説明

半導体装置の製造方法

【課題】生産効率や半導体装置の製造設計の自由度の向上が可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体チップ5を備える半導体装置の製造方法であって、第1主面5aに導通部材6が形成された半導体チップを準備する工程と、放射線を透過する支持体4上に、放射線硬化型粘着剤層3と第1の熱硬化型樹脂層1とがこの順で積層された支持構造10を準備する工程と、第1の熱硬化型樹脂層と半導体チップの第1主面とは反対側の第2主面5bとが対向するように第1の熱硬化型樹脂層上に複数の半導体チップを配置する工程と、複数の半導体チップを覆うように第2の熱硬化型樹脂層2を第1の熱硬化型樹脂層上に積層する工程と、支持体側より放射線を照射して放射線硬化型粘着剤層を硬化させることにより、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層との間で剥離を行う工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化や配線の微細化はますます進む傾向にあり、狭い半導体チップ領域(半導体チップを平面視で透視した場合に、半導体チップと重なり合う領域)の中により多くのI/Oパッドやビアを配さなければならず、同時にピン密度も上昇してきている。さらにBGA(Ball Grid Array)パッケージでは、半導体チップ領域内には多数の端子が形成されており、他の要素を形成するための領域が限られていることから、半導体パッケージ基板上で半導体チップ領域の外側まで端子から配線を引き出す方法がとられている。
【0003】
このような状況下、半導体装置の小型化や配線の微細化に個別に対応していたのでは、製造ラインの増設や製造手順の煩雑化などにより生産効率が低下してしまい、低コスト化の要求にも応えることができなくなる。
【0004】
これに対し、半導体パッケージ作製の低コスト化のために、個片化された複数のチップを支持体上に配置し、一括で樹脂封止してパッケージを形成する方法も提案されている。例えば、特許文献1では、支持体上に形成された感熱性接着剤上に個片化した複数のチップを配列し、チップと感熱性接着剤を覆うようにプラスチック製の共通キャリアを形成したのち、加熱によりチップを埋め込んだ共通キャリアと感熱性接着剤とを剥離する方法がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,202,107号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の半導体装置の製造方法では、共通キャリアの作製において感熱性接着剤を用いているので、高温処理を行うには限界があるとともに、加熱−放熱のサイクルが必要となることから、生産効率や半導体装置の製造設計の自由度の向上の面から改善の余地がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、生産効率や半導体装置の製造設計の自由度の向上が可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、半導体チップを配置する新たな支持構造とこれを利用するプロセスにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、半導体チップを備える半導体装置の製造方法であって、
第1主面に導通部材が形成された半導体チップを準備する工程と、
放射線を透過する支持体上に、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層とがこの順で積層された支持構造を準備する工程と、
上記第1の熱硬化型樹脂層と上記半導体チップの第1主面とは反対側の第2主面とが対向するように上記第1の熱硬化型樹脂層上に複数の半導体チップを配置する工程と、
上記複数の半導体チップを覆うように第2の熱硬化型樹脂層を上記第1の熱硬化型樹脂層上に積層する工程と、
上記支持体側より放射線を照射して上記放射線硬化型粘着剤層を硬化させることにより、上記放射線硬化型粘着剤層と上記第1の熱硬化型樹脂層との間で剥離を行う工程と
を含む
【0010】
当該製造方法では、放射線を透過する支持体上に、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層とがこの順で積層された支持構造を利用し、この支持構造に予め配列させた半導体チップを第2の熱硬化型樹脂層により覆い、その後の放射線硬化型粘着剤層の放射線硬化により第1の熱硬化型樹脂層との間での剥離容易性を達成することができるので、加熱−放熱サイクルも不要となり、また、種々のタイプの半導体装置(パッケージ)の作製に効率良く対応することができる。
【0011】
当該製造方法では、上記第1の熱硬化型樹脂層の50℃から200℃における最低溶融粘度が5×10Pa・s以上1×10Pa・s以下であることが好ましい。第1の熱硬化型樹脂層が特定範囲の最低溶融粘度を有することにより、第1の熱硬化型樹脂層上への第2の熱硬化型樹脂層の積層の際に、第1の熱硬化型樹脂層上に配置した半導体チップの位置ズレ(以下、「チップシフト」と称する場合がある)を防止することができる。
【0012】
当該製造方法では、上記第2の熱硬化型樹脂層が、シート状熱硬化型樹脂層であることが好ましい。第2の熱硬化型樹脂層がシート状であると、半導体チップの被覆に第1の熱硬化型樹脂上に貼り付けるだけで半導体チップを埋め込むことができ、半導体装置の生産効率を向上させることができる。
【0013】
上記第2の熱硬化型樹脂層が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フィラー及びエラストマーにより形成されていることが好ましい。上記第2の熱硬化型樹脂層がこのような成分により形成されているので、第1の硬化型樹脂層上への貼り付けの際に、良好に半導体チップを埋め込ませることができる。
【0014】
当該製造方法において、上記第2の熱硬化型樹脂層の積層後で上記放射線硬化型粘着剤層の剥離前に、上記第2の熱硬化型樹脂層の表面から上記導通部材を露出させる工程をさらに含むことで、上記第2の熱硬化型樹脂層の表面より導通部材を露出させてから再配線工程を行うことができる。
【0015】
あるいは、当該製造方法において、上記放射線硬化型粘着剤層の剥離後に、上記第2の熱硬化型樹脂層の表面から上記導通部材を露出させる工程をさらに含むようにし、上記第2の熱硬化型樹脂層の表面より導通部材を露出させてから再配線工程を行ってもよい。
【0016】
当該製造方法は、得られる半導体装置の基板などへの接続のために、上記放射線硬化型粘着剤層の剥離後、上記露出した導通部材と接続する再配線を上記第1の熱硬化型樹脂層上に形成する工程をさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の半導体装置の製造方法で用いられる支持構造の作製手順の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)〜(g)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、半導体チップを備える半導体装置の製造方法であって、
第1主面に導通部材が形成された半導体チップを準備する工程と、
放射線を透過する支持体上に、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層とがこの順で積層された支持構造を準備する工程と、
上記第1の熱硬化型樹脂層と上記半導体チップの第1主面とは反対側の第2主面とが対向するように上記第1の熱硬化型樹脂層上に複数の半導体チップを配置する工程と、
上記複数の半導体チップを覆うように第2の熱硬化型樹脂層を上記第1の熱硬化型樹脂層上に積層する工程と、
上記支持体側より放射線を照射して上記放射線硬化型粘着剤層を硬化させることにより、上記放射線硬化型粘着剤層と上記第1の熱硬化型樹脂層との間で剥離を行う工程と
を含む
【0019】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照しつつ説明する。図1(a)及び(b)は、本発明の半導体装置の製造方法で用いられる支持構造の作製手順の一例を模式的に示す断面図である。また、図2(a)〜(g)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。まず、半導体装置の製造方法について説明した後、該製造方法により得られる半導体装置を簡単に説明する。
【0020】
[半導体チップ準備工程]
半導体チップ準備工程では、第1主面5aに導通部材6が形成された半導体チップ5を準備する(図2(a)参照)。半導体チップ5は従来公知の方法により、表面に回路が形成された半導体ウェハをダイシングして個片化するなどして作製することができる。半導体チップ5の平面視での形状としては目的とする半導体装置に応じて変更すればよく、例えば一辺の長さが1〜15mmの間で独立して選択される正方形又は矩形などであってもよい。
【0021】
半導体チップの厚さは、目的とする半導体装置のサイズに応じて変更すればよく、例えば10〜725μmであり、好ましくは30〜725μmである。
【0022】
上記半導体チップ5の第1主面(回路形成面)5aには導通部材6が形成されている。この導通部材6としては特に限定されないものの、バンプ、ピン、リードなどが挙げられる。導通部材6の材質としては特に限定されず、例えば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材等の半田類(合金)や、金系金属材、銅系金属材などが挙げられる。導通部材6の高さも用途に応じて定められ、一般的には5〜100μm程度である。もちろん、半導体チップ5の第1主面5aにおいて個々の導通部材6の高さは同一でも異なっていてもよい。
【0023】
[支持構造準備工程]
支持構造準備工程では、放射線を透過する支持体4上に、放射線硬化型粘着剤層3と第1の熱硬化型樹脂層1とがこの順で積層された支持構造10を準備する(図1(a)及び(b)参照)。
【0024】
(支持体)
前記支持体4は支持構造10の強度母体となるものである。支持体4の材質としては、放射線透過性を有し、チップシフト等の抑制の観点から低伸縮性であり、かつハンドリング性の観点から剛性を有する材質が好ましい。そのような材質としてガラスを好適に用いることができる。また、上記特性を備える限り、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフィド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等も用いることができる。
【0025】
その他、支持体4の材料としては前記樹脂の架橋体等のポリマーも挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。樹脂製の支持体4は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。
【0026】
支持体4の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤によるコーティング処理を施すことができる。
【0027】
また、支持体4には、帯電防止能を付与するため、前記の支持体4上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。支持体4は単層あるいは2種以上の複層でもよい。
【0028】
支持体4の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、ハンドリング性を考慮すると一般的には5μm〜2mm程度であり、好ましくは100μm〜1mmの範囲である。
【0029】
(放射線硬化型粘着剤層)
放射線硬化型粘着剤層3は、放射線(紫外線、電子線、X線等)の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができる。
【0030】
放射線硬化型粘着剤3は、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤を例示できる。
【0031】
前記アクリル系ポリマーとしては、アクリル酸エステルを主モノマー成分として用いたものが挙げられる。前記アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0032】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0033】
さらに、前記アクリル系ポリマーは、架橋させるために、多官能性モノマー等も必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0034】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、さらに好ましくは40万〜300万程度である。
【0035】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の重量平均分子量を高めるため、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、さらには、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、さらには0.1〜5重量部配合するのが好ましい。さらに、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0036】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0037】
また、放射線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の放射線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができるため好ましい。
【0038】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0039】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0040】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0041】
前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0042】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0043】
また放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0044】
前記放射線硬化型粘着剤層3中には、必要に応じて、放射線照射により着色する化合物を含有させることもできる。放射線照射により、着色する化合物を放射線硬化型粘着剤層3に含ませることによって、放射線照射された部分のみを着色することができる。放射線硬化型粘着剤層3に放射線が照射されたか否かが目視により直ちに判明することができる。
【0045】
放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色又は淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物である。かかる化合物の好ましい具体例としてはロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料としては、慣用のトリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系のものが好ましく用いられる。具体的には3−[N−(p−トリルアミノ)]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−メチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−エチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフエニルメタノール、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフェニルメタン等が挙げられる。
【0046】
これらロイコ染料とともに好ましく用いられる顕色剤としては、従来から用いられているフェノールホルマリン樹脂の初期重合体、芳香族カルボン酸誘導体、活性白土等の電子受容体があげられ、さらに、色調を変化させる場合は種々の発色剤を組合せて用いることもできる。
【0047】
このような放射線照射によって着色する化合物は、一旦有機溶媒等に溶解された後に放射線硬化型接着剤中に含ませてもよく、また微粉末状にして当該粘着剤中に含ませてもよい。この化合物の使用割合は、放射線硬化型粘着剤層3中に10重量%以下、好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%であるのが望ましい。該化合物の割合が10重量%を超えると、放射線硬化型粘着剤層3に照射される放射線がこの化合物に吸収されすぎてしまうため、放射線硬化型粘着剤層3の硬化が不十分となり、十分に粘着力が低下しないことがある。一方、充分に着色させるには、該化合物の割合を0.01重量%以上とするのが好ましい。
【0048】
放射線硬化型粘着剤層3の厚さは、特に限定されないが、10〜100μm程度であるのが好ましく、15〜80μmがより好ましく、20〜50μmがさらには好ましい。上記範囲の上限より厚いと、塗布による形成のための溶媒が残存し、半導体装置の製造プロセス過程での熱で残存溶媒が揮発して剥離を起こしてしまうおそれがあり、上記範囲の下限より薄いと、第1の熱硬化型樹脂層1の剥離の際、粘着剤層3が十分な変形を伴わず、剥離しにくくなる。
【0049】
(第1の熱硬化型樹脂層)
本実施形態に係る第1の熱硬化型樹脂層1は、半導体チップ5の保持機能や、半導体装置の基板への実装の際に半導体チップ5の裏面(第1主面5aとは反対側の第2主面5b)を保護する機能を有する。第1の熱硬化型樹脂層1の構成材料としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用したものが挙げられる。また、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂単独でも使用可能である。
【0050】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体チップの信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0051】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、へキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0052】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0053】
前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。特に、半導体チップを腐食させるイオン性不純物等の含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0054】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0055】
さらに、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0056】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。すなわち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0057】
なお、本発明においては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂を用いた熱硬化性樹脂が特に好ましい。これらの樹脂は、イオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体チップの信頼性を確保できる。この場合の配合比は、アクリル樹脂成分100重量部に対して、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合量が10〜200重量部である。
【0058】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の熱硬化促進触媒としては、特に制限されず、公知の熱硬化促進触媒の中から適宜選択して用いることができる。熱硬化促進触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化促進触媒としては、例えば、アミン系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホウ素系硬化促進剤、リン−ホウ素系硬化促進剤などを用いることができる。
【0059】
第1の熱硬化型樹脂層の構成材料を予めある程度架橋をさせておく場合には、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのがよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0060】
前記架橋剤としては、特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、前記の重合体100重量部に対し、通常0.05〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の量が7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。その一方、0.05重量部より少ないと、凝集力が不足するので好ましくない。また、この様なポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。
【0061】
また、第1の熱硬化型樹脂層1には、無機充填剤を適宜配合することができる。無機充填剤の配合は、導電性の付与や熱伝導性の向上、貯蔵弾性率の調節等を可能にする。
【0062】
前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田等の金属、又は合金類、その他カーボン等からなる種々の無機粉末が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、シリカ、特に溶融シリカが好適に用いられる。
【0063】
無機充填剤の平均粒径は、0.1〜5μmの範囲内であることが好ましく、0.2〜3μmの範囲内であることがより好ましい。無機充填剤の平均粒径が0.1μm未満であると、前記第1の熱硬化性樹脂のRaを0.15μm以上にすることが困難になる。その一方、前記平均粒径が5μmを超えると、Raを1μm未満にすることが困難になる。なお、本発明においては、平均粒径が相互に異なる無機充填剤同士を組み合わせて使用してもよい。また、平均粒径は、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0064】
前記無機充填剤の配合量は、有機樹脂成分100重量部に対し20〜80重量部に設定することが好ましい。特に好ましくは20〜70重量部である。無機充填剤の配合量が20重量部未満であると、放射線硬化型粘着剤層3と第1の熱硬化型樹脂層1との接触面積が大きくなり、両者を剥離しにくい場合がある。また、80重量部を超えると、逆に接触面積が小さくなりすぎ、半導体装置の製造プロセス過程で意図しない剥離を生じてしまう場合がある。
【0065】
なお、第1の熱硬化型樹脂層1には、前記無機充填剤以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0066】
前記第1の熱硬化型樹脂層1の50〜200℃における最低溶融粘度は、5×10Pa・s以上1×10Pa・s以下であることが好ましい。第1の熱硬化型樹脂層1が上記範囲の最低溶融粘度を有することで、第1の熱硬化型樹脂層1上への第2の熱硬化型樹脂層2の積層の際に、第1の熱硬化型樹脂層1上に配置した半導体チップ5の位置ズレを防止することができる。さらに、第1の熱硬化型樹脂層1が上記のような最低溶融粘度を有することで、第2の熱硬化型樹脂層2の形成後、放射線硬化型粘着剤層3と第1の熱硬化型樹脂層1との界面で容易に剥離することができる。
【0067】
第1の熱硬化型樹脂層1の厚さ(複層の場合は、総厚)は特に限定されないものの、半導体チップ5の保持性や硬化後において確実にチップを保護することを考慮すると5μm以上250μm以下が好ましい。
【0068】
前記第1の熱硬化型樹脂層は着色されていることが好ましい。これにより、優れたマーキング性及び外観性を発揮させることができ、付加価値のある外観の半導体装置とすることが可能になる。このように、着色された第1の熱硬化型樹脂層は、優れたマーキング性を有しているので、半導体チップ又は該半導体チップが用いられた半導体装置の非回路面側の面(すなわち、第2主面5b)に、第1の熱硬化型樹脂層を介して、印刷方法やレーザーマーキング方法などの各種マーキング方法を利用することにより、マーキングを施し、文字情報や図形情報などの各種情報を付与させることができる。特に、着色の色をコントロールすることにより、マーキングにより付与された情報(文字情報、図形情報など)を、優れた視認性で視認することが可能になる。また、第1の熱硬化型樹脂層は着色されていると、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層とを容易に区別することができ、作業性等を向上させることができる。さらに、例えば半導体装置として製品別に色分けすることも可能である。第1の熱硬化型樹脂層を有色にする場合(無色・透明ではない場合)、着色により呈している色としては特に制限されないが、例えば、黒色、青色、赤色などの濃色であることが好ましく、特に黒色であることが好適である。
【0069】
本実施形態において、濃色とは、基本的には、L表色系で規定されるLが、60以下(0〜60)[好ましくは50以下(0〜50)、さらに好ましくは40以下(0〜40)]となる濃い色のことを意味している。
【0070】
また、黒色とは、基本的には、L表色系で規定されるLが、35以下(0〜35)[好ましくは30以下(0〜30)、さらに好ましくは25以下(0〜25)]となる黒色系色のことを意味している。なお、黒色において、L表色系で規定されるaやbは、それぞれ、Lの値に応じて適宜選択することができる。aやbとしては、例えば、両方とも、−10〜10であることが好ましく、より好ましくは−5〜5であり、特に−3〜3の範囲(中でも0又はほぼ0)であることが好適である。
【0071】
なお、本実施形態において、L表色系で規定されるL、a、bは、色彩色差計(商品名「CR−200」ミノルタ社製;色彩色差計)を用いて測定することにより求められる。なお、L表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L)表色系と称される色空間のことを意味している。また、L表色系は、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。
【0072】
第1の熱硬化型樹脂層を着色する際には、目的とする色に応じて、色材(着色剤)を用いることができる。このような色材としては、黒系色材、青系色材、赤系色材などの各種濃色系色材を好適に用いることができ、特に黒系色材が好適である。色材としては、顔料、染料などいずれであってもよい。色材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、染料としては、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料等のいずれの形態の染料であっても用いることが可能である。また、顔料も、その形態は特に制限されず、公知の顔料から適宜選択して用いることができる。
【0073】
特に、色材として染料を用いると、第1の熱硬化型樹脂層中には、染料が溶解により均一又はほぼ均一に分散した状態となるため、着色濃度が均一又はほぼ均一な第1の熱硬化型樹脂層を容易に製造することができる。そのため、色材として染料を用いると、第1の熱硬化型樹脂層は、着色濃度を均一又はほぼ均一とすることができ、マーキング性や外観性を向上させることができる。
【0074】
黒系色材としては、特に制限されないが、例えば、無機の黒系顔料、黒系染料から適宜選択することができる。また、黒系色材としては、シアン系色材(青緑系色材)、マゼンダ系色材(赤紫系色材)およびイエロー系色材(黄系色材)が混合された色材混合物であってもよい。黒系色材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。もちろん、黒系色材は、黒以外の色の色材と併用することもできる。
【0075】
具体的には、黒系色材としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなど)、グラファイト(黒鉛)、酸化銅、二酸化マンガン、アゾ系顔料(アゾメチンアゾブラックなど)、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライトなど)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素などが挙げられる。
【0076】
本実施形態では、黒系色材としては、C.I.ソルベントブラック3、同7、同22、同27、同29、同34、同43、同70、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同48、同52、同107、同109、同110、同119、同154C.I.ディスパーズブラック1、同3、同10、同24等のブラック系染料;C.I.ピグメントブラック1、同7等のブラック系顔料なども利用することができる。
【0077】
このような黒系色材としては、例えば、商品名「Oil Black BY」、商品名「OilBlack BS」、商品名「OilBlack HBB」、商品名「Oil Black 803」、商品名「Oil Black 860」、商品名「Oil Black 5970」、商品名「Oil Black 5906」、商品名「Oil Black 5905」(オリエント化学工業株式会社製)などが市販されている。
【0078】
黒系色材以外の色材としては、例えば、シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などが挙げられる。シアン系色材としては、例えば、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95;C.I.アシッドブルー6、同45等のシアン系染料;C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同15:6、同16、同17、同17:1、同18、同22、同25、同56、同60、同63、同65、同66;C.I.バットブルー4;同60、C.I.ピグメントグリーン7等のシアン系顔料などが挙げられる。
【0079】
また、マゼンダ系色材において、マゼンダ系染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同52、同58、同63、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同111、同121、同122;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、同13、同14、同21、同27;C.I.ディスパースバイオレット1;C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40;C.I.ベーシックバイオレット1、同3、同7、同10、同14、同15、同21、同25、同26、同27、28などが挙げられる。
【0080】
マゼンダ系色材において、マゼンダ系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同42、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49、同49:1、同50、同51、同52、同52:2、同53:1、同54、同55、同56、同57:1、同58、同60、同60:1、同63、同63:1、同63:2、同64、同64:1、同67、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同92、同101、同104、同105、同106、同108、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同146、同147、同149、同150、同151、同163、同166、同168、同170、同171、同172、同175、同176、同177、同178、同179、同184、同185、同187、同190、同193、同202、同206、同207、同209、同219、同222、同224、同238、同245;C.I.ピグメントバイオレット3、同9、同19、同23、同31、同32、同33、同36、同38、同43、同50;C.I.バットレッド1、同2、同10、同13、同15、同23、同29、同35などが挙げられる。
【0081】
また、イエロー系色材としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等のイエロー系染料;C.I.ピグメントオレンジ31、同43;C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同23、同24、同34、同35、同37、同42、同53、同55、同65、同73、同74、同75、同81、同83、同93、同94、同95、同97、同98、同100、同101、同104、同108、同109、同110、同113、同114、同116、同117、同120、同128、同129、同133、同138、同139、同147、同150、同151、同153、同154、同155、同156、同167、同172、同173、同180、同185、同195;C.I.バットイエロー1、同3、同20等のイエロー系顔料などが挙げられる。
【0082】
シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などの各種色材は、それぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などの各種色材を2種以上用いる場合、これらの色材の混合割合(または配合割合)としては、特に制限されず、各色材の種類や目的とする色などに応じて適宜選択することができる。
【0083】
第1の熱硬化型樹脂層1を着色させる場合、その着色形態は特に制限されない。例えば、第1の熱硬化型樹脂層は、着色剤が添加された単層のフィルム状物であってもよい。また、少なくとも熱硬化性樹脂により形成された樹脂層と、着色剤層とが少なくとも積層された積層フィルムであってもよい。なお、第1の熱硬化型樹脂層1が樹脂層と着色剤層との積層フィルムである場合、積層形態の第1の熱硬化型樹脂層1としては、樹脂層/着色剤層/樹脂層の積層形態を有していることが好ましい。この場合、着色剤層の両側の2つの樹脂層は、同一の組成の樹脂層であってもよく、異なる組成の樹脂層であってもよい。
【0084】
(支持構造の作製方法)
本実施形態に係る支持構造の作製方法は、支持体4上に放射線硬化型粘着剤層3を積層する工程と、放射線硬化型粘着剤層3上に第1の熱硬化型樹脂層1を積層する工程とを有する。
【0085】
まず、支持体4を準備する。例えば、ガラス製の支持体4としては、市販品を用いてもよく、所定厚さのガラス板に対して切削等を行って所定形状の支持体4としてもよい。なお、前記支持体4が樹脂製の場合の製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。以下、ガラス製の支持体4を用いる場合について説明する。
【0086】
放射線硬化型粘着剤層3は、離型フィルム上に放射線硬化型の粘着剤組成物溶液を塗工した後、所定条件下で乾燥させて(必要に応じて加熱架橋させて)塗布膜を形成し、この塗布膜を支持体4上に転写することにより形成することができる。塗工方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。塗工の際の塗工厚みとしては、塗布層を乾燥して最終的に得られる放射線硬化型粘着剤層3の厚さが10〜100μmの範囲内となる様に適宜設定すればよい。さらに、粘着材組成物溶液の粘度としては特に限定されず、25℃において100〜5000mPa・sが好ましく、200〜3000mPa・sがより好ましい。
【0087】
前記塗布層の乾燥方法としては特に限定されず、例えば、表面が平滑な粘着剤層を形成する場合には、乾燥風を用いずに乾燥させることが好ましい。乾燥時間は粘着材組成物溶液の塗工量に応じて適宜設定され、通常は0.5〜5min、好ましくは2〜4minの範囲内である。乾燥温度は特に限定されず、通常は80〜150℃であり、好ましくは80〜130℃である。
【0088】
なお、放射線硬化型粘着剤層3は、支持体4上に粘着剤組成物を直接塗工してその塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて形成してもよい。
【0089】
前記離型フィルムとしては特に限定されず、例えば、離型フィルムの基材における放射線硬化型粘着剤層3との貼り合わせ面に、シリコーン層等の離型コート層が形成されたものが挙げられる。また、離型フィルムの基材としては、例えば、グラシン紙のような紙材や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル等よりなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0090】
次いで、離型フィルム上の放射線硬化型粘着剤層3を支持体4に転写する。当該転写は圧着により行われる。貼り合わせ温度は通常25〜100℃であり、25〜50℃が好ましい。また、貼り合わせ圧力は通常0.1〜0.6Paであり、好ましくは0.2〜0.5Paである。
【0091】
前記第1の熱硬化型樹脂層1を形成する工程としては、例えば、離型フィルム12a上に第1の熱硬化型樹脂層1の構成材料である接着剤組成物溶液を塗工して塗布層を形成する工程を行い、その後、前記塗布層を乾燥させる工程を行う方法が挙げられる(図1(a)参照)。離型フィルム12aとしては上述の離型フィルムを用いることができる。
【0092】
前記接着剤組成物溶液の塗工方法としては特に限定されず、例えば、コンマコート法、ファウンテン法、グラビア法などを用いて塗工する方法が挙げられる。塗工厚みとしては、塗布層を乾燥して最終的に得られる第1の熱硬化型樹脂層1の厚さが5〜250μmの範囲内となる様に適宜設定すればよい。さらに、接着剤組成物溶液の粘度としては特に限定されず、25℃において400〜2500mPa・sが好ましく、800〜2000mPa・sがより好ましい。
【0093】
前記塗布層の乾燥は、塗布層に乾燥風を吹き付けることにより行う。当該乾燥風の吹き付けは、例えば、その吹き付け方向を離型フィルムの搬送方向と平行となる様に行う方法や、塗布層の表面に垂直となる様に行う方法が挙げられる。乾燥風の風量は特に限定されず、通常は5〜20m/min、好ましくは5〜15m/minである。乾燥風の風量が5m/min以上にすることにより、塗布層の乾燥が不十分になるのを防止することができる。その一方、乾燥風の風量を20m/min以下にすることにより、塗布層の表面近傍における有機溶剤の濃度を均一にするので、その蒸発を均一にすることができる。その結果、表面状態が面内において均一な第1の熱硬化型樹脂層1の形成が可能になる。
【0094】
乾燥時間は接着剤組成物溶液の塗工厚みに応じて適宜設定され、通常は1〜5min、好ましくは2〜4minの範囲内である。乾燥時間が1min未満であると、硬化反応が十分に進行せず、未反応の硬化成分や残存する溶媒量が多く、これにより、後工程にてアウトガスやボイドの問題が発生する場合がある。その一方、5minを超えると、硬化反応が進行しすぎる結果、流動性や半導体ウェハとの接着性が低下する場合がある。
【0095】
乾燥温度は特に限定されず、通常は70〜160℃の範囲内で設定される。本実施形態においては、乾燥時間の経過とともに、乾燥温度を段階的に上昇させて行うことが好ましい。具体的には、例えば乾燥初期(乾燥直後から1min以下)では70℃〜100℃の範囲内で設定され、乾燥後期(1minを超えて5min以下)では100〜160℃の範囲内で設定される。これにより、塗工直後に乾燥温度を急激に上昇させた場合に生じる塗布層表面のピンホールの発生を防止することができる。
【0096】
続いて、放射線硬化型粘着剤層3上に第1の熱硬化型樹脂層1の転写を行う(図1(b)参照)。当該転写はラミネーションやプレスといった公知の方法で行うことができる。貼り合わせ温度は常温〜150℃が好ましく、第1の熱硬化型樹脂層1の硬化反応の進行を抑制するために常温〜100℃がより好ましい。また、貼り合わせ圧力は0.5M〜50MPaであり、好ましくは0.5M〜10MPaである。
【0097】
なお、第1の熱硬化型樹脂層1は、放射線硬化型粘着剤層3上に接着剤組成物溶液を直接塗工してその塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて形成してもよい。
【0098】
前記離型フィルム12aは、放射線硬化型粘着剤層3上に第1の熱硬化型樹脂層1を貼り合わせ後に剥離してもよく、あるいは、そのまま支持構造10の保護フィルムとして使用し、半導体チップの第1の熱硬化型樹脂層1上への配置の際に剥離してもよい。これにより、本実施の形態に係る支持構造10を製造することができる。
【0099】
[半導体チップ配置工程]
半導体チップ配置工程では、上記第1の熱硬化型樹脂層1と上記半導体チップの第1主面5aとは反対側の第2主面5bとが対向するように上記第1の熱硬化型樹脂層1上に複数の半導体チップ5を配置する(図2(a)参照)。半導体チップ5の配置には、フリップチップボンダーやダイボンダーなどの公知の装置を用いることができる。
【0100】
半導体チップ5の配置のレイアウトや配置数は、支持構造10の形状やサイズ、目的とする半導体装置の生産数などに応じて適宜設定することができ、例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に整列させて配置することができる。
【0101】
[第2の熱硬化型樹脂層の積層工程]
第2の熱硬化型樹脂層の積層工程では、上記複数の半導体チップ5を覆うように第2の熱硬化型樹脂層2を上記第1の熱硬化型樹脂層1上に積層する(図2(b)参照)。この第2の熱硬化型樹脂層2は、半導体チップ5及びそれに付随する要素を外部環境から保護するための封止樹脂として機能する。
【0102】
第2の熱硬化型樹脂層2の積層方法としては特に限定されず、第2の熱硬化型樹脂層を形成するための樹脂組成物の溶融混練物を押出成形し、押出成形物を第1の熱硬化型樹脂層上に載置してプレスすることにより第2の熱硬化型樹脂層の形成と積層とを一括にて行う方法や、第2の熱硬化型樹脂層を形成するための樹脂組成物を第1の熱硬化型樹脂層1上に塗布し、その後乾燥させる方法、該樹脂組成物を離型処理シート上に塗布し、塗布膜を乾燥させてシート状の第2の熱硬化型樹脂層2を形成した上で、この第2の熱硬化型樹脂層2を第1の熱硬化型樹脂層1上に転写する方法などが挙げられる。
【0103】
本実施形態では、上記第2の熱硬化型樹脂層2が、シート状熱硬化型樹脂層であることが好ましい。第2の熱硬化型樹脂層2をシート状(以下、シート状の第2の熱硬化型樹脂層2を「シート状第2樹脂層」と称する場合がある。)とすることにより、半導体チップ5の被覆に第1の熱硬化型樹脂1上に貼り付けるだけで半導体チップ5を埋め込むことができ、半導体装置の生産効率を向上させることができる。この場合、熱プレスやラミネーターなど公知の方法により第2の熱硬化型樹脂層2を第1の熱硬化型樹脂層1上に積層することができる。熱プレス条件としては、温度が、例えば、40〜120℃、好ましくは、50〜100℃であり、圧力が、例えば、50〜2500kPa、好ましくは、100〜2000kPaであり、時間が、例えば、0.3〜10分間、好ましくは、0.5〜5分間である。また、第2の熱硬化型樹脂層2の半導体チップ5への密着性および追従性の向上を考慮すると、好ましくは、減圧条件下(例えば10〜2000Pa)において、プレスすることが好ましい。
【0104】
このようにして第1の熱硬化型樹脂層1上に第2の熱硬化型樹脂層2を積層させた後、両者を硬化させる。第2の熱硬化型樹脂層及び第1の熱硬化型樹脂層の硬化は、120℃から190℃の温度範囲、1分から60分の加熱時間、0.1MPaから10MPaの圧力にて行われる。
【0105】
なお、第2の熱硬化型樹脂層及び第1の熱硬化型樹脂層の硬化は、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層1とを剥離した後に行ってもよく、剥離前に行ってもよい。また、剥離前にある程度硬化を進め、剥離後に完全に硬化させてもよい。
【0106】
(第2の熱硬化型樹脂層)
第2の熱硬化型樹脂層を形成する樹脂組成物は、半導体チップの封止に利用可能なものであれば、特に限定されないが、例えば以下のA成分からE成分を含有するエポキシ樹脂組成物が好ましいものとして挙げられる。
A成分:エポキシ樹脂
B成分:フェノール樹脂
C成分:エラストマー
D成分:無機充填剤
E成分:硬化促進剤
【0107】
(A成分)
エポキシ樹脂(A成分)としては、特に限定されるものではない。例えば、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0108】
エポキシ樹脂の硬化後の靭性及びエポキシ樹脂の反応性を確保する観点からは、エポキシ当量150〜250、軟化点もしくは融点が50〜130℃の常温で固形のものが好ましく、中でも、信頼性の観点から、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0109】
また、低応力性の観点から、アセタール基やポリオキシアルキレン基等の柔軟性骨格を有する変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく、アセタール基を有する変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、液体状で取り扱いが良好であることから、特に好適に用いることができる。
【0110】
エポキシ樹脂(A成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して1〜10重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0111】
(B成分)
フェノール樹脂(B成分)は、エポキシ樹脂(A成分)との間で硬化反応を生起するものであれば特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾール樹脂、等が用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0112】
フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂(A成分)との反応性の観点から、水酸基当量が70〜250、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましく、中でも硬化反応性が高いという観点から、フェノールノボラック樹脂を好適に用いることができる。また、信頼性の観点から、フェノールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂のような低吸湿性のものも好適に用いることができる。
【0113】
エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)の配合割合は、硬化反応性という観点から、エポキシ樹脂(A成分)中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂(B成分)中の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0114】
(C成分)
エポキシ樹脂(A成分)及びフェノール樹脂(B成分)とともに用いられるエラストマー(C成分)は、第2の熱硬化型樹脂層をシート状にした場合の半導体チップ5の封止に必要な可撓性をエポキシ樹脂組成物に付与するものであり、このような作用を奏するものであれば特にその構造を限定するものではない。例えば、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル系共重合体、スチレンアクリレート系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等のゴム質重合体を用いることができる。中でも、エポキシ樹脂(A成分)へ分散させやすく、またエポキシ樹脂(A成分)との反応性も高いために、得られる第2の熱硬化型樹脂層の耐熱性や強度を向上させることができるという観点から、アクリル系共重合体を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
【0115】
なお、アクリル系共重合体は、例えば、所定の混合比にしたアクリルモノマー混合物を、定法によってラジカル重合することにより合成することができる。ラジカル重合の方法としては、有機溶剤を溶媒に行う溶液重合法や、水中に原料モノマーを分散させながら重合を行う懸濁重合法が用いられる。その際に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、その他のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド及びメチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が用いられる。なお、懸濁重合の場合は、例えばポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールのような分散剤を加えることが望ましい。
【0116】
エラストマー(C成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の15〜30重量%である。エラストマー(C成分)の含有量が15重量%未満では、シート状第2樹脂層2の柔軟性及び可撓性を得るのが困難となり、さらには第2の熱硬化型樹脂層の反りを抑えた樹脂封止も困難となる。逆に上記含有量が30重量%を超えると、シート状第2樹脂層2の溶融粘度が高くなって半導体チップ5の埋まり込み性が低下するとともに、シート状第2樹脂層2の硬化体の強度及び耐熱性が低下する傾向がみられる。
【0117】
また、エラストマー(C成分)のエポキシ樹脂(A成分)に対する重量比率(C成分の重量/A成分の重量)は、3〜4.7の範囲に設定することが好ましい。上記重量比率が3未満の場合は、シート状第2樹脂層2の流動性をコントロールすることが困難となり、4.7を超えるとシート状第2樹脂層2の半導体チップ5への接着性が劣る傾向がみられるためである。
【0118】
(D成分)
無機質充填剤(D成分)は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種充填剤を用いることができ、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカ等)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等の粉末が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0119】
中でも、エポキシ樹脂組成物の硬化体の熱線膨張係数が低減することにより内部応力を低減し、その結果、半導体チップ5の封止後の第2の熱硬化型樹脂層2の反りを抑制できるという点から、シリカ粉末を用いることが好ましく、シリカ粉末の中でも溶融シリカ粉末を用いることがより好ましい。溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが特に好ましい。中でも、平均粒径が0.1〜30μmの範囲のものを用いることが好ましく、0.3〜15μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。
【0120】
なお、平均粒径は、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
【0121】
無機質充填剤(D成分)の含有量は、好ましくはエポキシ樹脂組成物全体の50〜90重量%であり、より好ましくは55〜90重量%であり、さらに好ましくは60〜90重量%である。無機質充填剤(D成分)の含有量が50重量%未満では、エポキシ樹脂組成物の硬化体の線膨張係数が大きくなるために、第2の熱硬化型樹脂層2の反りが大きくなる傾向がみられる。一方、上記含有量が90重量%を超えると、第2の熱硬化型樹脂層2の柔軟性や流動性が悪くなるために、半導体チップ5との接着性が低下する傾向がみられる。
【0122】
(E成分)
硬化促進剤(E成分)は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化を進行させるものであれば特に限定されるものではないが、硬化性と保存性の観点から、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機リン系化合物や、イミダゾール系化合物が好適に用いられる。これら硬化促進剤は、単独で用いても良いし、他の硬化促進剤と併用しても構わない。
【0123】
硬化促進剤(E成分)の含有量は、エポキシ樹脂(A成分)及びフェノール樹脂(B成分)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0124】
(その他の成分)
また、エポキシ樹脂組成物には、A成分からE成分に加えて、難燃剤成分を加えてもよい。難燃剤組成分としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄、水酸化カルシウム、水酸化スズ、複合化金属水酸化物等の各種金属水酸化物を用いることができる。比較的少ない添加量で難燃性を発揮できる点や、コスト的な観点から水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムを用いることが好ましく、水酸化アルミニウムを用いることが特に好ましい。
【0125】
金属水酸化物の平均粒径としては、エポキシ樹脂組成物を加熱した際に適当な流動性を確保するという観点から、平均粒径が1〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは2〜5μmである。金属水酸化物の平均粒径が1μm未満では、エポキシ樹脂組成物中に均一に分散させることが困難となるとともに、エポキシ樹脂組成物の加熱時における流動性が十分に得られない傾向がある。また、平均粒径が10μmを超えると、金属水酸化物(E成分)の添加量あたりの表面積が小さくなるため、難燃効果が低下する傾向がみられる。
【0126】
また、難燃剤成分としては上記金属水酸化物のほか、ホスファゼン化合物を用いることができる。ホスファゼン化合物としては、例えばSPR−100、SA−100、SP−100(以上、大塚化学株式会社)、FP−100、FP−110(以上、株式会社伏見製薬所)等が市販品として入手可能である。
【0127】
少量でも難燃効果を発揮するという観点から、式(1)又は式(2)で表されるホスファゼン化合物が好ましく、これらホスファンゼン化合物に含まれるリン元素の含有率は、12重量%以上であることが好ましい。
【化1】

(式(1)中、nは3〜25の整数であり、R及びRは同一又は異なって、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、水酸基及びアリル基からなる群より選択される官能基を有する1価の有機基である。)
【化2】

(式(2)中、n及びmは、それぞれ独立して3〜25の整数である。R及びRは同一又は異なって、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、水酸基及びアリル基からなる群より選択される官能基を有する1価の有機基である。Rは、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、水酸基及びアリル基からなる群より選択される官能基を有する2価の有機基である。)
【0128】
また、安定性及びボイドの生成抑制という観点から、式(3)で表される環状ホスファゼンオリゴマーを用いることが好ましい。
【化3】

(式(3)中、nは3〜25の整数であり、R及びRは同一又は異なって、水素、水酸基、アルキル基、アルコキシ基又はグリシジル基である。)
【0129】
上記式(3)で表される環状ホスファゼンオリゴマーは、例えばFP−100、FP−110(以上、株式会社伏見製薬所)等が市販品として入手可能である。
【0130】
ホスファゼン化合物の含有量は、エポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、エラストマー(D成分)、硬化促進剤(E成分)及びホスファゼン化合物(その他の成分)を含む有機成分全体の10〜30重量%であることが好ましい。すなわち、ホスファゼン化合物の含有量が、有機成分全体の10重量%未満では、第2の熱硬化型樹脂層2の難燃性が低下するとともに、被着体に対する凹凸追従性が低下し、ボイドが発生する傾向がみられる。上記含有量が有機成分全体の30重量%を超えると、第2の熱硬化型樹脂層2の表面にタックが生じやすくなり、特に第2の熱硬化型樹脂2がシート状である場合、被着体に対する位置合わせをしにくくなる等作業性が低下する傾向がみられる。
【0131】
また、上記金属水酸化物及びホスファゼン化合物を併用し、シート封止に必要な可撓性を確保しつつ、難燃性に優れた第2の熱硬化型樹脂層2を得ることもできる。両者を併用することにより、金属水酸化物のみを用いた場合の十分な難燃性と、ホスファゼン化合物のみを用いた場合は、十分な可撓性を得ることができる。
【0132】
金属水酸化物及びホスファゼン化合物を併用する場合の両者の含有量は、両成分の合計量が、エポキシ樹脂組成物全体の70〜90重量%であり、好ましくは75〜85重量%である。上記合計量が70重量%未満では、第2の熱硬化型樹脂層2の十分な難燃性が得ることが困難となり、90重量%を超えると、第2の熱硬化型樹脂層2の被着体への接着性が低下し、ボイドが発生する傾向がみられる。
【0133】
なお、エポキシ樹脂組成物は、上記の各成分以外に必要に応じて、カーボンブラックをはじめとする顔料等、他の添加剤を適宜配合することができる。
【0134】
(第2の熱硬化型樹脂層の作製方法)
第2の熱硬化型樹脂の作製方法について、第2の熱硬化型樹脂層がシート状熱硬化型樹脂層である場合の手順を以下に説明する。
【0135】
まず、上述の各成分を混合することによりエポキシ樹脂組成物を調製する。混合方法は、各成分が均一に分散混合される方法であれば特に限定するものではない。その後、例えば、各成分を有機溶剤等に溶解又は分散したワニスを塗工してシート状に形成する。あるいは、各配合成分を直接ニーダー等で混練することにより混練物を調製し、このようにして得られた混練物を押し出してシート状に形成してもよい。
【0136】
ワニスを用いる具体的な作製手順としては、上記A〜E成分及び必要に応じて他の添加剤を常法に準じて適宜混合し、有機溶剤に均一に溶解あるいは分散させ、ワニスを調製する。ついで、上記ワニスをポリエステル等の支持体上に塗布し乾燥させることにより第2の熱硬化型樹脂層2を得ることができる。そして必要により、第2の熱硬化型樹脂層の表面を保護するためにポリエステルフィルム等の剥離シートを貼り合わせてもよい。剥離シートは封止時に剥離する。
【0137】
上記有機溶剤としては、特に限定されるものではなく従来公知の各種有機溶剤、例えばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。また通常、ワニスの固形分濃度が30〜60重量%の範囲となるように有機溶剤を用いることが好ましい。
【0138】
有機溶剤乾燥後のシートの厚みは、特に制限されるものではないが、厚みの均一性と残存溶剤量の観点から、通常、5〜100μmに設定することが好ましく、より好ましくは20〜70μmである。
【0139】
一方、混練を用いる場合には、上記A〜E成分及び必要に応じて他の添加剤の各成分をミキサーなど公知の方法を用いて混合し、その後、溶融混練することにより混練物を調製する。溶融混練する方法としては、特に限定されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などの公知の混練機により、溶融混練する方法などが挙げられる。混練条件としては、温度が、上記した各成分の軟化点以上であれば特に制限されず、例えば30〜150℃、エポキン樹脂の熱硬化性を考慮すると、好ましくは40〜140℃、さらに好ましくは60〜120℃であり、時間が、例えば1〜30分間、好ましくは5〜15分間である。これによって、混練物を調製することができる。
【0140】
得られる混練物を押出成形により成形することにより、第2の熱硬化型樹脂層2を得ることができる。具体的には、溶融混練後の混練物を冷却することなく高温状態のままで、押出成形することで、第2の熱硬化型樹脂層2を形成することができる。このような押出方法としては、特に制限されず、Tダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。押出温度としては、上記した各成分の軟化点以上であれば、特に制限されないが、エポキシ樹脂の熱硬化性および成形性を考慮すると、例えば40〜150℃、好ましくは、50〜140℃、さらに好ましくは70〜120℃である。以上により、第2の熱硬化型樹脂層2を形成することができる。
【0141】
このようにして得られた第2の熱硬化型樹脂層は、必要により所望の厚みとなるように積層して使用してもよい。すなわち、シート状エポキシ樹脂組成物は、単層構造にて使用してもよいし、2層以上の多層構造に積層してなる積層体として使用してもよい。
【0142】
[導通部材露出工程]
本実施形態では、上記第2の熱硬化型樹脂層2の積層後で上記放射線硬化型粘着剤層3の剥離前に、上記第2の熱硬化型樹脂層2の表面から上記導通部材6を露出させる(図2(c))。
【0143】
導通部材6を露出させる方法としては特に限定されず、第2の熱硬化型樹脂層2の表面に対する研磨、レーザー照射、切削、ドライエッチング等が挙げられる。第2の熱硬化型樹脂層2の表面の平坦性を確保し、複数の導通部材6を平行して露出可能な点から、第2の熱硬化型樹脂層2の表面を研磨することが好ましい。この場合、第2の熱硬化型樹脂層2の表面と導通部材6の露出部分とはほぼ同一平面内(いわゆる面一の状態)にあることになる。
【0144】
[放射線硬化型粘着剤層剥離工程]
放射線硬化型粘着剤層剥離工程では、上記支持体4側より放射線を照射して上記放射線硬化型粘着剤層3を硬化させることにより、上記放射線硬化型粘着剤層3と上記第1の熱硬化型樹脂層1との間で剥離を行う(図2(d)参照)。上記放射線硬化型粘着剤層3に放射線を照射し、放射線硬化型粘着剤層3の架橋度を増大させてその粘着力を低下させておくことで、放射線硬化型粘着剤層3と第1の熱硬化型樹脂層1との界面7(図2(c)参照)での剥離を容易に行うことができる。
【0145】
放射線照射の条件としては、放射線硬化型粘着剤層3が硬化する限り特に限定されず、例えば紫外線を照射する場合、積算照射量は10〜1000J/cm程度であればよい。
【0146】
剥離後、第2の熱硬化型樹脂層2及び第1の熱硬化型樹脂層1が完全に硬化していない場合は、必要に応じて、第2の熱硬化型樹脂層2及び第1の熱硬化型樹脂層1の硬化を行ってもよい。
【0147】
もちろん、上記放射線硬化型粘着剤層3の剥離後、上記第2の熱硬化型樹脂層2の表面から上記導通部材6を露出させる工程をさらに含むようにし、上記第2の熱硬化型樹脂層2の表面より導通部材6を露出させてから再配線工程に供してもよい。導通部材6の露出は、上述と同様の方法を用いて行うことができる。
【0148】
本工程では、導通部材6の先端が第2の熱硬化型樹脂層2の表面に露出した状態で、再配線形成工程に先だってプラズマ処理などにより導通部材6の表面をクリーニングしてもよい。
【0149】
[再配線形成工程]
本実施形態ではさらに再配線形成工程を含むことが好ましい。再配線形成工程では、上記放射線硬化型粘着剤層3の剥離後、上記露出した導通部材6と接続する再配線8を上記第2の熱硬化型樹脂層2上に形成する(図2(e)参照)。
【0150】
再配線の形成方法としては、例えば、露出している導通部材6及び第2の熱硬化型樹脂層2上へ真空成膜法などの公知の方法を利用して金属シード層を形成し、セミアディティブ法などの公知の方法により、再配線8を形成することができる。
【0151】
かかる後に、再配線8及び第2の熱硬化型樹脂層2上へポリイミドやPBOなどの絶縁層を形成してもよい。
【0152】
[バンプ形成工程]
次いで、形成した再配線8上にバンプ9を形成するバンピング加工を行ってもよい(図2(f)参照)。バンピング加工は、半田ボールや半田メッキなど公知の方法で行うことができる。バンプの材質は、半導体チップ準備工程で説明した導通部材の材質を好適に用いることができる。
【0153】
[ダイシング工程]
最後に、第1の熱硬化型樹脂層1、半導体チップ5、第2の熱硬化型樹脂層2及び再配線8などのその他の要素からなる積層体のダイシングを行う(図2(g)参照)。これにより、チップ領域の外側に配線を引き出した半導体装置11を得ることができる。ダイシングは、通常、従来公知のダイシングシートにより上記積層体を固定した上で行う。切断箇所の位置合わせは赤外線(IR)を用いた画像認識により行ってもよい。
【0154】
本工程では、例えば、ダイシングシートまで切込みを行うフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0155】
なお、ダイシング工程に続いて積層体のエキスパンドを行う場合、該エキスパンドは従来公知のエキスパンド装置を用いて行うことができる。エキスパンド装置は、ダイシングリングを介して積層フィルムを下方へ押し下げることが可能なドーナッツ状の外リングと、外リングよりも径が小さく積層フィルムを支持する内リングとを有している。このエキスパンド工程により、隣り合う半導体装置11同士が接触して破損するのを防ぐことができる。
【0156】
(半導体装置)
半導体装置11は、図2(g)に示したように、第2の熱硬化型樹脂層2内に埋め込まれた半導体チップ5と、半導体チップ5の第2主面5bを覆うように第2の熱硬化型樹脂層2と隣接して設けられた第1の熱硬化型樹脂層1と、第2の熱硬化型樹脂層2上に形成され導通部材6と接続する再配線8と、再配線8のI/Oパッド上に設けられた半田バンプ9とを備えている。
【実施例】
【0157】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、部とあるのは、重量部を意味する。
【0158】
(放射線硬化型粘着剤層の形成)
冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸−2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」ともいう。)86.4部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」ともいう。)13.6部、過酸化ベンゾイル0.2部、及びトルエン65部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーAを得た。
【0159】
アクリル系ポリマーAに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」ともいう。)14.6部を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
【0160】
次に、アクリル系ポリマーA’100部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)8部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5部を加えて、粘着剤組成物溶液Aを得た。
【0161】
実施例及び比較例において、離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、得られた粘着剤組成物溶液Aを塗布、乾燥して放射線硬化型粘着剤層を形成した。作製した放射線硬化型粘着剤層の厚さは表1に示すとおりである。
【0162】
(第1の熱硬化型樹脂層aの作製)
エポキシ当量185g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、製品名:YL−980)5部、エポキシ当量198g/eqのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製、製品名:KI−3000−4)15部、フェノール当量175g/eqのアラキラル型フェノール樹脂(明和化成(株)社製、製品名:MEHC−7851H)22.3部、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸エチル共重合体(ナガセケムテックス(株)社製、製品名:SG−70L)227.5部、及び硬化触媒としてのトリフェニルホスフィン(四国化成工業(株)製)1部をメチルエチルケトンに溶解し、無機充填剤((株)アドマッテクス社製、製品名:SE2050MC、平均粒径0.5μm)83部を添加して、固形分濃度が32重量%となる接着剤組成物の溶液を調製した。
【0163】
この接着剤組成物の溶液を、剥離ライナー(セパレータ)としてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、表1に記載の厚さを有する第1の熱硬化型樹脂層aを作製した。
【0164】
(第1の熱硬化型樹脂層bの作製)
エポキシ当量185g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、製品名:YL−980)15部、エポキシ当量198g/eqのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製、製品名:KI−3000−4)5部、フェノール当量175g/eqのアラキラル型フェノール樹脂(明和化成(株)社製、製品名:MEHC−7851H)23.1部、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸エチル共重合体(ナガセケムテックス(株)社製、製品名:SG−70L)7.65部、及び硬化触媒としてのトリフェニルホスフィン(四国化成工業(株)製)0.25部をメチルエチルケトンに溶解し、無機充填剤((株)アドマッテクス社製、製品名:SE2050MC、平均粒径0.5μm)34部を添加して、固形分濃度が32重量%となる接着剤組成物の溶液を調製した。
【0165】
この接着剤組成物の溶液を、剥離ライナー(セパレータ)としてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、表1に記載の厚さを有する第1の熱硬化型樹脂層bを作製した。
【0166】
(第1の熱硬化型樹脂層cの作製)
エポキシ当量185g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、製品名:YL−980)5部、エポキシ当量198g/eqのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製、製品名:KI−3000−4)15部、フェノール当量175g/eqのアラキラル型フェノール樹脂(明和化成(株)社製、製品名:MEHC−7851H)22.3部、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸エチル共重合体(ナガセケムテックス(株)社製、製品名:SG−70L)124.4部、及び硬化触媒としてのトリフェニルホスフィン(四国化成工業(株)製)1部をメチルエチルケトンに溶解し、無機充填剤((株)アドマッテクス社製、製品名:SE2050MC、平均粒径0.5μm)124.4部を添加して、固形分濃度が34重量%となる接着剤組成物の溶液を調製した。
【0167】
この接着剤組成物の溶液を、剥離ライナー(セパレータ)としてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、表1に記載の厚さを有する第1の熱硬化型樹脂層cを作製した。
【0168】
(第1の熱硬化型樹脂層dの作製)
エポキシ当量142g/eqのナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、製品名:HP4032D)31.6部、エポキシ当量169g/eqのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(大日本インキ社製、製品名:EPPN501HY)7.9部、フェノール当量175g/eqのアラキラル型フェノール樹脂(明和化成(株)社製、製品名:MEHC−7851S)11.8部、フェノール当量175g/eqのアラキラル型フェノール樹脂(明和化成(株)社製、製品名:MEHC−7851H)35.5部、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−メタクリル酸グリシジル共重合体(ナガセケムテックス(株)社製、製品名:SG−28GM)12部、及び硬化触媒としてのトリフェニルホスフィン(四国化成工業(株)製)1部をメチルエチルケトンに溶解し、無機充填剤((株)アドマッテクス社製、製品名:SE2050MC、平均粒径0.5μm)100部を添加して、固形分濃度が35重量%となる接着剤組成物の溶液を調製した。
【0169】
この接着剤組成物の溶液を、剥離ライナー(セパレータ)としてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、表1に記載の厚さを有する第1の熱硬化型樹脂層dを作製した。
【0170】
(第1の熱硬化型樹脂層eの作製)
エポキシ当量185g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、製品名:YL−980)5部、エポキシ当量198g/eqのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製、製品名:KI−3000−4)15部、フェノール当量175g/eqのアラキラル型フェノール樹脂(明和化成(株)社製、製品名:MEHC−7851H)22.3部、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸エチル共重合体(ナガセケムテックス(株)社製、製品名:SG−70L)342部、及び硬化触媒としてのトリフェニルホスフィン(四国化成工業(株)製)1部をメチルエチルケトンに溶解し、無機充填剤((株)アドマッテクス社製、製品名:SE2050MC、平均粒径0.5μm)149.5部を添加して、固形分濃度が32重量%となる接着剤組成物の溶液を調製した。
【0171】
この接着剤組成物の溶液を、剥離ライナー(セパレータ)としてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、表1に記載の厚さを有する第1の熱硬化型樹脂層eを作製した。
【0172】
(支持構造の作製)
支持体として厚さ725μmのガラス板を用意し、これに上記で作製した放射線硬化型樹脂層をラミネーターにて転写した。なお、ラミネートの条件は下記の通りである。
<ラミネート条件>
ラミネーター装置:ロールラミネーター
ラミネート速度:1m/min
ラミネーター温度:45℃
【0173】
次に、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層とをラミネーターにて貼り合わせることで支持構造を得た。なお、ラミネートの条件は下記の通りである。
<ラミネート条件>
ラミネーター装置:ロールラミネーター
ラミネート速度:3m/min
ラミネーター温度:75℃
【0174】
(半導体チップの配置)
支持構造の第1の熱硬化型樹脂層からセパレータを剥離し、以下の条件にてフリップチップボンダーを用いて第1の熱硬化型樹脂層上に半導体チップを配置した。この際、半導体チップの裏面(バンプ形成面とは反対側の面)と第1の熱硬化型樹脂層とが対向するように配置した。
【0175】
<半導体チップ>
半導体チップサイズ:7.3mm□
バンプ材質:Cu 30μm、Sn−Ag 15μm厚み
バンプ数:544バンプ
バンプピッチ:50μm
チップ数:16個(4個×4個)
【0176】
<ボンディング条件>
装置:パナソニック電工(株)製
ボンディング条件:150℃、49N、10sec
【0177】
(第2の熱硬化型樹脂層の混練物の作製)
以下のA成分からE成分までをロール混練り機により、80℃で10分間溶融混練し、混練物を調製した。
【0178】
A成分(エポキシ樹脂):ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成(株)社製、YSLV−80XY(エポキン当量200g/eq.軟化点80℃)) 5.7部
B成分(フェノール樹脂):ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH7851SS(水酸基当量203g/eq.、軟化点67℃))
6.0部
C成分(エラストマー):アクリル系熱可塑性樹脂((株)クラレ社製、製品名:LA−2140) 3.6部
D成分(無機充填剤):球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB−9454、平均粒子径20μm) 88部
E成分(硬化促進剤):硬化触媒としてのイミダゾール系触媒(四国化成工業(株)製2PHZ−PW) 0.14部
【0179】
[実施例1〜3及び比較例1〜2]
表1に示した組み合わせで、上記混練物を押出成形し、半導体チップを覆うように押出成形物を上記第1の熱硬化型樹脂層上に減圧プレスにて積層して厚さ1mmの第2の熱硬化型樹脂層を形成した。以上より、実施例及び比較例に係る放射線硬化型粘着剤層、第1の熱硬化型樹脂層、半導体チップ及び第2の熱硬化型樹脂層の積層体を作製した。
【0180】
<減圧プレス条件>
装置:ミカドテクノス(株)製
プレス条件:99.3Pa(減圧)、80℃、1.7kNで1分プレスした後、8.5kNで2分プレスした。
【0181】
(第1の熱硬化型樹脂層の最低溶融粘度の測定)
放射線硬化型粘着剤層との貼り合わせの前の段階で、各第1の熱硬化型樹脂層(熱硬化前)の最低溶融粘度を測定した。最低溶融粘度の測定は、レオメーター(HAAKE社製、RS−1)を用いて、パラレルプレート法により測定した値である。より詳細には、ギャップ100μm、回転コーン直径20mm、回転速度10s−1の条件にて、50℃から200℃の範囲で溶融粘度を測定し、その際に得られる溶融粘度の最低値を最低溶融粘度とした。結果を表1に示す。
【0182】
(第2の熱硬化型樹脂層の積層時の半導体チップの位置ズレの確認)
第2の熱硬化型樹脂層を第1の熱硬化型樹脂層上に積層する際に、第1の熱硬化型樹脂層上での半導体チップの位置が変位しているか否かを測長顕微鏡(キーエンス社製、倍率:500倍)により確認した。各半導体チップの位置ズレ量のうちの最大値が50μm以下である場合を「○」、50μmを超える場合を「×」として評価した。位置ズレ量としては、各半導体チップの平面視での頂点の観察前後での変位量を用いた。結果を表1に示す。
【0183】
(放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層との間での剥離力の測定)
実施例及び比較例に係る上記積層体において、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化性樹脂層との間での剥離力を測定した。まず、支持体側から紫外線を照射し、放射線硬化型粘着剤層を硬化させた。紫外線照射には、紫外線照射装置(製品名:ΜM810、製造元:日東精機(株)製)用い、紫外線放射量は、400mJ/cmとした。その後、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層との剥離力(N/20mm)を測定した。具体的には、引張試験として、商品名「オートグラフAGS−H」((株)島津製作所製)を用い、温度23±2℃、剥離角度180°、剥離速度300mm/min、チャック間距離100mmの条件下で、型剥離試験(JIS K6854−3)を行った。剥離力が20N/20mm以下である場合を「○」、20N/20mmを超える場合を「×」として評価した。結果を表1に示す。
【0184】
【表1】

【0185】
表1から明らかなように、実施例1〜3に係る積層体では、第1の熱硬化型樹脂層の最低溶融粘度が5×10Pa・s以上1×10Pa・s以下の範囲にあるので、第2の熱硬化型樹脂層の積層時に半導体チップの位置ズレも生じず、また、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層との剥離も良好に行うことができた。一方、比較例1の積層体では、半導体チップの位置ズレが生じたとともに、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層との剥離も良好に行うことができなかった。これは、第1の熱硬化型樹脂層の最低溶融粘度が5×10Pa・sを下回っていたために、第1の熱硬化型樹脂層が流動性が高くなったことに起因すると考えられる。比較例2の積層体では、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層との剥離力は良好な結果であったが、半導体チップの位置ズレが生じた。これは、第1の熱硬化型樹脂層の最低溶融粘度が1×10Pa・sを超えていたために、第1の熱硬化型樹脂層の流動性が大幅に低下し、その結果、接着力も低下したことに起因すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを備える半導体装置の製造方法であって、
第1主面に導通部材が形成された半導体チップを準備する工程と、
放射線を透過する支持体上に、放射線硬化型粘着剤層と第1の熱硬化型樹脂層とがこの順で積層された支持構造を準備する工程と、
上記第1の熱硬化型樹脂層と上記半導体チップの第1主面とは反対側の第2主面とが対向するように上記第1の熱硬化型樹脂層上に複数の半導体チップを配置する工程と、
上記複数の半導体チップを覆うように第2の熱硬化型樹脂層を上記第1の熱硬化型樹脂層上に積層する工程と、
上記支持体側より放射線を照射して上記放射線硬化型粘着剤層を硬化させることにより、上記放射線硬化型粘着剤層と上記第1の熱硬化型樹脂層との間で剥離を行う工程と
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
上記第1の熱硬化型樹脂層の50℃から200℃における最低溶融粘度が5×10Pa・s以上1×10Pa・s以下である請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
上記第2の熱硬化型樹脂層が、シート状熱硬化型樹脂層である請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
上記第2の熱硬化型樹脂層が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フィラー及びエラストマーにより形成されている請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
上記第2の熱硬化型樹脂層の積層後で上記放射線硬化型粘着剤層の剥離前に、上記第2の熱硬化型樹脂層の表面から上記導通部材を露出させる工程をさらに含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
上記放射線硬化型粘着剤層の剥離後に、上記第2の熱硬化型樹脂層の表面から上記導通部材を露出させる工程をさらに含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
上記露出した導通部材と接続する再配線を上記第2の熱硬化型樹脂層上に形成する工程をさらに含む請求項5又は6に記載の半導体装置の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−74184(P2013−74184A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213028(P2011−213028)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】