説明

含ゲルマニウムきのこの栽培方法

【課題】きのこ中に取り込まれるゲルマニウム量を著しく高めることができる含ゲルマニウムきのこの栽培方法を提供することを目的とする。
【解決手段】水溶性有機ゲルマニウムと、豆乳を発酵して得られる発酵物から抽出された抽出液とを含有する培養基を用いて、きのこを栽培することを特徴とする含ゲルマニウムきのこの栽培方法とする。このようなきのこの栽培方法によれば、ゲルマニウムの含有量の多いきのこ、例えば、ゲルマニウムの含有量の多い霊芝を栽培することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルマニウムを多く含有するきのこを栽培する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
霊芝(マンネンタケ(Ganoderma Lucidum))やアガリクス等のきのこ類には、制癌作用や、血圧降下作用等の様々な効用を有する可能性が示唆されており、健康食品等に広く配合されて用いられている。このような、きのこ類の効用は、一説によれば、きのこ中に取り込まれた微量のゲルマニウムによると考えられている。
【0003】
ところで、きのこの栽培方法としては、原木を利用する原木栽培法と、木屑を利用する菌床栽培法との主に2つの栽培方法が挙げられる。原木栽培法は、伐採した原木を、所定の厚みの丸太となるように、いわゆる玉切りをして、得られた丸太の切断面等に、穴をあけ、その穴にきのこの種菌を接種させたり、丸太の切断面と丸太の切断面とに、きのこの種菌を含む木屑等を挟み込んで、きのこの種菌を接種させることによって、きのこを栽培する方法である。また、菌床栽培法は、広葉樹の木屑等を米糠等と適宜混合し、瓶等の容器に詰めた後、きのこの種菌を接種させることによって、きのこを栽培する方法である。
【0004】
上記のような栽培方法を用いて、きのこ中のゲルマニウムの含有量を増加させる方法として、例えば、以下のような方法が知られている。
【0005】
具体的には、例えば、下記特許文献1には、食用きのこの原木栽培において、ホダ木を穿孔して穴を設け、該穴内にゲルマニウムの粉体を投入し、その上からきのこの種駒を穴内に打ち込み、その上を溶解ロウで密閉してなる、ゲルマニウムを含有したきのこの栽培方法が開示されている。
【特許文献1】特開平5−252829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の栽培方法によっても、きのこ中に取り込まれるゲルマニウム量を著しく高めることはできなかった。
【0007】
本発明は、きのこ中に取り込まれるゲルマニウム量を著しく高めることができる含ゲルマニウムきのこの栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の含ゲルマニウムきのこの栽培方法は、水溶性有機ゲルマニウムと、豆乳を発酵して得られる発酵物から抽出された抽出液とを含有する培養基を用いて、きのこを栽培することを特徴とする含ゲルマニウムきのこの栽培方法とする。
【0009】
このような栽培方法によれば、ゲルマニウムの含有量の多いきのこを栽培することができる。
【0010】
また、前記培養基が、広葉樹の木屑に、所定量の米糠及び小麦かすを配合してなる培地を用いたものである場合には、ゲルマニウム含有量の多いきのこを容易に栽培することができる。
【0011】
また、前記培養基が、榾木用広葉樹原木を培地として用いたものである場合にも、ゲルマニウム含有量の多いきのこを容易に栽培することができる。
【0012】
また、前記水溶性有機ゲルマニウムが、カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシドであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゲルマニウムの含有量の多いきのこを栽培することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の含ゲルマニウムきのこの栽培方法は、水溶性有機ゲルマニウムと、豆乳を発酵して得られる発酵物から抽出された抽出液とを含有する培養基を用いて、きのこを栽培することを特徴とする。
【0015】
前記水溶性有機ゲルマニウムとしては、有機化合物の構造の中にゲルマニウムを含む水溶性のものであれば特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキサイド((GeCHCHCOOH))等が挙げられる。なお、水溶性とは、1Lの水にゲルマニウム量換算で1mg以上の有機ゲルマニウムが溶解する程度の溶解性を意味する。
【0016】
一方、豆乳を発酵して得られる発酵物から抽出された抽出液は、きのこ中に水溶性有機ゲルマニウムが吸収されることを促進させる成分であり、豆乳を発酵した発酵物から液体成分を分離及び精製した液体、及びその凝縮物である。
【0017】
豆乳の発酵に用いられる微生物としては、食品製造に使用されている微生物であれば特に限定なく用いられ、具体的には、例えば、乳酸菌類や、ビール酵母,パン酵母,及び日本酒酵母等の酵母類等が挙げられる。これらの中では、乳酸菌類、又は、乳酸菌類と少なくとも1種の酵母を含有する微生物群により発酵させたものが特に好ましく用いられる。
【0018】
発酵の条件は、特に限定されないが、例えば、豆乳で所定量の乳酸菌類を含有する微生物群を培養して、所定の温度、具体的には20〜40℃程度の温度範囲で、所定の時間、例えば、1年以上熟成発酵させるような、発酵豆乳を得るための公知の条件が選ばれる。このような豆乳の発酵物には、微生物群による豆乳の代謝物及び菌体成分が含有される。
【0019】
得られた、発酵物から抽出液を得る方法としては、例えば、発酵物を精密濾過することにより液体を抽出する方法等が挙げられる。また、このようにして得られた抽出液は、必要に応じて凝縮してもよい。
【0020】
このような、豆乳を発酵して得られる発酵物から抽出された抽出液は、数多くの種類が肥料用途等として市販されているが、その具体例としては、例えば、(有)スルガエンタープライズ製のKD酵素やサンヘルセン(株)製のドイラーゼやスーパードイラーゼ等が挙げられる。
【0021】
本発明の栽培方法は、前記水溶性有機ゲルマニウムと、前記抽出液との存在下で、きのこを栽培するものであればよく、具体的には、例えば、菌床栽培法や原木栽培法が用いられる。
【0022】
菌床栽培法においては、培養基として、例えば、広葉樹の木屑に所定量の米糠及び小麦かすを配合した培地が好ましく用いられ、原木栽培法においては、榾木用広葉樹原木が好ましく用いられる。なお、木屑及び榾木用原木としては、かし、こなら、みずなら、くぬぎ、ぶな、栗、椎、梅、桜等の落葉広葉樹に由来するものが好ましく用いられる。
【0023】
以下に、本発明の実施形態に係る菌床栽培法について詳しく説明する。
【0024】
本実施形態に係る菌床栽培法は、種菌を培養する種菌培養工程と、子実体を形成させる子実体形成工程とを備える。はじめに、種菌培養工程について説明する。
【0025】
(種菌培養工程)
まず、種菌を培養するための培養基に添加する培養調製液を調製する。
【0026】
前記培養調製液は、水に、所定量の前記水溶性有機ゲルマニウム、前記抽出液、及び炭酸カルシウムを添加することにより調製される。
【0027】
前記水溶性有機ゲルマニウムの添加量は、水1Lに対し、ゲルマニウム量換算で50〜1000mg、さらには200〜400mgであることが好ましい。
【0028】
また、前記抽出液の添加量は用いられる種類により適宜調整されるが、例えば、(有)スルガエンタープライズ製のKD酵素を用いる場合には、水1Lに対し、0.01〜1mL程度、サンヘルセン(株)製のドイラーゼやスーパードイラーゼを用いる場合には、水1Lに対し、0.01〜1mL程度添加することが好ましい。
【0029】
また、前記炭酸カルシウムは、pHを調整するための成分であり、得られる培養調製液のpHが5〜8、好ましくは6.7〜7となる程度に添加することが好ましい。
【0030】
次に、種菌を培養させるための培養基を調製する。本発明における培養基は、木屑に、所定量の米糠及び小麦かすを混合したものが好ましく用いられる。
【0031】
前記米糠の混合量は、例えば、木屑10kgに対して、0.5〜3kg程度であることが好ましく、前記小麦かすの混合量は、木屑10kgに対して、0.5〜3kg程度であることが好ましい。なお、小麦かすとは、小麦を調理等に使用した後、通常、廃棄される部分であり、例えば、小麦粒の外皮の部分等が挙げられる。
【0032】
そして、樹脂等からなる容器に、得られた培養基を充填して、さらに、培養調製液を添加する。
【0033】
前記培養調製液の添加量は、培養基10kgに対して1〜10L、さらには、4〜8L程度添加することが好ましい。なお、この際、必要に応じて、pH調整をするための炭酸カルシウムをさらに添加してもよい。
【0034】
次に、容器に充填された培養基に、きのこの種菌を接種する。
【0035】
なお、きのこの種類としては、例えば、霊芝、椎茸、えのき茸、舞茸、平茸、ナメコ茸、マッシュルーム、木くらげ等が挙げられる。
【0036】
種菌の接種は、予め滅菌された培養基に、霊芝種菌を接種する。培養基の滅菌方法としては、公知の滅菌方法を用いることができ、具体的には、例えば、90〜95℃で5〜6時間、乾燥させる常圧滅菌法が用いられる。
【0037】
そして、種菌が接種された培養基を、例えば、培養温度18〜20℃で、培養期間15〜20日間、培養させる。この培養により、種菌は増殖して、培養基全体に、霊芝の菌糸がまん延する。この種菌が培養された培養基を、後述の子実体形成工程で、培養種菌として用いる。
【0038】
(子実体形成工程)
次に、得られた培養種菌を用いて子実体を形成させる子実体形成工程について説明する。
【0039】
別の容器に上記で得られたのと同様の培養基を充填したのち、培養調製液を添加する。なお、培養基に対する培養調製液の添加量は上記と同様である。
【0040】
そして、培養基を滅菌する。滅菌条件としては、例えば、高圧滅菌釜を用い、密閉状態で、100〜150℃程度の温度範囲で、1〜4時間程度処理する高圧滅菌法が好ましく用いられる。
【0041】
次に、滅菌された前記培養基に、前記培養種菌を混合することにより、種菌を接種する。
【0042】
そして、種菌が接種された培養基を、例えば、18〜20℃で、20〜25日間程度培養する。この培養により、種菌は、培養基内でさらに増殖し、培養基全体に、霊芝の菌糸がまん延する。さらに、種菌を培養させた培養基を、例えば、18〜20℃で、15〜20日間熟成させる。この熟成により、培養基の表面にきのこの子実体を形成するための皮膜が形成される。
【0043】
次に、熟成された培養基の伏せ込みを行う。本伏せは、24〜28℃程度で制御された遮光率70〜80%の遮光ネットで覆われたビニールハウス内の床の一面に山砂を敷きつめ、その山砂の上に、種菌の熟成した培養基を容器に充填されたままで、所定の間隔を維持しながら並べる。そして、並べられた培養基と培養基との間に、火山灰まじりの土又は山砂を充填し、さらに、培養基の表面から約3cm位まで火山灰まじりの土又は山砂を覆いかぶせる。
【0044】
例えば霊芝の場合、このような伏せ込みにより、伏せこみ後10日前後で、発茸し、白色茸が隆起し、20日前後で、傘が形成され、35日前後で、傘の厚みが増し、胞子を飛散させるようになり、45〜50日前後で子実体(きのこ)が得られる。
【0045】
以上、説明した菌床栽培法によれば、きのこに吸収されなかった水溶性有機ゲルマニウムを回収することができるために、水溶性有機ゲルマニウムの無駄を省くことができる。また、このようにして得られたきのこには、多量のゲルマニウムが含有される。
【0046】
次に、本発明の実施形態に係る原木栽培法の一例についてについて説明する。
【0047】
はじめに、所定の厚み、例えば、15〜20cmの榾木用原木(丸太)を用意し、その丸太を2個1組として、丸太の切断面と丸太の切断面との間に、例えば、上記菌床栽培法における培養種菌を挟み込み、種菌を接種することにより、榾木を得る。得られた榾木を、上記菌床栽培法におけるのと同様の方法により、伏せ込みを行うことによって、きのこの発茸が行われ、ゲルマニウムの含有量の多いきのこが得られる。
【0048】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。なお、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
(培養調製液の調製)
精製水 6Lに対して、豆乳を発酵して得られる発酵物から抽出された抽出液として、(有)スルガエンタープライズ製のKD酵素 1.2mL、水溶性有機ゲルマニウム(カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシド、ジャパンアルジェ(株)製) 6g、炭酸カルシウム 0.3gを溶解させて培養調製液を得た。
【0050】
(培養基の調製)
広葉樹(くぬぎ)のおが屑 200kgに対して、米糠 30kg、小麦かす 30kg、培養調製液 65L、炭酸カルシウム 3gを混合することにより、培養基を得た。
[実施例1]
調製された培養基を1300mLのプロピレン製瓶に充填し、90〜95℃で5〜6時間の条件で常圧滅菌した。そして、滅菌された培養基に、松杉霊芝種菌(1109菌株)を5〜8g添加した。そして、18〜20℃程度の温度で、15〜20日間程度、培養することにより培養種菌を得た。
【0051】
次に、1500mLのポリプロピレン製袋に調製された培養基を充填した後、高圧滅菌釜に入れ、密閉して、120℃に加温して2時間高圧滅菌した。
【0052】
そして、高圧滅菌された前記ポリプロピレン製袋中の培養基に、培養種菌を20〜25g接種した。そして、18〜20℃程度の温度で、20〜25日間程度、培養し、18〜20℃程度の温度で、15〜20日間程度、熟成した。次に、山砂を敷きつめられたビニールハウス内の床に、熟成された培養基をポリプロピレン製袋に充填したままで、15cm間隔となるように並べた。そして、並べられた培養基と培養基との間に、火山灰まじりの土又は山砂を充填し、さらに、培養基の表面から約3cm位まで火山灰まじりの土又は山砂を覆いかぶせ、伏せ込みを行った。その際、ビニールハウス内の室温を、24〜28℃程度となるように制御し、遮光率70〜80%の遮光ネットで覆った。
[実施例2]
抽出液として、(有)スルガエンタープライズ製のKD酵素の代わりに、サンヘルセン(株)製のドイラーゼを使用したこと以外、実施例1と同様である。
[比較例1]
抽出液を使用しないこと以外、実施例1と同様である。
[比較例2]
従来のきのこの栽培方法(原木栽培法)で霊芝を栽培した。
【0053】
上記実施例1,2及び比較例1,2で栽培された霊芝のゲルマニウム含有量を、以下の方法で測定した。
【0054】
(ゲルマニウム含有量の測定方法)
ゲルマニウム含有量は、フェニルフルオロン吸光光度法により測定した。
【0055】
上記測定結果より、実施例1の霊芝に含まれるゲルマニウム含有量は、206ppmであり、実施例2の霊芝に含まれるゲルマニウム含有量は、200ppmであった。これらに対して、比較例1の霊芝に含まれるゲルマニウム含有量は、0.05ppmであり、比較例2の霊芝に含まれるゲルマニウム含有量は、0ppmであった。
【0056】
これらのことから、水溶性有機ゲルマニウムと、豆乳を発酵した抽出液とを含有する培養基で栽培した霊芝(実施例1,2)は、水溶性有機ゲルマニウムを含有するが、抽出液を含有しない培養基で栽培した霊芝(比較例1)や、水溶性有機ゲルマニウム及び抽出液を含有しない培養基で栽培した霊芝(比較例2)より、ゲルマニウム含有量が多いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機ゲルマニウムと、豆乳を発酵して得られる発酵物から抽出された抽出液とを含有する培養基を用いて、きのこを栽培することを特徴とする含ゲルマニウムきのこの栽培方法。
【請求項2】
前記培養基が、広葉樹の木屑に、所定量の米糠及び小麦かすを配合してなる培地を用いたものである請求項1に記載の含ゲルマニウムきのこの栽培方法。
【請求項3】
前記培養基が、榾木用広葉樹原木を培地として用いたものである請求項1に記載の含ゲルマニウムきのこの栽培方法。
【請求項4】
前記水溶性有機ゲルマニウムが、カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシドである請求項1〜3のいずれか1項に記載の含ゲルマニウムきのこの栽培方法。

【公開番号】特開2009−55792(P2009−55792A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223211(P2007−223211)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(504024542)
【Fターム(参考)】