基板搬送装置、基板処理システムおよび基板搬送方法、ならびに記憶媒体
【課題】真空において熱をともなう処理を行う基板処理装置において、基板を高速で搬送しても基板の位置精度を高くすることができること。
【解決手段】熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送装置は、基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、ピックにより真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するようにピックを駆動させる駆動部と、ピックによる基板の搬送動作を制御する搬送制御部とを有し、搬送制御部は、基板を真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の基準位置からの位置ずれを算出し、位置ずれを補正して基板を真空処理ユニットに搬入するように駆動部を制御する。
【解決手段】熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送装置は、基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、ピックにより真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するようにピックを駆動させる駆動部と、ピックによる基板の搬送動作を制御する搬送制御部とを有し、搬送制御部は、基板を真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の基準位置からの位置ずれを算出し、位置ずれを補正して基板を真空処理ユニットに搬入するように駆動部を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハ等の基板に熱をともなう真空処理を施す基板処理装置に用いられる基板搬送装置、それを用いた基板処理システムおよび基板搬送方法、ならびに記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、被処理基板である半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)に対し、成膜処理等の真空処理が多用されている。最近では、このような真空処理の効率化の観点、および酸化やコンタミネーション等の汚染を抑制する観点から、複数の真空処理ユニットを真空に保持される搬送室に連結し、この搬送室に設けられた基板搬送装置により各真空処理ユニットにウエハを搬送可能としたクラスターツール型のマルチチャンバタイプの真空処理システムが用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなマルチチャンバ処理システムにおいては、真空に保持されている搬送室に、上述した真空処理ユニットの他に、大気中に置かれているウエハカセットから真空に保持された搬送室へウエハを搬送するためのロードロック室を連結し、搬送室に設けられた基板搬送装置により、真空処理ユニットとロードロック室の間、または真空処理ユニット間でウエハの搬送が行われる。
【0004】
このとき用いる基板搬送装置においては、ウエハを保持するピックとして、ウエハの裏面のみ、または下面側ベベルのみを保持するものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−208589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近時、高速でウエハ搬送を行って高スループットで処理を行うことが要求されているが、上述のようにウエハの裏面のみ、または下面側ベベルのみを保持するピックを用いる場合には、高速で搬送するとウエハが滑ってしまいウエハの位置精度が低いものとなってしまう。また、成膜処理のような熱をともなう処理を行う場合には、熱膨張による誤差も重畳されて益々位置精度が低下してしまう。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、真空において熱をともなう処理を行う基板処理装置において、基板を高速で搬送しても基板の位置精度を高くすることができる基板搬送装置、それを用いた基板処理システム、および基板搬送方法を提供することを課題とする。また、このような搬送方法を実行するプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室とを有する基板処理システムにおいて、前記搬送室内に設けられ、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送装置であって、基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部と、前記ピックによる基板の搬送動作を制御する搬送制御部とを有し、前記搬送制御部は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする基板搬送装置を提供する。
【0009】
本発明の第2の観点では、熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室と、前記搬送室内に設けられ、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送装置とを具備する基板処理システムであって、前記基板搬送装置は、基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部と、前記ピックによる基板の搬送動作を制御する搬送制御部とを有し、前記搬送制御部は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする基板処理システムを提供する。
【0010】
上記第1および第2の観点において、前記位置決めピンは、前記ピック上に基板を挟むように配置され、前記ピックを移動した際の慣性で基板を前記位置決めピンに押しつけることにより基板が位置決めされるように構成することができる。
【0011】
また、前記ピックは複数の位置決めピンを有し、前記複数の位置決めピンのいずれかを移動させて基板を前記ピック上でクランプするクランプ機構をさらに有する構成とすることもできる。
【0012】
この場合に、前記ピックおよび他のアームを含む多関節アーム機構を有し、前記ピックは隣接するアームに対し回転可能に設けられ、前記クランプ機構は、前記ピックの回転にともなって変位するカムと、前記カムの変位により前記位置決めピンを進退移動させ、基板をクランプしまたはリリースする移動部材と、前記カムの変位を前記移動部材に伝達させる中間機構とを有し、前記カムは、前記ピックの回転位置に同期して前記位置決めピンの進退が定まるようにその位置が調整されるように構成することができる。
【0013】
また、前記位置決めピンは、前記ピックの先端側に設けられた先端側位置決めピンと、前記ピックの基端側に設けられた基端側位置決めピンとを有し、前記クランプ機構は前記基端側位置決めピンを進退移動させて基板をクランプしまたはリリースするように構成され、前記多関節アーム機構を伸長させて、基板を受け渡すために前記ピック上の基板をリリースする際には、前記ピックの加速度が負となる範囲で基板をリリースし、前記多関節アームを縮退させて、前記ピック上に基板を受け取った後に基板をクランプする際には、前記ピックの加速度が正となる範囲で基板をクランプする構成とすることができる。
【0014】
また、上記第1の観点および第2の観点において、前記基準位置情報は、常温において、前記真空処理ユニットに対して搬入出される基板が通過する位置に設けられた位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求めることができる。このとき、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の基板の位置情報は、前記位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められ、このようにして求めた基板の位置情報と前記基準位置情報とから前記位置ずれを算出することができる。前記位置ずれの検出は、基板を前記真空処理ユニットから搬出する際または前記真空処理ユニットに搬入する際に行われ、前記位置ずれの補正は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に行わるようにすることができる。
【0015】
また、前記基板処理システムは、前記搬送室に接続され、大気雰囲気と真空との間で圧力可変であり、大気雰囲気から前記搬送室に対して基板を搬送するロードロック室をさらに有し、前記搬送制御部は、基板を前記ロードロック室に搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を前記ロードロック室に搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、前記位置ずれを補正して前記基板を前記ロードロック室に搬入するように前記駆動部を制御するようにすることができる。
【0016】
さらに、前記ピックの前記位置決めピンは、垂直軸に対して回転可能なリング部材を有していることが好ましい。また、前記ピックは、基板の裏面を支持し、基板を位置決めする際の移動方向に回転可能なローラを備えた裏面支持パッドを有することが好ましい。
【0017】
本発明の第3の観点では、熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室とを有する基板処理システムにおいて、基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部とを有し、前記搬送室に設けられた基板搬送装置を用いて、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送方法であって、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入することを特徴とする基板搬送方法を提供する。
【0018】
本発明の第4の観点では、コンピュータ上で動作し、基板搬送装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第3の観点の基板搬送方法が行われるように、コンピュータに前記基板搬送装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板を真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の基準位置からの位置ずれを算出し、位置ずれを補正して基板を真空処理ユニットに搬送するように駆動部を制御するので、真空において熱をともなう処理を行う基板処理装置において、基板を高速で搬送しても基板の位置ずれが抑制され、また、熱膨張等も補正することができ、基板の位置精度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るマルチチャンバタイプの基板処理システムの概略構造を示す水平断面図である。
【図2】基板搬送装置の第1の例を示す平面図である。
【図3】基板搬送装置の第1の例を示す正面図である。
【図4】基板搬送装置の第1の例の駆動状態を説明するための図である。
【図5】基板搬送装置の第1の例のピックを説明するための斜視図である。
【図6】基板搬送装置の第1の例のピックの裏面支持パッドの好ましい例を説明するための図である。
【図7】図6の裏面支持パッドの構成を示す分解斜視図である。
【図8】基板搬送装置の第1の例のピックのストッパピンの好ましい例を説明するための斜視図および断面図である。
【図9】基板搬送装置の第1の例におけるピックのストッパピンの他の好ましい例を説明するための断面図である。
【図10】基板搬送装置の第2の例の要部を示す平面図である。
【図11】基板搬送装置の第2の例のクランプ機構を示す図である。
【図12】基板搬送装置の第2の例において、クランプ機構によるクランプ開始時と完了時における、多関節アーム機構の状態およびクランプ機構の状態を説明するための図である。
【図13】基板搬送装置の第2の例において、多関節アーム機構のストロークとピックにおけるキャプチャレンジとの関係を示す図である。
【図14】基板搬送装置の第2の例において、多関節アーム機構の伸長時の速度・加速度曲線とリリースタイミング、および縮退時の速度・加速度曲線とクランプタイミングを示す図である。
【図15】基板搬送装置のピックでウエハを保持した際の熱膨張による変位の様子を説明するための図である。
【図16】基板搬送装置における熱膨張による位置ずれの補正の手順を示すフローチャートである。
【図17】熱膨張による位置ずれの補正の際におけるセンサによるウエハの位置の計測態様を説明するための図である。
【図18】熱膨張による位置ずれの補正の際において、実際にずれ量を補正する態様を説明するための図である。
【図19】ウエハの基準位置の計測と、ウエハのずれ量の算出とを説明するための図である。
【図20】多関節アーム機構の伸長時の速度・加速度曲線と基板搬送装置の第1の例および第2の例における光学センサ設置可能領域、ならびに縮退時の速度・加速度曲線と基板搬送装置の第1の例および第2の例における光学センサ設置可能領域を示す図である。
【図21】アーム機構の伸び補正に用いる、レーザー変位計で測定した伸びと、位置検出センサユニットでの測定結果との相関関係を示す図である。
【図22】アーム機構の温度とレーザー変位計で測定したアーム機構の伸びとの関係を示す図である。
【図23】アイドリング時間とレーザー変位計で測定したアーム機構の伸びの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0022】
<本発明の一実施形態に係る基板処理システム>
図1は、本発明の一実施形態に係るマルチチャンバタイプの基板処理システムの概略構造を示す水平断面図である。
【0023】
基板処理システム100は、例えば成膜処理のような熱をともなう高温処理を行う4つの真空処理ユニット1、2、3、4を備えており、これらの各真空処理ユニット1〜4は六角形をなす搬送室5の4つの辺にそれぞれ対応して設けられている。また、搬送室5の他の2つの辺にはそれぞれ本実施形態に係るロードロック室6、7が設けられている。これらロードロック室6、7の搬送室5と反対側には搬入出室8が設けられており、搬入出室8のロードロック室6、7と反対側には被処理基板としてのウエハWを収容する容器であるフープFを取り付ける3つのポート9、10、11が設けられている。真空処理ユニット1、2、3、4は、その中で処理プレート上に被処理体を載置した状態で所定の真空処理、例えばエッチングや成膜処理を行うようになっている。
【0024】
真空処理ユニット1〜4は、同図に示すように、搬送室5の各辺にゲートバルブGを介して接続され、これらは対応するゲートバルブGを開放することにより搬送室5と連通され、対応するゲートバルブGを閉じることにより搬送室5から遮断される。また、ロードロック室6,7は、搬送室5の残りの辺のそれぞれに、第1のゲートバルブG1を介して接続され、また、搬入出室8に第2のゲートバルブG2を介して接続されている。ロードロック室6,7は、ウエハWを載置するステージを有し、高速で大気圧と真空状態の間で変化させることができ、真空状態にして第1のゲートバルブG1を開放することにより搬送室5に連通され、第1のゲートバルブG1を閉じることにより搬送室5から遮断される。また、第2のゲートバルブG2を開放することにより搬入出室8に連通され、第2のゲートバルブG2を閉じることにより搬入出室8から遮断される。
【0025】
搬送室5内には、真空処理ユニット1〜4、ロードロック室6,7に対して、ウエハWの搬入出を行う本実施形態に係る基板搬送装置12が設けられている。この基板搬送装置12は、搬送室5の略中央に配設されており、2つの多関節アーム機構41および42を有している。なお、基板搬送装置12の詳細な構造は後述する。
【0026】
搬入出室8のポート9,10、11にはそれぞれ図示しないシャッターが設けられており、ウエハWを収容した、または空のフープFがステージS上に載置された状態で、ポート9,10,11に直接取り付けられ、取り付けられた際にシャッターが外れて外気の侵入を防止しつつ搬入出室8と連通するようになっている。また、搬入出室8の側面にはアライメントチャンバ15が設けられており、そこでウエハWのアライメントが行われる。
【0027】
搬送室5内における真空処理ユニット1〜4、およびロードロック室6、7の搬入出口の近傍には、これらに対して搬入出されるウエハWが通過する位置にそれぞれ位置検出センサユニット22が設けられている。位置検出センサユニットは、基板搬送装置12の多関節アーム機構41,42に載せられているウエハWの位置を検出するためのものであり、各位置検出センサユニット22は、2つの光学センサ23a,23bを有している。光学センサ23a,23bとしては、例えば透過式のものが用いられる。
【0028】
搬入出室8内には、フープFに対するウエハWの搬入出およびロードロック室6,7に対するウエハWの搬入出を行う基板搬送装置16が設けられている。この基板搬送装置16は、多関節アーム構造を有しており、フープFの配列方向に沿ってレール18上を走行可能となっていて、その先端の支持アーム17上にウエハWを載せてその搬送を行う。搬入出室8には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。
【0029】
この基板処理システム100における各構成部、例えば、真空処理ユニット1〜4、搬送室5、およびロードロック室6,7におけるガス供給系や排気系、基板搬送装置12、16、ゲートバルブ等は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたコントローラを有する全体制御部30により制御されるようになっている。全体制御部30は実際に制御を行うコントローラの他、基板処理システム100のプロセスシーケンスおよび制御パラメータであるプロセスレシピを記憶した記憶部や、入力手段およびディスプレイ等を備えており、選択されたプロセスレシピに従って基板処理システム100を制御するようになっている。
【0030】
<基板搬送装置の第1の例>
次に、上記処理システムに搭載される基板搬送装置の第1の例について説明する。
図2は基板搬送装置の第1の例を示す平面図、図3はその正面図である。基板搬送装置12は、ベースとなる搬送室5の底板5aに回転自在に支持された回転基台40と、この回転基台40に旋回および屈伸可能に支持され、ウエハWを保持するピック41cおよび42cを有する第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42と、これら第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42の一方を選択的に屈伸させる駆動リンク機構43と、回転基台40を回転させる駆動機構および駆動リンク機構43を揺動させる駆動機構を有する駆動部44と、搬送動作制御を行う搬送制御部45とを有している。搬送制御部45は全体制御部30により制御されるようになっている。駆動部44の各駆動機構は、一定角度のパルス数で制御するステッピングモータを有している。
【0031】
回転基台40は駆動部44に内蔵された駆動機構により中空軸50を介して回転されるようになっている。回転基台40を回転させることにより、第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42を所望のユニットへアクセスすることが可能となる。
【0032】
第1多関節アーム機構41は、基端部が回転基台40に軸51により旋回可能に接続された第1アーム41aと、基端部が第1アーム41aの先端部に軸52により旋回可能に接続された第2アーム41bと、基端部が第2アーム41bの先端部に軸53により旋回可能に接続されたウエハW保持用のピック41cとを有している。各軸には所定の径を有するプーリが固定されており、プーリにはベルトが掛け渡されており、第1アーム41a、第2アーム41b、ピック41cは所定の回転角度比で旋回され、ピック41cが真空処理ユニット1〜4およびロードロック室6,7に対して直線的に移動可能となっており、これら真空処理ユニット1〜4およびロードロック室6,7に対してウエハWの搬入・搬出が可能となっている。
【0033】
第2多関節アーム機構42は、第1多関節アーム機構41と同様の構造で対称に設けられており、基端部が回転基台40に軸54により旋回可能に接続された第1アーム42aと、基端部が第1アーム42aの先端部に軸55により旋回可能に接続された第2アーム42bと、基端部が第2アーム42bの先端部に軸56により旋回可能に接続されたウエハW保持用のピック42cとを有しており、第1多関節アーム機構41と同様に動作することが可能となっている。
【0034】
すなわち、基板搬送装置12は、多関節アーム機構41,42および駆動リンク機構43の機構部を介して駆動部44により駆動させることにより、ピック41c、42cを、真空処理ユニット1〜4およびロードロック室6,7に対してアクセスすることが可能であり、ピック41c、42cを用いて真空処理ユニット1〜4およびロードロック室6,7に対してウエハWを搬入・搬出するようになっている。
【0035】
駆動リンク機構43は、駆動部44に内蔵された駆動機構により、中空軸50の内部に同軸状に設けられた軸60を介して揺動可能に設けられた駆動アーム61と、この駆動アーム61の揺動端に一端が回転自在に連結され、他端がそれぞれ第1多関節アーム機構41の第1アーム41aの下部および第2多関節アーム機構42の第1アーム42aの下部に回転自在に連結された2つの従動アーム62および63とを有している。そして、軸60を回転させて図示しないプーリおよびベルトを介して駆動アーム61を正逆に揺動することにより、第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42の一方を伸長させ、他方を屈曲させた状態とすることができる。すなわち、駆動アーム61を一方側へ揺動させることにより一方の多関節アーム機構が伸長し、他方側へ揺動させることにより他方の多関節アーム機構が伸長する。
【0036】
具体的には、図4に示すように、駆動アーム61を矢印A方向に揺動させることにより第1多関節アーム機構41の第1アーム41aが矢印B方向に回動し、第1多関節アーム機構41が伸長し、ピック41cは矢印C方向に直線移動する。
【0037】
図5に示すように、ピック41c,42cはいずれも、ウエハWの裏面を支持する4つの裏面支持パッド71と、先端側でウエハWの端部を支持する2つの先端側ストッパピン72と、基端側でウエハWの端部を支持する2つの基端側ストッパピン73とを有しており、ウエハWの裏面を裏面支持パッド71で支持した状態で先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73でウエハWを挟み、多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWが先端側ストッパピン72に押しつけられることによりピック41c,42c上でウエハWが位置決めされる。すなわち、2つの先端側ストッパピンが位置決めピンとして機能する。これにより、高速で搬送してもピック41c,42c上でのウエハWの位置精度を高く保つことができる。
【0038】
このように、ピック41c,42c上において、多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWを先端側ストッパピン72に押しつけて位置決めするので、位置精度(位置再現性)を良好にする観点から裏面支持パッド71は、その上のウエハWが移動しやすい構造であることが好ましい。このため、滑りが良好なもの、例えば自己潤滑性を有する炭素のみで構成されたカーボン球を固定された状態で用いることができる。ただし、真空中では摩擦係数が増大して位置再現性が低下してしまうため、固定パッドではなく、図6に示すようなウエハWが慣性で移動する方向に転がるローラ(滑車)75を有するローラパッドを用いることが好ましい。この場合には、裏面支持パッド71は、例えば、図7に示すように、回転軸76にローラ75を取り付けた状態とし、これを受け部材77の凹部77aに挿入し、回転軸76を保持するため凹部77aを蓋体78で塞いでローラ75を蓋体78から回転可能に突出させた状態とする。このようなローラ75、ローラを受ける受け部材77および蓋体78の材質は硬質樹脂(例えばポリベンゾイミタゾール(PBI)樹脂)を用いることが好ましい。
【0039】
先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73は、摩擦が小さく発塵しにくい材料、例えばPBI樹脂を用いることが好ましい。しかし、このような発塵しにくい材料を用いても、ウエハ温度が上昇するとストッパピン72,73とウエハWとの摩擦が大きくなり、そのため、これらにウエハWが接触して擦れたときに発塵してパーティクルが発生するおそれがある。このため、先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73の構造を、図8に示すように、ピックに垂直に固定された円柱状のコア部81とその外側に遊嵌され回転可能に構成されたリング部材82とを有するものとすることが好ましい。これによりウエハWがストッパピン72,73に接触した際にリング部材82が回転するため、接線方向の力を逃がすことができ、摩擦による発塵を低減することができる。図8の例では、リング部材82の上部内周に溝82aが形成され、コア部81の上端にフランジ81aが設けられ、フランジ81aが溝82aに係合されている。また図9に示すように、リング部材82とコア部81との係合部がラビリンス構造となるように、リング部材82の内周上部の溝82bとコア部81の上端のフランジ81bを形成してもよい。このようにラビリンス構造とすることにより、リング部材82とコア部81の摩耗で発生するパーティクルが飛散されにくくなるといったメリットがある。
【0040】
搬送制御部45は、駆動部44の駆動機構を制御して基板搬送装置12におけるウエハWの搬送動作を制御する他、熱膨張によるウエハWの位置のずれを補正する。本実施形態では、ピック41c,42c内でウエハWの位置決めを行うため、真空処理ユニット1,2,3,4で熱をともなう処理を行う場合に、多関節アーム機構41,42のアームやピックが、これらユニットのチャンバやウエハWからの熱で膨張するとウエハWの中心位置がずれてしまう。このため、真空処理ユニット1〜4、およびロードロック室6、7の搬入出口の近傍に設けられた位置検出センサユニット22の光学センサ23a,23bを用いてウエハWの基準位置を計測して搬送制御部45に記憶させておき、実際に真空処理ユニット1〜4、およびロードロック室6、7のいずれかにウエハWを搬入する際に、位置検出センサユニット22の光学センサ23a,23bを用いてウエハWの位置を計測し、搬送制御部45ではこの測定結果と記憶されている基準位置情報とを比較してウエハWのずれ量を把握し、そのずれの分だけ補正して搬入するように制御する。
【0041】
<基板搬送装置の第2の例>
次に、上記処理システムに搭載される基板搬送装置の第2の例について説明する。
上記基板搬送装置の第1の例では、ピック41c,42c上において、ウエハWを先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73とでウエハWを挟み、多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWを先端側ストッパピン72に押しつけることでウエハWが位置決めされるが、搬送速度がさらに高速化した場合には、ウエハWが先端側ストッパピン72に当たった際のパーティクルの発生や、多関節アーム機構41,42を旋回させたときのウエハWのずれや、位置検出センサユニット22による計測時のウエハWの位置ずれが懸念される。
【0042】
このため、本例では、図10およびその拡大図である図11に示すように、第1の例の第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42の、ピック41c,42cの先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73の間にウエハWを載せた後ウエハWをクランプするクランプ機構90を付加している。その他の構成は第1の例の基板搬送装置と同じである。なお、以下の説明においては、便宜上、第1多関節アーム機構41のピック41cのみについて説明するが、第2多関節アーム機構42についても全く同様である。
【0043】
クランプ機構90は、ピック41cの回転機構を利用して、ピック41cの回転にともなうカムの変位によりウエハWをクランプするものであり、ピック41cの回転軸46に取り付けられたカム91と、カム91の変位により伸縮する伸縮部材93と、カム91の変位を伸縮部材93に伝達するリンク機構92と、伸縮部材93の伸縮により基端側ストッパピン73を進退移動させてウエハWのクランプまたはクランプ解除を行う移動部材95と、移動部材95をガイドするリニアガイド94とを有する。また、リンク機構92と伸縮部材93の間には、キャプチャレンジを調整するためのキャプチャレンジ調整部材96が設けられている。
【0044】
伸縮部材93は、コイルバネ93aと、バネ固定ブロック93bと、移動ブロック93cと、バネ固定ブロック93bの位置を調整してバネ力を調整する位置調整部93dとを有しており、このコイルバネ93aの付勢力により移動ブロック93cおよびキャプチャレンジ調整部材96を介して移動部材95を押圧し、移動部材95が基端側ストッパピン73を押圧してウエハWの端部をクランプするようになっている。
【0045】
カム91は、第1多関節アーム機構41の動作時に、ピック41cが回転機構により第2アーム41bに対して回転する際に、ピック41cに対して相対的に回転するようになっており、リンク機構92を押圧する大径部91aとリンク機構92を押圧しない小径部91bと、これらの間の傾斜部91cとを有している。
【0046】
そして、カム91の大径部91aがリンク機構92に対応した位置にある場合には、カム91がリンク機構92を押圧することによりキャプチャレンジ調整部材96を介して伸縮部材93の移動ブロック93cが押圧され、移動部材95とともに基端側ストッパピン73が退避されてウエハWの受け取り受け渡しが可能となる。また、カム91の小径部91bがリンク機構92に対応した位置にある場合には、リンク機構92は押圧されず、上述のように移動部材95が基端側ストッパピン73を押圧してウエハWの端部をクランプする。さらに、傾斜部91cがリンク機構92に対応する際には、基端側ストッパピン73がクランプ方向または退避方向に移動するようになっている。
【0047】
カム91は、第1多関節アーム機構41のピック41cの位置に同期して基端側ストッパピン73の位置が定まるようにその位置が調整されている。ウエハWを受け取ってからクランプする場合を例に取ると、ウエハWを受け取る第1多関節アーム41が伸長した状態では、カム91は大径部91aによりリンク機構92を押圧する位置にあり、リンク機構92を介して伸縮部材93を押圧して、移動部材95により基端側ストッパピン73が退避された状態となっている。ウエハWを受け取った後、第1多関節アーム機構41が縮退する過程において、図12(a)に示すように、カム91のリンク機構92に対応する位置が大径部91aの端部に達し、その時点でウエハWのクランプが開始される。第1多関節アーム機構41がさらに縮退し、カム91のリンク機構92に対応する位置が傾斜部91cを経て、図12(b)に示すように小径部91bに達した時点でウエハWのクランプが完了する。ウエハWのクランプを外してウエハWを受け渡し可能にする際には、全く逆の動きをする。
【0048】
この際の第1多関節アーム41のストロークとクランプ機構90によるキャプチャレンジとの関係を図13に示す。ここでキャプチャレンジとは、基端側ストッパピン73の押圧部からウエハWの反対側端部までの長さをいい、本例ではウエハWの径が300mmで、ウエハWをクランプしているときのキャプチャレンジは300mmであり、ウエハWをリリースしているときのキャプチャレンジは306mmである。また、第1多関節アーム41のストロークは、回転基台40の中心(軸60の中心)と、ピック41c上のウエハWの中心との距離であり、第1多関節アーム41が最も縮退したときのストロークが308mm、最も伸長したときのストロークが980mmである。
【0049】
ウエハWのクランプ時においては、図13のaはウエハWの受け取りを行う範囲であり、カム91は大径部91aがリンク機構92を押圧する位置にあり、キャプチャレンジは最大の306mmである。bはカム91のリンク機構92に対応する位置が大径部91aから傾斜部91cに移行するところであり、クランプ開始位置となる。cはカム91のリンク機構92に対応する位置が傾斜部91cであり、ウエハWのクランプ動作を行う範囲であり、キャプチャレンジが減少していく。dはカム91のリンク機構92に対応する位置が傾斜部91cから小径部91bに移行するところであり、クランプ終了位置であり、キャプチャレンジが300mmとなる。eはさらにストロークが小さくなる範囲であり、カム91のリンク機構92に対応する位置が小径部91bに対応し、ウエハWはクランプされたままである。
【0050】
リリース時は全く逆になり、クランプ状態のeからdに達すると、カム91のリンク機構92に対応する位置が小径部91bから傾斜部91cに移行し、リリース開始位置となる。そしてcではキャプチャレンジが広がっていきウエハWをリリースする過程であり、bはリリース終了位置となる。そして、aの範囲でウエハWの受け渡しを行う。
【0051】
図14は第1多関節アーム機構41の伸長時(リリース)の速度・加速度曲線と縮退時(クランプ)の速度・加速度曲線を示す。図14aに示すように、第1多関節アーム機構41を伸長させてウエハWをリリースする際には、第1多関節アーム機構41のストロークが長い方の範囲で加速度が負の領域、すなわち減速領域となる。伸長時には加速度が負の領域でウエハWは先端側ストッパピン72に押しつけられるため、この範囲でウエハWのクランプ解除(ウエハWのリリース)をすればよい。また、図14bに示すように、第1多関節アーム機構41を縮退させてウエハWをクランプする際には、第1多関節アーム機構41が長い方の範囲で加速度が正の領域、すなわち加速領域となる。縮退時には加速度が正の領域でウエハWは先端側ストッパピン72に押しつけられるため、この範囲でウエハWをクランプすればよい。このようにウエハWが先端側ストッパピン72押しつけられている際に、クランプ動作およびクランプ解除動作を行うことにより、その際にウエハWは移動せず、位置精度の低下等が生じない。
【0052】
この第2の例においても、第1の例と同様、搬送制御部45により、駆動部44の駆動機構を制御して基板搬送装置12におけるウエハWの搬送動作を制御する他、熱膨張によるウエハWの位置のずれを補正する。
【0053】
<基板処理システムの動作>
次に、基板処理システム100の動作について説明する。
まず、基板搬送装置16により搬入出室8に接続されたフープFからウエハWを取り出し、ロードロック室6(または7)に搬入する。このとき、ロードロック室6(または7)内は大気雰囲気にされ、その後第2のゲートバルブG2が開放された状態でウエハWが搬入される。
【0054】
そして、ロードロック室6(または7)内を搬送室5に対応する圧力になるまで真空排気し、第1のゲートバルブG1を開放して基板搬送装置12の第1多関節アーム41または第2多関節アーム42によりロードロック室6(または7)内のウエハWを受け取って、いずれかの真空処理ユニットのゲートバルブGを開いてその中にウエハWを搬入し、ウエハWに対して成膜等の熱をともなう真空処理を行う。
【0055】
真空処理が終了した時点で、ゲートバルブGを開放し、基板搬送装置12が対応する真空処理ユニットからウエハWを搬出し、第1のゲートバルブG1を開放してウエハWをロードロック室6および7のいずれかに搬入し、その中でウエハWを冷却しつつ大気圧に戻す。その後、第2のゲートバルブG2を開け、基板搬送装置16により、フープFに処理後のウエハWを収納する。このような動作をフープF内のウエハWの数だけ繰り返す。
【0056】
このとき、基板搬送装置12として第1の例の基板搬送装置を用いた場合には、ウエハWの搬送に際して、第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42のウエハWを保持するピック41cおよび42cは、先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73を有しており、その間にウエハWを挟むようになっている。そして、多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWが先端側ストッパピン72に押しつけられることによりウエハWはピック41c,42c上で位置決めされる。このため、ウエハWを高速で搬送してもピック41c,42c上でのウエハWが滑ることが防止され、ウエハの位置精度を高く保つことができる。さらに、ストッパピン72、73(コア部81またはリング部材82)が摩耗しても、ウエハWが先端側ストッパピン72に押しつけられることによりウエハWはピック41c,42c上に位置決めされる。
【0057】
このように多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWを先端側ストッパピン72に押しつけて位置決めする場合には、裏面支持パッド71上でウエハWが移動しやすいことが要求される。裏面支持パッド71をカーボン球のような潤滑性のよい材料で構成することにより、ある程度の位置精度が得られるが、本実施形態のようにウエハWを真空中で搬送する場合には、常圧で潤滑性が良好な材料でも摩擦が大きくなる。これに対し、図6に示すようなウエハWが慣性で移動する方向に転がるローラ(滑車)75を有するローラパッドを用いることにより、真空中でもウエハWが移動しやすく、ウエハWを高精度で位置決めすることができる。
【0058】
また、ピック41c,42cが、先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73によりウエハWを保持する構成をとる場合には、本実施形態のようにウエハWが高温になると、ストッパピン72,73として発塵しにくい材料を用いても、ウエハ温度が上昇するとストッパピン72,73とウエハWとの摩擦が大きくなり、これらにウエハWが接触して擦れたときに発塵してパーティクルが発生するおそれがある。しかし、上述した図8、図9に示すように、外周側に回転可能なリング部材82を設けることにより、接線方向の力を逃がして摩擦による発塵を低減することができる。
【0059】
ところで、上記基板搬送装置の第1の例では、ピック41c,42c上において、ウエハWを先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73とでウエハWを挟み、多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWを先端側ストッパピン72に押しつけることでウエハWが位置決めされるが、ウエハWは先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73との間で移動可能であるため、搬送速度がさらに高速化した場合には、ウエハWが先端側ストッパピン72に当たった際におけるパーティクルの発生や、多関節アーム機構41,42を旋回させたときのウエハWのずれが懸念される。
【0060】
そこで、基板搬送装置の第2の例では、ピック41c,42c上において、ウエハWを先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73との間に置いた後、クランプ機構90により基端側ストッパピン73をウエハWに押圧させてウエハWをクランプする。
【0061】
このように、ウエハWをクランプすることにより、搬送速度が一層高速化しても、ウエハWが先端側ストッパピン72に当たることが防止され、パーティクルの発生を有効に防止することができる。また、多関節アーム機構41,42を旋回させたときのウエハWのずれを防止することができる。
【0062】
クランプ機構90としては、上述したように第1多関節アーム機構41を例にとると、ピック41cの回転機構を利用して、ピック41cの回転にともなうカム91の変位によりウエハWをクランプするものを用いる。カム91は、第1多関節アーム機構41のピック41cの回転位置に同期して基端側ストッパピン73の進退が定まるようにその位置が調整される。具体的には、ウエハWを受け取って縮退する際にクランプする場合は、ウエハWを受け取る第1多関節アーム機構41が伸長した状態では、カム91は大径部91aによりリンク機構92を押圧する位置にあり、リンク機構92を介して伸縮部材93を押圧し、基端側ストッパピン73が退避され、ウエハWを受け取った後、第1多関節アーム機構41が縮退する過程において、カム91のリンク機構92に対応する位置が大径部91aの端部に達し、その時点でウエハWのクランプが開始され、第1多関節アーム機構41がさらに縮退し、カム91のリンク機構92に対応する位置が傾斜部91cを経て、小径部91bに達した時点でウエハWのクランプが完了する(図12参照)。ウエハWのクランプを外してウエハWを受け渡し可能にする際には、全く逆の動きをする。
【0063】
このように、カム91を利用したクランプ機構90を用い、ピック41cの回転機構を利用して、ピック41cの回転にともなうカム91の動作によりウエハWをクランプし、またクランプを解除するので、クランプのための特別な動力や制御機構が不要であり、設備が大がかりになることがない。また、このようにウエハWを先端側ストッパピン72と基端側ストッパピン73との間にウエハWを置いてからクランプ機構90によりクランプするので、クランプ前のキャプチャレンジを第1の例の基板搬送機構の場合よりも大きくしてウエハWの受け取りおよび受け渡しを行いやすくすることができる。
【0064】
また、第1多関節アーム機構41を伸長させてウエハWをリリースする際には、第1多関節アーム機構41のストロークが長い方の範囲の加速度が負の領域、すなわち減速領域においてウエハWのクランプ解除(ウエハWのリリース)を行い、また第1多関節アーム機構41を縮退させてウエハWをクランプする際には、第1多関節アーム機構41が長い方の範囲の加速度が正の領域、すなわち加速領域においてウエハWをクランプするようにすることにより、ウエハWが先端側ストッパピン72に押しつけられた状態でウエハWのクランプおよびクランプ解除を行うことができる。このため、ウエハWのクランプ時およびクランプ解除時にウエハWが移動せず、位置精度の低下等が生じない。
【0065】
ところで、上記第1の例および第2の例の基板搬送機構のいずれにおいても、ピック41c,42cが、先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73によりウエハWを保持する構成をとる場合には、図15に模式的に示すように、ウエハWはピック41c(42c)で位置決めされているため、真空処理ユニット1〜4の熱によって多関節アーム機構41,42のアームやピックが熱膨張すると、ウエハWの位置がその熱膨張によって変位してしまう。このようにウエハWの位置がずれたままの状態で真空処理ユニット1〜4や、ロードロック室6,7にウエハWを搬送すると、ウエハWはステージ上の所定の位置からずれた位置に載置されることとなる。
【0066】
そこで、本実施形態では、ウエハWが正しい位置に搬送されるように、以下に説明する手順にてこのような熱膨張による位置ずれの補正を行う。
【0067】
<熱膨張によるウエハの位置ずれの補正>
このような熱膨張によるウエハの位置ずれの補正は、図16のフローチャートのような手順で行うことができる。
【0068】
まず、真空処理ユニット1〜4、ロードロック室6,7の各モジュールに対して、対応する位置検出センサユニット22の光学センサ23a,23bの検出値に基づきウエハの基準位置を求め、搬送制御部45に記憶させる(ステップ1)。
【0069】
実際のウエハWの搬送に際しては、基板搬送装置12の第1および第2多関節アーム機構41,42の旋回時に、どのモジュールの光学センサ23a,23bを使用するのかを決定する(ステップ2)。
【0070】
図17に示すように、そのモジュール(真空処理ユニット1〜4およびロードロック室6,7のいずれか)にウエハWを搬入する際、またはそのモジュールからウエハWを搬送室5に戻す際に、光学センサ23a,23bの検出信号に基づいて搬送制御部45によりウエハWの位置を計測する(ステップ3)。
【0071】
搬送制御部45は、この計測結果に基づいてウエハWの基準位置からのずれ量を算出し、図18に示すように、そのモジュールへウエハWを搬入する際に、そのずれ量を補正するように基板搬送装置12の駆動部44を制御する(ステップ4)。
【0072】
次に、ウエハWの基準位置の計測およびずれ量の算出の具体的手法について説明する。駆動部44の各駆動機構はステッピングモータを用いているため、パルス値により位置情報を把握することができる。
【0073】
[ウエハの基準位置の計測]
ウエハWの基準位置の計測は、常温において、対応するモジュール内のウエハWをピック上に載置して搬送室5に戻す際に行われる。このとき、ウエハWを載置したピックは直線的に移動される。図19(a)に示すように、ウエハWが光学センサS1,S2の照射した光を遮光した点をA、Cとし、さらにウエハWを移動して光学センサS1,S2の照射した光が透光するようになった点をB、Dとする。既知の値として、基準のウエハ半径を150mmとする。
【0074】
(a)センサ間距離HH′の算出手順
この条件でまず、以下の1〜5の手順でセンサ間距離HH′を算出する。
1.A−Dのパルス値を実際のアーム位置に変換する。
2.AB、CDの長さを算出する。
3.三平方の定理により、OH2=AO2−(AB÷2)2が成り立つから、この式からOHの長さを算出する。
4.OH′の長さを上記1〜3と同様にして算出する。
5.上記3,4からHH′=OH+OH′としてHH′を算出する。
【0075】
(b)基準ウエハ位置Oの座標の算出手順
次に、以下の6〜8の手順で基準ウエハ位置Oの座標(x1,y1)を算出する。
6.S1をX座標の基準(X=0)とする。
7.上記3によりOHの長さが算出済みであるため、基準ウエハ位置OのX座標(x1)はx1=OHとなる。
8.基準ウエハ位置OのY座標(y1)は、Bのアーム位置+(AB÷2)で求めることができる。
【0076】
[ウエハのずれ量の算出]
ウエハWのずれ量の算出は、実際の処理の際に、対応するモジュール内のウエハWをピック上に載置して搬送室5に戻す際に行われる。このとき、基準位置の計測の際と同様、ウエハWを載置したピックは直線的に移動される。既知の値としてセンサ間距離HH′、基準ウエハ位置Oの座標を用いる。図19(b)に示すように、基準位置の計測の際と同様、ウエハWが光学センサS1,S2の照射した光を遮光した点をA、Cとし、さらにウエハWを移動して光学センサS1,S2の照射した光が透光するようになった点をB、Dとする。
【0077】
(a)ウエハ半径r、ウエハ位置O′のX座標:x2の算出手順
以下の9〜11の手順でウエハ半径rおよびウエハ位置O′のX座標:x2を算出する。
9.A−Dのパルス値を実際のアーム位置に変換する。
10.AB、CDの長さを算出する。
11.三平方の定理により、以下の2つの式が成り立つから、連立方程式によりr、x2を算出する。
r2=(x2)2+(AB÷2)2
r2=(HH′−x2)2+(CD÷2)2
【0078】
(b)ウエハ位置O′のY座標:y2の算出手順
以下の12によりウエハ位置O′のY座標:y2を算出する。
12.y2=Bのアーム位置+(AB÷2)
【0079】
(c)ウエハのずれ量の算出手順
以下の13によりウエハのずれ量を算出する。
13.O′の座標(x2,y2)と基準位置Oの座標(x1,y1)から以下の式でずれ量を算出する。
ずれ量2=(x2−x1)2+(y2−y1)2
【0080】
このように、ピック41c,42c内でウエハWを位置決めして、その位置補正を各モジュールに対応して設けられたセンサを用いて行うので、アームやピックの熱膨張、さらにはウエハW自体の熱膨張によってウエハWの位置がずれても、高い位置精度でウエハWを搬送することができる。また、熱膨張のみならず、他の要因でウエハWの位置がずれた場合にもウエハWの位置補正を行うことができる。例えば、ストッパピン72、73(コア部81またはリング部材82)が摩耗しても、ウエハWが先端側ストッパピン72に押しつけられることによりウエハWはピック41c,42c上に位置決めすることができ、上記方法でウエハWの位置補正を行うことができる。また、このようなずれ量が大きくなることで、ピックやアームの交換時期を把握することも可能となる。
【0081】
ただし、第1の例の基板搬送装置の場合には、減速時にピック41c,42c上でウエハWが移動する可能性があるため、位置検出センサユニット22による計測時のウエハWの位置ずれが懸念される。つまり、第1の例の場合には、加速度が正の領域、すなわち加速領域においてはウエハWがいずれかのストッパピンに押しつけられた状態となるため、その領域に位置検出ユニット22の光学センサ23a,23bを設置すれば、ウエハWの位置ずれは実質的に生じない。しかし、加速度が負の領域、すなわち減速領域に位置検出ユニット22の光学センサ23a,23bを設置すれば、ウエハWが移動中に計測することになるため、誤差が大きくなってしまう。具体的には、多関節アーム機構伸長時、つまりウエハWをモジュールへ搬入する場合には、図20(a)に示すように、多関節アーム機構のストロークが短い範囲であるAの範囲でしか精度良く計測できず、また多関節アーム機構縮退時、つまりウエハWをモジュールから戻す場合には、図20(b)に示すように、多関節アーム機構のストロークが長い範囲であるBの範囲でしか精度良く測定することができない。したがって、光学センサ23a,23bを所定の位置に設置して、モジュールへ搬送する際およびモジュールから戻す際の両方ともウエハWの位置ずれを生じさせずに精度良く計測することは困難である。また、光学センサ23a,23bの設置位置に制限がある場合には、精度良く計測できない場合も生じる。
【0082】
これに対し、ウエハWをクランプする第2の例の場合には、図20(a)のCの範囲、図20(b)のDの範囲と、ウエハWをモジュールに搬入する際およびモジュールから戻す際のいずれもほぼ全域でウエハWの位置を精度良く測定することができる。
【0083】
<アーム機構の伸び補正>
以上の手順でウエハの熱膨張による位置ずれの補正を行うことができるが、長期間のアイドリングの後、再度処理を行う場合には、基板搬送装置12の第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42のアームやピックの実際の伸び量が不明であり、アイドリング直前のデータに基づいてそのまま搬送動作を実施すると、ウエハWをピックに載せる際に、ウエハWが先端側ストッパピン72または基端側ストッパピン73に乗り上げるおそれがある。このため、第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42(以下単にアーム機構という)の伸び補正を行うことが好ましい。
【0084】
アーム機構の伸び補正を行うに際しては、予めレーザー変位計のような変位計によりアーム機構の伸び量を測定し、図21に示すように、レーザー変位計で測定した伸びと、位置検出センサユニット22での測定結果との相関関係を求めておく。そして、図22に示すように、レーザー変位計でアーム機構の温度とアーム機構の伸びとの関係を求め、アイドリング時間とアーム機構の温度との関係から、図23に示すようにアイドリング時間とアーム機構の伸びの関係を求める。アイドリング終了後、搬送動作の開始時に、アイドリング時間から図23に基づいてアーム機構の伸び量を算出し、その伸び量を補正値としてアーム機構の動作を行う。具体的にはアイドリング状態になった直後にピックにウエハを載せ、アイドリング時の熱膨張経時変化のデータを元に処理再開時のアーム機構の伸び量(補正値)を決定し、図21の関係に基づいて位置補正を行う。
【0085】
これにより、長時間アイドリングを行った後でも、アーム機構の伸び量を把握することができ、ウエハWをピックに載せる際に、ウエハWが先端側ストッパピン72または基端側ストッパピン73に乗り上げることを防止することができる。
【0086】
なお、以上のようにレーザー変位計の測定値とアイドリング時間との相関関係を予めとっておく代わりに、基板処理システム100内、例えばロードロック室6または7の入り口部分にレーザー変位計等の変位計を設けておき、直接アーム機構の変位を測定するようにしてもよい。
【0087】
<他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では基板搬送機構として多関節アーム機構を用いたが、これに限らず、直動機構等の他の機構であってもよい。また、位置検出センサユニットのセンサとして光学センサを用いたが、位置を検出するものであればこれに限るものではなく、また、1つの位置検出センサユニットにつき2つのセンサを用いたが、1つでもよい。また、位置検出センサユニットを、ウエハの搬出入の対象モジュール(真空処理ユニットおよびロードロック室のいずれか)の搬入出口近傍に設けたが、ウエハを保持するピックがウエハの搬入および搬出のために直動する範囲であればよい。さらに、上記実施形態では、真空処理ユニットを4つ、ロードロック室を2つ設けた基板処理システムを例にとって説明したが、これらの数に限定されるものではない。さらにまた、真空処理ユニットを複数設けたマルチチャンバタイプの真空処理装置に限らず、真空処理ユニットが1個のシステムであっても適用可能である。さらにまた、被処理基板についても、半導体ウエハに限らず、FPD用ガラス基板などの他の基板を対象にすることができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0088】
1〜4;真空処理ユニット
5;搬送室
6,7;ロードロック室
8;搬入出室
12,16;基板搬送装置
22;位置検出センサユニット
23a,23b;光学センサ
30;全体制御部
40;回転基台
41;第1多関節アーム機構
41a,42a;第1アーム
41b,42b;第2アーム
41c,42c;ピック
43;駆動リンク機構
44;駆動部
45;搬送制御部
50;中空軸
51,52,53,54,55,56,60;軸
61;駆動アーム
62,63;従動アーム
71;裏面支持パッド
72;先端側ストッパピン
73;基端側ストッパピン
75;ローラ(滑車)
76;回転軸
81;コア部
82;リング部材
90;クランプ機構
91;カム
92;リンク機構
93;伸縮部材
94;リニアガイド
95;移動部材
100;基板処理システム
W;半導体ウエハ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハ等の基板に熱をともなう真空処理を施す基板処理装置に用いられる基板搬送装置、それを用いた基板処理システムおよび基板搬送方法、ならびに記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、被処理基板である半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)に対し、成膜処理等の真空処理が多用されている。最近では、このような真空処理の効率化の観点、および酸化やコンタミネーション等の汚染を抑制する観点から、複数の真空処理ユニットを真空に保持される搬送室に連結し、この搬送室に設けられた基板搬送装置により各真空処理ユニットにウエハを搬送可能としたクラスターツール型のマルチチャンバタイプの真空処理システムが用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなマルチチャンバ処理システムにおいては、真空に保持されている搬送室に、上述した真空処理ユニットの他に、大気中に置かれているウエハカセットから真空に保持された搬送室へウエハを搬送するためのロードロック室を連結し、搬送室に設けられた基板搬送装置により、真空処理ユニットとロードロック室の間、または真空処理ユニット間でウエハの搬送が行われる。
【0004】
このとき用いる基板搬送装置においては、ウエハを保持するピックとして、ウエハの裏面のみ、または下面側ベベルのみを保持するものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−208589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近時、高速でウエハ搬送を行って高スループットで処理を行うことが要求されているが、上述のようにウエハの裏面のみ、または下面側ベベルのみを保持するピックを用いる場合には、高速で搬送するとウエハが滑ってしまいウエハの位置精度が低いものとなってしまう。また、成膜処理のような熱をともなう処理を行う場合には、熱膨張による誤差も重畳されて益々位置精度が低下してしまう。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、真空において熱をともなう処理を行う基板処理装置において、基板を高速で搬送しても基板の位置精度を高くすることができる基板搬送装置、それを用いた基板処理システム、および基板搬送方法を提供することを課題とする。また、このような搬送方法を実行するプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室とを有する基板処理システムにおいて、前記搬送室内に設けられ、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送装置であって、基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部と、前記ピックによる基板の搬送動作を制御する搬送制御部とを有し、前記搬送制御部は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする基板搬送装置を提供する。
【0009】
本発明の第2の観点では、熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室と、前記搬送室内に設けられ、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送装置とを具備する基板処理システムであって、前記基板搬送装置は、基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部と、前記ピックによる基板の搬送動作を制御する搬送制御部とを有し、前記搬送制御部は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする基板処理システムを提供する。
【0010】
上記第1および第2の観点において、前記位置決めピンは、前記ピック上に基板を挟むように配置され、前記ピックを移動した際の慣性で基板を前記位置決めピンに押しつけることにより基板が位置決めされるように構成することができる。
【0011】
また、前記ピックは複数の位置決めピンを有し、前記複数の位置決めピンのいずれかを移動させて基板を前記ピック上でクランプするクランプ機構をさらに有する構成とすることもできる。
【0012】
この場合に、前記ピックおよび他のアームを含む多関節アーム機構を有し、前記ピックは隣接するアームに対し回転可能に設けられ、前記クランプ機構は、前記ピックの回転にともなって変位するカムと、前記カムの変位により前記位置決めピンを進退移動させ、基板をクランプしまたはリリースする移動部材と、前記カムの変位を前記移動部材に伝達させる中間機構とを有し、前記カムは、前記ピックの回転位置に同期して前記位置決めピンの進退が定まるようにその位置が調整されるように構成することができる。
【0013】
また、前記位置決めピンは、前記ピックの先端側に設けられた先端側位置決めピンと、前記ピックの基端側に設けられた基端側位置決めピンとを有し、前記クランプ機構は前記基端側位置決めピンを進退移動させて基板をクランプしまたはリリースするように構成され、前記多関節アーム機構を伸長させて、基板を受け渡すために前記ピック上の基板をリリースする際には、前記ピックの加速度が負となる範囲で基板をリリースし、前記多関節アームを縮退させて、前記ピック上に基板を受け取った後に基板をクランプする際には、前記ピックの加速度が正となる範囲で基板をクランプする構成とすることができる。
【0014】
また、上記第1の観点および第2の観点において、前記基準位置情報は、常温において、前記真空処理ユニットに対して搬入出される基板が通過する位置に設けられた位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求めることができる。このとき、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の基板の位置情報は、前記位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められ、このようにして求めた基板の位置情報と前記基準位置情報とから前記位置ずれを算出することができる。前記位置ずれの検出は、基板を前記真空処理ユニットから搬出する際または前記真空処理ユニットに搬入する際に行われ、前記位置ずれの補正は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に行わるようにすることができる。
【0015】
また、前記基板処理システムは、前記搬送室に接続され、大気雰囲気と真空との間で圧力可変であり、大気雰囲気から前記搬送室に対して基板を搬送するロードロック室をさらに有し、前記搬送制御部は、基板を前記ロードロック室に搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を前記ロードロック室に搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、前記位置ずれを補正して前記基板を前記ロードロック室に搬入するように前記駆動部を制御するようにすることができる。
【0016】
さらに、前記ピックの前記位置決めピンは、垂直軸に対して回転可能なリング部材を有していることが好ましい。また、前記ピックは、基板の裏面を支持し、基板を位置決めする際の移動方向に回転可能なローラを備えた裏面支持パッドを有することが好ましい。
【0017】
本発明の第3の観点では、熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室とを有する基板処理システムにおいて、基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部とを有し、前記搬送室に設けられた基板搬送装置を用いて、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送方法であって、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入することを特徴とする基板搬送方法を提供する。
【0018】
本発明の第4の観点では、コンピュータ上で動作し、基板搬送装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第3の観点の基板搬送方法が行われるように、コンピュータに前記基板搬送装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板を真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、実処理において、基板を真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の基準位置からの位置ずれを算出し、位置ずれを補正して基板を真空処理ユニットに搬送するように駆動部を制御するので、真空において熱をともなう処理を行う基板処理装置において、基板を高速で搬送しても基板の位置ずれが抑制され、また、熱膨張等も補正することができ、基板の位置精度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るマルチチャンバタイプの基板処理システムの概略構造を示す水平断面図である。
【図2】基板搬送装置の第1の例を示す平面図である。
【図3】基板搬送装置の第1の例を示す正面図である。
【図4】基板搬送装置の第1の例の駆動状態を説明するための図である。
【図5】基板搬送装置の第1の例のピックを説明するための斜視図である。
【図6】基板搬送装置の第1の例のピックの裏面支持パッドの好ましい例を説明するための図である。
【図7】図6の裏面支持パッドの構成を示す分解斜視図である。
【図8】基板搬送装置の第1の例のピックのストッパピンの好ましい例を説明するための斜視図および断面図である。
【図9】基板搬送装置の第1の例におけるピックのストッパピンの他の好ましい例を説明するための断面図である。
【図10】基板搬送装置の第2の例の要部を示す平面図である。
【図11】基板搬送装置の第2の例のクランプ機構を示す図である。
【図12】基板搬送装置の第2の例において、クランプ機構によるクランプ開始時と完了時における、多関節アーム機構の状態およびクランプ機構の状態を説明するための図である。
【図13】基板搬送装置の第2の例において、多関節アーム機構のストロークとピックにおけるキャプチャレンジとの関係を示す図である。
【図14】基板搬送装置の第2の例において、多関節アーム機構の伸長時の速度・加速度曲線とリリースタイミング、および縮退時の速度・加速度曲線とクランプタイミングを示す図である。
【図15】基板搬送装置のピックでウエハを保持した際の熱膨張による変位の様子を説明するための図である。
【図16】基板搬送装置における熱膨張による位置ずれの補正の手順を示すフローチャートである。
【図17】熱膨張による位置ずれの補正の際におけるセンサによるウエハの位置の計測態様を説明するための図である。
【図18】熱膨張による位置ずれの補正の際において、実際にずれ量を補正する態様を説明するための図である。
【図19】ウエハの基準位置の計測と、ウエハのずれ量の算出とを説明するための図である。
【図20】多関節アーム機構の伸長時の速度・加速度曲線と基板搬送装置の第1の例および第2の例における光学センサ設置可能領域、ならびに縮退時の速度・加速度曲線と基板搬送装置の第1の例および第2の例における光学センサ設置可能領域を示す図である。
【図21】アーム機構の伸び補正に用いる、レーザー変位計で測定した伸びと、位置検出センサユニットでの測定結果との相関関係を示す図である。
【図22】アーム機構の温度とレーザー変位計で測定したアーム機構の伸びとの関係を示す図である。
【図23】アイドリング時間とレーザー変位計で測定したアーム機構の伸びの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0022】
<本発明の一実施形態に係る基板処理システム>
図1は、本発明の一実施形態に係るマルチチャンバタイプの基板処理システムの概略構造を示す水平断面図である。
【0023】
基板処理システム100は、例えば成膜処理のような熱をともなう高温処理を行う4つの真空処理ユニット1、2、3、4を備えており、これらの各真空処理ユニット1〜4は六角形をなす搬送室5の4つの辺にそれぞれ対応して設けられている。また、搬送室5の他の2つの辺にはそれぞれ本実施形態に係るロードロック室6、7が設けられている。これらロードロック室6、7の搬送室5と反対側には搬入出室8が設けられており、搬入出室8のロードロック室6、7と反対側には被処理基板としてのウエハWを収容する容器であるフープFを取り付ける3つのポート9、10、11が設けられている。真空処理ユニット1、2、3、4は、その中で処理プレート上に被処理体を載置した状態で所定の真空処理、例えばエッチングや成膜処理を行うようになっている。
【0024】
真空処理ユニット1〜4は、同図に示すように、搬送室5の各辺にゲートバルブGを介して接続され、これらは対応するゲートバルブGを開放することにより搬送室5と連通され、対応するゲートバルブGを閉じることにより搬送室5から遮断される。また、ロードロック室6,7は、搬送室5の残りの辺のそれぞれに、第1のゲートバルブG1を介して接続され、また、搬入出室8に第2のゲートバルブG2を介して接続されている。ロードロック室6,7は、ウエハWを載置するステージを有し、高速で大気圧と真空状態の間で変化させることができ、真空状態にして第1のゲートバルブG1を開放することにより搬送室5に連通され、第1のゲートバルブG1を閉じることにより搬送室5から遮断される。また、第2のゲートバルブG2を開放することにより搬入出室8に連通され、第2のゲートバルブG2を閉じることにより搬入出室8から遮断される。
【0025】
搬送室5内には、真空処理ユニット1〜4、ロードロック室6,7に対して、ウエハWの搬入出を行う本実施形態に係る基板搬送装置12が設けられている。この基板搬送装置12は、搬送室5の略中央に配設されており、2つの多関節アーム機構41および42を有している。なお、基板搬送装置12の詳細な構造は後述する。
【0026】
搬入出室8のポート9,10、11にはそれぞれ図示しないシャッターが設けられており、ウエハWを収容した、または空のフープFがステージS上に載置された状態で、ポート9,10,11に直接取り付けられ、取り付けられた際にシャッターが外れて外気の侵入を防止しつつ搬入出室8と連通するようになっている。また、搬入出室8の側面にはアライメントチャンバ15が設けられており、そこでウエハWのアライメントが行われる。
【0027】
搬送室5内における真空処理ユニット1〜4、およびロードロック室6、7の搬入出口の近傍には、これらに対して搬入出されるウエハWが通過する位置にそれぞれ位置検出センサユニット22が設けられている。位置検出センサユニットは、基板搬送装置12の多関節アーム機構41,42に載せられているウエハWの位置を検出するためのものであり、各位置検出センサユニット22は、2つの光学センサ23a,23bを有している。光学センサ23a,23bとしては、例えば透過式のものが用いられる。
【0028】
搬入出室8内には、フープFに対するウエハWの搬入出およびロードロック室6,7に対するウエハWの搬入出を行う基板搬送装置16が設けられている。この基板搬送装置16は、多関節アーム構造を有しており、フープFの配列方向に沿ってレール18上を走行可能となっていて、その先端の支持アーム17上にウエハWを載せてその搬送を行う。搬入出室8には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。
【0029】
この基板処理システム100における各構成部、例えば、真空処理ユニット1〜4、搬送室5、およびロードロック室6,7におけるガス供給系や排気系、基板搬送装置12、16、ゲートバルブ等は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたコントローラを有する全体制御部30により制御されるようになっている。全体制御部30は実際に制御を行うコントローラの他、基板処理システム100のプロセスシーケンスおよび制御パラメータであるプロセスレシピを記憶した記憶部や、入力手段およびディスプレイ等を備えており、選択されたプロセスレシピに従って基板処理システム100を制御するようになっている。
【0030】
<基板搬送装置の第1の例>
次に、上記処理システムに搭載される基板搬送装置の第1の例について説明する。
図2は基板搬送装置の第1の例を示す平面図、図3はその正面図である。基板搬送装置12は、ベースとなる搬送室5の底板5aに回転自在に支持された回転基台40と、この回転基台40に旋回および屈伸可能に支持され、ウエハWを保持するピック41cおよび42cを有する第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42と、これら第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42の一方を選択的に屈伸させる駆動リンク機構43と、回転基台40を回転させる駆動機構および駆動リンク機構43を揺動させる駆動機構を有する駆動部44と、搬送動作制御を行う搬送制御部45とを有している。搬送制御部45は全体制御部30により制御されるようになっている。駆動部44の各駆動機構は、一定角度のパルス数で制御するステッピングモータを有している。
【0031】
回転基台40は駆動部44に内蔵された駆動機構により中空軸50を介して回転されるようになっている。回転基台40を回転させることにより、第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42を所望のユニットへアクセスすることが可能となる。
【0032】
第1多関節アーム機構41は、基端部が回転基台40に軸51により旋回可能に接続された第1アーム41aと、基端部が第1アーム41aの先端部に軸52により旋回可能に接続された第2アーム41bと、基端部が第2アーム41bの先端部に軸53により旋回可能に接続されたウエハW保持用のピック41cとを有している。各軸には所定の径を有するプーリが固定されており、プーリにはベルトが掛け渡されており、第1アーム41a、第2アーム41b、ピック41cは所定の回転角度比で旋回され、ピック41cが真空処理ユニット1〜4およびロードロック室6,7に対して直線的に移動可能となっており、これら真空処理ユニット1〜4およびロードロック室6,7に対してウエハWの搬入・搬出が可能となっている。
【0033】
第2多関節アーム機構42は、第1多関節アーム機構41と同様の構造で対称に設けられており、基端部が回転基台40に軸54により旋回可能に接続された第1アーム42aと、基端部が第1アーム42aの先端部に軸55により旋回可能に接続された第2アーム42bと、基端部が第2アーム42bの先端部に軸56により旋回可能に接続されたウエハW保持用のピック42cとを有しており、第1多関節アーム機構41と同様に動作することが可能となっている。
【0034】
すなわち、基板搬送装置12は、多関節アーム機構41,42および駆動リンク機構43の機構部を介して駆動部44により駆動させることにより、ピック41c、42cを、真空処理ユニット1〜4およびロードロック室6,7に対してアクセスすることが可能であり、ピック41c、42cを用いて真空処理ユニット1〜4およびロードロック室6,7に対してウエハWを搬入・搬出するようになっている。
【0035】
駆動リンク機構43は、駆動部44に内蔵された駆動機構により、中空軸50の内部に同軸状に設けられた軸60を介して揺動可能に設けられた駆動アーム61と、この駆動アーム61の揺動端に一端が回転自在に連結され、他端がそれぞれ第1多関節アーム機構41の第1アーム41aの下部および第2多関節アーム機構42の第1アーム42aの下部に回転自在に連結された2つの従動アーム62および63とを有している。そして、軸60を回転させて図示しないプーリおよびベルトを介して駆動アーム61を正逆に揺動することにより、第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42の一方を伸長させ、他方を屈曲させた状態とすることができる。すなわち、駆動アーム61を一方側へ揺動させることにより一方の多関節アーム機構が伸長し、他方側へ揺動させることにより他方の多関節アーム機構が伸長する。
【0036】
具体的には、図4に示すように、駆動アーム61を矢印A方向に揺動させることにより第1多関節アーム機構41の第1アーム41aが矢印B方向に回動し、第1多関節アーム機構41が伸長し、ピック41cは矢印C方向に直線移動する。
【0037】
図5に示すように、ピック41c,42cはいずれも、ウエハWの裏面を支持する4つの裏面支持パッド71と、先端側でウエハWの端部を支持する2つの先端側ストッパピン72と、基端側でウエハWの端部を支持する2つの基端側ストッパピン73とを有しており、ウエハWの裏面を裏面支持パッド71で支持した状態で先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73でウエハWを挟み、多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWが先端側ストッパピン72に押しつけられることによりピック41c,42c上でウエハWが位置決めされる。すなわち、2つの先端側ストッパピンが位置決めピンとして機能する。これにより、高速で搬送してもピック41c,42c上でのウエハWの位置精度を高く保つことができる。
【0038】
このように、ピック41c,42c上において、多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWを先端側ストッパピン72に押しつけて位置決めするので、位置精度(位置再現性)を良好にする観点から裏面支持パッド71は、その上のウエハWが移動しやすい構造であることが好ましい。このため、滑りが良好なもの、例えば自己潤滑性を有する炭素のみで構成されたカーボン球を固定された状態で用いることができる。ただし、真空中では摩擦係数が増大して位置再現性が低下してしまうため、固定パッドではなく、図6に示すようなウエハWが慣性で移動する方向に転がるローラ(滑車)75を有するローラパッドを用いることが好ましい。この場合には、裏面支持パッド71は、例えば、図7に示すように、回転軸76にローラ75を取り付けた状態とし、これを受け部材77の凹部77aに挿入し、回転軸76を保持するため凹部77aを蓋体78で塞いでローラ75を蓋体78から回転可能に突出させた状態とする。このようなローラ75、ローラを受ける受け部材77および蓋体78の材質は硬質樹脂(例えばポリベンゾイミタゾール(PBI)樹脂)を用いることが好ましい。
【0039】
先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73は、摩擦が小さく発塵しにくい材料、例えばPBI樹脂を用いることが好ましい。しかし、このような発塵しにくい材料を用いても、ウエハ温度が上昇するとストッパピン72,73とウエハWとの摩擦が大きくなり、そのため、これらにウエハWが接触して擦れたときに発塵してパーティクルが発生するおそれがある。このため、先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73の構造を、図8に示すように、ピックに垂直に固定された円柱状のコア部81とその外側に遊嵌され回転可能に構成されたリング部材82とを有するものとすることが好ましい。これによりウエハWがストッパピン72,73に接触した際にリング部材82が回転するため、接線方向の力を逃がすことができ、摩擦による発塵を低減することができる。図8の例では、リング部材82の上部内周に溝82aが形成され、コア部81の上端にフランジ81aが設けられ、フランジ81aが溝82aに係合されている。また図9に示すように、リング部材82とコア部81との係合部がラビリンス構造となるように、リング部材82の内周上部の溝82bとコア部81の上端のフランジ81bを形成してもよい。このようにラビリンス構造とすることにより、リング部材82とコア部81の摩耗で発生するパーティクルが飛散されにくくなるといったメリットがある。
【0040】
搬送制御部45は、駆動部44の駆動機構を制御して基板搬送装置12におけるウエハWの搬送動作を制御する他、熱膨張によるウエハWの位置のずれを補正する。本実施形態では、ピック41c,42c内でウエハWの位置決めを行うため、真空処理ユニット1,2,3,4で熱をともなう処理を行う場合に、多関節アーム機構41,42のアームやピックが、これらユニットのチャンバやウエハWからの熱で膨張するとウエハWの中心位置がずれてしまう。このため、真空処理ユニット1〜4、およびロードロック室6、7の搬入出口の近傍に設けられた位置検出センサユニット22の光学センサ23a,23bを用いてウエハWの基準位置を計測して搬送制御部45に記憶させておき、実際に真空処理ユニット1〜4、およびロードロック室6、7のいずれかにウエハWを搬入する際に、位置検出センサユニット22の光学センサ23a,23bを用いてウエハWの位置を計測し、搬送制御部45ではこの測定結果と記憶されている基準位置情報とを比較してウエハWのずれ量を把握し、そのずれの分だけ補正して搬入するように制御する。
【0041】
<基板搬送装置の第2の例>
次に、上記処理システムに搭載される基板搬送装置の第2の例について説明する。
上記基板搬送装置の第1の例では、ピック41c,42c上において、ウエハWを先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73とでウエハWを挟み、多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWを先端側ストッパピン72に押しつけることでウエハWが位置決めされるが、搬送速度がさらに高速化した場合には、ウエハWが先端側ストッパピン72に当たった際のパーティクルの発生や、多関節アーム機構41,42を旋回させたときのウエハWのずれや、位置検出センサユニット22による計測時のウエハWの位置ずれが懸念される。
【0042】
このため、本例では、図10およびその拡大図である図11に示すように、第1の例の第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42の、ピック41c,42cの先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73の間にウエハWを載せた後ウエハWをクランプするクランプ機構90を付加している。その他の構成は第1の例の基板搬送装置と同じである。なお、以下の説明においては、便宜上、第1多関節アーム機構41のピック41cのみについて説明するが、第2多関節アーム機構42についても全く同様である。
【0043】
クランプ機構90は、ピック41cの回転機構を利用して、ピック41cの回転にともなうカムの変位によりウエハWをクランプするものであり、ピック41cの回転軸46に取り付けられたカム91と、カム91の変位により伸縮する伸縮部材93と、カム91の変位を伸縮部材93に伝達するリンク機構92と、伸縮部材93の伸縮により基端側ストッパピン73を進退移動させてウエハWのクランプまたはクランプ解除を行う移動部材95と、移動部材95をガイドするリニアガイド94とを有する。また、リンク機構92と伸縮部材93の間には、キャプチャレンジを調整するためのキャプチャレンジ調整部材96が設けられている。
【0044】
伸縮部材93は、コイルバネ93aと、バネ固定ブロック93bと、移動ブロック93cと、バネ固定ブロック93bの位置を調整してバネ力を調整する位置調整部93dとを有しており、このコイルバネ93aの付勢力により移動ブロック93cおよびキャプチャレンジ調整部材96を介して移動部材95を押圧し、移動部材95が基端側ストッパピン73を押圧してウエハWの端部をクランプするようになっている。
【0045】
カム91は、第1多関節アーム機構41の動作時に、ピック41cが回転機構により第2アーム41bに対して回転する際に、ピック41cに対して相対的に回転するようになっており、リンク機構92を押圧する大径部91aとリンク機構92を押圧しない小径部91bと、これらの間の傾斜部91cとを有している。
【0046】
そして、カム91の大径部91aがリンク機構92に対応した位置にある場合には、カム91がリンク機構92を押圧することによりキャプチャレンジ調整部材96を介して伸縮部材93の移動ブロック93cが押圧され、移動部材95とともに基端側ストッパピン73が退避されてウエハWの受け取り受け渡しが可能となる。また、カム91の小径部91bがリンク機構92に対応した位置にある場合には、リンク機構92は押圧されず、上述のように移動部材95が基端側ストッパピン73を押圧してウエハWの端部をクランプする。さらに、傾斜部91cがリンク機構92に対応する際には、基端側ストッパピン73がクランプ方向または退避方向に移動するようになっている。
【0047】
カム91は、第1多関節アーム機構41のピック41cの位置に同期して基端側ストッパピン73の位置が定まるようにその位置が調整されている。ウエハWを受け取ってからクランプする場合を例に取ると、ウエハWを受け取る第1多関節アーム41が伸長した状態では、カム91は大径部91aによりリンク機構92を押圧する位置にあり、リンク機構92を介して伸縮部材93を押圧して、移動部材95により基端側ストッパピン73が退避された状態となっている。ウエハWを受け取った後、第1多関節アーム機構41が縮退する過程において、図12(a)に示すように、カム91のリンク機構92に対応する位置が大径部91aの端部に達し、その時点でウエハWのクランプが開始される。第1多関節アーム機構41がさらに縮退し、カム91のリンク機構92に対応する位置が傾斜部91cを経て、図12(b)に示すように小径部91bに達した時点でウエハWのクランプが完了する。ウエハWのクランプを外してウエハWを受け渡し可能にする際には、全く逆の動きをする。
【0048】
この際の第1多関節アーム41のストロークとクランプ機構90によるキャプチャレンジとの関係を図13に示す。ここでキャプチャレンジとは、基端側ストッパピン73の押圧部からウエハWの反対側端部までの長さをいい、本例ではウエハWの径が300mmで、ウエハWをクランプしているときのキャプチャレンジは300mmであり、ウエハWをリリースしているときのキャプチャレンジは306mmである。また、第1多関節アーム41のストロークは、回転基台40の中心(軸60の中心)と、ピック41c上のウエハWの中心との距離であり、第1多関節アーム41が最も縮退したときのストロークが308mm、最も伸長したときのストロークが980mmである。
【0049】
ウエハWのクランプ時においては、図13のaはウエハWの受け取りを行う範囲であり、カム91は大径部91aがリンク機構92を押圧する位置にあり、キャプチャレンジは最大の306mmである。bはカム91のリンク機構92に対応する位置が大径部91aから傾斜部91cに移行するところであり、クランプ開始位置となる。cはカム91のリンク機構92に対応する位置が傾斜部91cであり、ウエハWのクランプ動作を行う範囲であり、キャプチャレンジが減少していく。dはカム91のリンク機構92に対応する位置が傾斜部91cから小径部91bに移行するところであり、クランプ終了位置であり、キャプチャレンジが300mmとなる。eはさらにストロークが小さくなる範囲であり、カム91のリンク機構92に対応する位置が小径部91bに対応し、ウエハWはクランプされたままである。
【0050】
リリース時は全く逆になり、クランプ状態のeからdに達すると、カム91のリンク機構92に対応する位置が小径部91bから傾斜部91cに移行し、リリース開始位置となる。そしてcではキャプチャレンジが広がっていきウエハWをリリースする過程であり、bはリリース終了位置となる。そして、aの範囲でウエハWの受け渡しを行う。
【0051】
図14は第1多関節アーム機構41の伸長時(リリース)の速度・加速度曲線と縮退時(クランプ)の速度・加速度曲線を示す。図14aに示すように、第1多関節アーム機構41を伸長させてウエハWをリリースする際には、第1多関節アーム機構41のストロークが長い方の範囲で加速度が負の領域、すなわち減速領域となる。伸長時には加速度が負の領域でウエハWは先端側ストッパピン72に押しつけられるため、この範囲でウエハWのクランプ解除(ウエハWのリリース)をすればよい。また、図14bに示すように、第1多関節アーム機構41を縮退させてウエハWをクランプする際には、第1多関節アーム機構41が長い方の範囲で加速度が正の領域、すなわち加速領域となる。縮退時には加速度が正の領域でウエハWは先端側ストッパピン72に押しつけられるため、この範囲でウエハWをクランプすればよい。このようにウエハWが先端側ストッパピン72押しつけられている際に、クランプ動作およびクランプ解除動作を行うことにより、その際にウエハWは移動せず、位置精度の低下等が生じない。
【0052】
この第2の例においても、第1の例と同様、搬送制御部45により、駆動部44の駆動機構を制御して基板搬送装置12におけるウエハWの搬送動作を制御する他、熱膨張によるウエハWの位置のずれを補正する。
【0053】
<基板処理システムの動作>
次に、基板処理システム100の動作について説明する。
まず、基板搬送装置16により搬入出室8に接続されたフープFからウエハWを取り出し、ロードロック室6(または7)に搬入する。このとき、ロードロック室6(または7)内は大気雰囲気にされ、その後第2のゲートバルブG2が開放された状態でウエハWが搬入される。
【0054】
そして、ロードロック室6(または7)内を搬送室5に対応する圧力になるまで真空排気し、第1のゲートバルブG1を開放して基板搬送装置12の第1多関節アーム41または第2多関節アーム42によりロードロック室6(または7)内のウエハWを受け取って、いずれかの真空処理ユニットのゲートバルブGを開いてその中にウエハWを搬入し、ウエハWに対して成膜等の熱をともなう真空処理を行う。
【0055】
真空処理が終了した時点で、ゲートバルブGを開放し、基板搬送装置12が対応する真空処理ユニットからウエハWを搬出し、第1のゲートバルブG1を開放してウエハWをロードロック室6および7のいずれかに搬入し、その中でウエハWを冷却しつつ大気圧に戻す。その後、第2のゲートバルブG2を開け、基板搬送装置16により、フープFに処理後のウエハWを収納する。このような動作をフープF内のウエハWの数だけ繰り返す。
【0056】
このとき、基板搬送装置12として第1の例の基板搬送装置を用いた場合には、ウエハWの搬送に際して、第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42のウエハWを保持するピック41cおよび42cは、先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73を有しており、その間にウエハWを挟むようになっている。そして、多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWが先端側ストッパピン72に押しつけられることによりウエハWはピック41c,42c上で位置決めされる。このため、ウエハWを高速で搬送してもピック41c,42c上でのウエハWが滑ることが防止され、ウエハの位置精度を高く保つことができる。さらに、ストッパピン72、73(コア部81またはリング部材82)が摩耗しても、ウエハWが先端側ストッパピン72に押しつけられることによりウエハWはピック41c,42c上に位置決めされる。
【0057】
このように多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWを先端側ストッパピン72に押しつけて位置決めする場合には、裏面支持パッド71上でウエハWが移動しやすいことが要求される。裏面支持パッド71をカーボン球のような潤滑性のよい材料で構成することにより、ある程度の位置精度が得られるが、本実施形態のようにウエハWを真空中で搬送する場合には、常圧で潤滑性が良好な材料でも摩擦が大きくなる。これに対し、図6に示すようなウエハWが慣性で移動する方向に転がるローラ(滑車)75を有するローラパッドを用いることにより、真空中でもウエハWが移動しやすく、ウエハWを高精度で位置決めすることができる。
【0058】
また、ピック41c,42cが、先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73によりウエハWを保持する構成をとる場合には、本実施形態のようにウエハWが高温になると、ストッパピン72,73として発塵しにくい材料を用いても、ウエハ温度が上昇するとストッパピン72,73とウエハWとの摩擦が大きくなり、これらにウエハWが接触して擦れたときに発塵してパーティクルが発生するおそれがある。しかし、上述した図8、図9に示すように、外周側に回転可能なリング部材82を設けることにより、接線方向の力を逃がして摩擦による発塵を低減することができる。
【0059】
ところで、上記基板搬送装置の第1の例では、ピック41c,42c上において、ウエハWを先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73とでウエハWを挟み、多関節アーム機構を伸長させたときの慣性でウエハWを先端側ストッパピン72に押しつけることでウエハWが位置決めされるが、ウエハWは先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73との間で移動可能であるため、搬送速度がさらに高速化した場合には、ウエハWが先端側ストッパピン72に当たった際におけるパーティクルの発生や、多関節アーム機構41,42を旋回させたときのウエハWのずれが懸念される。
【0060】
そこで、基板搬送装置の第2の例では、ピック41c,42c上において、ウエハWを先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73との間に置いた後、クランプ機構90により基端側ストッパピン73をウエハWに押圧させてウエハWをクランプする。
【0061】
このように、ウエハWをクランプすることにより、搬送速度が一層高速化しても、ウエハWが先端側ストッパピン72に当たることが防止され、パーティクルの発生を有効に防止することができる。また、多関節アーム機構41,42を旋回させたときのウエハWのずれを防止することができる。
【0062】
クランプ機構90としては、上述したように第1多関節アーム機構41を例にとると、ピック41cの回転機構を利用して、ピック41cの回転にともなうカム91の変位によりウエハWをクランプするものを用いる。カム91は、第1多関節アーム機構41のピック41cの回転位置に同期して基端側ストッパピン73の進退が定まるようにその位置が調整される。具体的には、ウエハWを受け取って縮退する際にクランプする場合は、ウエハWを受け取る第1多関節アーム機構41が伸長した状態では、カム91は大径部91aによりリンク機構92を押圧する位置にあり、リンク機構92を介して伸縮部材93を押圧し、基端側ストッパピン73が退避され、ウエハWを受け取った後、第1多関節アーム機構41が縮退する過程において、カム91のリンク機構92に対応する位置が大径部91aの端部に達し、その時点でウエハWのクランプが開始され、第1多関節アーム機構41がさらに縮退し、カム91のリンク機構92に対応する位置が傾斜部91cを経て、小径部91bに達した時点でウエハWのクランプが完了する(図12参照)。ウエハWのクランプを外してウエハWを受け渡し可能にする際には、全く逆の動きをする。
【0063】
このように、カム91を利用したクランプ機構90を用い、ピック41cの回転機構を利用して、ピック41cの回転にともなうカム91の動作によりウエハWをクランプし、またクランプを解除するので、クランプのための特別な動力や制御機構が不要であり、設備が大がかりになることがない。また、このようにウエハWを先端側ストッパピン72と基端側ストッパピン73との間にウエハWを置いてからクランプ機構90によりクランプするので、クランプ前のキャプチャレンジを第1の例の基板搬送機構の場合よりも大きくしてウエハWの受け取りおよび受け渡しを行いやすくすることができる。
【0064】
また、第1多関節アーム機構41を伸長させてウエハWをリリースする際には、第1多関節アーム機構41のストロークが長い方の範囲の加速度が負の領域、すなわち減速領域においてウエハWのクランプ解除(ウエハWのリリース)を行い、また第1多関節アーム機構41を縮退させてウエハWをクランプする際には、第1多関節アーム機構41が長い方の範囲の加速度が正の領域、すなわち加速領域においてウエハWをクランプするようにすることにより、ウエハWが先端側ストッパピン72に押しつけられた状態でウエハWのクランプおよびクランプ解除を行うことができる。このため、ウエハWのクランプ時およびクランプ解除時にウエハWが移動せず、位置精度の低下等が生じない。
【0065】
ところで、上記第1の例および第2の例の基板搬送機構のいずれにおいても、ピック41c,42cが、先端側ストッパピン72および基端側ストッパピン73によりウエハWを保持する構成をとる場合には、図15に模式的に示すように、ウエハWはピック41c(42c)で位置決めされているため、真空処理ユニット1〜4の熱によって多関節アーム機構41,42のアームやピックが熱膨張すると、ウエハWの位置がその熱膨張によって変位してしまう。このようにウエハWの位置がずれたままの状態で真空処理ユニット1〜4や、ロードロック室6,7にウエハWを搬送すると、ウエハWはステージ上の所定の位置からずれた位置に載置されることとなる。
【0066】
そこで、本実施形態では、ウエハWが正しい位置に搬送されるように、以下に説明する手順にてこのような熱膨張による位置ずれの補正を行う。
【0067】
<熱膨張によるウエハの位置ずれの補正>
このような熱膨張によるウエハの位置ずれの補正は、図16のフローチャートのような手順で行うことができる。
【0068】
まず、真空処理ユニット1〜4、ロードロック室6,7の各モジュールに対して、対応する位置検出センサユニット22の光学センサ23a,23bの検出値に基づきウエハの基準位置を求め、搬送制御部45に記憶させる(ステップ1)。
【0069】
実際のウエハWの搬送に際しては、基板搬送装置12の第1および第2多関節アーム機構41,42の旋回時に、どのモジュールの光学センサ23a,23bを使用するのかを決定する(ステップ2)。
【0070】
図17に示すように、そのモジュール(真空処理ユニット1〜4およびロードロック室6,7のいずれか)にウエハWを搬入する際、またはそのモジュールからウエハWを搬送室5に戻す際に、光学センサ23a,23bの検出信号に基づいて搬送制御部45によりウエハWの位置を計測する(ステップ3)。
【0071】
搬送制御部45は、この計測結果に基づいてウエハWの基準位置からのずれ量を算出し、図18に示すように、そのモジュールへウエハWを搬入する際に、そのずれ量を補正するように基板搬送装置12の駆動部44を制御する(ステップ4)。
【0072】
次に、ウエハWの基準位置の計測およびずれ量の算出の具体的手法について説明する。駆動部44の各駆動機構はステッピングモータを用いているため、パルス値により位置情報を把握することができる。
【0073】
[ウエハの基準位置の計測]
ウエハWの基準位置の計測は、常温において、対応するモジュール内のウエハWをピック上に載置して搬送室5に戻す際に行われる。このとき、ウエハWを載置したピックは直線的に移動される。図19(a)に示すように、ウエハWが光学センサS1,S2の照射した光を遮光した点をA、Cとし、さらにウエハWを移動して光学センサS1,S2の照射した光が透光するようになった点をB、Dとする。既知の値として、基準のウエハ半径を150mmとする。
【0074】
(a)センサ間距離HH′の算出手順
この条件でまず、以下の1〜5の手順でセンサ間距離HH′を算出する。
1.A−Dのパルス値を実際のアーム位置に変換する。
2.AB、CDの長さを算出する。
3.三平方の定理により、OH2=AO2−(AB÷2)2が成り立つから、この式からOHの長さを算出する。
4.OH′の長さを上記1〜3と同様にして算出する。
5.上記3,4からHH′=OH+OH′としてHH′を算出する。
【0075】
(b)基準ウエハ位置Oの座標の算出手順
次に、以下の6〜8の手順で基準ウエハ位置Oの座標(x1,y1)を算出する。
6.S1をX座標の基準(X=0)とする。
7.上記3によりOHの長さが算出済みであるため、基準ウエハ位置OのX座標(x1)はx1=OHとなる。
8.基準ウエハ位置OのY座標(y1)は、Bのアーム位置+(AB÷2)で求めることができる。
【0076】
[ウエハのずれ量の算出]
ウエハWのずれ量の算出は、実際の処理の際に、対応するモジュール内のウエハWをピック上に載置して搬送室5に戻す際に行われる。このとき、基準位置の計測の際と同様、ウエハWを載置したピックは直線的に移動される。既知の値としてセンサ間距離HH′、基準ウエハ位置Oの座標を用いる。図19(b)に示すように、基準位置の計測の際と同様、ウエハWが光学センサS1,S2の照射した光を遮光した点をA、Cとし、さらにウエハWを移動して光学センサS1,S2の照射した光が透光するようになった点をB、Dとする。
【0077】
(a)ウエハ半径r、ウエハ位置O′のX座標:x2の算出手順
以下の9〜11の手順でウエハ半径rおよびウエハ位置O′のX座標:x2を算出する。
9.A−Dのパルス値を実際のアーム位置に変換する。
10.AB、CDの長さを算出する。
11.三平方の定理により、以下の2つの式が成り立つから、連立方程式によりr、x2を算出する。
r2=(x2)2+(AB÷2)2
r2=(HH′−x2)2+(CD÷2)2
【0078】
(b)ウエハ位置O′のY座標:y2の算出手順
以下の12によりウエハ位置O′のY座標:y2を算出する。
12.y2=Bのアーム位置+(AB÷2)
【0079】
(c)ウエハのずれ量の算出手順
以下の13によりウエハのずれ量を算出する。
13.O′の座標(x2,y2)と基準位置Oの座標(x1,y1)から以下の式でずれ量を算出する。
ずれ量2=(x2−x1)2+(y2−y1)2
【0080】
このように、ピック41c,42c内でウエハWを位置決めして、その位置補正を各モジュールに対応して設けられたセンサを用いて行うので、アームやピックの熱膨張、さらにはウエハW自体の熱膨張によってウエハWの位置がずれても、高い位置精度でウエハWを搬送することができる。また、熱膨張のみならず、他の要因でウエハWの位置がずれた場合にもウエハWの位置補正を行うことができる。例えば、ストッパピン72、73(コア部81またはリング部材82)が摩耗しても、ウエハWが先端側ストッパピン72に押しつけられることによりウエハWはピック41c,42c上に位置決めすることができ、上記方法でウエハWの位置補正を行うことができる。また、このようなずれ量が大きくなることで、ピックやアームの交換時期を把握することも可能となる。
【0081】
ただし、第1の例の基板搬送装置の場合には、減速時にピック41c,42c上でウエハWが移動する可能性があるため、位置検出センサユニット22による計測時のウエハWの位置ずれが懸念される。つまり、第1の例の場合には、加速度が正の領域、すなわち加速領域においてはウエハWがいずれかのストッパピンに押しつけられた状態となるため、その領域に位置検出ユニット22の光学センサ23a,23bを設置すれば、ウエハWの位置ずれは実質的に生じない。しかし、加速度が負の領域、すなわち減速領域に位置検出ユニット22の光学センサ23a,23bを設置すれば、ウエハWが移動中に計測することになるため、誤差が大きくなってしまう。具体的には、多関節アーム機構伸長時、つまりウエハWをモジュールへ搬入する場合には、図20(a)に示すように、多関節アーム機構のストロークが短い範囲であるAの範囲でしか精度良く計測できず、また多関節アーム機構縮退時、つまりウエハWをモジュールから戻す場合には、図20(b)に示すように、多関節アーム機構のストロークが長い範囲であるBの範囲でしか精度良く測定することができない。したがって、光学センサ23a,23bを所定の位置に設置して、モジュールへ搬送する際およびモジュールから戻す際の両方ともウエハWの位置ずれを生じさせずに精度良く計測することは困難である。また、光学センサ23a,23bの設置位置に制限がある場合には、精度良く計測できない場合も生じる。
【0082】
これに対し、ウエハWをクランプする第2の例の場合には、図20(a)のCの範囲、図20(b)のDの範囲と、ウエハWをモジュールに搬入する際およびモジュールから戻す際のいずれもほぼ全域でウエハWの位置を精度良く測定することができる。
【0083】
<アーム機構の伸び補正>
以上の手順でウエハの熱膨張による位置ずれの補正を行うことができるが、長期間のアイドリングの後、再度処理を行う場合には、基板搬送装置12の第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42のアームやピックの実際の伸び量が不明であり、アイドリング直前のデータに基づいてそのまま搬送動作を実施すると、ウエハWをピックに載せる際に、ウエハWが先端側ストッパピン72または基端側ストッパピン73に乗り上げるおそれがある。このため、第1多関節アーム機構41および第2多関節アーム機構42(以下単にアーム機構という)の伸び補正を行うことが好ましい。
【0084】
アーム機構の伸び補正を行うに際しては、予めレーザー変位計のような変位計によりアーム機構の伸び量を測定し、図21に示すように、レーザー変位計で測定した伸びと、位置検出センサユニット22での測定結果との相関関係を求めておく。そして、図22に示すように、レーザー変位計でアーム機構の温度とアーム機構の伸びとの関係を求め、アイドリング時間とアーム機構の温度との関係から、図23に示すようにアイドリング時間とアーム機構の伸びの関係を求める。アイドリング終了後、搬送動作の開始時に、アイドリング時間から図23に基づいてアーム機構の伸び量を算出し、その伸び量を補正値としてアーム機構の動作を行う。具体的にはアイドリング状態になった直後にピックにウエハを載せ、アイドリング時の熱膨張経時変化のデータを元に処理再開時のアーム機構の伸び量(補正値)を決定し、図21の関係に基づいて位置補正を行う。
【0085】
これにより、長時間アイドリングを行った後でも、アーム機構の伸び量を把握することができ、ウエハWをピックに載せる際に、ウエハWが先端側ストッパピン72または基端側ストッパピン73に乗り上げることを防止することができる。
【0086】
なお、以上のようにレーザー変位計の測定値とアイドリング時間との相関関係を予めとっておく代わりに、基板処理システム100内、例えばロードロック室6または7の入り口部分にレーザー変位計等の変位計を設けておき、直接アーム機構の変位を測定するようにしてもよい。
【0087】
<他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では基板搬送機構として多関節アーム機構を用いたが、これに限らず、直動機構等の他の機構であってもよい。また、位置検出センサユニットのセンサとして光学センサを用いたが、位置を検出するものであればこれに限るものではなく、また、1つの位置検出センサユニットにつき2つのセンサを用いたが、1つでもよい。また、位置検出センサユニットを、ウエハの搬出入の対象モジュール(真空処理ユニットおよびロードロック室のいずれか)の搬入出口近傍に設けたが、ウエハを保持するピックがウエハの搬入および搬出のために直動する範囲であればよい。さらに、上記実施形態では、真空処理ユニットを4つ、ロードロック室を2つ設けた基板処理システムを例にとって説明したが、これらの数に限定されるものではない。さらにまた、真空処理ユニットを複数設けたマルチチャンバタイプの真空処理装置に限らず、真空処理ユニットが1個のシステムであっても適用可能である。さらにまた、被処理基板についても、半導体ウエハに限らず、FPD用ガラス基板などの他の基板を対象にすることができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0088】
1〜4;真空処理ユニット
5;搬送室
6,7;ロードロック室
8;搬入出室
12,16;基板搬送装置
22;位置検出センサユニット
23a,23b;光学センサ
30;全体制御部
40;回転基台
41;第1多関節アーム機構
41a,42a;第1アーム
41b,42b;第2アーム
41c,42c;ピック
43;駆動リンク機構
44;駆動部
45;搬送制御部
50;中空軸
51,52,53,54,55,56,60;軸
61;駆動アーム
62,63;従動アーム
71;裏面支持パッド
72;先端側ストッパピン
73;基端側ストッパピン
75;ローラ(滑車)
76;回転軸
81;コア部
82;リング部材
90;クランプ機構
91;カム
92;リンク機構
93;伸縮部材
94;リニアガイド
95;移動部材
100;基板処理システム
W;半導体ウエハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室とを有する基板処理システムにおいて、前記搬送室内に設けられ、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送装置であって、
基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、
前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部と、
前記ピックによる基板の搬送動作を制御する搬送制御部と
を有し、
前記搬送制御部は、
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記位置決めピンは、前記ピック上に基板を挟むように配置され、前記ピックを移動した際の慣性で基板を前記位置決めピンに押しつけることにより基板が位置決めされることを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記ピックは複数の位置決めピンを有し、前記複数の位置決めピンのいずれかを移動させて基板を前記ピック上でクランプするクランプ機構をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記ピックおよび他のアームを含む多関節アーム機構を有し、前記ピックは隣接するアームに対し回転可能に設けられ、前記クランプ機構は、前記ピックの回転にともなって変位するカムと、前記カムの変位により前記位置決めピンを進退移動させ、基板をクランプしまたはリリースする移動部材と、前記カムの変位を前記移動部材に伝達させる中間機構とを有し、前記カムは、前記ピックの回転位置に同期して前記位置決めピンの進退が定まるようにその位置が調整されることを特徴とする請求項3に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記位置決めピンは、前記ピックの先端側に設けられた先端側位置決めピンと、前記ピックの基端側に設けられた基端側位置決めピンとを有し、前記クランプ機構は前記基端側位置決めピンを進退移動させて基板をクランプしまたはリリースするように構成され、前記多関節アーム機構を伸長させて、基板を受け渡すために前記ピック上の基板をリリースする際には、前記ピックの加速度が負となる範囲で基板をリリースし、前記多関節アームを縮退させて、前記ピック上に基板を受け取った後に基板をクランプする際には、前記ピックの加速度が正となる範囲で基板をクランプすることを特徴とする請求項4に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
前記基準位置情報は、常温において、前記真空処理ユニットに対して搬入出される基板が通過する位置に設けられた位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項7】
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の基板の位置情報は、前記位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められ、このようにして求めた基板の位置情報と前記基準位置情報とから前記位置ずれを算出することを特徴とする請求項6に記載の基板搬送装置。
【請求項8】
前記位置ずれの検出は、基板を前記真空処理ユニットから搬出する際または前記真空処理ユニットに搬入する際に行われ、前記位置ずれの補正は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に行われることを特徴とする請求項7に記載の基板搬送装置。
【請求項9】
前記基板処理システムは、前記搬送室に接続され、大気雰囲気と真空との間で圧力可変であり、大気雰囲気から前記搬送室に対して基板を搬送するロードロック室をさらに有し、
前記搬送制御部は、
基板を前記ロードロック室に搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記ロードロック室に搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記ロードロック室に搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項10】
前記ピックの前記位置決めピンは、垂直軸に対して回転可能なリング部材を有していることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項11】
前記ピックは、基板の裏面を支持し、基板を位置決めする際の移動方向に回転可能なローラを備えた裏面支持パッドを有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項12】
熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、
前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室と、
前記搬送室内に設けられ、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送装置と
を具備する基板処理システムであって、
前記基板搬送装置は、
基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、
前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部と、
前記ピックによる基板の搬送動作を制御する搬送制御部と
を有し、
前記搬送制御部は、
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする基板処理システム。
【請求項13】
前記位置決めピンは、前記ピック上に基板を挟むように配置され、前記ピックを移動した際の慣性で基板を前記位置決めピンに押しつけることにより基板が位置決めされることを特徴とする請求項12に記載の基板処理システム。
【請求項14】
前記ピックは複数の位置決めピンを有し、前記複数の位置決めピンのいずれかを移動させて基板を前記ピック上でクランプするクランプ機構をさらに有することを特徴とする請求項12に記載の基板処理システム。
【請求項15】
前記基板搬送装置は、前記ピックおよび他のアームを含む多関節アーム機構を有し、前記ピックは隣接するアームに対し回転可能に設けられ、前記クランプ機構は、前記ピックの回転にともなって変位するカムと、前記カムの変位により前記位置決めピンを進退移動させ、基板をクランプしまたはリリースする移動部材と、前記カムの変位を前記移動部材に伝達させる中間機構とを有し、前記カムは、前記ピックの回転位置に同期して前記位置決めピンの進退が定まるようにその位置が調整されることを特徴とする請求項14に記載の基板処理システム。
【請求項16】
前記位置決めピンは、前記ピックの先端側に設けられた先端側位置決めピンと、前記ピックの基端側に設けられた基端側位置決めピンとを有し、前記クランプ機構は前記基端側位置決めピンを進退移動させて基板をクランプしまたはリリースするように構成され、前記多関節アーム機構を伸長させて、基板を受け渡すために前記ピック上の基板をリリースする際には、前記ピックの加速度が負となる範囲で基板をリリースし、前記多関節アームを縮退させて、前記ピック上に基板を受け取った後に基板をクランプする際には、前記ピックの加速度が正となる範囲で基板をクランプすることを特徴とする請求項15に記載の基板処理システム。
【請求項17】
前記基準位置情報は、常温において、前記真空処理ユニットに対して搬入出される基板が通過する位置に設けられた位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められることを特徴とする請求項12から請求項16のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項18】
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の基板の位置情報は、前記位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められ、このようにして求めた基板の位置情報と前記基準位置情報とから前記位置ずれを算出することを特徴とする請求項17に記載の基板処理システム。
【請求項19】
前記位置ずれの検出は、基板を前記真空処理ユニットから搬出する際または前記真空処理ユニットに搬入する際に行われ、前記位置ずれの補正は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に行われることを特徴とする請求項18に記載の基板処理システム。
【請求項20】
前記搬送室に接続され、大気雰囲気と真空との間で圧力可変であり、大気雰囲気から前記搬送室に対して基板を搬送するロードロック室をさらに具備し、
前記搬送制御部は、
基板を前記ロードロック室に搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記ロードロック室に搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記ロードロック室に搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項12から請求項19のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項21】
前記ピックの前記位置決めピンは、垂直軸に対して回転可能なリング部材を有していることを特徴とする請求項12から請求項20のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項22】
前記ピックは、基板の裏面を支持し、基板を位置決めする際の移動方向に回転可能なローラを備えた裏面支持パッドを有することを特徴とする請求項12から請求項21のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項23】
熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室とを有する基板処理システムにおいて、基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部とを有し、前記搬送室に設けられた基板搬送装置を用いて、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送方法であって、
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入することを特徴とする基板搬送方法。
【請求項24】
前記基準位置情報は、常温において、前記真空処理ユニットに対して搬入出される基板が通過する位置に設けられた位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められることを特徴とする請求項23に記載の基板搬送方法。
【請求項25】
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の基板の位置情報は、前記位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められ、このようにして求めた基板の位置情報と前記基準位置情報とから前記位置ずれを算出することを特徴とする請求項24に記載の基板搬送方法。
【請求項26】
前記位置ずれの検出は、基板を前記真空処理ユニットから搬出する際または前記真空処理ユニットに搬入する際に行われ、前記位置ずれの補正は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に行われることを特徴とする請求項25に記載の基板搬送方法。
【請求項27】
前記基板処理システムは、前記搬送室に接続され、大気雰囲気と真空との間で圧力可変であり、大気雰囲気から前記搬送室に対して基板を搬送するロードロック室をさらに有し、
基板を前記ロードロック室に搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記ロードロック室に搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記ロードロック室に搬入することを特徴とする請求項23から請求項26のいずれか1項に記載の基板搬送方法。
【請求項28】
コンピュータ上で動作し、基板搬送装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項23から請求項27のいずれかの基板搬送方法が行われるように、コンピュータに前記基板搬送装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室とを有する基板処理システムにおいて、前記搬送室内に設けられ、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送装置であって、
基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、
前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部と、
前記ピックによる基板の搬送動作を制御する搬送制御部と
を有し、
前記搬送制御部は、
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記位置決めピンは、前記ピック上に基板を挟むように配置され、前記ピックを移動した際の慣性で基板を前記位置決めピンに押しつけることにより基板が位置決めされることを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記ピックは複数の位置決めピンを有し、前記複数の位置決めピンのいずれかを移動させて基板を前記ピック上でクランプするクランプ機構をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記ピックおよび他のアームを含む多関節アーム機構を有し、前記ピックは隣接するアームに対し回転可能に設けられ、前記クランプ機構は、前記ピックの回転にともなって変位するカムと、前記カムの変位により前記位置決めピンを進退移動させ、基板をクランプしまたはリリースする移動部材と、前記カムの変位を前記移動部材に伝達させる中間機構とを有し、前記カムは、前記ピックの回転位置に同期して前記位置決めピンの進退が定まるようにその位置が調整されることを特徴とする請求項3に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記位置決めピンは、前記ピックの先端側に設けられた先端側位置決めピンと、前記ピックの基端側に設けられた基端側位置決めピンとを有し、前記クランプ機構は前記基端側位置決めピンを進退移動させて基板をクランプしまたはリリースするように構成され、前記多関節アーム機構を伸長させて、基板を受け渡すために前記ピック上の基板をリリースする際には、前記ピックの加速度が負となる範囲で基板をリリースし、前記多関節アームを縮退させて、前記ピック上に基板を受け取った後に基板をクランプする際には、前記ピックの加速度が正となる範囲で基板をクランプすることを特徴とする請求項4に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
前記基準位置情報は、常温において、前記真空処理ユニットに対して搬入出される基板が通過する位置に設けられた位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項7】
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の基板の位置情報は、前記位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められ、このようにして求めた基板の位置情報と前記基準位置情報とから前記位置ずれを算出することを特徴とする請求項6に記載の基板搬送装置。
【請求項8】
前記位置ずれの検出は、基板を前記真空処理ユニットから搬出する際または前記真空処理ユニットに搬入する際に行われ、前記位置ずれの補正は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に行われることを特徴とする請求項7に記載の基板搬送装置。
【請求項9】
前記基板処理システムは、前記搬送室に接続され、大気雰囲気と真空との間で圧力可変であり、大気雰囲気から前記搬送室に対して基板を搬送するロードロック室をさらに有し、
前記搬送制御部は、
基板を前記ロードロック室に搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記ロードロック室に搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記ロードロック室に搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項10】
前記ピックの前記位置決めピンは、垂直軸に対して回転可能なリング部材を有していることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項11】
前記ピックは、基板の裏面を支持し、基板を位置決めする際の移動方向に回転可能なローラを備えた裏面支持パッドを有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の基板搬送装置。
【請求項12】
熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、
前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室と、
前記搬送室内に設けられ、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送装置と
を具備する基板処理システムであって、
前記基板搬送装置は、
基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、
前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部と、
前記ピックによる基板の搬送動作を制御する搬送制御部と
を有し、
前記搬送制御部は、
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする基板処理システム。
【請求項13】
前記位置決めピンは、前記ピック上に基板を挟むように配置され、前記ピックを移動した際の慣性で基板を前記位置決めピンに押しつけることにより基板が位置決めされることを特徴とする請求項12に記載の基板処理システム。
【請求項14】
前記ピックは複数の位置決めピンを有し、前記複数の位置決めピンのいずれかを移動させて基板を前記ピック上でクランプするクランプ機構をさらに有することを特徴とする請求項12に記載の基板処理システム。
【請求項15】
前記基板搬送装置は、前記ピックおよび他のアームを含む多関節アーム機構を有し、前記ピックは隣接するアームに対し回転可能に設けられ、前記クランプ機構は、前記ピックの回転にともなって変位するカムと、前記カムの変位により前記位置決めピンを進退移動させ、基板をクランプしまたはリリースする移動部材と、前記カムの変位を前記移動部材に伝達させる中間機構とを有し、前記カムは、前記ピックの回転位置に同期して前記位置決めピンの進退が定まるようにその位置が調整されることを特徴とする請求項14に記載の基板処理システム。
【請求項16】
前記位置決めピンは、前記ピックの先端側に設けられた先端側位置決めピンと、前記ピックの基端側に設けられた基端側位置決めピンとを有し、前記クランプ機構は前記基端側位置決めピンを進退移動させて基板をクランプしまたはリリースするように構成され、前記多関節アーム機構を伸長させて、基板を受け渡すために前記ピック上の基板をリリースする際には、前記ピックの加速度が負となる範囲で基板をリリースし、前記多関節アームを縮退させて、前記ピック上に基板を受け取った後に基板をクランプする際には、前記ピックの加速度が正となる範囲で基板をクランプすることを特徴とする請求項15に記載の基板処理システム。
【請求項17】
前記基準位置情報は、常温において、前記真空処理ユニットに対して搬入出される基板が通過する位置に設けられた位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められることを特徴とする請求項12から請求項16のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項18】
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の基板の位置情報は、前記位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められ、このようにして求めた基板の位置情報と前記基準位置情報とから前記位置ずれを算出することを特徴とする請求項17に記載の基板処理システム。
【請求項19】
前記位置ずれの検出は、基板を前記真空処理ユニットから搬出する際または前記真空処理ユニットに搬入する際に行われ、前記位置ずれの補正は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に行われることを特徴とする請求項18に記載の基板処理システム。
【請求項20】
前記搬送室に接続され、大気雰囲気と真空との間で圧力可変であり、大気雰囲気から前記搬送室に対して基板を搬送するロードロック室をさらに具備し、
前記搬送制御部は、
基板を前記ロードロック室に搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記ロードロック室に搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記ロードロック室に搬入するように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項12から請求項19のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項21】
前記ピックの前記位置決めピンは、垂直軸に対して回転可能なリング部材を有していることを特徴とする請求項12から請求項20のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項22】
前記ピックは、基板の裏面を支持し、基板を位置決めする際の移動方向に回転可能なローラを備えた裏面支持パッドを有することを特徴とする請求項12から請求項21のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項23】
熱をともなう真空処理が行われる真空処理ユニットと、前記真空処理ユニットが接続され、内部が真空に保持された搬送室とを有する基板処理システムにおいて、基板を位置決めする位置決めピンを有し、基板を位置決めした状態で保持するピックと、前記ピックにより前記真空処理ユニットに対して基板を搬入および搬出するように前記ピックを駆動させる駆動部とを有し、前記搬送室に設けられた基板搬送装置を用いて、前記真空処理ユニットに対して基板の搬入および搬出を行う基板搬送方法であって、
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記真空処理ユニットに搬入することを特徴とする基板搬送方法。
【請求項24】
前記基準位置情報は、常温において、前記真空処理ユニットに対して搬入出される基板が通過する位置に設けられた位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められることを特徴とする請求項23に記載の基板搬送方法。
【請求項25】
基板を前記真空処理ユニットに搬入する際の基板の位置情報は、前記位置検出センサユニットにより基板を検出し、その検出情報に基づいて求められ、このようにして求めた基板の位置情報と前記基準位置情報とから前記位置ずれを算出することを特徴とする請求項24に記載の基板搬送方法。
【請求項26】
前記位置ずれの検出は、基板を前記真空処理ユニットから搬出する際または前記真空処理ユニットに搬入する際に行われ、前記位置ずれの補正は、基板を前記真空処理ユニットに搬入する際に行われることを特徴とする請求項25に記載の基板搬送方法。
【請求項27】
前記基板処理システムは、前記搬送室に接続され、大気雰囲気と真空との間で圧力可変であり、大気雰囲気から前記搬送室に対して基板を搬送するロードロック室をさらに有し、
基板を前記ロードロック室に搬入する際の、常温における基板の基準位置情報を予め把握しておき、
実処理において、基板を前記ロードロック室に搬入する際に、その基板の前記基準位置からの位置ずれを算出し、
前記位置ずれを補正して前記基板を前記ロードロック室に搬入することを特徴とする請求項23から請求項26のいずれか1項に記載の基板搬送方法。
【請求項28】
コンピュータ上で動作し、基板搬送装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項23から請求項27のいずれかの基板搬送方法が行われるように、コンピュータに前記基板搬送装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−42112(P2013−42112A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−77694(P2012−77694)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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