説明

半導体素子の製造方法

【課題】半導体素子を製造する際の実装工程において、多数の半導体素子を精度良く配列し一括して実装する方法を提供する。
【解決手段】エキスパンドテープを所定の大きさまでエキスパンドするエキスパンド工程と、半導体素子チップを仮載置台に載置する載置工程と、液体供給手段と、前記各半導体素子チップと前記仮載置台との間に氷結層を形成する冷凍工程と、前記各半導体素子チップから前記拡大エキスパンドテープを剥離するエキスパンドテープ剥離工程と、氷結層を解凍する解凍工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍手法を利用した半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子は産業のコメとして我々の生活のあらゆる分野で使用されている。とりわけLED素子の進歩は著しく通信機器や情報機器あるいは新世代照明器具等へと応用が拡大している。
この中でLED素子の照明器具への応用では、省電力性や環境保護などの優れた特長で注目を集めているが、本格的な実用化までいくつかの課題が残されている。
そしてその課題とは経済性であり、小形薄型化である。すなわち多くの家庭で使われるためには、まずはLED素子を大量に安く作る製造技術が必要であり、これまでにいくつかの技術が開示されている。
【0003】
例えばサファイヤなどのウエハー上に、有機金属気相成長法などの手法を用い、予め多数のLED素子を形成し、そののちダイシングにより個々のチップに分割し回路基板に個別に実装してワイヤボンドののち全体を樹脂封止する、という製造法が開示されている。(例えば特許文献1参照)。
以下、図8を用いて特許文献1に示す従来の製造法について説明する。
【0004】
図8(a)に示す様に、LED素子ウエハー1にエキスパンドテープ2を貼付し、図8(b)に示す様にLED素子ウエハー1をダイシングにより各半導体素子チップ1Aに分割したのち、図8(c)に示す様にエキスパンドテープ2を引き延ばし、さらに図8(d)の矢印Tに示す様に各半導体素子チップ1Aを集合回路基板7に実装し、図8(e)に示す様に集合回路基板7の各半導体素子チップ1Aを含む上面に樹脂封止材10を形成したのち、図8(f)に示す様に集合基板7と樹脂封止材10とを縦横に細断し、LED素子101を得るものである。
【0005】
また別の技術としては、複数に分割されたLEDチップ1を一まとめにして一度に配列させ、小形薄型化されたモジュールを効率良く製造する技術が開示されている。(例えば特許文献2参照)
【0006】
以下、図9(a)を用いて特許文献2に示す従来の製造法について説明する。
図9(a)に示す様に、透光性を有しフィルム各所で導電性を有する第1のフィルム201およびフィルム表面に複数の電極204が形成された第2のフィルム202の間に、所定の平面パターンをもってLEDチップ200を配列し、さらに第1および第2のフィルム201,202の間にLEDチップ200と中間フィルム203を挟み込み、光半導体モジュール205を効率的に製造するものである。
【0007】
また別の技術としては、LED素子を形成したウエハーにエキスパンドテープを貼付し、ダイシングで個々のLED素子に分割したのちLED素子からエキスパンドテープを剥離する工程において、冷凍を使ってエキスパンドテープの粘着力を弱め、エキスパンドテープの剥離を容易にする技術が開示されている。(例えば特許文献3参照)
【0008】
以下、図9(b)を用いて特許文献3に示す従来の半導体素子の製造法について説明する。
図9(b)に示す様に、エキスパンドテープ305に貼付された半導体チップ302をピックアップコレット301によってエキスパンドテープ305から剥離する際に、半導体チップ302を押し上げる突き上げピン304と、エキスパンドテープ305を冷却装置303によって冷却し、エキスパンドテープ305の粘着力を弱めて半導体チップ302のピックアップを容易にするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2008−521210号公報(第6−7頁、第2−3図)
【特許文献2】特開平11−177147号公報(第6頁、第2図、第13図)
【特許文献3】特開平9−167779号公報(特許請求の範囲、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1に開示された従来の製造法では、半導体素子チップ1Aを拡大エキスパンドテープ2Aから剥離し集合回路基板7に実装する際において半導体素子チップ1Aと集合回路基板7との位置関係を厳密に管理する必要があり、生産の能率は高いとは言い難い。
また特許文献2で開示された従来の製造法では、分割されたLEDチップを一度に配列する上で効率的であるが、一方では各LEDチップ200からエキスパンドテープを剥離するという困難な作業についての工夫はなされておらず、工程の効率化が図られているとはいえない。
【0011】
また特許文献3で開示された従来の製造法では、エキスパンドテープ等の接着力を冷却して弱めるのでエキスパンドテープを剥離する工程は効率化するが、半導体チップのピックアップに従来技術であるコレットを使うので、半導体チップが微小化した場合などでは品質上あるいは作業効率上の課題が生じる。
【0012】
このように従来の製造法では、半導体素子チップからエキスパンドテープを剥離することが困難であったり、微小化した半導体素子チップをエキスパンドテープからピックアップする際にピックアップコレットで半導体素子チップを破壊したり、さらには多数の半導体素子チップの一括実装が困難であるなど、多くの課題を抱えていた。
本発明の目的は上記課題を解決し、半導体素子チップからエキスパンドテープの剥離を容易にし、かつまた多数の半導体素子チップを一括して精度良く実装出来る半導体素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明の半導体素子の製造方法は下記記載の工程を採用する。
【0014】
本発明の半導体素子の製造方法はエキスパンドテープ上に粘着した半導体素子ウエハーを縦横に細断して各半導体素子チップを形成し、エキスパンドテープを所定の大きさまでエキスパンドするエキスパンド工程と、エキスパンドされた拡大エキスパンドテープ上の各半導体素子チップを仮載置台に載置する載置工程と、液体供給手段を設け、液体供給手段によって各半導体素子チップと仮載置台との間に液体を供給する液体供給工程と、仮載置台を冷凍する冷凍手段を設け、冷凍手段によって各半導体素子チップと仮載置台との間の液体を凍結し氷結層を形成する冷凍工程と、冷凍工程によって氷結層を形成したのちに、各半導体素子チップから拡大エキスパンドテープを剥離するエキスパンドテープ剥離工程と、エキスパンドテープ剥離工程によって各半導体素子チップからエキスパンドテープを剥離したのちに、各半導体素子チップと仮載置台との間の氷結層を解凍する解凍工程と、を具備することを特徴とする。
【0015】
すなわち、半導体素子チップは凍結によって仮載置台上に固定されているので拡大エキスパンドテープは半導体素子チップから容易に剥がすことが可能であり、拡大エキスパンドテープの剥離ののち、各半導体素子チップと仮載置台との間の氷結層は解凍されるので、以後の工程に速やかに移ることが出来る。
【0016】
さらに解凍工程は、各半導体素子チップが載置された仮載置台を解凍容器に収納し、解凍容器内の圧力と温湿度とを制御して氷結層を昇華するフリーズドライ法を用いてもよい。
【0017】
すなわち、半導体素子チップと仮載置台との間の氷結層はフリーズドライ法で昇華によって解凍されるため、解凍の過程で半導体素子チップと仮載置台の間に液体は存在せず、従って仮載置台上における各半導体素子チップの間の相対位置は変動しない。
【0018】
さらにフリーズドライ法を用いた解凍工程によって氷結層を昇華したのちに、各半導体素子チップを集合回路基板に整列配置する整列配置工程と、整列配置工程ののちに、各半導体素子チップを集合回路基板に実装する実装工程と、をさらに具備してもよい。
【0019】
すなわち整列配置工程と実装工程によって、各半導体素子チップは相互の相対位置を維持しつつ集合回路基板に実装されるので、多数の半導体素子チップを載置した集合回路基板を一括して製造できる。
【0020】
さらに各半導体素子チップを集合回路基板に実装する実装工程は、フリップチップ実装を用いたものであることが望ましい。
【0021】
すなわちフリップチップ実装によって、各半導体素子チップを実装した集合回路基板を、ひいては最終的な完成品である半導体素子を、小形かつ薄型にすることが出来る。
【0022】
さらに実装工程によって各半導体素子チップを集合回路基板に実装したのちに、集合回路基板上の各半導体全体チップを覆う様に封止樹脂材を形成し、集合回路基板と封止樹脂材とを縦横に細断して個々の半導体素子に分離する分離工程を有することが望ましい。
【0023】
すなわち分離工程によって、各半導体素子が効率よく分離され、大量の半導体素子を一括して製造することが出来る。
【0024】
さらに各半導体素子チップはLED素子チップであることが望ましい。
【0025】
さらに冷凍手段は熱電効果素子を使用したものであることが望ましい。
【0026】
すなわち本発明の製造方法は熱電効果素子を使用しているので小形で使い勝手に優れ、照明装置や表示装置に用いられる小形薄型のLEDの効率的生産が可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、多数の半導体素子チップを一括して精度良く実装出来る半導体素子の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による半導体素子の製造方法の第1の実施形態の工程を示す断面図である。
【図2】本発明による半導体素子の製造方法の第1の実施形態の工程を示す断面図および平面図である。
【図3】本発明による半導体素子の製造方法の第1の実施形態の平面図である。
【図4】本発明による半導体素子の製造方法の第1の実施形態の断面図である。
【図5】本発明による半導体素子の製造方法の第2の実施形態の工程を示す断面図および平面図である。
【図6】本発明による半導体素子の製造方法の第3の実施形態の工程を示す断面図である。
【図7】本発明による半導体素子の製造方法による半導体素子の構造を示す断面図である。
【図8】半導体素子の製造方法の従来例の工程を示す断面図である。
【図9】半導体素子の製造方法の従来例の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の半導体素子の製造方法の概要は、半導体素子の実装工程においてウエハーを細断し形成した半導体素子チップを集合基板に載置する際に、エキスパンドテープで所定の間隔まで引き延ばした各半導体素子チップを、集合回路基板に載置するための治具である仮載置台に載置し、全体を凍結してエキスパンドテープの剥離を容易にし、さらにフリーズドライ法によって半導体素子チップの相対位置がずれない様に解凍したのち、集合回路基板に多数の半導体素子チップを一括して整列配置し実装するものである。
【0030】
以下、図面により本発明の半導体素子の製造方法の実施の形態を詳述する。なお従来例と同じ要素については同じ要素番号を付与する。
(第1の実施形態)
【0031】
[第1の実施形態の全図面説明:図1〜図4]
以下、図1から図4を用いて本発明の半導体素子の製造方法の第1の実施形態を詳述する。
なお第1の実施形態の概要は、凍結による効果を用いて半導体素子からエキスパンドテープの剥離を容易にするものである。
【0032】
図1および図2は本発明の半導体素子の製造方法の第1の実施形態の工程を示す断面図および平面図である。
まず図1(a)に示す様に半導体素子ウエハー1にエキスパンドテープ2を貼付したのち、図1(b)に示す様に半導体素子ウエハー1をダイシングによって半導体素子チップ1Aに細断する。
【0033】
そののち図1(c)のエキスパンド工程に示す様に、各半導体素子チップ1Aの配列上の一方の方向、これをX方向と呼称すると、各半導体素子チップ1AのX方向の間隔が所定間隔Cになる様に、エキスパンドテープ2を引き延ばす。
なお図示されていないがX方向と直角のY方向についても同様に、各半導体素子チップ1Aの間隔が所定間隔Cとなる様に、エキスパンドテープ2を引き延ばす。
【0034】
次に図1(d)に示す様に、拡大エキスパンドテープ2Aによって相互の相対位置が所定間隔Cになる様に引き延ばされた状態の半導体素子チップ1Aを仮載置台3に載置し、図1(d)に示す様に給水手段4を用いて各半導体素子チップ1Aと仮載置台3との間に液体50を供給する。
【0035】
図3(a)および図3(b)は、仮載置台3と給水手段4の形状と構造の一例を示す平面図である。図3(a)に示す様に、仮載置台3は金属や多孔質セラミックを材料とした矩形板であり、給水手段4は純水などの液体50を注入する注水ノズルである。なお仮載置台3と給水手段4の配置構造の一例としては、図3(a)に示す様に各半導体素子チップ1Aを載置した仮載置台3の4面から4個の給水手段4で給水する方式と、図3(b)の様に各半導体素子チップ1Aを載置した仮載置台3の4カ所のコーナーから4個の給水手段4で給水する方式などがあり、仮載置台3や半導体素子チップ1Aの大きさによって最適な方式を選択できる。
また図3(c)に示す様に、給水手段4による液体の節約化や給水の効率化を図るため、仮載置台3にダムDを設けても良い。
【0036】
次に図1(e)に示す様に、冷凍温度がマイナス20〜30℃の冷凍手段5を用いて仮載置台3を冷凍し、図1(f)に示す様に、半導体素子チップ1Aと仮載置台3の間の液体50を凍結し氷結層50Aを形成する。なお、図1(e)には仮載置台3に冷凍手段5を密着させ仮載置台3を冷凍する方法を示したが、この方法以外に半導体素子チップ1Aを載置した仮載置台3全体を冷凍庫に収納する方法でも良い。
【0037】
そして半導体素子チップ1Aと仮載置台3の間の液体50を凍結し氷結層50Aを形成されたのち、図1(g)に示す様に拡大エキスパンドテープ2Aを上方にP0の力で引き上げ、半導体素子チップ1Aから拡大エキスパンドテープ2Aを剥離する。
【0038】
次に図2(h)に示す様に、仮押さえ板15を用いて各半導体素子チップ1Aを仮載置台3に押しつけて固定し、冷凍手段5を撤去し、仮押さえ板15で仮載置台3上の各半導体素子チップ1Aを固定したまま室温に放置すると、各半導体素子チップ1Aと仮載置台3の間の氷結層50Aは解凍され液体50となり、そののち気化される。そして図2(i)に示す様に、各半導体素子チップ1Aは仮載置台3の上に配列される。なお図2(i1)は図2(i)の各半導体素子チップ1Aの仮載置台3上の配列状態を示す平面図である。また図2(i2)は図2(h)に示す仮押さえ板15を使用しなかった場合の、各半導体素子チップ1Aの仮載置台3上の配列状態を示す平面図である。
[第1の実施形態の作用説明:図3]
【0039】
次に図4を用いて本発明の半導体素子の製造方法の作用を説明する。図4は、図1(g)に示した拡大エキスパンドテープ2Aの剥離工程の断面図を拡大したものであり、拡大エキスパンドテープ2Aの剥離強度P0と、拡大エキスパンドテープ2Aと半導体素子チップ1A間の接着強度P1と、半導体素子チップ1Aと仮載置台3間の凍結による結合強度P2とが、矢印によって模式的に表されている。そして上記の接着強度P1や結合強度P2について、さらに詳細に説明すると以下の様になる。
【0040】
すなわち、約マイナス20〜30℃の冷凍下で拡大エキスパンドテープ2Aと半導体素子チップ1Aとの接着強度P1は約6gr/mmであり、一方氷結層50Aを介して結合状態にある半導体素子チップ1Aと仮載置台3との結合強度P2は、氷結層50Aの厚みが約0.1mmの場合では、約25gr/mmであることが確認されている。
すなわち、
P1≒6gr/mm,P2≒25gr/mm
よってP1<P2であるから、図4に示す様に、拡大エキスパンドテープ2Aを6gr/mmを超える力、すなわち、
P0>6gr/mm
で剥離すれば、拡大エキスパンドテープ2Aを半導体素子チップ1Aから剥離することが可能である。
【0041】
[第1の実施形態の効果]
以上の様に本発明の半導体素子の製造方法によれば、半導体素子チップ1Aに貼付した拡大エキスパンドテープ2Aを剥離する作業が極めて容易にかつ短時間で可能になる。すなわち図4に示す様に、拡大エキスパンドテープ2Aと半導体素子チップ1A間の接着強度P1は半導体素子チップ1Aと仮載置台3間の結合強度P2の1/4程度なので、拡大エキスパンドテープ2Aは接着強度P1を僅かに超える剥離力P0で剥離でき、しかも半導体素子チップ1Aと仮載置台3間の結合強度P2は、拡大エキスパンドテープ2Aと半導体素子チップ1A間の接着強度P1の4倍程度の結合強度を有しているので、半導体素子チップ1Aと仮載置台3との結合状態に何ら変化を生じることがない。
【0042】
また、近年半導体素子の小形薄型化が進んでおり、特に照明器具の光源として注目を集めているLED素子のチップサイズに至っては、数百ミクロン程度まで微小化が進んでいることが少なくない。そしてこの様な小さい半導体チップを取り扱う中で最も問題になるのは、ウエハーをダイシングして個々の半導体チップを得る過程で不可欠な「エキスパンドテープの剥離工程」であり、以下に詳述する様に本発明はこの工程に多大の効果をもたらすことが出来る。
【0043】
すなわち、再び図9(b)を参照して従来例における課題を考察すると、エキスパンドテープ305からピックアップコレット301によって、数百ミクロン程度の微小半導体チップ302を剥離する工程には、半導体チップの破壊に加えて半導体チップのピックアップミスや作業の長時間化など、様々な課題がつきまとう。一方、本発明の半導体素子の製造方法によれば、半導体素子チップ1Aに対する機械的ストレスを最小限に抑えつつ、拡大エキスパンドテープ2Aの剥離を短時間で簡単に行なうことが出来るので、多数の半導体素子チップを一括して精度良く実装出来る半導体素子の製造方法を提供することが可能となる。
(第2の実施形態)
【0044】
[第2の実施形態の全図面説明:図5])
次に図5を用いて本発明の半導体素子の製造方法の第2の実施形態を詳述する。
第2の実施形態は、氷結層50Aの解凍方法が第1の実施形態と異なる。すなわち半導体素子チップ1Aから拡大エキスパンドテープ2Aを剥離したのち、半導体素子チップ1Aと仮載置台3の間の氷結層50Aを、フリーズドライ法で昇華によって解凍するものである。
なお以下の説明において、第1の実施形態と同一の要素は同一の番号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
まず図5(h)を用いてフリーズドライ法を用いた解凍工程を説明する。なおエキスパンドテープ2を半導体素子ウエハー1に貼付する工程から、拡大エキスパンドテープ2Aを半導体素子チップ1Aより剥離する剥離工程までは、図1(a)から図1(g)に示す第1の実施形態と同じなので重複する説明は省略する。
【0046】
まず図5(h)に示す様に、半導体素子チップ1Aを載置した仮載置台3を解凍容器6に収納し、解凍容器6内の圧力と温湿度とを制御してフリーズドライ法によって半導体素子チップ1Aと仮載置台3の間の氷結層50Aを昇華により解凍する。
また図5(i)および図5(i1)は整列配置工程であり、フリーズドライ法による解凍工程によって、各半導体1Aが仮載置台3の上に整列して配置されている状態を、図5(i)によって断面図で示し、図5(i1)によって平面図で示してある。
【0047】
なお、本実施例のフリーズドライ工程における解凍容器6の圧力pと温度tと湿度hの詳細は以下の様である。
p≦1hpa,t=−5℃,h=0%,
[第2の実施形態の作用説明:図5]
【0048】
次に図5を中心に図1を併用して本発明の半導体素子の製造方法の作用を説明する。
まず始めにフリーズドライ工程の作用とその理由を詳述する。
一般に凍結した液体を解凍する方法としては第一の実施形態で用いた通常解凍とフリーズドライ解凍の2種類の方法がある。通常解凍では氷結は溶けて液体になるので、物体と物体とが氷結によって固定されていても、解凍して液体になったときに流動してしまうため、物体と物体との相対位置が変動してしまう。
【0049】
一方フリーズドライ解凍は、0℃以下の温度を保ちながら気圧を下げ、凍結している液体を固体から直接気体に昇華させるので液体の状態が存在しない。したがって通常解凍の様な、物体と物体の相対位置が変動するということがない。
すなわち図5(i)および図5(i1)の整列配置工程に示す様に、解凍後の各半導体素子チップ1Aの間の相対位置は、X−Yいずれの方向においても図1(c)に示す当初の所定間隔Cの状態が維持される。
【0050】
[第2の実施形態の効果]
以上の様に本発明の半導体素子の製造方法によれば、半導体素子チップ1Aに貼付した拡大エキスパンドテープ2Aを凍結による効果を用いて容易に剥離したのちに、氷結層50Aを昇華によって解凍するので、解凍後の各半導体素子チップ1Aは、相対位置に何ら変動を生じることなく整列配置することが可能となる。
すなわち第1の実施形態においては、図2(h)に示す解凍工程において押さえ板15を使用することによって図2(i1)に示す様な整列配置が可能であり、仮に押さえ板15を使用しなかったりあるいは押さえ方が不十分であれば、図2(i2)の様に半導体素子チップ1Aの相対位置は変動してしまう可能性が高い。本発明では図5(h)に示す様に押さえ板15を使用しなくても、各半導体素子チップ1Aを整列配置させることが可能になるのである。
(第3の実施形態)
【0051】
[第3の実施形態の全図面説明:図6]
次に図6,7を用いて本発明の半導体素子の製造方法の第3の実施形態を詳述する。
図6は本発明の半導体素子の製造方法の工程を示す断面図であり、図7は本発明の半導体素子の製造方法による半導体素子の構造を示す断面図である。
第3の実施形態の概要は、仮載置台3に凍結した半導体素子チップ1Aから拡大エキスパンドテープ2Aを剥離しフリーズドライ法で半導体素子チップ1Aと仮載置台3の間の氷結層50Aを昇華させたのち、仮載置台3に載置された各半導体素子チップ1Aを、そのまま集合回路基板7に整列配置し実装するものであり、例えば多数のLEDチップを同数のパターンを有する集合回路基板に位置を合わせ整列配置し、さらに一括して同時に実装することを可能とする発明である。
なお以下の説明において、第2の実施形態と同一の要素は同一の番号を付し、重複する説明は省略する。
【0052】
図6は本発明の半導体素子の製造方法の工程を示す断面図である。なお、エキスパンドテープ2を半導体素子ウエハー1に貼付する工程から、各半導体素子チップ1Aを仮載置台3に配置する整列配置工程までは、第1の実施形態および第2の実施形態における工程を示す図1(a)から図1(g)、および図5(h)から図5(i1)までと同じなので重複する説明は省略する。
【0053】
まず図6(j)および図6(k)を用いて実装工程を説明する。
図6(j)に示す様に、半導体素子チップ1Aを仮接着剤8を用いて、仮載置台3から集合回路基板7に移し換える。すなわち仮載置台3に整列配置されている半導体素子チップ1Aを、図6(j)に示す矢印のように集合回路基板7の所定の位置に合わせ、仮接着剤8によって仮接着を行なう。そののち図6(k)に示す様に半導体素子チップ1Aを仮接着した集合回路基板7を上下反転したのち、半導体素子チップ1Aと集合回路基板7とをダイボンド部9によって固着する。
なお図6(k)においてはダイボンド部9の詳細は図示されていないが、図7(a)に示す様にダイボンド部9は、半導体素子チップ1Aに設けたバンプ12と、集合回路基板7の各々の位置に設けられた基板電極14とを、超音波圧着法によって熔着する方法を用いている。なおダイボンド部9としては、他に銀を含むエポキシ系やポリイミド系の接着剤あるいは同種の接着テープなどを用いる方法も可能であることは言うまでもない。
【0054】
次に図6(l)に示す様に樹脂封止材10によって全体を封止し、点線Cで示す様に細断して、最終的に図6(m)に示す様な各半導体素子300が完成する。
図7(a)は上述した製造方法による半導体素子300の断面図であり、半導体素子チップ1Aと回路基板7Bとの固着は、バンプ12と基板電極14との超音波熔着によってなされている。
なお図7(b)の様に、半導体素子チップ1Aと回路基板7Bとを接着剤または接着テープで固着し、半導体素子チップ1Aの素子電極13と基板電極14をワイヤ11により接続する方法も可能である。
【0055】
[第3の実施形態の作用]
以上の様に本発明の半導体素子の製造方法によれば、拡大エキスパンドテープ2Aを半導体素子チップ1Aから凍結を利用して容易に剥離し、さらにフリーズドライ法によって氷結層50Aを解凍し、各半導体素子チップ1Aを集合回路基板7の各々の所定位置に合わせて配置し実装することができる。
【0056】
[第3の実施形態の効果]
以上の様に本発明の半導体素子の製造方法によれば、拡大エキスパンドテープ2Aの剥離は凍結の利用によって容易になり、さらにフリーズドライ法によって多数の半導体素子チップ1Aを集合回路基板7に一括して整列配置し実装することが可能となるので、微小化した半導体素子チップからのエキスパンドテープの剥離という従来の大きな課題を解決し、かつまた多数の半導体素子チップを一括して精度良く実装出来る半導体素子の製造方法を提供することができる。
【0057】
[全体説明まとめ]
以上述べたように本発明の半導体素子の製造方法によれば、多数の半導体素子を一括して精度良く効率的に製造することが可能であるばかりでなく、近年急速に進みつつある半導体素子チップの微小化に対しても、半導体素子チップ破損などの問題を生じることなく対応が可能であり、効率的かつ経済的かつ高品質の半導体素子の製造方法を提供することが出来る。
なお、以上説明した実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば任意に変更することができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は半導体素子の製造方法を中心に述べたが、特に対象を半導体素子に限定するものではなく、一般的な電子部品や機能材料などをマトリクス状に配列して一括して製造する場合などにも適用可能である。また近年LED素子の微少化がさらに進んでおり、超微少LED素子を平面上に数多く並べて映像機器として製造する際にも適用可能な発明であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1 半導体素子ウエハー
100,101 半導体素子
1A 半導体素子チップ
2 エキスパンドテープ
2A 拡大エキスパンドテープ
3 仮載置台
4 給水手段
5 冷凍手段
50 液体
50A 氷結層
6 解凍容器
7 集合回路基板
7B 回路基板
8 仮接着剤
9 ダイボンド部
10 樹脂封止材
11 ワイヤ
12 バンプ
13 素子電極
14 基板電極
15 仮押さえ板
200 LEDチップ
201 第1のフィルム
202 第2のフィルム
203 中間フィルム
204 電極
301 ピックアップコレット
302 半導体チップ
303 冷却装置
304 突き上げピン
305 エキスパンドテープ
C (各半導体素子チップ間の)所定間隔
D ダム
P0 拡大エキスパンドテープの剥離強度
P1 拡大エキスパンドテープと1A間の接着強度
P2 半導体素子チップ1Aと仮載置台3間の結合強度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキスパンドテープ上に粘着した半導体素子ウエハーを縦横に細断して各半導体素子チップを形成し、前記エキスパンドテープを所定の大きさまでエキスパンドするエキスパンド工程と、
エキスパンドされた拡大エキスパンドテープ上の前記各半導体素子チップを仮載置台に載置する載置工程と、
液体供給手段を設け、前記液体供給手段によって前記各半導体素子チップと前記仮載置台との間に液体を供給する液体供給工程と、
前記仮載置台を冷凍する冷凍手段を設け、前記冷凍手段によって前記各半導体素子チップと前記仮載置台との間の前記液体を凍結し氷結層を形成する冷凍工程と、
前記冷凍工程によって前記氷結層を形成したのちに、前記各半導体素子チップから前記拡大エキスパンドテープを剥離するエキスパンドテープ剥離工程と、
前記エキスパンドテープ剥離工程によって前記各半導体素子チップから前記エキスパンドテープを剥離したのちに、前記各半導体素子チップと前記仮載置台との間の前記氷結層を解凍する解凍工程と、
を具備することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記解凍工程は、前記各半導体素子チップが載置された前記仮載置台を解凍容器に収納し、前記解凍容器内の圧力と温湿度とを制御して前記氷結層を昇華するフリーズドライ法を用いたものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記フリーズドライ法を用いた前記解凍工程によって前記氷結層を昇華したのちに、前記各半導体素子チップを集合回路基板に整列配置する整列配置工程と、
前記整列配置工程ののちに、前記各半導体素子チップを前記集合回路基板に実装する実装工程と、
をさらに具備することを特徴とする請求項2に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記各半導体素子チップを前記集合回路基板に実装する前記実装工程は、フリップチップ実装を用いたものであることを特徴とする請求項3に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記実装工程によって前記各半導体素子チップを前記集合回路基板に実装したのちに、前記集合回路基板上の前記各半導体全体チップを覆う様に封止樹脂材を形成し、前記集合回路基板と前記封止樹脂材とを縦横に細断して個々の半導体素子に分離する分離工程を有することを特徴とする請求項4に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記各半導体素子チップはLED素子チップであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記冷凍手段は熱電効果素子を使用したものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−96929(P2011−96929A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250965(P2009−250965)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】