説明

危険場所において使用されるフィールド装置のためのワイヤ・ハーネス

ワイヤレス・プロセス通信アダプタ(14、30)は、第一端、及び、第二端を有するハウジング(120)を含む。フィールド装置カップリング部(122)が、第一端、及び、第二端の一方に取り付けられている。アダプタ回路(154)が、ハウジング(120)内に配置され、フィールド装置カップリング部(122)の中を通る複数のワイヤに結合されている。ワイヤ・リテーナ(160)が、複数のワイヤと係合してワイヤを固定位置に維持する。封止材料(136)が、アダプタ回路(154)、ワイヤ・リテーナ(160)、及び、複数のワイヤを封止する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景技術)
工業的状況においては、工業、及び、化学プロセスなどの目録をモニタリングし、制御するために制御システムが使用される。概して、制御システムは、工業プロセス中の主要な場所に分散し、プロセス制御ループによって制御室中の制御回路に結合されたフィールド装置を使用してそのような機能を実行する。「フィールド装置」とは、工業プロセスの計測、制御、及び、モニタリングにおいて使用される、現在知られている、、又は、今後知られることになるすべての装置を含む、分散制御、又は、プロセス・モニタリング・システムにおいて機能を実行する任意の装置をいう。
【0002】
一部のフィールド装置は、トランスデューサを含む。トランスデューサとは、物理的入力に基づいて出力信号を生成する装置、又は、入力信号に基づいて物理的出力を生成する装置をいうものと理解される。概して、トランスデューサは、入力を、異なる形態を有する出力に変形する。トランスデューサのタイプとしては、様々な分析センサ、圧力センサ、サーミスタ、熱電対、ひずみゲージ、レベルセンサ、デジタル弁制御装置、流量計、流量計算機、ポジショナ、アクチュエータ、ソレノイド、インジケータ・ランプなどがある。
【0003】
概して、各フィールド装置は、また、プロセス制御ループを介して、プロセス制御室、又は、他の回路と通信するために使用される通信回路を含む。一部の施設において、プロセス制御ループは、また、フィールド装置を駆動するために調整された電流、及び/又は、電圧を、フィールド装置に印加するためにも使用される。プロセス制御ループは、また、アナログ、又は、デジタル・フォーマットにあるデータを搬送する。
【0004】
従来、アナログ・フィールド装置は、2線式プロセス制御電流ループによって制御室に接続され、各装置が、一つの2線式制御ループによって制御室に接続されていた。概して、二つのワイヤの間には、アナログ・モードの場合で12〜45ボルトの範囲内、デジタル・モードの場合で9〜50ボルトの範囲内の電圧差が維持される。一部のアナログ・フィールド装置は、電流ループ中を流れる電流を、検出されたプロセス変量に比例する電流に変調することにより、信号を制御室に送信する。他のアナログ・フィールド装置は、制御室の制御の下、ループ中を流れる電流の大きさを制御することによって、動作を実行することができる。それに加えて、又は、それに代えて、プロセス制御ループは、フィールド装置との通信に使用されるデジタル信号を搬送することもできる。
【0005】
一部の施設においては、フィールド装置との通信のためにワイヤレス技術が使用され始めた。ワイヤレス動作は、フィールド装置の配線、及び、セットアップを簡素化する。しかし、フィールド装置の大多数は、プロセス制御室にハードワイヤ接続され、ワイヤレス通信技術を使用しない。
【0006】
工業プロセス・プラントは、多くの場合、何百、又は、何千ものフィールド装置を含む。これらのフィールド装置の多くは、精巧な電子部品を含み、従来のアナログ4〜20mA計測よりも多くのデータを提供することができる。数多くの理由、とりわけコストのため、多くのプラントは、そのようなフィールド装置によって提供されることができる余分なデータを利用しない。これが、フィールド装置に取り付けることができ、ワイヤレス・ネットワークを介して、制御システム、又は、他のモニタリング、もしくは、診断システム、もしくは、アプルケーションに、データを送り返すことができる、そのようなフィールド装置のためのワイヤレス・アダプタの必要性を生じさせた。
【0007】
工業プロセス・プラントを運転するために、フィールド装置は、多くの場合、危険場所で認証される規格仕様を有しなければならない。様々なタイプの規格仕様があり、広く採用されるためには、ワイヤレス・フィールド装置アダプタは、そのフィールド装置の危険場所で認証される規格仕様を損なうことなく、そのようなフィールド装置に取り付けることができるべきである。
【0008】
そのような認証規格仕様の一つが、耐爆発性、又は、爆発保護の規格仕様(防爆規格仕様)として知られている。防爆エンクロージャの目的は、可燃性ガスがエンクロージャに入り、発火した場合に、爆発を封じ込めることである。エンクロージャが爆発を封じ込めることができない場合には、周囲のガスを発火させ、壊滅的な結果を招くおそれがある。
【0009】
もう一つのタイプの認証規格仕様が、本質安全(IS)として知られている。本質安全の装置は、電子部品中に存在するエネルギーの量を制限し、電気的障害の場合にアーク放電を防ぐのに十分なだけ各電子部品が離間していることを保証することにより、可燃性ガスの発火を防ぐ。また、電子部品によって生成される熱が抑制される。装置の電子部品を本質安全にすることは、部品点数を増やし、回路板サイズを増す傾向にある。これもまた、装置の形状のファクターを最小限にしなければならない場合、難題を提起する。
【0010】
ワイヤレス・プロセス通信アダプタを、防爆施設において使用するためには、ワイヤレス・プロセス通信アダプタそのものが防爆性でなければならず、二つの装置の間の接続部に防爆バリヤが提供されなければならない。本質安全の施設の場合、ワイヤレス通信回路もまた、本質安全でなければならない。そのようなアダプタを任意の装置に取り付ける能力もまた、形状のファクターを増大させる。フィールド装置のような工業装置は、数多くの形態で設けられることができ、多くの場合、狭い空間内に配置される。このことから、小さく、突出しない設計が必要とされる。これを達成するためには、アンテナをワイヤレス・プロセス通信アダプタと一体化させ、回路板サイズを最小限にすることが有効である。このことは、防爆の認証、又は、本質安全の認証を要求する装置の場合に、設計を複雑化する。
【0011】
防爆認証、及び/又は、本質安全との適合を容易にすることができるワイヤレス通信を提供することは、ワイヤレス・プロセス通信の技術を進歩させるであろう。
【発明の概要】
【0012】
ワイヤレス・プロセス通信アダプタは、第一端、及び、第二端を有するハウジングを含む。フィールド装置カップリング部は、第一端、及び、第二端の一方に取り付けられている。アダプタ回路は、ハウジング内に配置され、フィールド装置カップリング部の中を通る複数のワイヤに結合されている。ワイヤ・リテーナは、複数のワイヤと係合してワイヤを固定位置に維持する。封止材料が、アダプタ回路、ワイヤ・リテーナ、及び、複数のワイヤを封止する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施態様にしたがってワイヤレス・プロセス通信アダプタに動作可能に結合されたプロセス配線フィールド装置の略図である。
【図2】本発明の実施態様のフィールド装置、及び、ワイヤレス・プロセス通信アダプタの簡略化断面図を示す。
【図3】本発明の実施態様のワイヤレス・プロセス通信アダプタの斜視図である。
【図4】本発明の実施態様のワイヤレス・プロセス通信アダプタの断面図である。
【図5】本発明の実施態様のワイヤレス・プロセス通信アダプタのワイヤ・ハーネス・リテーナの斜視図である。
【図6】本発明の実施態様のワイヤレス・プロセス通信アダプタのワイヤ・ハーネス・リテーナの側面図である。
【図7】本発明の実施態様にしたがってワイヤレス・プロセス通信アダプタの一部分内に配置されたワイヤ・ハーネス・リテーナの断面図である。
【図8】本発明の実施態様のワイヤレス・プロセス通信アダプタのワイヤ・リテーナの略図である。
【図9】本発明の実施態様にしたがってワイヤレス・プロセス通信アダプタとで使用するための代替ワイヤ・ハーネス・リテーナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
例示的実施態様の詳細な説明
本発明のいくつかの実施態様は、ワイヤレス・プロセス通信アダプタのワイヤ・ハーネスが、ガスが、ワイヤの絶縁材、又は、撚り線の中を通って移動し、電子部品に到達することを許してしまうということを認識したことに由来する。ワイヤ・ハーネス(図3に示す)は、フィールド装置、又は、アダプタがデータを送受信することができるよう、ワイヤレス・プロセス通信アダプタをフィールド装置に接続するために使用される。ガスが、ワイヤの絶縁材、及び/又は、撚り線の中を通って移動し、電子部品に到達することを防ぐために、本発明のいくつかの実施態様では、概して、ワイヤの絶縁材が除去され、錫めっきされる部分、又は、接続部を、いかなるガスの侵入をも阻止する封止物質内にすることで、それにより、いかなるガスの浸入もブロックすることを提供する。好ましい実施態様では、概して、ワイヤの絶縁材を除去し、及び、錫めっき、ならびに、封止材を使用して、封止された危険場所の認証を維持するための、より簡単で費用効果の高い方法を提供する。さらなる詳細内容は、本明細書中に後述する。参考として、ワイヤレス・プロセス通信アダプタ、及び、それがフィールド装置に接続し、フィールド装置と相互動作する方法を検討することが有用である。
【0015】
図1は、本発明の実施態様にしたがってワイヤレス・プロセス通信アダプタ14に動作可能に結合されたプロセス配線フィールド装置12の略図である。図1において、フィールド装置12は、米ミネソタ州ChanhassenのEmerson Process Managementから商品名Model 3051Sとして市販されているようなプロセス流体圧力トランスミッタとして示されているが、いかなる適当なフィールド装置を使用することもできる。概して、フィールド装置は、センサ・モジュール16のようなセンサ・モジュール、及び、電子部品モジュール18のような電子部品モジュールを含む。さらに、上述したように、フィールド装置12は、多くの場合、防爆規格に適合するように設計されている。さらに、フィールド装置12内の電子部品の設計は、1998年10月にFactory Mutual Researchによって公布されたAPPROVAL STANDARD INTRINSICALLY SAFE APPARATUS AND ASSOCIATED APPARATUS FOR USE IN CLASS I, II AND III, DIVISION 1 HAZARDOUS (CLASSIFIED) LOCATION, CLASS NUMBER 3610と題する規格の一つ以上の部分のように本質安全の要求事項に準拠することもできる。フィールド装置12は、概して、圧力のようなプロセス流体特性を変換し、そのプロセス流体変量の電気的指示を電子部品モジュール18に提供する、圧力センサのようなセンサをセンサ・モジュール16中に含む。そして、電子部品モジュール18は、概して、入力20を介して結合するプロセス通信ループを介してプロセス変量情報を送る。
【0016】
上記のように、ワイヤレス通信能力のようなさらなる通信能力をプロセス配線フィールド装置に提供することが有利になりつつある。プロセス通信アダプタ14のようなワイヤレス・プロセス通信アダプタを提供することにより、プロセス配線の接続を介して送信されるよりも多くのデジタル情報を搬送することができる。そのような情報は、分析のために、別個のモニタリング、又は、診断システム、又は、アプリケーションに送ることができる。さらには、アダプタ14のような、さらなる通信リソースの簡単な配備が冗長な通信を可能にする。プロセス通信アダプタ14にとって重要なことは、防爆、及び/又は、本質安全の要求事項を満たし続けるアセンブリの能力に悪影響を及ぼすことなく、フィールド装置に結合可能であることが重要である。
【0017】
図2は、本発明の実施態様のフィールド装置12、及び、ワイヤレス・プロセス通信アダプタ30の簡略化断面図を示す。フィールド装置12は、入力20、及び、導管11を介してプロセス通信ループ22に結合されている。プロセス通信ループの例は、HART(Highway Addressable Remote Transducer)(登録商標)プロトコル、及び、FOUNDATION(商標)フィールド・バス・プロトコルを含む。しかし、他の配線プロセス通信プロトコルが公知である。プロセス変量トランスミッタの例において、フィールド装置12は、プロセス変量を計測するために計測回路52に接続されているプロセス変量センサ50を含む。トランスミッタ回路54が、プロセス変量を受け、公知の技術を使用してそのプロセス変量を2線式プロセス制御ループ22に載せて送るように構成されている。フィールド装置12は、ワイヤレス通信アダプタ30、及び、接続端子ブロック106を介して2線式プロセス制御ループ22に結合している。ワイヤレス通信アダプタ30は、接続端子ブロック106を介して2線式プロセス制御ループ22に結合し、例えば、ねじ接続123、及び、109によってフィールド装置12のハウジングに取り付けられている。ワイヤレス・プロセス通信アダプタ30のシャシが、ワイヤ108を介してフィールド装置12のアース・コネクタ110に結合している。フィールド装置12は、ワイヤレス・プロセス通信アダプタ30からの接続112に結合する2線式プロセス接続端子ブロック102を含む。ワイヤレス・プロセス通信アダプタ30のハウジング120は、ワイヤレス・プロセス通信アダプタ30のワイヤレス通信回路に結合するアンテナ126を担持している。無線周波数(RF)透過性のエンドキャップ124をハウジング120に封止可能に結合して、それを通過するRF信号の送信を可能にすることができる。図2に示す構造においては、四つのループ接続を一つのアース接続とともに含む五つの電気接続が無線周波数アダプタに提供されている。
【0018】
図3は、本発明の実施態様のワイヤレス・プロセス通信アダプタ30の斜視図である。アダプタ30は、概して、電子部品、及び、ワイヤレス通信回路をその中に担持するハウジング120を含む。また、フィールド装置カップリング部122は、アダプタ30を適当なフィールド装置と結合させるために提供されている。アダプタ30と適当なフィールド装置との間の電気的接続は、概して、参照番号158、160のところに線図で示される複数のワイヤを介するものである。図3には二つのワイヤが示されているが、一つの実施態様においては、実際には、プロセス通信アダプタをフィールド装置に電気的に結合するために、四つ以上のワイヤが使用される。
【0019】
図4は、本発明の実施態様のワイヤレス・プロセス通信アダプタの断面図である。図4に示すように、ワイヤレス・プロセス通信アダプタは、好ましくは、無線周波数透過性レードーム、又は、エンドキャップ124を収容するための大きな開口150を一端に有し、フィールド装置カップリング部122を収容するための相対的に小さな開口152を他端に有する円柱形の金属エンクロージャ120を含む。電子部品154は、キャビティ130内に、好ましくは、一対のプリント回路板132、134上に位置する。電子部品は、好ましくは、ワイヤレス・プロセス通信アダプタが、一つ以上のワイヤレス通信プロトコルにしたがって通信することを可能にするためのワイヤレス通信回路を含む。適当なワイヤレス・プロセス通信プロトコルの例は、例えば、、ワイヤレスネットワーキング技術(米カリフォルニア州IrvineのLinksysによって構築されたIEEE 802.11bワイヤレスアクセスポイント、及び、ワイヤレスネットワーキング装置など)、セル方式、又は、デジタルネットワーキング技術(米カリフォルニア州San JoseのAeris Communications社のMicroburst(登録商標)など)、超ワイドバンドフリースペースオプチックス全世界的モバイル通信システム(GSM)、汎用パケット無線サービス(GPRS)、コード分割多重アクセス(CDMA)、スペクトラム拡散技術、赤外線通信技術、SMS(Short Messaging Service/text messaging)、Bluetooth SIG(www.bluetooth.com)から入手可能なBluetooth Core Specification Version 1.1(2001年2月22日)のような公知のBluetooth規格、及び、Hart Communication Foundationによって公表されたワイヤレスHART規格を含む。ワイヤレスHART(登録商標)規格の関連部分は、HCF_Spec 13改訂7.0、HART規格65―Wireless Physical Layer Specification、HART規格75―TDMA Data Link Layer Specification(TDMAとは時分割多重アクセスを指す)、HART規格85―Network Management Specification、HART規格155―Wireless Command Specification、及び、HART規格290―Wireless Devices Specificationを含む。
【0020】
各回路板132、134上の電子部品は、好ましくは、封止コンパウンドの流れを容易にするために、それらの周囲、及び、回路板と回路板との間に、間隔をおいて取り付けられる。エンクロージャが封止された状態で、封止材136が通路156からチャンバ130の中に注入されてエンクロージャが満たされる。適当な封止コンパウンドを使用することができるが、封止材料そのものが、適当な、耐薬品性、高い側と低い側の作動温度における耐熱性、ならびに、他の関連パラメータを含んで、認証機関の要求事項を満たすことが重要である。レードーム124、エンクロージャ120、及び、フィールド装置カップリング部122は、封止材136のための耐候(防水)性のシェルを提供する。
【0021】
フィールド装置カップリング部122は、フィールド装置12に直接付ける方法を提供する。また、好ましくは、フィード・スルー・アセンブリが接続点において防爆バリヤとして働く。可燃性ガスがフィールド装置のエンクロージャに入り、発火する場合には、フィード・スルー・アセンブリ140がその爆発を封じ込める。ワイヤ158、160は、フィード・スルー・アセンブリ140の中を通っている。カップリング部122の内部は、爆圧に耐えることができる封止材で満たされている。
【0022】
フィールド装置カップリング部122は、腐食性、又は、爆発性ガスのようなガスがチャンバ130に入ることを阻止し、電子部品154に到達することができないよう、ワイヤリングハーネスを封止するのに役立つ。これは重要であり、なぜなら、ワイヤレス・プロセス・アダプタは、それが結合しなければならないフィールド装置が適合する防爆、及び、潜在的な本質安全の規格を満たすように設計されているためである。重要なことに、ワイヤ・ハーネスそのものもまた、危険場所の認証のためのすべての要求事項を満たさなければならない。プロセス通信アダプタ30のワイヤ・ハーネスは、好ましくは、互いに対して非常に密接に装填された四つのワイヤを含む。本質安全の危険場所の認証のためには、ワイヤの絶縁材厚さは、接触時に、本質安全の認証における間隔の要求事項を満たすような空間を、ワイヤ内の複数の導体どうしの間に有する厚さであるように、特異的に選択される。
【0023】
本発明の実施態様は、好ましくは、絶縁材の一部分が除去されているワイヤを含む。さらには、ワイヤリングハーネスのために、撚り線を使用することが好ましい。ガスが、撚りの間、又は、撚り線の個々のストランド(各個別子線)と絶縁材との間の空間を通って移動することを防ぐために、各ワイヤは、そのワイヤの一部分に沿って絶縁材が除去され、その絶縁材が除去された部分が錫めっき、ろう付け、又は、他の方法で処理されて撚り線を溶融物で一体化させ、相対的に一体化されて連続的な導体を提供している。ワイヤ・リテーナ160は、絶縁材が除去され、錫めっきされたワイヤの部分を、本質安全の要求事項を満たすのに適した間隔に維持する。ワイヤ・リテーナ160は、また、絶縁材が除去された部分が、相互に、又は、ワイヤが通るカップリング部122の壁に、接触しないようにワイヤの方向を制御する。もし、ワイヤが、相互に、又は、カップリング部122の壁に、接触する場合には、フィールド装置全体、又は、ワイヤレス・プロセス通信アダプタを誤作動させるおそれがある。ワイヤレス・プロセス通信アダプタが、封止材料(材料136など)で満たされる場合、極めて重要なのは、充填工程、又は、硬化工程の間にワイヤが動かないことである。
【0024】
ワイヤ・ハーネスに関して考慮すべきもう一つの点は、機械的強度である。ワイヤ・ハーネスは、概して、アダプタ30の内側で回路板に、はんだ付けされる。アセンブリ工程の最後にアダプタが完全に封止されるまでのアセンブリの残り部分で、ワイヤ・ハーネスが有する唯一の接合部は、はんだ接合部のみである。このことは、もし、ワイヤレス・プロセス通信アダプタが、そのワイヤ・ハーネスをもって取り扱われる場合には、そのはんだ接合部に対して、応力が誘発されることがあることを意味する。この応力は、そのはんだ接合部を損傷させえる。したがって、ワイヤ・リテーナ160は、ワイヤを所定位置に保持し、ワイヤからの力をはんだ接合部ではなくフィッティングの中に分散する方法を含むことが好ましい。これを実施する一つの方法が、図4、及び、7に示されている。具体的には、ワイヤ・リテーナ160は、フィールド装置カップリング部122の開口162の中を通過し、テーパ部分164に到達するまでスライドすることができるようなサイズである。その後、ワイヤ158、160が矢印166によって示される方向に引かれるとしても、ワイヤ・リテーナがテーパ部分164の中に押し込まれるだけであり、ワイヤ158、160を回路板132に電気的に結合するはんだ接合部に対して、応力は何も加わらない。
【0025】
図5は、本発明の実施態様のワイヤ・リテーナ160の拡大斜視図である。図示するように、ワイヤ・リテーナ160は、四つのワイヤ、すなわち上方に示す二つ、及び、下方に示す二つを保持する。各ワイヤは、その絶縁材を除去されており、その絶縁材が除去された部分は錫めっき、又は、他の方法で溶融一体化されている。例えば、、図5には、絶縁材が除去された部分170を有するワイヤ158を見ることができる。ワイヤ・リテーナ160は、ワイヤの適切な保持のために重要な特徴を含む。一つの特徴は、絶縁材とその絶縁材が除去されたワイヤとの間の寸法差を利用する。絶縁材は、非常に大きな外径を有するため、絶縁材が載るための肩部172を有し、この肩部が、ワイヤが、ワイヤ・リテーナ中に配置されるとき、ワイヤを位置づけしやすくする。各肩部172に近接して、錫めっきされた導体部分を通過させるサイズであるが、絶縁材を嵌め込むには小さすぎる幅を有する縮径部分174がある。したがって、ワイヤ158のような所与のワイヤがリテーナ160内に保持されると、ワイヤの長手に沿う軸方向力のすべてが本質的に伝達できなくされ、ワイヤ・リテーナ160へ変換される。さらに、縮径部分174のおかげで、錫めっきされた各ワイヤの部分は、相互に一定の距離に維持される。ワイヤ・リテーナ160のもう一つの重要な特徴が、図6にリブ176の形態で示されている。これらのリブは、ワイヤ上の絶縁材をリブの周囲に変形させる締り嵌めを生じさせるように設計されており、それがワイヤを所定位置に維持するのに役立つ。このようにして、ワイヤ・リテーナ160は、ワイヤからフィールド装置カップリング部122に加わる力(誰かがワイヤを引くことによって、、又は、ワイヤレス・プロセス通信アダプタがそのワイヤをもって取り扱われることによって生じるような力)を効果的に分散させる機械的接合部を形成する。上述したように、これが、回路板132上のはんだ接合部に応力が加わることを防ぐ。
【0026】
好ましくは、ワイヤ・ハーネスに使用されるワイヤサイズは、線号22ゲージである。ワイヤは、横並びしたとき、絶縁材の厚さが、導体間の間隔が本質安全の危険場所の認証のための最小間隔の要求事項を超えるに十分な厚さを有するように選択される。好ましくは、ワイヤは、その長手に沿って最小0.200インチの絶縁材が除去されており、線が撚ったものであるため、撚り線の複数のストランドの間の各隙間を、その全長に沿って埋めるために錫めっきされている。しかし、当業者は、ワイヤに対し、絶縁材厚さ、ワイヤゲージ、及び、導体スタイルに関していかなる数の変更を加えることができることを理解するであろう。従って、本発明の実施態様は、本明細書の実施形態中に記載された特定の線の形態には限定されない。
【0027】
上述したように、ワイヤ・リテーナ160は、製造中、ワイヤを正しい方向に保持する。そのうえ、リブ176の利用が、ワイヤの絶縁を維持するのに役立ち、また、リテーナ160を相対的に射出成形しやすくなるので、それが製造コストを抑えるのに役立つ。図5〜7に示す実施態様が好ましいが、本発明は、他のワイヤ・リテーナ形態と共に実施することもできる。
【0028】
図8は、本発明の代替の実施態様のワイヤ・リテーナ260を示す。ワイヤ・リテーナ260は、好ましくは、カップリング部122の内径に実質的に合致する曲率半径のサイズに形成された一対の面262、264を有する。さらには、リテーナ260の各ワイヤ保持位置266は、U字形の溝268を含み、その入口270は、部分272よりも狭い。このようにして、部分270は、ワイヤをそこに通すためには、絶縁材、すなわち、部分270が変形しなければならないような方法でワイヤの絶縁材に干渉するサイズである。これによりワイヤのためのスナップ嵌めが形成される。リテーナ260は、また、絶縁材が除去され、錫めっきされたワイヤの導体を受けるための相対的に小さな溝を含む縮径部分274を含む。さらには、面276もまた、絶縁材の表面に当接するために有用である。
【0029】
図9は、本発明のもう一つの実施態様のワイヤ・リテーナ360の線図である。リテーナ360は、本質的に、ヒンジを有するプラスチック、又は、非金属のピースであり、好ましくは、その中にワイヤを保持するように、共に留め合うか、又は、そうでなければ共に掛かり合うように設計されている。図9に示すように、リテーナ360は、一対のヒンジ362を含み、このヒンジを中心にして、対向する部材364、及び/又は、366が枢動する。このようにして、ひとたびワイヤがすべて各々の溝の中に配置されると、ワイヤ・リテーナ360を閉じ、好ましくは、共に掛かり合うようにすることで、ワイヤを所定位置に保持することができる。図9は、また、ワイヤ・リテーナ360が、好ましくは、絶縁材との間に干渉を生じさせて、ワイヤを所定位置の保持するのに役立つサイズで形成される、多数のリブ368を含むことを示す。さらに、リテーナ360はカバー370、及び、372を含む。
【0030】
ワイヤレス・プロセス通信アダプタ30は、従って、好ましくは、封止の使用、及び、フィード・スルー・アセンブリの適用を用いることで、防爆、及び、環境に対する保護を提供し、本質安全の保護のために、電子部品の間に求められる間隔を減らす。本質安全の間隔に対する要求事項は、部品間の空間が封止材で満たされる場合には、厳しくなくなる。これにより、装置全体を、より効果的に小型化することを可能にする。封止は、可燃性ガスをすべて排除することによって、防爆を達成する。ワイヤレス・プロセス通信アダプタ30の電子部品は、封止材によって完全に包囲され、したがって、環境から保護される。
【0031】
本発明の様々な実施態様において上述されたワイヤリング・ハーネス・パッケージは、概して、ワイヤレス・プロセス通信アダプタが、防爆の封止、及び、本質安全の危険場所の認証を達成することを可能にする。そのワイヤ部の設計は、ガスがワイヤに沿って移動して封止された電子部品に到達することを防ぐ。そのワイヤ部、及び、そのワイヤ・リテーナの設計は、本質安全の要求事項のための正しい間隔を保証し、また、はんだ接合部のための応力緩和を提供する。さらに、そのワイヤ・リテーナと関連させたワイヤ部の設計は、危険場所の認証に有用であるようにワイヤ・ハーネス・パッケージを完璧にする。
【0032】
好ましい実施態様を参照しながら本発明を説明したが、当業者は、本発明の意図、及び、応用範囲を逸することのない範囲において、形態、及び、細部における変更を加えることができることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端、及び、第二端を有するハウジング、
前記第一端、及び、第二端の一方に取り付けられたフィールド装置カップリング部、
前記ハウジング内に配置され、前記フィールド装置カップリング部の中を通る複数のワイヤに結合されたアダプタ回路、
前記複数のワイヤと係合して前記ワイヤを固定位置に維持するワイヤ・リテーナ、
及び、
前記アダプタ回路、前記ワイヤ・リテーナ、及び、前記複数のワイヤ、を封止する封止材料
を含むワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項2】
前記複数のワイヤの各々が、前記ワイヤ・リテーナによって保持された絶縁材が除去された部分を含む、
請求項1記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項3】
前記絶縁材が除去された部分の各々が、錫めっきされている複数ストランドの撚り線を含む、
請求項2記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項4】
前記ワイヤ・リテーナが、ワイヤごとに少なくとも一つの肩部を含み、前記肩部が、ワイヤ絶縁材の表面と係合して前記ワイヤの軸方向への移動を制限する、
請求項2記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項5】
前記ワイヤ・リテーナが、ワイヤごとに一対の肩部を含む、
請求項4記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項6】
前記ワイヤ・リテーナが、各ワイヤの絶縁部分に干渉するように形成された少なくとも一つのリブを含む、
請求項1記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項7】
前記少なくとも一つのリブが、ワイヤごとに複数のリブを含む、
請求項6記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項8】
前記複数のワイヤが、四つのワイヤを含む、
請求項1記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項9】
前記複数のワイヤが、撚り線である、
請求項1記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項10】
前記複数のワイヤが、線号22ゲージのワイヤである、
請求項1記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項11】
前記複数のワイヤが、はんだ接合部を介して前記アダプタ回路を支持する回路板に接続されている、
請求項1記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項12】
前記ワイヤ・リテーナが、スナップ嵌めを生じさせるようにワイヤごとに形成された溝を含む、
請求項1記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項13】
前記ワイヤレスリテーナが、少なくとも一つのヒンジを介して、相互に接続する一対の対向する部材を含む、
請求項1記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項14】
前記対向する部材の少なくとも一つが、前記対向する部材どうしが係合したとき、ワイヤの絶縁部分に干渉するように形成されたリブを含む、
請求項13記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項15】
前記対向する部材が、共に留め合うように形成されている、
請求項13記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項16】
本質安全である、
請求項1記載のワイヤレス・プロセス通信アダプタ。
【請求項17】
プロセス変量を検出し、検出されたプロセス変量の指示値を配線プロセス通信ループに載せて搬送するように形成された非ワイヤレス・フィールド装置、及び、
第一端、及び、第二端を有するハウジング、
前記第一端、及び、第二端の一方に取り付けられ、前記非ワイヤレス・フィールド装置に結合されたフィールド装置カップリング部、
前記ハウジング内に配置され、前記フィールド装置に接続するために前記フィールド装置カップリング部の中を通る複数のワイヤに結合されたアダプタ回路、
前記複数のワイヤと係合して前記ワイヤを固定位置に維持するワイヤ・リテーナ、
及び、
前記アダプタ回路、前記ワイヤ・リテーナ、及び、前記複数のワイヤ、を封止する封止材料、
を含むワイヤレス・プロセス通信アダプタ、
を含むワイヤレス・プロセス通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−504259(P2013−504259A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527994(P2012−527994)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/047463
【国際公開番号】WO2011/028762
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
2.BLUETOOTH
【出願人】(597115727)ローズマウント インコーポレイテッド (240)
【Fターム(参考)】