説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板の搬送高さを高精度に制御し得る技術を提供する。
【解決手段】塗布ステージ4は、空気を噴出する噴出孔40aと、空気を吸引する吸引孔40bとが設けられている。噴出孔40aのそれぞれには、空気を供給する供給ラインL1が接続されており、吸引孔40bのそれぞれには、空気を吸引する吸引ラインL2が接続されている。供給ラインL1の供給流量は、流量計14aが検出する流量値に基づいて、ニードル弁13の開度が調整されることによって制御される。また、吸引ラインL2の吸引流量は、流量計14bが検出する流量値に基づいて、ニードル弁19aの開度が調整されることによって制御される。なお、この供給流量および吸引流量の制御は、基板Wが塗布ステージ4上に搬送されてくるよりも前に実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶表示装置用ガラス基板、半導体基板、フィルム液晶用フレキシブル基板、フォトマスク用基板、カラーフィルター用基板、太陽電池パネル用基板、電子ペーパー用基板等の精密電子装置用基板、あるいはそれに類する各種基板を搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置用ガラス基板等の基板を搬送する際には、基板の汚損を防止しつつ効率的な搬送を目指した種々の基板搬送装置が用いられている。
【0003】
近年、液晶ディスプレイを製造するマスターガラス基板のサイズが大型化している。このような大型ガラス基板を搬送する際には、搬送の衝撃によって基板に損傷を与えないように、基板の平面度を高精度に保って搬送を行うことが重要である。また、撓ませることなく安定して基板を搬送することが求められている。
【0004】
基板を搬送する技術は、これまでにも幾つか提案されているが、上記のような要求に応える搬送技術として、できる限り非接触状態で基板を搬送する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
特許文献1には、表面に設けられた気体噴出孔から空気を噴出させ、その圧力を利用して基板を浮上させるステージを備えた搬送機構が開示されている。そして、この基板に向けて噴出された空気は、表面に設けられた吸引孔から吸引するように構成されており、気体の噴出と吸引との間でバランスをとることによって、基板の高さ位置が制御される。
【0006】
さらに、特許文献1には、噴出させる気体の圧力(噴出圧)を圧力計で測定し、これを常時監視して圧力制御手段(例えばバルブ)により噴出圧を一定にすることによって、搬送する基板の浮上高さを一定にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−40533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、圧力計で測定した場合、噴出孔を基板が覆っている状態では、比較的噴出圧を安定して測定し得るが、噴出孔の上方に基板が存在しない場合、噴出気体がほぼ自由に抜けていく状態となり、噴出圧の絶対値が非常に小さくなってしまうため、圧力を精度よく測定することが困難となる場合がある。
【0009】
また、圧力計に基づいて圧力制御手段であるバルブの開度を制御した場合、圧力の測定値が安定するまでに相応の時間を要するため、噴出圧を適切に制御できるまでに時間がかかり、基板を所定高さに安定して搬送することが困難となる場合がある。
【0010】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、基板の搬送高さを高精度に制御し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、搬送される基板に対して処理を行う基板処理装置であって、基板に向けて気体を供給することにより、前記基板に浮上力を付与する気体供給部と、基板に向けて供給される気体の供給流量を検出する供給流量検出部と、前記浮上力が付与される基板の位置を検出する位置検出部と、前記供給流量検出部によって検出される供給流量と、前記位置検出部によって検出される基板の位置に対応した供給流量の基準とを比較することによって、前記供給流量が許容範囲内の値であるかどうかを判定する供給流量判定部とを備える。
【0012】
また、第2の態様は、第1の態様に係る基板処理装置において、前記判定部によって、前記供給流量検出部が検出する供給流量が許容範囲外の値であると判定される場合に、許容範囲内に収まるように前記気体供給部から供給される気体の流量を制御する流量制御部、をさらに備える。
【0013】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係る基板処理装置において、前記気体供給部から供給された気体を基板に向けて噴射する複数の噴出孔が形成された平面を有するステージと、前記ステージの平面の上方において、基板に対して所定の処理を行う処理部とをさらに備える。
【0014】
また、第4の態様は、第3の態様に係る基板処理装置において、前記処理部が、基板の進行方向に対して直交する方向に延びるスリット状の吐出口から処理液を吐出して基板に塗布するスリットノズルと、前記スリットノズルに対して、前記処理液を供給する処理液供給部とを備える。
【0015】
また、第5の態様は、第3または第4の態様に係る基板処理装置において、基板の位置に対応する前記供給流量の基準のうち、基板が前記ステージ上に進入した位置に対応する基準が、前記ステージ上から退出した位置に対応する基準よりも小さい。
【0016】
また、第6の態様は、第3から第5の態様までのいずれか1態様に係る基板処理装置において、基板がステージ上に進入する前に、前記供給流量判定部が、前記供給流量検出部の検出する供給流量が許容範囲内の値であるかどうかを判定する。
【0017】
また、第7の態様は、第3から第6の態様までのいずれか1態様に係る基板処理装置において、前記ステージ上に進入する前から退出するまでの間、前記供給流量判定部が、前記供給流量検出部の検出する供給流量が許容範囲内の値であるかどうかを判定する。
【0018】
また、第8の態様は、第1から第7の態様までのいずれか1態様に係る基板処理装置において、気体を吸引することによって、前記浮上力が付与される基板の高さ位置を調節する気体吸引部、をさらに備える。
【0019】
また、第9の態様は、第8の態様に係る基板処理装置において、前記気体吸引部によって吸引される気体の吸引流量を検出する吸引流量検出部と、前記吸引流量検出部によって検出される吸引流量と、前記位置検出部によって検出される基板の位置に対応する吸引流量の基準とを比較することによって、前記吸引流量が許容範囲内の値であるかどうかを判定する吸引流量判定部とを備える。
【0020】
また、第10の態様は、搬送される基板に対して、処理を行う基板処理方法であって、(a)基板に向けて気体を供給することにより、前記基板に浮上力を付与する工程と、(b)前記(a)工程において基板に向けて供給される気体の供給流量を検出する工程と、(c)前記(a)工程において浮上力が付与される基板の位置を検出する工程と、(d)前記(b)工程において検出される供給流量と、前記(c)工程において検出される基板の位置に対応する供給流量の基準とを比較することによって、前記供給量が許容範囲内の値であるかどうかを判定する工程とを有する。
【0021】
また、第11の態様は、第10の態様に係る基板処理方法において、前記(c)工程において、検出される供給流量が許容範囲外の値であると判定される場合に、許容範囲内に収まるように前記(a)工程において供給する気体流量を制御する工程、をさらに有する。
【発明の効果】
【0022】
第1から第9までの態様に係る基板処理装置によれば、流量を検出対象とすることにより、圧力を検出する場合に比べて、安定した検出結果を取得し得る、また、供給流量の検出結果と基板の位置に対応する供給流量の基準とを比較することによって、基板に向けた気体供給が適切に実施されるかどうかを精度よく把握できる。したがって、基板の搬送高さを高精度に制御することができるという優れた効果を奏し得る。
【0023】
特に、第2の態様に係る基板処理装置によれば、供給流量の判定結果に基づいて流量を制御することにより、基板の高さ位置を高精度に制御することが可能となる。
【0024】
特に、第3の態様に係る基板処理装置によれば、ステージに対して基板を適切に浮上させることができるため、ステージ上において、適切に基板処理を実施できるという優れた効果を奏し得る。
【0025】
特に、第4の態様に係る基板処理装置によれば、高さ位置の変動が抑えられた基板に対してスリットノズルから吐出された処理液が塗布されるため、塗布ムラが抑えられた状態で処理液を塗布できるという優れた効果を奏し得る。
【0026】
特に、第5の態様に係る基板処理装置によれば、ステージの噴出孔が基板に覆われるほど、ステージと基板との間に気体が滞留しやすくなって、検出される気体の供給流量が減少する。このような事情に合わせて基準を設定することにより、流量判定を適切に実施できるという優れた効果を奏し得る。
【0027】
特に、第6の態様に係る基板処理装置によれば、基板がステージ上に進入する前に、気体の供給流量が許容範囲内にあるかどうかが判定されるため、基板処理前に基板を適切な高さ位置に保持できるかどうかを検知し得る。したがって、基板の処理エラーの発生を抑制できるという優れた効果を奏し得る。
【0028】
特に、第7の態様に係る基板処理装置によれば、気体の供給流量が許容範囲内にあるかどうかを判定することによって、基板がステージ上で処理される間、基板の高さ位置が適切に制御されているかどうかを検知できるため、基板の処理エラーを効率的に検出し得る。
【0029】
特に、第8の態様に係る基板処理装置によれば、基板に向けて供給された気体を適宜吸引することによって、基板の高さ位置を調節しやすくなるという優れた効果を奏し得る。
【0030】
特に、第9の態様に係る基板処理装置によれば、気体供給部と気体吸引部とで適切に基板の高さ位置が制御されているかどうかを容易に把握できるという優れた効果を奏し得る。
【0031】
また、第10および第11の態様に係る基板処理方法によれば、流量を検出対象とすることにより、圧力を検出する場合に比べて、安定した検出結果を取得し得る、また、供給流量の検出結果と基板の位置に対応する供給流量の基準とを比較することによって、基板に向けた気体供給が適切に実施されるかどうかを精度よく把握できる。したがって、基板の搬送高さを高精度に制御することができるという優れた効果を奏し得る。
【0032】
特に、第11の態様に係る基板処理方法によれば、供給流量の判定結果に基づいて流量を制御することにより、基板の高さ位置を高精度に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示した上面図である。
【図2】ノズルユニットおよびノズル洗浄待機ユニットを取り外した基板処理装置の概略構成を示した上面図である。
【図3】塗布ステージの表面を示した上面図である。
【図4】塗布ステージにおける空気の流路を示す模式図である。
【図5】基板搬送チャック、ノズルユニットおよびノズル洗浄待機ユニットのYZ断面を示した模式図である。
【図6】制御部と制御部によって制御される各構成との接続関係を示したブロック図である。
【図7】塗布ステージにおける流量制御処理を実施する制御部の動作の流れ図である。
【図8】浮上搬送される基板の位置と、塗布ステージの各流路における気体流量の関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示するものであり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0035】
なお、以下の説明においては、方向および向きを示す際に、適宜図中に示す3次元のXYZ直交座標を用いる。ここで、X軸およびY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向(+Z側が上側、−Z側が下側)を示す。また、便宜上、X軸方向を左右方向(基板搬送に関して+X側が下流側、−X側が上流側)とし、Y軸方向を奥行き方向(+Y側、−Y側)とする。
【0036】
<1. 第1実施形態>
<1.1.基板処理装置の概要>
図1は、第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示した上面図である。また、図2は、ノズルユニット5およびノズル洗浄待機ユニット9を取り外した場合における、基板処理装置1の概略構成を示した上面図である。
【0037】
基板処理装置1は、処理液を吐出するスリットが形成された長尺のノズルと基板とを相対的に移動させて基板の表面に処理液を塗布する装置(スリットコータ)として構成されている。この装置1は、基板の表面に形成された電極層等を選択的にエッチングする前処理として、処理液としてのレジスト液を基板に塗布するプロセス等に利用される。
【0038】
スリットコータの塗布対象となる基板は、代表的に液晶表示装置に画面パネルを製造するための角形(ここでは、長方形)のガラス基板(基板W)であるが、半導体基板、フィルム液晶用フレキシブル基板、フォトマスク用基板、カラーフィルター用基板、太陽電池パネル用基板等の他種類の基板であってもよい。
【0039】
基板処理装置1の機構的構成は、上流ユニットから搬送されてくる水平姿勢の基板Wを受け入れて(+X)方向に搬送する基板搬送装置2と、基板Wに処理液を塗布する塗布装置3と、出口浮上ステージ11とに大別される。この基板処理装置1で処理液が塗布された後の基板Wは、出口浮上ステージ11から移載ロボット36によって減圧乾燥ユニット37、38のいずれかに移載され、塗布された処理液の減圧乾燥を受ける。その後、減圧乾燥ユニット38と上下方向に積層された受け渡し位置39に基板Wが移載され、さらに次の工程のための別装置に払い出される。
【0040】
基板搬送装置2は、上流ユニットから送られてきた基板Wを搬送するコロコンベア30と、圧縮空気によって基板Wを浮上させる入口浮上ステージ10と、コロコンベア30から入口浮上ステージ10に基板Wを移載する移載ユニット6と、基板Wの両側端を吸着保持して下流に搬送する基板搬送チャック8とに大別される。また、塗布装置3は、処理液を吐出するスリットノズル55を備えたノズルユニット5と、スリットノズル55の洗浄を行うノズル洗浄待機ユニット9と、塗布処理が行われる塗布ステージ4とに大別される。
【0041】
この基板処理装置1の全体を通して見たときの基板搬送区間TRは、基板の支持方式の違いによって3つの区間に大別される。
【0042】
(1) 接触支持区間TA:
上流側の接触支持区間TAは、基板Wの下面に接触するコロ配列で基板Wを支持しつつ、それぞれのコロの回転によって基板を搬送する「コロ搬送方式」となっている。コロ搬送方式での基板支持は、基板Wの下面に接触して基板Wを支持する「接触支持形式」の1態様である。なお、本実施形態では、基板処理装置1の前段側に存在する上流ユニットの搬送も、コロ搬送方式となっている。
【0043】
(2) 浮上支持区間TC1,TC2:
後述する支持形式転換区間TBをはさんで接触支持区間TAの下流側にある浮上支持区間TC1、TC2は、圧縮空気によって基板を浮上させることによって基板Wを支持する。一般に、基板を浮上させて基板を支持する形式が「浮上支持形式」であるが、この実施形態では、加圧気体(具体的には圧縮空気)によって浮上支持形式を実現しつつ、基板の両側端を吸着保持して基板を移動させる浮上搬送方式となっている。区間TC1、TC2のうち区間TC1は、処理液の塗布に直接に関係する塗布用搬送区間であり、区間TC2は基板を移載ロボット36に受け渡すための出口区間である。
【0044】
(3) 支持形式転換区間:TB
接触支持区間TAと浮上支持区間TC1との間に設けられた支持形式転換区間TBは、接触支持区間TAと浮上支持区間TC1との間で、基板の支持方式を転換するための区間である。基板の支持形式ではなく搬送方式という観点から見れば、支持形式転換区間TBは、接触支持区間TAでの「接触搬送方式」としての「コロ搬送方式」と、浮上支持区間TC1、TC2での「浮上搬送方式」との間で、基板の搬送方式を転換する区間である。
【0045】
<1.2. 各部の構成および機能>
<●コロコンベア30>
コロコンベア30は、回転する複数のコロ301の外周面の最上部が基板Wの下面に当接することで、基板Wに推進力を与え、下流方向に移動させる接触式の搬送装置である。駆動源であるモータと1本の回転軸302、さらにそれぞれ隣接する回転軸302同士において、タイミングベルト(図示せず)が掛け渡されているため、同じ回転速度を、同じタイミングで各回転軸302に与えることが可能である。これらの複数のコロ301は、後述する移載ユニット6のコロ601とは異なり、固定高さに設けられて基板の下面に接触するコロ群を構成する。
【0046】
このコロコンベア30において、X軸方向と平行な両端部の一方には、減速センサ(図示せず)が設置されており、この減速センサの設置位置よりもさらに基板Wの搬送方向下流側には、停止センサ(図示せず)が設置されている。搬送される基板Wの先端が、減速センサに検知されることにより、コロ301の回転速度は減速され、停止センサが基板Wの先端を検知することでコロ301の回転は停止される。このように事前に搬送される基板Wの速度を落とすことで、基板Wに加わる衝撃を最小限にしたうえで、基板Wの停止が可能となる。
【0047】
<●移載ユニット6>
コロコンベア30の下流側には移載ユニット6が設置されている。この移載ユニット6はコロコンベア30と入口浮上ステージ10との間隔空間に設置されており、浮上パッド64と移載昇降コロコンベア60とを備えている。
【0048】
浮上パッド64は、それぞれの上面から基板Wの下面に圧縮気体、例えば空気を噴出して基板Wを浮上させ、基板Wを非接触状態で支持する浮上機構である。浮上パッド64は、空気を噴出するための多数の噴出孔を上面に分布させて設けた長方形状の部材で構成されており、その上面が気体噴射面となる。この噴出孔からは常に空気が噴出されている。この浮上パッド64が、長手方向を基板Wの搬送方向と平行になるように、Y軸方向に沿って所定間隔をおいて複数設置(図1では8個)されている。これら複数の浮上パッド64の集合体が基板Wの浮上ステージとして機能する。
【0049】
所定間隔をおいて配列された浮上パッド64間の空隙には、移載昇降コロコンベア60の複数のコロ601からなるコロ群が、各コロ601の外周面の最上部における回転方向と、浮上パッド64の長手方向とが平行になる向きで位置しており、コロ601の回転の中心を回転軸602が貫いている。コロ601および回転軸602は、コロコンベア30と同様に、駆動源であるモータによって回転駆動される。
【0050】
各コロ601は、図示しない空圧駆動又は油圧駆動式のシリンダを備えた昇降機構によって、上下に昇降可能に構成されている。この昇降機構の駆動に合わせて、コロコンベア60は、略水平を保ちつつZ軸方向に昇降することによって、コロコンベア30で搬送されてきた基板を受け取ったり、浮上パッド64上に基板Wを浮上させたりする。
【0051】
より詳細には、上昇時のコロ601の位置は、その外周面の最上部が基板Wの下面と接触する位置であり、浮上パッド64の噴出孔からの空気の噴出により基板Wが浮上する高さよりも高い位置である。また、下降時のコロ601の位置は、コロ601の外周面の最上部が浮上パッド64の上面よりも低い位置となる。上昇時においては、コロコンベア30と同様に、回転するコロ601の外周面の最上部が基板Wの下面に当接することで、基板Wに推進力を与え、基板Wを下流方向に移動させる。
【0052】
この移載昇降コロコンベア60が上昇した状態で回転することにより、基板Wはコロコンベア30から入口浮上ステージ10へと搬送される。基板Wがコロコンベア30を通過すると、移載昇降コロコンベア60は浮上パッド64の上面よりも下方に下降する。そのため、移載ユニット6による基板Wの支持は浮上パッド64による浮上力のみとなり、入口浮上ステージ10での浮上力と協働して基板Wを浮上させ、コロ等の下部機構とは非接触状態に移行する。
【0053】
この移載ユニット6の搬送方向(+X方向)の長さすなわち図1における支持形式転換区間TBの長さは、搬送方向における基板Wの長さよりも短くなっている。換言すれば、搬送方向(+X方向)について所定長の基板Wの処理を行う装置1において、移載ユニット6の搬送方向(+X方向)の長さはその所定長よりも短くされている。そのため、基板処理ラインの全長を短縮化することが可能である。
【0054】
<●入口浮上ステージ10>
移載ユニット6の下流側には入口浮上ステージ10が設置されている。この入口浮上ステージ10は、多数の空気の噴出孔10aが1枚の板状ステージ面の全面にわたって分布形成されており、圧縮空気の噴出による気体圧力で基板Wを浮上させて、基板Wを、入口浮上ステージ10の上面すなわち気体噴射面に対して非接触状態にすることが可能である。このときの基板Wの浮上高さは10〜500マイクロメートルとなる。入口浮上ステージ10におけるこのような基板浮上原理は、移載ユニット6における浮上パッド64の平行配列と同じである。
【0055】
基板処理装置1の基板搬送路において、基板Wの搬送方向に対して平行な基板Wの幅方向(Y軸方向)外側の位置(以下、「側方位置」と称する)には、回転軸がZ軸と平行であるガイドローラが設置されている。ガイドローラは、入口浮上ステージ10に基板Wの搬送が行われない場合には退避位置(基板Wの側辺の移動軌跡に相当するラインから離れた位置)にある。そして、基板搬送時には、ガイドローラが搬送方向に平行な基板Wの2辺を、両側から押し付けるように接触して基板Wが位置決めされる。
【0056】
入口浮上ステージ10の、X軸方向と平行な両端部の一方には、コロコンベア30と同様に図示しない減速センサと停止センサとが設置されており、基板Wの搬送速度を減速させたうえで、入口浮上ステージ10における所定の停止位置で基板Wの搬送を停止させることができる。
【0057】
<●塗布ステージ4>
図3は、塗布ステージ4の表面を示した上面図である。入口浮上ステージ10の下流には塗布ステージ4が存在する。図1に示すように、この塗布ステージ4上において基板Wはスリットノズル55から処理液としてレジスト液を塗布される。
【0058】
この塗布ステージ4は入口浮上ステージ10と同様に、ステージ表面において多数の小孔が分布形成されている。入口浮上ステージ10では、小孔は空気の噴出のみを行うように構成されているが、塗布ステージ4には、空気の噴出だけでなく、空気の吸引を行うための小孔も形成されている。つまり、塗布ステージ4上に存在する多数の小孔は、図3に示すように、圧縮空気の噴出孔40aと吸引孔40bとに分類される。
【0059】
このように空気の噴出と吸引とが行われることで、噴出孔40aからステージ面上に噴出した圧縮空気の空気流は水平方向に広がった後、それらの噴出孔40aに隣接する吸引孔40bから吸引される。この吸引によって、浮上した基板Wと塗布ステージ4上面との間における空気層(圧力気体層)の圧力バランスがより安定的となり、浮上力が付与された基板Wの高さ位置を調整しやすくなる。以上のように、塗布ステージ4は、基板Wに向けて気体を噴射することによって、基板Wに浮上力を付与して支持する基板支持部として機能する。
【0060】
図4は、塗布ステージ4における空気の流路を示す模式図である。まず、空気の供給流路(供給ラインL1)については、コンプレッサ等の圧縮機構201で圧縮された空気が、レギュレーター202で所定の圧力に調整された後に、各噴出孔40aにつながる流路へ送られる。このように、圧縮機構201は、基板に向けて気体を噴射することにより、基板に浮上力を付与して支持する浮上用給気部として機能する。
【0061】
レギュレーター202で圧力が調整された空気は、フィルタ12を通って清浄化され、ニードル弁13(コントロールバルブ)でその圧力が調節される。このニードル弁13の開度によって、供給ラインL1における気体流量(供給流量)が調整される。したがって、ニードル弁13は、気体供給量調整部として機能する。その後、流量計14a、圧力計15、エアオペレーションバルブ16を通過して、塗布ステージ4の噴出孔40aから噴出される。空気の供給の開始および停止は、エアオペレーションバルブ16の開閉を制御部7からの指令信号によって行うことで実行される。圧縮機構201の圧縮空気の圧力制御もまた、制御部7によって実行される。
【0062】
一方、塗布ステージ4における空気の吸引については、吸引手段としてのブロワ18が用いられている。なお、吸引手段として、真空ポンプ等が用いられていてもよい。塗布ステージ4上に設けられた吸引孔40bは、吸引流路である吸引ラインL2(図4中、二点鎖線で示す)に接続されている。吸引孔40bから吸引された空気は、圧力計17、流量計14b、ニードル弁19(コントロールバルブ)を通過する。このニードル弁19は、その開度が調整されることによって、吸引ラインL2における気体流量(吸引流量)を調整するための吸引量調整部として機能する。
【0063】
<●ノズルユニット5>
図5は、基板搬送チャック8とノズルユニット5とノズル洗浄待機ユニット9とのYZ断面を示した模式図である。
【0064】
基板Wの表面にレジスト液を塗布するノズルユニット5は、塗布ステージ4の上方に設置されており、図5に示す架橋構造を持つ。このような架橋構造は、例えばカーボンファイバ補強樹脂を骨材とするノズル支持部と、その両端を支持して昇降させる昇降機構とから構成されている。ノズル支持部にはスリットノズル55が設置されている。このスリットノズル55は、処理液供給機構(図示せず)から供給されるレジスト液を、その下端に形成されているスリット状の吐出口55aから基板Wの上面へ吐出する。この吐出口55aは、塗布ステージ4に対して略水平であり、Y軸方向に沿って延びている。
【0065】
ノズルの昇降機構はノズル支持部の両端に設置されており、主に駆動源であるサーボモータ59と、ボールねじ58とによって構成されている。このサーボモータ59により、ノズル支持部は塗布ステージ4に対して鉛直方向に延びたボールねじ58に沿って昇降駆動されて、スリットノズル55の吐出口55aと基板Wとの間隔は調節される。
【0066】
この昇降機構には、基板搬送路の両端(−Y側、+Y側)で基板と接しない位置にX軸方向に沿って延びるノズルユニット走行ガイド51が設置されている。
【0067】
2つ(−Y側、+Y側)のノズルユニットリニアモータ53のそれぞれの固定子は本体装置のY軸方向の側面にX軸方向に沿って設けられており、それぞれの移動子は昇降機構の外側に固設されている。これらの固定子と移動子との間に生じる磁気相互作用によって、ノズルユニット5は、ノズルユニット走行ガイド51に沿って移動する。
【0068】
塗布処理を行う際には、スリットノズル55の吐出口55aからレジスト液を吐出した状態で、基板搬送チャック8が基板Wの両端を保持して(+X)軸方向に所定の速度で水平移動させる。
【0069】
基板搬送チャック8は、下面が非接触状態にある基板Wのエッジを保持して基板Wを下流方向に搬送するための装置である。原点状態において基板搬送チャック8は、浮上パッド64と入口浮上ステージ10とに跨って停止した基板Wの、X軸方向に平行な両端部の直下に位置している。つまり、基板Wを吸着する位置の内側に、移載ユニット6と入口浮上ステージ10とが位置する構造である。
【0070】
図1等に示すように、基板搬送チャック8は、基板搬送経路に沿って、入口浮上ステージ10、塗布ステージ4および出口浮上ステージ11の両側部のみならず、移載ユニット6の両側部にも延在している。
【0071】
図5に示すように基板搬送チャック8は、左右対称(+Y側と−Y側とで対称)構造となっており、左右それぞれで、基板Wを吸着保持するチャック部88と、X軸方向に移動するための搬送チャック走行ガイド81と、その移動のための駆動力を発生させる搬送チャックリニアモータ83と、基板Wの位置を検出するための搬送チャックリニアスケール82とを備えている。
【0072】
チャック部88は、図示しないシリンダの動作により昇降させることが可能である。チャック部88が上昇することで、+Y側、−Y側の基板Wの両端部の下面は支持され、吸着保持される。
【0073】
このチャック部88の下方には、基板搬送路の両端(−Y側、+Y側)で、ノズルユニット走行ガイド51よりも内側の位置に、X軸方向に沿って搬送チャック走行ガイド81が設置してある。
【0074】
2つの搬送チャックリニアモータ(−Y側、+Y側)のそれぞれの固定子は基板処理装置1のY軸方向における最も内側の側面にX軸方向に沿って設けられている。それぞれの移動子は基板搬送チャック8に固設されている。これらの固定子と移動子との間に生じる 磁気相互作用によって基板搬送チャック8は、搬送チャック走行ガイド81に沿って移動する。
【0075】
2つの搬送チャックリニアスケール82についても、基板処理装置1の両端(−Y側、+Y側)に、それぞれ設置されている。この搬送チャックリニアスケール82が基板搬送チャック8の移動位置を検出するため、制御部7はその検出結果に基づいて基板位置の制御を行う。
【0076】
ノズル洗浄待機ユニット9は、スリットノズル55が基板Wの表面に塗布処理を行った後で、レジスト液で汚れたノズル先端を洗浄し、次の塗布処理に向けてスリットノズル55の吐出口55aの状態を整えるための装置である。そのため、スリットノズル55からのレジスト液の吐出対象となる略円筒状のローラ95を備えている。
【0077】
ローラ95の外周面にスリットノズル55を近接させた状態で吐出口55aから一定のレジスト液を吐出させると、吐出口55aにレジスト液の液だまりが形成される。このように吐出口55aに液だまりが均一に形成されると、その後の塗布処理を高精度に行うことが可能となる。このようにして、スリットノズル55の吐出口55aは初期化され、次の基板Wの塗布処理に備える。
【0078】
図1,2に戻って、塗布ステージ4の下流には出口浮上ステージ11が設置されている。この出口浮上ステージ11は入口浮上ステージ10と同様に気体を噴出させるための噴出孔11aが形成されており、さらにリフトピン115が噴出孔11aの合間を縫って所定間隔をおいて、基板Wの全面に対向するように配置されている。
【0079】
リフトピン115は出口浮上ステージ11の下方に設置されたリフトピン昇降機構(図示せず)によって、鉛直方向(Z軸方向)に昇降駆動される。下降時はリフトピン115の先端が出口浮上ステージ11の上面以下に、上昇時はリフトピン115の先端が基板Wを移載ロボット36に受け渡す位置まで上昇する。リフトピン115が上昇することで基板Wの下面は支持され、持ち上げられるので、基板Wは出口浮上ステージ11の上面から引きはがされる。出口浮上ステージ11の下流に設置された移載ロボット36がリフトピン115間に移載フォークを差し込み、リフトピン115からの基板Wの受け渡しが行われる。
【0080】
<1.3. 流路内の流量制御>
次に、図4で示した空気の各流路における気体の流量制御について説明する。
【0081】
図6は、制御部7と制御部7によって制御される各構成との接続関係を示したブロック図である。制御部7は、図示を省略するCPUやメモリ(RAM)の他、プログラムが格納されたROM等の一般的なコンピュータとして構成されている。図6では、流量制御を行う要素に絞って図示しているが、制御部7は、コンピュータにインストールされたプログラムと、装置各部の特性データ、および各基板Wの処理手順(レシピ)に従って装置各部を制御し、一連の基板の連続処理を実行するように構成されている。なお、制御部7はその一部または全部が専用回路で構成されていてもよい。
【0082】
制御部7は、ニードル弁13,19を制御することによって、各気体流路内の気体流量を制御する。詳細には、制御部7は、供給ラインL1内の気体流量を流量計14aで検出し、この検出結果に基づき、ニードル弁13の開度を制御して、供給ラインL1内の気体流量を調整する。また、制御部7は、吸引ラインL2内の気体流量を流量計14bで検出し、この検出結果に基づき、ニードル弁19の開度を制御して、吸引ラインL2内の気体流量を調整する。
【0083】
制御部7による流量検出に基づいた各流路(供給ラインL1および吸引ラインL2)内の流量制御は、以下のようにして実施される。すなわち、噴出孔40aから噴出する気体量や吸引孔40bから吸引する気体の吸引量の条件を複数変更して、試験的に基板Wの塗布処理を行い、問題なく塗布処理が実施できたときの各流路の流量値を基準値として取得する。なお、各流量値は、塗布ステージ4上における基板Wの位置に応じて変化し得るため、基板Wの位置に応じて基準値が定められる。基準値が記録された基準値データSTDは、記憶部71(補助記憶装置等)に格納される。また、流量値と同様に、圧力計15,17によって測定される圧力値についても、同様に基準値データSTDとして記憶部71に格納される。
【0084】
ここで、各流路内における気体流量を制御する場合、制御部7は、上記記憶部71に格納された流量の基準値と、実際の基板処理(ここでは、基板搬送と塗布処理を含む。)の際に測定される各流路内の流量の測定値とを比較する。そして、流量判定部7aによって測定値が基準値から所定の閾値で離れていると判定される場合に、ニードル弁13,19の開度を調整することによって、流量値が許容範囲内に収束するように流量調整を行う。
【0085】
また、図6に示すように、制御部7には報知機構73が接続されている。報知機構73は、例えば液晶ディスプレイ等に警告表示を行うもの、あるいは、音響や赤色光線などを発したりするもの、もしくはこれらの組合せたもの等で構成されている。制御部7は、流量計14a,14bおよび圧力計15,17の測定結果が異常である際等に、報知機構73によってその異常をオペレータに報知するように構成されている。
【0086】
次に、塗布ステージ4において基板Wを浮上搬送する際の、制御部7による流量制御処理について説明する。
【0087】
図7は、塗布ステージ4における流量制御処理を実施する制御部7の動作の流れ図である。まず、制御部7は、塗布ステージ4上に基板Wが存在するか否かを判断する(ステップS1)。具体的には、搬送チャックリニアスケール82を監視することによって、基板搬送チャック8により搬送されている基板Wの位置を検出し、塗布ステージ4上に基板Wが存在するか否かを検出する。
【0088】
塗布ステージ4上に基板Wが存在する場合(ステップS1においてYES)、制御部7は、流量制御を行わずに、塗布ステージ4上の基板Wが搬出されるまで待機する。一方、塗布ステージ4上に基板Wが存在しない場合(ステップS1においてNO)、次のステップである流量判定(ステップS2、ステップS6)へ進む。
【0089】
まずステップS2について説明する。制御部7は、記憶部71に格納された供給流量の基準値と、実際に流量計14aで測定される測定値とを比較することによって、測定値が許容範囲内にあるかどうかを判定する(ステップS2)。この判定は、具体的には、測定値と基準値との差、または測定値を基準値で割ったときの商の値が、あらかじめ定められた閾値を超えるか否か等を流量判定部7aが判定することによって実現される。
【0090】
測定された供給流量が許容範囲内である場合(ステップS2においてYES)、流量制御を行う必要はないため、制御部7は次のステップS11(圧力測定)に進む。これに対して、供給流量が許容範囲外である場合は(ステップS2においてNO)、制御部7は、供給ラインL1における気体流量の調整を開始する(ステップS3)。詳細には、ニードル弁13の開度を制御する。そして制御部7は、制御許容時間内であるかどうかを判定する(ステップS4)、具体的には、ステップS1において検出される基板Wの位置に基づき、基板Wが塗布ステージ4上に到達するまでの時間が算出され、この時間が制御許容時間となる。ステップS4では、この制御許容時間がまだ残っているかどうかで判定される。
【0091】
制御許容時間内である場合(ステップS4においてYES)、制御部7は再びステップS2に戻って、流量判定を行い、以降の動作を繰り返して実行する。これに対して、制御許容時間が既に完了している場合は(ステップS4においてNO)、制御部7は、報知機構73によって、供給ラインL1における供給流量が異常であることをオペレータに報知して(ステップS5)、流量制御を終了する。
【0092】
また、制御部7は、以上のステップS2〜ステップS5の動作と並行して、吸引流量の制御についても行う。具体的には、ステップS1において塗布ステージ4上に基板Wがないことを確認すると、制御部7は、記憶部71に格納された吸引流量の基準値と、実際に吸引ラインL2の流量計14bで測定される測定値とを比較することによって、測定値が許容範囲内にあるかどうかを判定する。この判定は、具体的には、測定値と基準値との差、もしくは、測定値を基準値で割ったときの商の値が、あらかじめ定められた閾値を超えるか否かを流量判定部7aが判定することによって実現される。
【0093】
測定された吸引流量の値が許容範囲内である場合(ステップS6においてYES)、流量制御を行う必要はないため、制御部7は流量調整を行わずに次のステップS11(圧力測定)に進む。これ対して、吸引流量が許容範囲外である場合は(ステップS6においてNO)、制御部7はニードル弁19の開度を制御することによって、吸引ラインL2における気体流量の調整を開始する(ステップS7)。さらに制御部7は、制御許容時間内であるかどうかを判定する(ステップS9)。このステップS9は、ステップS4と同様であるため、説明を省略する。
【0094】
制御許容時間内である場合(ステップS8においてYES)、制御部7は再びステップS6に戻って、流量判定を行うことにより、吸引流量が適切かどうかを判定する。これに対して、制御許容時間が完了している場合は(ステップS8においてNO)、制御部7は、報知機構によって、吸引流量が異常であることをオペレータに報知して(ステップS9)、流量制御を終了する。
【0095】
ステップS2およびステップS6において供給流量および吸引流量の双方が許容範囲内の大きさであると判定された場合(ステップS2,S6においてYES)、制御部7は供給ラインL1内および吸引ラインL2内の圧力が、許容範囲内の値であるかどうかを判定する(ステップS11)。具体的には、圧力計15,17で計測される圧力値と、基準値データSTDに記録された圧力の基準値とを比較することによって、測定される圧力値が予め定められた許容範囲内にあるか否かが判定される。
【0096】
圧力が許容範囲を超えると判定された場合(ステップS11においてNO)、制御部7は報知機構73によって、圧力が異常であることをオペレーターに報知して(ステップS12)、流量制御処理を終了する。この際、供給ラインL1および吸引ラインL2のどちらの圧力が異常であるかどうかが分かるように報知することで、後のメンテナンスが容易となる。
【0097】
一方、各流路内の圧力についても許容範囲内であると判定された場合(ステップS11においてYES)、制御部7は、基板進入を許可する(ステップS13)。具体的には、基板搬送チャック8等による基板Wの塗布ステージ4上への基板搬送を許可する。そして制御部7は、塗布ステージ4に搬送される基板Wに対して、スリットノズル55からレジスト液を吐出する等の一連の塗布処理を実行する(ステップS14)。
【0098】
塗布処理が完了すると制御部7は、さらに塗布処理すべき次の基板Wがあるかどうかを検出することによって、基板処理装置1における塗布処理を終了するかどうかを判定する(ステップS15)。次の処理対象の基板Wがない等のために塗布処理を終了する場合は(ステップS15においてYES)、流量制御処理を終了する。これに対して、塗布処理を続行する場合は(ステップS15においてNO)、ステップS1に戻って、以降の動作を繰り返して実行する。
【0099】
以上のように、本実施形態に係る基板処理装置1は、基板Wの位置を検出することによって、塗布ステージ4に基板Wが搬送されてくる前に流量判定を行い、各流路内の流量制御を行う。これにより、基板Wに向けた気体の供給が適切に実施されるかどうかを高精度に把握できるとともに、基板処理前に基板を適切な高さ位置に保持できるかどうかを検知し得る。したがって、基板Wの処理エラーの発生を抑制できる。
【0100】
また、ステップS5,S9,S11において異常報知が実行された場合、制御部7はステップS13の処理(基板進入の許可)を実行しないため、塗布ステージ4上に基板Wが搬送されることが抑制される。これにより、基板Wの高さ位置を制御できないことによる基板Wの塗布不良の発生を抑制することができる。
【0101】
なお、ステップS5,S9,S11で異常報知が実行された場合であっても、制御部7が基板Wの搬送および塗布処理を継続して行うように構成してもよい。基板搬送を停止することは、基板処理装置における基板処理の歩留まり低下を必然的に招来するおそれがあるため、塗布処理を継続して行うことが望ましい場合もある。なお、この場合には、流量値や圧力値が異常な状態で塗布処理が行われた基板Wについて、後の検査工程で必ず検査するように構成されることが望ましい。
【0102】
また、ステップS5,S9,S11において異常報知が実行された場合に、基板搬送を行うものの、塗布処理を行わないように構成されていてもよい。この場合は、塗布不良の発生を予め抑制することができる。
【0103】
以上が、制御部7による流量制御処理についての説明である。
【0104】
ところで、本実施形態の基板処理装置1では、各流路の「流量」に基づき、塗布ステージ4上で噴射もしくは吸引される空気の量を調整する。ここで、空気の供給量および吸引量を、各流路の「圧力」に基づいて制御することも可能である。しかしながら、圧力に基づく流量制御の場合、以下のような問題が起こり得る。
【0105】
すなわち、例えば、基板Wが塗布ステージ4の上方の大部分を覆っているときなどは、噴出孔40aから噴出した空気の多くが吸引孔40bで吸引される状態となる。この場合、各流路の圧力の絶対値は十分に大きいため、比較的安定して各流路の圧力を測定することができる。ところが、基板Wが塗布ステージ4上(詳細には、噴出孔40aまたは吸引孔40bの上方)にない場合や、僅かだけしか覆われていない場合等では、噴出孔40aから噴出される空気のほとんどが大気中に分散し、吸引孔40bは、噴出孔40aからの空気よりも大気中の空気を吸引することとなる。このような場合、各流路の圧力の絶対値は、非常に低い値となるため、安定して正確に圧力を測定することは困難となる。
【0106】
これに対して、「流量」については、塗布ステージ4上における基板Wの有無にかかわらず、安定して測定することができる。したがって、気体の供給量および吸引量を、供給ラインL1および吸引ラインL2の気体流量のそれぞれに基づいて適切に制御することができるため、基板Wを適切な高さ位置に搬送することができる。したがって、「圧力」ではなく「流量」に基づいて空気の供給量および吸引量を制御することで、安定した基板搬送と基板処理とを実行することができる。
【0107】
また、圧力に基づく流量制御の場合、圧力計の測定精度が安定する(すなわち、安定した測定結果が得られる)までに相応の時間を要する。これに比べて、流量測定の場合は、比較的早くに流量値を安定的に検出することができる。したがって、流量制御の応答性を高めることができるため、基板Wの搬送高さをより制御しやすくなる。
【0108】
<2. 第2実施形態>
第1実施形態の基板処理装置1では、基板Wが塗布ステージ4に搬入される前に流量判定して、流量制御を行うように構成されていたが、流量制御を行うタイミングは、上記のようなものに限られるものではない。具体的には、塗布ステージ4上を基板Wが通過する間(レジスト液が塗布される期間を含む。)、流量計14a,14bによって検出される流量値が、記憶部71に格納された基準値と比較して、許容範囲内にあるかがどうかが判定される。
【0109】
図8は、浮上搬送される基板Wの位置と、塗布ステージ4の各流路における気体流量の関係を説明するための説明図である。なお、図8(a)〜(c)は、基板Wが移動する様子を模式的に示している。詳細には、図8(a)は、基板Wの搬送方向の前方端FWが塗布ステージ4の(−X)側端部(以下、始端位置POS1)に到達してから塗布ステージ4の(+X)側端部(以下、終端位置POS2)に到達するまでを示している。また、図8(b)は、前方端FWが終端位置POS2に到達してから基板Wの搬送方向の後方端BWが始端位置POS1に到達するまでを示している。さらに、図8(c)は、後方端BWが始端位置POS1に到達してから終端位置POS2に到達するまでを示している。また、図8(d)は、移動する基板Wの前方端FWの各位置における、供給ラインL1の供給流量の変化(実線)と、吸引ラインL2の吸引流量の変化(破線)を示す図である。
【0110】
図8(d)に示すように、前方端FWが始端位置POS1に到達するまでは、塗布ステージ4上に基板Wが存在しないため、供給流量および吸引流量は、略一定に保たれる。そして前方端FWが始端位置POS1に到達してから終端位置POS2に到達するまで、塗布ステージ4上を基板Wが次第に覆うこととなる。このとき、供給ラインL1および吸引ラインL2内の供給流量および吸引流量が次第に減少する。
【0111】
さらに図8(b)に示すように、前方端FWが終端位置POS2を通過してから後方端BWが始端位置POS1を通過するまでの間は、塗布ステージ4上が基板Wによって覆われる状態が続く。この期間では、図8(d)に示すように、供給流量および吸引流量は、略一定となる。また、図8(c)に示すように、後方端BWが始端位置POS1を通過してから終端位置POS2を通過するまでは、基板Wが塗布ステージ4上から徐々に退出されることによって、供給流量および吸引流量が次第に増加する。そして後方端BWが終端位置POS2を通過すると、塗布ステージ4上が完全に開放され、再び供給流量および吸引流量が略一定に保たれることとなる。
【0112】
以上のように、塗布ステージ4上における基板Wの有無によって、流量計14a,14bが検出される供給流量、吸引流量が共に変化する。特に、基板Wが塗布ステージ4上に進入したときの供給流量、吸引流量のそれぞれは、塗布ステージ4から退出したとき(もしくは進入する前)よりも小さい値となる。
【0113】
本実施形態では、流量値の比較対象となる供給流量および吸引流量の基準値を、基板Wの位置毎に応じて上記のような大小関係となるように設定される。そして制御部7は、各基板処理において塗布ステージ4上に進入する前から退出するまでの間に測定される流量の測定値と、この基準値を常時比較するように構成される。このように基板処理装置1を構成した場合、基板Wが塗布ステージ4上で処理される間、基板Wの高さ位置が適切に制御されているかどうかを検知できるため、基板Wの処理エラーを効率的に検出し得る。
【0114】
なお、基板Wが塗布ステージ4上を通過する間、制御部7は、流量判定を行いながら、各流路の流量値を許容範囲内に収束させるようにニードル弁13,19を制御してもよい。ただし、塗布ステージ4上に基板が搬入された状態で流量制御を実行した場合、基板Wに振動が生じる等して逆にその姿勢が不安定となり、塗布不良が発生する場合がある。したがって、基板Wが塗布ステージ4上を通過する間は、制御部7は流量判定のみを行い、流量制御を行わない方が好ましい。このため、流量制御については、第1実施形態のように基板Wが塗布ステージ4に搬入される前にのみ実行するようにし、基板Wが塗布ステージ4上を移動する間(特に、基板Wにレジスト液の塗布を行っている間)は、流量制御を一切行わないように構成することによって、塗布処理中の基板Wの姿勢を安定させるようにすることが望ましい場合もある。
【0115】
<3. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0116】
例えば上記実施形態では、図4に示すように、気体給気部である圧縮機構201により供給される全気体の流量値を流量計14aで測定するようにしているが、供給ラインL1のうちの、例えば噴出孔40aのそれぞれに連結する分岐後の流路において、流量計14aを設け、この位置での流量に基づいて制御部7が流量制御を行うように構成してもよい。このことは、吸引ラインL2における吸引流量の測定においても同様である。
【0117】
また、上記実施形態では、各流路の流量調節手段として、ニードル弁を使用すると説明したが、ダイヤフラム式、バタフライ式等の流量調節弁やマスフローコントローラーなどの調節弁が用いられていてもよい。
【0118】
また、基板に向けて供給する気体として、窒素ガス等を採用することによって、基板W上の処理液を含む化合物への影響を最小限に抑制することも可能である。
【0119】
また、上記実施形態では、搬送チャックリニアスケール82によって基板Wの位置を検出するようにしているが、例えば、物理的に基板Wに接触することによって、基板Wの通過を検出する接触式センサーや、光や音波等によって基板Wの位置を検出する非接触式センサー等を利用して、基板Wの位置を検出するようにしてもよい。
【0120】
また、上記実施形態および変形例にて説明した各構成は、矛盾の生じない限りにおいて、互いに組み合わせたり、あるいは省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0121】
1 基板処理装置
2 基板搬送装置
3 塗布装置
4 塗布ステージ
5 ノズルユニット
7 制御部
8 基板搬送チャック
10 入口浮上ステージ
11 出口浮上ステージ
13,19 ニードル弁
14a,14b 流量計
15,17 圧力計
18 ブロワ
201 圧縮機構
40a 噴出孔
40b 吸引孔
55 スリットノズル
71 記憶部
73 報知機構
7a 流量判定部
82 搬送チャックリニアスケール
BW 後方端
FW 前方端
L1 供給ライン
L2 吸引ライン
POS1 始端位置
POS2 終端位置
STD 基準値データ
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される基板に対して処理を行う基板処理装置であって、
基板に向けて気体を供給することにより、前記基板に浮上力を付与する気体供給部と、
基板に向けて供給される気体の供給流量を検出する供給流量検出部と、
前記浮上力が付与される基板の位置を検出する位置検出部と、
前記供給流量検出部によって検出される供給流量と、前記位置検出部によって検出される基板の位置に対応した供給流量の基準とを比較することによって、前記供給流量が許容範囲内の値であるかどうかを判定する供給流量判定部と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記判定部によって、前記供給流量検出部が検出する供給流量が許容範囲外の値であると判定される場合に、許容範囲内に収まるように前記気体供給部から供給される気体の流量を制御する流量制御部、
をさらに備える基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置において、
前記気体供給部から供給された気体を基板に向けて噴射する複数の噴出孔が形成された平面を有するステージと、
前記ステージの平面の上方において、基板に対して所定の処理を行う処理部と、
をさらに備える基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置において、
前記処理部が、
基板の進行方向に対して直交する方向に延びるスリット状の吐出口から処理液を吐出して基板に塗布するスリットノズルと、
前記スリットノズルに対して、前記処理液を供給する処理液供給部と、
を備える基板処理装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の基板処理装置において、
基板の位置に対応する前記供給流量の基準のうち、基板が前記ステージ上に進入した位置に対応する基準が、前記ステージ上から退出した位置に対応する基準よりも小さい基板処理装置。
【請求項6】
請求項3から5までのいずれか1項に記載の基板処理装置において、
基板がステージ上に進入する前に、前記供給流量判定部が、前記供給流量検出部の検出する供給流量が許容範囲内の値であるかどうかを判定する基板処理装置。
【請求項7】
請求項3から6までのいずれか1項に記載の基板処理装置において、
前記ステージ上に進入する前から退出するまでの間、前記供給流量判定部が、前記供給流量検出部の検出する供給流量が許容範囲内の値であるかどうかを判定する基板処理装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の基板処理装置において、
気体を吸引することによって、前記浮上力が付与される基板の高さ位置を調節する気体吸引部、
をさらに備える基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置において、
前記気体吸引部によって吸引される気体の吸引流量を検出する吸引流量検出部と、
前記吸引流量検出部によって検出される吸引流量と、前記位置検出部によって検出される基板の位置に対応する吸引流量の基準とを比較することによって、前記吸引流量が許容範囲内の値であるかどうかを判定する吸引流量判定部と、
を備える基板処理装置。
【請求項10】
搬送される基板に対して、処理を行う基板処理方法であって、
(a) 基板に向けて気体を供給することにより、前記基板に浮上力を付与する工程と、
(b) 前記(a)工程において基板に向けて供給される気体の供給流量を検出する工程と、
(c) 前記(a)工程において浮上力が付与される基板の位置を検出する工程と、
(d) 前記(b)工程において検出される供給流量と、前記(c)工程において検出される基板の位置に対応する供給流量の基準とを比較することによって、前記供給量が許容範囲内の値であるかどうかを判定する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項11】
請求項10に記載の基板処理方法において、
前記(c)工程において、検出される供給流量が許容範囲外の値であると判定される場合に、許容範囲内に収まるように前記(a)工程において供給する気体流量を制御する工程、
をさらに有する基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−210971(P2011−210971A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77583(P2010−77583)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】