説明

基板処理方法

【課題】 溝パターン内への絶縁層や配線層等の埋め込みを簡易に行うことができ、工程短縮やコスト低減をはかる。
【解決手段】 基板10の表面に形成された溝内に溶媒を埋め込むための基板処理方法であって、基板10の表面上に溶媒42を供給しながら、基板10の表面に弾性材料で形成された溶媒保持材22を接触させた状態で、基板10の表面と溶媒保持材22とが摺動するように、基板10及び前記溶媒保持材22をそれぞれ回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、溝埋め込み絶縁層パターンや溝埋め込み配線層パターン等の形成に使用される基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程などでは、微細パターン溝内に絶縁膜や配線膜を充填し、絶縁層パターンや配線層パターンを形成する方法が用いられている。例えば、素子分離に使用されるSTI(Shallow Trench Isolation)工程では、予めフォトリソグラフィ法とRIE(Reactive Ion Etching)法でシリコン基板表面に溝パターンを形成しておき、溝のある基板表面全体にCVD(Chemical Vapor Deposition)法などでSiO2 膜を成膜する。その後、溝外のSiO2 膜をCMP(Chemical Mechanical Planarization)法で除去することにより、溝内のみにSiO2 膜を充填させた絶縁層パターンが得られることになる。
【0003】
しかし、この方法では、成膜工程とCMP工程の両方が必要であり、工程が煩雑になる問題があった。さらに、半導体デバイスの設計ルール微細化に伴い、デバイス特性向上のため絶縁層にエア・ギャップ構造と呼ばれる空隙構造が求められているが、成膜で空隙を作ろうとすると制御が難しいなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−158085号公報
【特許文献2】特開2010−163307号公報
【特許文献3】国際公開 WO 01/27983 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、溝パターン内への絶縁膜や配線膜等の埋め込みを簡易に行うことができ、工程短縮やコスト低減をはかり得る基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の基板処理方法は、表面に溝が形成された基板の表面上に溶媒を供給する工程と、前記基板の表面に弾性材料で形成された溶媒保持材を接触させた状態で、前記基板の表面と前記溶媒保持材とが摺動するように、前記基板及び前記溶媒保持材をそれぞれ回転させる工程とを含み、これにより前記溝内に前記溶媒を埋め込む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る基板処理方法に用いた溶媒充填装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】第2の実施形態に係る基板処理方法に用いた溶媒充填装置の概略構成を示す斜視図。
【図3】第3の実施形態に係る基板処理方法に用いた溶媒充填装置の概略構成を示す斜視図。
【図4】第4の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図5】第4の実施形態の効果を説明するためのもので、溝内への埋め込み状態を示す顕微鏡写真。
【図6】比較例に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図7】第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の詳細を、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る基板処理方法に用いた溶媒充填装置の概略構成を示す斜視図である。
【0010】
図中21は円板状の定盤、22は定盤表面に設置された溶媒保持材、30はシリコンウエーハなどの基板10を保持するための円板状の保持具、41は溶媒を供給する溶媒供給ノズル、42は溶媒である。
【0011】
定盤21は、図示しない駆動機構により円板体の中心を軸心として、例えば10〜100rpmの速度で回転可能となっている。保持具30は、定盤21よりも小径に形成され、図示しない駆動機構により円板体の中心を軸心として、例えば10〜200rpmの速度で回転可能となっている。ここで、保持具30の回転軸は定盤21の回転軸に一致させるのではなく、定盤21の中心から径方向にずらしている。即ち、定盤21の回転軸と保持具30の回転軸とは平行で且つ離間する関係となっている。
【0012】
溶媒保持材22の材質は、少なくともその表面に微細多孔構造を有することが望ましく、例えばPVA(ポリビニルアルコール)などのスポンジ、発泡ポリウレタン、不織布、エポキシ樹脂パッドなどが使用可能である。但し、溶媒42が粘度が高い等の特性を持っていて溶媒保持材22の表面に留まりやすい場合には、溶媒保持材22は必ずしも微細多孔構造でなくともよい。但し、基板10に押し付けられても基板10を傷つけない程度の弾力性を有する必要があり、従って弾性材料で形成するのが望ましい。
【0013】
溶媒供給ノズル41は、定盤21の中心付近に溶媒42の突出口を有するものであり、吐出口から溶媒42を滴下するようになっている。
【0014】
次に、上記の装置を用いた溝内への溶媒の充填方法を説明する。まず、表面に溝パターンを有する基板10を、基板表面を下向きにして、保持具30に保持させる。そして、溶媒供給ノズル41から溶媒42を溶媒保持材22に供給しながら、定盤21と保持具30を回転させる。即ち、基板10及び溶媒保持材22の回転と溶媒42の供給とを同時に行う。さらに、基板10の表面を溶媒保持材22に接触させる。
【0015】
溶媒保持材22が微細多孔構造を有するために、溶媒42の供給により溶媒保持材22に溶媒42が溜まる。さらに、溶媒保持材22の回転により基板10の表面と溶媒保持材22とが相対的に摺動することになり、溶剤42を基板表面上に供給することができる。このとき、溶媒保持材22のみではなく基板10も回転させることにより、基板10の表面に対してより均一な摺動が可能となる。これにより、基板10の溝内のみに溶媒42を効率良く均一に充填させることができる。
【0016】
そしてこの場合、溝内のみに溶媒42が充填されることから、CVD法で形成した場合のような後工程としてのCMP法は必要ない。溶媒42としては、SOGやポリシラザン等を用いた場合、基板10の溝内に絶縁層を形成することになるため、STIの形成に適用することが可能となる。また、溶媒保持材22が弾力性を有することから基板11を傷つけることもない。
【0017】
このように本実施形態によれば、図1のような充填装置を用い、基板10及び溶媒保持材22を回転させると共に、溶媒42を溶媒保持材22に供給することにより、基板10のみ溝内のみに絶縁膜や配線膜となる溶媒を簡易に埋め込むことができる。そしてこの場合、基板10の表面と溶媒保持材22とは常に摺動状態にあるため、溝以外には溶媒42が残らない。このため、CVDで溝内に膜を埋め込んだ場合のようなCMP等の後処理が不要となり、工程短縮やコスト低減をはかることができる。
【0018】
また、図1の装置は半導体装置の製造に用いられるCMP装置と基本的に同じ構造であり、既存のCMP装置を用いて実現できる利点もある。即ち、既存のCMP装置において、ノズルから研磨剤の代わりに溝に充填すべき材料を含む溶媒を供給するようにすればよい。従って本実施形態では、溝の埋め込みのために新たに専用の装置を設ける必要はなく、既存の装置の改良により実施することができる利点もある。
【0019】
また、溝内の絶縁層に空隙構造を形成するために、上記の埋め込みの際に微粒子を用いると有効である。このためには、溶媒42中に中空構造の微粒子を含ませるようにすればよい。
【0020】
微粒子を効率的に基板溝に充填させるためには、微粒子の平均直径が基板溝幅と同等かそれ以下であるような粒子分布を選択することが望ましい。また、所望の幅以上の溝のみに微粒子を含む溶媒を充填させたい場合には、指定した溝幅と同等以上の直径を持つ微粒子を用いればよい。微粒子の直径より狭い溝には微粒子が侵入できないので、指定幅より広い溝のみに選択的に微粒子を含む溶媒を充填させることができる。指定幅より狭い溝には溶媒のみが充填される。
【0021】
微粒子が球形状でない場合は、微粒子の直径の代わりに短径を基準とすればよい。また、溶媒に含有させる微粒子の形状は、球形や略球形である必要はなく、中空繊維状や不規則形状など別の形状であっても差し支えない。
【0022】
さらに、基板溝を構成する材質と微粒子を構成する物質とにそれぞれ引き付け合う特性を付与すれば、基板溝により効率的に微粒子を含む溶媒を充填させることが可能である。例えば、基板溝のゼータ電位と微粒子表面のゼータ電位の極性を逆にすれば、微粒子は溝内に吸着されやすくなり、容易に溝に充填される。或いは、どちらかのゼータ電位がほぼゼロである場合も、微粒子の充填が容易になる。また、電気的引力に限らず磁気的引力を利用することも可能である。例えば、強磁性を有する微粒子を用い、基板裏面側から磁力を付与すれば、微粒子は溝内に吸着されやすくなり、容易に溝に充填される。
【0023】
なお、上記実施形態において微粒子を溶媒42に均一分散させることが困難な場合には、まず微粒子の均一分散が容易な別の溶媒43(図示せず)に微粒子を含有させて上記充填処理を途中まで行った後に、微粒子を含まない溶媒42を供給して充填処理を完成させることができる。
【0024】
さらに、溶媒42,43の供給工程は、溶媒の充填工程と同時である必要はなく、供給工程の後で充填工程を行ってもよい。或いは供給工程と充填工程の一部が同時進行したり、交互に進行してもよい。また、溶媒の供給・充填工程の後に、溝外の溶媒を効率的に除去できるように、除去剤を別途供給しつつ溶媒保持具22で基板表面を擦って、溝外の溶媒除去を行ってもよい。
【0025】
また、充填後に溶媒の一部若しくは全部の成分を除去させる必要がある場合は、熱処理や洗浄処理などの除去処理を行うことができる。さらに、溶媒や微粒子は溝上部まで全てに充填される必要はなく、溝の途中まで充填してもよい。また、溝パターンは溝形状に限られず、孔状、不定形など別の形状であっても一向に差し支えない。
【0026】
このように、溶媒に微粒子を含有させ、微粒子の材質や電気伝導度、熱伝導度、光学特性などの性質を選択することで、溝内の充填物の諸特性を所望の状態に制御することができる。例えば、中空微粒子を用いれば、充填物の誘電率を下げることができ、本方法をSTI工程などのLSI製造工程に用いれば、半導体デバイスの電気特性を向上させることができる。さらに、導電性微粒子を用いれば、充填物を配線として用いることができる。
【0027】
また、透明樹脂となる溶媒中に微粒子を含有させてパターン溝に充填させれば、充填物の反射率、屈折率、透過率などを制御することができ、光導波路などとして用いることができる。さらに、繊維状の微粒子を用いれば、充填物の機械的強度を劇的に上げることも可能となる。
【0028】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る基板処理方法に用いた溶媒充填装置の概略構成を示す斜視図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0029】
表面に溝パターンを有する基板10は保持具(図示せず)によって基板表面を上向きにして保持され、保持具からの動力伝達により回転可能となっている。基板10の上方には、基板10の直径よりも僅かに長い円柱状の溶媒保持具23が設置されており、この溶媒保持具23は駆動部(図示せず)からの動力伝達により回転するようになっている。ここで、基板10の回転軸と溶媒保持具23の回転軸とは直交する関係となっている。さらに、溶媒保持具23の上方には、溶媒供給ノズル41が設置されている。
【0030】
溶媒保持具23の形状は、ロール型や小径型などが好適である。また、溶媒保持具23の材質は、第1の実施形態と同様に、通常は表面が微細多孔構造であるものが望ましく、例えば円柱状のスポンジを用いることができる。なお、溶媒42が基板10の表面に留まりやすい特性を持つ場合には、必ずしも微細多孔構造で有る必要はなく、基板10に押し付けられても基板10を傷つけない程度の弾力性を有するものであればよい。
【0031】
図2の装置を用いて溝内に溶媒を充填するには、溶媒供給ノズル41から溶媒42を溶媒保持具23上に滴下すると共に、基板10及び溶媒保持具23を回転させることにより、溶媒保持具23から溶媒42を基板表面上に供給することができる。これにより、基板10の溝内のみに溶媒42を効率良く均一に充填させることができる。
【0032】
従って、第1の実施形態と同様に、溝内への絶縁膜や配線膜等の埋め込みを簡易に行うことができ、工程短縮やコスト低減をはかることができる。また、溶媒42の中に微粒子(図示せず)を含有させておけば、微粒子を含む溶媒を基板溝に充填させることが可能となる。
【0033】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係る基板処理方法に用いた溶媒充填装置の概略構成を示す斜視図である。なお、図1及び図2と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0034】
表面に溝パターンを有する基板10は、第2の実施形態と同様に、基板表面を上向きにして保持され、保持具からの動力伝達により回転可能となっている。基板10の上方には、所定角度回動可能に設けられたアーム25の先端部が位置するようになっている。このアーム25の先端部に基板10の直径よりも小さい円柱状の溶媒保持具24が取り付けられており、溶媒保持具24は駆動部(図示せず)からの動力伝達により回転するようになっている。ここで、基板10の回転軸と溶媒保持具24の回転軸とは平行の関係となっている。さらに、基板10の上方には、基板10の表面上に溶媒42を直接供給する溶媒供給ノズル41が設置されている。
【0035】
溶媒保持具24の材質は、第1の実施形態と同様に、通常は表面が微細多孔構造であるものが望ましく、例えば円柱状のスポンジを用いることができる。なお、溶媒42が基板10の表面に留まりやすい特性を持つ場合には、必ずしも微細多孔構造で有る必要はなく、基板10に押し付けられても基板10を傷つけない程度の弾力性を有するものであればよい。
【0036】
図3の装置を用いて溝内に溶媒を充填するには、溶媒供給ノズル41から溶媒42を基板10上に滴下すると共に、基板10及び溶媒保持具24を回転させることにより、基板10の溝内のみに溶媒42を効率良く均一に充填させることができる。
【0037】
従って、第1及び第2の実施形態と同様に、溝内への絶縁膜や配線膜等の埋め込みを簡易に行うことができ、工程短縮やコスト低減をはかることができる。
【0038】
(第4の実施形態)
次に、前記図1乃至図3に示す装置を用いた半導体装置の製造方法を、図4(a)(b)を参照して説明する。
【0039】
まず、図4(a)に示すように、シリコン基板10の表面部に、フォトリソグラフィ法とRIE法又はウェットエッチング法で溝11,12を形成する。ここで、溝の大きさは大小様々でもよいが、ここでは幅の狭い溝を11、幅の広い溝を12としている。
【0040】
本実施形態では、溝11,12内に埋め込む材料を絶縁層とするため、溶媒42として、例えば中空構造のSiの微粒子44を含むSOGを用いる。微粒子44の直径は例えば50nm以下であり、中空構造を有する微粒子としては、Si微粒子以外に、Al23 やSiN系の微粒子を用いることができる。また、絶縁層でなく配線層を形成する場合は、金属酸化物の微粒子やC系の微粒子を用いればよい。
【0041】
次いで、前記図1に示す装置を用い、基板10を下向きにして保持具30にセットし、基板10の表面を溶媒保持材22に当接させ、定盤21と保持具30を回転させると共に、溶媒供給ノズル41から溶媒42を供給する。これにより、図4(b)に示すように、基板10の溝11,12内に微粒子44を含む溶媒42を高効率で均一に充填させることができる。
【0042】
このとき、微粒子44の径を溝11,12よりも十分小さくしておくことにより、溝11,12内のみに微粒子44を含む溶媒42を効率良く充填することができる。そしてこの場合、溝11,12の外部には溶媒42が殆ど残らないので、後工程としてのCMP等は不要である。
【0043】
図5は、本実施形態方法を用いて溝11内に溶媒42と微粒子44を充填させた例を示す顕微鏡写真である。ここで、溝11の幅は300nmとし、溝11のピッチは600nmとした。図5から、直径約50nmの微粒子44が溶媒42と共に幅300nmの溝上部まで隙間なく充填されているのが分かる。
【0044】
一方、比較のために従来技術を用いて基板表面の溝パターンに絶縁層を充填する方法を、図6(a)(b)を参照して説明する。
【0045】
図6(a)は、溝パターンを有する基板10の表面にCVD法でSiO2 膜45を成膜した後の状態であり、幅広溝12の内部は全体がSiO2 膜45で充填されているが、微細溝11では所々に空隙46が生成されている。しかし、空隙46の幅や高さは微細溝11の幅や深さにも依存しており、これらの微細溝形状はRIE法の加工条件だけでなく、周辺のパターンレイアウトなどにも影響されるために、空隙46の幅や高さを正確に揃えることは困難である。
【0046】
次いで、このような不揃いな空隙46を有するSiO2 膜45をCMP法で除去した後の状態を、図6(b)に示す。空隙46の上端がシリコン基板表面よりも高いものについては、空隙内にCMPで使用したスラリー47が侵入して空隙46を塞いでしまう。このような空隙46内へのスラリー残留は、空隙形成の妨げになるだけでなく、スラリー成分汚染によるデバイス特性の劣化を引き起こすため、大きな問題となる。
【0047】
このように従来方法では、成膜工程とCMP工程の両方が必要であり、工程が煩雑になる。さらに、半導体デバイス特性向上のためエア・ギャップ構造と呼ばれる空隙構造が求められているが、成膜で空隙を作ろうとすると制御が難しい。さらに、スラリー成分汚染によるデバイス特性の劣化を引き起こす問題がある。
【0048】
これに対し本実施形態のように、中空構造の微粒子44を含む溶媒42を基板10上に塗布し、基板表面に溶媒保持材22を押し当てて回転させることにより、溝11,12内のみに微粒子44を含む溶媒42を充填させることができる。微粒子44が空洞を有することから、エア・ギャップ構造と同様に、埋め込み絶縁膜としての誘電率を下げることができる。さらに、空隙構造は微粒子の空洞の大きさで決まるため、微粒子44の空洞の大きさを設定しておけば、空隙構造の制御が可能となる。
【0049】
このように本実施形態によれば、空洞を有する微粒子44を含む溶媒42の塗布と溶媒保持材22による充填処理とを同時実施することができるため、埋め込み絶縁層の形成工程の簡略化をはかることができる。また、埋め込み絶縁層における空隙構造の制御も可能となり、更にスラリー成分汚染によるデバイス特性劣化も防止できる利点がある。
【0050】
(第5の実施形態)
図7は、第5の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。この実施形態は、基板表面部に溝配線パターンを形成する方法である。
【0051】
まず、図7(a)に示すように、Si基板10上にフォトリソグラフィ法とRIE法で配線溝51を形成する。
【0052】
本実施形態では、溝51内に埋め込む材料を配線層とするため、溶媒52として、例えばメタル酸化物の微粒子54を含むエタノール系溶媒を用いる。
【0053】
次いで、前記図1に示す装置を用い、基板10を下向きにして保持具30にセットし、溶媒保持材22に当接させ、定盤21と保持具30を回転させると共に、溶媒供給ノズル41から溶媒52を供給する。これにより、図7(b)に示すように、基板10の溝51内に溶媒52を高効率で均一に充填させることができる。
【0054】
次いで、水素中でのアニールにより還元処理を施すことにより、図7(c)に示すように、溶媒52を蒸発させると共に、微粒子同士を結合させて低抵抗化をはかる。これにより、埋め込み配線層55を形成する。
【0055】
このように本実施形態によれば、メタル酸化物等の微粒子54を含む溶媒52を、基板10及び溶媒保持材22の回転により溝51内に充填することができるため、CMP等の工程を要することなく、基板表面の溝51内に埋め込み配線層55を形成することができる。即ち、溝51内への成膜と、溝51の外の溶媒除去とを同じ装置で実施することができ、埋め込み配線層の形成工程の短縮やコスト低減を達成することができる。
【0056】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。
【0057】
前記図1乃至図3に示した溶媒充填装置は、溝内に溶媒を埋め込むための装置の一例であり、何ら限定されるものではない。基板を保持して回転させる機構、溶媒保持材を回転させる機構、基板表面上に溶媒を供給できる機構を有するものであればよい。基板の表面上に溶媒を供給する機構としては、前記図3に示すように、基板の表面上に溶媒を直接滴下するものは勿論のこと、前記図1及び図2に示すように、溶媒保持材の表面に溶媒を滴下するものであってもよい。
【0058】
実施形態では、微粒子としてSiやメタル酸化物を用いたが、仕様に応じて適宜変更可能である。また、光学材料となる溶媒中に所望の屈折率、透過率、強度などの特性を保持する微粒子を含有させることも可能である。さらに、必ずしも微粒子を含むものに限らず、微粒子を含まない溶媒で溝を埋め込んで良いのも勿論のことである。
【0059】
実施形態では、半導体装置の製造に適用した例を説明したが、必ずしも半導体装置に限らず、基板の溝内に基板とは別の物質を埋め込む必要のある各種の用途に適用することが可能である。
【0060】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
10…基板
11,12,51…溝
21…定盤
22…溶媒保持材
23,24…溶媒保持具
25…アーム
30…基板保持具
41…溶媒供給ノズル
42,43,52…溶媒
44,54…微粒子
46…空洞
47…スラリー
55…配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に溝が形成された基板の表面上に溶媒を供給する工程と、
前記基板の表面に弾性材料で形成された溶媒保持材を接触させた状態で、前記基板の表面と前記溶媒保持材とが摺動するように、前記基板及び前記溶媒保持材をそれぞれ回転させる工程と、
を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記基板及び前記溶媒保持材の回転と前記溶媒の供給とを同時に、又は交互に行うことを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記溶媒保持材は円板状に形成され、前記基板の回転軸と前記溶媒保持材の回転軸とは平行で且つ離間していることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記溶媒保持材は円柱状に形成され、前記基板の回転軸と前記溶媒保持材の回転軸とは直交していることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記溶媒は、微粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記微粒子は、中空構造を有することを特徴とする請求項5記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−77588(P2013−77588A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214831(P2011−214831)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】