説明

単細胞タンパク質原料

本発明は単細胞タンパク質(SCP)原料の使用に関する。SCP原料は血漿中のコレステロールおよび肝臓中のトリグリセリドを低下させる。SCPはまた脂肪酸のパターンを好ましい変化に誘導する、そして血漿中のホモシステイン濃度を低下させる。本発明の好ましい態様は抗動脈硬化性および心臓保護薬としてのSCPの使用であり、いずれも薬学的および機能性食品として提供される。さらに本発明は栄養学的組成物としてのSCPの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単細胞タンパク質(SCP)原料の使用に関する。SCP原料は血漿中のコレステロールおよび肝臓中のトリグリセリドを低下させる。SCPはまた脂肪酸のパターンを好ましい変化に誘導する、そして血漿中のホモシステイン濃度を低下させる。本発明の好ましい態様は抗動脈硬化性および心臓保護薬としてのSCPの使用であり、いずれも薬学的および機能性食品として提供される。さらに本発明は栄養学的組成物としてのSCPの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトおよび/または動物の食料に取り込むことが可能な新しいタンパク質資源の開発に注目が集まっている。ヒト用の食品または動物用の飼料として多数の異なるタンパク質含有材料が伝統的なタンパク源、例えば魚粉、大豆製品および血漿等の代替品として提案されている。これら材料の中にはタンパク質含有比率の高い単細胞微生物、例えば菌類、酵母、細菌等が含まれる。これらは単細胞の複製により成長することができ、炭化水素又はその他の基質上における単細胞微生物の成長を利用するいくつかのたんぱく質生産のための生合成工程が開発されている。今日最も広く利用されているタンパク質含有微生物(ここではまた「単細胞タンパク質」という)は菌類または酵母である。単細胞タンパク質原料は例えばスプレードライ製品として直接食品中に使用することが可能である。
【0003】
WO01/60974は単細胞原料に基本的な性質を授ける方法を開示する。権利請求に係る製品はゲル化剤又は乳化剤として使用できる。
本願の発明者らは単細胞タンパク質原料が本発明に従うと有益な生物学的効果を有すること、そしてそのような原料が薬学的または機能性食品として使用できることを示した。
我々は単細胞タンパク質原料が血漿中のコレステロールおよびホモシステイン濃度を下げること、また肝臓トリアシルグリセロール濃度も下げることを示した。これらの発見に基づくと、単細胞タンパク質原料に、狭窄、動脈硬化、冠状動脈性心臓病、血栓症、心筋梗塞、脳梗塞および脂肪肝に対して予防および/または治療効果があることが期待できる。単細胞タンパク質原料による処置がこれら病気の新しい治療法を提供する。
【0004】
細菌のような単細胞生物が、細胞壁構造内にタンパク質を内包する多くの極度に小さな細胞を構成している。
便利なことに、酸素と適当な基質、例えば液体若しくは気体の炭化水素、アルコール若しくは炭水化物、例えばメタン、メタノール、天然ガス等と栄養のあるミネラル溶液を微生物を含む管型反応装置に仕込めば、単細胞原料は発酵工程で製造できる。多くのそのような工程が当業者に知られている。
【発明の開示】
【0005】
本発明で特に好ましい使用は、炭化水素分画または天然ガス上の発酵から得られる単細胞タンパク質原料である。天然ガス上の発酵から得られる単細胞タンパク質原料は特に好ましい。発酵槽の中で微生物濃度は増加するので反応装置の内容物や培養液の部分を回収し、微生物は当業者によく知られた技術、例えば、遠心分離や限外濾過で分離できる。便利にするには、発酵過程において培養液を発酵槽から常に回収し細胞濃度を1重量%から5重量%、例えば3重量%にする。
二以上の微生物から産生される単細胞原料も本発明に従って使用できる。これらは同一または分離した発酵槽で産生され得るが、一般には同一発酵条件下で同じ発酵槽内で産生される。分離した発酵工程から得られた原料はホモジナイズする前に一緒に混合することができる。
【0006】
本発明で使用される好ましい微生物にはメチロコッカス・カプシュラタス(Methylococcus capsulatus)(Bath)が含まれる;これは英国、Bathの温泉から単離された好熱性細菌でデンマーク、オーデンセのノルフェルム・ダンマーク ASより入手できる。M.カプシュラタス(Bath)は37℃から52℃で成長するが約45℃で成長速度が最大となる。グラム陰性で非運動性の球形細胞であって通常ペアで存在する。細胞内の膜は小胞板の束として配列しI型メタン栄養菌の特徴である。M.カプシュラタス(Bath)は遺伝的に非常に安定な生物でプラスミドは知られていない。成長のためにメタンまたはメタノールを利用し、タンパク質合成の窒素源としてアンモニア、硝酸または分子状窒素を利用する。
【0007】
本発明で好適に使用できるその他の微生物には、従属栄養細菌のアルカリゲネス・アシドボランス(Alcaligenes acidovorans)DB3、バチルスフィルムス(Bacillus firmus)DB5およびバチルスブレビス(Bacillus brevis)DB4等が含まれ、いずれも約45℃で成長速度が最大となる。これらの株もデンマーク、オーデンセのノルフェルム・ダンマークASより入手できる。
A.アシドボランスDB3はグラム陰性の好気性運動性桿菌でシュードモナス科に属し、エタノール、酢酸塩、プロピオン酸塩および酪酸塩を成長のために利用する。B.ブレビスDB4はグラム陰性の内生胞子形成型好気性桿菌でバチルス属に属し、酢酸塩、D-フルクトース、D-マンノース、リボース、およびD-タガトースを利用する。B.フィルムスDB5はグラム陰性の内生胞子形成型好気性運動性桿菌でバチルス属に属し、酢酸塩、N-アセチル-グルコサミン、クエン酸塩、グルコン酸塩、D-グルコース、グリセロールおよびマンニトールを利用する。
【0008】
本発明の製造方法に使用する適切な酵母はサッカロミセスおよびカンジダより構成される群から選択できる。総炭素およエネルギー源として天然ガスを使用する発酵方法の例がEP-A-306466(ダンスク・バイオプロテイン)に記載されている。この方法はメタン上で成長するメタン指向性細菌M.カプシュラタスの連続発酵に基づくものである。空気または純粋な酸素を酸化に使用し、窒素源としてはアンモニアを使用する。これらの基質に加えて、細菌培養液は通常、水、リン酸塩(例えば、リン酸)およびいくつかのミネラルを必要とし、それには、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ニッケル、コバルト、モリブデンが含まれていて、典型的には硫酸塩、塩酸塩、若しくは硝酸塩として使用される。単細胞原料の賛成に使用されるミネラル類はすべて食品クラスの純度が求められる。
【0009】
天然ガスの組成はガス田が異なると変化するが、主としてメタンよりなる。通常、天然ガスは約90%のメタン、約5%のエタン、約2%のプロパンおよびより高級な炭化水素を含むと予想される。天然ガスの発酵の間メタンはメタン指向性細菌により酸化されてバイオマスと二酸化炭素になる。メタノール、ホルムアルデヒドおよびギ酸が代謝中間体である。ホルムアルデヒドおよび二酸化炭素のいくらかはバイオマスへと同化される。しかしながら、メタン指向性細菌は炭素炭素結合よりなる基質を成長のために利用することができず、天然ガスの残った成分、即ち、エタン、プロパンおよびいくらかの高級炭化水素はメタン指向性細菌により酸化されて相当するカルボン酸を産生する(例えば、エタンは酢酸に酸化される)。このような産物はメタン指向性細菌に対して阻害的となり得るから、バイオマスの生産においてその濃度を低く、好ましくは50mg/l以下に保つことが重要である。この問題に対する解決法の一つは、メタン指向性細菌により産出された代謝物を利用することのできる一種以上の従属栄養性細菌を組み合わせて使用することである。
【0010】
そのような細菌はまた細胞溶解によって発酵培養液中に放出された有機物を利用することができる。このことは発泡を避け、また望ましくない微生物の混入による培養のリスクも回避するために重要である。
この単細胞原料の生産中、発酵混合液中のpHは一般には約6から7の間、例えば6.5±0.3に制御される。pH制御のための適切な酸/塩基は当業者によって容易に選択される。この点、水酸化ナトリウムと硫酸が特に使用に適している。発酵中の発酵器内の温度は40℃から50℃、最も好ましくは45±2℃に維持すべきである。
【0011】
本発明で使用する場合特に好ましいのが、メタン指向性菌のメチロコッカス・カプシュラタス(Bath)、従属栄養性細菌のアルカリゲネス・アシドボランスDB3およびバチルス・フィルムスDB5の組み合わせよりなる微生物株であり、任意でバチルス・ブレビスDB4と組み合わせてもよい(すべての菌株はノルフェルム・ダンマーク、オーデンセ、デンマークより入手可)。A.アシドボランスDB3の役割はM.カプシュラタス(Bath)が天然ガス中のエタンおよびプロパンから生産した酢酸塩とプロピオン酸塩を利用することである。A.アシドボランスDB3はバイオマスを生産する全細胞の最大10%、例えば約6%から8%を占める。B.ブレビスDB4およびB.フィルムスDB5の役割は培地中の溶解生成物および代謝物を利用することである。典型的には、B.ブレビスDB4およびB.フィルムスDB5は連続的発酵中、細胞数の1%に満たない。
【0012】
単細胞原料の調製に使用する適切な発酵器は、例えばダンスク・バイオプロテイン(Dansk Bioprotein)のDK 1404/92、EP-A-418187およびEP-A-306466に記載されているような環状型、またはエアリフト反応器である。好ましい反応器は出願人のPCT出願WO 03/016460に記載され、ここに参考のため援用する。静的なミキサーを有する環状型発酵器はその栓流特性のため効率よくガスを利用できる(例えば最大95%まで)。ガスは環に沿って少しずつ導入され環の終点であるヘッドスペース内に分離されるまで液体と接触を保つ。連続的な発酵は、バイオマス2−3%と希釈率0.02−0.05/h、例えば0.05−0.25/hで達成され得る。
単細胞原料の調製には他の発酵器を使用してもよく、これには筒状および撹拌タンク発酵器も含まれる。
【0013】
理想的には、天然ガスの発酵により産生されるバイオマスまたは単細胞原料は、60−80重量%の粗タンパク質;5−20重量%の粗脂肪;3−10重量%の灰分;3−15重量%の核酸(RNAおよびDNA);10−30g/kgのリン;最大350mg/kgの鉄;および最大120mg/kgの銅を含む。特に好ましくはバイオマスは68−73重量%、例えば約70重量%の粗タンパク質;9−11重量%、例えば約10重量%の粗脂肪;5−10重量%、例えば約7重量%の灰分;8−12重量%、例えば約10重量%の核酸(RNAおよびDNA);10−25g/kgのリン;最大310mg/kgの鉄;および最大110mg/kgの銅を含む。好ましくは、タンパク質のアミノ酸組成は重要なアミノ酸であるシスチン、メチオニン、スレオニン、リジン、トリプトファンおよびアルギニンが高比率で栄養学的に好ましいことが必要である。典型的には、これらはそれぞれ0.7%、3.1%、5.2%、7.2%、2.5%および6.9%の比率で存在するのがよい(アミノ酸全量に対する比率を表した)。脂肪酸は一般に主として飽和のパルミチン酸(約50%)およびモノ不飽和のパルミトレイン酸(約36%)よりなる。生成物のミネラル量は典型的にはリン(約1.5重量%)、カリウム(約0.8重量%)、マグネシウム(約0.2重量%)を多く含む。
【0014】
通常、連続的な発酵工程から得られた単細胞タンパク質原料は遠心分離と濾過、例えば限外濾過を行って、含まれている多くの水を除去し水性のペースト若しくはスラリーを製造する。遠心分離ではバイオマスの乾燥物質量が約2重量%から約15重量%、例えば約12重量%に増加する。限外濾過は40℃から50℃の間、例えば42℃から46℃で行い、バイオマスをさらに濃縮して単細胞原料を10−30重量%、好ましくは15−25重量%、例えば15−22重量%含む生成物とする。限外濾過の排除サイズは一般には約100,000ダルトンの範囲である。
【0015】
限外濾過に続いてバイオマスを、好ましくは温度10−30℃、例えば約15℃に冷却する。それには、限外濾過より得た濃縮タンパク質スラリーを熱交換器に通し、その後定温の緩衝タンクに例えば1−24時間、好ましくは5−15時間、例えば5−12時間保存する;温度は10−20℃、より好ましくは5−15℃でpHは5.5−6.5の間である。任意で単細胞タンパク質原料を滅菌してもよい。
【0016】
さらに、細胞壁構造を破壊するために単細胞原料を任意でホモジナイズしてもよい。ホモジナイズはいずれの慣用的方法でも可能であるが、慣用される高圧ホモジナイザーを用いて行ってもよい;この場合、細胞は最初の加圧、例えば最大150 MPa(1500バール)で破壊されてからホモジナイザー内圧が開放される。好ましくは、バイオマスに適用される全圧落差は40 MPaから120 MPa(400−1200バール)の範囲で、例えば約80 MPa(800バール)である。圧開放は数段階でなされてもよく、即ち、一若しくはそれより多いステップでなされてもよいが、一般には一度または二度、好ましくは一度で行われる。ホモジナイズが二段階で行なわれる場合は、第二段階の圧開放は1/5未満、好ましくは1/10未満、例えばホモジナイザー全圧の約1/20であるのが好ましい。ホモジナイズの際の材料の温度は50℃を超えないのが好ましい。ホモジナイズの工程は出願人のPCT出願WO01/60974に詳しく記載があり、参考のためにここに援用する。
【0017】
ここに記載したホモジナイズ工程により、破壊された細胞原料を含み、好ましくは破壊された細胞原料より本質的に構成される生成物が得られる。例えば、破壊された細胞原料は少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%存在する。典型的には、生成物は比較的粘稠なタンパク質スラリーで可溶性の粒子状細胞成分を含む。これは直接食品の添加物または薬物として使用できるけれども、通常はさらに加工して過剰な水分が除去される。乾燥工程をいくら追加するかの選択は、ホモジナイズ後の生成物に含まれる水分の量と、望ましい最終物中の水分量に依存する。
【0018】
典型的には、生成物は当該分野でよく知られているスプレードライ技術によりさらに加工される。流動床付または流動床のない任意の慣用的なスプレードライヤーが使用できるが、例えばAPV アンヒドロ、デンマークの3-SPD型スプレードライヤーが利用できる。好ましくは、ドライヤーへの空気の流入温度は約300℃で、流出温度は約90℃である。好ましくは、得られた生成物の含水量は約2−10重量%、例えば、6−8重量%であり、粒子サイズは0.1−0.5mmである。
【0019】
特に好ましくは、ホモジナイズの工程の後直ちにスプレードライを行なう。或いは、ホモジナイズした生成物を次の工程まで例えば貯蔵庫またはバファータンク内に蓄えることが必要であり、また実際望ましい。そのような場合、生成物を貯蔵した条件がスプレードライ後の最終物のゲル化の性質を低下させ得ることが見出された。ホモジナイズした原料のゲル化の性質は、20℃より低温で、かつpH<7、好ましくはpH<6.5、特に好ましくは、pHが5.5−6.5の範囲、例えば5.8−6.5で貯蔵されると維持され得る。このような条件下で、生成物はそのゲル化の性質を実質上損なうことなく最大24時間貯蔵される。
【0020】
我々は単細胞原料が有益な生物学的効果、例えば、血漿および肝臓中のコレステロール濃度の低下作用、を有することを見出した。該原料はまたミトコンドリアにおけるβ酸化を増加させる。こうして、本発明に従い単細胞原料は薬学的組成物として使用することができる。
さらにこの単細胞原料は食品の機能的成分として、特に動物の食餌やペットフード中の天然プラズマの代替品として有用である。ペットフードに用いる場合、例えば脂肪、糖類、塩、香料、ミネラル等の追加成分を加えてもよい。そして、生成物はさらにその外観および質感を天然肉チャンクに似せてチャンク状に成型してもよい。本発明の生成物はさらに必要な栄養を含むようにできる利点があり、動物により容易に消化されまた味も良好である。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は動脈硬化、冠状動脈性心臓病、狭窄、血栓症、心筋梗塞、脳梗塞および脂肪肝等の治療または予防のための薬学的または栄養学的な調製物のための単細胞タンパク質原料に関する。
実験データは、本発明に従ってSCP原料が血漿中のホモシステイン濃度をあきらかに下げることを示した。ホモシステインは例えば動脈硬化、冠状動脈性心臓病、狭窄、血栓症、心筋梗塞および脳梗塞のような病気のリスク因子であり、本発明のFPH原料はこれら病気の予防及び治療に効果的であると予測される。
データはさらに、肝臓中のトリアシルグリセロール濃度がSCPの摂取により低下することを示し、SCP原料が脂肪肝の予防及び治療に効果的であると予想される。
【0022】
本発明の更なる態様は高コレステロール血症の予防および/または治療に用いられる薬学的または栄養学的な組成物調製のためのSCPに関するもので、我々はSCP原料が血漿中のコレステロール濃度を低下することを示した。
更なる態様は、血漿中のホモシステイン濃度を下げるための薬学的または栄養学的な組成物調製のための単細胞タンパク質原料の使用に関する。上記の疾患の前にホモシステイン濃度が高くなることが明らかにされている。SCP原料の摂取は一般にホモシステイン濃度低下作用を有するから本発明の原料は上記疾患の発症を予防しそのリスクを低下させるのに特に適している。
【0023】
また、SCP原料が一般に心臓および動脈の保護特性を有することを示す結果があり、この原料が動脈および心臓関連疾患のリスクを低下することが予想される。
本発明の目的は、予防薬若しくは治療薬として、または機能性食品若しくは飼料としてFPH原料を与えることである。この原料はヒトおよびヒト以外の動物にも与えられる。
本発明の好ましい態様は、単細胞タンパク質原料を含む供給原料に関する。この原料は農業用の動物、例えば家禽類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;イヌやネコのような家庭内若しくはペット;サケ、タラ、ティラピア、二枚貝、カキ、ロブスター、カニ等の魚介類に用いることができる。
【0024】
本発明の好ましい態様は、メタン指向性細菌を含む微生物培養物の発酵により製造されるSCP原料を使用する。より好ましい態様では、さらに従属栄養性細菌を一種以上含む。
好ましい態様では、メタン指向性細菌メチロコッカス・カプシュラタス(Methylococcus capsulatus)(Bath)および従属栄養性細菌アルカリゲネス・アシドボランス(Alcaligenes acidovorans)DB3とバチルス・フィルムス(Bacillus firmus)DB5、さらに任意でバチルス・ブレビス(Bacillus brevis)DB4(いずれの菌株もノルフェルム・ダンマーク、オーデンセ、デンマークより入手可)との組み合わせを含む。
【0025】
定義
動物
本願において、「動物」の語は例えばヒトおよび農場(農業的)の動物、特に家禽類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の経済上重要な動物、そして食肉や卵、ミルク等の消費物を産生する哺乳類を含む。さらには、サケ、タラ、ティラピア、二枚貝、カキ等の魚介類も含むと意図される。また、イヌ、ネコ等の家庭動物も包含する。
処理
本発明の薬学的適用に関連して「処理」の語は病気の重症性を軽減することをいう。
【0026】
予防
「予防」の語は、所定の病気を予防することをいい、即ち、症状の発現前に本発明の化合物を投与することである。これは、本発明化合物が予防薬として使用できること、または所定の病気の発病若しくはリスクを予防するために機能性食品若しくは飼料の成分として使用できることを意味する。
単細胞タンパク質原料(SCM)は単細胞微生物を含む原料である。該微生物はとりわけ真菌、酵母および細菌である。SCP原料は好ましくはタンパク質を多量に含む。
【0027】
本発明化合物の投与
当該原料は既知のいかなる投与経路または投与計画に従うことも可能であるが、好ましくは経口的に投与される。経口の薬学的組成物として例えば水、ゼラチン、ガム、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、オイル、ポリアルケングリコール、石油ゼリー等の担体用材料を使用することができる。
そのような薬学的組成物は単位用量形態でもよく、他の治療上の有用な物質や常用される薬学的な補助剤、例えば保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤等を追加的に含んでもよい。該薬学的組成物は例えば錠剤、カプセル、糖衣錠、アンプル等で慣用的な液剤中にあってもよく、ドライアンプルや坐剤のような慣用的用量形態であってもよい。
加えて、本発明の化合物は具体的な病気を予防し若しくは有効な他の治療と組み合わせて適切に投与される。
本発明は以下の実施例を参考にしてより詳しく理解できる。しかしながら、これらは本発明の範囲を制限すると理解してはならない。
栄養学的組成物として、単細胞原料は任意の慣用的な方法で食品または飼料として製品化できる。
【0028】
実験項
以下の非制限的な実施例は発明を更に説明するのに役立つ。
試薬
[1-14C]パルミトイル-L-カルニチン(54Ci/mmol)はアマーシャムより購入した。リアルタイムRT−PCRの試薬はアプライド・バイオシステムズから購入した。他のすべての試薬は市販の販売元より、試薬級のものを入手した、
単細胞タンパク質(SCP)原料
実験で使用するSCP原料は実施例1と同様にして調製した。
【0029】
動物と処理
4-5週齢の雄性肥満Zuckerラット、Crl:(ZUC)/faBR(チャールズリバー、ドイツ)で、実験開始時点で平均体重120±3gのものを、昼夜12時間サイクル、気温20±3℃、相対湿度65±15%の室内で飼育した。到着したラットを無作為に代謝ケージ内に分け、一群6匹ずつ、三実験群に分けた。ラットを実験条件に適合させ試験食で4日間飼育してから、排泄物を7日間集めた。部分的に精製した食餌はSCPまたはカゼイン(対照)の形態で20%の粗タンパク質(N x 6,25)を含有していた。
【0030】
【表1】

【0031】
大豆油の脂肪酸組成(g/100g脂肪):18:2n-6(54.1±0.5), 18:1n-9(21.8±0.2), 16:0(11.2±0.1), 18:3n-3(6.10±0.2), 18:0(3.7±0.1), 18:1n-7(1.5±0.1), 20:0(0.5±0.1), 22:0(0.50±0.1).
ビタミン(mg/kg食餌): 8mg vit.A(4000I.U.), 2mg vit.D3(1000I.U.),60mg vit.E(30I.U.), 0.1mg vit.K(0.05I.U.), 1000mg コリン酒石酸水素塩, 4mg チアミン, 3mg リボフラビン, 6mg ピリドキシン, 20mg ナイアシン, 8mg パントテン酸Ca, 1mg 葉酸, 5mg vit.B12(0.05I.U.).
ミネラル(g/kg食餌):8.5g CaCO3, 6.2g CaHP04x2H20, 12.3g KH2PO4, 1.4g MgCO3, 0.4 NaCO3, 0.8g NaCl, 0.02g CuS04x5H20, 0.002g NaF, 0.0002g KI, 0.2g FeSO4xH2O, 0.05g ZnSO4xH2O.
【0032】
動物には毎日成長のための要求を満たす分の食餌を等しく提供した。水道水は自由に摂取させた。環境に順応させた後ラットを22日または23日飼育した(22日目に各群からラット3匹を死亡させ23日目には残りのラットを死亡させた)。体重は週毎に測定した。飼育の終了時には0.2mL/100g体重のHypnorm(登録商標)/Dormicum(登録商標)(フェンタニル/フルアニゾン−ミダゾラム)の1:1溶液を皮下注射して動物を麻酔した。心臓に穿刺して血液を採取し(ヘパリン中に)、肝臓を切開した。液体窒素で肝臓の一部を直ちに冷凍し、残りの部分は氷冷してホモジナイズした。プロトコールはノルウェー国の生物学的動物生体実験審議会により認められた。
【0033】
細胞亜分画の調製
ラット肝臓は個別に氷冷スクロース溶液(10mmol/L HEPES緩衝液 pH7.4 および1mmol/L EDTA中0.25mol/L スクロース)中でポッターエルベージェム(Potter-Elvehjem)ホモジナイザーを用いてホモジナイズした。細胞亜分画はBerge,R.K.等(Berge,R.K., Flatmark,T. & Osmundsen, H.(1984)、「ペロキシソーム増殖因子によるラット肝臓のペロキシソームおよびミトコンドリア中の長鎖アシル-CoAヒドロラーゼ活性の増強」、Eur.J.Biochem., 141:637-644)に従って単離した。要約すると、ホモジネートを1000 x gで10分間遠心分離し、核分画から後核分画を分離した。ミトコンドリア-リッチな分画を10,000 x g、10分間の処理で該後核分画から調製した。後ミトコンドリア分画を23,500 x g、30分間遠心分離してペルオキシソーム-リッチな分画を調製した。ミクロソームリッチな分画を後ペルオキシソーム分画の100,000 x g、75分間処理で単離した。残った上澄を細胞質分画として集めた。これらの実験は0-4℃で実施し、分画は-80℃で保存した。タンパク質はバイオラッドのプロテインアッセイキット(バイオラッド、ヒロールズ、CA)で試験し、ウシ血清アルブミンを標準とした。
【0034】
酵素試験
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPT-I)活性は基本的にBremerの記載〔Bremer, J.(1981)、「肝カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼの活性におよぼす絶食の効果とマロニル-CoAによるその阻害」、Biochim Biophys Acta 663 :628-631〕に従って測定した。CPT-Iの試験には、20mmol/L HEPES pH 7.5、70mmol/L KCl、5mmol/L KCN、100μmol/L パルミトイル-CoA、10mgBSA/mL、および0.6mg組織タンパク/mLが含まれた。反応は200μmol/L[メチル-14C]L-カルニチン(200cpm/nmol)で開始した。CPT-IIの試験条件はBSAが除外され0.01% トリトン X-100が含まれること以外は同一であった。組織タンパク濃度は2.5pg/mLであった。
【0035】
アシル補酵素Aコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)はタンパク質130mgと14C-オレイル-CoAを基質として測定した。生成物はヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸(80:20:1)を移動相としてTLCプレート上で分離し、シンチレーションカウンター(ウィン・スペクトラル1414 液体シンチレーションカウンター、ウォーレック)で計測した。3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル(HMG)-CoAリダクターゼは、タンパク質80mgと14C-HMG-CoAを基質として測定した。生成物はアセトン:ベンゼン(1:1)を移動相としてTLCプレート上で分離し、シンチレーションカウンターで計測した。脂肪酸シンターゼはRoncariの記載〔Roncari,D.A.,(1981)、「ヒト肝臓の脂肪酸シンターゼ」、Methods Enzymol., 71 Pt C:73-79〕と同様にして、Skorve 等の変更〔Skorve,J., al-Shurbaji,A., Asiedu,D., Bjorkhem,I., Berglund,L.& Berge, R.K.(1993)、「脂血濃度が正常なラットにおけるS置換ヘキサンジオン酸(3-チアジカルボン酸)の低脂血効果のメカニズムについて」、J.Lipid Res.,34:1177-1185〕に従って測定した。アセチル-CoAカルボキシラーゼは、マロニル-CoA中に取り込まれるNaH14CO3量を測定して決定した。
【0036】
脂質の分析
バイエル社トリグリセリドとコレステロール酵素キット(バイエル、テリータウン、NY)およびPAP150ホスホリピド酵素キット(ビオメリュー、リヨン、フランス)を使用し、全肝臓およびヘパリン化血漿中の脂質をテクニコン・アクソン・システム(マイルズ、タリータウン、NY)で測定した。肝臓脂質は最初にBlighとDyerの記載〔Bligh,E.G. & Dyer,W.J.(1959)、「総脂質の抽出と精製の迅速法」、Can.J.Biochem.Physiol., 37:911-91〕に従って抽出した。
【0037】
排泄物中のステロール
糞便中の総胆汁酸はSuckling等の記載〔Suckling,K.E., Benson,G.M., Bond,B., Gee,A., Glen,A., Haynes,C. & Jackson,B., (1991)、「ハムスターのコレスチラミン処理によるコレステロール低下と胆汁酸分泌」、Atherosclerosis 89: 183-190〕と同様にし、少しこれを変更して調製した。2mLのNaBH/エタノール(mg/mL)を乾燥して粉末とした糞便0.1g中に加えた。周辺温度で混合物を1時間反応させ、2mol/Lの塩酸50μlを添加して過剰のNaBHを除去した。試料より中性のステロールをn-ヘキサンで抽出し(2回続いて洗浄)、10mol/LのNaOH水溶液200μlを加えて110℃で終夜加水分解した。加水分解物240μlに水2.8mLを加えてボンドエルート(Bond Elut)C18カラム(バリアン、200mg、3mL)に付した;該カラムはあらかじめメタノール3mLと水3mLで活性化しておいた。カラムに保持された胆汁酸を20%メタノール-水3mLで2回洗浄してからメタノール3mLで溶出した。胆汁酸を45℃で風乾しイソプロパノール1mLで溶解した。テクニコン・アクソン・システムの総胆汁酸診断キット(Sigma 450A)を用いて総胆汁酸を酵素的に決定した。
【0038】
アミノ酸
食餌中のアミノ酸を6M HCl中110±2℃で22時間加水分解し、CohenとStrydom(34)の方法に従ってフェニルイソチオシアネートで誘導体化してから分析しアミノ酸を決定した。食餌中の総システインはシステインおよびシスチンを過ギ酸(88%):H2O2(30%)=9:1(v/v)で酸化しシステイン酸としてから決定した。その後、試料を6M HCl中110±2℃で22時間加水分解し、上記のアミノ酸分析に供した。肝臓および血漿中のアミノ酸は、既に記載した(24)とおり、後カラムニンヒドリン誘導体化のリチウムカラムを供えたバイオクロム20 プラスアミノ酸分析器(アマーシャム・ファルマシア・バイオテック、スウェーデン)で分析した。分析に先立って、肝臓試料に5%スルホサリチル酸を2倍量加えて抽出し脱タンパク化して、30分間氷冷し5,000 x gで15分間遠心分離した。上澄と内部標準(0.1mol/L HCl中、ノルロイシン2.5mmol/L)を4:1で混合した。血漿試料を内部標準(0.1mol/L HCl中、ノルロイシン1mmol/L)と1:1で混合し、10,000 x gで5分間遠心分離して上澄をフィルター管(除去 10kDa、バイオマックスPB ポリエーテルスルホン膜、ミリポア・コーポレーション、USA)に入れ、10,000 x gで更に30分間遠心分離した。
【0039】
脂肪酸組成
クロロホルム:メタノール=2:1(v/v)を用いて試料から脂肪酸を抽出した(35)。試料を濾過してけん化し、12%BF3-メタノールでエステル化した。肝臓および血漿中の総脂肪の脂肪酸組成をLieとLambertsenの記載〔Lie,0. & Lambertsen,G.(1991)、「HPLCおよびガスクロの組み合わせにより決定した、タラ(Gadus morhua)の7の組織におけるグリセロホスホリピドの脂肪酸組成」、J.Chromatogr., 565:119-129〕に従って分析した。脂肪酸メチルエステルは50mのCP-sil 88(クロムパック、ミデルブルグ、オランダ)溶融シリカキャピラリーカラム(i.d.0.32mm)を供えたカルロ・エルバ(Carlo Erba)ガスクロマトグラフィー〔冷却カラム注入、69℃/20s、25℃/minで160℃まで上昇、160℃で28min保持、25℃/minで190℃まで上昇、190℃で17min保持、25℃/minで220℃まで上昇、220℃で9min保持〕で分離した。メチルエステルの標準混合物(Nu-Chek-Prep、エリアン、MN、USA)を使用し、保持時間から脂肪酸を同定した。脂肪酸組成(重量%)はGLCにつないだ積算計(ターボクロム・ナビゲータ、バージョン4.0)で計算した。
【0040】
血漿中のトリアシルグリセロールリッチなリポタンパク分画からクロロホルム-メタノール混合物を用いて脂質を抽出し、シリカゲルプレートの薄層クロマトグラフ上で、ヘキサン-ジエチルエーテル-酢酸(80:20:1, v/v/v)を用いて展開しローダミン6G(0.05%メタノール溶液、Sigma)とUV照射で検出して分離した。スポットをかき取り、内部標準としてヘンエイコサエン酸(21:0)を含むチューブに入れた。エステル化のため試料にBF3-メタノールを加えた。中性のステロールおよび非けん化物を除くため、脂肪酸メチルエステル抽出物を0.5mol/L KOHのエタノール-水(9:1)溶液中で加熱した。
【0041】
回収された脂肪酸を再度BF3-メタノールでエステル化した。メチルエステルをフレームイオン化検出器と温度制御可能な気化注入口、AS 800オートサンプラー、極性の高い膜厚0.20μmのSP2340相(スペルコ)を含むキャピラリーカラム(60m x 0.25mm)を備えたGC800O Topガスクロマトグラフィー(カルロ・エルバ・インスツルメント)で分析した。最初の温度は130℃、1.4℃/minで最終214℃まで加熱した。注入口の温度は235℃であった。検出器の温度は235℃で水素(25mL/min)、空気(350 mL/min)および調製用の窒素ガス(1.6mL/min)を使用した。キャリアーガスとして水素ガスを一定の量(1.6mL/min)で流し、試料を分析した。分割比は20:1であった。メチルエステルは標品(ラロダン・ファイン・ケミカルズ、マルモ、スウェーデン)と比較して同定し、マススペクトル測定で確認した。脂肪酸の定量は、ヘンエイコサエン酸を内部標準としてクロムカード(Chrom Card) A/D 1.0 クロマトグラフィー・ステーション(カルロ・エルバ・インスツルメント)を用いて行った。
【0042】
アシル-CoAエステル
肝臓中のアシルCo-Aエステルは逆相の高速液体クロマトグラフで測定した。凍結した肝臓100mgを氷冷下1.4mol/LのHC1O4溶液および2mmol/LのD-ジチオスレイトール中でホモジナイズして10%(w/v)のホモジネートを得、これを12,000 x gで1分間遠心分離した。0.5mol/Lのトリエタノールアミンを含む122μlの3mol/L K2CO3溶液を氷冷して、500μlの上澄に加えた。10分間氷冷した後、溶液を12,000 x g、4℃で1分間遠心分離した。上澄40μlを高速液体クロマトグラフのカラムに注入しDemoz et al (39)の記載に従いアシルCo-Aエステルを測定した。但し、以下の条件を変更して使用した;溶出緩衝液AはpH5.00に調節し、グラディエント溶出は以下の通りであった;0分、83.5%A;10分、55%A;17分、10% A;溶出速度は1.0mL/min。
【0043】
リアルタイム定量的RT-PCR
トリゾール(ギブコ BRL)を用いて総RNAを精製し、逆転写酵素キット(アプライド・バイオシステムズ)を使用して1μgの総RNAを全体積100μl中に逆転写した。RNAが省略された反応は陰性対照とし、RNAが希釈された反応は標準曲線とした。
プライマーエキスプレス(アプライド・バイオシステムズ)を用いて、ラットのΔ、ΔおよびΔデサチュラーゼ、ペロキシソーム増殖活性受容体(PPAR)αおよびグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対するプライマーおよびタックマン・プローブをデザインした。GAPDHおよび18S rRNAを内因性対照として用いた。18S rRNAのプライマーおよびタックマン・プローブはアプライド・バイオシステムズより購入した。
【0044】
各試料について3回、ABI 7900 配列検出システム(アプライド・バイオシステムズ)上でリアルタイムPCRを実行した。Δ、ΔおよびΔデサチュラーゼ、PPAR-αおよびGAPDHについての各反応液20μlには3μlのファーストストランドcDNA、1x ユニバーサルマスターミックス(アプライド・バイオシステムズ)、300nmol/Lの各前進若しくは後退プライマー、および250nmol/Lのタックマン・プローブが含まれる。18S rRNAの反応には、3μlのファーストストランドcDNA、1x ユニバーサルマスターミックス(アプライド・バイオシステムズ)、1x18Sプローブ/プライマー反応混合物が含まれる。反応はすべてアプライド・バイオシステムズが一般に推奨する以下のサイクル・パラメータを用いて行った;50℃で2分間、95℃で10分間、続いて95℃で15秒および60℃で1分を40回繰り返し。それぞれの未知の試料につきCtリーディング(境界のサイクル番号)によりデサチュラーゼ、PPAR-α、GAPDHおよび18S rRNAの量を計算した。GAPDHおよび18S rRNAに対して結果を標準化した。各試料について、GAPDHおよび18S rRNAに対して標準化した。
各実験群について、動物6匹の平均±SEMを結果として報告する。統計処理は一元的Anova Dunettの試験(プリズム、グラフパッド)によった。
【実施例1】
【0045】
単細胞タンパク質(SCP)原料の調製
メチロコッカス・カプシュラタス(Methylococcus capsulatus)(Bath)、ラルストニア(Ralstonia)属、ブレビバチルス・アグリ(Brevibacillus agri)およびアニューリニバチルス(Aneurinibacillus)属はいずれもノルフェルム・ダンマークAS、オーデンセ、デンマークより入手可能であるが、これらを含む微生物培養液を環状型発酵器を用いてアンモニア/ミネラル塩培地(AMS)中で天然ガスの連続好気的発酵により、45℃、pH 6.5、希釈速度0.15/hで調製した。AMS培地は1L中に以下のものを含む;10mg NH3、75mg H3PO4.2H20、380mg MgS04.7H20、100mg CaCl2.2H2O、200mg K2S04、75mg FeSO4.7H2O、1.0mg CuSO4.5H20、0.96mg ZnS04.7H20、120μg CoCl2.6H20、48μg MnCl2.4H20、36μg H3BO3、24μg NiC12.6H20および1.20μg NaMo04.2H20。
発酵器には125℃で10秒間加熱滅菌した水を入れる。異なる栄養物の添加はその消費により制御する。バイオマス2-3%で発酵を続ける(乾燥重量換算)。表2に掲げる特徴を有する単細胞原料を連続的に収穫する。
【0046】
【表2】


バイオマスを3,000rpmの工業的な連続式遠心分離にかけ、続いて排除サイズが100,000ダルトンの膜で限外濾過を行う。得られた生成物を熱交換機で130℃、90秒間加熱して滅菌を行う。
【実施例2】
【0047】
SCPは血漿中のコレステロール濃度を低下させる。
肥満Zuckerラットに総タンパク源として20%SCPを含む食餌を与えた。SCPは上記実施例1の記載のように調製する。
食物タンパクとしてカゼインで飼育したラットに比してSCP飼育したZuckerラットでは血漿コレステロールレベルが57%低下した。結果を図1に示す。SCPが血漿中のコレステロールレベルを低下させ、コレステロール低下薬として使用できることが示された。
【実施例3】
【0048】
SCPは肝臓中のトリグリセロール濃度を低下させる。
図2はSCPが肝臓中のトリアシルグリセロール(TG)濃度を約50%低下させることを示す。このことは、本発明化合物が脂質低下剤として使用でき、脂肪肝の治療および予防剤として使用できることを示す。
【実施例4】
【0049】
SCPはアシル-CoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)の活性を阻害する。
アシル-CoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)は脂肪酸アシル-CoAがコレステロールにエステル化される反応を触媒する。その後コレステリルエステルは細胞質中に油滴として蓄えられるか、遊離のコレステロールとともにVLDLの一部として分泌される。こうして、ACATはVLDLの分泌とこれに続くコレステリルエステルの蓄積および心循環器疾患におけるリスク上主要な役割を果たしている。Zuckerラットを用いた本実験ではSCPタンパク質がトリアシルグリセロールリッチなリポタンパク分画における脂肪類の組成を変化させた;即ち、コレステリルエステルとホスホリピド濃度が低下し、一方、トリアシルグリセロール濃度がカゼイン飼育したラットより高くなった。
図3はカゼイン飼育したラットに比して、SCPタンパク質で飼育したラットではACAT活性が減少したことを示す。増加したACAT活性が動脈硬化の進行に重要な役割を果たしている強力な証拠があるので、この発見は補助食品または薬物として与えられたSCPが心臓保護作用を有することを示す。
【実施例5】
【0050】
SCPはミトコンドリア酸化を増加させる。
図4はSCPがミトコンドリアのβ酸化を増加させることを示す。脂肪酸酸化の増加はSCPの脂質低下作用の後にある重要な因子である。脂肪酸異化作用の増加はエステル化に利用できる脂肪酸の量を減少させ、肝臓によるVLDLの産生と分泌を低下させる。図4から、SCPが対照と比べてパルミトイル-補酵素Aの酸化を有意に増加させることが分かる。
【実施例6】
【0051】
SCPは脂質の恒常性に干渉する。
このデータはSCP原料が脂質の恒常性に干渉し、その内因性リガンドの蓄積を促進し得ることを示す。PPARaにおける肝mRNAレベルは変化しない(データ示さず)が肝、血漿およびトリアシルグリセロールリッチなリポタンパク質分画の脂肪酸組成がカゼイン飼育したラットに比してSCP飼育したラットで変化した;そして該変化は肝臓及び血漿中で平行ではない(表3および4)。飽和脂肪酸(14:0)、(16:0)および(18:0)の肝臓中濃度は、カゼイン飼育したラットに比してSCP飼育したラットで増加した。肝臓中のいくつかのモノ不飽和脂肪酸濃度はSCP飼育したラットで減少した。肝臓内とは対照的に、血漿中の飽和およびモノ不飽和脂肪酸では逆の効果が認められた。血漿中では、SCP飼育ラットで飽和脂肪酸(14:0)および(16:0)が増加した。モノ不飽和脂肪酸(18:1n-9)はSCP飼育ラットで約2倍増加した。不飽和脂肪酸(20:4n-6)についてはSCP飼育動物で2倍の増加が見られた。従って、肝臓ではエロンガーゼ活性が増加していたと予想される。SCP飼育動物は(18:2n-6)濃度が血漿中で増加を示し、他方、(20:4n-6)濃度は減少を示した。結果として、血漿中の(20:4n-6)/(18:2n-6)の比は減少した。肝臓中で測定したすべての(n-3)脂肪酸はSCP飼育ラットで増加していた。SCP飼育により、(18:3n-3)は血漿中で4倍増加した。(20:5n-3)はSCP飼育ラットで有意に増加した。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【実施例7】
【0054】
SCPは血漿中のホモシステイン濃度を低下させる。
ホモシステインレベルの上昇、即ち高ホモシステイン血症の動脈疾患との関連が提唱されており、ラットの血漿試料中のホモシステイン濃度を測定した。
血漿の総ホモシステイン量を全自動蛍光試験で測定した。血漿30μlを30μlのNaBH4/DMSO溶液(6mol/L)で還元した。1.5分経過後、蛍光試薬モノブロモビマン/アセトニトリル溶液(25mmol/L)20μlを加えて3分間反応させた。試料20μlを直ちにHPLCに注入し強酸性のカチオン交換カラム、それからカラム変更してシクロヘキシルシリカカラムで分析した。該SCXカラムはアイソクラチックに、そしてCHカラムはメタノールの直線的グラディエント(5分間で17%から35%へ)を用いてギ酸緩衝液20mmol/Lで溶出した。ホモシステインは保持時間4.5分で溶出した。結果を表5に示す。
【0055】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は単細胞原料(SCP)が血漿中のコレステロール濃度を減少させることを示す。
【図2】図2は単細胞原料(SCP)が肝臓漿中のトリアシルグリセロール濃度を減少させることを示す。
【図3】図3は単細胞原料(SCP)がACAT酵素を阻害することを示す。
【図4】図4は単細胞原料がミトコンドリア中のβ酸化を増加させることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物における動脈硬化、冠状動脈性心臓病、狭窄、血栓症、心筋梗塞、脳梗塞および脂肪肝に対して予防および/または治療のための薬学的または栄養学的組成物の製造のための単細胞タンパク質原料の使用。
【請求項2】
高コレステロール血症の予防および/または治療のための薬学的または栄養学的組成物の製造のための単細胞タンパク質原料の使用。
【請求項3】
血漿中のホモシステイン濃度を低下させるための薬学的または栄養学的組成物の製造のための単細胞タンパク質原料の使用。
【請求項4】
心臓を保護する薬学的または栄養学的組成物の製造のための単細胞タンパク質原料の使用。
【請求項5】
脂肪酸のパターンを変化させ、および脂質の恒常性を改善する薬学的または栄養学的組成物の製造のための単細胞タンパク質原料の使用。
【請求項6】
該動物がヒトである、請求項1−5のいずれかに記載の単細胞タンパク質原料の使用。
【請求項7】
該動物が、例えば家禽類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタのような農業用の動物である、請求項1−5のいずれかに記載の単細胞タンパク質原料の使用。
【請求項8】
該動物が、例えばイヌ、ネコのような家庭用のまたはペットの動物である、請求項1−5のいずれかに記載の単細胞タンパク質原料の使用。
【請求項9】
該動物が、例えばサケ、タラ、ティラピア、二枚貝、カキ、ロブスター、カニのような魚介類である、請求項1−5のいずれかに記載の単細胞タンパク質原料の使用。
【請求項10】
該単細胞原料がメタン指向性細菌を含む微生物培養物である、請求項1−9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
該微生物培養物がさらに一種類以上の従属栄養性細菌を含む、請求項9の使用。
【請求項12】
該微生物培養物が、メチロコッカス・カプシュラタス、ラルストニア属、ブレビバチルス・アグリおよびアニューリニバチルス属を含む微生物培養物の組み合わせを包含する、請求項10の使用。
【請求項13】
SCP原料においてメチロコッカス・カプシュラタスが主たる成分または唯一の成分である、請求項1−12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
単細胞培養物が連続的発酵により生産され、好ましくは2-3%(乾燥重量基準)のバイオマスでもって実施される、請求項1−13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
発酵後に単細胞培養物が好ましくは3,000 rpmの条件で、工業的な連続的遠心分離に付され、続いて排除サイズが好ましくは100,000ダルトンである膜を用いて限外濾過される、請求項1−14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
該単細胞培養物が好ましくは熱交換器によりさらに滅菌工程に付される、請求項15の使用。
【請求項17】
該単細胞培養物がさらにホモジナイズ工程に付される、請求項12−16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
該単細胞培養物がスプレードライにより乾燥される、請求項12−17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
スプレードライの前に該原料が温度が20℃未満、pHが6.5未満の貯蔵タンク内に蓄えられる、請求項16の使用。
【請求項20】
該単細胞原料が炭化水素分画または天然ガス上の発酵から得られる、請求項1−19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
該組成物が例えば動物用の食餌やペットフードのような食料品または食品添加物としての品質である、請求項1−20のいずれかに記載の使用。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−527385(P2007−527385A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518571(P2006−518571)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/NO2004/000204
【国際公開番号】WO2005/002606
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506177866)ベルゲ・バイオメッド・アクティーゼルスカブ (2)
【氏名又は名称原語表記】Berge Biomed AS
【出願人】(506177811)バイオ・フード・アンド・フィード・アクティーゼルスカブ (1)
【氏名又は名称原語表記】Bio Food & Feed AS
【Fターム(参考)】