可塑性注入材、地盤強化方法、地盤注入管理方法並びに注入管理装置
【課題】フライアッシュの流動性とカルシウム系粉状硬化発現物とのポラゾン反応による可塑性ゲルの特殊な特性を応用した可塑性注入材、これを地盤中に圧入して可塑状ゲルの拡大によって土粒子を周辺に押しやり、地盤中にゲル化物からなる塊状固結体を造成し、地盤強化を図る地盤強化方法、地盤注入管理方法並びに地盤注入管理装置を得る。
【解決手段】地盤中に削孔した注入孔から地盤中に注入し、時間とともに、あるいは脱水によって可塑状ゲルを経て固化し、フライアッシュ、カルシウム系粉状硬化発現材および水を有効成分とする。これを地盤中に圧入し、可塑状ゲルの拡大によって土粒子を周辺に押しやり、地盤強化を図る。
【解決手段】地盤中に削孔した注入孔から地盤中に注入し、時間とともに、あるいは脱水によって可塑状ゲルを経て固化し、フライアッシュ、カルシウム系粉状硬化発現材および水を有効成分とする。これを地盤中に圧入し、可塑状ゲルの拡大によって土粒子を周辺に押しやり、地盤強化を図る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフライアッシュの流動性とカルシウム系粉状硬化発現物とのポラゾン反応による可塑性ゲルの特殊な特性を応用した可塑性注入材と、これを地盤中に圧入して可塑状ゲルの拡大によって土粒子を周辺に押しやり、地盤中にゲル化物からなる塊状固結体を造成し、地盤強化を図る地盤強化方法、地盤注入管理方法並びに地盤注入管理装置にかかわる。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントを主材とするモルタル注入液はスラリー状で流動性を有し、水和反応により固化に到るものであった。このような流動性モルタルはセメントの含有量が少なければ大きなブリージングを生じ、地盤中に材料分離して沈殿して固化する。このため空隙充填には不適である。
【0003】
一方、ブリージングを小さくするためにはセメントの含有量を大きくすればよいが、このようにするとセメントの硬化発現が早くなり広範囲を充填する事が出来なくなるといる問題がある。このため、このセメントを主材とする流動性モルタルにアルミニウムや水ガラス等を可塑材として用いる方法が提案されたが、このような可塑状グラウトは粘性が大きく流動性が悪いためミキサーから送液管、注入管を通して地盤に注入する迄の管路の途中で流動性を失ってしまう。
【0004】
このため近年セメント系懸濁液と可塑材を別々にポンプで送り、注入管の手前で合流して注入する可塑性グラウトが開発され、空隙充填や裏込め材として用いられている。更に同一の方法で地盤中に圧入して周辺の土粒子を圧縮する地盤強化方法も提案されている。
【0005】
しかし実際には、地盤中に注入すると地盤中で水分と紛体が分離し脱水によって急速に流動性を失い急速に硬化してしまい、可塑性保持時間を長くする事が出来ない。この結果、脈状に地盤を割裂して不特定の方向に逸出してしまい地盤強化効果が得られない。
【0006】
又、空隙充填や護岸の吸出し防止の目的に用いても亀裂から漏出しやすい、地下水中で分散されやすい等の問題があった。
【0007】
近年、既設トンネルや基礎下の空洞やシールドトンネルの裏込材等空隙充填材として可塑性グラウトが適用されている。又、軟弱な地盤中に可塑性グラウトを圧入して地盤を強化する地盤改良工法が提案されている。
【0008】
本発明は、このような従来のセメントを主体としてモルタル或はこれに可塑材を加えたり合流する可塑性グラウトの問題をフライアッシュを主材とするグラウトを用いて注入する事によって解決したものである。本発明者は、フライアッシュモルタルが地盤注入工法に用いた場合、従来のセメントを主材とした流動性モルタルともセメントを主材とした流動性モルタルに可塑材を加えた可塑性グラウトとも全く異なる特性を見出し本発明を完成させた。
【0009】
即ち、従来セメントグラウトにフライアッシュを添加して流動性を改善する方法はすでに知られているが、フライアッシュを主材としてそれに少量のセメントを加えて可塑性グラウトを注入する方法は用いられていない。本発明者によれば、フライアッシュを主材としそれにセメント等のカルシウム系粉状硬化発現材を混合するとその混合液そのものが可塑性グラウトとなりその硬化発現材比並びに水紛体比を調整する事により紛体濃度を大きく粘性を大きくしても、流動性に優れ、水と分離して沈殿する事なく安定した流動性のある懸濁液が得られることが判った。
【0010】
更に、この懸濁液を地盤注入に用いた場合、その懸濁液自体時間と共に可塑状を呈し、或は地盤中における脱水によって可塑性ゲルを呈し、可塑状ゲルから非可塑状ゲルを経て硬化する事が判った。しかも可塑状ゲルを呈する可塑状保持時間が極めて長いことも判った。従って、透水性のある地盤や老朽トンネルのように脱水が生じやすい空洞に注入されたり、圧入されたりするとコンクリートの亀裂からの脱水によって急速に可塑状ゲルに変化し、或は密度の少ない土砂中に圧入すると脱水されて可塑状ゲルに変化して塊状固結体を形成すると共に、周辺地盤を押し広げて密度を増加する事が可能になる。この結果、大きな空隙或は長大な空洞に注入した場合の充填性に優れ、未充填部分を生じずかつ地下水があっても分散しにくく均等な固結性が得られる事が判った。
【0011】
又、老朽したトンネルの空隙充填においてもコンクリート部からの漏出が生じやすい亀裂があっても逸脱しにくい性質があることが判った。又、水紛体比を調整する事によりそれ自体で可塑状ゲルとなり、静止状態では流動性を失い力を加えると流動性を生ずる特性が得られる事が判った。即ち、特に可塑剤を加える事なく可塑状グラウトになり、しかも可塑状ゲルの保持時間が極めて長いグラウトを得る事が判った。更に、上記懸濁液に水ガラス又はアルミニウム塩を添加する事により、可塑状ゲルに到る迄のゲル化時間を短縮出来る事が判った。特に注目すべき性質は、上記懸濁液に水ガラスやアルミニウム塩をミキサーで添加して可塑状ゲルを形成したあとそれをポンプで送液しても充分な送液性が得られ、そのまま地盤中に注入できる。即ち、別々のポンプを用いてセメント系懸濁液と可塑材を合流注入するような従来の方法を用いる事をしなくても地盤中に注入出来る。
【0012】
このため、懸濁液のA液に溶液のB液を合流する事に懸濁液の配合比率が薄まってしまって分散しやすい注入液が地盤中に注入されたりする問題が生じない。又、セメント主体のA液にB液を少量に比率(例えば9:1とか19:1等)で合液する方法も提示されているが空隙充填の場合はともかく地盤中に圧力をかけて圧入する場合は、ポンプ圧が高くなる程異なるポンプを用いて同一比率で合液させる事は困難になり、確実に地盤中に可塑性グラウトを注入する事が困難になる。このような流動特性のちがいはセメント主体の可塑状グラウトとフライアッシュ主体の可塑状グラウトが本質的に異なると考える事が出来る。
【0013】
このような本発明の可塑状グラウトが従来の流動性モルタル或は、可塑性グラウトと異なる特性を有する理由は、フライアッシュそのものが有する特殊な性質とそれに少量のセメント等のカルシウム系硬化発現材を混合する事によって形成され、更にその硬化発現材比、水紛体比、ゲル化促進材比を所定の配合で調整することにより種々の流動性を発現でき、これを配合装置から送液管を経て注入孔からの地盤中に注入することによって、注入目的に応じた理想的な特性を発現する事を見出し、本発明を完成したものである。
【0014】
可塑性注入材とは、懸濁液と可塑剤を混合する事によって形成され加圧すると流動性を呈し、静止すれば非流動性を呈する注入材を云う。この種の可塑性注入材として従来、セメント懸濁液やセメントベントナイト懸濁液に水ガラスやアルミニウム塩を合流したもの、或はスラグに消石灰を加えた懸濁液に、水ガラスやアルミニウム塩等を合流したもの、等が知られており、(特開2003−105745号工法参照)従来裏込め注入や空隙注入等の充填に用いられてきた。
【0015】
これらの特性の違いについて、以下の事が判った。
・ フライアッシュに対してセメント量の混合比率が多くなるにつれて可塑性グラウトとしての特性が低下する。
・ フライアッシュとセメントの混合物においてセメントを主材とするグラウトはフライアッシュを主材とするグラウトに比べて、粘性が高く硬化時間が早く、可塑性保持時間が短くブリージングが大きい。
【0016】
これに対して、フライアッシュを主材とする場合は粘性が低く可塑状保持時間が長くブリージングが小さい。即ち、空洞注入用流動性グラウトとしてみた場合、フライアッシュを主材とする事が極めて効果的である事が判ったが、更にこれを軟弱地盤に圧入した場合、地盤中に塊状ゲル化物を形成して周辺を密にして地盤強化が可能になる事が判った。
【0017】
また、上述公知の可塑性注入材は漠然と可塑性を呈するというだけで、裏込め注入としては使用できるものの、本発明の目的である地盤中にゲル化物からなる塊状の固結体を形成して周辺地盤を圧縮するという目的には使用することが困難であることが判った。なぜならば従来このような目的を達するために可塑性グラウトを地盤中に注入すると地盤中で割裂注入となって注入対象外に不均等に逸脱して塊状の固結が不可能であったからである。これは可塑性グラウトの流動特性と地盤中における塊状固結性を具体的に明らかにした研究がなく、したがってこのような目的に応じた実用性のある可塑性注入材の組成や施工方法の開発が行われていなかった。
【0018】
地盤中に固結材を静的に圧入して土砂を周辺に押しやって密度を増大して地盤を強化する方法として従来、非流動性の低スランプ或は殆んどスランプゼロの注入材(モルタル)を地盤中に圧入することにより、地盤中に固結体を造成し、地盤を圧密強化する工法が知られている。(特開2002−294686号工法参照)また、セメントを主材とした流動性のモルタル懸濁液と可塑材をそれぞれポンプで送液し注入管に入る前に合流注入して、可塑状グラウトを地盤に圧入する方法も提案されている。
【0019】
しかし、上述公知の工法のうち前者は大きな装置を必要とし、作業性からも建築物の建て込んだ施工条件や建造物直下の基礎の補強は不可能であった。
【0020】
一方後者の工法は、前述のように流動可能なセメントを主成分とするモルタルで水ガラスやアルミニウム塩等の可塑材をポンプでそれぞれ移送して注入口付近のパイプ状混合装置で合流混合して可塑状にしてそのまま圧入せんとするものであるが可塑材を加えられてわずか10m以内の注入管路を流動してのち地盤中で塊状ゲル化物を形成するのは困難で、パイプ中で可塑状になりきれない場合は勿論可塑状になったところで地盤中で塊状ゲルを形成する事は難しく地盤中の範囲外に割裂注入して脈状に逸脱するのが普通である。
【特許文献1】特開2003−105745号公報
【特許文献2】特開2002−294686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、地盤強化用可塑状グラウトとしては数十mもの長いホース中の送液流動性が必要な一方地盤中に圧入されたら土粒子間浸透せず、かつ、所定の改良受け持ち範囲以外に割裂現場により逸脱する事なく所定の位置に塊状にゲル化物を形成し、かつ、出来るだけ大きな注入液自体によるゲル化物を形成して、しかも固化に到る迄の間に周辺の土粒子を押しやって大きな塊状ゲルを形成してその分周辺の土砂の密度を高くするという相反する特徴を同時に満たす事が要求される。
【0022】
そこで、本発明は産業副生品であるフライアッシュを主材としこれに少量のセメント又は石灰や石膏やスラグ等のカルシウム系硬化発現紛体と水を所定比率で配合し、流動特性、固結特性を明らかにして、これを地盤中に圧入し、地盤中に可塑状ゲルによる塊状固結体を造成することにより、地盤強化を図ることに成功したもので、上述の公知技術に存する問題を解決した産業副生品を有効利用した可塑性注入材および地盤強化方法、並びにその注入管理方法を提供することにある。勿論、この可塑性注入材は圧入工法のみならず一般の裏込め注入、護岸の吸出し防止注入、など空隙充填に使用したりする事も出来る。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は、流動性と地盤中における可塑性ゲルによる塊状固結体の形成と大径への成長という相反する問題を解決するためにフライアッシュの特殊な特性を利用する事に着目した。これらはフライアッシュは焼成されているところから多孔質で軽量である事と、カルシウム系硬化発現材の少量と反応してポゾラン作用で一次反応で可塑状となり、可塑状ゲルを経て非可塑状ゲルを経て水和反応による二次反応で固化する事に着目し、このような特性は石炭灰(フライアッシュ)を主材として用いることによって地盤中で大きな塊状の可塑状ゲルを形成するのに極めて優れている事を見出した。
【0024】
従来、石炭灰はセメントグラウトの骨材の一部として流動性を改善させるための添加材として使用されていた。しかるに地盤中に注入管を通して注入する注入液の主材として使用されることはなかった。なぜならばそれ自体固結性がなかったからである。
【0025】
本発明者は石炭灰の以下の点に着目し、上記目的に使用する可塑状グラウトの主材としてこれを注入管に通して地盤中に圧入する事により極めてすぐれた特性を発現する事を見出した。
【0026】
1)焼成シリカを主成分とすることから、単位体積重量が軽く表面が活性化されてCaとの反応性に優れている。
【0027】
2)フライアッシュは単体では自硬性がないが、少量のセメントを添加し適量の水と混合することで硬化する。例えばフライアッシュモルタルは、フライアッシュに添加するセメント量は硬化発現材比が10重量%以下の極めて少量でも強固な硬化体となる。
【0028】
3)フライアッシュは球状粒子をしており、モルタル状にするとベアリング効果により極めて流動性のよい材料となる。また、球状粒子間に含まれる混練水の混合により、毛管現象に近い状態で結合力が大きくなり、分離しにくく粘性がある材用となる。
【0029】
4)以上の特性を持つため、セメントや石灰等のCa組成物の少量と反応して、初期の段階で表面にCaを吸着して電気的化学的反応を起こし、それ自体自硬性の可塑性懸濁液となりつづいて可塑状ゲルを形成し、更に非可塑状ゲル化物を経て固化する事が判った。
【0030】
5)一方、フライアッシュとセメントの混合液はわずかな水紛体比の違いによりスランプやフロー値が大きく変化することから、水に対して非常に敏感な材料であり、水紛体比の管理が重要なものとなる。水が少ないと流動性がなくなり、水が多すぎるとスラリー状態となって、粒子の結合が不充分となる。
【0031】
6)更に、非自硬性粉状素材であるフライアッシュと粉状のカルシウム系硬化発現材からなる粉状体の水紛体比、全紛体中の硬化発現材比を調制する事により、上記可塑性注入材の地盤中における可塑状流動特性や地盤中における可塑状ゲル化物の拡大を調整して、更にこの可塑状ゲルに到る迄のゲル化時間を促進剤又は遅延剤によって調整して、作業性や可塑状ゲルの大きさを調整することが判った。
【0032】
7)フライアッシュは石炭灰の産地や発電所での燃焼状態により、性状成分は大きくばらつく。この性状のばらつきよって比重や単位重量、水紛体比に対する性状等々が変化する。さらに注入液の送液過程、注入地盤の圧入過程で時間と共に流動性が変動していく。その配合液はこれが注入液の配合調整や注入管理を難しくさせる。このため、配合範囲の設定のみならず配合管理システム、注入管理システムが重要になる。
【0033】
8)単位体積重量は1.7tf/m2度と小さく、特に地下水面下に注入した場合は有効重量が小さくなるため、地盤の沈下量や土圧の低減などに有効となる。
【0034】
9)フライアッシュの粒度分布は100ミクロン以下が大半を占め、本発明のフライアッシュモルタルは調密な硬化体となるため、それ自体の透水係数が10-7cm/secオーダーとなり、地盤中に注入した注入固結体同士を連続させて均密な遮水構造体が出来る。
【0035】
10)経年劣化が非常に少なく、本発明のフライアッシュモルタルは水質試験及び溶出試験結果で環境基準を満足する。また、地下水下の地盤中の空洞中に注入しても濁度は部分的に集中に、拡散しにくい。充分に混練された本発明のフライアッシュモルタル注入液は、ブリージングが少なく固結体の体積変化が殆どなく注入固結体同士の境界面は一体となり空洞を隙間なく充填する。ゲル化促進剤を添加することで、直ちに水中でも自立しうる可塑状ゲルを形成する。
【0036】
11)フライアッシュの性質である“嫌水性”により水と馴染みにくく、フローやスランプが安定するまでに混合水との混練に長時間を要する。一般のコンクリートの混練時間は1分以内であるのに対し、フライアッシュモルタルは3分以上を必要とする。このため、充分な混練装置と圧送装置が重要となる。又、フライアッシュとセメントを粉のまま所定比率で混合してから混合水と混練してもよい。この場合、各ベルトコンベアに備えた連続計量器によりフライアッシュとセメントをそれぞれ計量しながら混練し、更にパッチ式ミキサにより混練してもよい。
【0037】
12)フライアッシュモルタルの混練や圧送に適したワーカビリティは、テーブルフローで25cm付近、スランプ20cm付近が最も好ましい。スランプやフローを支配する混練水量の決定が、ワーカビリティを大きく左右させる。時間と共に逐次変化するこれらの流動性を的確に判断し、迅速に配合並びに水紛体比を調整することが地盤中に塊状の可塑状ゲルを形成するために重要である。フローによって水粉体比と硬化発現材比を管理して地盤中における可塑状ゲルの成長をはかることが出来る。
【0038】
13)上述したように、フライアッシュ・セメントにゲル化促進材を添加すると添加量に応じた可塑状ゲルを形成するゲルタイムを調整できる。促進材として水ガラスや硫酸アルミニウム塩をフライアッシュモルタルを添加することにより容易にスランプを20cm付近から10cm以下に減少させて地盤中における脱水と共に可塑性ゲルを形成させかつそのゲルが可塑状を保持する時間が長いところから圧入を継続する事により塊状ゲルが成長し地盤中に大きな塊状ゲル化物を形成し更に時間の経過又は脱水によって非可塑状ゲルを経て硬化体に変化する。このような特性は、フライアッシュモルタルの有効成分の殆どがフライアッシュであり、セメントがわずかですむためフライアッシュの特性が大きく現れている事による。即ち、フライアッシュが球状のためベアリング作用による優れた流動性と毛管現象に近い混練水の結合力による分離しにくい粘性と嫌水性による水となじみにくい分離しにくさによって、塊状ゲル化物をつくりながらゲル化物が大きく成長する現象を可能にするものと思われる。
【0039】
14)上記において更に骨材を加えることが出来る。骨材は増量材として役立つのみならず固結強度や流動性の調整にも役立つ。一般に粉体中の骨材の比率が多くなれば強度は小さくなり、骨材の粒径が大きくなればその流動性は低下する。
【0040】
15)フライアッシュモルタルに硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩や水ガラス(水ガラスと酸を混合して得られた酸性水ガラスも含むものも本発明では水ガラスとてみなすものとする)を添加すると直ちにフローやスランプが大幅に減少する。硫酸アルミニウムとフライアッシュモルタル中の水酸化カルシウムが反応しエトリンガイドを生成すると考えられる。エトリンガイドと水和化合物の生成やそれに伴う結晶水の消費などによって、フライアッシュモルタルの粘性が直ちに高くなり、流動性が低減する。
【0041】
(Al2(SO4)3・18H2O/硫酸ばんど)+(6Ca(OH)2/水酸化カルシウム)+8H2O
→ 3CaO・3CaSO4・Al2O3・32H2O/エトリンガイド
【0042】
硫酸ばんどをフライアッシュモルタルに添加すると、1〜2分間の間の攪拌でスランプの減少、フローの減少、粘性の増大を生ずる。フライアッシュモルタルが脈状に割裂する事なく可塑状ゲルが地盤中に形成して塊状ゲルが大きく成長するには、フライアッシュモルタルの硬化材発現比、水紛体比、アルミニウム比、フロー値、スランプ値の範囲等、可塑性注入材としての条件や注入の手法が重要となる。
【0043】
本発明におけるフライアッシュモルタル比の配合と流動特性の関係を示すと次のとおりである。
硬化発現材比 C/F+C×100(%) :1重量%以上50重量%未満
好ましくは1〜40重量%
さらに好ましくは1〜20重量%
水粉体比 W/F+C×100(%) :20〜150重量%
アルミニウム比 アルミニウム/F+C×100 :0〜2.0重量%
水ガラス :シリカ分で0〜7.0重量%
スランプ(cm) :26cm以下
好ましくは約4〜26cm
フロー(cm) :30cm未満
好ましくは約13〜28cm
【0044】
16)可塑状グラウトを地盤中に圧入する際の最も大きな課題は、セメント系懸濁型グラウトはただでさえ粘性が大きいのにそれを可塑状にすれば地盤中に開口する注入管の注入口からの圧入抵抗並びに注入口に到る迄の送液管の送液抵抗が極めて大きく、かつ送液管やポンプの中でつまりやすいという問題があった。このため送液を容易にするために薄い配合を用いると地盤中で脈状になるという点が懸念された。このため先願技術では裏込め注入と同じように流動性の良いセメント系懸濁液と可塑材を注入管に送液される前の時点で合液して瞬時に可塑状ゲルにして地盤中に圧入する方法が提案された。しかし、注入管の中で可塑状ゲルになってしまった強度の高い瞬結性のセメント系可塑状ゲルが地盤中で大きな塊状ゲルに成長するのは困難であり又、大きな注入圧力を必要とする。
【0045】
本発明者は裏込め注入や空隙充填のための可塑状グラウトの注入が注入圧を殆ど必要としない注入に比べて、地盤中に圧入して大きなゲルを形成して周辺土砂を圧縮する地盤改良の注入においては全く異なる事に着目した。なぜならば、圧入の場合は脱水現象を生ずるから、地上部に放置しておけば可塑状を呈さない配合液でもいずれは可塑性を呈するものの、可塑性を呈する迄には長い時間がかかる(ゲル化時間が長い)。懸濁配合液をA液とし、可塑材をB液とし、注入管に合流された時点で可塑状にならなくても地盤中に注入されると同時におきる脱水の過程ではじめて急速に水紛体比が減少して可塑状グラウトとなり、可塑状ゲルが大きく成長し非可塑状ゲルを経て固化する事を見出した。
【0046】
特にこのような現象はフライアッシュを主体とし、硬化発現材比が小さな本発明において極めて顕著になる事が判った。これは上述のフライアッシュの流動性によるものと思われる。
【0047】
この結果、送液中の送液管中の抵抗圧やポンプ中におけるつまりが生じなくなった。
即ち、注入管の吐出口から地盤に注入される時点では非可塑状グラウトであるにもかかわらず、地盤中に浸透される過程において急速に可塑状ゲルとなり、可塑状ゲルを保持しながらゲルが拡大する事になる。
【0048】
すなわち、表−1に示すように配合1、2は地上部(注入管吐出口に至る迄)では可塑状ゲルになる迄のゲル化時間は480分とか300分を要する。しかるに地盤中においては、脱水によって水紛体比が35%→30%→25%に低下するにつれて0.1分迄減少し、しかも可塑状保持時間は7.5時間となりブリージングが小さく、粘性が増大して拡散しにくくなり固化物は大きな強度となる。このような特性は従来知られていなかった本発明注入材の流動特性である。
【0049】
従って、このように注入時点で可塑状を呈さないが地盤中の脱水によって初めて可塑状になる。可塑性グラウトの注入においては配合液を一液のまま注入しても懸濁液をA液としゲル化促進材をB液とし合流注入しようと、その手段は問わないで施工する事が出来る。又、フライアッシュの反応性により注入管内で配合装置等を用いる事なく、地盤中で可塑状ゲルを形成出来る。
【0050】
17)フライアッシュモルタルは流動性がありながら、かつ、優れた反応性により流動性を保持している過程で反応が経時的に変化が生ずる特性を発現する。本発明者はこの経時的特性の変化を利用する事により、前述の可塑性注入材の目的に適合せしめるための相矛盾する条件をクリアーして本発明を完成するに到ったものである。
【0051】
以下の本発明者による研究の結果、可塑性注入材を圧入して地盤中に大きな可塑状ゲル化物を形成して強度増加による設計可能な信頼性のある地盤改良工法を可能になった。
【0052】
1.注入液そのものはポンプによる流動性があるが地盤中に注入したものが脈状に割裂を生じて不特定に浸透して固結しないようにする。なぜならばそれぞれの注入孔の受けもち範囲内でゲル化物による塊状固結体が形成されてはじめてその受けもち範囲における土粒子間隙が減少して塊状固結体周辺の注入孔の間の地盤の密度増加が確実に期待できるからである。
【0053】
2.地盤中に注入したものが土粒子間浸透して固結しないようにして複数の注入孔の間の地盤の土粒子を塊状ゲル化物で押しのけるようにする。なぜならば、土粒子間に注入液が浸透したのでは複数の注入孔の間の地盤を圧縮することが出来ず、注入孔の受け持ち範囲における地盤の圧縮による密度増加が確実に期待できないからである。
【0054】
3.地盤中に圧入されたゲルが塊状に固結体を形成し、なおかつ大径の固結塊に成長するようにする。
【0055】
4.地表面近くは地盤隆起しやすく、又注入液が地表面に逸脱しやすいのでそのような現象を防止する手法も併用する。
【0056】
5.長距離の送液パイプ中で分離する事なく流動性を保持しうる事が建造物が密集した地盤の耐震補強に本技術を適用するための作業性を可能にする。
【0057】
6.砂地盤だけでなく粘性土地盤にも適用出来るようにする。
注入液の配合システムから送液管と注入管管路を経て地盤中に注入される経路において、流動性を保持しながら(要件5)地盤に注入されてから以上の1、2、3、4の要件を可能にする。
【0058】
このような経過を注入という手段で地盤中に土粒子間で生じせしめるには、セメント系モルタルでは不可能であって、上記焼却処理したフライアッシュにそれよりも少量の上記硬化発現材を混合してはじめて可能である。
【0059】
可塑状ゲルを呈する迄の時間を短縮するには、水ガラスやアルミニウム塩を加える事により調整出来る。即ちこれらはゲル化促進剤として作用する。水ガラスと硫酸等の酸を混合して水ガラスのアルカリを除去した酸性水ガラスを用いると殆んど瞬結的にゲルが形成される。本発明では酸性水ガラスも水ガラスとして扱う。この場合、重曹や炭酸ナトリウムを併用することによりゲル化時間を調整できる。又、リグニンスルフォン酸塩等のゲル化遅延剤を用いる事も出来る。
【0060】
本注入材はポンプで注入地盤中に圧入される時点では可塑状を呈していなくても地盤中で加圧脱水する事により容易に可塑状ゲルになる。又、静止すればゲル状となって流動性を失うそれ自体可塑性を呈する自硬性可塑性懸濁液をミキサー等で練り混ぜ、流動化せしめて地盤中に圧入すると、地盤中で注入圧力によるわずかの脱水で懸濁液の水紛体比が減少して流動性を失い次々に送り込まれる可塑性グラウトが先行して流動性を失ったゲル化物を注入圧で押し拡げながら周辺の地盤を加圧圧縮して塊状固結体の体積を拡大して最終的には注入圧力で拡大不能な強度に達し、ゲル化物からなる固結体を形成し最終的には水和反応で硬化する。
【0061】
この結果、地盤中に造成される固結体は土粒間にも浸透せず、又脈状にも浸透せず注入圧で圧縮されたゲル化物による固結体が形成されその固結量に相当する土粒子の間隔が減少する結果高密度化された信頼性のある地盤改良が可能になるといえる。このような現象は骨材がセメントよりも多くてもセメントを硬化発現材の主材としたものである以上、脈状に割裂しやすくなる。
【0062】
これに対しフライアッシュを主材とした可塑性グラウトの利点は地盤に注入する前、あるいは注入後の地盤中において大きなフロー、すなわち20cm以上30cm未満、スランプが15〜26cmといった流動性がある配合を用いても、地盤中に圧入することにより脱水を伴い、注入前にフローが30cm以上でも、あるいはスランプが26cm以上でも、地盤中で可塑状ゲルになり、かつ可塑性保持時間が充分ある可塑性ゲルを形成し、充分大きな塊状ゲル化物に成長できる点にある。
【0063】
この結果、フライアッシュを主材として製造した自硬性可塑性懸濁液をポンプで地盤中に圧入する事によって地盤中で1、2、3、4、5の現象を生じせしめ、地盤中で大きく塊状ゲルを固結せしめることに成功したものである。
【0064】
また、本発明者はフローやスランプが小さい流動性の小さな可塑状ゲルを注入するに当って、ミキサーで配合後ポンプで圧送する。更にミキサーからスネークポンプやスパイラル状の羽を有する回転軸を有する送液装置を介してポンプに送液する事により、容易に高粘性の可塑状グラウトを送液する事を可能にした。この方法にすれば、1000cps以上の高粘性の可塑状ゲルでも圧送可能である事が判った。
【0065】
本発明の可塑性注入材の代表的例を云えば、懸濁液を構成する主材となる紛体のフライアッシュ等に加えるセメント又は消石灰等からなる粉状の硬化発現材は使用する粉粒素材中の50重量%未満、好ましくは1〜40重量%、更に好ましくは1〜20重量%、また水粉対比は20〜150重量%、好ましくは20〜80重量%である。ゲル化促進材を加える場合は注入材に含まれる粉体、つまり主材と硬化発現材の総量に対してアルミニウム塩をAl2O3換算で0.01〜0.35%練り混ぜることにより、フロー13〜28cm(地盤中で脱水すれば、注入前に28cm以上でも地盤中で可塑状ゲルを形成する)、好ましくは15〜25cm、ゲルタイムが3分以内から数100分、可塑状保持時間が数時間から10時間以上、ブリージング率が5%以内、スランプが26cm以下(地盤中で脱水すれば、注入前にスランプが26cm以上でも地盤中で可塑状ゲルになる)好ましくは25〜5cmの可塑性注入材でとなる。
【0066】
本発明のこのような特性により、又、ゲル化促進材として水ガラスや酸性水ガラス等のシリカ分を加えるとゲルタイムも可塑状保持時間も大幅に減少させる事が出来、又、ブリージングもスランプも更にフローも小さくなる。本発明可塑状グラウトは地盤中に圧入されて可塑状ゲルとなり土粒子を周辺に押しやり、地盤中で大きな塊状固結体に成長し、地盤強化を図ることが出来る。
【発明の効果】
【0067】
本発明はフライアッシュの流動性とカルシウム系粉状硬化発現物とのポラゾン反応による可塑性ゲルの特殊な特性を応用した可塑状注入材と、これを地盤中に圧入して可塑状ゲルの拡大によって土粒子を周辺に押しやり、地盤中にゲル化物からなる塊状固結体を造成し、地盤強化を図る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
本発明は上述のとおり、フライアッシュにそれより少ないカルシウム系硬化発現材を加えたそれ自体可塑性を呈する懸濁液を用いるが、使用する粉粒素材の種類と組合せ、および特定の配合比率で配合するようにしたから、目的に応じた流動特性、固結特性を呈する所望の可塑性注入材を得、この注入材を地盤中に圧入して、地盤中に塊状固結体を造成することにより注入孔に囲まれた地盤の土粒子を周辺におしやり、地盤強化を図ることができる。
【0069】
地盤中の塊状の固結物は、加圧することにより移動できるものの、土粒子間には浸透せず、かつ脈状に割裂しない程度の可塑状ゲルを形成する可塑性注入材であって、フローで現すと注入後の地盤中あるいは注入前の状態で13〜28cm、好ましくは15〜25cm、スランプでは26cm以下好ましくは4〜26cmの範囲を示す可塑性ゲルを形成する可塑性注入液であることが好ましい。また、前述したように、地盤中で脱水することによって、注入前の状態でフローが28cm以上、スランプが26cm以上でも地盤中で可塑状ゲルを形成する。
【0070】
フロー値やスランプがこれ以下だと、地盤中で可塑状ゲルの塊状固結体の成長が困難になるが大きな空隙が存在したり地盤が極めて軟弱な場合は必要に応じてゲル化促進材の量を増やしてフローやスランプをこれ以下にして適用できる。
【0071】
本発明は上述の通り、フライアッシュと硬化発現材の粉粒素材および水を特定比率で配合するが、フライアッシュ(F材)と、カルシウム系紛体である硬化発現材としてセメント、石灰、石膏、スラグ、のいずれか又は複数の一群(C材)と、水(W材)と混合する。
【0072】
なお、上記にてスラグは通常の4000(cm2/g)のブレーン等の一般品でもよいし、15000(cm2/g)ブレーン等の超微粒子スラグでもよい。硬化発現材比は50重量%未満、好ましくは1〜40重量%、更に好ましくは1〜20重量%、また1〜10重量%の配合でも極めて優れた効果がある。水粉体比は20〜150%、好ましくは20〜60%の配合である。ここで、硬化発現材比とはC/(F+C)×100であり、また、水粉体比とはW/(F+C)×100であり、F、C、Wはそれぞれ重量である。
【0073】
このような配合液は混合すれば、水粉体比が小さければそのままで、水粉体比が大きい場合は地盤中で脱水することにより遅かれ早かれフローが15〜25cmの可塑状ゲルになる。可塑状ゲルは力を加えれば流動するが静止すれば流動を停止する。従って地盤中で加圧脱水する事により水粉体比が大きい場合でも上記範囲のフロー値を呈する可塑性ゲルが地盤中に形成する。
【0074】
地盤中において形成された可塑性ゲルは流動性が少ない状態でありながら出来るだけ広範囲に拡大されて大きな塊状固結体を形成する必要がある。このためには水粉体比が重要であるのみならず硬化発現材比が重要である。
【0075】
硬化発現材比が過大であると、セメント等を主材とするモルタルグラウトの特性が強くなり水が分離してブリージングが大きくなり可塑状ゲルになりにくく、かつ脱水によって可塑状ゲルでなく非可塑性ゲルとなって短時間のうちに固化して高強度固結体を形成する。このため割裂して逸脱するか固化して注入不能になる。即ち主材がフライアッシュであるからこそ、又硬化発現材比が50%未満、好ましくは1〜40%、更に好ましくは1〜20%の間で、最も好ましくは1〜15%であって、地盤中で可塑性ゲルを経て大きく成長した塊状固化物が形成される。
【0076】
さらに、本発明はフライアッシュと、硬化発現材としてセメント、石灰、スラグ、のいずれか又は複数の一群と、水からなる自硬性懸濁液が、可塑性を発現する時間を調整するために硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム塩を含むこともできる。この場合、好ましくは硬化発現材比を2重量%以上50重量%未満、水粉体比20〜60重量%およびアルミニウム比を2.0重量%以下、好ましくは0.1〜1.0重量%、Al2O3換算で0.01〜0.35重量%である配合グラウトとする。ここで、アルミニウム比とはアルミニウム材/(F+C)×100である。アルミニウム材は重量を表す。
【0077】
なお、上記においてゲル化促進剤としてのアルミニウム塩や水ガラスは、フライアッシュ、硬化発現材と混合してポンプで地盤に圧入しても良いし、注入管中、或は注入管の近くで合流混合しても良いし、或はフライアッシュと硬化発現材とゲル化促進剤の混合液を注入する過程で更にゲル化促進剤を合流混合して注入しても良い。
【0078】
さらに本発明は、粉粒素材の主材としてフライアッシュと、硬化発現材として石膏、又は石膏、セメント、石灰、スラグ、のいずれか又は複数の一群(G)と、水(W)を混合する。石膏比、および石膏の混合物を1〜40重量%、好ましくは1〜20重量%、水粉体比を20〜70重量%の配合グラウトとする。ここで、石膏比、石膏の混合物比とはG/(F+G)×100であり、また、水粉体比とはW/(F+G)×100である。Gは重量を表す。
【0079】
さらに本発明は、粉粒素材の主材としてフライアッシュと、硬化発現材としてセメント、石灰、石膏、スラグ、のいずれか又は複数の一群と、水に加えて、焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂を混合することも可能である。又、本発明の可塑性注入材は発泡剤や起泡剤を加えて軽量化をはかることが出来る。上記において、粘土としてベントナイトやさらに高分子系増粘剤すなわちポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルローズ(CMC)やメチルセルローズ等を添加することにより水に対する分散性を抑制し、沈殿を少なくし、ワーカビリティの改善効果がある。
【0080】
又、本発明の可塑性注入材が焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれかを含む場合は、硬化発現材比が1重量%以上50重量%未満、水粉体比が20〜150%とすれば良い。ここで、水紛体比=W/F+C+B×100(%)であって、ここでBは焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれか或はこれらの複数の重量をいう。
【0081】
本発明は静的可塑状ゲル圧入工法というべき工法であってサンドコンパクション工法のように大きな機械で振動等を生じず、又低スランプのモルタル圧入工法のように流動性のないモルタルを特殊な装置で圧入する工法のように大きな設備を必要としない。これはフライアッシュの流動性の故にワーカビリティに優れている事による。このため本発明工法は通常の注入孔法に用いる簡便な装置を用いて静的にかつ騒音がなく作業場所の狭い領域でも簡単に施工出来るため、きわめて公害のない作業性に優れた工法といえる。以下に本発明の施工法について説明する。
【0082】
上述の本発明にかかる可塑性注入材は地盤中に挿入した注入管を通して、老朽トンネルの空隙充填、シールドトンネルの裏込注入、基礎の空隙充填、護岸背部の空隙充填に適している事は勿論であるが、更に地盤中に圧入し、土粒子を周辺に押しやって塊状に固結しながら周辺土砂を押しやって地盤強化を図ったり同じ原理で沈下した建造物の復元注入工法に適している。このような可塑性注入材の注入に当たり、初期注入圧力を低くして先行注入物の脱水を図りながら注入圧力を段階的に高め、あるいは注入と中断を繰り返して間欠的に加圧しながら注入し、これにより可塑性を呈するゲル化物の土粒子間浸透と地盤の割裂による逸脱を防ぎながら土粒子を周辺に押し広げて地盤の密度を増大させながら固結してもよい。
【0083】
しかも、この注入は複数の注入ポイントからの同時注入方式、別の注入ポイントへの切り替え注入、即ち図2(b)のような連続注入方式、1つの注入ポイントから他の注入ポイントに移行して注入してから再び戻ってきて繰り返し注入するインターバル注入方式、またはこれら方式の組み合わせて行われる。
【0084】
さらに、本発明にかかる可塑性注入材は複数の注入ポイントから注入して注入ポイント間の地盤を拘束し、あるいは複数の注入管を0.5m以上3m以内の間隔で地盤に設置し、注入管間の地盤密度を増大して地盤を固結することもできる。なお、本発明注入材の地盤への注入に際し、地盤が粘性土の場合或は粘性土層を介在した地盤の場合、地盤中にドレーン材を設置して地盤中に注入された可塑性注入材の脱水あるいは地盤の脱水を促進しながら注入を行うこともできる。
【0085】
上述の注入は例えば次の(a)、(b)、(c)に示す注入管を用いて行われる。
(a)先端部に吐出口がある注入管。
(b)軸方向に複数の吐出口を有する注入管を用いて注入する。
(c)外管に少なくとも一つの袋体パッカを備えた多重管を用い、内管から外管を通して注入する。
【0086】
軟弱地盤等の強度を大幅に向上させるために、多量の可塑性グラウトを一度に過大の量を注入すると、地盤表面に隆起が生じたり、側方向に地盤を破壊し、逸脱して当該地盤の強度が設定通りに向上しない事態が生ずるが、このため可塑性グラウトの特性を生かし、注入中は流動性があり、注入を停止すると、流動性が停止してゲル化或は加圧脱水して擬固状態が現出することから、対象注入土層に少量づつインターバル方式(時間の間隔をあけて注入する)で反復注入して擬固せしめ、注入された地盤を破壊することなく、圧密し、排除された水分は周辺の土粒子間に分散させ、地盤側方に対する圧密と脱水を行い、ゲル化物による固結径を大きくし或はこれらのグラウトを一定のタイムラグ(時間差)をもって注入する。
【0087】
例えば縦方向の注入にあっては、インターバル方式により回を重ねて、注入を行い、先行して注入された可塑性グラウトに対し、重ねて、該可塑性グラウトを圧入して、当該地盤を割裂する事なく、懸濁型の可塑性グラウトを反復的に圧入することにより、当該地盤の側方に対する圧密脱水を行い、地盤強化が行わる。或は当該地盤の所定エリアに所定数の削孔を形成し、各削孔に対し、可塑性グラウトを所定タイムラグを介し、一か所で設計量を一挙に可塑性グラウトの注入が行われないように、設計注入量をいくつかに分割して注入することも出来る。このようにして各削孔の可塑性グラウトを相互に所定タイムラグで各土層、又は、各ステージ毎にインターバル方式により注入し、先行して注入した可塑性グラウトが周辺地盤を圧密し、又は、自ら、又は、注入液が脱水することをもって、追い討ち的に重ね注入をすることにより、当該所定数の多数の削孔内に注入する可塑性グラウトが各削孔の地盤に対し土層又は各ステージ毎に、同様に側方に圧密脱水作用を行い、強度をアップし、全体的に変位を抑制し、当該所定エリアの地盤の強度を増強する事が出来る。
【0088】
例えば所定深度まで先端に吐出口のある注入管を挿入し、注入管の引き上げステップを非可塑状ゲルになる前の可塑状ゲルの範囲内に吐出口が位置するようにステップアップしながら可塑状ゲルの塊状体を拡大せしめて圧入する。更には、削孔に挿入する注入管に袋体を地表面近くの領域にセットし、内部に懸濁型グラウトを圧入して袋を周辺に膨張させて周辺地盤を圧密することにより、地表面に可塑性注入材を逸脱する事なく地表面を改良し、かつ該袋体より下方から可塑性グラウトを圧入する事により、該袋体硬化体に対する可塑性グラウトの乗り越えがなく、該袋体による拘束効果により地盤の隆起等の変位がなく、地盤脱水作用による強度が全体に及び、強度向上が全領域的に図れるようにする事が出来る。
【0089】
この場合、袋体の設置領域は地表面に近い深度、例えば3m範囲内にあるようにするのが好ましい。なぜならこの領域は可塑性注入材といえども地表面に逸脱しやすいからである。又、同じ理由でこの地表面に近い領域には注入孔を密に設置することにより地表面の圧縮の均等化を図り、かつ地表面隆起を防ぐ事が出来る。なぜならば地表面に近い深度例えば3m以内の領域では一本の注入孔から多量の注入を行うと土被りが少ないために地表面に逸脱しやすく、かつ地盤隆起を起こしやすいからである。従って、この領域は注入孔を深度の大きい領域よりも密にして一本当りの注入量を少なくする事によって地表面付近を均等に強化出来る。又、地表面の地盤改良は上載圧が少ないために地盤隆起を起こしやすく、地盤隆起は地表面数m径に及ぶ。従って、注入する注入孔を隣接する注入孔へ移行するのではなく地盤隆起の影響範囲外の注入孔に移行して注入し、地盤隆起が治まった時点で隣接する注入孔の注入を行うのが望ましい。又、地表面に近い領域においては上部から下方に注入ステップを移行して可塑性注入材を圧入して地表面付近の地盤を圧縮してから改良地盤の最下部まで注入管を挿入し、下部から上方に注入ステップを移行して注入することにより地表面の地盤隆起を低減して、或は上部の拘束効果によりそれより下の確実な改良が可能になる。
【0090】
更に、可塑性グラウトの当該地盤に対する注入において、土中水分が排除されるように、排水用のドレーン材を併設して、間欠的(時間をあけて注入する)な排水効果(注入を中断している間に脱水する)による地盤の側方圧密脱水効果を促進させ、或は可塑性注入材の脱水を促進する事が出来る(このドレーン材の適用は粘性土層の地盤強化に適している)。或は排水管を設置して地下水を排除し、当該圧密による速度を向上させるようにする。
【0091】
更に地盤の隆起等の変化を計測するためにレーザー等のセンサーにより、リアルタイムで当該変化を測定し、地盤の圧縮量を把握し、或は、当該変化が設計的に異常を生じた時には、即応的に可塑性グラウトの注入を調整したり、或は、注入装置の制御装置を介し、注入量や注入深度の変更を行い、或は注入液の比重や注入量やインターバル時間等を自動的に切り換え的に調整して、所定変位を超えないうちに他のステージに移行し、設計通りの圧密脱水による地盤強度の向上が確実に行うことが出来、上記地盤の変位測定は地表面における地盤隆起の測定の他、ストレンゲージを張った計測棒を地盤中にセットして測定方向への地盤の部位の変化を知ることが出来、又、地盤中に間隙水圧計を設けて、圧密脱水状況を把握することが出来る。
【0092】
図1は可塑性注入材の注入配置を示す。この発明は、懸濁型の可塑性注入材を注入管から軟弱地盤に低速で圧入すると、注入圧力を加えている間は流動性を呈する可塑性ゲルが塊状ゲルの範囲を拡げるが、地盤中の注入グラウトの先進部では注入圧力による周辺土粒子への脱水によってグラウトの含水量が低減して流動性が失われ非可塑性ゲルになる。このようにして注入孔の間の土の密度が増大して地盤の強度が増加し、地盤を強化する。注入孔間隔は上質や目標改良度や土かぶりの大きさに応じ0.5〜3.0mが有効である。
【0093】
次に、この出願の発明実施しようとする形態を実施例の態様として図2に従って説明すれば以下の通りである。この場合の注入は図2(a)のようにロッド注入管9を用いて下から上、又は上から下に順次注入する。或は二重管ダブルパッカ注入外管を設置し内管から複数の吐出口を経て注入してもよい。この場合は地盤に注入された可塑状ゲルが非可塑状ゲルになる前の状態になっている範囲にその吐出口が位置するようにステージが移動するようにするのがゲル化物を拡大する上に好ましい。
【0094】
図2(b)の実施形態はインターバル方式の基本的実施例の態様を示すものであり、所定の軟弱地盤3、同様に在来態様同様の形式により所定ピッチの横方向に介して削孔4を所定深度に形成し、図示しない注入管9を該削孔4に挿入し、地上の図示しない注入装置から懸濁型の可塑性グラウトを所定のタイムラグでインターバル方式により当該注入管9の所定ステージに変換しながら連ねながら注入し、又、所定ステップアップ、或はステップダウンを介し、反復して、注入を地盤3のゾーンごとに反復して追い討ち式に行っていく。この場合、注入管は注入管ロッドを用いてもよいし、注入外管内に注入内管を挿入して注入ステージを移向して注入してもよい。
【0095】
この場合、各サイクルに於ける可塑性グラウトの注入は注入初期にあっては逸脱しないように低圧で注入し、地盤3内の排水を行いながら、或は注入液の脱水を行いながら注入し所定タイミングの後、圧送を停止すると、前述の如く流動性を失って経時的に固化し、後注入する可塑性グラウトは先行して注入された可塑性グラウトを内側から側方向に押しやり、上側の地上方向には逸脱せず、追い討ち的に横方向に重合する方式で注入され、側方地盤の圧密脱水を図り、注入部位に於ける脱水が図られて注入可塑性グラウトの強度は増大し、後注入の可塑性グラウトは回を重ねる度に向上していく。
【0096】
この場合、当該地盤3の所定エリアに対し、削孔を横方向所定間隔を介し、設定数多数の削孔4を形成させ、各削孔に対し、各別個に注入管9を挿入し、所定タイムラグでバルブ5、ポンプpを介し而して注入装置に接続し、可塑性グラウトをコンピューター7を有するコントローラー6により所定のプログラムを介して、削孔4に対する注入タイミングをコンピューター7を介してずらして、横方向に並列的に形成された該削孔4に対し、バルブ5、コントローラー6を介して所定タイムラグで、インターバル方式により、可塑性グラウトを注入して地盤の相隣る削孔4の側方地盤の全領域的な圧密脱水を行って結果的に全領域的な地盤の強度の向上を図ることが出来る。
【0097】
すなわち、改良地盤は注入孔を介し注入を、又、所定お領域に一度に多量の可塑性グラウトを圧入すると周辺土が充分な範囲を圧密する前に破壊したり、地盤隆起したりしてしまうが、全注入量を分割してインターバルで圧入すると可塑性であるがために注入の中断により流動が停止し、その位置に保持され、その周辺土は圧密脱水されてる時間と、可塑性グラウトの脱水の時間が与えられ順次塊状可塑性グラウトによる固結体の大きさが成長し柱状固結体とその柱状固結体にはさまれた密度の増加した複合地盤となる。
【0098】
もちろん、当該態様にあっては、所定のインターバル方式をとることにより、所定タイミングで全削孔4を一巡した後は、初期の削孔4に戻ることが可能であり、該管のインターバルの可塑性グラウト注入において、注入された可塑性グラウトは固化し、地盤3に対する圧密状態を維持する。即ち、改良地盤は注入孔を介し注入を、又、所定の領域に一度に多量の可塑性グラウトを圧入すると周辺土が充分の範囲を圧密する前に破壊してしまうが、全注入量を分割してインターバルで圧入すると可塑性であるがため注入の中断により流動が停止し、その位置に保持され、その周辺土は圧密脱水されてる時間と、可塑性グラウトの脱水の時間が与えられ順次塊状可塑性ゲルによる固結体の大きさが成長し柱状固結体とその柱状固結体にはさまれた密度の増加した領域の複合地盤となる。
【0099】
このため、注入圧力は地盤隆起に作用するよりも側方向への圧密作用が生ずる。
【0100】
尚、削孔4の軸方向上方向には所定タイムラグで注入する可塑性グラウトの機能により、変位が垂直方向よりも水平方向に起こり易く、従って、地盤3の上方への隆起は避けられる。
【0101】
図2(c)は引張強度を有する注入管9(或は、注入管に引張材を抱き合わせた補強材でもよい)を地盤に設置して可塑性グラウトを圧入した場合の地盤の強化モデルを図示する。図2(c)に示す様に、地盤を削孔して注入管9を埋設して所定の位置で可塑性注入材を圧入して周辺地盤に固結体形成することにより、周辺の土が圧縮して固結による大きな土中アンカーが形成される。該土中アンカーによって引張強度を有する注入管9が地盤に定着される。この状態だけでも地盤が変位しようと、引張体に伸びが生じ地盤に引張強度が付与される。
【0102】
なお、図2(a)、(b)において注入外管から注入内管を通して注入する場合、軸方向に複数の吐出口を有する注入外管には吐出口にゴムスリーブをかぶせて逆止弁の役をする。この注入外管内にシングルパッカ或はダブルパッカを有する注入内管を挿入して最下部の外管吐出口から可塑性グラウトを圧入しては上方へステップアップし圧入して地盤強化を行う。
【0103】
この場合注入外管の設置のためのボーリング作業と注入作業は別々に行うことが出来る。又、注入外管内を再ボーリングして再注入することも出来るし、注入深度毎に確実な注入が出来、かつ注入外管の引張力を地盤に付与でき杭効果をうることも出来る。
【0104】
また、本発明注入材と溶液型注入材を併用する事によって砂質土と粘性土の互層からなる地盤を改良することが出来る。本粘性土は溶液型グラウトによる浸透注入が不可能なためゲル強度の大きい懸濁型グラウトの脈状注入が行われてたが、所定範囲に注入する事が不可能なためその効果は不確実だった。しかるに上記注入管を用いて浸透不能な土層に可塑状グラウトによる圧密注入を行い、浸透注入可能な土層は溶液型グラウトで改良する事が可能になる。例えば溶液型グラウトを注入した上で可塑状グラウトを圧入すれば全体の地盤改良が可能になる。
【0105】
而して、上述の如く、この出願の発明においては、各削孔4に注入された可塑性グラウトは地盤3の側方の加圧脱水作用を行って上方への逸脱は阻止される。従って、地盤の隆起等は生じ難いが、地盤表面の隆起や各相隣る削孔相互間の変形量を測定するために図3に示すようにレベルセンサーによるレベル検出方式を用いる。図3に示すようにレーザービーム発生装置11に対し、地上部の地表面或は建造物注入の影響をうける位置に設けたレーザー受信装置12を介し、レーザービームセンサー15を設ける。そして、受信装置およびコンピューター17を介し、適宜注入制御装置18により、図に示す様に注入管9に対する注入ステージの移向、可塑性グラウトの注入の注入量やインターバル時間や比重等を調整的に制御するようにする。このときレーザービーム装置11から発生するレーザービームが精密に作製されたレーザービームセンサー15に対し、受信装置12が上下に変位し、地盤3の隆起等が正確に検出される。そして、コンピューター17を介し、図示しない注入制御装置を発停し、間欠的に注入する可塑性グラウトの側方地盤の圧密脱水に最適なタイミングと量で注入を行い、地盤の隆起等を測定しながら、注入の中止、注入量の調整、他の注入地点への移向等最適に注入を行う。
【0106】
なお、当該図3に示す様に、注入の圧密体の側方変位や地盤の隆起等の計測検知はレーザー光線を用い、又、光学的に検知する為に、mm単位の精密な計測が必要である。
【0107】
従って、当該削孔4の変位や地盤3の隆起は広範囲に亘って精密な計測が可能であり、該地盤3の変位等の微少な変位を正確に、検出して設計通りの地盤3の強度向上が行える。
【0108】
而して、上述実施例において、側方地盤3に対する圧密脱水作用を介し、該地盤3の強度を向上することが基本的には可能であるが、可塑性グラウトの該地盤3に対する注入部位に地盤3中の水分が他方に逸走して他の地盤3部分の流動性を高めたりする虞れがあるが為に、液状化現象等の潜在的な原因を除くべく、可塑性グラウトの注入に伴って排除される地盤3中の水分を強制的に配設するべくペーパードレーンやサンドドレーン等のドレーン材(排水性や土性の異なる地層を貫通して)を併設し、圧密作用と脱水作用を両方に亘って積極的に行うことが出来る。
【0109】
図4は改良すべき地盤に屈曲して、また屈曲と直線を任意に組み合わせボーリングし、或はたて杭から建造物の基礎下に水平ボーリングして得られたボーリング孔中に、複数の外管吐出口を有する外管を設置し、この外管内に、内管を移動自在に挿入し、これにより内管と出口から外管吐出口を経て可塑性注入材を地盤中に注入するようにした態様を示すものであり、これにより地盤注入を施し難い既設構造物下方の支持地盤を急速かつ確実に、かつ経済的に地盤注入し、地盤沈下や、地震時における地盤の液状化を未然に防止する事が出来る。
【0110】
図4(a)は構造物10直下の改良すべき地盤処理の基本模式図である。図4(a)に示されるように、ビル、廃棄物処理場、溜め池、貯水池等、移動不可能な構造物10の直下の改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中に屈曲して、または屈曲と直線を組み合わせて、ボーリング孔を形成する。次にこのボーリング孔中に設けた注入管から可塑性注入材を圧入する。
【0111】
図4(b)は構造物10下方の地盤注入例であり、構造物下方の深さ方向に複数層積層して処理することも出来る。
【0112】
次にこの出願の発明実施しようとする他の実施例の態様を図5に示す。図5(a)は地盤中にケーシング等管体を設けた上で鉄筋等の引張材を挿入した上で、可塑性注入材に圧入しながらケーシングを引き抜き、地盤中に塊状固結体を形成し周辺地盤を圧縮して強化するのみならず、圧縮杭又は引張杭としての効果もある杭体との複合的地盤強化を図る態様であり、図5(b)可塑性注入材の圧入による杭基礎の地盤の強化モデルであり、図5(c)は土留め壁における可塑性注入材によるアンカー形成の態様を示す。図5(a)図5(c)とも図5(a)の手法を用いてもよいし、引張力を有する外管を用いて内管から注入する事により外管の引張材としての効果を付与してもよい。
【0113】
本発明の注入管理方法としては、注入材の配合から注入材送液系統を通して地盤中の複数の注入ポイントに注入するまでの注入状況を画面表示し、一括監視を行って注入管理を行う。
【0114】
図6は、本発明の実施に供される注入管理方法の一具体例を示すフローシートであって、集中管理装置X1により注入状況の一括監視、管理を行い、常にその状況が注入監視盤X2に画面表示される。
【0115】
図7に集中管理装置X1の操作フローチャートを示しながら、図6について説明する。まず注入目的、注入条件に応じて注入仕様ファイルを集中管理システムX1に予め設定しておき(システム仕様設定登録)、次いで集中管理装置X1の開始スイッチをONにしてデータ記録を開始する。このとき、注入監視盤X2にもランプでON表示がなされており、注入データを画面に表示される。なお、ここで云う注入仕様ファイルとは材料の配合量、グラウトの流動規定値(適正流動範囲)、また圧力規定値(適正圧力範囲)、規定注入量(適正積算注入量範囲)、すなわち、所望のグラウトの流動特性、注入圧力、流量(単位時間当たり流量および/または積算流量)等である。又、上記において地盤隆起の適正範囲を加えても良い。
【0116】
集中管理装置X1の指示により、水、粉粒素材が、それぞれ計量器23を備えた水タンク24、および粉粒素材を貯蔵するホッパ25からミキサー27へ定量供給され、攪拌混合される。またこの時点でゲル化促進剤を添加する場合は、ゲル化促進剤を貯蔵するホッパ26より計量器23を介して添加される。
【0117】
ミキサー27内で充分に混合されたグラウトはミキサー27に取り付けられた或は別に備えられた流動特性計測装置28により流動測定が行われ、結果は集中管理装置X1を介して注入監視盤に表示される。ここで示す流動特性とはグラウトのフロー、或はスランプ、ゲルタイムあるいは粘度、或はせん断強度(コーンによる貫入測定等が用いられる)等により判断される。所定の流動性が得られると配合完了となり、グラウトはミキサー27より導管29を介して、さらにグラウトポンプ30へと送液される。また所定の流動性が得られていない場合、集中管理装置X1の指示により再度、材料(水、或は粉粒素材、或はゲル化促進剤)の添加が行なわれ、これは所定の流動特性が得られるまで繰り返される。
【0118】
ここではミキサー27内から直接グラウトを取り出すことも可能であり、流動特性計測装置28および集中管理装置X1を介さなくても、実際に手動で流動性を確認することも出来る。
【0119】
グラウトポンプ30へと送られグラウトは注入過程へと移向する。集中管理装置X1からの指示により、バルブ5が開けられ、グラウトポンプ30は所望の圧力でグラウトを加圧する。加圧されたグラウトは、導管29´、注入ホース31、注入管9を介して地盤3に注入、圧入される。
【0120】
導管29´には、圧力計p0、流量計f0が取り付けられ、測定された注入圧力、流量(単位時間当たり流量および/または積算流量)は流量圧力制御装置32に送信されるとともに、集中管理装置X1により管理される。
【0121】
注入圧力および流量が、予め設定された圧力規定値(適正圧力範囲)、規定注入量(適正積算注入量範囲)でない場合、或は地盤隆起量が適正範囲より大きくなった場合、注入は中断されるか、もしくは集中管理装置により調整、および制御の指示が送信される。また常時データは注入監視盤に画面表示されるので注入状況に応じて、注入条件の変更が可能であり、または注入緊急停止が行える。
【0122】
なお、流量計f0としては、回転流量計、電磁流量計等、任意の流量計を使用でき、パルスで出力された電気信号が流量は流量圧力制御装置32を介して集中管理装置X1に入力され、カウントされる。流量計f0および/または圧力計p0からの情報に基づく集中管理装置X1からの指示によりグラウトポンプ30の回転数を調整して毎分流量や注入圧力を制御する。
【0123】
また、集中管理装置X1により、インバータによってポンプの回転数を調節して流量を制御する。
【0124】
グラウトポンプ30はインバータ又は無断変速機を有するポンプ、或はリターン装置を有するポンプであってもよい。インバータや無断変速機は集中管理装置X1の指示を受けなくても、直接流量を調整して所定の圧力値にセットすることもできる。またリターン装置も直接調整して導管29´の圧力が所望の圧力を保つようにリターンさせることも可能である。なお、上述の調整は手動で行ってもよい。
【0125】
またグラウトポンプ30に代えて、コンプレッサを用いることも出来る。ミキサー27からグラウトをまず、加圧容器を設けて、これに充填し、次いでコンプレッサの作動により加圧容器中のグラウトを加圧して加圧注入グラウトとする。
【0126】
注入管9にはバルブ5が取り付けられ、このバルブ5は集中管理装置X1からの電気信号によって自動的に開閉される。複数本の注入管9を用いて、地盤3中の複数の注入ポイント22からの同時注入、連続注入、インターバル注入、またはこれらを組み合せて注入を行なう。またバルブ5は注入が完了した時点で手動により閉束することも出来る。
【0127】
全ての注入が完了の後、集中管理装置X1の開始スイッチをOFFにすることにより集中管理装置X1によるデータの記録が終了する。
【0128】
配合から注入までのデータを集中管理装置X1に送信し、注入監視盤X2に画面表示することにより注入状況の一括監視を行なって、グラウトの流動特性、送液系統の注入圧力、流量を所定の範囲に維持しながら注入するとともに、注入の完了、中止、継続、また再注入を行なう。
【0129】
また集中管理装置X1の指示により自動開閉されるゲル化促進材分岐バルブ34を設置することにより、ゲル化促進剤の配合時を管理する。予めシステム仕様設定にゲル化促進剤の添加時を登録し、ミキサー27内での混合、グラウトポンプ30への送液前の添加、およびゲル化促進剤ポンプ35を介することでグラウトポンプ30から圧送されたグラウトにゲル化促進剤を添加することも可能である。
【0130】
本発明に使用される注入工法は図7において、流動特性計測装置28、流量圧力制御装置32や地盤(或は構造物)変位計測器或は更に自動開閉可能なバルブ5を設け、これを集中管理装置X1に接続し、かつデータを注入監視盤X2に画面表示したことに特徴を有する。注入監視盤X2には注入年月日、注入時間等の「時データ」、材料の配合量、グラウト性状等の「グラウトデータ」、注入ブロックNo.注入孔の孔番、注入ポイント等の「場所データ」、注入圧力、流量(単位時間流量や積算流量)等の「注入データ」が表示される。その他、注入液識別データや地盤(或は構造物)変位データを表示することも出来る。
【0131】
図9に例えば10本の送液系統を有する注入をおこなった際の送液系統のデータ(流量、圧力、積算流量、最大圧力の合計40データ)を注入監視盤X2上に一つの画面で表示した画面を示す。図9の画面を詳述すると、以下の通りである。
【0132】
上半分の2画面:
グループ1:1号〜5号の積算流量、最大圧力デジタル表示
グループ2:6号〜10号の積算流量、最大圧力デジタル表示
積算流量は20分間の注入量である。また最大圧力は30秒毎に表示され、19分30秒から20分までの間の最大値を表示した。最大圧力が設定圧力以上になり続けたら、その送液系統の注入は終了することの判断になる。また、積算流量が設定積算流量に達した場合も、この送液系統の注入は終了することの判断になる。
【0133】
下半分の2画面:
グループ3:1号〜 5号の流量、圧力 トレンド表示
グループ4:6号〜10号の流量、圧力 トレンド表示
2画面のそれぞれの左側は各送液系統における時間(t)の経過に対応した瞬時流量と瞬時圧力のチャートを示し、右側は19分30秒から20分までの平均瞬時流量(l/分)と平均瞬時圧力(MPa)を示す。
【0134】
このようにして、図8の画面に示されるように、注入監視盤X2には送液系統No.1〜10の送液状態が同時に表示されるが、一つの送液系統毎に画面を切り換えながら表示することもできる。なお、流量圧力制御装置32における設定圧力、実際圧力、送液流量、積算送液流量を同一画面または別の画面に表示してもよい。これにより、圧力、流量との関係をリアルタイムで把握でき、注入を所定の設定範囲内に納まるように管理できる。また、図8において最大圧力の代わりに、圧力や流量を表示してもよい。さらに、集中管理装置X1は注入仕様ファイル、注入結果一覧表、注入チャート、日計表、週計表、月計表等の帳票作成ならびに解析データの作成をも行うことができる。
【0135】
注入仕様ファイルは集中管理装置X1の動作設定ファイルであり、注入液送液系統の注入完了条件の規定圧力値、規定注入量の設定を行う。各帳票ファイルは登録された流量、圧力、積算流量あるいは最大圧力の各データと、孔番等の手動入力、または自動入力によるデータとから変換作成される。さらに解析データは各帳票から変換作成される。
【0136】
図8の注入監視盤X2の画面において、各送液系統の1本毎に一枚ずつ、例えば図9に示される注入孔における注入ポイント毎に、ブロックNo.注入孔No.及びステージNo.とともに、圧力、流量、チャートを表示することもできる。
【0137】
さらに、これらのデータから注入孔毎に、例えば、図9のブロックNo.1、注入孔No.3について表示すれば、図10に示されるように、各ステージ毎に、時間tに対する注入圧力P、流量Q、および積算流量を表示することもできる。又、これらを図11に示すように三次元的に表示する事によって、各ステージでのN値と土被り圧から想定した許容注入圧力、範囲、目標N値から想定した許容注入量を基準に設定した。各注入ステージにおける注入量から注入前のN値のデータから注入後の目的N値に対応した地盤改良効果の予測がリアルタイムで可能になる。流量を制御する。
【0138】
このようにして、加圧注入グラウトの所定設定の流量ないしは設定圧力をもって、或は限界範囲内の流量ないしは圧力をもって、送液圧入する。この結果、確実にかつ改良効果の予測迄可能になる。又、上記の設定圧力、設定注入量は試験注入のデータを加味して補正する事が出来る。
【0139】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に記述するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0140】
使用材料
・ フライアッシュ
火力発電所より排出される石炭灰:FA、
密度1.9〜2.3g/cm3、粒度分布0.1mm以下が90%以上
(2)焼却灰
ごみ焼却炉より排出される焼却灰
密度2.5〜2.7g/cm3(3)セメント
普通ポルトランドセメント:PC、硬化発現材
(4)硫酸バンド
硫酸アルミニウム、Al2O3=17.2%、ゲル化促進剤
(5)水ガラス
JIS3号水ガラス、SiO2=29.0%、Na2O=9.0%、モル比3.3
(6)消石灰
工業用水酸化カルシウム
(7)スラグ
スラグ8000ブレーン値
(8)石膏
半水石膏
【0141】
配合例1〜3
フライアッシュ、セメント、水を練り混ぜる。フライアッシュとセメントの配合量は同様にして水の配合量のみを変化させた。このようにして得られた配合例1〜3の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表1に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
表1において、ゲル化時間とは可塑性ゲルを呈する時間を云う。又、可塑性保持時間とは静止しておけばゲル状を保持するが、力を加えると流動する状態を呈している時間を云う。配合後ただちに非流動性の可塑状グラウトとするためには、配合例3に示すように、水粉体比が25%以下である必要があると考えられる。しかし、混合条件や使用する材料により、出来上がりのグラウト性状は変わってくる。よって配合比率だけでなく、上記のようなブリージングやフロー、強度の測定が重要となる
【0144】
配合例4〜6
フライアッシュ、セメント、水を練り混ぜる。水の配合量は同様にしてフライアッシュとセメントの配合量を変化させた。このようにして得られた配合例4〜6の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表2に示す。
【0145】
【表2】
【0146】
表2より、PC添加量が大きくなるとブリージング率が大きくなり、可塑状保持時間が短くなって、初期粘性も高くなるため作業性も低下する。よって、PC添加量は50%より少なく、好ましくは1〜20%、さらに好ましくは1〜15%、最も好ましくは1〜10%が適している。なお、本発明において、ポルトランドセメントでなくても、高炉セメント、アルミナセメント、早強セメント、スラグセメント、その他任意のセメントを用いることができる。
【0147】
配合例6,7
表1の配合例1,2に硫酸バンドを添加し、ゲル化を促進させた。ここでゲル化を促進するとは配合後可塑性を呈するまでの時間を短縮し、或はフローを小さくすることを云う。このようにして得られた配合例6,7の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表3に示す。
【0148】
【表3】
【0149】
表3より、硫酸バンドを添加することで、ゲルタイムが短縮されるが、可塑状保持時間はそれ程短縮されず、またブリージング率も減少し、可塑状グラウトとしての作業性が向上できると考えられる。ただし、硫酸バンドには強度発現を低下させる性質のあるため、粉体に対して添加量は2.0%以内、好ましくは1.0%以内を用いる。
【0150】
[可塑性グラウトとしての要因と条件]
(1)硬化発現材比
グラウトに含まれる粉体、つまりフライアッシュと、セメントの含有量に対するセメントの含有量:セメント重量/(フライアッシュ重量+セメント重量)×100[%]
セメントは硬化発現材であり、かつフライアッシュの可塑材という事もできる。フライアッシュはセメントと混合することによりポゾラン反応を起こし固結強度を得る。しかしPC添加量を多くすることにつれ、可塑状グラウトとしての特性が低下する。即ち、沈殿してブリージングが大きくなり沈殿したものは流動しにくく可塑状ゲルになりにくいため、PC添加量は50%未満とするが、その好ましい範囲は硫酸バンド(ゲル化促進剤)添加しない場合1〜20%、好ましくは1〜15%、さらに好ましくは1〜10%である。また硫酸バンドを添加する場合は2〜40%、好ましくは2〜20%である。
【0151】
(2)水粉体比
グラウト中の粉体に対する水の含有量:水重量/(フライアッシュ(焼却灰)重量+セメント重量)×100[%]
この値が小さいと可塑状になりやすい。即ち配合後可塑状ゲルになる時間が短くなり、かつフロー値が小さくなる。しかし水粉体比が小さすぎると作業性を損なうため、その範囲は20〜150%、好ましくは20〜60%とする。しかし、混合条件、環境、また材料により、グラウトの性状は異なってくるため、後に示すブリージング率、フロー値、強度の測定が重要となる。
【0152】
・ 硫酸バンド添加量
グラウト中の粉体に対する硫酸バンドの添加量:硫酸バンド重量/(フライアッシュ重量+セメント重量)×100[%]
硫酸バンドはゲル化促進剤であり、フライアッシュとセメントの流動性ある状態の中に添加すると、ゲル化を促進させ、可塑状ゲルになる時間を早める。ただし、硫酸バンドには固結強度を低下させる作用もあるので、その添加量は2.0%以下、好ましくは0.1〜1.0%とする。
【0153】
(4)ゲルタイム
ここでは一般的な水ガラス系グラウトにみられるような固化状となる化学的ゲル化を意味するのではなく、配合後、自重による流動性がなくなり、力を加えると流動する可塑状ゲルとなるまでの物理的ゲル化時間をゲルタイムと表現する。一般の水ガラスを主材とするグラウトと違って、明確なゲル化時間を示すことはできない。よってフロー値を用いてその値が20cm以下になった時をゲル化とみなし、これをゲルタイムとした。
【0154】
(5)可塑状保持時間
アスファルト針入度試験方法JIS K 2530-1961に準じて総質量230g、先端角度15度、36mmの貫入コーンを用いて静的貫入抵抗を測定し、貫入抵抗値が0.01MN/m2越えた時を固結とみなして、ゲル化から固結に至るまでの時間を可塑状保持時間とした。
【0155】
(6)ブリージング率
配合後、グラウトを充分に混合させ、次いで、200mlメスシリンダにグラウトを入れて静止密閉し、1時間経過後にブリージング水量(上ずみ液)を測定し、次式よりブリージング率を求める。(ブリージング水量/メスシリンダ容量)×100[%]
ここでは1時間経過後のブリージング率を示す。1時間経過後のブリージング率が5%以上の配合では、その後、時間が経過すると更にブリージング率が増大するので、1時間経過のブリージング率が5%以内の配合が好ましい。図12に、表1,3における硫酸バンドの有無による水粉体比とブリージング率の関係を示す。
【0156】
(7)フロー値
フロー試験(JIS R 5201)に基づき、グラウトに15秒間に15回の落下運動を与え、その広がりを測定した。可塑状グラウトとしては約18〜19cmが適しているとされているが、本発明ではフロー値が20cm以下になる時点で自重による流動性がなくなったものとして、ゲルタイムとした。水粉体比が20〜150%のものでも地盤中に注入すると脱水によって水粉体比が少なくなりフローが20cm以下になってゲル化する。
【0157】
また、この範囲で水粉体比が大きな配合でも脱水によって地盤中で水粉体比が20%以下にあると可塑状ゲルから非可塑状ゲルを経て固化する。
【0158】
本発明において、フライアッシュと硬化発現材である粉体の混合液はそれ自体で時間の経過に伴い、あるいは地盤中で脱水により可塑性ゲルになるので、また本発明において可塑性ゲル化物そのものを注入する場合は、可塑性グラウトとしては13〜28cm、好ましくは15〜24cm、更に好ましくは18〜23cmが適している。これはグラウトを地盤中に圧入することによる脱水、およびポンプ圧送性や施工性を考慮したものである。また、注入時において、フローが28cm以上の配合でも地盤中で脱水することにより可塑状ゲルとなる。
【0159】
注入した注入液が最も塊状に固まりやすいフローは約18〜19cmとなるが、本発明では地盤中に圧入することによりグラウトからの脱水が生じるため、上述したように流動性のよい状態でも地盤中で可塑状となり、塊状固結体の造成が可能となる。また前述したように初期の低圧注入、インターバル注入による脱水作用を 低送することにより、或はゲル化付近で遅延剤を添加して、フローが28cm以内、或は水粉体比が20〜150%の注入液を適用できる。地盤状況や使用機器、装置、また設計条件に応じて、最適フローを設定することが出来る。表における×は、グラウトに流動性があるため測定できなかったことを表す。
【0160】
(8)初期粘性
B形粘度形を用いて配合直後の配合液の粘度を計測した。混合直後は流動性があるため計測できたが、ゲル化すると100000cps以上となり、測定不可となる。図13に、表1,3における硫酸バンドの有無による水粉体比と一軸圧縮強度の関係を示す。
【0161】
(9)一軸圧縮強度
配合後、充分に混合したグラウトを直径5cm、高さ10cmのモールドにつめ、静止した状態で1日養生し、一軸圧縮強度を測定した。図14に、表1,3における硫酸バンドの有無による水粉体比と一軸圧縮強度の関係を示す。
【0162】
図14によると、硫酸バンドの添加により強度が低下している。また水粉体比が多いと固結するまでの時間が長くなるため、水粉体比が小さいものよりも強度発現が遅くなる。
【0163】
配合例9〜11
水ガラスを水で希釈し、これにフライアッシュ、セメント、消石灰、水を混合した懸濁液を混合する。このようにして得られた配合例9〜11の地盤注入材の調製条件および物性値を下記の表4に示す。
【0164】
【表4】
【0165】
(1)消石灰添加量
グラウト中の粉体に対する消石灰の添加量
消石灰添加量/(フライアッシュ重量+セメント重量)×100 [%]
消石灰はゲル化促進剤であり、セメントと同様フライアッシュと混ぜるとポラゾン反応を起す。ただしセメントほど固結強度は得られない。ここでは可塑状とするため、またその保持時間を有するためのゲル化促進剤として用いた。その範囲はセメント添加量にもよるが3〜15%とする。
【0166】
(2)シリカ濃度
グラウト中のSiO2量
水ガラスのSiO2%×(水ガラス重量/グラウト重量)[%]
本出願人による実験によればグラウトを可塑状、および固結させるためには、その他の材料の配合比率にもよるが、シリカ濃度は0.2〜7.0%とする。ただし3号水ガラスのモル比以下の低モル比水ガラスを用いる場合は3.0〜7.0%が好ましい。もちろん、高モル比の水ガラスや、粉状水ガラスを用いることも出来る。
【0167】
(3)特性および比較
この配合の特徴としてゲルタイムの調製がしやすく、また可塑状保持時間はやや短いが早期強度の発現は顕著であることがあげられる。よって早期強度の発現を重要視する場合に適している。またグラウトをゲル化後よく練り混ぜることによって、早期強度の発現は低下するが可塑状保持時間を長くすることができる。よってゲル化後よく練り混ぜたものを注入することにより長時間の注入を要する目的やインターバル注入により、一度注入した注入ポイントに再度注入をくり返して、注入体を拡大する地盤改良に適している。
【0168】
配合例12
配合例2では硬化発現材としてセメントを用いたが、同様の配合量で硬化発現材として消石灰を用いる。このようにして得られた配合例12の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表5に示す。
【0169】
【表5】
【0170】
配合例13
配合例2では硬化発現材としてセメントを用いたが、同様の配合量で硬化発現材としてスラグを用いる。このようにして得られた配合例13の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表6に示す。
【0171】
【表6】
【0172】
配合例14
硬化発現材として石膏を用いる。このようにして得られた配合例14の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表7に示す。
【0173】
【表7】
【0174】
(1)硬化材添加量
グラウトに含まれる粉体の含有量に対する硬化発現材の含有量:硬化発現材重量/(フライアッシュ重量+硬化発現材重量)×100[%]
配合例1〜11に示すPC添加量と同様であり、配合例12〜14ではそれぞれ硬化発現材として消石灰、スラグ、石膏を使用したので、消石灰添加量、スラグ添加量、石膏添加量を意味する。ただし配合例9〜11の消石灰添加量はゲル化促進剤として用いているため、配合例9の消石灰の使用目的が違う。よって硬化材添加量と表記した。
【0175】
(2)配合例12の特性および比較
硬化発現材として消石灰を用いた場合、セメントと同様フライアッシュに添加するとポゾラン反応を起こすが、この反応は非常に緩慢であるため可塑状にはなるが固結には時間がかかり、また充分な固結強度を得るためには数週間かかる。ただし同量のセメントを用いるよりも可塑状になりやすくため、セメントと併用することにより優れた効果が期待できると考える。
【0176】
(3)配合例13の特性および比較
硬化発現材としてスラグを用いた場合、セメントよりも若干早くゲル化し、可塑状保持時間は長くなるが、セメントに類似した結果となる。ただし、強度発現はセメントよりも遅くなるので、硫酸バンド等の可塑剤を用いてゲル化を促進させる場合、硫酸バンドには長期強度の発現性を低下させる性質があるので、添加量に注意が必要となる。
【0177】
(4)配合例14の特性および比較
硬化発現材として石膏を用いる場合、石膏は反応が早いため可塑状にもなりやすいが、
強度発現も早いため可塑状保持時間が極めて短くなる。よって適用範囲が限定される。
【0178】
配合例15,16
2液式の配合として、フライアッシュ、セメント、水および可塑剤を配合した経時的に可塑状となり固結する上述のグラウトにさらに可塑剤を添加し、ゲルタイムを早めた。フライアッシュ、セメント、水および可塑剤を配合した上述の配合例7を用いて、ゲル化する前の流動性がある状態の中に、硫酸バンド水溶液、ならびに水ガラスを水で希釈した水溶液を添加した。配合比率は配合例7のグラウトが20に対し、可塑剤の水溶液を1とした。このようにして得られた配合例15、16の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表8、9に示す。
【0179】
【表8】
【0180】
【表9】
【0181】
(1)配合例15、16の特性および比較
流動性あるグラウトに硫酸バンド水溶液を添加した場合、グラウト中の硫酸バンド添加量が増えたためゲルタイムは短くなったが、強度発現に影響した。また水ガラスを水で希釈した水溶液を添加した場合、ゲルタイムは極めて短くなり、また可塑状保持時間も短くなるが強度発現は顕著である。よって早期強度の発現を重要視する場合に適している。2液式の配合としては、可塑剤として水ガラスを用いた配合が優れた効果が得られると考える。
【0182】
配合例17
表1の配合例3のフライアッシュに焼却灰を混合した。フライアッシュと焼却灰の混合比率は1対1である。このようにして得られた配合例17の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表10に示す。
【0183】
【表10】
【0184】
配合例18
フライアッシュに硬化発現材としてセメントを添加し、さらにベントナイトを混合した。その配合例18の地盤注入材の調製条件および物性値を下記の表11に示す。
【0185】
【表11】
【0186】
(1)水粉体比
グラウト中の粉体に対する水の含有量:水重量/(フライアッシュ重量+セメント重量+焼却灰量、あるいはベントナイト重量)×100〔%〕
ここで、硬化発現材とフライアッシュ以外の粉体として焼却灰、ベントナイトを例として用いた。その他に現場発生土や珪砂等を用いることができる。これら増量材としても、また骨材としても用いることができ、かつその粒径や粒度によって流動性や強度を調整することができる。
【0187】
(2)配合例17の特性および比較
表10の配合例17と、表1の配合例3を比較すると、焼却灰を混合した配合例17の方がブリージング率は減少し、フロー値が小さくなった。焼却灰を混合すると、フライアッシュのみの場合よりも流動性を失いやすく、また強度発現も低下する傾向にあると考えられる。硬化発現材比は50%未満、好ましくは1〜20%、水粉体は20〜150%とする。
【0188】
(3)配合例18の特性および比較
フライアッシュ(セメント+ベントナイト)を添加したものは、同量のセメントのみを用いたときと比較すると若干反応が遅くなるものの可塑状固結(可塑状保持時間)として大差はなかった。しかしベントナイトを添加することでセメントの添加量を減らすと固結強度が低下するので、PC添加量は3%以上として、ベントナイトは増粘剤として用いることによって4流動性を調整することができる。硬化発現材比は50%未満、好ましくは1〜20%、水粉体比は20〜150%とする。
【0189】
配合例19,20
エア発生剤として事前発泡型の起泡剤と事後発泡型のアルミニウム粉末をフライアッシュとセメントのモルタルに混合した。起泡剤を用いた配合としては一般的なエアーミルクの配合にフライアッシュを添加するものとした。アルミニウム粉末も比較のため同様とした。起泡剤、アルミニウム粉末はともに標準添加量を添加した。その配合例19,20の地盤注入材の調製条件および物性値を下記の表12、表13に示す。
【0190】
【表12】
【0191】
【表13】
【0192】
(1)起泡剤添加量
グラウト中に含まれるセメントに対する起泡剤の含有量:起泡剤重量/(セメント重量)×100 〔%〕
起泡剤添加量は対セメント重量比により規定されている。使用した起泡剤の標準添加量は0.5〜1.5%(対セメント重量比)であった。よって、その範囲に従うこととする。
【0193】
(2)アルミニウム粉末添加量
グラウト中に含まれる粉末に対するアルミニウム粉末の含有量:アルミニウム粉末重量/(フライアッシュ重量+セメント重量)×100 〔%〕
アルミニウム粉末はセメント等のアルカリに反応して水素ガス(起泡)を発生する。ただしフライアッシュにもアルカリが含まれるため、アルミニウム粉末添加量はセメントとフライアッシュの総量と対するものとする。対セメント比でこの添加量を決定すると配合時に気泡の発生量がきわめて少なく、エア発生剤としての効果を発揮しない。よって使用したアルミニウム粉末はその標準添加量が0.01%(対セメント比)だったので、ここではアルミニウム粉末添加量0.01%(対フライアッシュ+セメント比)とした。
【0194】
(3)配合例19、20の特性および比較
エアを用いた可塑状グラウトは前述までの可塑状グラウトの性状が異なり、グラウトの中の気泡を多量に混入させることでグラウトの流動性を失わせるため、比重がかなり小さいグラウトとなる。起泡剤は事前発泡型であるアルミニウムはアルカリと反応することで水素ガスを発生し、グラウトを膨張させる。その反応は配合より約10〜100分をかけて起こるため、ゲルタイムもその間となる。セメントの添加量が少ないと固結強度が低くなるのでPC添加量は7%以上が好ましい。
【実施例2】
【0195】
本発明の特徴である塊状固結体の造成について、従来の水ガラス系懸濁型瞬結配合(以下、瞬結配合)、水ガラス−セメント系のLW、また可塑性注入材を用いて検討した結果を下記の表14に示す。表14における比較例1は瞬結配合であり、比較例2はLWである。比較例1、比較例2の配合はそれぞれ表15、表16に示す。比較例2、比較例3、実用例は本発明における2種類の粉状素材と水を表14に示した水粉体比、硬化発現材比で混合したものである。下記の配合では粉状素材の主材としてフライアッシュ、硬化発現材としてセメントを使用した。対象とした地盤はおよそN値が7、相対密度が40%、細粒分含有率が20%未満である砂質土地盤である。
【0196】
【表14】
【0197】
【表15】
【0198】
【表16】
【0199】
比較例1〜3は地盤中に脈状となって注入されていた。比較例4および実用例は水粉体比が少なく、スランプ26以下、フロー値13〜28cmの可塑状となり、地盤中に圧入することにより、地盤に塊状固結体が造成されることが確認された。また比較例4では硬化発現材比が大きいためグラウトの固結が早まり、厚さ15cm以下の脈状固結体となった。よって地盤中に20cm以上の大きな固結体を造成するには、水粉体比20〜150%、硬化発現材比が1〜40%、好ましくは1〜20%、およびフローが13〜28cmの本発明の可塑性注入材が適している事が判る。
【0200】
また従来の裏込め注入で使用されている下記表17、18に示す配合の可塑状注入材を地盤中に圧入すると、割裂注入となって地盤対象外に不均等に逸脱し、塊状の固結が困難であることが判った。
【0201】
【表17】
【0202】
【表18】
【0203】
本発明における図1に示す試験施工による研究の結果、以下のように注入設計することにより地盤強化効果をうることが判った。
【0204】
図1において注入間隔は0.5〜3.0mとする。改良率は5〜40%とする。ここで改良率とは1注入孔の分担改良面積1m2当りに換算して固結塊の断面積に相当し、改良率5〜40%とは0.05〜0.4m2を意味する。又、この改良率は改良対象地盤のN値と改良目標N値から1孔当りの受持面積のうちの間隙の減少量が算出され、その減少量がゲル化物に置き換えられる面積に対応することから算出される。以下、表17に本発明における地盤強化として有効な設計例を示す。これは実施例2で砂地盤にて行った実験例に基づくものであり、注入配置は図1(ロ)に示す正方形配置、注入間隔は1m、2m、また改良率は5%、10%、15%、20%である。
【0205】
【表19】
【0206】
このように算出された注入量が所定深度におさまるように毎分注入速度(l/min)と注入圧力を設定していくことが必要である。このためには毎分吐出量5〜50 l/min、注入圧力0.5〜10MPで注入管理しながら注入するのが望ましいことが判った。
【0207】
この際、地盤隆起は20cm以内、好ましくは10cm以内におさめれば数日後には地盤中のゲルが脱水によって地盤隆起が5〜10cm程度におさまることが判った。
【0208】
又、注入深度がGL3.0m以浅になると地盤がやや隆起しやすくなり、GL1.5m以浅になると10cm以上に隆起することが判った。従って、3.0m以浅、或は1.5m以浅において地盤隆起しにくい対応、即ち請求項52,53,55,56,57の対応をとることが有効であることが判った。また、地盤改良効果は上記注入孔間隔の範囲で複数本の削孔から圧入することによって互いに拘束しあってその間の地盤が圧縮されてはじめて可能であることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】可塑性グラウト圧入による地盤強化モデル図であり、(イ)は改良対象領域に対する可塑性グラウトによる固結柱取り合い断面図であり、(ロ)、(ハ)は平面図および可塑性注入材の注入配置図である。(ロ)は正方形配置図であり、(ハ)は三角形配置図である。
【図2】(a)は所定エリアの地盤に相隣って形成した削孔を介しての可塑性ゲルなグラウトのロッド注入管による注入の態様の断面図であり、(b)は所定エリアの地盤に相隣って形成した削孔を介しての可塑性グラウトゲルなグラウトの注入のインターバル方式による態様の断面図であり、(c)はパッカー方式による注入施工の断面図であり(カ)、(ヨ)、(タ)パッカー袋の側方経時的膨張側面図である。
【図3】地盤の施工中途における、変位計測態様の模式図である。
【図4】(a)は構造物直下の改良すべき地盤処理の基本模式図であり、(b)は構造物下方の地盤注入例の縦断面図である。
【図5】(a)はケーシング引き抜きによる可塑性グラウトの圧入の模式図であり、(b)は可塑性グラウトによる杭基礎の地盤強化の断面図であり、(c)は土留め壁における可塑性グラウトの圧入によるアンカー形成の断面図である。
【図6】本発明における材料の混合およびグラウトの注入までの注入管理方法の一具体例を示すフローシートである。
【図7】集中管理装置の操作、および集中管理システムが管理する配合と注入のフローチャートである。
【図8】集中管理装置を用い、送液系統10本についての積算流量と最大圧、および流量と圧力を注入監視盤に表した画面表示の例である。
【図9】注入領域の4つの注入ブロック区分No.1〜4を注入監視盤に表した画面表示の例である。
【図10】地盤のステージNo.1〜3における流量と注入圧力を注入監視盤に表したグラフ(チャート)である。
【図11】注入量、または注入圧の三次元的表示例である。
【図12】硫酸バンドの有無によるブリージング率の違いを表したグラフである。
【図13】硫酸バンドの有無による初期粘性の違いを表したグラフである。
【図14】硫酸バンドの有無による強度発現の違いを表したグラフである。
【符号の説明】
【0210】
3 地盤
4 削孔
5 バルブ
6 コントローラー
7 コンピューター
8 ケーシング
9 注入管
【技術分野】
【0001】
本発明はフライアッシュの流動性とカルシウム系粉状硬化発現物とのポラゾン反応による可塑性ゲルの特殊な特性を応用した可塑性注入材と、これを地盤中に圧入して可塑状ゲルの拡大によって土粒子を周辺に押しやり、地盤中にゲル化物からなる塊状固結体を造成し、地盤強化を図る地盤強化方法、地盤注入管理方法並びに地盤注入管理装置にかかわる。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントを主材とするモルタル注入液はスラリー状で流動性を有し、水和反応により固化に到るものであった。このような流動性モルタルはセメントの含有量が少なければ大きなブリージングを生じ、地盤中に材料分離して沈殿して固化する。このため空隙充填には不適である。
【0003】
一方、ブリージングを小さくするためにはセメントの含有量を大きくすればよいが、このようにするとセメントの硬化発現が早くなり広範囲を充填する事が出来なくなるといる問題がある。このため、このセメントを主材とする流動性モルタルにアルミニウムや水ガラス等を可塑材として用いる方法が提案されたが、このような可塑状グラウトは粘性が大きく流動性が悪いためミキサーから送液管、注入管を通して地盤に注入する迄の管路の途中で流動性を失ってしまう。
【0004】
このため近年セメント系懸濁液と可塑材を別々にポンプで送り、注入管の手前で合流して注入する可塑性グラウトが開発され、空隙充填や裏込め材として用いられている。更に同一の方法で地盤中に圧入して周辺の土粒子を圧縮する地盤強化方法も提案されている。
【0005】
しかし実際には、地盤中に注入すると地盤中で水分と紛体が分離し脱水によって急速に流動性を失い急速に硬化してしまい、可塑性保持時間を長くする事が出来ない。この結果、脈状に地盤を割裂して不特定の方向に逸出してしまい地盤強化効果が得られない。
【0006】
又、空隙充填や護岸の吸出し防止の目的に用いても亀裂から漏出しやすい、地下水中で分散されやすい等の問題があった。
【0007】
近年、既設トンネルや基礎下の空洞やシールドトンネルの裏込材等空隙充填材として可塑性グラウトが適用されている。又、軟弱な地盤中に可塑性グラウトを圧入して地盤を強化する地盤改良工法が提案されている。
【0008】
本発明は、このような従来のセメントを主体としてモルタル或はこれに可塑材を加えたり合流する可塑性グラウトの問題をフライアッシュを主材とするグラウトを用いて注入する事によって解決したものである。本発明者は、フライアッシュモルタルが地盤注入工法に用いた場合、従来のセメントを主材とした流動性モルタルともセメントを主材とした流動性モルタルに可塑材を加えた可塑性グラウトとも全く異なる特性を見出し本発明を完成させた。
【0009】
即ち、従来セメントグラウトにフライアッシュを添加して流動性を改善する方法はすでに知られているが、フライアッシュを主材としてそれに少量のセメントを加えて可塑性グラウトを注入する方法は用いられていない。本発明者によれば、フライアッシュを主材としそれにセメント等のカルシウム系粉状硬化発現材を混合するとその混合液そのものが可塑性グラウトとなりその硬化発現材比並びに水紛体比を調整する事により紛体濃度を大きく粘性を大きくしても、流動性に優れ、水と分離して沈殿する事なく安定した流動性のある懸濁液が得られることが判った。
【0010】
更に、この懸濁液を地盤注入に用いた場合、その懸濁液自体時間と共に可塑状を呈し、或は地盤中における脱水によって可塑性ゲルを呈し、可塑状ゲルから非可塑状ゲルを経て硬化する事が判った。しかも可塑状ゲルを呈する可塑状保持時間が極めて長いことも判った。従って、透水性のある地盤や老朽トンネルのように脱水が生じやすい空洞に注入されたり、圧入されたりするとコンクリートの亀裂からの脱水によって急速に可塑状ゲルに変化し、或は密度の少ない土砂中に圧入すると脱水されて可塑状ゲルに変化して塊状固結体を形成すると共に、周辺地盤を押し広げて密度を増加する事が可能になる。この結果、大きな空隙或は長大な空洞に注入した場合の充填性に優れ、未充填部分を生じずかつ地下水があっても分散しにくく均等な固結性が得られる事が判った。
【0011】
又、老朽したトンネルの空隙充填においてもコンクリート部からの漏出が生じやすい亀裂があっても逸脱しにくい性質があることが判った。又、水紛体比を調整する事によりそれ自体で可塑状ゲルとなり、静止状態では流動性を失い力を加えると流動性を生ずる特性が得られる事が判った。即ち、特に可塑剤を加える事なく可塑状グラウトになり、しかも可塑状ゲルの保持時間が極めて長いグラウトを得る事が判った。更に、上記懸濁液に水ガラス又はアルミニウム塩を添加する事により、可塑状ゲルに到る迄のゲル化時間を短縮出来る事が判った。特に注目すべき性質は、上記懸濁液に水ガラスやアルミニウム塩をミキサーで添加して可塑状ゲルを形成したあとそれをポンプで送液しても充分な送液性が得られ、そのまま地盤中に注入できる。即ち、別々のポンプを用いてセメント系懸濁液と可塑材を合流注入するような従来の方法を用いる事をしなくても地盤中に注入出来る。
【0012】
このため、懸濁液のA液に溶液のB液を合流する事に懸濁液の配合比率が薄まってしまって分散しやすい注入液が地盤中に注入されたりする問題が生じない。又、セメント主体のA液にB液を少量に比率(例えば9:1とか19:1等)で合液する方法も提示されているが空隙充填の場合はともかく地盤中に圧力をかけて圧入する場合は、ポンプ圧が高くなる程異なるポンプを用いて同一比率で合液させる事は困難になり、確実に地盤中に可塑性グラウトを注入する事が困難になる。このような流動特性のちがいはセメント主体の可塑状グラウトとフライアッシュ主体の可塑状グラウトが本質的に異なると考える事が出来る。
【0013】
このような本発明の可塑状グラウトが従来の流動性モルタル或は、可塑性グラウトと異なる特性を有する理由は、フライアッシュそのものが有する特殊な性質とそれに少量のセメント等のカルシウム系硬化発現材を混合する事によって形成され、更にその硬化発現材比、水紛体比、ゲル化促進材比を所定の配合で調整することにより種々の流動性を発現でき、これを配合装置から送液管を経て注入孔からの地盤中に注入することによって、注入目的に応じた理想的な特性を発現する事を見出し、本発明を完成したものである。
【0014】
可塑性注入材とは、懸濁液と可塑剤を混合する事によって形成され加圧すると流動性を呈し、静止すれば非流動性を呈する注入材を云う。この種の可塑性注入材として従来、セメント懸濁液やセメントベントナイト懸濁液に水ガラスやアルミニウム塩を合流したもの、或はスラグに消石灰を加えた懸濁液に、水ガラスやアルミニウム塩等を合流したもの、等が知られており、(特開2003−105745号工法参照)従来裏込め注入や空隙注入等の充填に用いられてきた。
【0015】
これらの特性の違いについて、以下の事が判った。
・ フライアッシュに対してセメント量の混合比率が多くなるにつれて可塑性グラウトとしての特性が低下する。
・ フライアッシュとセメントの混合物においてセメントを主材とするグラウトはフライアッシュを主材とするグラウトに比べて、粘性が高く硬化時間が早く、可塑性保持時間が短くブリージングが大きい。
【0016】
これに対して、フライアッシュを主材とする場合は粘性が低く可塑状保持時間が長くブリージングが小さい。即ち、空洞注入用流動性グラウトとしてみた場合、フライアッシュを主材とする事が極めて効果的である事が判ったが、更にこれを軟弱地盤に圧入した場合、地盤中に塊状ゲル化物を形成して周辺を密にして地盤強化が可能になる事が判った。
【0017】
また、上述公知の可塑性注入材は漠然と可塑性を呈するというだけで、裏込め注入としては使用できるものの、本発明の目的である地盤中にゲル化物からなる塊状の固結体を形成して周辺地盤を圧縮するという目的には使用することが困難であることが判った。なぜならば従来このような目的を達するために可塑性グラウトを地盤中に注入すると地盤中で割裂注入となって注入対象外に不均等に逸脱して塊状の固結が不可能であったからである。これは可塑性グラウトの流動特性と地盤中における塊状固結性を具体的に明らかにした研究がなく、したがってこのような目的に応じた実用性のある可塑性注入材の組成や施工方法の開発が行われていなかった。
【0018】
地盤中に固結材を静的に圧入して土砂を周辺に押しやって密度を増大して地盤を強化する方法として従来、非流動性の低スランプ或は殆んどスランプゼロの注入材(モルタル)を地盤中に圧入することにより、地盤中に固結体を造成し、地盤を圧密強化する工法が知られている。(特開2002−294686号工法参照)また、セメントを主材とした流動性のモルタル懸濁液と可塑材をそれぞれポンプで送液し注入管に入る前に合流注入して、可塑状グラウトを地盤に圧入する方法も提案されている。
【0019】
しかし、上述公知の工法のうち前者は大きな装置を必要とし、作業性からも建築物の建て込んだ施工条件や建造物直下の基礎の補強は不可能であった。
【0020】
一方後者の工法は、前述のように流動可能なセメントを主成分とするモルタルで水ガラスやアルミニウム塩等の可塑材をポンプでそれぞれ移送して注入口付近のパイプ状混合装置で合流混合して可塑状にしてそのまま圧入せんとするものであるが可塑材を加えられてわずか10m以内の注入管路を流動してのち地盤中で塊状ゲル化物を形成するのは困難で、パイプ中で可塑状になりきれない場合は勿論可塑状になったところで地盤中で塊状ゲルを形成する事は難しく地盤中の範囲外に割裂注入して脈状に逸脱するのが普通である。
【特許文献1】特開2003−105745号公報
【特許文献2】特開2002−294686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、地盤強化用可塑状グラウトとしては数十mもの長いホース中の送液流動性が必要な一方地盤中に圧入されたら土粒子間浸透せず、かつ、所定の改良受け持ち範囲以外に割裂現場により逸脱する事なく所定の位置に塊状にゲル化物を形成し、かつ、出来るだけ大きな注入液自体によるゲル化物を形成して、しかも固化に到る迄の間に周辺の土粒子を押しやって大きな塊状ゲルを形成してその分周辺の土砂の密度を高くするという相反する特徴を同時に満たす事が要求される。
【0022】
そこで、本発明は産業副生品であるフライアッシュを主材としこれに少量のセメント又は石灰や石膏やスラグ等のカルシウム系硬化発現紛体と水を所定比率で配合し、流動特性、固結特性を明らかにして、これを地盤中に圧入し、地盤中に可塑状ゲルによる塊状固結体を造成することにより、地盤強化を図ることに成功したもので、上述の公知技術に存する問題を解決した産業副生品を有効利用した可塑性注入材および地盤強化方法、並びにその注入管理方法を提供することにある。勿論、この可塑性注入材は圧入工法のみならず一般の裏込め注入、護岸の吸出し防止注入、など空隙充填に使用したりする事も出来る。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は、流動性と地盤中における可塑性ゲルによる塊状固結体の形成と大径への成長という相反する問題を解決するためにフライアッシュの特殊な特性を利用する事に着目した。これらはフライアッシュは焼成されているところから多孔質で軽量である事と、カルシウム系硬化発現材の少量と反応してポゾラン作用で一次反応で可塑状となり、可塑状ゲルを経て非可塑状ゲルを経て水和反応による二次反応で固化する事に着目し、このような特性は石炭灰(フライアッシュ)を主材として用いることによって地盤中で大きな塊状の可塑状ゲルを形成するのに極めて優れている事を見出した。
【0024】
従来、石炭灰はセメントグラウトの骨材の一部として流動性を改善させるための添加材として使用されていた。しかるに地盤中に注入管を通して注入する注入液の主材として使用されることはなかった。なぜならばそれ自体固結性がなかったからである。
【0025】
本発明者は石炭灰の以下の点に着目し、上記目的に使用する可塑状グラウトの主材としてこれを注入管に通して地盤中に圧入する事により極めてすぐれた特性を発現する事を見出した。
【0026】
1)焼成シリカを主成分とすることから、単位体積重量が軽く表面が活性化されてCaとの反応性に優れている。
【0027】
2)フライアッシュは単体では自硬性がないが、少量のセメントを添加し適量の水と混合することで硬化する。例えばフライアッシュモルタルは、フライアッシュに添加するセメント量は硬化発現材比が10重量%以下の極めて少量でも強固な硬化体となる。
【0028】
3)フライアッシュは球状粒子をしており、モルタル状にするとベアリング効果により極めて流動性のよい材料となる。また、球状粒子間に含まれる混練水の混合により、毛管現象に近い状態で結合力が大きくなり、分離しにくく粘性がある材用となる。
【0029】
4)以上の特性を持つため、セメントや石灰等のCa組成物の少量と反応して、初期の段階で表面にCaを吸着して電気的化学的反応を起こし、それ自体自硬性の可塑性懸濁液となりつづいて可塑状ゲルを形成し、更に非可塑状ゲル化物を経て固化する事が判った。
【0030】
5)一方、フライアッシュとセメントの混合液はわずかな水紛体比の違いによりスランプやフロー値が大きく変化することから、水に対して非常に敏感な材料であり、水紛体比の管理が重要なものとなる。水が少ないと流動性がなくなり、水が多すぎるとスラリー状態となって、粒子の結合が不充分となる。
【0031】
6)更に、非自硬性粉状素材であるフライアッシュと粉状のカルシウム系硬化発現材からなる粉状体の水紛体比、全紛体中の硬化発現材比を調制する事により、上記可塑性注入材の地盤中における可塑状流動特性や地盤中における可塑状ゲル化物の拡大を調整して、更にこの可塑状ゲルに到る迄のゲル化時間を促進剤又は遅延剤によって調整して、作業性や可塑状ゲルの大きさを調整することが判った。
【0032】
7)フライアッシュは石炭灰の産地や発電所での燃焼状態により、性状成分は大きくばらつく。この性状のばらつきよって比重や単位重量、水紛体比に対する性状等々が変化する。さらに注入液の送液過程、注入地盤の圧入過程で時間と共に流動性が変動していく。その配合液はこれが注入液の配合調整や注入管理を難しくさせる。このため、配合範囲の設定のみならず配合管理システム、注入管理システムが重要になる。
【0033】
8)単位体積重量は1.7tf/m2度と小さく、特に地下水面下に注入した場合は有効重量が小さくなるため、地盤の沈下量や土圧の低減などに有効となる。
【0034】
9)フライアッシュの粒度分布は100ミクロン以下が大半を占め、本発明のフライアッシュモルタルは調密な硬化体となるため、それ自体の透水係数が10-7cm/secオーダーとなり、地盤中に注入した注入固結体同士を連続させて均密な遮水構造体が出来る。
【0035】
10)経年劣化が非常に少なく、本発明のフライアッシュモルタルは水質試験及び溶出試験結果で環境基準を満足する。また、地下水下の地盤中の空洞中に注入しても濁度は部分的に集中に、拡散しにくい。充分に混練された本発明のフライアッシュモルタル注入液は、ブリージングが少なく固結体の体積変化が殆どなく注入固結体同士の境界面は一体となり空洞を隙間なく充填する。ゲル化促進剤を添加することで、直ちに水中でも自立しうる可塑状ゲルを形成する。
【0036】
11)フライアッシュの性質である“嫌水性”により水と馴染みにくく、フローやスランプが安定するまでに混合水との混練に長時間を要する。一般のコンクリートの混練時間は1分以内であるのに対し、フライアッシュモルタルは3分以上を必要とする。このため、充分な混練装置と圧送装置が重要となる。又、フライアッシュとセメントを粉のまま所定比率で混合してから混合水と混練してもよい。この場合、各ベルトコンベアに備えた連続計量器によりフライアッシュとセメントをそれぞれ計量しながら混練し、更にパッチ式ミキサにより混練してもよい。
【0037】
12)フライアッシュモルタルの混練や圧送に適したワーカビリティは、テーブルフローで25cm付近、スランプ20cm付近が最も好ましい。スランプやフローを支配する混練水量の決定が、ワーカビリティを大きく左右させる。時間と共に逐次変化するこれらの流動性を的確に判断し、迅速に配合並びに水紛体比を調整することが地盤中に塊状の可塑状ゲルを形成するために重要である。フローによって水粉体比と硬化発現材比を管理して地盤中における可塑状ゲルの成長をはかることが出来る。
【0038】
13)上述したように、フライアッシュ・セメントにゲル化促進材を添加すると添加量に応じた可塑状ゲルを形成するゲルタイムを調整できる。促進材として水ガラスや硫酸アルミニウム塩をフライアッシュモルタルを添加することにより容易にスランプを20cm付近から10cm以下に減少させて地盤中における脱水と共に可塑性ゲルを形成させかつそのゲルが可塑状を保持する時間が長いところから圧入を継続する事により塊状ゲルが成長し地盤中に大きな塊状ゲル化物を形成し更に時間の経過又は脱水によって非可塑状ゲルを経て硬化体に変化する。このような特性は、フライアッシュモルタルの有効成分の殆どがフライアッシュであり、セメントがわずかですむためフライアッシュの特性が大きく現れている事による。即ち、フライアッシュが球状のためベアリング作用による優れた流動性と毛管現象に近い混練水の結合力による分離しにくい粘性と嫌水性による水となじみにくい分離しにくさによって、塊状ゲル化物をつくりながらゲル化物が大きく成長する現象を可能にするものと思われる。
【0039】
14)上記において更に骨材を加えることが出来る。骨材は増量材として役立つのみならず固結強度や流動性の調整にも役立つ。一般に粉体中の骨材の比率が多くなれば強度は小さくなり、骨材の粒径が大きくなればその流動性は低下する。
【0040】
15)フライアッシュモルタルに硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩や水ガラス(水ガラスと酸を混合して得られた酸性水ガラスも含むものも本発明では水ガラスとてみなすものとする)を添加すると直ちにフローやスランプが大幅に減少する。硫酸アルミニウムとフライアッシュモルタル中の水酸化カルシウムが反応しエトリンガイドを生成すると考えられる。エトリンガイドと水和化合物の生成やそれに伴う結晶水の消費などによって、フライアッシュモルタルの粘性が直ちに高くなり、流動性が低減する。
【0041】
(Al2(SO4)3・18H2O/硫酸ばんど)+(6Ca(OH)2/水酸化カルシウム)+8H2O
→ 3CaO・3CaSO4・Al2O3・32H2O/エトリンガイド
【0042】
硫酸ばんどをフライアッシュモルタルに添加すると、1〜2分間の間の攪拌でスランプの減少、フローの減少、粘性の増大を生ずる。フライアッシュモルタルが脈状に割裂する事なく可塑状ゲルが地盤中に形成して塊状ゲルが大きく成長するには、フライアッシュモルタルの硬化材発現比、水紛体比、アルミニウム比、フロー値、スランプ値の範囲等、可塑性注入材としての条件や注入の手法が重要となる。
【0043】
本発明におけるフライアッシュモルタル比の配合と流動特性の関係を示すと次のとおりである。
硬化発現材比 C/F+C×100(%) :1重量%以上50重量%未満
好ましくは1〜40重量%
さらに好ましくは1〜20重量%
水粉体比 W/F+C×100(%) :20〜150重量%
アルミニウム比 アルミニウム/F+C×100 :0〜2.0重量%
水ガラス :シリカ分で0〜7.0重量%
スランプ(cm) :26cm以下
好ましくは約4〜26cm
フロー(cm) :30cm未満
好ましくは約13〜28cm
【0044】
16)可塑状グラウトを地盤中に圧入する際の最も大きな課題は、セメント系懸濁型グラウトはただでさえ粘性が大きいのにそれを可塑状にすれば地盤中に開口する注入管の注入口からの圧入抵抗並びに注入口に到る迄の送液管の送液抵抗が極めて大きく、かつ送液管やポンプの中でつまりやすいという問題があった。このため送液を容易にするために薄い配合を用いると地盤中で脈状になるという点が懸念された。このため先願技術では裏込め注入と同じように流動性の良いセメント系懸濁液と可塑材を注入管に送液される前の時点で合液して瞬時に可塑状ゲルにして地盤中に圧入する方法が提案された。しかし、注入管の中で可塑状ゲルになってしまった強度の高い瞬結性のセメント系可塑状ゲルが地盤中で大きな塊状ゲルに成長するのは困難であり又、大きな注入圧力を必要とする。
【0045】
本発明者は裏込め注入や空隙充填のための可塑状グラウトの注入が注入圧を殆ど必要としない注入に比べて、地盤中に圧入して大きなゲルを形成して周辺土砂を圧縮する地盤改良の注入においては全く異なる事に着目した。なぜならば、圧入の場合は脱水現象を生ずるから、地上部に放置しておけば可塑状を呈さない配合液でもいずれは可塑性を呈するものの、可塑性を呈する迄には長い時間がかかる(ゲル化時間が長い)。懸濁配合液をA液とし、可塑材をB液とし、注入管に合流された時点で可塑状にならなくても地盤中に注入されると同時におきる脱水の過程ではじめて急速に水紛体比が減少して可塑状グラウトとなり、可塑状ゲルが大きく成長し非可塑状ゲルを経て固化する事を見出した。
【0046】
特にこのような現象はフライアッシュを主体とし、硬化発現材比が小さな本発明において極めて顕著になる事が判った。これは上述のフライアッシュの流動性によるものと思われる。
【0047】
この結果、送液中の送液管中の抵抗圧やポンプ中におけるつまりが生じなくなった。
即ち、注入管の吐出口から地盤に注入される時点では非可塑状グラウトであるにもかかわらず、地盤中に浸透される過程において急速に可塑状ゲルとなり、可塑状ゲルを保持しながらゲルが拡大する事になる。
【0048】
すなわち、表−1に示すように配合1、2は地上部(注入管吐出口に至る迄)では可塑状ゲルになる迄のゲル化時間は480分とか300分を要する。しかるに地盤中においては、脱水によって水紛体比が35%→30%→25%に低下するにつれて0.1分迄減少し、しかも可塑状保持時間は7.5時間となりブリージングが小さく、粘性が増大して拡散しにくくなり固化物は大きな強度となる。このような特性は従来知られていなかった本発明注入材の流動特性である。
【0049】
従って、このように注入時点で可塑状を呈さないが地盤中の脱水によって初めて可塑状になる。可塑性グラウトの注入においては配合液を一液のまま注入しても懸濁液をA液としゲル化促進材をB液とし合流注入しようと、その手段は問わないで施工する事が出来る。又、フライアッシュの反応性により注入管内で配合装置等を用いる事なく、地盤中で可塑状ゲルを形成出来る。
【0050】
17)フライアッシュモルタルは流動性がありながら、かつ、優れた反応性により流動性を保持している過程で反応が経時的に変化が生ずる特性を発現する。本発明者はこの経時的特性の変化を利用する事により、前述の可塑性注入材の目的に適合せしめるための相矛盾する条件をクリアーして本発明を完成するに到ったものである。
【0051】
以下の本発明者による研究の結果、可塑性注入材を圧入して地盤中に大きな可塑状ゲル化物を形成して強度増加による設計可能な信頼性のある地盤改良工法を可能になった。
【0052】
1.注入液そのものはポンプによる流動性があるが地盤中に注入したものが脈状に割裂を生じて不特定に浸透して固結しないようにする。なぜならばそれぞれの注入孔の受けもち範囲内でゲル化物による塊状固結体が形成されてはじめてその受けもち範囲における土粒子間隙が減少して塊状固結体周辺の注入孔の間の地盤の密度増加が確実に期待できるからである。
【0053】
2.地盤中に注入したものが土粒子間浸透して固結しないようにして複数の注入孔の間の地盤の土粒子を塊状ゲル化物で押しのけるようにする。なぜならば、土粒子間に注入液が浸透したのでは複数の注入孔の間の地盤を圧縮することが出来ず、注入孔の受け持ち範囲における地盤の圧縮による密度増加が確実に期待できないからである。
【0054】
3.地盤中に圧入されたゲルが塊状に固結体を形成し、なおかつ大径の固結塊に成長するようにする。
【0055】
4.地表面近くは地盤隆起しやすく、又注入液が地表面に逸脱しやすいのでそのような現象を防止する手法も併用する。
【0056】
5.長距離の送液パイプ中で分離する事なく流動性を保持しうる事が建造物が密集した地盤の耐震補強に本技術を適用するための作業性を可能にする。
【0057】
6.砂地盤だけでなく粘性土地盤にも適用出来るようにする。
注入液の配合システムから送液管と注入管管路を経て地盤中に注入される経路において、流動性を保持しながら(要件5)地盤に注入されてから以上の1、2、3、4の要件を可能にする。
【0058】
このような経過を注入という手段で地盤中に土粒子間で生じせしめるには、セメント系モルタルでは不可能であって、上記焼却処理したフライアッシュにそれよりも少量の上記硬化発現材を混合してはじめて可能である。
【0059】
可塑状ゲルを呈する迄の時間を短縮するには、水ガラスやアルミニウム塩を加える事により調整出来る。即ちこれらはゲル化促進剤として作用する。水ガラスと硫酸等の酸を混合して水ガラスのアルカリを除去した酸性水ガラスを用いると殆んど瞬結的にゲルが形成される。本発明では酸性水ガラスも水ガラスとして扱う。この場合、重曹や炭酸ナトリウムを併用することによりゲル化時間を調整できる。又、リグニンスルフォン酸塩等のゲル化遅延剤を用いる事も出来る。
【0060】
本注入材はポンプで注入地盤中に圧入される時点では可塑状を呈していなくても地盤中で加圧脱水する事により容易に可塑状ゲルになる。又、静止すればゲル状となって流動性を失うそれ自体可塑性を呈する自硬性可塑性懸濁液をミキサー等で練り混ぜ、流動化せしめて地盤中に圧入すると、地盤中で注入圧力によるわずかの脱水で懸濁液の水紛体比が減少して流動性を失い次々に送り込まれる可塑性グラウトが先行して流動性を失ったゲル化物を注入圧で押し拡げながら周辺の地盤を加圧圧縮して塊状固結体の体積を拡大して最終的には注入圧力で拡大不能な強度に達し、ゲル化物からなる固結体を形成し最終的には水和反応で硬化する。
【0061】
この結果、地盤中に造成される固結体は土粒間にも浸透せず、又脈状にも浸透せず注入圧で圧縮されたゲル化物による固結体が形成されその固結量に相当する土粒子の間隔が減少する結果高密度化された信頼性のある地盤改良が可能になるといえる。このような現象は骨材がセメントよりも多くてもセメントを硬化発現材の主材としたものである以上、脈状に割裂しやすくなる。
【0062】
これに対しフライアッシュを主材とした可塑性グラウトの利点は地盤に注入する前、あるいは注入後の地盤中において大きなフロー、すなわち20cm以上30cm未満、スランプが15〜26cmといった流動性がある配合を用いても、地盤中に圧入することにより脱水を伴い、注入前にフローが30cm以上でも、あるいはスランプが26cm以上でも、地盤中で可塑状ゲルになり、かつ可塑性保持時間が充分ある可塑性ゲルを形成し、充分大きな塊状ゲル化物に成長できる点にある。
【0063】
この結果、フライアッシュを主材として製造した自硬性可塑性懸濁液をポンプで地盤中に圧入する事によって地盤中で1、2、3、4、5の現象を生じせしめ、地盤中で大きく塊状ゲルを固結せしめることに成功したものである。
【0064】
また、本発明者はフローやスランプが小さい流動性の小さな可塑状ゲルを注入するに当って、ミキサーで配合後ポンプで圧送する。更にミキサーからスネークポンプやスパイラル状の羽を有する回転軸を有する送液装置を介してポンプに送液する事により、容易に高粘性の可塑状グラウトを送液する事を可能にした。この方法にすれば、1000cps以上の高粘性の可塑状ゲルでも圧送可能である事が判った。
【0065】
本発明の可塑性注入材の代表的例を云えば、懸濁液を構成する主材となる紛体のフライアッシュ等に加えるセメント又は消石灰等からなる粉状の硬化発現材は使用する粉粒素材中の50重量%未満、好ましくは1〜40重量%、更に好ましくは1〜20重量%、また水粉対比は20〜150重量%、好ましくは20〜80重量%である。ゲル化促進材を加える場合は注入材に含まれる粉体、つまり主材と硬化発現材の総量に対してアルミニウム塩をAl2O3換算で0.01〜0.35%練り混ぜることにより、フロー13〜28cm(地盤中で脱水すれば、注入前に28cm以上でも地盤中で可塑状ゲルを形成する)、好ましくは15〜25cm、ゲルタイムが3分以内から数100分、可塑状保持時間が数時間から10時間以上、ブリージング率が5%以内、スランプが26cm以下(地盤中で脱水すれば、注入前にスランプが26cm以上でも地盤中で可塑状ゲルになる)好ましくは25〜5cmの可塑性注入材でとなる。
【0066】
本発明のこのような特性により、又、ゲル化促進材として水ガラスや酸性水ガラス等のシリカ分を加えるとゲルタイムも可塑状保持時間も大幅に減少させる事が出来、又、ブリージングもスランプも更にフローも小さくなる。本発明可塑状グラウトは地盤中に圧入されて可塑状ゲルとなり土粒子を周辺に押しやり、地盤中で大きな塊状固結体に成長し、地盤強化を図ることが出来る。
【発明の効果】
【0067】
本発明はフライアッシュの流動性とカルシウム系粉状硬化発現物とのポラゾン反応による可塑性ゲルの特殊な特性を応用した可塑状注入材と、これを地盤中に圧入して可塑状ゲルの拡大によって土粒子を周辺に押しやり、地盤中にゲル化物からなる塊状固結体を造成し、地盤強化を図る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
本発明は上述のとおり、フライアッシュにそれより少ないカルシウム系硬化発現材を加えたそれ自体可塑性を呈する懸濁液を用いるが、使用する粉粒素材の種類と組合せ、および特定の配合比率で配合するようにしたから、目的に応じた流動特性、固結特性を呈する所望の可塑性注入材を得、この注入材を地盤中に圧入して、地盤中に塊状固結体を造成することにより注入孔に囲まれた地盤の土粒子を周辺におしやり、地盤強化を図ることができる。
【0069】
地盤中の塊状の固結物は、加圧することにより移動できるものの、土粒子間には浸透せず、かつ脈状に割裂しない程度の可塑状ゲルを形成する可塑性注入材であって、フローで現すと注入後の地盤中あるいは注入前の状態で13〜28cm、好ましくは15〜25cm、スランプでは26cm以下好ましくは4〜26cmの範囲を示す可塑性ゲルを形成する可塑性注入液であることが好ましい。また、前述したように、地盤中で脱水することによって、注入前の状態でフローが28cm以上、スランプが26cm以上でも地盤中で可塑状ゲルを形成する。
【0070】
フロー値やスランプがこれ以下だと、地盤中で可塑状ゲルの塊状固結体の成長が困難になるが大きな空隙が存在したり地盤が極めて軟弱な場合は必要に応じてゲル化促進材の量を増やしてフローやスランプをこれ以下にして適用できる。
【0071】
本発明は上述の通り、フライアッシュと硬化発現材の粉粒素材および水を特定比率で配合するが、フライアッシュ(F材)と、カルシウム系紛体である硬化発現材としてセメント、石灰、石膏、スラグ、のいずれか又は複数の一群(C材)と、水(W材)と混合する。
【0072】
なお、上記にてスラグは通常の4000(cm2/g)のブレーン等の一般品でもよいし、15000(cm2/g)ブレーン等の超微粒子スラグでもよい。硬化発現材比は50重量%未満、好ましくは1〜40重量%、更に好ましくは1〜20重量%、また1〜10重量%の配合でも極めて優れた効果がある。水粉体比は20〜150%、好ましくは20〜60%の配合である。ここで、硬化発現材比とはC/(F+C)×100であり、また、水粉体比とはW/(F+C)×100であり、F、C、Wはそれぞれ重量である。
【0073】
このような配合液は混合すれば、水粉体比が小さければそのままで、水粉体比が大きい場合は地盤中で脱水することにより遅かれ早かれフローが15〜25cmの可塑状ゲルになる。可塑状ゲルは力を加えれば流動するが静止すれば流動を停止する。従って地盤中で加圧脱水する事により水粉体比が大きい場合でも上記範囲のフロー値を呈する可塑性ゲルが地盤中に形成する。
【0074】
地盤中において形成された可塑性ゲルは流動性が少ない状態でありながら出来るだけ広範囲に拡大されて大きな塊状固結体を形成する必要がある。このためには水粉体比が重要であるのみならず硬化発現材比が重要である。
【0075】
硬化発現材比が過大であると、セメント等を主材とするモルタルグラウトの特性が強くなり水が分離してブリージングが大きくなり可塑状ゲルになりにくく、かつ脱水によって可塑状ゲルでなく非可塑性ゲルとなって短時間のうちに固化して高強度固結体を形成する。このため割裂して逸脱するか固化して注入不能になる。即ち主材がフライアッシュであるからこそ、又硬化発現材比が50%未満、好ましくは1〜40%、更に好ましくは1〜20%の間で、最も好ましくは1〜15%であって、地盤中で可塑性ゲルを経て大きく成長した塊状固化物が形成される。
【0076】
さらに、本発明はフライアッシュと、硬化発現材としてセメント、石灰、スラグ、のいずれか又は複数の一群と、水からなる自硬性懸濁液が、可塑性を発現する時間を調整するために硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム塩を含むこともできる。この場合、好ましくは硬化発現材比を2重量%以上50重量%未満、水粉体比20〜60重量%およびアルミニウム比を2.0重量%以下、好ましくは0.1〜1.0重量%、Al2O3換算で0.01〜0.35重量%である配合グラウトとする。ここで、アルミニウム比とはアルミニウム材/(F+C)×100である。アルミニウム材は重量を表す。
【0077】
なお、上記においてゲル化促進剤としてのアルミニウム塩や水ガラスは、フライアッシュ、硬化発現材と混合してポンプで地盤に圧入しても良いし、注入管中、或は注入管の近くで合流混合しても良いし、或はフライアッシュと硬化発現材とゲル化促進剤の混合液を注入する過程で更にゲル化促進剤を合流混合して注入しても良い。
【0078】
さらに本発明は、粉粒素材の主材としてフライアッシュと、硬化発現材として石膏、又は石膏、セメント、石灰、スラグ、のいずれか又は複数の一群(G)と、水(W)を混合する。石膏比、および石膏の混合物を1〜40重量%、好ましくは1〜20重量%、水粉体比を20〜70重量%の配合グラウトとする。ここで、石膏比、石膏の混合物比とはG/(F+G)×100であり、また、水粉体比とはW/(F+G)×100である。Gは重量を表す。
【0079】
さらに本発明は、粉粒素材の主材としてフライアッシュと、硬化発現材としてセメント、石灰、石膏、スラグ、のいずれか又は複数の一群と、水に加えて、焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂を混合することも可能である。又、本発明の可塑性注入材は発泡剤や起泡剤を加えて軽量化をはかることが出来る。上記において、粘土としてベントナイトやさらに高分子系増粘剤すなわちポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルローズ(CMC)やメチルセルローズ等を添加することにより水に対する分散性を抑制し、沈殿を少なくし、ワーカビリティの改善効果がある。
【0080】
又、本発明の可塑性注入材が焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれかを含む場合は、硬化発現材比が1重量%以上50重量%未満、水粉体比が20〜150%とすれば良い。ここで、水紛体比=W/F+C+B×100(%)であって、ここでBは焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれか或はこれらの複数の重量をいう。
【0081】
本発明は静的可塑状ゲル圧入工法というべき工法であってサンドコンパクション工法のように大きな機械で振動等を生じず、又低スランプのモルタル圧入工法のように流動性のないモルタルを特殊な装置で圧入する工法のように大きな設備を必要としない。これはフライアッシュの流動性の故にワーカビリティに優れている事による。このため本発明工法は通常の注入孔法に用いる簡便な装置を用いて静的にかつ騒音がなく作業場所の狭い領域でも簡単に施工出来るため、きわめて公害のない作業性に優れた工法といえる。以下に本発明の施工法について説明する。
【0082】
上述の本発明にかかる可塑性注入材は地盤中に挿入した注入管を通して、老朽トンネルの空隙充填、シールドトンネルの裏込注入、基礎の空隙充填、護岸背部の空隙充填に適している事は勿論であるが、更に地盤中に圧入し、土粒子を周辺に押しやって塊状に固結しながら周辺土砂を押しやって地盤強化を図ったり同じ原理で沈下した建造物の復元注入工法に適している。このような可塑性注入材の注入に当たり、初期注入圧力を低くして先行注入物の脱水を図りながら注入圧力を段階的に高め、あるいは注入と中断を繰り返して間欠的に加圧しながら注入し、これにより可塑性を呈するゲル化物の土粒子間浸透と地盤の割裂による逸脱を防ぎながら土粒子を周辺に押し広げて地盤の密度を増大させながら固結してもよい。
【0083】
しかも、この注入は複数の注入ポイントからの同時注入方式、別の注入ポイントへの切り替え注入、即ち図2(b)のような連続注入方式、1つの注入ポイントから他の注入ポイントに移行して注入してから再び戻ってきて繰り返し注入するインターバル注入方式、またはこれら方式の組み合わせて行われる。
【0084】
さらに、本発明にかかる可塑性注入材は複数の注入ポイントから注入して注入ポイント間の地盤を拘束し、あるいは複数の注入管を0.5m以上3m以内の間隔で地盤に設置し、注入管間の地盤密度を増大して地盤を固結することもできる。なお、本発明注入材の地盤への注入に際し、地盤が粘性土の場合或は粘性土層を介在した地盤の場合、地盤中にドレーン材を設置して地盤中に注入された可塑性注入材の脱水あるいは地盤の脱水を促進しながら注入を行うこともできる。
【0085】
上述の注入は例えば次の(a)、(b)、(c)に示す注入管を用いて行われる。
(a)先端部に吐出口がある注入管。
(b)軸方向に複数の吐出口を有する注入管を用いて注入する。
(c)外管に少なくとも一つの袋体パッカを備えた多重管を用い、内管から外管を通して注入する。
【0086】
軟弱地盤等の強度を大幅に向上させるために、多量の可塑性グラウトを一度に過大の量を注入すると、地盤表面に隆起が生じたり、側方向に地盤を破壊し、逸脱して当該地盤の強度が設定通りに向上しない事態が生ずるが、このため可塑性グラウトの特性を生かし、注入中は流動性があり、注入を停止すると、流動性が停止してゲル化或は加圧脱水して擬固状態が現出することから、対象注入土層に少量づつインターバル方式(時間の間隔をあけて注入する)で反復注入して擬固せしめ、注入された地盤を破壊することなく、圧密し、排除された水分は周辺の土粒子間に分散させ、地盤側方に対する圧密と脱水を行い、ゲル化物による固結径を大きくし或はこれらのグラウトを一定のタイムラグ(時間差)をもって注入する。
【0087】
例えば縦方向の注入にあっては、インターバル方式により回を重ねて、注入を行い、先行して注入された可塑性グラウトに対し、重ねて、該可塑性グラウトを圧入して、当該地盤を割裂する事なく、懸濁型の可塑性グラウトを反復的に圧入することにより、当該地盤の側方に対する圧密脱水を行い、地盤強化が行わる。或は当該地盤の所定エリアに所定数の削孔を形成し、各削孔に対し、可塑性グラウトを所定タイムラグを介し、一か所で設計量を一挙に可塑性グラウトの注入が行われないように、設計注入量をいくつかに分割して注入することも出来る。このようにして各削孔の可塑性グラウトを相互に所定タイムラグで各土層、又は、各ステージ毎にインターバル方式により注入し、先行して注入した可塑性グラウトが周辺地盤を圧密し、又は、自ら、又は、注入液が脱水することをもって、追い討ち的に重ね注入をすることにより、当該所定数の多数の削孔内に注入する可塑性グラウトが各削孔の地盤に対し土層又は各ステージ毎に、同様に側方に圧密脱水作用を行い、強度をアップし、全体的に変位を抑制し、当該所定エリアの地盤の強度を増強する事が出来る。
【0088】
例えば所定深度まで先端に吐出口のある注入管を挿入し、注入管の引き上げステップを非可塑状ゲルになる前の可塑状ゲルの範囲内に吐出口が位置するようにステップアップしながら可塑状ゲルの塊状体を拡大せしめて圧入する。更には、削孔に挿入する注入管に袋体を地表面近くの領域にセットし、内部に懸濁型グラウトを圧入して袋を周辺に膨張させて周辺地盤を圧密することにより、地表面に可塑性注入材を逸脱する事なく地表面を改良し、かつ該袋体より下方から可塑性グラウトを圧入する事により、該袋体硬化体に対する可塑性グラウトの乗り越えがなく、該袋体による拘束効果により地盤の隆起等の変位がなく、地盤脱水作用による強度が全体に及び、強度向上が全領域的に図れるようにする事が出来る。
【0089】
この場合、袋体の設置領域は地表面に近い深度、例えば3m範囲内にあるようにするのが好ましい。なぜならこの領域は可塑性注入材といえども地表面に逸脱しやすいからである。又、同じ理由でこの地表面に近い領域には注入孔を密に設置することにより地表面の圧縮の均等化を図り、かつ地表面隆起を防ぐ事が出来る。なぜならば地表面に近い深度例えば3m以内の領域では一本の注入孔から多量の注入を行うと土被りが少ないために地表面に逸脱しやすく、かつ地盤隆起を起こしやすいからである。従って、この領域は注入孔を深度の大きい領域よりも密にして一本当りの注入量を少なくする事によって地表面付近を均等に強化出来る。又、地表面の地盤改良は上載圧が少ないために地盤隆起を起こしやすく、地盤隆起は地表面数m径に及ぶ。従って、注入する注入孔を隣接する注入孔へ移行するのではなく地盤隆起の影響範囲外の注入孔に移行して注入し、地盤隆起が治まった時点で隣接する注入孔の注入を行うのが望ましい。又、地表面に近い領域においては上部から下方に注入ステップを移行して可塑性注入材を圧入して地表面付近の地盤を圧縮してから改良地盤の最下部まで注入管を挿入し、下部から上方に注入ステップを移行して注入することにより地表面の地盤隆起を低減して、或は上部の拘束効果によりそれより下の確実な改良が可能になる。
【0090】
更に、可塑性グラウトの当該地盤に対する注入において、土中水分が排除されるように、排水用のドレーン材を併設して、間欠的(時間をあけて注入する)な排水効果(注入を中断している間に脱水する)による地盤の側方圧密脱水効果を促進させ、或は可塑性注入材の脱水を促進する事が出来る(このドレーン材の適用は粘性土層の地盤強化に適している)。或は排水管を設置して地下水を排除し、当該圧密による速度を向上させるようにする。
【0091】
更に地盤の隆起等の変化を計測するためにレーザー等のセンサーにより、リアルタイムで当該変化を測定し、地盤の圧縮量を把握し、或は、当該変化が設計的に異常を生じた時には、即応的に可塑性グラウトの注入を調整したり、或は、注入装置の制御装置を介し、注入量や注入深度の変更を行い、或は注入液の比重や注入量やインターバル時間等を自動的に切り換え的に調整して、所定変位を超えないうちに他のステージに移行し、設計通りの圧密脱水による地盤強度の向上が確実に行うことが出来、上記地盤の変位測定は地表面における地盤隆起の測定の他、ストレンゲージを張った計測棒を地盤中にセットして測定方向への地盤の部位の変化を知ることが出来、又、地盤中に間隙水圧計を設けて、圧密脱水状況を把握することが出来る。
【0092】
図1は可塑性注入材の注入配置を示す。この発明は、懸濁型の可塑性注入材を注入管から軟弱地盤に低速で圧入すると、注入圧力を加えている間は流動性を呈する可塑性ゲルが塊状ゲルの範囲を拡げるが、地盤中の注入グラウトの先進部では注入圧力による周辺土粒子への脱水によってグラウトの含水量が低減して流動性が失われ非可塑性ゲルになる。このようにして注入孔の間の土の密度が増大して地盤の強度が増加し、地盤を強化する。注入孔間隔は上質や目標改良度や土かぶりの大きさに応じ0.5〜3.0mが有効である。
【0093】
次に、この出願の発明実施しようとする形態を実施例の態様として図2に従って説明すれば以下の通りである。この場合の注入は図2(a)のようにロッド注入管9を用いて下から上、又は上から下に順次注入する。或は二重管ダブルパッカ注入外管を設置し内管から複数の吐出口を経て注入してもよい。この場合は地盤に注入された可塑状ゲルが非可塑状ゲルになる前の状態になっている範囲にその吐出口が位置するようにステージが移動するようにするのがゲル化物を拡大する上に好ましい。
【0094】
図2(b)の実施形態はインターバル方式の基本的実施例の態様を示すものであり、所定の軟弱地盤3、同様に在来態様同様の形式により所定ピッチの横方向に介して削孔4を所定深度に形成し、図示しない注入管9を該削孔4に挿入し、地上の図示しない注入装置から懸濁型の可塑性グラウトを所定のタイムラグでインターバル方式により当該注入管9の所定ステージに変換しながら連ねながら注入し、又、所定ステップアップ、或はステップダウンを介し、反復して、注入を地盤3のゾーンごとに反復して追い討ち式に行っていく。この場合、注入管は注入管ロッドを用いてもよいし、注入外管内に注入内管を挿入して注入ステージを移向して注入してもよい。
【0095】
この場合、各サイクルに於ける可塑性グラウトの注入は注入初期にあっては逸脱しないように低圧で注入し、地盤3内の排水を行いながら、或は注入液の脱水を行いながら注入し所定タイミングの後、圧送を停止すると、前述の如く流動性を失って経時的に固化し、後注入する可塑性グラウトは先行して注入された可塑性グラウトを内側から側方向に押しやり、上側の地上方向には逸脱せず、追い討ち的に横方向に重合する方式で注入され、側方地盤の圧密脱水を図り、注入部位に於ける脱水が図られて注入可塑性グラウトの強度は増大し、後注入の可塑性グラウトは回を重ねる度に向上していく。
【0096】
この場合、当該地盤3の所定エリアに対し、削孔を横方向所定間隔を介し、設定数多数の削孔4を形成させ、各削孔に対し、各別個に注入管9を挿入し、所定タイムラグでバルブ5、ポンプpを介し而して注入装置に接続し、可塑性グラウトをコンピューター7を有するコントローラー6により所定のプログラムを介して、削孔4に対する注入タイミングをコンピューター7を介してずらして、横方向に並列的に形成された該削孔4に対し、バルブ5、コントローラー6を介して所定タイムラグで、インターバル方式により、可塑性グラウトを注入して地盤の相隣る削孔4の側方地盤の全領域的な圧密脱水を行って結果的に全領域的な地盤の強度の向上を図ることが出来る。
【0097】
すなわち、改良地盤は注入孔を介し注入を、又、所定お領域に一度に多量の可塑性グラウトを圧入すると周辺土が充分な範囲を圧密する前に破壊したり、地盤隆起したりしてしまうが、全注入量を分割してインターバルで圧入すると可塑性であるがために注入の中断により流動が停止し、その位置に保持され、その周辺土は圧密脱水されてる時間と、可塑性グラウトの脱水の時間が与えられ順次塊状可塑性グラウトによる固結体の大きさが成長し柱状固結体とその柱状固結体にはさまれた密度の増加した複合地盤となる。
【0098】
もちろん、当該態様にあっては、所定のインターバル方式をとることにより、所定タイミングで全削孔4を一巡した後は、初期の削孔4に戻ることが可能であり、該管のインターバルの可塑性グラウト注入において、注入された可塑性グラウトは固化し、地盤3に対する圧密状態を維持する。即ち、改良地盤は注入孔を介し注入を、又、所定の領域に一度に多量の可塑性グラウトを圧入すると周辺土が充分の範囲を圧密する前に破壊してしまうが、全注入量を分割してインターバルで圧入すると可塑性であるがため注入の中断により流動が停止し、その位置に保持され、その周辺土は圧密脱水されてる時間と、可塑性グラウトの脱水の時間が与えられ順次塊状可塑性ゲルによる固結体の大きさが成長し柱状固結体とその柱状固結体にはさまれた密度の増加した領域の複合地盤となる。
【0099】
このため、注入圧力は地盤隆起に作用するよりも側方向への圧密作用が生ずる。
【0100】
尚、削孔4の軸方向上方向には所定タイムラグで注入する可塑性グラウトの機能により、変位が垂直方向よりも水平方向に起こり易く、従って、地盤3の上方への隆起は避けられる。
【0101】
図2(c)は引張強度を有する注入管9(或は、注入管に引張材を抱き合わせた補強材でもよい)を地盤に設置して可塑性グラウトを圧入した場合の地盤の強化モデルを図示する。図2(c)に示す様に、地盤を削孔して注入管9を埋設して所定の位置で可塑性注入材を圧入して周辺地盤に固結体形成することにより、周辺の土が圧縮して固結による大きな土中アンカーが形成される。該土中アンカーによって引張強度を有する注入管9が地盤に定着される。この状態だけでも地盤が変位しようと、引張体に伸びが生じ地盤に引張強度が付与される。
【0102】
なお、図2(a)、(b)において注入外管から注入内管を通して注入する場合、軸方向に複数の吐出口を有する注入外管には吐出口にゴムスリーブをかぶせて逆止弁の役をする。この注入外管内にシングルパッカ或はダブルパッカを有する注入内管を挿入して最下部の外管吐出口から可塑性グラウトを圧入しては上方へステップアップし圧入して地盤強化を行う。
【0103】
この場合注入外管の設置のためのボーリング作業と注入作業は別々に行うことが出来る。又、注入外管内を再ボーリングして再注入することも出来るし、注入深度毎に確実な注入が出来、かつ注入外管の引張力を地盤に付与でき杭効果をうることも出来る。
【0104】
また、本発明注入材と溶液型注入材を併用する事によって砂質土と粘性土の互層からなる地盤を改良することが出来る。本粘性土は溶液型グラウトによる浸透注入が不可能なためゲル強度の大きい懸濁型グラウトの脈状注入が行われてたが、所定範囲に注入する事が不可能なためその効果は不確実だった。しかるに上記注入管を用いて浸透不能な土層に可塑状グラウトによる圧密注入を行い、浸透注入可能な土層は溶液型グラウトで改良する事が可能になる。例えば溶液型グラウトを注入した上で可塑状グラウトを圧入すれば全体の地盤改良が可能になる。
【0105】
而して、上述の如く、この出願の発明においては、各削孔4に注入された可塑性グラウトは地盤3の側方の加圧脱水作用を行って上方への逸脱は阻止される。従って、地盤の隆起等は生じ難いが、地盤表面の隆起や各相隣る削孔相互間の変形量を測定するために図3に示すようにレベルセンサーによるレベル検出方式を用いる。図3に示すようにレーザービーム発生装置11に対し、地上部の地表面或は建造物注入の影響をうける位置に設けたレーザー受信装置12を介し、レーザービームセンサー15を設ける。そして、受信装置およびコンピューター17を介し、適宜注入制御装置18により、図に示す様に注入管9に対する注入ステージの移向、可塑性グラウトの注入の注入量やインターバル時間や比重等を調整的に制御するようにする。このときレーザービーム装置11から発生するレーザービームが精密に作製されたレーザービームセンサー15に対し、受信装置12が上下に変位し、地盤3の隆起等が正確に検出される。そして、コンピューター17を介し、図示しない注入制御装置を発停し、間欠的に注入する可塑性グラウトの側方地盤の圧密脱水に最適なタイミングと量で注入を行い、地盤の隆起等を測定しながら、注入の中止、注入量の調整、他の注入地点への移向等最適に注入を行う。
【0106】
なお、当該図3に示す様に、注入の圧密体の側方変位や地盤の隆起等の計測検知はレーザー光線を用い、又、光学的に検知する為に、mm単位の精密な計測が必要である。
【0107】
従って、当該削孔4の変位や地盤3の隆起は広範囲に亘って精密な計測が可能であり、該地盤3の変位等の微少な変位を正確に、検出して設計通りの地盤3の強度向上が行える。
【0108】
而して、上述実施例において、側方地盤3に対する圧密脱水作用を介し、該地盤3の強度を向上することが基本的には可能であるが、可塑性グラウトの該地盤3に対する注入部位に地盤3中の水分が他方に逸走して他の地盤3部分の流動性を高めたりする虞れがあるが為に、液状化現象等の潜在的な原因を除くべく、可塑性グラウトの注入に伴って排除される地盤3中の水分を強制的に配設するべくペーパードレーンやサンドドレーン等のドレーン材(排水性や土性の異なる地層を貫通して)を併設し、圧密作用と脱水作用を両方に亘って積極的に行うことが出来る。
【0109】
図4は改良すべき地盤に屈曲して、また屈曲と直線を任意に組み合わせボーリングし、或はたて杭から建造物の基礎下に水平ボーリングして得られたボーリング孔中に、複数の外管吐出口を有する外管を設置し、この外管内に、内管を移動自在に挿入し、これにより内管と出口から外管吐出口を経て可塑性注入材を地盤中に注入するようにした態様を示すものであり、これにより地盤注入を施し難い既設構造物下方の支持地盤を急速かつ確実に、かつ経済的に地盤注入し、地盤沈下や、地震時における地盤の液状化を未然に防止する事が出来る。
【0110】
図4(a)は構造物10直下の改良すべき地盤処理の基本模式図である。図4(a)に示されるように、ビル、廃棄物処理場、溜め池、貯水池等、移動不可能な構造物10の直下の改良すべき地盤の近傍地表面から地盤中に屈曲して、または屈曲と直線を組み合わせて、ボーリング孔を形成する。次にこのボーリング孔中に設けた注入管から可塑性注入材を圧入する。
【0111】
図4(b)は構造物10下方の地盤注入例であり、構造物下方の深さ方向に複数層積層して処理することも出来る。
【0112】
次にこの出願の発明実施しようとする他の実施例の態様を図5に示す。図5(a)は地盤中にケーシング等管体を設けた上で鉄筋等の引張材を挿入した上で、可塑性注入材に圧入しながらケーシングを引き抜き、地盤中に塊状固結体を形成し周辺地盤を圧縮して強化するのみならず、圧縮杭又は引張杭としての効果もある杭体との複合的地盤強化を図る態様であり、図5(b)可塑性注入材の圧入による杭基礎の地盤の強化モデルであり、図5(c)は土留め壁における可塑性注入材によるアンカー形成の態様を示す。図5(a)図5(c)とも図5(a)の手法を用いてもよいし、引張力を有する外管を用いて内管から注入する事により外管の引張材としての効果を付与してもよい。
【0113】
本発明の注入管理方法としては、注入材の配合から注入材送液系統を通して地盤中の複数の注入ポイントに注入するまでの注入状況を画面表示し、一括監視を行って注入管理を行う。
【0114】
図6は、本発明の実施に供される注入管理方法の一具体例を示すフローシートであって、集中管理装置X1により注入状況の一括監視、管理を行い、常にその状況が注入監視盤X2に画面表示される。
【0115】
図7に集中管理装置X1の操作フローチャートを示しながら、図6について説明する。まず注入目的、注入条件に応じて注入仕様ファイルを集中管理システムX1に予め設定しておき(システム仕様設定登録)、次いで集中管理装置X1の開始スイッチをONにしてデータ記録を開始する。このとき、注入監視盤X2にもランプでON表示がなされており、注入データを画面に表示される。なお、ここで云う注入仕様ファイルとは材料の配合量、グラウトの流動規定値(適正流動範囲)、また圧力規定値(適正圧力範囲)、規定注入量(適正積算注入量範囲)、すなわち、所望のグラウトの流動特性、注入圧力、流量(単位時間当たり流量および/または積算流量)等である。又、上記において地盤隆起の適正範囲を加えても良い。
【0116】
集中管理装置X1の指示により、水、粉粒素材が、それぞれ計量器23を備えた水タンク24、および粉粒素材を貯蔵するホッパ25からミキサー27へ定量供給され、攪拌混合される。またこの時点でゲル化促進剤を添加する場合は、ゲル化促進剤を貯蔵するホッパ26より計量器23を介して添加される。
【0117】
ミキサー27内で充分に混合されたグラウトはミキサー27に取り付けられた或は別に備えられた流動特性計測装置28により流動測定が行われ、結果は集中管理装置X1を介して注入監視盤に表示される。ここで示す流動特性とはグラウトのフロー、或はスランプ、ゲルタイムあるいは粘度、或はせん断強度(コーンによる貫入測定等が用いられる)等により判断される。所定の流動性が得られると配合完了となり、グラウトはミキサー27より導管29を介して、さらにグラウトポンプ30へと送液される。また所定の流動性が得られていない場合、集中管理装置X1の指示により再度、材料(水、或は粉粒素材、或はゲル化促進剤)の添加が行なわれ、これは所定の流動特性が得られるまで繰り返される。
【0118】
ここではミキサー27内から直接グラウトを取り出すことも可能であり、流動特性計測装置28および集中管理装置X1を介さなくても、実際に手動で流動性を確認することも出来る。
【0119】
グラウトポンプ30へと送られグラウトは注入過程へと移向する。集中管理装置X1からの指示により、バルブ5が開けられ、グラウトポンプ30は所望の圧力でグラウトを加圧する。加圧されたグラウトは、導管29´、注入ホース31、注入管9を介して地盤3に注入、圧入される。
【0120】
導管29´には、圧力計p0、流量計f0が取り付けられ、測定された注入圧力、流量(単位時間当たり流量および/または積算流量)は流量圧力制御装置32に送信されるとともに、集中管理装置X1により管理される。
【0121】
注入圧力および流量が、予め設定された圧力規定値(適正圧力範囲)、規定注入量(適正積算注入量範囲)でない場合、或は地盤隆起量が適正範囲より大きくなった場合、注入は中断されるか、もしくは集中管理装置により調整、および制御の指示が送信される。また常時データは注入監視盤に画面表示されるので注入状況に応じて、注入条件の変更が可能であり、または注入緊急停止が行える。
【0122】
なお、流量計f0としては、回転流量計、電磁流量計等、任意の流量計を使用でき、パルスで出力された電気信号が流量は流量圧力制御装置32を介して集中管理装置X1に入力され、カウントされる。流量計f0および/または圧力計p0からの情報に基づく集中管理装置X1からの指示によりグラウトポンプ30の回転数を調整して毎分流量や注入圧力を制御する。
【0123】
また、集中管理装置X1により、インバータによってポンプの回転数を調節して流量を制御する。
【0124】
グラウトポンプ30はインバータ又は無断変速機を有するポンプ、或はリターン装置を有するポンプであってもよい。インバータや無断変速機は集中管理装置X1の指示を受けなくても、直接流量を調整して所定の圧力値にセットすることもできる。またリターン装置も直接調整して導管29´の圧力が所望の圧力を保つようにリターンさせることも可能である。なお、上述の調整は手動で行ってもよい。
【0125】
またグラウトポンプ30に代えて、コンプレッサを用いることも出来る。ミキサー27からグラウトをまず、加圧容器を設けて、これに充填し、次いでコンプレッサの作動により加圧容器中のグラウトを加圧して加圧注入グラウトとする。
【0126】
注入管9にはバルブ5が取り付けられ、このバルブ5は集中管理装置X1からの電気信号によって自動的に開閉される。複数本の注入管9を用いて、地盤3中の複数の注入ポイント22からの同時注入、連続注入、インターバル注入、またはこれらを組み合せて注入を行なう。またバルブ5は注入が完了した時点で手動により閉束することも出来る。
【0127】
全ての注入が完了の後、集中管理装置X1の開始スイッチをOFFにすることにより集中管理装置X1によるデータの記録が終了する。
【0128】
配合から注入までのデータを集中管理装置X1に送信し、注入監視盤X2に画面表示することにより注入状況の一括監視を行なって、グラウトの流動特性、送液系統の注入圧力、流量を所定の範囲に維持しながら注入するとともに、注入の完了、中止、継続、また再注入を行なう。
【0129】
また集中管理装置X1の指示により自動開閉されるゲル化促進材分岐バルブ34を設置することにより、ゲル化促進剤の配合時を管理する。予めシステム仕様設定にゲル化促進剤の添加時を登録し、ミキサー27内での混合、グラウトポンプ30への送液前の添加、およびゲル化促進剤ポンプ35を介することでグラウトポンプ30から圧送されたグラウトにゲル化促進剤を添加することも可能である。
【0130】
本発明に使用される注入工法は図7において、流動特性計測装置28、流量圧力制御装置32や地盤(或は構造物)変位計測器或は更に自動開閉可能なバルブ5を設け、これを集中管理装置X1に接続し、かつデータを注入監視盤X2に画面表示したことに特徴を有する。注入監視盤X2には注入年月日、注入時間等の「時データ」、材料の配合量、グラウト性状等の「グラウトデータ」、注入ブロックNo.注入孔の孔番、注入ポイント等の「場所データ」、注入圧力、流量(単位時間流量や積算流量)等の「注入データ」が表示される。その他、注入液識別データや地盤(或は構造物)変位データを表示することも出来る。
【0131】
図9に例えば10本の送液系統を有する注入をおこなった際の送液系統のデータ(流量、圧力、積算流量、最大圧力の合計40データ)を注入監視盤X2上に一つの画面で表示した画面を示す。図9の画面を詳述すると、以下の通りである。
【0132】
上半分の2画面:
グループ1:1号〜5号の積算流量、最大圧力デジタル表示
グループ2:6号〜10号の積算流量、最大圧力デジタル表示
積算流量は20分間の注入量である。また最大圧力は30秒毎に表示され、19分30秒から20分までの間の最大値を表示した。最大圧力が設定圧力以上になり続けたら、その送液系統の注入は終了することの判断になる。また、積算流量が設定積算流量に達した場合も、この送液系統の注入は終了することの判断になる。
【0133】
下半分の2画面:
グループ3:1号〜 5号の流量、圧力 トレンド表示
グループ4:6号〜10号の流量、圧力 トレンド表示
2画面のそれぞれの左側は各送液系統における時間(t)の経過に対応した瞬時流量と瞬時圧力のチャートを示し、右側は19分30秒から20分までの平均瞬時流量(l/分)と平均瞬時圧力(MPa)を示す。
【0134】
このようにして、図8の画面に示されるように、注入監視盤X2には送液系統No.1〜10の送液状態が同時に表示されるが、一つの送液系統毎に画面を切り換えながら表示することもできる。なお、流量圧力制御装置32における設定圧力、実際圧力、送液流量、積算送液流量を同一画面または別の画面に表示してもよい。これにより、圧力、流量との関係をリアルタイムで把握でき、注入を所定の設定範囲内に納まるように管理できる。また、図8において最大圧力の代わりに、圧力や流量を表示してもよい。さらに、集中管理装置X1は注入仕様ファイル、注入結果一覧表、注入チャート、日計表、週計表、月計表等の帳票作成ならびに解析データの作成をも行うことができる。
【0135】
注入仕様ファイルは集中管理装置X1の動作設定ファイルであり、注入液送液系統の注入完了条件の規定圧力値、規定注入量の設定を行う。各帳票ファイルは登録された流量、圧力、積算流量あるいは最大圧力の各データと、孔番等の手動入力、または自動入力によるデータとから変換作成される。さらに解析データは各帳票から変換作成される。
【0136】
図8の注入監視盤X2の画面において、各送液系統の1本毎に一枚ずつ、例えば図9に示される注入孔における注入ポイント毎に、ブロックNo.注入孔No.及びステージNo.とともに、圧力、流量、チャートを表示することもできる。
【0137】
さらに、これらのデータから注入孔毎に、例えば、図9のブロックNo.1、注入孔No.3について表示すれば、図10に示されるように、各ステージ毎に、時間tに対する注入圧力P、流量Q、および積算流量を表示することもできる。又、これらを図11に示すように三次元的に表示する事によって、各ステージでのN値と土被り圧から想定した許容注入圧力、範囲、目標N値から想定した許容注入量を基準に設定した。各注入ステージにおける注入量から注入前のN値のデータから注入後の目的N値に対応した地盤改良効果の予測がリアルタイムで可能になる。流量を制御する。
【0138】
このようにして、加圧注入グラウトの所定設定の流量ないしは設定圧力をもって、或は限界範囲内の流量ないしは圧力をもって、送液圧入する。この結果、確実にかつ改良効果の予測迄可能になる。又、上記の設定圧力、設定注入量は試験注入のデータを加味して補正する事が出来る。
【0139】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に記述するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0140】
使用材料
・ フライアッシュ
火力発電所より排出される石炭灰:FA、
密度1.9〜2.3g/cm3、粒度分布0.1mm以下が90%以上
(2)焼却灰
ごみ焼却炉より排出される焼却灰
密度2.5〜2.7g/cm3(3)セメント
普通ポルトランドセメント:PC、硬化発現材
(4)硫酸バンド
硫酸アルミニウム、Al2O3=17.2%、ゲル化促進剤
(5)水ガラス
JIS3号水ガラス、SiO2=29.0%、Na2O=9.0%、モル比3.3
(6)消石灰
工業用水酸化カルシウム
(7)スラグ
スラグ8000ブレーン値
(8)石膏
半水石膏
【0141】
配合例1〜3
フライアッシュ、セメント、水を練り混ぜる。フライアッシュとセメントの配合量は同様にして水の配合量のみを変化させた。このようにして得られた配合例1〜3の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表1に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
表1において、ゲル化時間とは可塑性ゲルを呈する時間を云う。又、可塑性保持時間とは静止しておけばゲル状を保持するが、力を加えると流動する状態を呈している時間を云う。配合後ただちに非流動性の可塑状グラウトとするためには、配合例3に示すように、水粉体比が25%以下である必要があると考えられる。しかし、混合条件や使用する材料により、出来上がりのグラウト性状は変わってくる。よって配合比率だけでなく、上記のようなブリージングやフロー、強度の測定が重要となる
【0144】
配合例4〜6
フライアッシュ、セメント、水を練り混ぜる。水の配合量は同様にしてフライアッシュとセメントの配合量を変化させた。このようにして得られた配合例4〜6の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表2に示す。
【0145】
【表2】
【0146】
表2より、PC添加量が大きくなるとブリージング率が大きくなり、可塑状保持時間が短くなって、初期粘性も高くなるため作業性も低下する。よって、PC添加量は50%より少なく、好ましくは1〜20%、さらに好ましくは1〜15%、最も好ましくは1〜10%が適している。なお、本発明において、ポルトランドセメントでなくても、高炉セメント、アルミナセメント、早強セメント、スラグセメント、その他任意のセメントを用いることができる。
【0147】
配合例6,7
表1の配合例1,2に硫酸バンドを添加し、ゲル化を促進させた。ここでゲル化を促進するとは配合後可塑性を呈するまでの時間を短縮し、或はフローを小さくすることを云う。このようにして得られた配合例6,7の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表3に示す。
【0148】
【表3】
【0149】
表3より、硫酸バンドを添加することで、ゲルタイムが短縮されるが、可塑状保持時間はそれ程短縮されず、またブリージング率も減少し、可塑状グラウトとしての作業性が向上できると考えられる。ただし、硫酸バンドには強度発現を低下させる性質のあるため、粉体に対して添加量は2.0%以内、好ましくは1.0%以内を用いる。
【0150】
[可塑性グラウトとしての要因と条件]
(1)硬化発現材比
グラウトに含まれる粉体、つまりフライアッシュと、セメントの含有量に対するセメントの含有量:セメント重量/(フライアッシュ重量+セメント重量)×100[%]
セメントは硬化発現材であり、かつフライアッシュの可塑材という事もできる。フライアッシュはセメントと混合することによりポゾラン反応を起こし固結強度を得る。しかしPC添加量を多くすることにつれ、可塑状グラウトとしての特性が低下する。即ち、沈殿してブリージングが大きくなり沈殿したものは流動しにくく可塑状ゲルになりにくいため、PC添加量は50%未満とするが、その好ましい範囲は硫酸バンド(ゲル化促進剤)添加しない場合1〜20%、好ましくは1〜15%、さらに好ましくは1〜10%である。また硫酸バンドを添加する場合は2〜40%、好ましくは2〜20%である。
【0151】
(2)水粉体比
グラウト中の粉体に対する水の含有量:水重量/(フライアッシュ(焼却灰)重量+セメント重量)×100[%]
この値が小さいと可塑状になりやすい。即ち配合後可塑状ゲルになる時間が短くなり、かつフロー値が小さくなる。しかし水粉体比が小さすぎると作業性を損なうため、その範囲は20〜150%、好ましくは20〜60%とする。しかし、混合条件、環境、また材料により、グラウトの性状は異なってくるため、後に示すブリージング率、フロー値、強度の測定が重要となる。
【0152】
・ 硫酸バンド添加量
グラウト中の粉体に対する硫酸バンドの添加量:硫酸バンド重量/(フライアッシュ重量+セメント重量)×100[%]
硫酸バンドはゲル化促進剤であり、フライアッシュとセメントの流動性ある状態の中に添加すると、ゲル化を促進させ、可塑状ゲルになる時間を早める。ただし、硫酸バンドには固結強度を低下させる作用もあるので、その添加量は2.0%以下、好ましくは0.1〜1.0%とする。
【0153】
(4)ゲルタイム
ここでは一般的な水ガラス系グラウトにみられるような固化状となる化学的ゲル化を意味するのではなく、配合後、自重による流動性がなくなり、力を加えると流動する可塑状ゲルとなるまでの物理的ゲル化時間をゲルタイムと表現する。一般の水ガラスを主材とするグラウトと違って、明確なゲル化時間を示すことはできない。よってフロー値を用いてその値が20cm以下になった時をゲル化とみなし、これをゲルタイムとした。
【0154】
(5)可塑状保持時間
アスファルト針入度試験方法JIS K 2530-1961に準じて総質量230g、先端角度15度、36mmの貫入コーンを用いて静的貫入抵抗を測定し、貫入抵抗値が0.01MN/m2越えた時を固結とみなして、ゲル化から固結に至るまでの時間を可塑状保持時間とした。
【0155】
(6)ブリージング率
配合後、グラウトを充分に混合させ、次いで、200mlメスシリンダにグラウトを入れて静止密閉し、1時間経過後にブリージング水量(上ずみ液)を測定し、次式よりブリージング率を求める。(ブリージング水量/メスシリンダ容量)×100[%]
ここでは1時間経過後のブリージング率を示す。1時間経過後のブリージング率が5%以上の配合では、その後、時間が経過すると更にブリージング率が増大するので、1時間経過のブリージング率が5%以内の配合が好ましい。図12に、表1,3における硫酸バンドの有無による水粉体比とブリージング率の関係を示す。
【0156】
(7)フロー値
フロー試験(JIS R 5201)に基づき、グラウトに15秒間に15回の落下運動を与え、その広がりを測定した。可塑状グラウトとしては約18〜19cmが適しているとされているが、本発明ではフロー値が20cm以下になる時点で自重による流動性がなくなったものとして、ゲルタイムとした。水粉体比が20〜150%のものでも地盤中に注入すると脱水によって水粉体比が少なくなりフローが20cm以下になってゲル化する。
【0157】
また、この範囲で水粉体比が大きな配合でも脱水によって地盤中で水粉体比が20%以下にあると可塑状ゲルから非可塑状ゲルを経て固化する。
【0158】
本発明において、フライアッシュと硬化発現材である粉体の混合液はそれ自体で時間の経過に伴い、あるいは地盤中で脱水により可塑性ゲルになるので、また本発明において可塑性ゲル化物そのものを注入する場合は、可塑性グラウトとしては13〜28cm、好ましくは15〜24cm、更に好ましくは18〜23cmが適している。これはグラウトを地盤中に圧入することによる脱水、およびポンプ圧送性や施工性を考慮したものである。また、注入時において、フローが28cm以上の配合でも地盤中で脱水することにより可塑状ゲルとなる。
【0159】
注入した注入液が最も塊状に固まりやすいフローは約18〜19cmとなるが、本発明では地盤中に圧入することによりグラウトからの脱水が生じるため、上述したように流動性のよい状態でも地盤中で可塑状となり、塊状固結体の造成が可能となる。また前述したように初期の低圧注入、インターバル注入による脱水作用を 低送することにより、或はゲル化付近で遅延剤を添加して、フローが28cm以内、或は水粉体比が20〜150%の注入液を適用できる。地盤状況や使用機器、装置、また設計条件に応じて、最適フローを設定することが出来る。表における×は、グラウトに流動性があるため測定できなかったことを表す。
【0160】
(8)初期粘性
B形粘度形を用いて配合直後の配合液の粘度を計測した。混合直後は流動性があるため計測できたが、ゲル化すると100000cps以上となり、測定不可となる。図13に、表1,3における硫酸バンドの有無による水粉体比と一軸圧縮強度の関係を示す。
【0161】
(9)一軸圧縮強度
配合後、充分に混合したグラウトを直径5cm、高さ10cmのモールドにつめ、静止した状態で1日養生し、一軸圧縮強度を測定した。図14に、表1,3における硫酸バンドの有無による水粉体比と一軸圧縮強度の関係を示す。
【0162】
図14によると、硫酸バンドの添加により強度が低下している。また水粉体比が多いと固結するまでの時間が長くなるため、水粉体比が小さいものよりも強度発現が遅くなる。
【0163】
配合例9〜11
水ガラスを水で希釈し、これにフライアッシュ、セメント、消石灰、水を混合した懸濁液を混合する。このようにして得られた配合例9〜11の地盤注入材の調製条件および物性値を下記の表4に示す。
【0164】
【表4】
【0165】
(1)消石灰添加量
グラウト中の粉体に対する消石灰の添加量
消石灰添加量/(フライアッシュ重量+セメント重量)×100 [%]
消石灰はゲル化促進剤であり、セメントと同様フライアッシュと混ぜるとポラゾン反応を起す。ただしセメントほど固結強度は得られない。ここでは可塑状とするため、またその保持時間を有するためのゲル化促進剤として用いた。その範囲はセメント添加量にもよるが3〜15%とする。
【0166】
(2)シリカ濃度
グラウト中のSiO2量
水ガラスのSiO2%×(水ガラス重量/グラウト重量)[%]
本出願人による実験によればグラウトを可塑状、および固結させるためには、その他の材料の配合比率にもよるが、シリカ濃度は0.2〜7.0%とする。ただし3号水ガラスのモル比以下の低モル比水ガラスを用いる場合は3.0〜7.0%が好ましい。もちろん、高モル比の水ガラスや、粉状水ガラスを用いることも出来る。
【0167】
(3)特性および比較
この配合の特徴としてゲルタイムの調製がしやすく、また可塑状保持時間はやや短いが早期強度の発現は顕著であることがあげられる。よって早期強度の発現を重要視する場合に適している。またグラウトをゲル化後よく練り混ぜることによって、早期強度の発現は低下するが可塑状保持時間を長くすることができる。よってゲル化後よく練り混ぜたものを注入することにより長時間の注入を要する目的やインターバル注入により、一度注入した注入ポイントに再度注入をくり返して、注入体を拡大する地盤改良に適している。
【0168】
配合例12
配合例2では硬化発現材としてセメントを用いたが、同様の配合量で硬化発現材として消石灰を用いる。このようにして得られた配合例12の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表5に示す。
【0169】
【表5】
【0170】
配合例13
配合例2では硬化発現材としてセメントを用いたが、同様の配合量で硬化発現材としてスラグを用いる。このようにして得られた配合例13の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表6に示す。
【0171】
【表6】
【0172】
配合例14
硬化発現材として石膏を用いる。このようにして得られた配合例14の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表7に示す。
【0173】
【表7】
【0174】
(1)硬化材添加量
グラウトに含まれる粉体の含有量に対する硬化発現材の含有量:硬化発現材重量/(フライアッシュ重量+硬化発現材重量)×100[%]
配合例1〜11に示すPC添加量と同様であり、配合例12〜14ではそれぞれ硬化発現材として消石灰、スラグ、石膏を使用したので、消石灰添加量、スラグ添加量、石膏添加量を意味する。ただし配合例9〜11の消石灰添加量はゲル化促進剤として用いているため、配合例9の消石灰の使用目的が違う。よって硬化材添加量と表記した。
【0175】
(2)配合例12の特性および比較
硬化発現材として消石灰を用いた場合、セメントと同様フライアッシュに添加するとポゾラン反応を起こすが、この反応は非常に緩慢であるため可塑状にはなるが固結には時間がかかり、また充分な固結強度を得るためには数週間かかる。ただし同量のセメントを用いるよりも可塑状になりやすくため、セメントと併用することにより優れた効果が期待できると考える。
【0176】
(3)配合例13の特性および比較
硬化発現材としてスラグを用いた場合、セメントよりも若干早くゲル化し、可塑状保持時間は長くなるが、セメントに類似した結果となる。ただし、強度発現はセメントよりも遅くなるので、硫酸バンド等の可塑剤を用いてゲル化を促進させる場合、硫酸バンドには長期強度の発現性を低下させる性質があるので、添加量に注意が必要となる。
【0177】
(4)配合例14の特性および比較
硬化発現材として石膏を用いる場合、石膏は反応が早いため可塑状にもなりやすいが、
強度発現も早いため可塑状保持時間が極めて短くなる。よって適用範囲が限定される。
【0178】
配合例15,16
2液式の配合として、フライアッシュ、セメント、水および可塑剤を配合した経時的に可塑状となり固結する上述のグラウトにさらに可塑剤を添加し、ゲルタイムを早めた。フライアッシュ、セメント、水および可塑剤を配合した上述の配合例7を用いて、ゲル化する前の流動性がある状態の中に、硫酸バンド水溶液、ならびに水ガラスを水で希釈した水溶液を添加した。配合比率は配合例7のグラウトが20に対し、可塑剤の水溶液を1とした。このようにして得られた配合例15、16の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表8、9に示す。
【0179】
【表8】
【0180】
【表9】
【0181】
(1)配合例15、16の特性および比較
流動性あるグラウトに硫酸バンド水溶液を添加した場合、グラウト中の硫酸バンド添加量が増えたためゲルタイムは短くなったが、強度発現に影響した。また水ガラスを水で希釈した水溶液を添加した場合、ゲルタイムは極めて短くなり、また可塑状保持時間も短くなるが強度発現は顕著である。よって早期強度の発現を重要視する場合に適している。2液式の配合としては、可塑剤として水ガラスを用いた配合が優れた効果が得られると考える。
【0182】
配合例17
表1の配合例3のフライアッシュに焼却灰を混合した。フライアッシュと焼却灰の混合比率は1対1である。このようにして得られた配合例17の地盤注入材の調整条件および物性値を下記の表10に示す。
【0183】
【表10】
【0184】
配合例18
フライアッシュに硬化発現材としてセメントを添加し、さらにベントナイトを混合した。その配合例18の地盤注入材の調製条件および物性値を下記の表11に示す。
【0185】
【表11】
【0186】
(1)水粉体比
グラウト中の粉体に対する水の含有量:水重量/(フライアッシュ重量+セメント重量+焼却灰量、あるいはベントナイト重量)×100〔%〕
ここで、硬化発現材とフライアッシュ以外の粉体として焼却灰、ベントナイトを例として用いた。その他に現場発生土や珪砂等を用いることができる。これら増量材としても、また骨材としても用いることができ、かつその粒径や粒度によって流動性や強度を調整することができる。
【0187】
(2)配合例17の特性および比較
表10の配合例17と、表1の配合例3を比較すると、焼却灰を混合した配合例17の方がブリージング率は減少し、フロー値が小さくなった。焼却灰を混合すると、フライアッシュのみの場合よりも流動性を失いやすく、また強度発現も低下する傾向にあると考えられる。硬化発現材比は50%未満、好ましくは1〜20%、水粉体は20〜150%とする。
【0188】
(3)配合例18の特性および比較
フライアッシュ(セメント+ベントナイト)を添加したものは、同量のセメントのみを用いたときと比較すると若干反応が遅くなるものの可塑状固結(可塑状保持時間)として大差はなかった。しかしベントナイトを添加することでセメントの添加量を減らすと固結強度が低下するので、PC添加量は3%以上として、ベントナイトは増粘剤として用いることによって4流動性を調整することができる。硬化発現材比は50%未満、好ましくは1〜20%、水粉体比は20〜150%とする。
【0189】
配合例19,20
エア発生剤として事前発泡型の起泡剤と事後発泡型のアルミニウム粉末をフライアッシュとセメントのモルタルに混合した。起泡剤を用いた配合としては一般的なエアーミルクの配合にフライアッシュを添加するものとした。アルミニウム粉末も比較のため同様とした。起泡剤、アルミニウム粉末はともに標準添加量を添加した。その配合例19,20の地盤注入材の調製条件および物性値を下記の表12、表13に示す。
【0190】
【表12】
【0191】
【表13】
【0192】
(1)起泡剤添加量
グラウト中に含まれるセメントに対する起泡剤の含有量:起泡剤重量/(セメント重量)×100 〔%〕
起泡剤添加量は対セメント重量比により規定されている。使用した起泡剤の標準添加量は0.5〜1.5%(対セメント重量比)であった。よって、その範囲に従うこととする。
【0193】
(2)アルミニウム粉末添加量
グラウト中に含まれる粉末に対するアルミニウム粉末の含有量:アルミニウム粉末重量/(フライアッシュ重量+セメント重量)×100 〔%〕
アルミニウム粉末はセメント等のアルカリに反応して水素ガス(起泡)を発生する。ただしフライアッシュにもアルカリが含まれるため、アルミニウム粉末添加量はセメントとフライアッシュの総量と対するものとする。対セメント比でこの添加量を決定すると配合時に気泡の発生量がきわめて少なく、エア発生剤としての効果を発揮しない。よって使用したアルミニウム粉末はその標準添加量が0.01%(対セメント比)だったので、ここではアルミニウム粉末添加量0.01%(対フライアッシュ+セメント比)とした。
【0194】
(3)配合例19、20の特性および比較
エアを用いた可塑状グラウトは前述までの可塑状グラウトの性状が異なり、グラウトの中の気泡を多量に混入させることでグラウトの流動性を失わせるため、比重がかなり小さいグラウトとなる。起泡剤は事前発泡型であるアルミニウムはアルカリと反応することで水素ガスを発生し、グラウトを膨張させる。その反応は配合より約10〜100分をかけて起こるため、ゲルタイムもその間となる。セメントの添加量が少ないと固結強度が低くなるのでPC添加量は7%以上が好ましい。
【実施例2】
【0195】
本発明の特徴である塊状固結体の造成について、従来の水ガラス系懸濁型瞬結配合(以下、瞬結配合)、水ガラス−セメント系のLW、また可塑性注入材を用いて検討した結果を下記の表14に示す。表14における比較例1は瞬結配合であり、比較例2はLWである。比較例1、比較例2の配合はそれぞれ表15、表16に示す。比較例2、比較例3、実用例は本発明における2種類の粉状素材と水を表14に示した水粉体比、硬化発現材比で混合したものである。下記の配合では粉状素材の主材としてフライアッシュ、硬化発現材としてセメントを使用した。対象とした地盤はおよそN値が7、相対密度が40%、細粒分含有率が20%未満である砂質土地盤である。
【0196】
【表14】
【0197】
【表15】
【0198】
【表16】
【0199】
比較例1〜3は地盤中に脈状となって注入されていた。比較例4および実用例は水粉体比が少なく、スランプ26以下、フロー値13〜28cmの可塑状となり、地盤中に圧入することにより、地盤に塊状固結体が造成されることが確認された。また比較例4では硬化発現材比が大きいためグラウトの固結が早まり、厚さ15cm以下の脈状固結体となった。よって地盤中に20cm以上の大きな固結体を造成するには、水粉体比20〜150%、硬化発現材比が1〜40%、好ましくは1〜20%、およびフローが13〜28cmの本発明の可塑性注入材が適している事が判る。
【0200】
また従来の裏込め注入で使用されている下記表17、18に示す配合の可塑状注入材を地盤中に圧入すると、割裂注入となって地盤対象外に不均等に逸脱し、塊状の固結が困難であることが判った。
【0201】
【表17】
【0202】
【表18】
【0203】
本発明における図1に示す試験施工による研究の結果、以下のように注入設計することにより地盤強化効果をうることが判った。
【0204】
図1において注入間隔は0.5〜3.0mとする。改良率は5〜40%とする。ここで改良率とは1注入孔の分担改良面積1m2当りに換算して固結塊の断面積に相当し、改良率5〜40%とは0.05〜0.4m2を意味する。又、この改良率は改良対象地盤のN値と改良目標N値から1孔当りの受持面積のうちの間隙の減少量が算出され、その減少量がゲル化物に置き換えられる面積に対応することから算出される。以下、表17に本発明における地盤強化として有効な設計例を示す。これは実施例2で砂地盤にて行った実験例に基づくものであり、注入配置は図1(ロ)に示す正方形配置、注入間隔は1m、2m、また改良率は5%、10%、15%、20%である。
【0205】
【表19】
【0206】
このように算出された注入量が所定深度におさまるように毎分注入速度(l/min)と注入圧力を設定していくことが必要である。このためには毎分吐出量5〜50 l/min、注入圧力0.5〜10MPで注入管理しながら注入するのが望ましいことが判った。
【0207】
この際、地盤隆起は20cm以内、好ましくは10cm以内におさめれば数日後には地盤中のゲルが脱水によって地盤隆起が5〜10cm程度におさまることが判った。
【0208】
又、注入深度がGL3.0m以浅になると地盤がやや隆起しやすくなり、GL1.5m以浅になると10cm以上に隆起することが判った。従って、3.0m以浅、或は1.5m以浅において地盤隆起しにくい対応、即ち請求項52,53,55,56,57の対応をとることが有効であることが判った。また、地盤改良効果は上記注入孔間隔の範囲で複数本の削孔から圧入することによって互いに拘束しあってその間の地盤が圧縮されてはじめて可能であることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】可塑性グラウト圧入による地盤強化モデル図であり、(イ)は改良対象領域に対する可塑性グラウトによる固結柱取り合い断面図であり、(ロ)、(ハ)は平面図および可塑性注入材の注入配置図である。(ロ)は正方形配置図であり、(ハ)は三角形配置図である。
【図2】(a)は所定エリアの地盤に相隣って形成した削孔を介しての可塑性ゲルなグラウトのロッド注入管による注入の態様の断面図であり、(b)は所定エリアの地盤に相隣って形成した削孔を介しての可塑性グラウトゲルなグラウトの注入のインターバル方式による態様の断面図であり、(c)はパッカー方式による注入施工の断面図であり(カ)、(ヨ)、(タ)パッカー袋の側方経時的膨張側面図である。
【図3】地盤の施工中途における、変位計測態様の模式図である。
【図4】(a)は構造物直下の改良すべき地盤処理の基本模式図であり、(b)は構造物下方の地盤注入例の縦断面図である。
【図5】(a)はケーシング引き抜きによる可塑性グラウトの圧入の模式図であり、(b)は可塑性グラウトによる杭基礎の地盤強化の断面図であり、(c)は土留め壁における可塑性グラウトの圧入によるアンカー形成の断面図である。
【図6】本発明における材料の混合およびグラウトの注入までの注入管理方法の一具体例を示すフローシートである。
【図7】集中管理装置の操作、および集中管理システムが管理する配合と注入のフローチャートである。
【図8】集中管理装置を用い、送液系統10本についての積算流量と最大圧、および流量と圧力を注入監視盤に表した画面表示の例である。
【図9】注入領域の4つの注入ブロック区分No.1〜4を注入監視盤に表した画面表示の例である。
【図10】地盤のステージNo.1〜3における流量と注入圧力を注入監視盤に表したグラフ(チャート)である。
【図11】注入量、または注入圧の三次元的表示例である。
【図12】硫酸バンドの有無によるブリージング率の違いを表したグラフである。
【図13】硫酸バンドの有無による初期粘性の違いを表したグラフである。
【図14】硫酸バンドの有無による強度発現の違いを表したグラフである。
【符号の説明】
【0210】
3 地盤
4 削孔
5 バルブ
6 コントローラー
7 コンピューター
8 ケーシング
9 注入管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に削孔した注入孔から地盤中に注入し、時間とともに、或は脱水によって可塑状ゲルを経て固化する地盤注入材であって、次の成分(1)〜(3)を有効成分として含むことを特徴とする可塑性地盤注入材。
・ フライアッシュ(F材)
・ カルシウム系粉状硬化発現材(C材)
・ 水(W材)
【請求項2】
請求項1において、可塑性地盤注入材が地盤への注入前から可塑状ゲルを呈する可塑性地盤注入材。
【請求項3】
請求項1において、可塑性地盤注入材は、地盤中に注入後、時間と共に或は加圧脱水によって可塑状ゲルを経て固化することを特徴とする可塑性地盤注入材。
【請求項4】
請求項1において、カルシウム系粉状硬化発現材(C材)がセメント、石灰、石膏およびスラグの群から選択される一種または複数種である請求項1に記載の可塑性注入材。
【請求項5】
請求項1において、硬化発現材比が50重量パーセントよりも小さい可塑性地盤注入材。ただし、硬化発現材比=C/(F+C)×100(%)であり、F、Cはいずれも重量を示す。
【請求項6】
請求項1において、硬化発現材比1〜40重量パーセント、水紛体比20〜150重量パーセントの可塑性地盤注入材。ただし、水紛体比=W/(F+C)×100(%)であって、F、C、Wはいずれも重量を示す。
【請求項7】
請求項1において、可塑性地盤注入材は水ガラス又はアルミニウム塩を含有する可塑性地盤注入材。
【請求項8】
請求項3において、可塑性地盤注入材は水ガラス又はアルミニウム塩からなるゲル化促進剤を或はゲル化遅延剤を含有する注入材。
【請求項9】
請求項7において、アルミニウム塩を含む場合、硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント(Al2O3換算で0.01〜0.35重量パーセント)である請求項7に記載の可塑性注入材。ただし、硬化発現材比=C/(F+C)×100(%)、水紛体比=W/(F+C)×100(%)、アルミニウム比=アルミニウム塩/(F+C)×100(%)であって、ここでアルミニウム塩は重量を表わす。
【請求項10】
請求項7において、水ガラスを含む可塑性地盤注入材はシリカ濃度(SiO2換算)が0.2〜7.0重量パーセントである可塑性注入材。
【請求項11】
請求項7において、可塑性地盤注入材はF材とC材を含むA液と水ガラス又はアルミニウム塩を含むB液を合液してなる可塑性地盤注入材。
【請求項12】
請求項3において、水紛体比が地盤中で20重量パーセント以下で非可塑状ゲルを呈して硬化する請求項1に記載の可塑性地盤注入材。
【請求項13】
請求項11において、水ガラスまたはアルミニウム塩はA液にも含まれる注入材。
【請求項14】
請求項1において、該可塑性地盤注入材は硬化発現材比が1〜40重量パーセント、水紛体比が20〜150重量パーセント、フローが13cm以上30cm未満、スランプが26cm以下である可塑性地盤注入材。
【請求項15】
請求項7において、該可塑性地盤注入材は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント、又は水ガラスのシリカ濃度が0.2〜7.0重量%、フローが13cm以上30cm未満、スランプが26cm以下である可塑性地盤注入材。
【請求項16】
請求項11において、A液は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、フローが15cm以上、スランプが15cm以上である可塑性地盤注入材。
【請求項17】
請求項11において、該可塑性注入材は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント、又は水ガラスのシリカ濃度が0.2〜7.0重量%、フローが30cm未満、スランプが26cm以下である可塑性注入材。
【請求項18】
請求項1において、可塑性注入材が起泡剤や発泡剤を含むか、焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれかを或はこれらの複数を含む可塑性注入材。
【請求項19】
請求項1において、該可塑性注入材が焼却灰、粘土、現場発生土および珪砂のいずれかを含む場合は硬化発現材比が1重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセントである可塑性注入材。ただし、ここで水紛体比=W/(F+C+B)×100(%)であって、ここでBは焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれか或はこれらの複数の重量をいう。
【請求項20】
請求項1において、該可塑性注入材は攪拌後送液補助装置でポンプに送液して地盤中にポンプで注入する事を特徴とする請求項1の可塑性注入材。
【請求項21】
請求項1において、可塑性地盤注入材は可塑性ゲルを攪拌することにより、あるいはポンプで吸入することにより流動性を与えて地盤中に注入する請求項1に記載の可塑性地盤注入材。
【請求項22】
地盤中に設けた複数の注入孔を介して、可塑性地盤注入材を圧入して、可塑性注入材のゲル化物によって土粒子を周辺に押しやり地盤中に該可塑性注入材のゲル化物からなる複数の塊状固結体を形成すると共に、該複数の注入孔間の地盤の密度を増加して地盤強化する地盤強化方法であって、該可塑性地盤注入材が(1)〜(3)を有効成分として含むことを特徴とする地盤強化方法。
・ フライアッシュ(F材)
・ カルシウム系粉状硬化発現材(C材)
・ 水(W材)
【請求項23】
請求項22の地盤強化方法において、該可塑性地盤注入材は地盤中に注入する前或は地盤中で時間と共に或は加圧脱水によって可塑状ゲルを経て非可塑性ゲルとなり固化する地盤強化方法。
【請求項24】
請求項22において、カルシウム系粉状硬化発現材(C材)がセメント、石灰、石膏およびスラグの群から選択される一種または複数種である請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項25】
請求項22において、硬化発現材比が50重量パーセントよりも小さい請求項22に記載の地盤強化方法。ただし、硬化発現材比=C/(F+C)×100(%)である。
【請求項26】
請求項25において、可塑性注入材の硬化発現材比が1〜40重量パーセント、水紛体比が20〜150重量パーセントである請求項25に記載の地盤強化方法。ただし、水紛体比=W/(F+C)×100(%)であって、F、C、Wはそれぞれ重量を表わす。
【請求項27】
請求項22において、可塑性地盤注入材は水ガラスおよび/またはアルミニウム塩を含んでなる請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項28】
請求項22において、可塑性地盤注入材は水ガラス又はアルミニウム塩からなるゲル化促進剤或はゲル化遅延剤を含有する地盤強化方法。
【請求項29】
請求項27において、水ガラスを含む可塑性地盤注入材はシリカ濃度(SiO2換算)が0.2〜7.0重量パーセントである地盤強化方法。
【請求項30】
請求項27において、可塑性地盤注入材は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント(Al2O3換算で0.01〜0.35重量パーセント)又は水ガラスのシリカ濃度が0.2〜7.0重量%である請求項27に記載する地盤強化方法。ただし、硬化発現材比=C/F+C×100(%)、水紛体比=W/F+C×100(%)、アルミニウム比=アルミニウム塩/F+C×100(%)であって、ここでアルミニウム塩は重量を表す。
【請求項31】
請求項27において、可塑性地盤注入材はF材とC材からなるA液と水ガラス又はアルミニウム塩からなるB液を合流せしめてなる地盤強化方法。
【請求項32】
請求項29において、水ガラス又はアルミニウム塩はA液にも含まれる地盤強化方法。
【請求項33】
請求項22において、水紛体比が地盤中で20重量%以下で非可塑性ゲルを呈して硬化する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項34】
請求項22において、可塑性地盤注入材は硬化発現材比が1〜40重量パーセント、水紛体比が20〜150重量パーセント、フローが13cm以上30cm未満、スランプが26cm以下である地盤強化方法。
【請求項35】
請求項27において、該可塑性地盤注入材は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント、又は、水ガラスのシリカ濃度が0.2〜7.0重量%、フローが30cm未満、スランプが26cm以下である地盤強化方法。
【請求項36】
請求項30において、該可塑性注入材はA液の硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量%未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、フローが15cm以上、スランプが15cm以上である可塑性地盤注入材。
【請求項37】
請求項32において、A液は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント、又は水ガラスのシリカ濃度が0.2〜7.0重量%、フローが13cm以上30cm未満、スランプが15cm以上26cm以下である可塑性地盤注入材。
【請求項38】
請求項22において、可塑性注入材が焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれかを含有するか或はこれらのいずれかをも含む地盤強化方法。
【請求項39】
請求項38において、該可塑性注入材が焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれかを含む場合は硬化発現材比が1重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセントである地盤強化方法。ただし、水紛体比=W/F+C+B×100(%)であって、ここでBは焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれか或はこれらの複数をいう。
【請求項40】
請求項22において、該可塑性注入材は攪拌後送液補助装置でポンプに送液して地盤中にポンプで注入する事を特徴とする請求項22の地盤強化方法。
【請求項41】
請求項22において、該可塑性注入材は可塑状ゲルを攪拌する事により或はポンプに吸入する事により流動性を与えて地盤中に注入する事を特徴とする請求項22の地盤強化方法。
【請求項42】
請求項22において、改良すべき地盤中に注入管を設置し、この注入管を上方にまたは下方に移動して注入ステージを移行させながら該注入管を通して可塑性グラウトを圧入し、地盤中に可塑性ゲルからなる固結体を形成する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項43】
請求項42において、注入管の引き上げステップを、非可塑性ゲルになる前の可塑状ゲルの範囲内に吐出口が位置するようにステップアップしながら可塑状ゲルの塊状体を拡大せしめて注入する請求項42の地盤強化工法。
【請求項44】
請求項22において、注入孔間隔を0.5m〜3mとし、注入孔間の地盤密度を高めて地盤を強化する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項45】
請求項22において、改良対象地盤のN値と改良目標N値から改良率を設定して注入量と注入圧を管理して可塑性注入材を注入する地盤強化方法。
【請求項46】
請求項22、45において、注入液の吐出量は5〜50 l/min、注入圧力は0.5〜10MPの範囲内に注入量と注入圧力を管理して注入する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項47】
請求項22において、砂や砂等の透水性の大きな土層と粘性土層からの互層からなる地盤を改良するに当って、透水性の大きな土層は浸透注入型の注入材で改良し、粘性土層は可塑性グラウトの圧入によって改良する地盤強化方法。
【請求項48】
請求項22において、可塑性注入材の注入に当り、流動性可塑性ゲル初期注入圧力を低くして注入を開始し、先行注入材の脱水を図って可塑性ゲルの生成を図りながら、注入圧力を高め、これにより可塑性ゲルによる土粒子間浸透と地盤の割裂による逸脱を防ぎながら土粒子を周辺に押し広げて地盤の密度を増大させながら地盤を強化する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項49】
請求項22において、可塑性注入材の注入に当り、複数の注入ポイントから同時注入方式、連続注入方式、インターバル注入方式、間欠注入方式またはこれらの組み合わせ方式により注入する請求項22に記載の注入強化方法。
【請求項50】
請求項22において、地盤中にドレーン材を設置して地盤中の脱水を促進する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項51】
請求項22において、次の(a)、(b)および(c)のいずれかに示す注入管を用いて可塑性注入材を地盤中に注入する請求項22に記載の地盤強化方法。
・ 先端に吐出口を有する注入管。
・ 軸方向に複数の吐出口を有する注入管。
・ 少なくとも一つの袋体パッカを備えた注入管。
【請求項52】
請求項22において、前記注入管は地表面に近い領域、または吐出口よりも上部の領域に袋体を設け、この袋体に固結材を圧入することにより、地盤中に注入された可塑性注入材の地表面方向への移行を抑制し、地表面の隆起を低減し、あるいは地表面に近い領域の地盤を圧縮する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項53】
請求項22において、改良すべき地盤中に設けた複数の注入孔は地表面に近い領域においてより密に設ける事により地表面付近の地盤の圧縮の均等化と地表面の隆起を低減する地盤強化方法。
【請求項54】
請求項22において、地表面に近い領域においてまず注入して地表面付近の地盤を圧縮強化してから下方の領域に注入する事により地盤の隆起と地表面への注入液の逸出を低減する請求項22に記載の地盤改良工法。
【請求項55】
請求項54において、地表面に近い領域においては上部から下方に注入ステップを移行して可塑性注入材を圧入し、地表面付近の地盤を圧縮してから地表面に遠い領域の下部から上方に注入ステップを移行して可塑性注入材を圧入し地盤を圧縮する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項56】
請求項22において、注入した注入孔に隣接する注入孔よりも遠くの注入孔に移行して注入するように注入順序を設定して注入することにより地盤の隆起を低減する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項57】
請求項22において、地盤中に注入管又は注入管と共に引張材を設定し、可塑性注入材を注入し該注入管又は引張材のまわりに可塑性ゲルによる固結体を形成して、これによって地盤を圧縮して密度を増加すると同時に注入管又は引張材の引張力を地盤に付与した地盤強化方法。
【請求項58】
請求項22において、吐出口を有する注入管体を地盤中に設置したのちパッカを有する内管を該注入管内に挿入して内管を通してパッカを作動して該可塑性注入材を該注入管吐出口より圧入する事を特徴とする地盤強化方法。
【請求項59】
請求項22において、注入管体を地盤中に設置したのち、該管体内に鉄筋を挿入したのち該注入管内先端部から該可塑性注入材を圧入しながら該注入管体を引き上げて注入ステップを上方に移向し、それによって地盤を圧縮すると共に鉄筋の引張強度を地盤に付与する地盤強化方法。
【請求項60】
請求項22において、建造物直下の地盤中に曲線状又は水平に削孔して設置した注入管を通して地盤中に可塑性注入材を圧入して地盤強化する地盤強化工法。
【請求項61】
請求項22の地盤強化方法において、注入材の配合系統に流動特性計測装置、また注入材送液系統に流量圧力制御装置および流量計、圧力計を設け、或は更に地盤変位計を設け、これらから検出された注入材の流動特性、ならびに注入圧力および/または流量のデータ信号或は更に地盤変位量のデータを注入監視盤を備えた集中管理装置に送信し、これらデータを注入監視盤に画面表示することにより注入材の配合から注入までの状況の一括監視を行って、送液系統におけるそれぞれの注入圧力および/または流量を所定の範囲に維持しながら注入するとともに、上記データの情報に基づき、注入の完了、中止、継続注入ポイントの移動あるいは再注入を行うことを特徴とする請求項22の地盤強化方法。
【請求項62】
請求項22の地盤強化方法であって、前記注入監視盤に面的ないしは三次元的画面表示を行うことにより、注入圧力および/または流量又は注入量の少なくとも一つの設定範囲を満たしていない部分に再注入する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項63】
請求項22の地盤強化方法の注入管理方法であって、注入材の配合を管理する流動特性計測装置、注入材の送液を管理する流量圧力制御装置及び圧力計、流量計を有し、これらから検出された注入材の流動特性、ならびに流量及び/また圧力データを注入監視版を備えた集中管理装置に送信し、注入材の配合、流動特性、注入孔、注入ステージ、注入状況を前記注入監視版の画面に表示し、一括監視を行って注入管理することを特徴とする注入管理方法。
【請求項64】
請求項63において、前記集中管理装置に注入圧力および/また流量および注入量の設定値並びにこれらの許容範囲を予め設定しておき、上記設定範囲を維持するように注入管理する請求項63の注入管理方法。
【請求項65】
請求項63において、該注入管理方法は予め設定した流動特性を維持するように注入材の配合管理を含み該流動特性は注入材のフロー、スランプ、粘度、ゲルタイム或いはせん断強度等の流動および変形を示す物性値の少なくともいずれかである請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項66】
請求項63において、集中管理装置に所望の材料の配合量を予め設定しておくことで、計量器を備えた水タンク、およびホッパより材料がミキサー内へ定量供給される請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項67】
請求項63において、添加材をミキサー或は注入材の送液流路に所定量を添加して、所定の流動特性を維持するようにした請求項63の注入管理方法。
【請求項68】
請求項63において、前記集中管理装置に所望の範囲の注入圧力、注入速度、注入量、流動特性、地盤変位量を予め設定しておき、これらの少なくともいずれかが上記設定範囲に達したときに、注入の停止又は完了又は他の注入ポイントへと移行する請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項69】
請求項63において、集中管理装置に所望の範囲の流動特性を予め設定しておき、注入が上記設定範囲を越えたときに、設定範囲に達するよう材料の選択と再配合をする請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項70】
請求項63において、該管理方法は更に地盤変位計測装置を有し、注入の進行に伴う地盤変位を計測し集中管理装置に送信し、他のデータと共に一括管理する請求項63の注入管理方法。
【請求項71】
請求項63において、集中管理装置に所望の範囲の注入圧力注入量地盤隆起のいずれかを予め設定しておき、各注入ステージにおける注入が上記所定の少なくともいずれかれかの範囲におさまるように所定注入ステージにおける注入或は他の注入孔又は注入ステージへの移向を行うようにした請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項72】
請求項63において、注入領域の地盤ないしは構造物にはレベルセンサーが設けられ、このレベルセンサーからの情報を集中管理装置に送信し、地盤ないしは構造物の変位状況ならびに注入量と注入位置との変位の関係、地盤中における固結状況を把握する請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項73】
請求項63において、注入地盤強化範囲における深度方向のN値と目標N値から所定深度における目標注入量を選定し、かつ所定深度における注入圧力の限界値を想定し、上記目標注入量と限界注入圧の少なくともいずれかを満たすように注入管理を行う請求項63の注入管理方法。
【請求項74】
請求項73において、更に限界地盤隆起量又は/並びに限界注入圧力を想定し、該限界範囲を満たすように注入管理を行う注入管理方法。
【請求項75】
請求項63において、注入監視盤に時データ、場所データ、および注入圧力および/または流量、地盤変位置にかかわる注入データを画面表示して注入管理する請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項76】
請求項63において、集中管理装置に注入領域または注入領域付近の地盤変位ないしは構造物の変位について予め範囲を設定しておき、注入する際に注入圧力および/または流量を調整し、もしくは注入の停止、完了、または注入ステージを移行することにより前記設定範囲を維持するようにした請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項77】
請求項63において、各注入ステージにおける適切な圧力および/または流量を測定し、得られた値の適切な範囲を注入監視盤を備えた集中管理装置に設定し、この設定範囲に基づいて所定の注入領域における各注入ステージでの注入を行うことを特徴とする注入管理方法であって、各注入ステージにおける適切な圧力および/または流量の範囲は注入試験によって得られた設定範囲に定められるか更に実際の注入による測定値を加味して補正することにより設定される請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項78】
請求項63において、注入監視盤には注入領域における複数の注入ポイントから注入圧力および/又は流量並びに注入量に関する情報或は更に地盤の隆起量に関する情報を平面的に或は三次元表示する請求項63の注入管理方法に記載の注入管理方法。
【請求項79】
請求項63、73、77、78において、実際に注入された注入量に基づいて、地盤の改良度を注入の進行にともないリアルタイムで把握し、或は更に目的地盤改良度が得られるように注入と補正をリアルタイムで行う注入管理方法。
【請求項80】
地盤中に設けた複数の注入孔を介して、可塑性地盤注入材を圧入して、可塑性注入材のゲル化物によって土粒子を周辺に押しやり地盤中に該可塑性注入材のゲル化物からなる複数の塊状固結体を形成すると共に、該複数の注入孔間の地盤の密度を増加して地盤強化する注入管理装置であって、この管理装置は次の注入材
・ フライアッシュ(F材)
・ カルシウム系粉状硬化発現材(C材)
・ 水(W材)
・ ゲル化促進材
の配合装置と、集中管理装置と、この装置に連結された、それぞれ注入監視盤、流動特性計測装置、流量圧力制御装置、流量計および圧力計とからなる管理装置であって、該流量計並びに圧力計から検出された注入圧力および、または流量のデータ信号を前記集中管理装置に入力し、さらに前記注入監視盤に集中管理装置に入力された前記データを画面表示して注入状況を一括監視し、注入を管理することを特徴とする注入管理装置。
【請求項1】
地盤中に削孔した注入孔から地盤中に注入し、時間とともに、或は脱水によって可塑状ゲルを経て固化する地盤注入材であって、次の成分(1)〜(3)を有効成分として含むことを特徴とする可塑性地盤注入材。
・ フライアッシュ(F材)
・ カルシウム系粉状硬化発現材(C材)
・ 水(W材)
【請求項2】
請求項1において、可塑性地盤注入材が地盤への注入前から可塑状ゲルを呈する可塑性地盤注入材。
【請求項3】
請求項1において、可塑性地盤注入材は、地盤中に注入後、時間と共に或は加圧脱水によって可塑状ゲルを経て固化することを特徴とする可塑性地盤注入材。
【請求項4】
請求項1において、カルシウム系粉状硬化発現材(C材)がセメント、石灰、石膏およびスラグの群から選択される一種または複数種である請求項1に記載の可塑性注入材。
【請求項5】
請求項1において、硬化発現材比が50重量パーセントよりも小さい可塑性地盤注入材。ただし、硬化発現材比=C/(F+C)×100(%)であり、F、Cはいずれも重量を示す。
【請求項6】
請求項1において、硬化発現材比1〜40重量パーセント、水紛体比20〜150重量パーセントの可塑性地盤注入材。ただし、水紛体比=W/(F+C)×100(%)であって、F、C、Wはいずれも重量を示す。
【請求項7】
請求項1において、可塑性地盤注入材は水ガラス又はアルミニウム塩を含有する可塑性地盤注入材。
【請求項8】
請求項3において、可塑性地盤注入材は水ガラス又はアルミニウム塩からなるゲル化促進剤を或はゲル化遅延剤を含有する注入材。
【請求項9】
請求項7において、アルミニウム塩を含む場合、硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント(Al2O3換算で0.01〜0.35重量パーセント)である請求項7に記載の可塑性注入材。ただし、硬化発現材比=C/(F+C)×100(%)、水紛体比=W/(F+C)×100(%)、アルミニウム比=アルミニウム塩/(F+C)×100(%)であって、ここでアルミニウム塩は重量を表わす。
【請求項10】
請求項7において、水ガラスを含む可塑性地盤注入材はシリカ濃度(SiO2換算)が0.2〜7.0重量パーセントである可塑性注入材。
【請求項11】
請求項7において、可塑性地盤注入材はF材とC材を含むA液と水ガラス又はアルミニウム塩を含むB液を合液してなる可塑性地盤注入材。
【請求項12】
請求項3において、水紛体比が地盤中で20重量パーセント以下で非可塑状ゲルを呈して硬化する請求項1に記載の可塑性地盤注入材。
【請求項13】
請求項11において、水ガラスまたはアルミニウム塩はA液にも含まれる注入材。
【請求項14】
請求項1において、該可塑性地盤注入材は硬化発現材比が1〜40重量パーセント、水紛体比が20〜150重量パーセント、フローが13cm以上30cm未満、スランプが26cm以下である可塑性地盤注入材。
【請求項15】
請求項7において、該可塑性地盤注入材は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント、又は水ガラスのシリカ濃度が0.2〜7.0重量%、フローが13cm以上30cm未満、スランプが26cm以下である可塑性地盤注入材。
【請求項16】
請求項11において、A液は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、フローが15cm以上、スランプが15cm以上である可塑性地盤注入材。
【請求項17】
請求項11において、該可塑性注入材は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント、又は水ガラスのシリカ濃度が0.2〜7.0重量%、フローが30cm未満、スランプが26cm以下である可塑性注入材。
【請求項18】
請求項1において、可塑性注入材が起泡剤や発泡剤を含むか、焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれかを或はこれらの複数を含む可塑性注入材。
【請求項19】
請求項1において、該可塑性注入材が焼却灰、粘土、現場発生土および珪砂のいずれかを含む場合は硬化発現材比が1重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセントである可塑性注入材。ただし、ここで水紛体比=W/(F+C+B)×100(%)であって、ここでBは焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれか或はこれらの複数の重量をいう。
【請求項20】
請求項1において、該可塑性注入材は攪拌後送液補助装置でポンプに送液して地盤中にポンプで注入する事を特徴とする請求項1の可塑性注入材。
【請求項21】
請求項1において、可塑性地盤注入材は可塑性ゲルを攪拌することにより、あるいはポンプで吸入することにより流動性を与えて地盤中に注入する請求項1に記載の可塑性地盤注入材。
【請求項22】
地盤中に設けた複数の注入孔を介して、可塑性地盤注入材を圧入して、可塑性注入材のゲル化物によって土粒子を周辺に押しやり地盤中に該可塑性注入材のゲル化物からなる複数の塊状固結体を形成すると共に、該複数の注入孔間の地盤の密度を増加して地盤強化する地盤強化方法であって、該可塑性地盤注入材が(1)〜(3)を有効成分として含むことを特徴とする地盤強化方法。
・ フライアッシュ(F材)
・ カルシウム系粉状硬化発現材(C材)
・ 水(W材)
【請求項23】
請求項22の地盤強化方法において、該可塑性地盤注入材は地盤中に注入する前或は地盤中で時間と共に或は加圧脱水によって可塑状ゲルを経て非可塑性ゲルとなり固化する地盤強化方法。
【請求項24】
請求項22において、カルシウム系粉状硬化発現材(C材)がセメント、石灰、石膏およびスラグの群から選択される一種または複数種である請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項25】
請求項22において、硬化発現材比が50重量パーセントよりも小さい請求項22に記載の地盤強化方法。ただし、硬化発現材比=C/(F+C)×100(%)である。
【請求項26】
請求項25において、可塑性注入材の硬化発現材比が1〜40重量パーセント、水紛体比が20〜150重量パーセントである請求項25に記載の地盤強化方法。ただし、水紛体比=W/(F+C)×100(%)であって、F、C、Wはそれぞれ重量を表わす。
【請求項27】
請求項22において、可塑性地盤注入材は水ガラスおよび/またはアルミニウム塩を含んでなる請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項28】
請求項22において、可塑性地盤注入材は水ガラス又はアルミニウム塩からなるゲル化促進剤或はゲル化遅延剤を含有する地盤強化方法。
【請求項29】
請求項27において、水ガラスを含む可塑性地盤注入材はシリカ濃度(SiO2換算)が0.2〜7.0重量パーセントである地盤強化方法。
【請求項30】
請求項27において、可塑性地盤注入材は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント(Al2O3換算で0.01〜0.35重量パーセント)又は水ガラスのシリカ濃度が0.2〜7.0重量%である請求項27に記載する地盤強化方法。ただし、硬化発現材比=C/F+C×100(%)、水紛体比=W/F+C×100(%)、アルミニウム比=アルミニウム塩/F+C×100(%)であって、ここでアルミニウム塩は重量を表す。
【請求項31】
請求項27において、可塑性地盤注入材はF材とC材からなるA液と水ガラス又はアルミニウム塩からなるB液を合流せしめてなる地盤強化方法。
【請求項32】
請求項29において、水ガラス又はアルミニウム塩はA液にも含まれる地盤強化方法。
【請求項33】
請求項22において、水紛体比が地盤中で20重量%以下で非可塑性ゲルを呈して硬化する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項34】
請求項22において、可塑性地盤注入材は硬化発現材比が1〜40重量パーセント、水紛体比が20〜150重量パーセント、フローが13cm以上30cm未満、スランプが26cm以下である地盤強化方法。
【請求項35】
請求項27において、該可塑性地盤注入材は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント、又は、水ガラスのシリカ濃度が0.2〜7.0重量%、フローが30cm未満、スランプが26cm以下である地盤強化方法。
【請求項36】
請求項30において、該可塑性注入材はA液の硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量%未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、フローが15cm以上、スランプが15cm以上である可塑性地盤注入材。
【請求項37】
請求項32において、A液は硬化発現材比が2重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセント、アルミニウム比が0.1〜2.0重量パーセント、又は水ガラスのシリカ濃度が0.2〜7.0重量%、フローが13cm以上30cm未満、スランプが15cm以上26cm以下である可塑性地盤注入材。
【請求項38】
請求項22において、可塑性注入材が焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれかを含有するか或はこれらのいずれかをも含む地盤強化方法。
【請求項39】
請求項38において、該可塑性注入材が焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれかを含む場合は硬化発現材比が1重量パーセント以上50重量パーセント未満、水紛体比が20〜150重量パーセントである地盤強化方法。ただし、水紛体比=W/F+C+B×100(%)であって、ここでBは焼却灰、粘土、現場発生土、および珪砂のいずれか或はこれらの複数をいう。
【請求項40】
請求項22において、該可塑性注入材は攪拌後送液補助装置でポンプに送液して地盤中にポンプで注入する事を特徴とする請求項22の地盤強化方法。
【請求項41】
請求項22において、該可塑性注入材は可塑状ゲルを攪拌する事により或はポンプに吸入する事により流動性を与えて地盤中に注入する事を特徴とする請求項22の地盤強化方法。
【請求項42】
請求項22において、改良すべき地盤中に注入管を設置し、この注入管を上方にまたは下方に移動して注入ステージを移行させながら該注入管を通して可塑性グラウトを圧入し、地盤中に可塑性ゲルからなる固結体を形成する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項43】
請求項42において、注入管の引き上げステップを、非可塑性ゲルになる前の可塑状ゲルの範囲内に吐出口が位置するようにステップアップしながら可塑状ゲルの塊状体を拡大せしめて注入する請求項42の地盤強化工法。
【請求項44】
請求項22において、注入孔間隔を0.5m〜3mとし、注入孔間の地盤密度を高めて地盤を強化する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項45】
請求項22において、改良対象地盤のN値と改良目標N値から改良率を設定して注入量と注入圧を管理して可塑性注入材を注入する地盤強化方法。
【請求項46】
請求項22、45において、注入液の吐出量は5〜50 l/min、注入圧力は0.5〜10MPの範囲内に注入量と注入圧力を管理して注入する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項47】
請求項22において、砂や砂等の透水性の大きな土層と粘性土層からの互層からなる地盤を改良するに当って、透水性の大きな土層は浸透注入型の注入材で改良し、粘性土層は可塑性グラウトの圧入によって改良する地盤強化方法。
【請求項48】
請求項22において、可塑性注入材の注入に当り、流動性可塑性ゲル初期注入圧力を低くして注入を開始し、先行注入材の脱水を図って可塑性ゲルの生成を図りながら、注入圧力を高め、これにより可塑性ゲルによる土粒子間浸透と地盤の割裂による逸脱を防ぎながら土粒子を周辺に押し広げて地盤の密度を増大させながら地盤を強化する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項49】
請求項22において、可塑性注入材の注入に当り、複数の注入ポイントから同時注入方式、連続注入方式、インターバル注入方式、間欠注入方式またはこれらの組み合わせ方式により注入する請求項22に記載の注入強化方法。
【請求項50】
請求項22において、地盤中にドレーン材を設置して地盤中の脱水を促進する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項51】
請求項22において、次の(a)、(b)および(c)のいずれかに示す注入管を用いて可塑性注入材を地盤中に注入する請求項22に記載の地盤強化方法。
・ 先端に吐出口を有する注入管。
・ 軸方向に複数の吐出口を有する注入管。
・ 少なくとも一つの袋体パッカを備えた注入管。
【請求項52】
請求項22において、前記注入管は地表面に近い領域、または吐出口よりも上部の領域に袋体を設け、この袋体に固結材を圧入することにより、地盤中に注入された可塑性注入材の地表面方向への移行を抑制し、地表面の隆起を低減し、あるいは地表面に近い領域の地盤を圧縮する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項53】
請求項22において、改良すべき地盤中に設けた複数の注入孔は地表面に近い領域においてより密に設ける事により地表面付近の地盤の圧縮の均等化と地表面の隆起を低減する地盤強化方法。
【請求項54】
請求項22において、地表面に近い領域においてまず注入して地表面付近の地盤を圧縮強化してから下方の領域に注入する事により地盤の隆起と地表面への注入液の逸出を低減する請求項22に記載の地盤改良工法。
【請求項55】
請求項54において、地表面に近い領域においては上部から下方に注入ステップを移行して可塑性注入材を圧入し、地表面付近の地盤を圧縮してから地表面に遠い領域の下部から上方に注入ステップを移行して可塑性注入材を圧入し地盤を圧縮する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項56】
請求項22において、注入した注入孔に隣接する注入孔よりも遠くの注入孔に移行して注入するように注入順序を設定して注入することにより地盤の隆起を低減する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項57】
請求項22において、地盤中に注入管又は注入管と共に引張材を設定し、可塑性注入材を注入し該注入管又は引張材のまわりに可塑性ゲルによる固結体を形成して、これによって地盤を圧縮して密度を増加すると同時に注入管又は引張材の引張力を地盤に付与した地盤強化方法。
【請求項58】
請求項22において、吐出口を有する注入管体を地盤中に設置したのちパッカを有する内管を該注入管内に挿入して内管を通してパッカを作動して該可塑性注入材を該注入管吐出口より圧入する事を特徴とする地盤強化方法。
【請求項59】
請求項22において、注入管体を地盤中に設置したのち、該管体内に鉄筋を挿入したのち該注入管内先端部から該可塑性注入材を圧入しながら該注入管体を引き上げて注入ステップを上方に移向し、それによって地盤を圧縮すると共に鉄筋の引張強度を地盤に付与する地盤強化方法。
【請求項60】
請求項22において、建造物直下の地盤中に曲線状又は水平に削孔して設置した注入管を通して地盤中に可塑性注入材を圧入して地盤強化する地盤強化工法。
【請求項61】
請求項22の地盤強化方法において、注入材の配合系統に流動特性計測装置、また注入材送液系統に流量圧力制御装置および流量計、圧力計を設け、或は更に地盤変位計を設け、これらから検出された注入材の流動特性、ならびに注入圧力および/または流量のデータ信号或は更に地盤変位量のデータを注入監視盤を備えた集中管理装置に送信し、これらデータを注入監視盤に画面表示することにより注入材の配合から注入までの状況の一括監視を行って、送液系統におけるそれぞれの注入圧力および/または流量を所定の範囲に維持しながら注入するとともに、上記データの情報に基づき、注入の完了、中止、継続注入ポイントの移動あるいは再注入を行うことを特徴とする請求項22の地盤強化方法。
【請求項62】
請求項22の地盤強化方法であって、前記注入監視盤に面的ないしは三次元的画面表示を行うことにより、注入圧力および/または流量又は注入量の少なくとも一つの設定範囲を満たしていない部分に再注入する請求項22に記載の地盤強化方法。
【請求項63】
請求項22の地盤強化方法の注入管理方法であって、注入材の配合を管理する流動特性計測装置、注入材の送液を管理する流量圧力制御装置及び圧力計、流量計を有し、これらから検出された注入材の流動特性、ならびに流量及び/また圧力データを注入監視版を備えた集中管理装置に送信し、注入材の配合、流動特性、注入孔、注入ステージ、注入状況を前記注入監視版の画面に表示し、一括監視を行って注入管理することを特徴とする注入管理方法。
【請求項64】
請求項63において、前記集中管理装置に注入圧力および/また流量および注入量の設定値並びにこれらの許容範囲を予め設定しておき、上記設定範囲を維持するように注入管理する請求項63の注入管理方法。
【請求項65】
請求項63において、該注入管理方法は予め設定した流動特性を維持するように注入材の配合管理を含み該流動特性は注入材のフロー、スランプ、粘度、ゲルタイム或いはせん断強度等の流動および変形を示す物性値の少なくともいずれかである請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項66】
請求項63において、集中管理装置に所望の材料の配合量を予め設定しておくことで、計量器を備えた水タンク、およびホッパより材料がミキサー内へ定量供給される請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項67】
請求項63において、添加材をミキサー或は注入材の送液流路に所定量を添加して、所定の流動特性を維持するようにした請求項63の注入管理方法。
【請求項68】
請求項63において、前記集中管理装置に所望の範囲の注入圧力、注入速度、注入量、流動特性、地盤変位量を予め設定しておき、これらの少なくともいずれかが上記設定範囲に達したときに、注入の停止又は完了又は他の注入ポイントへと移行する請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項69】
請求項63において、集中管理装置に所望の範囲の流動特性を予め設定しておき、注入が上記設定範囲を越えたときに、設定範囲に達するよう材料の選択と再配合をする請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項70】
請求項63において、該管理方法は更に地盤変位計測装置を有し、注入の進行に伴う地盤変位を計測し集中管理装置に送信し、他のデータと共に一括管理する請求項63の注入管理方法。
【請求項71】
請求項63において、集中管理装置に所望の範囲の注入圧力注入量地盤隆起のいずれかを予め設定しておき、各注入ステージにおける注入が上記所定の少なくともいずれかれかの範囲におさまるように所定注入ステージにおける注入或は他の注入孔又は注入ステージへの移向を行うようにした請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項72】
請求項63において、注入領域の地盤ないしは構造物にはレベルセンサーが設けられ、このレベルセンサーからの情報を集中管理装置に送信し、地盤ないしは構造物の変位状況ならびに注入量と注入位置との変位の関係、地盤中における固結状況を把握する請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項73】
請求項63において、注入地盤強化範囲における深度方向のN値と目標N値から所定深度における目標注入量を選定し、かつ所定深度における注入圧力の限界値を想定し、上記目標注入量と限界注入圧の少なくともいずれかを満たすように注入管理を行う請求項63の注入管理方法。
【請求項74】
請求項73において、更に限界地盤隆起量又は/並びに限界注入圧力を想定し、該限界範囲を満たすように注入管理を行う注入管理方法。
【請求項75】
請求項63において、注入監視盤に時データ、場所データ、および注入圧力および/または流量、地盤変位置にかかわる注入データを画面表示して注入管理する請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項76】
請求項63において、集中管理装置に注入領域または注入領域付近の地盤変位ないしは構造物の変位について予め範囲を設定しておき、注入する際に注入圧力および/または流量を調整し、もしくは注入の停止、完了、または注入ステージを移行することにより前記設定範囲を維持するようにした請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項77】
請求項63において、各注入ステージにおける適切な圧力および/または流量を測定し、得られた値の適切な範囲を注入監視盤を備えた集中管理装置に設定し、この設定範囲に基づいて所定の注入領域における各注入ステージでの注入を行うことを特徴とする注入管理方法であって、各注入ステージにおける適切な圧力および/または流量の範囲は注入試験によって得られた設定範囲に定められるか更に実際の注入による測定値を加味して補正することにより設定される請求項63に記載の注入管理方法。
【請求項78】
請求項63において、注入監視盤には注入領域における複数の注入ポイントから注入圧力および/又は流量並びに注入量に関する情報或は更に地盤の隆起量に関する情報を平面的に或は三次元表示する請求項63の注入管理方法に記載の注入管理方法。
【請求項79】
請求項63、73、77、78において、実際に注入された注入量に基づいて、地盤の改良度を注入の進行にともないリアルタイムで把握し、或は更に目的地盤改良度が得られるように注入と補正をリアルタイムで行う注入管理方法。
【請求項80】
地盤中に設けた複数の注入孔を介して、可塑性地盤注入材を圧入して、可塑性注入材のゲル化物によって土粒子を周辺に押しやり地盤中に該可塑性注入材のゲル化物からなる複数の塊状固結体を形成すると共に、該複数の注入孔間の地盤の密度を増加して地盤強化する注入管理装置であって、この管理装置は次の注入材
・ フライアッシュ(F材)
・ カルシウム系粉状硬化発現材(C材)
・ 水(W材)
・ ゲル化促進材
の配合装置と、集中管理装置と、この装置に連結された、それぞれ注入監視盤、流動特性計測装置、流量圧力制御装置、流量計および圧力計とからなる管理装置であって、該流量計並びに圧力計から検出された注入圧力および、または流量のデータ信号を前記集中管理装置に入力し、さらに前記注入監視盤に集中管理装置に入力された前記データを画面表示して注入状況を一括監視し、注入を管理することを特徴とする注入管理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図12】
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【図14】
【公開番号】特開2006−257281(P2006−257281A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77208(P2005−77208)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【Fターム(参考)】
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