説明

制御装置

【課題】コントローラと可搬式操作装置とを完全に無線化するとともに、可搬式操作装置が省電力であって、非常停止や無線通信不具合時にも信頼性の高い非常停止措置を行うことができる制御装置できるようにする。
【解決手段】コントローラ1からは一定周期で同一バイト数のデータを送り、可搬式操作装置2はこれに対してデータの変化が有る時は応答データを送り、コントローラ1が正常受信したことを確認し、以後データの変化がない場合はデータの短い確認データを返信することで、バッテリーの消費を防止する。また、コントローラ1と可搬式操作装置2にはそれぞれカウンタ回路13、16を備え、送受信される同一のデータが一定回数カウントされるとコントローラ1の制御対象を非常停止処理するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FA機器やロボットなどの制御装置において、特に、コントローラと可搬式操作装置(ティーチングボックス)とを、無線通信などでデータを授受する場合の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FA機器やロボットなどの制御装置において、従来、コントローラと可搬式操作装置とを無線通信させる場合は、非常停止信号を可搬式操作装置からコントローラへ送信するための手段が問題となっていた。つまり、この非常停止信号は常時ONのB接点としてコントローラへ送信していたため、このためのケーブルがホットラインとして必要であり、無線化の妨げとなっていた。このことは例えば、特許文献1に記載されている。
また、これら無線通信における可搬式操作装置はバッテリー駆動であって、常にデータをコントローラに送信するとバッテリーの消費電力が大きく、バッテリーが長持ちしなかった。そこで、バッテリーが長持ちするように、可搬式操作装置からのデータを間欠的に送信するよう提案したものが、本発明の出願人による特許文献2である。
【特許文献1】特開2003−200371号公報
【特許文献2】特開平11−73201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1においては、コントローラと可搬式操作装置とのデータの授受を無線化しているが、非常停止信号の送信に関しては安全性を確保するため、有線(ケーブル)を残しており、完全な無線化は実現できていない。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、コントローラと可搬式操作装置とを完全に無線化するとともに、非常停止や無線通信不具合時にも信頼性の高い非常停止措置を行うことができる制御装置を提供することを目的とする。
また、特許文献2における間欠的なデータの送信による省電力化をさらに改良する制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、装置を制御するコントローラと、無線通信によって前記コントローラとの間でデータの授受を行う可搬式操作装置とで構成される制御装置において、
前記コントローラは、前記可搬式操作装置からのデータを受信する第1の受信部と、一定の周期で周期的データを前記可搬式操作装置に送信する第1の送信部と、を備え、
前記可搬式操作装置は、前記コントローラからのデータを受信する前記第2の受信部と、前記周期的データに応答する応答データを前記コントローラに返信するとともに、返信するべき応答データに変化がない場合は、送信するべき応答データよりもデータの長さが短い確認データのみを返信する第2の送信部と、を備えた制御装置とするものである。
請求項2に記載の発明は、装置を制御するコントローラと、無線通信によって前記コントローラとの間でデータの授受を行う可搬式操作装置とで構成される制御装置において、 前記コントローラは、前記可搬式操作装置にデータを送信する第1の送信部と、前記可搬式操作装置からのデータを受信する第1の受信部と、前記第1の送信部からのデータの送信回数をカウントする第1のカウンタ回路と、を備え、前記可搬式操作装置は、前記コントローラにデータを送信する第2の送信部と、前記コントローラからのデータを受信する第2の受信部と、前記コントローラが制御する装置を停止させる非常停止回路と、前記第2の送信部からのデータの送信回数をカウントする第2のカウンタ回路と、を備えた制御装置とするものである。
請求項3に記載の発明は、前記第1のカウンタ回路は、前記第1の送信部を送信可能状態にさせる送信可能化信号をカウントし、前記第1の受信部が受信したデータによってカウントがリセットされる請求項2記載の制御装置とするものである。
請求項4に記載の発明は、前記第1のカウンタ回路は、前記第1の受信部がデータを受信せず、かつ前記送信可能化信号を所定の回数カウントすると、装置を停止する信号を送出する請求項2記載の制御装置とするものである。
請求項5に記載の発明は、前記第2のカウンタ回路は、前記第2の送信部を送信可能な状態にさせる送信可能化信号をカウントし、前記第2の受信部が受信したデータによってカウントがリセットされる請求項2記載の制御装置とするものである。
請求項6に記載の発明は、前記第2のカウンタ回路は、前記第2の受信部がデータを受信せず、かつ前記送信可能化信号を所定の回数カウントすると、カウントを停止するとともに、前記第2の送信部の送信可能化信号を再開させる信号を送出する請求項2記載の制御装置とするものである。
請求項7に記載の発明は、前記非常停止回路は、非常停止ボタンを備え、該非常停止ボタンが押下されると、前記第2の送信部を停止する信号を送出する請求項2記載の制御装置とするものである。
請求項8に記載の発明は、前記第2の送信部は、前記可搬式操作装置に備えられたCPUのウォッチドック信号によっても停止される請求項2記載の制御装置とするものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明によると、バッテリーの消耗を防止することができる制御装置とすることができる。
請求項2から8に記載の発明によると、コントローラと可搬式操作装置とを完全に無線化するとともに、非常停止処置や無線通信不具合時にも信頼性の高い非常停止措置を行うことができる制御装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図2は、本案における制御装置の構成の概要を示している。ここでは、図示しないロボットなどを制御するコントローラ1と可搬式操作装置2(ティーチングボックス)を無線で結合している。可搬式操作装置2には、コントローラが制御する装置(ロボットなど)を非常時に停止させるための非常停止ボタン3があり、この非常停止ボタン3のデータは、通常ビット情報としてコントローラ1に送信される。
まず、コントローラ1と可搬式操作装置2の無線でのデータの授受の方法を説明する。
図3は、本案におけるコントローラと可搬式操作装置のデータの伝送のタイミングを示す図である。図のように、コントローラ1と可搬式操作装置2は、半二重伝送でデータの授受を行う。31はコントローラ1からの周期的データで、32は可搬式操作装置2の応答データを示す。周期的データ31は、一定周期で同一バイト数のデータであって、これが可搬式操作装置2に送られる。周期的データ31には、シーケンス番号SNがついていて、コントローラ1と可搬式操作装置2は、互いにこれを確認することでデータが確実に相手に受け取られたことが解る。例えば、図3のように、コントローラ1がSN6のデータを送ると可搬式操作装置2は、これに1を加算しSN7としてコントローラ1に返す。そしてコントローラ1がこれを受信すると、SN7を可搬式操作装置2に送る。すると、可搬式操作装置2はコントローラ1が正常に受信した事が解る。
しかし本案では、可搬式操作装置側で送るべきデータの変化が無いと、再度データを送らず、コントローラ1に対してデータの短い応答用の確認データ33のみを送り、バッテリーの消耗を防止する。
次に、本案における制御装置の構成について説明する。
図1は、本案における制御装置の構成の詳細を示している。本図では無線でのデータのやりとりに関連する部分のみを記載している。図の左側がコントローラ1を、右側が可搬式操作装置2を示している。コントローラ側の11は第1の送信部、12は第1の受信部、13は第1のカウンタ回路を示す。可搬式操作装置側の14は第2の送信部、15は第2の受信部、16は第2のカウンタ回路、17は非常停止ボタン3の非常停止回路を示す。
また、TXEは送信可能化信号であり、第1および第2の送信部はこの信号によって送信が可能とされ、また同時にこの信号によって第1および第2の受信部が停止される。また、TXDは送信されるべきデータ、つまり図3における周期的データ31、応答データ32および確認データ33である。また、RXDは受信部によって受信された受信データを示している。WDEは、ウォッチドックデータであり、図示しないCPUの異常時に停止されるものである。なお、この図には上記データ類の長さを変える部分は記載されていないが、これはTXD、RXD、TXEを受信、あるいは送信するLSIとCPUのソフトウェア処理に関するものであるため省略している。
次に、以上で構成される本案の制御装置の動作について説明する。
まず、可搬式操作装置2の送受信の動作を説明する。可搬式操作装置2は、コントローラ1からのデータを第2の受信部15にて受信すると、TXE信号を第2の送信部14送出し、第2の送信部14を送信可能な状態(アクティブ)にして、図示しないLSIからのデータを応答データとしてコントローラ1へ送信する。このTXE信号は、AND回路18で、ウォッチドックデータWDEが停止されるか、後述する非常停止回路17の信号が停止されることで停止される。非常停止ボタン3は、コントローラ1が制御する例えばロボットなどを緊急停止させるもので、図示しないサーボドライブの電源を遮断する。サーボドライブは、ロボットなどに設置されるモータを駆動させる。このため、従来は常時ONのB接点信号をケーブルを介して(ホットラインとして)、可搬式操作装置2に取り込んでいた。本案は以上のように、ハードでこれを構成している。非常停止ボタン3が押下されていないと第2のカウンタ回路16のカウンタ19には0Hがロードされているが、非常停止ボタン3が押されると、ボタンは機械的にこの状態を保持し、カウンタ19はカウント動作を開始するとともに、NANDゲート20の出力をLにする。これにより上述のように、第2の送信部14の送信は停止する。
次に、コントローラ1の送受信の動作を説明する。コントローラ1では、TXE信号を第1のカウンタ回路13のカウンタ21でカウントさせ、RXD信号でカウンタ21をリセットする様になっている。即ち、第1の受信部12がデータを受信しないとカウンタ21はカウントアップを続け、第1の送信部11がデータを15回送信しても、可搬式操作装置2から適切な返信が無い場合、カウンタ21はリプルキャリー信号RCを出力し、停止する。このRC信号を非常停止信号とし、コントローラ1は、サーボ電源遮断などの非常停止処理を行う。
一方、これと同様に、可搬式操作装置2では、コントローラ1への応答信号であるTXE信号をカウンタ回路16でカウントする。カウンタ19が15回これをカウントすると、カウンタ19はカウントを停止すると供に、NANDゲート20の出力をHにし、ANDゲート18を介して第2の送信部14の送信を再開する事が出来るようにする。
以上のように、本発明においては、可搬式操作装置2の応答信号をハード的に確認する事で、コントローラ1側は可搬式操作装置2が正常に動作している事を確認する。また、この構成により可搬式操作装置2では、非常停止ボタン23が押された事をデータとして送る事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の制御装置の構成を示す詳細図
【図2】本発明の制御装置の構成を示す概略図
【図3】本発明の制御装置のデータの伝送のタイミングを示す図
【符号の説明】
【0009】
1 コントローラ
2 可搬式操作装置
3 非常停止ボタン
11 第1の送信部
12 第1の受信部
13 第1のカウンタ回路
14 第2の送信部
15 第2の受信部
16 第2のカウンタ回路
17 非常停止回路
31 周期的データ
32 応答データ
33 確認データ
TXE 送信可能化信号
WDE ウォッチドック信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置を制御するコントローラと、無線通信によって前記コントローラとの間でデータの授受を行う可搬式操作装置とで構成される制御装置において、
前記コントローラは、前記可搬式操作装置からのデータを受信する第1の受信部と、一定の周期で周期的データを前記可搬式操作装置に送信する第1の送信部と、を備え、
前記可搬式操作装置は、前記コントローラからのデータを受信する前記第2の受信部と、前記周期的データに応答する応答データを前記コントローラに返信するとともに、返信するべき応答データに変化がない場合は、送信するべき応答データよりもデータの長さが短い確認データのみを返信する第2の送信部と、を備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
装置を制御するコントローラと、無線通信によって前記コントローラとの間でデータの授受を行う可搬式操作装置とで構成される制御装置において、
前記コントローラは、前記可搬式操作装置にデータを送信する第1の送信部と、前記可搬式操作装置からのデータを受信する第1の受信部と、前記第1の送信部からのデータの送信回数をカウントする第1のカウンタ回路と、を備え、
前記可搬式操作装置は、前記コントローラにデータを送信する第2の送信部と、前記コントローラからのデータを受信する第2の受信部と、前記コントローラが制御する装置を停止させる非常停止回路と、前記第2の送信部からのデータの送信回数をカウントする第2のカウンタ回路と、を備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
前記第1のカウンタ回路は、前記第1の送信部を送信可能状態にさせる送信可能化信号をカウントし、前記第1の受信部が受信したデータによってカウントがリセットされることを特徴とする請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1のカウンタ回路は、前記第1の受信部がデータを受信せず、かつ前記送信可能化信号を所定の回数カウントすると、装置を停止する信号を送出することを特徴とする請求項2記載の制御装置。
【請求項5】
前記第2のカウンタ回路は、前記第2の送信部を送信可能な状態にさせる送信可能化信号をカウントし、前記第2の受信部が受信したデータによってカウントがリセットされることを特徴とする請求項2記載の制御装置。
【請求項6】
前記第2のカウンタ回路は、前記第2の受信部がデータを受信せず、かつ前記送信可能化信号を所定の回数カウントすると、カウントを停止するとともに、前記第2の送信部の送信可能化信号を再開させる信号を送出することを特徴とした請求項2記載の制御装置。
【請求項7】
前記非常停止回路は、非常停止ボタンを備え、該非常停止ボタンが押下されると、前記第2の送信部を停止する信号を送出することを特徴とした請求項2記載の制御装置。
【請求項8】
前記第2の送信部は、前記可搬式操作装置に備えられたCPUのウォッチドック信号によっても停止されることを特徴とした請求項2記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−285412(P2006−285412A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101820(P2005−101820)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】