説明

回転角度検出装置

【課題】検出対象である回転体の回転角度の検出精度を向上させることができる。
【解決手段】舵角センサ11は、ステアリングシャフト12と一体回転する外歯車14及びこれに噛み合う内歯車15を備えた。外歯車14及び内歯車15の第1及び第2の検出面14a,15aには、6つの第1及び第2検出部材21,31を環状に配設するとともに、これらの内側には環状の第1及び第2補助検出部材22,32を設けた。第1及び第2検出部材21,31の幅、並びに第1及び第2補助検出部材22,32の幅を検出してこれら幅情報を含む明暗情報を出力するラインセンサ42を、第1及び第2の検出面14a,15aに対向して配設した。ラインセンサ42からの明暗情報に基づき外歯車14及び内歯車15の単位角度範囲内における回転角度を求め、これら回転角度の組み合わせに基づき外歯車14の絶対回転角度を算出するマイクロコンピュータ43を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転角度を絶対値で求める回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、車両の高機能化に伴い、車両には車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステムが搭載されつつある。これらシステムは、ステアリングの操舵角を車両の姿勢情報の一つとして取得し、その姿勢情報に基づいて車両の姿勢が安定的な状態になるように制御する。そのため、例えば車両のステアリングコラム内にはステアリングの操舵角を検出する回転角度検出装置が組み込まれている。
【0003】
この種の回転角度検出装置としては、例えば特許文献1に示されるような構成が知られている。この回転角度検出装置は、ステアリングシャフトと一体的に回転する主動歯車、及び当該主動歯車に歯合する2つの従動歯車を備えている。両従動歯車には磁石が一体回転可能に設けられている。また、両従動歯車の歯数は異なっており、これにより主動歯車の回転に伴う両従動歯車の回転角度を異ならせるようにしている。そして、回転角度検出装置の制御装置は、両従動歯車にそれぞれ対応して設けられた磁気センサにより両従動歯車の回転角度を検出し、それら検出した回転角度に基づいてステアリングシャフトの回転角度を求める。
【特許文献1】特表平11−500828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来の回転角度検出装置には、次のような問題があった。すなわち、主動歯車に2つの従動歯車を噛み合わせた構成とされているため、検出される2つの従動歯車の回転角度には、主動歯車と2つの従動歯車との間のバックラッシに起因する誤差が含まれている。このため、2つの従動歯車の回転角度に基づいて求められるステアリングシャフトの回転角度にも潜在的に誤差が含まれている。前記バックラッシは、2つの従動歯車の滑らかな回転を確保するために設けられるものであることから、バックラッシを無くすことはできない。したがって、前記従来の回転角度検出装置により求められるステアリングシャフトの回転角度の検出精度の向上には自ずと限界があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、検出対象である回転体の回転角度の検出精度を向上させることができる回転角度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、回転体の回転角度を求める回転角度検出装置において、外周面に歯形が形成されるとともに前記回転体と一体回転可能に設けられる第1歯車と、内周面に歯形が形成されるとともに前記第1歯車の外周側に配設されて噛合する前記第1歯車と歯数の異なる第2歯車と、前記第1歯車の回転角度を求めるべく当該第1歯車の回転中心軸に沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第1歯車の径方向における幅が予め設定された単位回転角度範囲毎に直線的に変化する複数の第1検出領域と、前記第2歯車の回転角度を求めるべく当該第2歯車の回転中心軸に沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第2歯車の径方向における幅が予め設定された単位回転角度範囲毎に直線的に変化する複数の第2検出領域と、前記第1及び第2歯車の第1及び第2検出領域に対し相対変位可能に設けられるとともに当該第1及び第2歯車の回転に伴い相対的に変化する当該第1及び第2検出領域の幅を検出してこれら幅情報を含む検出信号を出力する幅検出手段と、前記検出信号に含まれる第1及び第2検出領域の幅情報に基づき前記第1及び第2歯車の単位回転角度範囲内における回転角度を求めるとともに、これら求められた第1及び第2歯車の回転角度の組み合わせに基づき当該第1歯車の回転角度を基準として前記回転体の回転角度を絶対値で求める演算手段と、を備えてなることをその要旨とする。
【0007】
本発明によれば、第1及び第2歯車の歯数は異なることから、回転体の回転に伴う第1及び第2歯車の回転量も互いに異なる。そして、第1及び第2歯車の回転角度の組み合わせは、第1歯車の回転角度が0°から、その単位回転角度とこのときの第2歯車の回転角度との最小公倍数として求められる所定の回転角度に至るまでの間においてすべて異なる。このため、第1及び第2歯車の回転角度の組み合わせは、0°から前記所定の回転角度までの範囲内において、回転体の絶対回転角度(第1歯車の絶対回転角度)に対して固有となる。したがって、第1及び第2歯車の各々の回転角度が分かれば、前述した所定の角度範囲内で第1歯車の絶対回転角度、すなわち回転体の回転角度を絶対値で即時に検出することが可能となる。ここで、回転体に一体回転可能に設けられる第1歯車の回転角度を基準として当該回転体の回転角度を求めることにより、第1及び第2歯車間に存在するバックラッシの影響を低減させることできる。したがって、検出対象である回転体の回転角度の検出精度を向上させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、回転体の回転角度を求める回転角度検出装置において、前記回転体と一体回転する第1歯車と、前記第1歯車と歯数が異なるとともに第1歯車に噛合する第2歯車と、前記第1歯車の回転角度を求めるべく当該第1歯車の回転中心軸に沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第1歯車の径方向における幅が予め設定された単位回転角度範囲毎に直線的に変化する複数の第1検出領域と、前記第2歯車の回転角度を求めるべく当該第2歯車の回転中心軸に沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第2歯車の径方向における幅が予め設定された単位回転角度範囲毎に直線的に変化する複数の第2検出領域と、前記第1及び第2歯車の第1及び第2検出領域に対し相対変位可能に設けられるとともに当該第1及び第2歯車の回転に伴い相対的に変化する当該第1及び第2検出領域の幅を検出してこれら幅情報を含む検出信号を出力する幅検出手段と、前記検出信号に含まれる第1及び第2検出領域の幅情報に基づき前記第1及び第2歯車の単位回転角度範囲内における回転角度を求めるとともに、これら求められた第1及び第2歯車の回転角度の組み合わせに基づき当該第1歯車の回転角度を基準として前記回転体の回転角度を絶対値で求める演算手段と、を備えてなることをその要旨とする。
【0009】
本発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の回転角度検出装置において、前記第1歯車は、外周面に歯形が形成されるとともに前記回転体と一体回転可能に設けられる外歯車とし、前記第2歯車は、内周面に歯形が形成されるとともに前記外歯車の外周側に配設されて噛合する内歯車としたことをその要旨とする。
【0010】
このように構成した場合であれ、回転体に一体回転可能に設けられる外歯車の回転角度を基準とすることにより、外歯車と内歯車との間のバックラッシの回転体の回転角度の検出に対する影響は少ない。このため、回転体の回転角度の検出精度を向上させることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の回転角度検出装置において、前記第1歯車は、外周面に歯形が形成されるとともに前記回転体と一体回転可能に設けられる主動平歯車とし、前記第2歯車は、外周面に歯形が形成されるとともに前記主動平歯車の外周側に配設されて噛合する従動平歯車としたことをその要旨とする。
【0012】
このように構成した場合であれ、回転体に一体回転可能に設けられる主動平歯車の回転角度を基準とすることにより、主動平歯車と従動平歯車との間のバックラッシの回転体の回転角度の検出に対する影響は少ない。このため、回転体の回転角度の検出精度を向上させることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第1歯車において前記第1検出領域が形成された一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第1歯車の径方向における幅が一定となる第1補助検出領域と、前記第2歯車において前記第2検出領域が形成された一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第2歯車の径方向における幅が一定となる第2補助検出領域と、をさらに備え、前記幅検出手段は、前記第1及び第2補助検出領域に対して相対変位可能に設けられるとともに前記第1及び第2歯車の回転に伴い前記第1及び第2補助検出領域の幅を検出してこれら幅情報を前記検出信号に含めて出力するようにし、前記演算手段は、前記検出信号に含まれる前記第1検出領域の幅情報と同じく前記第1補助検出領域の幅情報との第1の比、並びに前記検出信号に含まれる前記第2検出領域の幅情報と同じく前記第2補助検出領域の幅情報との第2の比を求め、これら第1及び第2の比の組み合わせに基づき前記第1及び第2歯車の単位回転角度範囲内における回転角度を求めるとともに、これら求められた第1及び第2歯車の回転角度の組み合わせに基づき当該第1歯車の回転角度を基準として前記回転体の回転角度を絶対値で求めることをその要旨とする。
【0014】
本発明によれば、第1及び第2補助検出領域の幅が一定であることから、前記第1検出領域の幅と第1補助検出領域の幅との第1の比の値、並びに前記第2検出領域の幅と第2補助検出領域の幅との第2の比の値は、例え検出手段の各領域に対する取り付け位置が傾く等した場合であれ一定となる。したがって、前述の第1及び第2の比を利用することにより、検出手段と第1及び第2歯車との相対的な位置変化(位置ずれ)に起因する第1及び第2歯車の回転角度の算出精度への影響が低減される。ひいては、回転体の回転角度の算出精度が高められる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の回転角度検出装置において、前記第1及び第2検出領域並びに前記第1及び第2補助検出領域は誘電体により形成し、また、前記幅検出手段は、前記第1及び第2歯車の径方向へ延びる単数又は複数の認識ラインを備えるとともに当該認識ラインと前記第1及び第2検出領域並びに前記第1及び第2補助検出領域との間に生じる静電容量を第1及び第2検出領域並びに前記第1及び第2補助検出領域の幅情報として検出してこれら検出された幅情報を前記検出信号として出力する静電容量センサとしたことをその要旨とする。
【0016】
本発明によれば、誘電体により形成された第1及び第2検出領域並びに第1及び第2補助領域の幅を検出する幅検出手段として、静電容量センサを採用したことにより、例えば従来知られている磁気センサを使用した回転角度検出装置と異なり、外部磁界の影響を受けにくい。このため、本発明の回転角度検出装置を何らかの磁界発生源の近傍に配設した場合であれ、回転体の回転角度の誤検出のおそれはない。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の回転角度検出装置において、前記第1及び第2検出領域並びに前記第1及び第2補助検出領域は、前記第1及び第2歯車の回転中心軸方向へ貫通して形成された第1及び第2検出透孔並びに第1及び第2補助透孔とし、前記検出手段は、第1及び第2歯車を間に挟んで対向配置される線状光源から発せられて前記第1及び第2検出透孔並びに前記第1及び第2補助透孔を通じて入射する線状光を当該第1及び第2検出透孔並びに前記第1及び第2補助透孔の幅情報として検出してこれら検出された幅情報を前記検出信号として出力する半導体イメージセンサとしたことをその要旨とする。
【0018】
本発明のように構成した場合であれ、請求項6と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1及び第2歯車間に存在するバックラッシが検出対象である回転体の回転角度の検出に及ぼす影響が低減されることにより、当該回転体の回転角度の検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の回転角度検出装置を例えばステアリングホイールの操舵角を検出する舵角センサに具体化した一実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
図1に示すように、舵角センサ11は図示しない車両のステアリングコラム内に配設されるとともに、図示しないステアリングホイールに一体回転可能に連結されたステアリングシャフト12に装着されている。舵角センサ11は、ステアリングコラム内の図示しない構造体に固定された円筒状のハウジング13を備えている。ハウジング13は下面が開口した有蓋箱体状のアッパーハウジング13aと上面が開口した有底円筒状のロアハウジング13bとが組み合わせられることにより全体として円筒状をなすとともに、当該ハウジング13にはステアリングシャフト12が回転可能に貫通した状態で保持されている。そしてこのハウジング13(正確には、アッパーハウジング13a)内には、外周面に多数の歯が形成されるとともにステアリングシャフト12に対して一体回転可能に外嵌された円柱状の外歯車14が配設されている。当該外歯車14は、ステアリングシャフト12の回転中心軸Laに対して同一軸線上に配設されている。外歯車14はポリカーボネート等の合成樹脂材料により形成されるとともに、その歯数z1は30とされている。
【0021】
また、ハウジング13(正確には、アッパーハウジング13a)内には、内周面に多数の歯が形成されるとともに前述した外歯車14の外周側に配設されて当該外歯車14に対して偏心回転するように噛合する円環状の内歯車15が配設されている。すなわち、図2に示されるように、内歯車15の回転中心軸Lbは、外歯車14の回転中心軸、すなわちステアリングシャフト12の回転中心軸Laに対して距離axだけ径方向へずれるように配設されている。また、内歯車15は歯の形成されていない外周面がハウジング13の内周面に対して摺動回転可能に設けられている。内歯車15はポリカーボネート等の合成樹脂材料により形成されている。そして当該内歯車15の歯数z2は外歯車14の歯数z1よりも僅かに大きな値に設定されている。ここでは、内歯車15の歯数z2は31とされている。
【0022】
したがって、ステアリングシャフト12の回転に伴い外歯車14は回転中心軸Laを中心として回転(自転)するとともに内歯車15に噛合しつつ公転する。そしてこの外歯車14の動作に伴い内歯車15は外歯車14の回転(自転又は公転)方向と同じ方向へ回転する。すなわち、わずかに異なる歯数の外歯車14及び内歯車15は、これらを内外に噛み合わせることにより大きな減速比が得られるようにしたハイポサイクロイド機構を構成している。当該ハイポサイクロイド機構には、ステアリングホイールの回転がステアリングシャフト12を通じて外歯車14の回転運動として入力される。このとき、外歯車14の移動軌跡はハイポサイクロイドを描く。そして、外歯車14が内歯車15に噛み合いながら公転すると、外歯車14は所定の減速比(速度伝達比)で自転する。この所定の減速比は、次式(A)のように示される。
【0023】
減速比=z1/(z2−z1)・・・(A)
ここで、z1は外歯車14の歯数、z2は内歯車15の歯数である。本実施の形態では、前述したように、外歯車14の歯数z1=30、内歯車15の歯数z2=31とされているので、前記式(A)から減速比は30となる。
【0024】
なお、外歯車14は本発明の第1歯車に、また内歯車15は本発明の第2歯車に相当する。
<検出領域>
図1に示されるように、外歯車14の回転中心軸Laに沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方面(図1における下面)である第1の検出面14aには、その全周にわたって6つの第1検出部材21が設けられている。図2に示されるように、これら第1検出部材21は、第1の検出面14aの外周縁側において環状をなすように設けられている。すなわち、第1の検出面14aは、外歯車14の回転中心軸Laの周方向において、外歯車14の単位回転角度範囲である0°〜60°毎に6つの扇形の領域に区画されるとともに、これら領域毎に第1検出部材21が設けられている。第1検出部材21は、タンタル等の誘電体を第1の検出面14aに例えば蒸着することにより、外歯車14の径方向における幅が前記単位回転角度範囲である60°内において直線的に変化する板状又は膜状に形成されている。
【0025】
具体的には、図3(a)に示されるように、1つの第1検出部材21は直線に展開したときに直角三角形をなし、図3(b)に示されるように、第1検出部材21の幅Wa1は、外歯車14の回転量(回転角度θa)に対し比例関係をもって直線的に変化する。そして、図2に示されるように、6つの第1検出部材21は、第1の検出面14aの外周縁側の側縁部が同一の円周上において連続して位置するように設けられている。
【0026】
また、第1の検出面14aにおいて、環状をなす6つの第1検出部材21の内側には、環状の第1補助検出部材22が設けられている。第1補助検出部材22はタンタル等の誘電体を第1の検出面14aに蒸着することにより板状又は膜状に形成されるとともに、その幅Wa2は全周にわたって一定とされている。すなわち、第1補助検出部材22の幅Wa2は、外歯車14の回転量に対し常に一定となる。
【0027】
一方、図1に示されるように、内歯車15の回転中心軸Lbに沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方面(図1における下面)である第2の検出面15aには、その全周にわたって6つの第2検出部材31が設けられている。図2に示されるように、これら第2検出部材31は、第2の検出面15aの外周縁側において環状をなすように設けられている。すなわち、第2の検出面15aは、内歯車15の回転中心軸Lbの周方向において、内歯車15の単位回転角度範囲である60°毎に6つの扇形の領域に区画されるとともに、これら領域毎に第2検出部材31が設けられている。第2検出部材31は、タンタル等の誘電体を第2の検出面15aに例えば蒸着することにより、内歯車15の径方向における幅が前記単位回転角度範囲である60°内において直線的に変化する板状又は膜状に形成されている。
【0028】
具体的には、図3(a)に示されるように、1つの第2検出部材31は直線に展開したときに直角三角形をなし、図3(c)に示されるように、第2検出部材31の幅Wb1は、内歯車15の回転量(回転角度θb)に対し比例関係をもって直線的に変化する。そして、図2に示されるように、6つの第2検出部材31は、第2の検出面15aの外周縁側の側縁部が同一の円周上において連続して位置するように設けられている。
【0029】
また、第2の検出面15aにおいて、環状をなす6つの第2検出部材31の内側には、環状の第2補助検出部材32が設けられている。第2補助検出部材32はタンタル等の誘電体を第2の検出面15aに蒸着することにより板状又は膜状に形成されるとともに、その幅Wb2は全周にわたって一定とされている。すなわち、第2補助検出部材32の幅Wb2は、内歯車15の回転量に対し常に一定となる。
【0030】
なお、外歯車14の第1の検出面14a及び内歯車15の第2の検出面15aは、同一平面上にある。また、第1及び第2検出部材21,31並びに第1及び第2補助検出部材22,32の厚みは同じとされている。本実施の形態では、第1検出部材21及び第1補助検出部材22、並びに第2検出部材31及び第2補助検出部材32の厚みは、それぞれ200μm程度に設定されている。また、本実施の形態において、前述した6つの第1検出部材21は本発明の第1検出領域を、6つの第2検出部材31は本発明の第2検出領域を構成する。また、第1補助検出部材22は本発明の第1補助検出領域を、第2補助検出部材32は本発明の第2補助検出領域を構成する。
【0031】
<回路基板>
図4に示すように、ハウジング13の内部において、外歯車14及び内歯車15の下方には、平板状の回路基板41が第1及び第2の検出面14a,15aに対向して配設されている。回路基板41はロアハウジング13bの内底面に固定されるとともに、その第1及び第2の検出面14a,15aに対向する側面には静電容量式のラインセンサ42及びマイクロコンピュータ43が設けられている。ラインセンサ42は外歯車14及び内歯車15の回転に伴い変化する第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1並びに第1及び第2補助検出部材22,32の幅Wa2,Wb2を読み取ってこれら幅情報を電気信号に変換して出力する。マイクロコンピュータ43は、ラインセンサ42から入力される電気信号に基づき外歯車14及び内歯車15の単位回転角度範囲0°〜60°内の回転角度θa,θbを求め、これら回転角度θa,θbに基づき外歯車14の絶対回転角度、すなわちステアリングシャフト12の回転角度を絶対値で求める。
【0032】
<ラインセンサ>
図3(a)に二点鎖線で示されるように、ラインセンサ42は、外歯車14及び内歯車15の回転方向に対して交わる(直交する)方向へ延びる4本の認識ライン42a,42b,42c,42dを備えるとともに、第1及び第2の検出面14a,15aの凹凸により異なる電荷量を明暗情報(1,0の情報)に変換して出力する。
【0033】
具体的には、図5(a)に示されるように、各認識ライン42a〜42dは、所定ピッチで一列に並べられた多数の電極44からなる。そして図5(b)に示されるように、各電極44は、保護膜45により覆われるとともに、基板46a上に設けられた図示しない増幅器及びA/D変換器等からなる処理回路46を通じてマイクロコンピュータ43に接続されている。各電極44には、これらの表面と第1及び第2の検出面14a,15aとの距離に応じた電荷が溜まる。例えば各認識ライン42a〜42dが第1及び第2の検出面14a,15aと対応しているときには各電極44には電荷C1が、また第1及び第2検出部材21,31並びに第1及び第2補助検出部材22,32に対応しているときには各電極44には電荷C2(>C1)が溜まる。ここで、各電極44と第1及び第2の検出面14a,15aとの間の距離は、各電極44と第1及び第2検出部材21,31並びに第1及び第2補助検出部材22,32との間の距離よりも大きいので、電荷C2は電荷C1よりも大きな値となる。
【0034】
ちなみに、本実施の形態では、各認識ライン42a〜42dは、218個の電極44が50μmの間隔をおいて配設されてなる。このため、200μm以上の凹凸を高い精度(500dpi程度)で検出可能となる。
【0035】
処理回路46は、各電極44の電荷量を検出して当該電荷量を増幅するとともに、当該増幅された電荷量を4ビットのAD変換をすることにより、第1及び第2検出部材21,31並びに第1及び第2補助検出部材22,32の幅情報を、4ビット階調の明暗情報Dに変換してマイクロコンピュータ43へ出力する。すなわち、処理回路46は、1列に並ぶ各電極44に溜まる電荷を0〜15のいずれかの数値に変換してマイクロコンピュータ43へ送る。
【0036】
本実施の形態では、各認識ライン42a〜42dの電極44と外歯車14及び内歯車15との間の距離は、基本的には以下の(a),(b)に示される2つの値の間でしか変化しない。
【0037】
(a)電極44と第1及び第2の検出面14a,15aとの間の距離。
(b)電極44と第1及び第2検出部材21,31並びに第1及び第2補助検出部材22,32との間の距離。
【0038】
このため、電極44と外歯車14及び内歯車15との間に形成される静電容量も基本的には2種類(電荷C1,C2)となる。そして、明暗情報Dには、各認識ライン42a〜42dに対応する第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1、並びに第1及び第2補助検出部材22,32の幅Wa2,Wb2を示す情報が前述した0〜15の数値に変換された状態で含まれている。すなわち、前述したように、本実施の形態では各電極44に蓄えられる電荷量は基本的にはC1,C2の2種類であることから、図6に示されるように、明暗情報Dの各ビットは、例えば電荷C1に対応した数値である「5」、及び電荷C2に対応した数値である「15」の2種類の数値で構成される。マイクロコンピュータ43は、この明暗情報Dに基づき、第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1、並びに第1及び第2補助検出部材22,32の幅Wa2,Wb2を求める。なお、ラインセンサ42は本発明の静電容量センサ及び幅検出手段に相当する。
【0039】
<マイクロコンピュータ>
マイクロコンピュータ43は、図示しないCPU、ROM及びRAM等を備えるとともに、当該ROMに記憶された制御プログラムに基づきRAMを作業領域として作動する。マイクロコンピュータ43は、例えば車両のイグニッションスイッチがオン位置に操作されたときに、ステアリングホイールの操舵角の算出処理を開始して、ラインセンサ42から入力される明暗情報Dに基づき外歯車14の絶対回転角度をステアリングホイールの操舵角として逐次演算する。
【0040】
すなわち、マイクロコンピュータ43は、ラインセンサ42から入力される明暗情報Dに基づき各認識ライン42a〜42dに対応する第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1、並びに第1及び第2補助検出部材22,32の幅Wa2,Wb2を求める。具体的には、図6に示されるように、マイクロコンピュータ43は、明暗情報Dに含まれる各電極44の電荷C1,C2に対応するデジタル値Kxを読み取るとともに、これらデジタル値Kxのうち所定の判定閾値Ks以上となるビットを、第1及び第2検出部材21,31並びに第1及び第2補助検出部材22,32に対応する部分として認識する。そしてマイクロコンピュータ43は、判定閾値Ks以上のビットの連なる部分を、第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1並びに第1及び第2補助検出部材22,32の幅Wa2,Wb2として認識する。
【0041】
次に、マイクロコンピュータ43は、第1検出部材21の幅Wa1と第1補助検出部材22の幅Wa2との比(=Wa1/Wa2)を求め、当該比に基づき外歯車14の単位回転角度範囲0°〜60°における回転角度θaを求める。また、マイクロコンピュータ43は、第2検出部材31の幅Wb1と第2補助検出部材32の幅Wb2との比(=Wb1/Wb2)を求め、当該比に基づき内歯車15の単位回転角度範囲0°〜60°における回転角度θbを求める。そして、マイクロコンピュータ43は、これら回転角度θa,θbの組み合わせに基づき、外歯車14の絶対回転角度θmを求める。マイクロコンピュータ43は本発明の演算手段に相当する。
【0042】
<操舵角の算出処理>
次に、前述のように構成した舵角センサ11による操舵角の算出処理について説明する。当該算出処理は実際には各認識ライン42a〜42dからの明暗情報Dに基づき各々なされる。
【0043】
さて、ステアリングホイールの操作を通じてステアリングシャフト12とともに外歯車14が回転すると、当該外歯車14に噛合する内歯車15も同一方向へ回転する。これら外歯車14及び内歯車15の回転に伴い、ラインセンサ42に対向して通過する第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1は、外歯車14及び内歯車15が単位回転角度である60°だけ回転する毎に直線的な変化を繰り返す。第1及び第2補助検出部材22,32の幅Wa2,Wb2は常に一定となる。また、外歯車14の歯数z1と内歯車15の歯数z2とは異なることから、ステアリングシャフト12の回転に伴う外歯車14及び内歯車15の回転量は各々異なる。このため、その時々でラインセンサ42(正確には、各認識ライン42a〜42d)に対応する第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1も各々異なる。
【0044】
このとき、ラインセンサ42は、各認識ライン42a〜42dを構成する各電極44に蓄えられている電荷C1,C2をデジタル値Kxで表した図6に示される明暗情報Dを、認識ライン42a〜42d毎にマイクロコンピュータ43へ出力する。マイクロコンピュータ43は、各認識ライン42a〜42dに対応する明暗情報Dのデジタル値Kxを読み取り、これらデジタル値Kxの中で所定の判定閾値Ks以上となるビットを、第1及び第2検出部材21,31並びに第1及び第2補助検出部材22,32に対応する部分として認識する。そしてマイクロコンピュータ43はこれら認識したビット群の幅を、第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1並びに第1及び第2補助検出部材22,32の幅Wa2,Wb2として認識する。
【0045】
ここで、例えばラインセンサ42の各認識ライン42a〜42dを通過する第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1が直線的に増大する方向に、ステアリングシャフト12が回転する場合を考える。
【0046】
この場合、第1検出部材21の幅Wa1と外歯車14の回転角度θaとの間には、図7(a)に示されるような関係がある。すなわち、同図に示されるように、横軸を第1検出部材21の幅Wa1、縦軸を外歯車14の回転角度θaとしたとき、幅Wa1が増加するにつれて回転角度θaは外歯車14の単位回転角度範囲である0°〜60°の間において正の傾きをもって直線的に増大する。本実施の形態では、6つの第1検出部材21が外歯車14の回転中心軸La回りに連続するように設けられていることから、外歯車14が一回転すると回転角度θaは0°〜60°の立ち上がり及び立ち下がりを6回繰り返す。
【0047】
なお、本実施の形態では、ステアリングホイールの操舵角を求めるに際して、図7(a)の横軸を、第1検出部材21の幅Wa1と第1補助検出部材22の幅Wa2との比(=Wa1/Wa2)の値としたものを利用する。この場合であれ、当該比の値の増大に対する回転角度θaの変化は図7(a)の横軸を第1検出部材21の幅Wa1としたときと同様の傾向を示す。これは、第1補助検出部材22の幅Wa2が一定であるからである。
【0048】
また、第2検出部材31の幅Wb1と内歯車15の回転角度θbとの間には、図7(b)に示されるような関係がある。すなわち、同図に示されるように、横軸を第2検出部材31の幅Wb1、縦軸を内歯車15の回転角度θbとしたとき、幅Wb1が増加するにつれて回転角度θbは内歯車15の単位回転角度範囲である0°〜60°の間において正の傾きをもって直線的に増大する。本実施の形態では、6つの第2検出部材31が内歯車15の回転中心軸Lb回りに連続するように設けられていることから、内歯車15が一回転すると回転角度θbは0°〜60°の立ち上がり及び立ち下がりを6回繰り返す。
【0049】
ここで、図7(a),(b)に示される特性図の横軸に時間軸を別途設定した場合に、外歯車14及び内歯車15の回転角度θa,θbが0°から60°へ変化するまでの時間を1周期としたとき、内歯車15の1周期は外歯車14の1周期よりも長くなる。これは内歯車15の円周は外歯車14の円周よりも長く、第1及び第2検出部材21,31はこれら外歯車14及び内歯車15の円周に沿って設けられることに起因する。
【0050】
なお、本実施の形態では、ステアリングホイールの操舵角を求めるに際して、図7(b)の横軸を、第2検出部材31の幅Wb1と第2補助検出部材32の幅Wb2との比(=Wb1/Wb2)の値としたものを利用する。この場合であれ、当該比の値の増大に対する回転角度θbの変化は図7(b)の横軸を第2検出部材31の幅Wb1としたときと同様の傾向を示す。これは、第2補助検出部材32の幅Wb2が一定であるからである。
【0051】
したがって、マイクロコンピュータ43は、そのときの第1検出部材21の幅Wa1と第1補助検出部材22の幅Wa2との比を求めるとともに、そのときの第2検出部材31の幅Wb1と第2補助検出部材32の幅Wb2との比を求める。そして、マイクロコンピュータ43は、図7(a),(b)に示される関係(横軸を前述の比としたもの)に従って、外歯車14の回転角度θa及び内歯車15の回転角度θbをそれぞれ0°〜60°の範囲内で演算する。
【0052】
このように、回転角度θa,θbを求める際に、第1検出部材21の幅Wa1と第1補助検出部材22の幅Wa2との比(=Wa1/Wa2)、並びに第2検出部材31の幅Wb1と第2補助検出部材32の幅Wb2との比(=Wb1/Wb2)を利用することにより、回転角度θa,θbの算出精度が確保される。すなわち、図8に示されるように、車両走行中の振動等、何らかの原因によりラインセンサ42が傾き、各認識ライン42a〜42dと第1及び第2検出部材21,31とのなす角度が変わることが想定される。この場合には、各認識ライン42a〜42dを通じて検知される第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1の値が変わることから、外歯車14及び内歯車15の回転角度θa,θbを誤検出するおそれがある。これは、例えば本来の幅Wa1,Wb1と異なる幅Wa1′,Wb1′に基づき外歯車14及び内歯車15の回転角度θa,θbが演算されることに起因する。この点、前述したように、第1及び第2補助検出部材22,32の幅Wa2,Wb2が一定であることから、幅Wa1,幅Wa2の比の値、並びに幅Wb1,Wb2の比の値は、次式(B),(C)で示されるように、各認識ライン42a〜42dの傾き度合いにかかわらず一定となる。Wa2′,Wb2′は、ラインセンサ42が傾いたときの第1及び第2補助検出部材22,32の幅である。
【0053】
Wa1/Wa2=Wa1′/Wa2′・・・(B)
Wb1/Wb2=Wb1′/Wb2′・・・(C)
したがって、幅Wa1,幅Wa2の比の値、並びに幅Wb1,Wb2の比の値を利用することにより、ラインセンサ42の外歯車14及び内歯車15に対する相対位置変化が回転角度θa,θbの算出精度に及ぼす影響を除外することができる。
【0054】
また、外歯車14及び内歯車15の回転位置によっては、隣り合う2つの第1検出部材21の境界部位又は第2検出部材31の境界部位が各認識ライン42a〜42dのいずれかに対応することが想定される。この場合、単一の認識ラインのみ有するラインセンサが採用されているときには、第1検出部材21の幅Wa1又は第2検出部材31の幅Wb1の検出が好適に行われないおそれがある。この点、本実施の形態では、ラインセンサ42は4つの認識ライン42a〜42dを有することにより、1つの認識ラインが隣り合う2つの第1検出部材21の境界部位又は同じく2つの第2検出部材31の境界部位に対応した場合であれ、これら境界部位以外の部位に対応する残りの3つの認識ラインを通じて幅Wa1又は幅Wb1を好適に検出することが可能となる。このため、外歯車14及び内歯車15の回転角度θa,θbが好適に求められる。さらに、認識ライン42a〜42dの故障等も想定されるところ、すべての認識ライン42a〜42dが同時に故障等する蓋然性は低い。このため、幅Wa1又は幅Wb1の検出信頼性、ひいてはこれらに基づき求められる回転角度θa,θbの算出信頼性が確保される。
【0055】
そしてこの後、マイクロコンピュータ43は、前述のようにして求められた回転角度θa,θbの組み合わせに基づき外歯車14の絶対回転角度θmをステアリングホイールの操舵角として求める。
【0056】
詳述すると、本実施の形態では、ステアリングシャフト12に一体回転可能に設けられる外歯車14を基準として当該外歯車14の絶対回転角度θmが求められる。
ここで、前述したように、外歯車14の歯数z1は30、内歯車15の歯数z2は31とされている。また、外歯車14及び内歯車15の単位回転角度範囲、すなわち1つの第1及び第2検出部材21,31の第1及び第2の検出面14a,15aの円周に対する占有割合を示す分周比は1/6とされている。このため、ステアリングシャフト12に一体回転可能に設けられる外歯車14を基準とした場合、ステアリングシャフト12が外歯車14の単位回転角度である60°だけ回転したときの内歯車15の回転角度θbは次式(D)で示される。
【0057】
θb=(360°×分周比)/(z1/z2)・・・(D)
そしていま、分周比=1/6、z1=30、z2=31であることから、これらを前記式(D)に代入することにより、ステアリングシャフト12が外歯車14の単位回転角度である60°だけ回転したときの内歯車15の回転角度θbは、58°(小数点1桁以下切り捨て)となる。このため、外歯車14及び内歯車15の回転角度θa,θbの組み合わせは、外歯車14の回転角度θaが絶対値で0°から、当該外歯車14の単位回転角度である回転角度θa=60°とこのときの内歯車15の回転角度θb=58°との最小公倍数として求められる回転角度1740°までの間においてすべて異なる。
【0058】
すなわち、図7(c)に示されるように、横軸に外歯車14の絶対回転角度θm(ステアリングホイールの操舵角)を、また縦軸に外歯車14及び内歯車15の回転角度θa,θb(0°〜60°)をプロットすると、外歯車14の回転角度θaと内歯車15の回転角度θbとの組み合わせは、0°〜1740°の範囲内においてステアリングホイールの操舵角(外歯車14の絶対回転角度θm)に対して固有となる。したがって、外歯車14及び内歯車15の各々の回転角度θa,θbが分かれば、0°〜1740°の角度範囲で外歯車14の絶対回転角度θm、すなわちステアリングホイールの操舵角を絶対値で即時に検出することが可能となる。そして、0°〜1740°の中心値をステアリングホイールの中立位置とした場合、舵角センサ11によるステアリングホイールの操舵角の検出角度範囲は、±870°となる。これは、ステアリングホイールの左2.5回転、右2.5回転に相当する。
【0059】
なお、外歯車14及び内歯車15の歯数z1,z2、並びに第1及び第2検出部材21,31の分周比は適宜変更してもよい。
例えば、表1の変形例1に示されるように、z1=50、z2=52、第1及び第2検出部材21,31の分周比=1/5とすることも可能である。この場合、外歯車14の単位回転角度はθa=72°、このときの内歯車15の回転角度はθb=は69°(小数点1桁以下切り捨て)となるとともに、これらの最小公倍数は1656°となる。したがって、舵角センサ11の検出角度範囲は、±828°となる。これは、ステアリングホイールの左2.3回転、右2.3回転に相当する。
【0060】
また、表1の変形例2に示されるように、z1=79、z2=82、第1及び第2検出部材21,31の分周比=1/5とすることも可能である。この場合、外歯車14の単位回転角度はθa=72°、このときの内歯車15の回転角度はθb=69°(小数点1桁以下切り捨て)となるとともに、これらの最小公倍数は1656°となる。したがって、舵角センサ11の検出角度範囲は、±828°となる。これは、ステアリングホイールの左2.3回転、右2.3回転に相当する。
【0061】
【表1】

そして、マイクロコンピュータ43は、前述のようにして求めた外歯車14の絶対回転角度θmをステアリングホイールの操舵角として車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステム(正確には、それらの制御装置)に送る。
【0062】
<バックラッシの影響>
ここで、外歯車14と内歯車15との間にはバックラッシが設けられるところ、このバックラッシがステアリングホイールの操舵角の算出精度に何らかの影響を及ぼすことが懸念される。バックラッシは、2つの歯車を噛み合わせたときの歯面間の遊びのことであり、互いに噛み合う2つの歯車を円滑に回転させるためには適切なバックラッシを設定する必要がある。このため、バックラッシを省略することは困難である。そこで、以下に外歯車14と内歯車15との間のバックラッシが操舵角の算出精度に及ぼす影響について説明する。
【0063】
さて、外歯車14と内歯車15との間にバックラッシδが存在する場合、内歯車15は外歯車14に対してバックラッシδの分だけ遅れて回転し始める。この内歯車15の外歯車14に対する回転の遅れは、図7(a),(b)に示される特性図の横軸に時間軸を別途設定したとき、図7(b)に二点鎖線で示されるように、内歯車15の回転角度θbの立ち上がりの遅れ、すなわち左右方向のずれとして現れる。そして、この図7(b)に対する左右方向のずれは、算出される回転角度θbのずれ、すなわち図7(b)の上下方向のずれとして現れる。
【0064】
例えば、図7(a)に示される特性図において、ポイントP1で示される回転角度θaの立ち上がりの最初の頂点、及びポイントP2で示される2番目の頂点に着目すると、これらポイントP1,P2に対応する内歯車15の回転角度θbは、図7(b)に示されるように、本来それぞれ異なる回転角度θb1,θb2となる。したがって、内歯車15の回転角度θbの算出に際してバックラッシδの影響を排除するためには、当該バックラッシδを次のように設定すればよい。
【0065】
すなわち、外歯車14と内歯車15との間にバックラッシδが存在しないと仮定した場合の理想的な回転角度θb1と回転角度θb2との差の絶対値として求められる演算許容誤差δp(=│θb1−θb2│)未満の値となるように、実際のバックラッシδを設定する。このようにすれば、回転角度θa,θbの組み合わせは、外歯車14の絶対回転角度θmが0°〜1740°の間において重複することはない。このため、マイクロコンピュータ43は、バックラッシδの影響を受けることなく内歯車15の回転角度θbを算出可能となる。
【0066】
これに対し、バックラッシδを前述の演算許容誤差δp以上の値とした場合には、当該バックラッシδの影響を受けて回転角度θa,θbの組み合わせは、外歯車14の絶対回転角度θmが0°〜1740°の間において重複するおそれがある。例えば図7(a)に示されるポイントP2に対応する内歯車15の回転角度θbは、実際には図7(b)に示されるように回転角度θb2であるにもかかわらず、バックラッシδの影響を受けて回転角度θb1と誤検出されるおそれがある。本実施の形態では、バックラッシδが前記の演算許容誤差δp未満となるように予め設定されることから、回転角度θb1が誤検出されることはない。なお、本実施の形態では、バックラッシδは、例えば0.5°とされる。
【0067】
一方、外歯車14はステアリングシャフト12と一体回転することから、外歯車14とステアリングシャフト12との間に回転角度の誤差(回転方向のずれ)は発生しない。このため、マイクロコンピュータ43は、外歯車14の単位回転角度範囲0°〜60°内における回転角度θaをバックラッシδの影響を一切受けずに求めることができる。
【0068】
以上のようにバックラッシδを設定することにより、マイクロコンピュータ43は、バックラッシδの影響を受けることなく回転角度θa,θbの組み合わせに基づきバックラッシδの影響が排除された状態の絶対回転角度θmを算出可能となる。したがって、絶対回転角度θm、すなわちステアリングホイールの操舵角の検出精度が高められ、精度を要する車両制御に好適である。
【0069】
なお、舵角センサ11において、前述のようなバックラッシδの厳密な設定作業がなされない場合であれ、外歯車14の絶対回転角度θmの算出精度は確保される。そして、ステアリングシャフト12と一体回転する主動歯車に噛み合わせられた複数個の従動歯車の回転角度をそれぞれ求め、これら回転角度の組み合わせに基づき主動歯車の絶対回転角度を操舵角として求めるようにした従来の舵角センサ(磁気検出方式)との比較においては、操舵角の検出精度は向上している。
【0070】
すなわち、前述したように、マイクロコンピュータ43は、ステアリングシャフト12に直結された外歯車14の回転角度θaを基準として当該回転角度θa及び内歯車15の回転角度θbの組み合わせに基づき操舵角を求めるようにしている。見方を変えれば、マイクロコンピュータ43は、内歯車15の回転角度θbを外歯車14の周期数(1周期=回転角度θa,θbが0°から60°へ変化するまでの時間)を把握するためにのみ使用しているとも言える。そして、少なくとも操舵角の算出に際して基準となる外歯車14とステアリングシャフト12との間には何ら回転誤差は発生することがなく、また当該外歯車14に噛み合う歯車も内歯車15のみである。このように、検出対象であるステアリングシャフト12に直結された外歯車14の回転角度θaを直接的に検出し、この検出された回転角度θaを当該外歯車14の絶対回転角度θm、すなわちステアリングホイールの操舵角の演算パラメータの一つとして使用することにより、操舵角の検出精度が高められる。ステアリングシャフト12に直結された外歯車14に噛み合う歯車も内歯車15のみであることから、前述した従来の舵角センサ、すなわち主動歯車に噛み合う複数個の従動歯車の回転角度に基づき操舵角を求めるようにしたものに比べ、操舵角の算出に際しての歯車間のバックラッシの影響は少ない。
【0071】
<実施の形態の効果>
従って、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)舵角センサ11は、ステアリングシャフト12と一体回転する外歯車14及びこれに噛み合う内歯車15を備えた。また、外歯車14及び内歯車15の第1及び第2の検出面14a,15aには、6つの第1及び第2検出部材21,31を環状に配設するとともに、これらの内側には環状の第1及び第2補助検出部材22,32を設けた。さらに、第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1、並びに第1及び第2補助検出部材22,32の幅Wa2,Wb2を検出してこれらの情報を含む明暗情報Dを出力するラインセンサ42を、第1及び第2の検出面14a,15aに対向して配設した。そして、ラインセンサ42からの明暗情報Dに基づき外歯車14及び内歯車15の単位角度範囲内における回転角度θa,θbを求め、これら回転角度θa,θbの組み合わせに基づき外歯車14の絶対回転角度θmをステアリングホイールの操舵角として算出するマイクロコンピュータ43を備えた。
【0072】
ここで、外歯車14及び内歯車15の歯数z1,z2は異なることから、ステアリングシャフト12の回転に伴う外歯車14及び内歯車15の回転量も互いに異なる。そして、外歯車14及び内歯車15の回転角度θa,θbの組み合わせは、外歯車14の回転角度θaが絶対値で0°から、当該外歯車14の単位回転角度である回転角度θaとこのときの内歯車15の回転角度θbとの最小公倍数として求められる所定の回転角度までの間においてすべて異なる。このため、外歯車14の回転角度θaと内歯車15の回転角度θbとの組み合わせは、0°から前記回転角度θa,θbの最小公倍数として求められる所定の回転角度までの範囲内において、ステアリングホイールの操舵角(外歯車14の絶対回転角度θm)に対して固有となる。したがって、外歯車14及び内歯車15の各々の回転角度θa,θbが分かれば、前述した回転角度θa,θbの最小公倍数として求められる所定の回転角度範囲内で外歯車14の絶対回転角度θm、すなわちステアリングホイールの操舵角を絶対値で即時に検出することが可能となる。そして、ステアリングシャフト12に一体回転可能に設けられる外歯車14の回転角度θaを基準として操舵角を求めることにより、外歯車14及び内歯車15の間に存在するバックラッシの操舵角の算出に対する影響を低減させることできる。したがって、検出対象であるステアリングシャフト12、ひいては操舵角の検出精度を向上させることができる。
【0073】
しかも、外歯車14と内歯車15との間にバックラッシδが存在しないと仮定した場合の理想的な回転角度θb1と回転角度θb2との差の絶対値として求められる演算許容誤差δp未満の値となるように、実際のバックラッシδを設定している。このため、回転角度θa,θbの組み合わせが、外歯車14の絶対回転角度θmに対して重複することを確実に回避することができる。すなわち、マイクロコンピュータ43は、バックラッシδの影響を受けることなく内歯車15の回転角度θbを算出可能となる。
【0074】
(2)さらに、回転角度θa,θbを求める際に、第1検出部材21の幅Wa1と第1補助検出部材22の幅Wa2との比、並びに第2検出部材31の幅Wb1と第2補助検出部材32の幅Wb2との比を利用するようにしたことにより、回転角度θa,θbの算出精度が確保される。すなわち、車両走行中の振動等、何らかの原因によりラインセンサ42が傾き、各認識ライン42a〜42dと第1及び第2検出部材21,31とのなす角度が変わることが想定される。この場合には、各認識ライン42a〜42dを通じて検知される第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1の値が変わることから、外歯車14及び内歯車15の回転角度θa,θbを誤検出するおそれがある。
【0075】
この点、第1及び第2補助検出部材22,32の幅Wa2,Wb2が一定であることから、幅Wa1,幅Wa2の比の値、並びに幅Wb1,Wb2の比の値は、各認識ライン42a〜42dの傾き度合いにかかわらず一定となる。したがって、幅Wa1,幅Wa2の比の値、並びに幅Wb1,Wb2の比の値を利用することにより、ラインセンサ42の外歯車14及び内歯車15に対する位置変化の回転角度θa,θbの算出精度に対する影響を除外することができる。ひいては、外歯車14の絶対回転角度θmの算出精度が高められる。
【0076】
(3)第1及び第2検出部材21,31、並びに第1及び第2補助検出部材22,32は誘電体により形成した。そしてこれら誘電体により形成された各領域の幅を検出する検出手段として、静電容量式のラインセンサ42を採用した。ここで、近年では、車載機器にあっては電動化の傾向にある。このような電動化に伴い車両で使用されるモータ等の磁力発生源も増大傾向にある。例えば電動チルト機構のモータ等、ステアリングコラム内にも多数のモータが配設されることが想定される。この場合、従来のような磁気検出式の舵角センサを搭載した場合には、舵角の検出に際してモータマグネット等の影響により舵角の誤検出のおそれが懸念される。この点、本実施の形態で採用した静電容量型のラインセンサ42によれば、外部磁界には影響を受けないので、前述のような磁界発生源の近傍に配設してもその検出精度に影響がでることはない。
【0077】
(4)また、静電容量型のラインセンサ42はごみや埃の影響を受けにくい。このため、ごみや埃を受けやすい車両に好適である。
ちなみに、舵角センサとして、次のような光学式のロータリエンコーダも従来知られている。当該エンコーダは、ステアリングシャフトに貫通状態で装着された回転板を備えてなる。当該回転板において異なる半径の複数の円周上には、異なるパターンのスリット列が設けられている。そして回転板には、スリット列と同数の光センサ(フォトインタラプタ)が複数のスリット列に対応するように配設されている。光センサは、スリット列のスリットの有無(光の透過の有無)に基づいて所定ビットのコードを出力する。スリット列は、当該コードが回転板の1回転中において重複しないように設けられるため、当該エンコーダは当該コードに基づいて、回転板の1回転中(360°以内)の回転角度を絶対値で検出可能となる。このような構成に起因して、光学式のロータリエンコーダは、ごみ等がスリットに付着等すると正確な角度の検出が困難になるおそれがある。本実施の形態では、このようなごみ等による影響はない。
【0078】
(5)また、静電容量型のラインセンサ42からの出力に基づき操舵角を求めるようにしたことにより、舵角センサ11の構成を変えることなく分解能を変更することができる。すなわり、ラインセンサ42の図示しない処理回路の設定等を通じて、検出対象及び搭載対象の仕様等に応じて、検出角度の分解能を高めたり低めたりすることができる。
【0079】
ちなみに、前述した光学式のロータリエンコーダにあっては、角度検出の分解能は1種類に限定される。分解能を調節するためにはスリット円板に設けるスリットの数を変更する等、構成を変更する必要がある。そして、検出する回転板の絶対角の分解能を高めるためには、回転板のスリット列を増やせばよいものの、この場合にはスリット列を増やした分だけ回転板の外径を大きくする必要があり、それに伴い回転角度検出装置の体格が大きくなる。また、スリット列と同数の光センサを設ける必要があることから、角度検出の分解能を高めようとするほど、必要とされる光センサの個数も増大する。
【0080】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には前記第1の実施の形態と同様の構成とされており、外歯車14及び内歯車15の回転角度θa,θbの検出方式を、発光素子と受光素子とを利用した光学検出方式とした点で前記第1の実施の形態と異なる。したがって、前記第1の実施の形態と同様の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0081】
図9(a)に示すように、外歯車14には、その回転中心軸Laに沿う方向へ貫通した6つの第1検出透孔51が形成されている。これら第1検出透孔51は外歯車14の外周縁側において環状をなすように設けられている。6つの第1検出透孔51は、外歯車14の径方向における幅が当該外歯車14の単位回転角度範囲として設定された0°〜60°内において直線的に変化するように形成されている。すなわち、各第1検出透孔51を外歯車14の回転中心軸Laに沿う方向から投影したときの形状は、前記第1の実施の形態の第1検出部材21と同じ形状となる。そして、図3(a),(b)に示される第1検出部材21と同様に、1つの第1検出透孔51は直線に展開したときに直角三角形をなすとともに、当該第1検出透孔51の幅Wa1は外歯車14の回転量に対し比例関係をもって直線的に変化する。また、外歯車14において、各第1検出透孔51の内側には、環状の第1補助透孔52が形成されている。各第1補助透孔52の幅は、外歯車14の全周にわたって一定とされている。すなわち、第1補助透孔52の幅は、外歯車14の回転量に対し常に一定となる。一方、内歯車15にも外歯車14と同様に、6つの第2検出透孔53及び第2補助透孔54が形成されている。
【0082】
図9(b)に示されるように、外歯車14及び内歯車15を間に挟んで、発光素子としての発光ダイオード55及び受光素子としての半導体イメージセンサ56が配設されている。半導体イメージセンサ56としては例えばCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサが採用可能である。また、発光ダイオード55と外歯車14及び内歯車15との間には、板状の遮蔽部材57が配設されている。この遮蔽部材57には外歯車14及び内歯車15の径方向へ延びるスリット57aが形成されている。
【0083】
さて、発光ダイオード55から発せられてスリット57aを通過した線状の光は、さらに外歯車14の第1検出透孔51及び第1補助透孔52、並びに内歯車15の第2検出透孔53及び第2補助透孔54を通過して半導体イメージセンサ56に至る。半導体イメージセンサ56は、第1及び第2検出透孔51,53並びに第1及び第2補助透孔52,54を通じて照射された線状の光の撮影情報Dpを電気信号としてマイクロコンピュータ43へ送る。そして、マイクロコンピュータ43は、前述した第1の実施の形態と同様にして、ステアリングホイールの操舵角を絶対値で求める。
【0084】
すなわち、マイクロコンピュータ43は、撮影情報Dpに基づき第1及び第2検出透孔51,53の幅Wa1,Wb1、並びに第1及び第2補助透孔52,54の幅Wa2,Wb2を求める。そしてマイクロコンピュータ43は、第1検出透孔51の幅Wa1と第1補助透孔52の幅Wa2との比を求め、当該比に基づき外歯車14の単位回転角度範囲である0°〜60°における回転角度θaを求める。また、マイクロコンピュータ43は、第2検出透孔53の幅Wb1と第2補助透孔54の幅Wb2との比を求め、当該比に基づき内歯車15の単位回転角度範囲である0°〜60°における回転角度θbを求める。そして、マイクロコンピュータ43は、これら回転角度θa,θbの組み合わせに基づき、外歯車14の絶対回転角度θmをステアリングホイールの操作角として算出する。
【0085】
したがって、本実施の形態の構成を採用した場合であれ、ステアリングシャフト12に直結された外歯車14の回転角度θaを基準とすることにより、操舵角の算出に際して、外歯車14と内歯車15との間のバックラッシδの影響が低減される。このため、ステアリングホイールの操舵角の検出精度を向上させることができる。
【0086】
ここで、本実施の形態の第1及び第2検出透孔51,53は本発明の第1及び第2検出領域を、同じく第1及び第2補助透孔52,54は本発明の第1及び第2補助検出領域を構成する。また、発光ダイオード55及び遮蔽部材57は、本発明の線状光源を構成する。さらに、半導体イメージセンサ56は、本発明の幅検出手段に相当する。
【0087】
なお、発光ダイオード55及び半導体イメージセンサ56は、第1検出透孔51及び第1補助透孔52、並びに内歯車15の第2検出透孔53及び第2補助透孔54の移動軌跡に対応させて4組の発光ダイオード55及び半導体イメージセンサ56を設けるようにしてもよいし、1組だけ設けるようにしてもよい。また、本実施の形態では、発光素子として発光ダイオード55を一例として挙げたが、例えば線状の光を出射可能とされた線状光源を採用することもできる。この場合、線状の光を外歯車14及び内歯車15に照射するべく設けられた遮蔽部材57を省略することができることから、構成の簡素化が図られる。
【0088】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、ステアリングシャフトと一体的に回転する主動平歯車に単一の従動平歯車を噛合させて、これら2つの平歯車の回転角度に基づいてステアリングシャフトの回転角度を求めるようにした点で前記第1の実施の形態と異なる。
【0089】
すなわち、図10に示すように、ステアリングシャフト12には、主動平歯車61が一体回転可能に外嵌されている。この主動平歯車61にはハウジング13の内部に回転可能に支持された従動平歯車62が噛み合っている。したがって、ステアリングシャフト12の回転に伴い主動平歯車61が回転すると、従動平歯車62は主動平歯車61と反対方向へ回転する。主動平歯車61及び従動平歯車62の歯数は異なっている。例えば主動平歯車61の歯数をm、従動平歯車62の歯数をn(<m)としたとき、主動平歯車61が1回転すると従動平歯車62はm/n回転する。すなわち、ステアリングシャフト12の回転に伴う主動平歯車61及び従動平歯車62の回転量は互いに異なる。そして、主動平歯車61の一方面である検出面61aには、前記第1の実施の形態と同様に、第1検出部材21及び第1補助検出部材22が、また従動平歯車62の一方面である検出面62aには第2検出部材31及び第2補助検出部材32が設けられている。
【0090】
また、図10に二点鎖線で示されるように、主動平歯車61及び従動平歯車62の検出面61a,62aに対向するように、2つのラインセンサ63,64が設けられている。これらラインセンサ63,64は前記第1の実施の形態におけるラインセンサ42と同様の構成とされており、それぞれ複数の認識ラインを備えてなる。2つのラインセンサ63,64は、第1及び第2検出部材21,31の幅Wa1,Wb1、並びに第1及び第2補助検出部材22,32の幅Wa2,Wb2を検出してこれらの情報を含む明暗情報D1,D2を出力する。マイクロコンピュータ43は、2つのラインセンサ63,64からの明暗情報D1,D2に基づき、主動平歯車61及び従動平歯車62の単位角度範囲である0°〜60°内において回転角度θa,θbを求め、これら回転角度θa,θbの組み合わせに基づき主動平歯車61の絶対回転角度θmをステアリングホイールの操舵角として算出する。
【0091】
したがって、本実施の形態の構成を採用した場合であれ、ステアリングシャフト12に直結された主動平歯車61の回転角度を基準とすることにより、操舵角の算出に際して、主動平歯車61と従動平歯車62との間のバックラッシδの影響が低減される。このため、ステアリングホイールの操舵角の検出精度を向上させることができる。
【0092】
ここで、主動平歯車61は本発明の第1歯車に、従動平歯車62は本発明の第2歯車に相当する。また、ラインセンサ63,64は本発明の静電容量センサ及び幅検出手段を構成する。
【0093】
なお、本実施の形態に、前記第2の実施の形態の光学検出方式を適用することも可能である。この場合、主動平歯車61及び従動平歯車62において、第1及び第2検出部材21,31、並びに第1及び第2補助検出部材22,32に対応する部位にはそれらの形状に対応した透孔を形成する。そして、主動平歯車61及び従動平歯車62に対応する2つのラインセンサ63,63に代えて、2つの発光素子及び2つの半導体イメージセンサを主動平歯車61及び従動平歯車62に対応して設ける。発光素子と主動平歯車61との間、及び発光素子と従動平歯車62との間にはスリットを有する遮蔽部材を配設する。
【0094】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・第1及び第3の実施の形態においては、4本の認識ラインを有するラインセンサ42,63,64を採用するようにしたが、例えば1〜3本又は5本以上の認識ラインを有するラインセンサも採用可能である。
【0095】
・第1の実施の形態では、複数の認識ラインを有するラインセンサ42を使用したが、単一の認識ラインを有する複数個のラインセンサを独立して設けるようにしてもよい。この場合、各ラインセンサはそれらの認識ラインが外歯車14及び内歯車15の回転中心軸La,Lbを通る半径方向へ延びる直線上に位置するように配設する。また、第3の実施の形態においても同様である。
【0096】
・第1の実施の形態において、複数個のラインセンサ42を外歯車14及び内歯車15の半径方向及び回転方向において適宜組み合わせて使用することも可能である。複数個のラインセンサ42を、外歯車14及び内歯車15の径方向において組み合わせることにより、製品仕様等に応じて、必要とされる認識ライン長を確保することができる。例えば、第1の実施の形態の2倍の認識ライン長が必要とされる場合には、2つのラインセンサ42を外歯車14及び内歯車の回転方向において組み合わせる。また、複数個のラインセンサ42を外歯車14及び内歯車15の回転方向において組み合わせることにより、製品仕様等に応じて、必要とされる認識ライン数を確保することができる。例えば、8本の認識ラインを設ける必要がある場合には、4本の認識ラインを有するラインセンサ42を外歯車14及び内歯車15の回転方向において2つ組み合わせる。第3の実施の形態のラインセンサ63,64についても同様である。
【0097】
・第1の実施の形態では、単一のラインセンサ42を外歯車14と内歯車15とで共用したが、例えば2つのラインセンサを外歯車14及び内歯車15に対し独立して設けてもよい。この場合、2つのラインセンサはそれらの認識ラインが外歯車14及び内歯車15の回転中心軸La,Lbを通って半径方向へ延びる直線上に位置するように配設する。また、第3の実施の形態では、2つのラインセンサ63,64を主動平歯車61及び従動平歯車62に対応して配設するようにしたが、単一のラインセンサを主動平歯車61と従動平歯車62とで共用することも可能である。この場合、単一のラインセンサは、その認識ラインが主動平歯車61及び従動平歯車62の回転中心軸間を結ぶ直線上に位置するように設ける。
【0098】
・第1の実施の形態では、外歯車14及び内歯車15の同じ側の面に、第1及び第2検出部材21,31並びに第1及び第2補助検出部材22,32を設けるようにしたが、互いに反対側の面に設けるようにしてもよい。この場合、2つのラインセンサを用意して、これらセンサを外歯車14の第1の検出面14a及び内歯車15の第2の検出面15aに対向して配設する。第3の実施の形態における主動平歯車61及び従動平歯車62についても同様である。
【0099】
・第1及び第3の実施の形態における第1及び第2検出部材21,31の形状、並びに第2の実施の形態における第1及び第2検出透孔51,53の形状は適宜変更してもよい。すなわち、第1及び第3の実施の形態における外歯車14及び内歯車15、並びに第2の実施の形態における主動平歯車61及び従動平歯車62の回転に伴い、第1及び第2検出部材21,31の幅、並びに第1及び第2検出透孔51,53の幅がそれぞれ直線的に変化する形状であればよい。例えば、第1及び第2検出部材21,31、並びに第1及び第2検出透孔51,53について、これらを直線上に展開したときの形状がそれぞれ二等辺三角形となるように形成することも可能である。
【0100】
・第1及び第3の実施形態における第1及び第2補助検出部材22,32、並びに第2の実施の形態における第1及び第2補助透孔52,54を省略することも可能である。この場合であれ、第1及び第2検出部材21,31、並びに第1及び第2検出透孔51,53の幅に基づき外歯車14及び内歯車15、並びに主動平歯車61及び従動平歯車62の回転角度を求め、これら回転角度に基づき操舵角を求めることができる。
【0101】
・第1〜第3の実施の形態では、本発明をステアリングホイールの操舵角を検出する舵角センサとして具体化したが、回転軸を含む回転体の回転角度の検出一般に広く適用することも可能である。車両にあっては、例えば自動変速装置のギヤ段を変更する際に運転者に操作されるシフトレバーの操作位置を検出するために使用することもできる。この場合、シフトレバーの操作に伴い回転する軸の回転角度を当該レバーの操作位置として検出する。また、ブレーキペダル及びアクセルペダルの操作量等の検出手段としても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第1の実施の形態の舵角センサの概略構成を分解して示す斜視図。
【図2】同じく外歯車及び内歯車の検出面の正面図。
【図3】(a)は、同じく第1及び第2検出領域並びに第1及び第2補助検出領域を展開した状態を示す模式図、(b),(c)は外歯車及び内歯車の回転角度と第1及び第2検出領域の幅との関係を示すグラフ。
【図4】同じく舵角センサの縦断面図。
【図5】(a)は、ラインセンサの平面図、(b)は、図5(a)の1−1線断面図。
【図6】同じくラインセンサから出力される明暗情報の概略構成を示す模式図。
【図7】(a)は、同じく第1検出領域の幅と外歯車の回転角度との関係を示すグラフ、(b)は、同じく第2検出領域の幅と内歯車の回転角度との関係を示すグラフ、(c)は、同じくステアリングホイールの操舵角、並びに外歯車及び内歯車の回転角度との関係を示すグラフ。
【図8】同じく第1及び第2検出領域並びに第1及び第2補助検出領域のラインセンサに対する相対位置関係を示す模式図。
【図9】(a)は、第2の実施の形態の外歯車及び内歯車の要部斜視図、(b)は、外歯車及び内歯車に設けられた各透孔の幅を検出する発光素子及び受光素子の配置関係を示す概略斜視図。
【図10】第3の実施の形態の主動平歯車及び従動平歯車の噛み合い状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0103】
11…舵角センサ、12…ステアリングシャフト(回転体)、14…外歯車、15…内歯車、21…第1検出部材、22…第1補助検出部材、31…第2検出部材、32…第2補助検出部材、42,63,64…ラインセンサ、42a〜42d…認識ライン、43…マイクロコンピュータ、51…第1検出透孔、52…第1補助透孔、53…第2検出透孔、54…第2補助透孔、55…発光素子、57…遮蔽部材、57a…スリット、56…半導体イメージセンサ、61…主動平歯車、62…従動平歯車、La,Lb…回転中心軸、Wa1,Wa2,Wb1,Wb2…幅、z1,z2…歯数、θa,θb…回転角度、θm…絶対回転角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転角度を求める回転角度検出装置において、
外周面に歯形が形成されるとともに前記回転体と一体回転可能に設けられる第1歯車と、
内周面に歯形が形成されるとともに前記第1歯車の外周側に配設されて噛合する前記第1歯車と歯数の異なる第2歯車と、
前記第1歯車の回転角度を求めるべく当該第1歯車の回転中心軸に沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第1歯車の径方向における幅が予め設定された単位回転角度範囲毎に直線的に変化する複数の第1検出領域と、
前記第2歯車の回転角度を求めるべく当該第2歯車の回転中心軸に沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第2歯車の径方向における幅が予め設定された単位回転角度範囲毎に直線的に変化する複数の第2検出領域と、
前記第1及び第2歯車の第1及び第2検出領域に対し相対変位可能に設けられるとともに当該第1及び第2歯車の回転に伴い相対的に変化する当該第1及び第2検出領域の幅を検出してこれら幅情報を含む検出信号を出力する幅検出手段と、
前記検出信号に含まれる第1及び第2検出領域の幅情報に基づき前記第1及び第2歯車の単位回転角度範囲内における回転角度を求めるとともに、これら求められた第1及び第2歯車の回転角度の組み合わせに基づき当該第1歯車の回転角度を基準として前記回転体の回転角度を絶対値で求める演算手段と、を備えてなる回転角度検出装置。
【請求項2】
回転体の回転角度を求める回転角度検出装置において、
前記回転体と一体回転する第1歯車と、
前記第1歯車と歯数が異なるとともに第1歯車に噛合する第2歯車と、
前記第1歯車の回転角度を求めるべく当該第1歯車の回転中心軸に沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第1歯車の径方向における幅が予め設定された単位回転角度範囲毎に直線的に変化する複数の第1検出領域と、
前記第2歯車の回転角度を求めるべく当該第2歯車の回転中心軸に沿う方向において互いに反対側に位置する2つの側面のうちの一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第2歯車の径方向における幅が予め設定された単位回転角度範囲毎に直線的に変化する複数の第2検出領域と、
前記第1及び第2歯車の第1及び第2検出領域に対し相対変位可能に設けられるとともに当該第1及び第2歯車の回転に伴い相対的に変化する当該第1及び第2検出領域の幅を検出してこれら幅情報を含む検出信号を出力する幅検出手段と、
前記検出信号に含まれる第1及び第2検出領域の幅情報に基づき前記第1及び第2歯車の単位回転角度範囲内における回転角度を求めるとともに、これら求められた第1及び第2歯車の回転角度の組み合わせに基づき当該第1歯車の回転角度を基準として前記回転体の回転角度を絶対値で求める演算手段と、を備えてなる回転角度検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転角度検出装置において、
前記第1歯車は、外周面に歯形が形成されるとともに前記回転体と一体回転可能に設けられる外歯車とし、
前記第2歯車は、内周面に歯形が形成されるとともに前記外歯車の外周側に配設されて噛合する内歯車とした回転角度検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の回転角度検出装置において、
前記第1歯車は、外周面に歯形が形成されるとともに前記回転体と一体回転可能に設けられる主動平歯車とし、
前記第2歯車は、外周面に歯形が形成されるとともに前記主動平歯車の外周側に配設されて噛合する従動平歯車とした回転角度検出装置。
【請求項5】
前記第1歯車において前記第1検出領域が形成された一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第1歯車の径方向における幅が一定となる第1補助検出領域と、
前記第2歯車において前記第2検出領域が形成された一方面の全周にわたって設けられるとともに当該第2歯車の径方向における幅が一定となる第2補助検出領域と、をさらに備え、
前記幅検出手段は、前記第1及び第2補助検出領域に対して相対変位可能に設けられるとともに前記第1及び第2歯車の回転に伴い前記第1及び第2補助検出領域の幅を検出してこれら幅情報を前記検出信号に含めて出力するようにし、
前記演算手段は、前記検出信号に含まれる前記第1検出領域の幅情報と同じく前記第1補助検出領域の幅情報との第1の比、並びに前記検出信号に含まれる前記第2検出領域の幅情報と同じく前記第2補助検出領域の幅情報との第2の比を求め、これら第1及び第2の比の組み合わせに基づき前記第1及び第2歯車の単位回転角度範囲内における回転角度を求めるとともに、これら求められた第1及び第2歯車の回転角度の組み合わせに基づき当該第1歯車の回転角度を基準として前記回転体の回転角度を絶対値で求める請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の回転角度検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の回転角度検出装置において、
前記第1及び第2検出領域並びに前記第1及び第2補助検出領域は誘電体により形成し、また、前記幅検出手段は、前記第1及び第2歯車の径方向へ延びる単数又は複数の認識ラインを備えるとともに当該認識ラインと前記第1及び第2検出領域並びに前記第1及び第2補助検出領域との間に生じる静電容量を第1及び第2検出領域並びに前記第1及び第2補助検出領域の幅情報として検出してこれら検出された幅情報を前記検出信号として出力する静電容量センサとした回転角度検出装置。
【請求項7】
請求項5に記載の回転角度検出装置において、
前記第1及び第2検出領域並びに前記第1及び第2補助検出領域は、前記第1及び第2歯車の回転中心軸方向へ貫通して形成された第1及び第2検出透孔並びに第1及び第2補助透孔とし、
前記検出手段は、第1及び第2歯車を間に挟んで対向配置される線状光源から発せられて前記第1及び第2検出透孔並びに前記第1及び第2補助透孔を通じて入射する線状光を当該第1及び第2検出透孔並びに前記第1及び第2補助透孔の幅情報として検出してこれら検出された幅情報を前記検出信号として出力する半導体イメージセンサとした回転角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−47547(P2009−47547A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213817(P2007−213817)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】