は、観察窓の周囲に配設された円環状の検出電極62と、撮像ユニット34を覆う筒状の遮断電極63と、検出電極62と遮断電極63との間に配設された発振回路64と、を備えている。
【0050】
検出電極62からは、発振回路64と電気的に接続する配線62aが延出し、発振回路64からは通信ケーブル35内に挿通して電気コネクタ17に接続される通信線64aが延出している。また、遮断電極63からも、通信ケーブル35内に挿通して電気コネクタ17に接続される通信線63aが延出している。
【0051】
このような構成の検出装置38は、撮像ユニット34の周囲にセンサの電極と発振回路を設けることにより、挟スペースの挿入部11の先端内に適したものである。なお、この検出装置38の構成は、一例であって、検出電極、遮断電極、発振回路を含む静電容量式の近接センサ一式は、独立して挿入部11の先端に設けられてもよく、この近接センサに接続される回路基板も、CCU5の制御部52だけでなく、挿入部11の先端または操作部12に独立して設けられてもよい。
【0052】
(第2の変形例)
さらに、検出装置38は、図12から図13に示すようなレーザ光により物体との距離を計測するセンサ構成としても良い。
【0053】
具体的には、物体との距離を検知する検出装置(38)のセンサは、レーザ光と撮像ユニット34に設けられた撮像素子34aを用いた距離(変位)センサである。
【0054】
挿入部11の先端には、レーザガイド65の端面であるレーザ発光部65aが透明部材32の背面に対向接触するように設けられている。このレーザガイド65は、ライトガイド33のファイバの一部が利用され、図示しないレーザ光源からレーザ発光部65aへレーザ光を伝達する。なお、光源装置4(図1および図2参照)の光源ボックス内には、レーザガイド65が伝達するレーザ光を発光する、図示しないレーザ光源を備えている。
【0055】
物体との距離検知の原理は、レーザ発光部より照射されたレーザ光が、測定対象物(生体組織)に反射され、撮像ユニット34内の撮像素子34aへ入射する際に、測定対象物との距離によって、レーザ光が入射する位置が異なることで距離を計測することを利用し(図14参照)、予め定められた基準位置をもとに、測定対象物との距離を検知する。このとき、撮像素子34aの一部の画素を利用している。
【0056】
このような検出装置(38)の構成とすれば、挿入部11の先端内に、各種センサを設ける必要がないため、従来と同じ寸法を維持できる。なお、ここでの検出装置38は、挿入部11の先端に設けられた透明部材32の正面にレーザ発光部65aを備えたレーザガイド65がライトガイド33の一部を兼用する構成であるが、これに限定されること無く、ここでは撮像素子34aとしたレーザ受光部が内視鏡2の正面にあればよく、例えば、レーザガイド65をレーザ発光素子としたり、レーザ受光部をレーザ位置検出素子(PSD)としたりしても良い。
【0057】
(第3の変形例)
なお、検出装置(38)は、内視鏡画像取得時の情報を用いた画像処理によるセンサとしても良い。
具体的には、ここでの検出装置(38)である物体との距離を検知するセンサは、一定の距離以内に内視鏡2の透明部材32の表面が生体組織表面へ近づいたとき、撮像ユニット34による測定対象物とのピントが合った状態と比較して、取得した画像のコントラストが低くなることを利用して、透明部材32の表面と生体組織表面とが近づいたことを検知して、駆動中の汚れ落とし機能を駆動制御する。なお、CCU5の制御部52は、ここでも図8を用いて説明したフローチャートに従ってルーチンを実行する。なお、生体から離れたときも、コントラストが低下するが、同時に撮像素子34aに入力される光量も下がることから、内視鏡システム1は、コントラストと光量の低下が同時に発生した場合、汚れ落とし機能の駆動停止動作は行なわないこととする。
【0058】
以上の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0059】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出される得るものである。
【符号の説明】
【0060】
1…内視鏡システム
2…内視鏡
3…送水シース
4…光源装置
5…制御部
6…モニタ
11…挿入部
12…操作部
13…スイッチ類
14…ユニバーサルケーブル
15…光源コネクタ
16…電気ケーブル
17…電気コネクタ
21…被覆チューブ
22…接続部
23…送水チューブ
24…送水タンク
25…送気チューブ
26…送気コネクタ
31…管状部材
32…透明部材
33…ライトガイド
34…撮像ユニット
34a…撮像素子
35…通信ケーブル
36…配線
37…圧電振動子
38…検出装置
39…配線
40…回折格子
40a…溝部
41…チューブ本体
42…先端部材
43…送水路
44…ひさし部
51…電源
52…制御部
53…スイッチ回路
54…メモリ
55…駆動信号供給系
56…タイミング発生回路
57…画像処理回路
58…信号発生回路
59…増幅回路
60…検出回路
61…操作回路
62…検出電極
63…遮断電極
64…発振回路
65…レーザガイド
65a…レーザ発光部
f…超音波振動
Φ…表面弾性波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部の先端に撮像モジュールに対向して設けられた観察窓と、
前記観察窓の内表面に貼着された超音波振動子と、
前記観察窓に設けられ、前記超音波振動子で発生した超音波振動を前記観察窓の外表面に伝播する表面弾性波に変換する回折格子と、
前記観察窓と対向する観察対象物との相対距離を検知する検出手段と、
前記超音波振動子の駆動停止を操作する操作手段と、
前記操作手段により、前記超音波振動子を駆動させる指示信号が入力されているときに、前記観察窓と前記観察対象物との相対距離に応じて前記超音波振動子を駆動制御する制御手段と、
を有することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記観察窓と前記観察対象物との相対距離が前記撮像モジュールの被写界深度から外れたときに、前記超音波振動子の駆動を停止または低強度で駆動するように制御することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記観察窓と前記観察対象物とが接触する相対距離がゼロのとき、前記超音波振動子の駆動を停止するように制御することを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記検出手段は、静電容量式の近接センサであり、
前記近接センサは、電極と発振回路を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記検出手段は、レーザ光を前記撮像手段の撮像素子で検出するレーザ式の距離センサを含み、前記レーザ光の出射部を前記観察窓に対向接触させたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記レーザ光を前記出射部に伝送する伝送路は、前記挿入部に配設された照明光を伝送するライトガイドの一部を用いたことを特徴とする請求項5に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記検出手段は、内視鏡画像取得時の情報を用いた画像処理による距離センサであり、コントラストの差を用いて前記観察窓と前記観察対象物との相対距離を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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