説明

圧電アクチュエーターの制御装置、圧電アクチュエーター装置及び印刷装置

【課題】圧電アクチュエーターの高出力での駆動を安定して行うことができる圧電アクチュエーターの制御装置を提供する。
【解決手段】圧電素子に所定の周波数の駆動信号を供給する駆動手段310と、圧電素子の機械的な変位を検出する変位検出部330と、変位信号V1,V2を逐次記憶する記憶部340と、変位検出部330が検出した変位及び記憶部340が記憶している変位に基づき駆動手段310を介して駆動信号の周波数を制御する駆動周波数制御部320とを有し、駆動周波数制御部320は、駆動信号の周波数をスイープさせ、圧電アクチュエーターの最大変位を検出するとともに、最大変位に基づき定められる目標変位に対応する駆動周波数に向けて周波数をスイープさせる。目標変位に対応する駆動周波数に達した後、駆動信号の周波数を変動させることで変位信号が目標変位に追従するように周波数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電アクチュエーターの制御装置、圧電アクチュエーター装置及び印刷装置に関し、特に圧電アクチュエーターの高出力駆動を安定して行わせる場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
圧電アクチュエーターは、電気・機械エネルギーの変換効率が高く、重量当たりの出力が高い、すなわち小型、軽量であるにも関わらず高出力が得られる。かかる圧電アクチュエーターは、圧電素子を具備するアクチュエーター部によって回転軸を回転駆動させるものである。ここで、アクチュエーター部は2枚の電極間に圧電体層を挟持させて形成された圧電素子と、この圧電素子がその電極の一方側を介して一体的に固着された振動部材とを備えている。また、アクチュエーター部は、その圧電素子に所定の周波数の電圧信号である駆動信号を印加して伸縮させることにより振動部材が縦振動及び該縦振動にほぼ直交する方向の振動である縦振動で励起される結果、前記当接部の先端が円乃至楕円軌道を描いて移動される。かくして当接部の先端が当接している回転軸はその中心を回転中心として回転される。
【0003】
この種の圧電アクチュエーターの中には振動部材の変位を検出するための検出用電極を有するものがある。この検出用電極は圧電体層が歪む(変位する)ことにより発生する電圧を検出するもので、検出電圧を介して圧電体層乃至振動部材の変位を検出する(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。このように、振動部材の変位を検出することにより圧電アクチュエーターの高出力を得るための制御を行っている。すなわち、特許文献1及び特許文献2に示す場合には、振動部材の変位をリアルタイムで検出し、この検出結果を圧電素子の駆動信号の周波数に反映させることにより、常に振動部材の縦振動乃至屈曲振動の共振周波数とほぼ同じ駆動周波数で圧電素子を駆動させ、このことにより圧電アクチュエーターとして高出力を得ている。
【0004】
これは圧電アクチュエーターの共振周波数が駆動中の条件等により経時的に変動するものである点に鑑み、共振周波数の変動に追従して駆動周波数を追従させるための制御である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−268953号公報
【特許文献2】特開2002−291264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に示す場合のように、単に共振周波数に追従させる周波数制御のみを行った場合には高出力駆動の充分な安定化を図ることができないことが分ってきた。すなわち、圧電アクチュエーターの共振周波数近傍での駆動は不安定なものとなり易く、共振点からのずれ具合によっては停止してしまうことさえある。したがって、可及的な高出力を得るためには共振点近傍での駆動が不可欠ではあるが、かかる駆動制御を行う場合に同時に駆動の安定化を図る工夫をする必要がある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、圧電アクチュエーターの高出力での駆動を安定して行うことができる圧電アクチュエーターの制御装置、圧電アクチュエーター装置及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の態様は、圧電体層と、前記圧電体層に振動を励起する電極と、前記圧電体層の変位を検出する検出用電極と、前記振動が励起されることにより振動する当接部が設けられた振動部材と、を備えた圧電アクチュエーターを制御する制御装置であって、前記圧電アクチュエーターに所定の周波数の駆動信号を供給する駆動手段と、前記検出用電極を介して変位信号に変換して検出する変位検出手段と、前記変位検出手段が検出した変位を記憶する記憶手段と、前記変位検出手段が検出した変位及び前記記憶手段が記憶している変位に基づき前記駆動手段を介して前記周波数を制御する駆動周波数制御手段と、を有し、前記駆動周波数制御手段は、前記駆動信号の周波数を所定の周波数範囲でスイープさせ前記圧電アクチュエーターの最大変位を検出し、前記最大変位に基づき定めた目標変位に対応する駆動周波数に向けて所定の起動周波数から低周波数域方向に前記駆動信号の周波数をスイープさせ、前記目標変位に対応する前記駆動周波数に達した後、前記駆動周波数を含む所定の振り幅で前記駆動信号の周波数を変動させ前記変位信号がより前記目標変位に近い方に前記振り幅の中心周波数をシフトさせ、シフト後の新たな中心周波数を基準として前記振り幅で前記周波数を変動させ前記変位信号がより前記目標変位に近い方にさらに前記振り幅の中心周波数をシフトさせる操作を繰り返すことを特徴とする圧電アクチュエーターの制御装置にある。
【0009】
本態様によれば、アクチュエーター部の圧電体層の変位に基づく電圧を変位信号として検出するようになっているので、変位検出センサー部分の小形軽量化が可能となる。さらに、前記変位信号に基づき所定の目標変位が維持されるようにアクチュエーター部の駆動信号の周波数を制御しており、しかも前記目標変位は圧電アクチュエーター装置としての安定的な駆動が維持されるとともに可及的に高出力を取り出し得る点に定めることができるので、圧電アクチュエーター装置の共振周波数に基づく所定の高出力を安定して得ることができる。また、所定の起動周波数から目標変位を与える駆動周波数へのスイープは駆動信号の周波数を高周波数域から低周波数域に向けて周波数を変化させることにより行っているので、この間の圧電アクチュエーターの駆動の安定性も確保され、良好に目標変位の設定を行うことができる。
【0010】
ここで、前記目標変位に向けての前記駆動信号の周波数のスイープは低周波数側に向けて所定のステップで段階的に周波数を変化させることにより行うことができる。この場合には、圧電アクチュエーターの停止等の虞がなく、所定のスイープ処理を良好に行うことができる。また、前記目標変位に向けての前記駆動信号の周波数のスイープは低周波数側の目標変位を与える目標周波数に向けて一気に変化させることにより行っても良い。この場合には、目標変位迄のスイープを迅速に行うことができる。さらに、電源を遮断する迄の初回以降の前記圧電アクチュエーターの駆動に際しては、前記記憶手段が記憶している前回停止時の前記目標変位に基づき決定される高周波数域の所定の駆動周波数から前記駆動信号の周波数をスイープさせることができる。この場合には、最大変位を検出するための周波数のスイープを省略することができるので、その分、合理的且つ迅速に目標変位に到達させることができる。
【0011】
前記目標変位を与える初期の前記駆動周波数と前記振り幅の制御に伴うシフトの結果移動された新たな駆動周波数との差が予め定めた設定値を超えた場合には、圧電アクチュエーターの駆動が停止されるように制御しても良い。この場合には、アクチュエーター部の温度が上昇し、圧電素子を振動部材に貼着している接着剤が溶融して充分な接着力を確保できなくなっている等、異常な事態であると判断されるので、かかる駆動の強制終了により異常事態の発生に伴う圧電素子の振動部材からの剥離等を未然に防止することができる。
【0012】
本発明の他の態様は上述の如き圧電アクチュエーターの制御装置と、圧電アクチュエーターとを有することを特徴とする圧電アクチュエーター装置にある。
本態様によれば、高出力の駆動力を安定して得ることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、上述の如き圧電アクチュエーターを具備することを特徴とする印刷装置にある。
本態様によれば印刷装置における紙送り等、高出力が要求される用途に的確に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る圧電アクチュエーターの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る圧電アクチュエーターの平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る圧電アクチュエーターの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る圧電アクチュエーター装置のブロック線図である。
【図5】圧電アクチュエーター装置の駆動信号の波形を示す波形図である。
【図6】圧電アクチュエーターのアクチュエーター部の動作の態様を示す説明図である。
【図7】圧電アクチュエーターのアクチュエーター部の楕円軌道を示す説明図である。
【図8】駆動周波数制御部における処理を示すフローチャートである。
【図9】駆動信号の周波数に対する変位特性を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態に係る印刷装置を示す概略斜視図である。
【図11】図10に示す印刷装置の要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
圧電アクチュエーター装置は、アクチュエーター部とこれに駆動される回転軸とを有する圧電アクチュエーター及びこの圧電アクチュエーターの駆動を制御する制御装置を具備する。
【0016】
図1は、圧電アクチュエーターの分解斜視図であり、図2はその平面図であり、図3は図2のA−A′断面図である。これらの図に示すように、圧電アクチュエーター1を構成するアクチュエーター部10は、振動部材20と、振動部材20の両面にそれぞれ接着された圧電素子30とを具備する。
【0017】
振動部材20の両面にそれぞれ設けられた圧電素子30は、圧電体層40と、圧電体層40の振動部材20側に設けられた第1電極50と、圧電体層40の第1電極50とは反対側に設けられた第2電極60とを有する。
【0018】
圧電体層40は、電気機械変換作用を示す圧電材料、特に圧電材料の中でも一般式ABOで示されるペロブスカイト構造を有する金属酸化物からなる。圧電体層40としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O)、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ビスマスナトリウム(Bi0.5Na0.5TiO)、チタン酸ビスマスカリウム(Bi0.50.5TiO)、ビスマスフェライト(BiFeO)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸ナトリウム(NaTaO)、タンタル酸カリウム(KTaO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、チタン酸ビスマス(BiTiO)およびこれらの混晶系等を用いることができる。もちろん、本実施形態の圧電体層40は、上記した材料に限定されるものではない。
【0019】
第1電極50は、圧電体層40の振動部材20側の面に亘って連続して設けられて、圧電素子30の共通電極となっている。
【0020】
第2電極60は、圧電体層40の第1電極50とは反対側に設けられており、溝部70によって互いに電気的に隔離されて面内方向で複数に分割されている。
【0021】
第2電極60を分割する溝部70は、圧電素子30の幅(短手方向)をほぼ三等分するように形成された第1溝部71と、第1溝部71によって分割された3つの電極のうち短手方向両側の電極を長手方向でほぼ二等分するように形成された第2溝部72とからなる。第2電極60は、これら第1溝部71及び第2溝部72からなる溝部70によって、短手方向中央部に長手方向に亘って設けられた縦振動用電極部61と、この縦振動用電極部61の短手方向両側に、縦振動用電極部61を挟んで対角となるように配置されて対をなす2組の屈曲振動用電極部62、63との合計5つに分割されている。ここで、圧電素子30は、第2電極60の縦振動用電極部61が設けられた領域が、圧電素子30の長手方向の縦振動を励起する縦振動励起領域41となっている。これに対して、縦振動励起領域41の短手方向両側の屈曲振動用電極部62、63が設けられた領域が、それぞれ圧電素子30の短手方向に屈曲振動を励起する屈曲振動励起領域42、43となっている。このため、第2電極60は、分割されて各領域を個別に駆動するための個別電極として機能する。
【0022】
さらに、本形態におけるアクチュエーター部10は変位検出用の検出用電極95,96を有する。検出用電極95,96は圧電素子30の伸縮に伴い変形する振動部材20の変位量に比例した電圧を変位信号として出力する。すなわち、圧電体層40及び第1電極50と協働して圧電体層40の機械的な変位を電気信号に変換する機械/電気変換素子として機能させるためのものである。このため検出用電極95,96は、第1屈曲振動用電極部62及び第2屈曲振動用電極部63の一部を切り欠き、溝部97により第1屈曲振動用電極部62及び第2屈曲振動用電極部63から分離して圧電体層40に貼着されている。
【0023】
このような圧電素子30は、第1電極50側が振動部材20に接合されている。ここで、振動部材20は、ステンレス鋼(SUS)等の金属や樹脂材料で形成された板状部材からなる。本形態では、振動部材20を導電性を有するステンレス鋼で形成し、2つの圧電素子30の第1電極50同士は、振動部材20を介して電気的に導通される。ちなみに、第1電極50と振動部材20とを絶縁性の接着剤で接着したとしても、第1電極50と振動部材20とを互いに押圧した状態で接着することで両者を互いに電気的に導通することができる。すなわち、本実施形態の振動部材20は、2つの圧電素子30の第1電極50同士を導通させる共通電極としても機能する。
【0024】
また、図1に示すように、振動部材20は、圧電素子30の第1電極50側と同じ表面形状を有すると共に、長手方向の一端部側に圧電素子30よりも突出するように延設された当接部21を有する。振動部材20の圧電素子30の長手方向中央部には、圧電素子30の短手方向両側に向かって延設された一対の腕部22を有する。この腕部22には、厚さ方向に貫通する貫通孔23が設けられており、貫通孔23を挿通させたねじ部材86を介して詳しくは後述する保持部材81に固定される。すなわち、アクチュエーター部10は、振動部材20の腕部22が保持部材81に固定されることで、圧電素子30は保持部材81に対して腕部22を基点として縦振動及び屈曲振動が可能となるように保持される。
【0025】
アクチュエーター部10に搭載された圧電素子30の各電極(第1電極50及び第2電極60)には、圧電素子30を駆動するための配線及び変位検出用の配線が接続されている。
【0026】
図3に示すように、第1電極50は振動部材20に電気的に接続されているため、図2に示すように、共通配線90は振動部材20を介して第1電極50に電気的に接続される。
【0027】
また、第2電極60を構成する縦振動用電極部61と、第1及び第2屈曲振動用電極部62、63とには、図2に示すように、それぞれ縦振動用個別配線91と、2本の屈曲振動用個別配線92、93との合計3本の個別配線が接続されている。具体的には、共通配線90は、アクチュエーター部10の振動部材20の腕部22に接続されている。これにより、共通配線90は、振動部材20を介して第1電極50に電気的に接続されている。
【0028】
また、縦振動用個別配線91は、第2電極60の縦振動用電極部61の長手方向中央部に接続されている。また、2本の屈曲振動用個別配線92、93は、第2電極60の第1屈曲振動用電極部62の長手方向中央部に接続されている。そして、縦振動用電極部61を挟んで設けられた4つの屈曲振動用電極部は、対角に配置された電極同士を2本の導通配線94で接続することで、対角で組をなす2組の第1屈曲振動用電極部62及び第2屈曲振動用電極部63が構成される。この2本の導通配線94は、たすき掛けするように配置されている。なお、縦振動用個別配線91及び屈曲振動用個別配線92、93は、それぞれ圧電素子30の縦振動及び屈曲振動における基点となる長手方向の中央部に接続されることで、個別配線91、92、93の断線や個別配線91、92、93による圧電素子30への変位の阻害を抑制している。
【0029】
ちなみに、本形態では、振動部材20の両面に圧電素子30が設けられているため、振動部材20の両面の圧電素子30の各第2電極60に個別配線91、92、93をそれぞれ接続するようにしてもよく、また、振動部材20の両面の圧電素子30の縦振動用電極部61同士と、屈曲振動用電極部62(63)同士とを別の配線等で互いに電気的に接続するようにして、個別配線91、92、93の数を減少させるようにしてもよい。
【0030】
検出用電極95,96には振動部材20の変位を電圧信号として取り出すための配線98,99が接続されている。
【0031】
一方、圧電アクチュエーター1には、装置本体2に軸3Aを回転中心として回転する回転軸3が設けられている。そして、この回転軸3にアクチュエーター部10の当接部21を当接させ、駆動波形を印加することで回転軸3が回転される。
【0032】
さらに、圧電アクチュエーター1には、アクチュエーター部10を回転軸3方向に向かって所定の圧力で押圧する付勢手段80が設けられている。
【0033】
付勢手段80は、アクチュエーター部10を保持する保持部材81と、保持部材81に一端が固定されたコイルばね等のばね部材82と、ばね部材82の他端に当接すると共に装置本体2に固定された支持ピン83とを具備する。
【0034】
保持部材81は、アクチュエーター部10の腕部22が固定される一対の固定部84と、固定部84の間に一体的に設けられて装置本体2に対してスライド移動可能に支持されるスライド部85とを具備する。固定部84には、腕部22の貫通孔23に対応して、ねじ部材86が螺合される雌ねじ部87が形成されている。この雌ねじ部87に腕部22の貫通孔23を挿通したねじ部材86を螺合させることで、アクチュエーター部10は保持部材81に保持される。
【0035】
スライド部85には、厚さ方向に貫通し、且つスライド方向に延設された長孔である2つのスライド孔88が設けられている。そして、各スライド孔88に挿通されて装置本体2に固定されたスライドピン89によってスライド部85は装置本体2に対してスライド移動可能に支持されている。
【0036】
ばね部材82は、コイルばねからなり、固定部84に一端が固定されると共に、装置本体2に固定された支持ピン83の側面に他端が当接するように配置されている。また、ばね部材82は、スライド部85のスライド方向に沿って配置されている。このような、ばね部材82は、アクチュエーター部10を装置本体2に対して回転軸3に向かって付勢する。
【0037】
なお、本実施形態では、ばね部材82としてコイルばねを用いたが、ばね部材82は特にこれに限定されず、例えば、板ばね等を用いるようにしてもよい。
【0038】
このような付勢手段80によって、アクチュエーター部10は、圧電素子30の長手方向(縦振動方向)が回転軸3の軸中心となるように、所定の圧力で回転軸3に押圧される。すなわち、本実施形態のアクチュエーター部10は、圧電素子30の長手方向が回転軸3の径方向になるように配置され、回転軸3の径方向に向かってスライド移動可能に設けられている。したがって、アクチュエーター部10は、圧電素子30の長手方向が回転軸3の径方向となるように押圧される。
【0039】
そして、上述のように、付勢手段80によってアクチュエーター部10の当接部21を回転軸3に押圧しながら、圧電素子30に縦振動及び屈曲振動を行わせて当接部21を当接させ、回転軸3を回転駆動することができる。
【0040】
図4は本形態に係る圧電アクチュエーター装置を示すブロック線図である。同図に示すように、圧電アクチュエーター装置Iは、上述の圧電アクチュエーター1に、この圧電アクチュエーター1の駆動を制御する制御装置300を組み合わせたものである。ここで、制御装置300は、駆動信号を生成して圧電アクチュエーター1を駆動する駆動手段310、駆動手段310が生成する駆動信号の周波数を制御する駆動周波数制御部320、アクチュエーター部10の変位を検出する変位検出部330及びアクチュエーター部10の変位データが記憶されている記憶部340を具備する。なお、図4中、図1乃至図3と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0041】
駆動手段310は、駆動信号生成回路311と、位相調整回路312と、位相反転回路313と、縦振動用電極部61、第1屈曲振動用電極部62及び第2屈曲振動用電極部63にそれぞれ接続された増幅回路314とを具備する。
【0042】
駆動信号生成回路311は、所定周波数の交流電圧であるアクチュエーター部10の駆動信号を生成すると共に、駆動周波数制御部320からの指令によって出力する駆動信号の周波数を変更し得るように構成してある。具体的には、入力電圧によって出力周波数を変更させることができる電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator:VCO)で好適に構成することができる。駆動信号生成回路311の出力である駆動信号は、増幅回路314によって電力増幅されて圧電素子30に供給される。もちろん、駆動信号生成回路311は、電圧制御発振器(VCO)に限定されず、例えば、デジタル信号として出力し、その出力をDAコンバーターでアナログ信号化した後、フィルターで必要な周波数帯域以外を除去するデジタル回路等であってもよい。なお、本形態の駆動信号は、共通電極である第1電極50を基準電位(本実施形態では0V)として、個別電極である第2電極60に印加される。さらに詳言すると、駆動信号生成回路311の出力である駆動信号は、図5に示すように、圧電素子30の縦振動用電極部61に基準となる駆動信号400として印加される。また、駆動信号生成回路311からの出力は、位相調整回路312に入力される。位相調整回路312は、駆動信号生成回路311から出力された駆動信号400の位相を調整する機能を有する。位相調整回路312は、アクチュエーター部10に縦振動を行わせる基準となる駆動信号400に対し、例えば、図5に示すように、位相が90度遅れた屈曲振動を行わせる駆動信号401を生成する。位相調整回路312によって生成された駆動信号401は、例えば、圧電素子30の第1屈曲振動用電極部62に印加される。
【0043】
また、位相調整回路312によって位相が調整された駆動信号401は、位相反転回路313に入力される。位相反転回路313は、例えば、インバーター回路で構成され、位相調整回路312から出力された駆動信号401に対して位相が180度反転した駆動信号402を生成する。位相反転回路313によって生成された駆動信号402は、第2屈曲振動用電極部63に印加される。すなわち、基本的には、圧電素子30の縦振動用電極部61には、基準となる駆動信号400が印加され、第1屈曲振動用電極部62には、基準となる駆動信号400に対して90度位相を遅らせた駆動信号401が印加される。また、圧電素子30の第2屈曲振動用電極部63には、第1屈曲振動用電極部62に印加される駆動信号401に対して180度反転した駆動信号402が印加される。
【0044】
かかる駆動信号400,401,402により駆動されるアクチュエーター部10の基本動作を図6及び図7を追加して説明する。なお、図6及び図7は、アクチュエーター部の動作を示す平面図である。
【0045】
制御装置300から出力された駆動信号400が圧電素子30の縦振動用電極部61に供給されると、図6(a)に示すように、アクチュエーター部10は振動部材20の面方向において、縦振動励起領域41が縦方向(長手方向)に伸張・収縮されて長手方向に縦振動される。
【0046】
同時に、互いに位相が反転された2つの屈曲振動用の駆動信号401、402が、圧電素子30の第1屈曲振動用電極部62及び第2屈曲振動用電極部63にそれぞれ供給される。この結果、屈曲振動励起領域42、43が伸張・収縮されてアクチュエーター部10が屈曲駆動される。
【0047】
具体的には、圧電素子30の短手方向で対角となる一方の組の屈曲振動励起領域42を伸張させると同時に対角となる他方の一対の屈曲振動励起領域43を収縮させる。これにより、図6(b)に示すように圧電素子30をS字状に変形させる。また、伸張していた屈曲振動励起領域42を収縮させると同時に収縮していた屈曲振動励起領域43を伸張させることで、図6(c)に示すように、圧電素子30を逆S字状に屈曲させる。この図6(b)及び図6(c)に示す屈曲変形を交互に繰り返させることで、アクチュエーター部10ではS字状及び逆S字状の変形が交互に繰り返される。
【0048】
そして、上述のように、縦振動用電極部61に印加する駆動信号400に対して、屈曲振動用の駆動信号401、402は、位相が90度遅れているため、アクチュエーター部10の長手方向一端部に設けられた当接部21は、図7に示すように、楕円軌道を描くように回転駆動する。具体的には、圧電素子30に、縦方向(長手方向)の伸張、S字状の屈曲、縦方向の収縮、逆S字状の屈曲の変形を順次繰り返し行わせることで、当接部21を振動部材20の面内において時計方向に楕円軌道を描くように回転駆動させることができる。
【0049】
また、圧電素子30に変形を行わせる際に、屈曲の順番を入れ替えることで、当接部21を振動部材20の面内において反時計方向に楕円軌道を描くように回転駆動させることができる。すなわち、縦振動用の駆動信号400に対して、屈曲振動用の駆動波形の位相を90度進めるようにすればよい。このように、屈曲振動の駆動信号を、縦振動用の駆動信号400に対して+90度または−90度位相をずらすことにより、当接部21が描く楕円軌道の方向を正逆反転させることができる。これにより回転軸3の回転方向を制御することができる。なお、位相調整回路312による位相のズレを調整することで、当接部21の軌道を真円軌道にすることも、楕円軌道にすることもできるため、位相調整回路312による位相の調整は、±90度に限定されるものではない。
【0050】
また、本形態では、振動部材20の両面にそれぞれ圧電素子30が設けられているが、2つの圧電素子30の各縦振動励起領域41及び屈曲振動励起領域42、43は、アクチュエーター部10を一方の圧電素子30の第2電極60側から平面視した際に重なるように配置されており、平面視した際に重なる領域において同じ方向の伸張・収縮を行わせることで、振動部材20は面内方向で変形される。
【0051】
本形態に係る圧電アクチュエーター装置Iの高出力駆動を実現するため、制御装置300は、前述の如く駆動周波数制御部320、変位検出部330及び記憶部340を具備する。ここで、図4に示すように、変位検出部330は、検出用電極95,96で検出し、減衰回路351,352で適正なレベルに減衰させた電圧信号である変位信号をA/D変換することによりデジタル信号としての変位信号V1,V2を生成する。この変位信号V1,V2はアクチュエーター部10の変位を表すデータとして駆動周波数制御部320に供給される。駆動周波数制御部320はこの変位信号V1,V2とこの変位を与える駆動信号の周波数とを対応させて記憶部340に記憶させる。したがって、記憶部340にはアクチュエーター部10の駆動に伴う振動部材20の変位、具体的には当接部21の変位を表す電圧がこれを与える周波数と対応付けられた状態で逐次記憶される。また、記憶部340には駆動周波数制御部320が駆動信号生成回路311に対して行う駆動信号の周波数の制御に必要なデータ、例えば駆動信号の周波数の初期値,スイープ幅,ステップ時間、振り幅(後述する)等が記憶されている。
【0052】
駆動周波数制御部320は、圧電アクチュエーター1の高出力駆動を実現すべく、変位検出部330が検出した変位及び記憶部340が記憶している変位データに基づき駆動信号生成回路311の出力である駆動信号の周波数を、アクチュエーター部10の駆動の安定性を確保しつつ、圧電アクチュエーター1の共振周波数の変動に追従させて制御する。具体的には、図8に例示される処理を行う。
【0053】
図8は駆動周波数制御部320における処理を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず当該圧電アクチュエーター装置Iの電源が投入(ステップST1)されると待機状態(ステップST2)となる。かかる状態で当該圧電アクチュエーター装置Iの駆動の開始信号が入力(ステップST3)されると前回の起動時の条件(駆動周波数)を記憶部340から読み出す(ステップST4)。なお、圧電アクチュエーター装置Iの初回起動の場合は記憶部340に記憶させてある初期設定周波数を読み出してこれを用いる。
【0054】
次に、任意の周波数範囲(例えば200kHz〜80kHz)を任意のステップでスイープしつつ駆動信号生成回路311の出力である駆動信号の周波数を制御する。この結果、前記周波数範囲をスイープされる駆動信号でアクチュエーター部10が駆動され、同時に検出用電極95,96及び変位検出部330を介してアクチュエーター部10の変位量が電圧である変位信号V1,V2として検出される。かくして、駆動信号の周波数に対するアクチュエーター部10の変位特性(変位電圧特性)を得る(ステップST5)。ここで、周波数は高周波数域から低周波数域に向けてスイープするのが望ましい。高周波数域から低周波数域に向けてアクチュエーター部10の変位を徐々に変化させて円滑に共振点に向かわせることができるからである。
【0055】
かかるステップST5で得られる変位特性の一例を図9に示す。同図は、この場合のアクチュエーター部10の変位が高周波数域から低周波数域に向けて徐々に増大し、共振周波数でピークに達した後、急激に減少し、或る周波数以下では停止してしまうことを示している。なお、かかる変位特性を表すデータは記憶部340に記憶される。
【0056】
ステップST5で得られ、記憶部340に記憶されている変位特性を表すデータから最大変位を表す変位信号V1,V2の最大値Vmaxを求める(ステップST6)とともに、最大値Vmaxに所定の減衰率(例えば、0.8)を乗じて目標変位Vt(図9参照)を設定する(ステップST7)。
【0057】
その後、共振周波数(最大値Vmaxを与える周波数)よりも高周波数域の所定の起動周波数Ftからスタートさせ、狙いの目標変位Vtを与える駆動周波数Fdに向けて駆動信号の周波数をスイープさせる(ステップST8)。これは変位検出部330が検出する変位信号V1,V2の電圧レベルを参照しながら行う。また、かかるスイープは高周波数域から低周波数域に向けて行うことが肝要である。低周波数域から高周波数域にスイープさせた場合には、図9に示す変位特性からも推測される通り、圧電アクチュエーター1が円滑に起動されない事態が懸念されるからである。
【0058】
駆動信号の周波数が駆動周波数Fdに達した後、任意の振り幅で周波数を変化させ、変位信号V1,V2の電圧レベルがより目標変位Vtに近い方に前記振り幅の中心周波数をシフトさせるとともに、シフト後の周波数を中心として前記振り幅で周波数を同様に変化させる。同様の動作を停止信号が入力されるまで繰り返させる(ステップST9)。さらに詳言すると、前記振り幅における最大周波数での変位信号V1,V2の平均レベルを演算するとともに、最低周波数での変位信号V1,V2の平均レベルを演算し、その後両者を比較することにより平均レベルが目標変位Vtにより近い方に前記振り幅の中心周波数をシフトさせる。
【0059】
かかる制御中に、予め定めておいた駆動周波数Fd′と目標変位Vtにおける初期の駆動周波数Fdとの差の絶対値が任意の設定値Vrefを超えて大きくなった場合(ステップST10;Yes)には圧電アクチュエーター1の駆動を強制的に終了させて待機状態とする。かかる場合は、アクチュエーター部10の温度が上昇し、圧電素子30を振動部材20に貼着している接着剤が溶融して充分な接着力を確保できなくなっている等、異常な事態であると判断されるからである。かかる駆動の強制終了により異常事態の発生に伴う圧電素子30の振動部材20からの剥離等を未然に防止する。
【0060】
また、検出信号が表す変位が目標変位Vtに対して大きく低下し、任意の他の設定値Vrefを超えて低下した場合(ステップST11;Yes)も同様に強制停止させて待機状態とする。この場合は、圧電素子30の振動部材20からの剥離等、重篤な故障が発生している可能性が高く、これに対処させるためである。
【0061】
停止信号が入力された場合(ステップST12)、現在の駆動条件、すなわち駆動周波数等を記憶部340に書き込ませる(ステップST13)。その後、駆動信号生成回路311を停止させて待機状態とする(ステップST14)。
【0062】
かかる駆動信号の周波数の一連の制御を行うことで共振周波数の変動に追従させて駆動信号の周波数をシフトさせることができ、目標変位Vtでの高出力駆動を安定して行わせることができる。ちなみに、圧電アクチュエーター1の共振周波数は、駆動時の熱、気圧の変化、圧電アクチュエーター1の各部の経時的な磨耗等により変動する。したがって、共振周波数は種々の複合した原因により変動し易く、高出力駆動を実現するためには、共振周波数の変動に追従させて駆動信号の周波数をシフトさせる必要がある。
【0063】
しかしながら、この場合のシフトを共振周波数近傍で行わせた場合には、圧電アクチュエーター1が突然停止することがあることが分ってきた。そこで、圧電アクチュエーター1の駆動の充分な安定性を確保するため、本形態では、出力は若干犠牲にしても最大値Vmaxより若干小さい目標変位Vtを設定して、この目標変位Vtが維持されるように駆動信号の周波数を制御することで高出力駆動も実現している。そして、目標変位Vtの維持に当たっては、所定時間振動させる所定の振り幅内における変位信号V1,V2のレベルの平均値を演算し、その最大値と最小値のうち目標変位Vtに近い方に駆動信号の周波数をシフトさせるようにしているので、迅速且つ適切な追従を行わせることができる。
【0064】
なお、本発明は、勿論上記実施の形態に限定されるものではない。図9に示すような変位特性を有するという知見に基づき、1)所定の振り幅で駆動信号の周波数を変化させた場合に圧電アクチュエーターが停止する可能性がある共振点近傍を避けつつ、なお可及的な高出力が得られる目標変位Vtを、変位信号V1,V2の最大値Vmaxに基づき決定し、2)所定の振り幅における変位信号V1,V2のうちの最大レベル及び最小レベルと目標変位Vtのレベルとを比較してより目標変位Vtに近い方に前記振り幅の中心周波数をシフトさせ、3)目標変位Vtに向かう周波数スイープを高周波数域から低周波数域に向けて行う点を構成要件とする場合は全て本発明の技術思想に含まれる。例えば、起動周波数Ftから目標変位Vtに向かう際のスイープのさせ方等には特別な制限はない。したがって、目標変位Vtを与える周波数のデータに基づき起動周波数Ftから一気に目標変位Vtまで周波数をスイープさせても良い。ただ、上記実施の形態の場合のように高周数域から低周波数域に向けて徐々に周波数を変化させた場合の方が、周波数スイープ操作時の圧電アクチュエーター装置Iの駆動の安定性はより良好なものとなる。このとき、上記実施の形態の如く周波数を任意のステップで段階的に変化させてスイープする方法に限定するものでもない。周波数が連続的に漸減するように変化させても勿論構わない。
【0065】
また、電源が一旦投入(ステップST1)され電源を遮断する迄の間における後の再起動時にはステップST5乃至ステップST7の処理は省力してステップST4で読み出される前回駆動の停止時点の駆動条件でステップST8の処理から開始することもできる。前回の駆動での目標変位Vtをそのまま使用しても共振周波数に充分良好に対応していると考えられるからである。この際、圧電アクチュエーター1を駆動することができれば、起動周波数Ftは前回の起動周波数Ftよりも低周波数域の周波数から開始しても構わない。このことによりより迅速に目標変位Vtに到達させることができる。
【0066】
図8に示すステップST10,11の処理は必ずしも必要ではない。ただ、かかる処理を行うことにより、圧電アクチュエーター装置Iの安定的な駆動に資することはできる。
【0067】
さらに、上記実施の形態のアクチュエーター部10は、その第2電極60を縦振動用の一枚と屈曲振動用の4枚の電極で構成したが、これに限るものではない。機械的変位を電気信号に変換する検出用電極を有するものであれば、他の形式のアクチュエーター部であっても同様に適用できる。ただ、上記アクチュエーター部10の場合には、図5に示すような駆動信号400に対する駆動信号401,402の位相を変えることができ、このことにより振動部材20の当接部21が描く楕円の形状を調整することもできる。この結果、駆動信号400の位相に対する駆動信号401,402の位相差をパラメーターとする高出力制御を実現することもできる。この場合には、駆動信号400に対する駆動信号401の位相を基準位相差(例えば90度)の位相から所定の幅で振ることにより検出用電極95,96を介して検出される変位信号V1,V2が極小値を採る位相が振り幅の中心位相となるような制御を行えば良い。
【0068】
上記実施の形態に係る圧電アクチュエーター装置Iは、印刷装置の一例であるインクジェット式記録装置の駆動手段として用いることができる。ここで、上記実施の形態に係る圧電アクチュエーター装置Iを用いたインクジェット式記録装置の一例を図10及び図11に示す。なお、図10は、本発明の実施の形態に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略斜視図であり、図11は、要部を拡大した平面図である。
【0069】
図10に示すインクジェット式記録装置100において、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッド101を有する記録ヘッドユニット102は、インク供給手段を構成するカートリッジ103が着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット102を搭載したキャリッジ104は、記録装置本体105に取り付けられたキャリッジ軸106に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット102は、例えば、ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0070】
そして、駆動モーター107の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト108を介してキャリッジ104に伝達されることで、記録ヘッドユニット102を搭載したキャリッジ104はキャリッジ軸106に沿って移動される。一方、記録装置本体105にはキャリッジ軸106に沿ってプラテン109が設けられており、給紙手段110によって給紙された紙等の被噴射媒体である記録シートSがプラテン109に巻き掛けられて搬送される。記録シートSは、プラテン109上でインクジェット式記録ヘッド101から吐出されたインクによって印刷される。そしてプラテン109上で印刷された記録シートSは、プラテン109の給紙手段110とは反対側に設けられた排紙手段120によって排紙される。
【0071】
図11に示すように、給紙手段110は、給紙ローラー111と従動ローラー112とで構成されている。給紙ローラー111には、その端部に上述した圧電アクチュエーター1の回転軸3が固定されており、アクチュエーター部10の駆動によって回転駆動される。また、給紙ローラー111には、同軸上に第1歯車113が設けられている。
【0072】
排紙手段120は、排紙ローラー121と従動ローラー122とで構成されている。排紙ローラー121には同軸上に第2歯車123が設けられている。そして、給紙ローラー111の第1歯車113が、この第1歯車113に噛み合う第3歯車130、第3歯車130に噛み合う第4歯車131、第4歯車に噛み合う第5歯車132を介して排紙ローラー121の第2歯車123に噛み合うことで、給紙ローラー111を回転駆動する圧電アクチュエーター1の駆動力が、排紙ローラー121に伝達される。
【0073】
なお、図10及び図11に示す例では、圧電アクチュエーター1によって、給紙手段110及び排紙手段120を回転駆動するものであるが、例えば、上述した実施の形態の圧電アクチュエーター1を、キャリッジ104を移動させる駆動モーター107の代わりに用いることも可能である。もちろん、その他の駆動系、例えば、インクジェット式記録ヘッド101にインクを供給するポンプ等に圧電アクチュエーター1を用いることもできる。
【0074】
本形態においては圧電アクチュエーター1を制御する制御装置300が装置本体内に内蔵されているが、インクジェット式記録装置の外部に設けるようにしてもよい。
【0075】
なお、本発明は、広く液体噴射装置全般を対象としたものであり、圧電アクチュエーターは、上述したインクジェット式記録装置以外の液体噴射装置等の印刷装置に搭載することが可能である。その他の液体噴射装置としては、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射装置、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射装置等が挙げられる。もちろん、印刷装置としては、液体を噴射する液体噴射装置に限定されるものではなく、例えば、レーザープリンター、熱転写プリンター等にも本発明を適用することができる。
【0076】
また、本発明は、広く圧電アクチュエーター装置全般を対象としたものであり、上述した液体噴射装置以外の小型デバイスに利用することが可能である。圧電アクチュエーター装置を利用できる小型デバイスとしては、医療用ポンプ、カメラ、産業用や義手などのロボット等が挙げられる。
【符号の説明】
【0077】
I 圧電アクチュエーター装置、 V1,V2 変位信号、 Vmax 最大値、 Vt 目標変位、 1 圧電アクチュエーター、 3 回転軸、 10 アクチュエーター部、 20 振動部材、 21 当接部、 30 圧電素子、 40 圧電体層、 50 第1電極、 60 第2電極、 95,96 検出用電極、 100 インクジェット式記録装置、 101 インクジェット式記録ヘッド、 300 制御装置、 310 駆動手段、 311 駆動信号生成回路、 320 駆動周波数制御部、 330 変位検出部、 340 記憶部、 400,401,402 駆動信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体層と、前記圧電体層に振動を励起する電極と、前記圧電体層の変位を検出する検出用電極と、前記振動が励起されることにより振動する当接部が設けられた振動部材と、を備えた圧電アクチュエーターを制御する制御装置であって、
前記圧電アクチュエーターに所定の周波数の駆動信号を供給する駆動手段と、
前記検出用電極を介して変位信号に変換して検出する変位検出手段と、
前記変位検出手段が検出した変位を記憶する記憶手段と、
前記変位検出手段が検出した変位及び前記記憶手段が記憶している変位に基づき前記駆動手段を介して前記周波数を制御する駆動周波数制御手段と、を有し、
前記駆動周波数制御手段は、前記駆動信号の周波数を所定の周波数範囲でスイープさせ前記圧電アクチュエーターの最大変位を検出し、
前記最大変位に基づき定めた目標変位に対応する駆動周波数に向けて所定の起動周波数から低周波数域方向に前記駆動信号の周波数をスイープさせ、
前記目標変位に対応する前記駆動周波数に達した後、前記駆動周波数を含む所定の振り幅で前記駆動信号の周波数を変動させ前記変位信号がより前記目標変位に近い方に前記振り幅の中心周波数をシフトさせ、シフト後の新たな中心周波数を基準として前記振り幅で前記周波数を変動させ前記変位信号がより前記目標変位に近い方にさらに前記振り幅の中心周波数をシフトさせる操作を繰り返すことを特徴とする圧電アクチュエーターの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載する圧電アクチュエーターの制御装置において、
前記目標変位に向けての前記駆動信号の周波数のスイープは低周波数側に向けて所定のステップで段階的に周波数を変化させることにより行うことを特徴とする圧電アクチュエーターの制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載する圧電アクチュエーターの制御装置において、
前記目標変位に向けての前記駆動信号の周波数のスイープは低周波数側の目標変位を与える目標周波数に向けて一気に変化させることを特徴とする圧電アクチュエーターの制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載する圧電アクチュエーターの制御装置において、
電源を遮断する迄の初回以降の前記圧電アクチュエーターの駆動に際しては、前記記憶手段が記憶している前回停止時の前記目標変位に基づき決定される高周波数域の所定の駆動周波数から前記駆動信号の周波数をスイープさせることを特徴とする圧電アクチュエーターの制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載する圧電アクチュエーターの制御装置において、
前記目標変位を与える初期の前記駆動周波数と前記振り幅の制御に伴うシフトの結果移動された新たな駆動周波数との差が予め定めた設定値を超えた場合には、圧電アクチュエーターの駆動が停止されるように制御することを特徴とする圧電アクチュエーターの制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載する圧電アクチュエーターの制御装置と、前記圧電アクチュエーターと、を有することを特徴とする圧電アクチュエーター装置。
【請求項7】
請求項6に記載する圧電アクチュエーター装置を具備することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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