説明

刈払機の接続分離構造

【課題】操作棹途中や操作棹とエンジンとを接続分離自在にした刈払機において、スロットルワイヤを簡易かつ確実に接続分離するスロットルワイヤの接続分離手段を備えた接続分離構造を提供する。
【解決手段】接続分離構造が備えるスロットルワイヤの接続分離手段は、操作部側コネクタ2に設けた操作部側揺動レバー21と、前記操作部側コネクタ2と接続分離するエンジン側コネクタ3に設けたエンジン側揺動レバー31とからなり、操作部側揺動レバー21は、操作部側揺動軸211を挟んで操作部側入力アーム212と操作部側出力アーム213とを有し、操作部側入力アーム212に操作部側ワイヤ22を接続し、エンジン側揺動レバー31は、エンジン側揺動軸311を挟んで操作部側入力アーム312とエンジン側出力アーム313とを有し、エンジン側出力アーム313に操作部側ワイヤ22を接続した刈払機の接続分離構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に回転刃を取り付けた操作棹途中や操作棹とエンジンとの間に備えた刈払機の接続分離構造に関する。
【背景技術】
【0002】
簡易な刈払機は、エンジンを利用者が背負い、動力変位軸を内蔵する操作棹の先端に回転刃を取り付けて、前記操作棹をエンジンにフレキシブルシャフトを介して間接的に接続した構成(いわゆる背負い式刈払機)と、動力変位軸を内蔵する操作棹の先端に回転刃を取り付け、後端にエンジンを直接接続し、前記操作棹を肩掛ベルトにより利用者の肩に吊り下げる構成(いわゆる肩掛け式刈払機)とに大別される。両者は、それぞれ操作棹にループハンドル、ツーグリップハンドル又は両手ハンドルのいずれかを備え、操作棹又は各ハンドルのグリップに操作部としてスロットルレバーが設けられる。利用者は、前記各ハンドルを持って操作棹の上下又は左右の姿勢を調整し、スロットルレバーの操作により回転刃の回転及び停止を制御する。
【0003】
背負い式刈払機は、操作棹及びエンジンに対してフレキシブルシャフトを接続分離する接続分離構造を備えているため、工場からの出荷に際しては前記フレキシブルシャフトを操作棹及びエンジンから接続分離構造でそれぞれ分離し、梱包、保管又は搬送に際して、必要な収納空間を小さくできる。この点、肩掛け式刈払機であっても、例えば特許文献1に見られるように、操作棹とエンジンとの間に、動力伝達軸の接続分離手段を備えた接続分離構造を設けて接続分離自在にすることにより、工場からの出荷に際しては操作棹とエンジンとを前記接続分離構造で分離し、梱包、保管又は搬送に際して、必要な収納空間を小さくできる。このほか、操作棹自体を複数に分割できる接続分離構造を採用することも考えられる。
【0004】
ところで、特許文献1には、スロットルレバーとエンジンとを結ぶスロットルワイヤについて特に記載がない。操作棹とエンジンとを同一梱包とし、両者の配置を一定程度自由にできればよいとすれば、可撓性を有するスロットルワイヤはエンジンに繋げておいても構わない。しかし、接続分離自在とした操作棹とエンジンとは、完全に分離し、別梱包にできる方が好ましい。これから、操作棹とエンジンとを接続分離自在にした場合、スロットルワイヤも操作部側ワイヤとエンジン側ワイヤとに分割し、操作棹とエンジンとの接続に際して操作部側ワイヤとエンジン側ワイヤとを接続するスロットルワイヤの接続分離手段を備えた接続分離構造が必要となる。
【0005】
スロットルワイヤの接続分離手段は、例えば特許文献2に開示されている接続分離手段を特許文献1に適用して構成される。特許文献2では、スロットルワイヤをスロットルレバーに接続分離自在にした構成であるが、スロットルワイヤをエンジン側ワイヤとし、操作部側ワイヤが極限まで短い場合と考えれば、スロットルワイヤの接続分離手段となる。しかし、この場合、スロットルワイヤ(エンジン側ワイヤ)の係合部(索端金具15)をスロットルレバー(操作部側ワイヤ)の係合受部(インナーワイヤ連結部14)に嵌合させ、更にスロットルワイヤほかを覆い隠すケース(キャップ体13)の装着作業が別に必要なことから、単純に特許文献2を特許文献1に適用しても、スロットルワイヤの簡易かつ確実な接続分離作業を実現できない。
【0006】
【特許文献1】特開平11-187738号公報([0014]〜[0018])
【特許文献2】実全昭62-060123号公報(第6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
刈払機の梱包、保管又は搬送に必要な収納空間を小さくする目的から、接続分離自在とした操作棹とエンジンとを別梱包にできるように、両者を完全に分離するには接続分離構造におけるスロットルワイヤの接続分離手段が重要である。ところが、既述したように、特許文献2を特許文献1に適用するだけでは、スロットルワイヤを簡易かつ確実な接続分離ができない。そこで、刈払機の梱包、保管又は搬送に際する操作棹とエンジンとの取扱自由度を高めること、すなわち別梱包を可能にすることを目的とし、操作棹途中や操作棹とエンジンとを接続分離自在にした刈払機において、スロットルワイヤを簡易かつ確実に接続分離するスロットルワイヤの接続分離手段を備えた接続分離構造を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、先端に回転刃を取り付けた操作棹途中や操作棹とエンジンとの間に備えた刈払機の接続分離構造において、接続分離構造が備えるスロットルワイヤの接続分離手段は、操作部側コネクタに設けた操作部側揺動レバーと、前記操作部側コネクタと接続分離するエンジン側コネクタに設けたエンジン側揺動レバーとからなり、操作部側揺動レバーは、操作部側揺動軸を挟んで操作部側入力アームと操作部側出力アームとを有し、操作部側入力アームに操作部側ワイヤを接続し、エンジン側揺動レバーは、エンジン側揺動軸を挟んで操作部側入力アームとエンジン側出力アームとを有し、エンジン側出力アームに操作部側ワイヤを接続してなり、操作部側コネクタ及びエンジン側コネクタを接続した際、揺動する操作部側出力アームがエンジン側入力アームを押すように、操作部側揺動軸を操作部側コネクタに軸着し、またエンジン側揺動軸をエンジン側コネクタに軸着した刈払機の接続分離構造である。
【0009】
本発明である刈払機の接続分離構造は、動力伝達軸の接続分離手段に加えて設けられるスロットルワイヤの接続分離手段に関する。動力伝達軸の接続分離手段は、従来公知の各種手段を用いる(例えば実公昭52-050116号参照)。また、本発明である刈払機の接続分離構造は、リード線の接続分離構造を加えてもよい。前記リード線の接続分離構造は、例えば操作部側コネクタ及びエンジン側コネクタの対面にそれぞれ操作部側接触端子及びエンジン側接触端子を設けて構成し、操作部側コネクタ及びエンジン側コネクタを接続した際、対となる前記操作部側接触端子及びエンジン側接触端子を圧接させる構成を示すことができる。ここで、本発明は、説明の便宜上、接続分離構造や前記接続分離構造を構成する各接続分離手段について、分離した際にスロットルレバーを含む操作部に近い側を「操作部側〜」、エンジンに近い側を「エンジン側〜」と呼んでいる。
【0010】
本発明の接続分離構造におけるスロットルワイヤの接続分離手段は、操作部側ワイヤを引っ張ることにより操作部側揺動レバーを姿勢変化させ、操作部側出力アームと物理的に接触又は近接しているエンジン側入力アームを押してエンジン側揺動レバーを姿勢変化させ、前記エンジン側揺動レバーの姿勢変化によりエンジン側ワイヤを引っ張る。すなわち、操作部側揺動レバー及びエンジン側揺動レバーは、操作部側コネクタ及びエンジン側コネクタを接続した際に操作部側出力アーム及びエンジン側入力アームを物理的に接触又は近接させるだけで、それぞれの初期姿勢(揺動していない姿勢)で係合又は嵌合させていない。このため、操作部側ワイヤとエンジン側ワイヤとの接続に際して対応部位の係合又は嵌合が不十分であるような事態が生ぜず、また前記操作部側ワイヤとエンジン側ワイヤとの分離に際して対応部位の係合又は嵌合が解消されないような事態も生ぜず、スロットルワイヤの簡易かつ確実な接続分離が実現される。
【0011】
ここで、操作部側揺動レバーは、操作部側ワイヤの引っ張りがない状態で、エンジン側揺動レバーを押さないことが必要である。通常、スロットルレバーを復帰させる付勢手段が操作部に備えられているので、前記付勢手段により操作部側ワイヤが押し戻され、操作部側揺動レバーが初期姿勢に復帰する。しかし、操作部側ワイヤを介した付勢手段による操作部側揺動レバーの初期姿勢への復帰は確実でない場合も考えられるため、操作部側揺動レバーは、操作部側コイルバネを操作部側揺動軸に装着し、操作部側コイルバネの一端を操作部側コネクタに固定し、操作部側コイルバネの他端を操作部側入力アーム又は操作部側出力アームに係合して、操作部側ワイヤを引っ張る向きに操作部側揺動レバーを付勢するとよい。
【0012】
また、操作部側揺動レバーの操作部側揺動軸は、どうしても操作部側コネクタの端面から奥まってしまう。そこで、揺動する操作部側出力アームがエンジン側入力アームを押すように、操作部側揺動レバーは、操作部側コネクタを接続したエンジン側コネクタに向けて端部を突出させる操作部側出力アームを有する構成にするとよい。ここで、「操作部側コネクタを接続したエンジン側コネクタに向けて端部を突出させる」とは、例えば操作部側出力アームの端部を屈曲させて鉤状に形成したり、操作部側揺動レバーの初期姿勢にあって操作部側出力アームが操作部側揺動軸からエンジン側コネクタに向けて斜めに張り出す構造を意味する。
【0013】
上述の操作部側揺動レバーについて構成又は構造の特定は、エンジン側揺動レバーについても当てはまる。すなわち、エンジン側揺動レバーは、エンジン側コイルバネをエンジン側揺動軸に装着し、エンジン側コイルバネの一端をエンジン側コネクタに固定し、エンジン側コイルバネの他端をエンジン側入力アーム又はエンジン側出力アームに係合して、エンジン側ワイヤを押し戻す向きにエンジン側揺動レバーを付勢した構成にするとよい。通常、エンジン側ワイヤが接続されるエンジンのスロットルからの引っ張りは強く、エンジン側揺動レバーは前記引っ張りのみによって初期姿勢に復帰しやすいが、より確実な初期姿勢への復帰を図るには前記エンジン側コイルバネを用いる構成が好ましい。
【0014】
また、エンジン側揺動レバーのエンジン側揺動軸もエンジン側コネクタの端面から奥まってしまうので、揺動する操作部側出力アームがエンジン側入力アームを押すように、エンジン側揺動レバーは、エンジン側コネクタを接続した操作部側コネクタに向けて端部を突出させるエンジン側入力アームを有する構成にするとよい。ここで、「エンジン側コネクタを接続した操作部側コネクタに向けて端部を突出させる」とは、上述した操作部側揺動レバーの構造同様、例えばエンジン側入力アームの端部を屈曲させて鉤状に形成したり、エンジン側揺動レバーの初期姿勢にあってエンジン側入力アームがエンジン側揺動軸から操作部側コネクタに向けて斜めに張り出す構造を意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の接続分離構造におけるスロットルワイヤの接続分離手段は、スロットルワイヤを簡易かつ確実に接続分離できる。これは、スロットルワイヤの接続分離を担う操作部側揺動レバーとエンジン側揺動レバーとが、操作部側コネクタ及びエンジン側コネクタを接続した際でも物理的に接触又は近接しているのみで、接続分離のために物理的な係合又は嵌合や解除を必要としないことによる効果である。このように物理的な係合又は嵌合や解除を必要としない本発明におけるスロットルワイヤの接続分離手段は、既に公知の動力伝達軸の接続分離手段やリード線の接続分離手段の各構成を制約することなく組み合せることができる。これにより、動力伝達軸、リード線、そしてスロットルワイヤのすべてを接続分離できる接続分離構造を実現し、操作棹途中や操作棹とエンジンとの間の分割位置や分割数を自由に設定できるようになり、刈払機の梱包、保管又は搬送に際して必要な収納空間をより小さくできる効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明の接続分離構造を適用した刈払機1の全体構造を示す側面図、図2は接続分離構造におけるスロットルワイヤの接続分離手段の一例を表す部分破断平面図、図3は操作部側コネクタ2とエンジン側コネクタ3とを接続した状態にある本例のスロットルワイヤの接続分離手段を表す部分破断平面図、図4は操作部側ワイヤ22が引っ張られた状態にある本例のスロットルワイヤの接続分離手段を表す部分破断平面図、図5は接続分離構造におけるスロットルワイヤの接続分離手段の別例を表す図2相当部分破断平面図、図6は操作部側コネクタ2とエンジン側コネクタ3とを接続した状態における別例のスロットルワイヤの接続分離手段を表す図3相当部分破断平面図、図7は操作部側ワイヤ22が引っ張られた状態における別例のスロットルワイヤの接続分離手段を表す図4相当部分破断平面図である。
【0017】
本例の刈払機1は、図1に見られるように、エンジン13に対する操作棹12の根元に接続分離構造を採用している。操作棹12は、先端に回転刃11を有し、途中にハンドル121及びグリップ122が取り付けられ、前記グリップ122にスロットルレバー123及び緊急停止スイッチ124が設けてある。スロットルレバー123及び緊急停止スイッチ124を有するグリップ122全体が操作部である。本例の接続分離構造は、操作棹12の根元に構成される操作部側コネクタ2とエンジン13のカバー前面に突出するエンジン側コネクタ3とから構成され、エンジン13から回転刃に回転動力を伝達する動力伝達軸の接続分離手段、緊急停止スイッチからエンジン13の制御回路(図示略)へ延びるリード線の接続分離手段、そしてスロットルレバー123とエンジン13のスロットルバルブ(図示略)とを結ぶスロットルワイヤの接続分離手段を備えることになる。
【0018】
操作部側コネクタ2とエンジン側コネクタ3とは、凹端面24と凸端面34とを嵌合させた状態で、凹端面24から突出するロック爪を凸端面34の係合孔に差し込み、更に操作部側コネクタ2上面の上面フック25をエンジン側コネクタ3の上面凹部35に係合させて、密に接続する。エンジン側コネクタ3は、前記ロック爪を半径方向内向きに撓ませる解除レバーを有し、前記解除レバーによりロック爪を撓ませて係合孔との係合を解除させ、上面フック25を持ち上げて上面凹部35との係合を解除させれば、操作部側コネクタ2を分離できる。こうした操作部側コネクタ2とエンジン側コネクタ3との接続分離手段は、その他従来公知の各種手段を用いることができる。
【0019】
動力伝達軸の接続分離手段は、図2に見られるように、操作部側コネクタ2の凹端面24から突出する動力伝達軸接続端部125が内蔵するスプライン筒と、エンジン側コネクタ3の凸端面34から突出する出力軸接続端部131が内蔵するスプライン軸とから構成され、動力伝達軸接続端部125に対して出力軸接続端部131を外嵌させることにより、スプライン筒とスプライン軸とをスプライン嵌合させ、動力伝達軸接続端部125と出力軸接続端部131とを接続する。リード線の接続分離手段は、操作部側コネクタ2の凹端面24とエンジン側コネクタ3の凸端面34との対面位置にそれぞれ設けた操作部側接触端子23とエンジン側接触端子33とから構成され、操作部側コネクタ2とエンジン側コネクタ3との接続により操作部側接触端子23とエンジン側接触端子33とを圧接させ、接続する。これら動力伝達軸の接続分離手段とリード線の接続分離手段は、このほか従来公知の各種手段を用いることができる。
【0020】
スロットルワイヤの接続分離手段は、操作部側コネクタ2内に収められた操作部側揺動レバー21とエンジン側コネクタ3内に収められたエンジン側揺動レバー31とから構成され、操作部側揺動レバー21の操作部側入力アーム212に操作部側ワイヤ22を接続し、エンジン側揺動レバー31のエンジン側出力アーム313にエンジン側ワイヤ32を接続している。操作部側揺動レバー21及びエンジン側揺動レバー31は、操作部側コネクタ2及びエンジン側コネクタ3を接続した際、揺動する操作部側出力アーム213がエンジン側入力アーム312を押す位置関係で、操作部側揺動軸211を操作部側コネクタ2に軸着し、またエンジン側揺動軸311をエンジン側コネクタ3に軸着している。
【0021】
ここで、操作部側レバー21は操作部側コネクタ2内に、エンジン側揺動レバー31はエンジン側コネクタ3内に収められているため、このままでは操作部側出力アーム213端を鉤状に折り曲げて突出させた操作部側アーム凸部214が、エンジン側入力アーム312端を突出させたエンジン側アーム凸部314を押すことができない。そこで、操作部側コネクタ2の凹端面24に操作部側開口27を、そしてエンジン側コネクタ3の凸端面34にエンジン側開口37をそれぞれ設け、操作部側アーム凸部214が前記操作部側開口27からエンジン側開口37を通じてエンジン側コネクタ3内に侵入し、エンジン側アーム凸部314を押すことができるようにしている。この場合、操作部側開口27を操作部側揺動レバー21の厚みで開口していると、操作部開口27は操作部側アーム凸部214を突出させる際のガイド枠としても機能し、前記操作部側アーム凸部214がエンジン側アーム凸部314を確実に押せるようになる。
【0022】
操作部側揺動レバー21は、操作部側コネクタ2に軸着する操作部側揺動軸211を挟んで操作部側入力アーム212と操作部側出力アーム213とが直線状に並ぶ構成で、操作部側入力アーム212端の円筒状の係合受部に操作部側ワイヤ22端の円柱状の係合ブロックを嵌合し、操作部側入力アーム212に操作部側ワイヤ22を接続している。操作部側入力アーム212端の係合受部は、操作部側入力アーム212が通常揺動する範囲外で操作部側ワイヤ22を係合受部上面から差し込む差込溝と、係合ブロックを嵌合させた状態で操作部側揺動レバー21が揺動すると操作部側ワイヤ22が水平面内で移動する案内溝とを設けてあり、操作部側ワイヤ22が操作部側入力アーム212から外れたり、操作部側揺動レバー21の姿勢変化を阻害しないようにしている。本例の操作部側ワイヤ22は、操作部側揺動レバー21が通常揺動する範囲の係合受部の円弧状軌跡に最も近似する接線方向(図2中左斜め上から右斜め下への方向)から操作部側入力アーム212に接続し、操作部側揺動レバー21の姿勢変化が操作部側ワイヤ22の引っ張り力に影響を与えないようにしている。
【0023】
本例の操作部側揺動レバー21は、操作部側出力アーム213から直角に折れ曲がって突出する操作部側アーム凸部214を設けながら、常態として前記操作部側アーム凸部214がエンジン側揺動レバー31を押さない初期姿勢を維持するため、操作部側コイルバネ26を操作部側揺動軸211に装着し、操作部側コイルバネ26の操作部側固定端261を操作部側コネクタ2の壁面に押し当てて位置固定し、操作部側コイルバネ26の操作部側係合端262を操作部側入力アーム212に係合して、操作部側ワイヤ22を引っ張る向きに付勢し、常態としてエンジン側揺動レバー31を押さない初期姿勢を維持させるとよい。操作部側コイルバネ26の操作部側係合端262は、操作部側ワイヤ22を引っ張る向きに操作部側揺動レバー21を付勢できる限り、操作部側出力アーム213に係合させてもよい。
【0024】
エンジン側揺動レバー31は、エンジン側コネクタ3に軸着するエンジン側揺動軸311からエンジン側入力アーム312とエンジン側出力アーム313とを図3中上向きに凸なヘの字に屈曲させた構成で、操作部側揺動レバー21同様、エンジン側出力アーム313端の円筒状の係合受部にエンジン側ワイヤ32端の円柱状の係合ブロックを嵌合し、エンジン側出力アーム313にエンジン側ワイヤ32を接続している。エンジン側出力アーム313端の係合受部は、エンジン側出力アーム313が通常揺動する範囲外でエンジン側ワイヤ32を係合受部上面から差し込む差込溝と、係合ブロックを嵌合させた状態でエンジン側揺動レバー31が揺動するとエンジン側ワイヤ32が水平面内で移動する案内溝とを設けてあり、エンジン側ワイヤ32がエンジン側出力アーム313から外れたり、エンジン側揺動レバー31の姿勢変化を阻害しないようにしている。本例のエンジン側ワイヤ32は、エンジン側揺動レバー21が通常揺動する範囲の係合受部の円弧状軌跡に最も近似する接線方向(図2中右斜め下から右斜め上の方向)からエンジン側出力アーム313に接続し、揺動するエンジン側揺動レバー31がエンジン側ワイヤ32を無理なく引っ張ることができるようにしている。
【0025】
本例のエンジン側揺動レバー31は、エンジン側入力アーム312からエンジン側開口37を囲む板厚相当分だけ突出するエンジン側アーム凸部314を設けているが、上述のように操作部側揺動レバー21を操作部側ワイヤ22を引っ張る向きに付勢して初期姿勢を維持することで前記エンジン側アーム凸部314が押されなくなるほか、エンジン13(図1)のスロットルバルブからの引っ張りが強いため、操作部側揺動レバー21同様に付勢する必要は低い(後掲図5〜図7参照)。しかし、確実に初期姿勢を実現するには、エンジン側コイルバネ36をエンジン側揺動軸311に装着し、エンジン側コイルバネ36のエンジン側固定端361をエンジン側コネクタ3の壁面に押し当てて位置固定し、エンジン側コイルバネ36のエンジン側係合端362をエンジン側出力アーム313に係合して、エンジン側ワイヤ32を押し戻す向きにエンジン側揺動レバー31を付勢するとよい。エンジン側コイルバネ36のエンジン側係合端362は、エンジン側入力アーム312に係合させてもよい。
【0026】
本例のスロットルワイヤの接続分離手段の働きを説明する。まず、凹端面24と凸端面34とを嵌合した操作部側コネクタ2とエンジン側コネクタ3とを接続状態では、既述したように、動力伝達軸接続端部125と出力軸接続端部131を嵌合し、それぞれが有するスプライン筒とスプライン軸とのスプライン嵌合により動力伝達軸の接続を完了し(図2参照)、図3に見られるように、操作部側接触端子23とエンジン側接触端子33とを圧接してリード線の接続を完了する。このとき、スロットルワイヤの接続は、初期姿勢にある操作部側揺動レバー21の操作部側出力アーム213端に設けた操作部側アーム凸部214と、同じく初期姿勢にあるエンジン側揺動レバー31のエンジン側入力アーム312に設けたエンジン側アーム凸部314とが、物理的に係合又は嵌合することなく、近接した位置関係で対向している。
【0027】
上記接続状態からスロットルレバー123(図1参照)を絞って操作部側ワイヤ22を引っ張ると、図4に見られるように、操作部側ワイヤ22が操作部側入力アーム212を引っ張って操作部側揺動レバー21を図4中左回りに揺動させ(実線太矢印参照。以下、同じ)、操作部側出力アーム213端の操作部側アーム凸部214を、操作部側開口27及びエンジン側開口37を通じてエンジン側コネクタ3内に突出させる。そして、エンジン側コネクタ3内に突出させた操作部側アーム凸部214がエンジン側アーム凸部314に接触し、エンジン側入力アーム312を押すことにより、エンジン側揺動レバー31を図3中左回りに揺動させ、エンジン側出力アーム313によりエンジン側ワイヤ32を引っ張る。すなわち、本発明におけるスロットルワイヤの接続分離手段は、操作部側コネクタ2とエンジン側コネクタ3との接続状態では物理的に接続されていないが、操作部側揺動レバー21の姿勢変化をエンジン側揺動レバー31に伝達して姿勢変化させることにより、引っ張られた操作部側ワイヤ22の運動をエンジン側ワイヤ32に伝達する。
【0028】
厳密に言えば、操作部側揺動軸211とエンジン側揺動軸311とが離れているため、操作部側揺動レバー21の姿勢変化に従う操作部側アーム凸部214は、エンジン側揺動レバー31の姿勢変化に従うエンジン側アーム凸部314を、常に一様に押すことは難しく、前記操作部側アーム凸部214及びエンジン側アーム凸部314の接触関係の変化は、スロットルレバー123(図1参照)の操作感覚を損ねる虞もある。そこで、本例は、操作部側アーム凸部214に対して幅広いエンジン側アーム凸部314を設けることにより、エンジン側コネクタ3内に突出される操作部側アーム凸部214がエンジン側入力アーム212の半径方向に変位しても、できる限り一様にエンジン側アーム凸部314を押すことができるようにしている。具体的には、接続状態(図3)では操作部側アーム凸部214がエンジン側アーム凸部314の先端に対向しているが、操作部側ワイヤ22が引っ張られた状態(図4)では操作部側アーム凸部214がエンジン側アーム凸部314の根元付近に対向している。
【0029】
操作部側ワイヤ22が引っ張られた状態からスロットルレバー123(図1参照)を緩めると、前記スロットルレバー123が有する付勢手段により操作部側ワイヤ22を介して引っ張られると共に、操作部側コイルバネ26の働きにより、操作部側揺動レバー21は初期姿勢に復帰する方向(図3中右回り)に揺動する。エンジン側揺動レバー31は、操作部側揺動レバー21と物理的に係合していないため、前記操作部側揺動レバー21の揺動に連動するのではなく、エンジン側アーム凸部314を押す操作部側アーム凸部214が後退する限度で、エンジン13(図1参照)のスロットルバルブが有する付勢手段によりエンジン側ワイヤ32を介して引っ張られると共に、エンジン側コイルバネ36の働きにより、初期姿勢に復帰する方向(図3中右回り)に揺動する。すなわち、一度操作部側ワイヤ22が引っ張られると、操作部側揺動レバー21が完全に初期姿勢に復帰するまで、操作部側アーム凸部214がエンジン側アーム凸部314に接触しており、前記操作部側ワイヤ22の運動が常にエンジン側ワイヤ32に伝達される。エンジン側コイルバネ36は、エンジン側揺動レバー31を確実に初期姿勢に復帰する方向に揺動させ、操作部側アーム凸部214とエンジン側アーム凸部314との接触状態を維持する働きも有する。
【0030】
本発明の接続分離構造におけるスロットルワイヤの接続分離手段は、例えば図5〜図7に見られる別例の構成でもよい。この別例は、図5に見られるように、基本構成を上記例示(図2〜図4参照)と同じにしながら、操作部側揺動レバー21及びエンジン側揺動レバー31の構成及び構造を変更している。具体的には、操作部側揺動レバー21は、操作部側コネクタ2に軸着する操作部側揺動軸211を挟んで操作部側入力アーム212と操作部側出力アーム213とを図5中上向きに凸なヘの字に屈曲させた構成で、操作部側開口27から突出させた操作部側出力アーム213の端部を操作部側アーム凸部214としている。また、エンジン側揺動レバー31は、エンジン側コネクタ3に軸着するエンジン側揺動軸311を挟んでエンジン側入力アーム312とエンジン側出力アーム313とを図5中下向きに凸なLの字に屈曲させた構成で、エンジン側入力アーム312の端部にエンジン側アーム突起315を設けている。このほか、別例は操作部側コイルバネ26を操作部側揺動軸211に装着しているが、エンジン側揺動レバー31の初期姿勢への復帰は、専らエンジン側ワイヤ32の引っ張りに頼ることとし、エンジン側コイルバネを省略している。
【0031】
別例におけるスロットルワイヤの接続分離手段は、操作部側コネクタ2とエンジン側コネクタ3とを接続した状態で、図6に見られるように、操作部側開口27から突出させた操作部側アーム凸部214をエンジン側アーム突起315の図6中左側から押し当てる。そして、操作部側ワイヤ22が引っ張られた状態で、図7に見られるように、操作部側揺動レバー21は図7中左回りに揺動させられて、操作部側アーム凸部214を図7中左から右へと振ることにより、エンジン側アーム突起315が前記操作部側アーム凸部214に押されてエンジン側揺動レバー31を図7中右回りに揺動させる(上記例示と逆方向)。別例は、操作部側揺動レバー21の姿勢変化に従う操作部側アーム凸部214が常にエンジン側アーム突起315を一様に押せるように、操作部側アーム凸部214の側縁をエンジン側アーム突起315の側面に摺接させるようにしている。具体的には、接続状態(図6)は操作部側アーム凸部214の中間付近をエンジン側アーム突起315に当てているが、操作部側ワイヤ22が引っ張られた状態(図7)は操作部側アーム凸部214の先端付近をエンジン側アーム突起315に当てている。
【0032】
操作部側ワイヤ22が引っ張られた状態からスロットルレバー123(図1参照)を緩めると、操作部側ワイヤ22を介したスロットルレバー123の付勢手段と操作部側コイルバネ26とにより、操作部側揺動レバー21は初期姿勢に復帰する方向に揺動する。エンジン側揺動レバー31は、エンジン側アーム突起315を押す操作部側アーム凸部214が後退する限度で、エンジン側ワイヤ32を介したスロットルバルブの付勢手段により、初期姿勢に復帰する方向に揺動する。この別例においても、上記例示(図2〜図4参照)同様、一度操作部側ワイヤ22が引っ張られると、操作部側揺動レバー21が完全に初期姿勢に復帰するまで、操作部側アーム凸部214がエンジン側アーム突起315に接触しており、前記操作部側ワイヤ22の運動が常にエンジン側ワイヤ32に伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の接続分離構造を適用した刈払機の全体構造を示す側面図である。
【図2】接続分離構造におけるスロットルワイヤの接続分離手段の一例を表す部分破断平面図である。
【図3】操作部側コネクタとエンジン側コネクタとを接続した状態にある本例のスロットルワイヤの接続分離手段を表す部分破断平面図である。
【図4】操作部側ワイヤが引っ張られた状態にある本例のスロットルワイヤの接続分離手段を表す部分破断平面図である。
【図5】接続分離構造におけるスロットルワイヤの接続分離手段の別例を表す図2相当部分破断平面図である。
【図6】操作部側コネクタとエンジン側コネクタとを接続した状態における別例のスロットルワイヤの接続分離手段を表す図3相当部分破断平面図である。
【図7】操作部側ワイヤが引っ張られた状態における別例のスロットルワイヤの接続分離手段を表す図4相当部分破断平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 刈払機
11 回転刃
12 操作棹
13 エンジン
2 操作部側コネクタ
21 操作部側揺動レバー
22 操作部側ワイヤ
23 操作部側接触端子
26 操作部側コイルバネ
27 操作部側開口
3 エンジン側コネクタ
31 エンジン側揺動レバー
32 エンジン側ワイヤ
33 エンジン側接触端子
36 エンジン側コイルバネ
37 エンジン側開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に回転刃を取り付けた操作棹途中や操作棹とエンジンとの間に備えた刈払機の接続分離構造において、接続分離構造が備えるスロットルワイヤの接続分離手段は、操作部側コネクタに設けた操作部側揺動レバーと、前記操作部側コネクタと接続分離するエンジン側コネクタに設けたエンジン側揺動レバーとからなり、操作部側揺動レバーは、操作部側揺動軸を挟んで操作部側入力アームと操作部側出力アームとを有し、操作部側入力アームに操作部側ワイヤを接続し、エンジン側揺動レバーは、エンジン側揺動軸を挟んで操作部側入力アームとエンジン側出力アームとを有し、エンジン側出力アームに操作部側ワイヤを接続してなり、操作部側コネクタ及びエンジン側コネクタを接続した際、揺動する操作部側出力アームがエンジン側入力アームを押すように、操作部側揺動軸を操作部側コネクタに軸着し、またエンジン側揺動軸をエンジン側コネクタに軸着したことを特徴とする刈払機の接続分離構造。
【請求項2】
操作部側揺動レバーは、操作部側コイルバネを操作部側揺動軸に装着し、操作部側コイルバネの一端を操作部側コネクタに固定し、操作部側コイルバネの他端を操作部側入力アーム又は操作部側出力アームに係合して、操作部側ワイヤを引っ張る向きに操作部側揺動レバーを付勢した請求項1記載の刈払機の接続分離構造。
【請求項3】
操作部側揺動レバーは、操作部側コネクタを接続したエンジン側コネクタに向けて端部を突出させる操作部側出力アームを有する請求項1又は2いずれか記載の刈払機の接続分離構造。
【請求項4】
エンジン側揺動レバーは、エンジン側コイルバネをエンジン側揺動軸に装着し、エンジン側コイルバネの一端をエンジン側コネクタに固定し、エンジン側コイルバネの他端をエンジン側入力アーム又は操作エンジン側出力アームに係合して、エンジン側ワイヤを押し戻す向きにエンジン側揺動レバーを付勢した請求項1〜3いずれか記載の刈払機の接続分離構造。
【請求項5】
エンジン側揺動レバーは、エンジン側コネクタを接続した操作部側コネクタに向けて端部を突出させるエンジン側入力アームを有する請求項1〜4いずれか記載の刈払機の接続分離構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−82055(P2009−82055A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255174(P2007−255174)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000104065)カーツ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】