説明

基板搬送装置

【課題】搬送ロボットのθ軸が回転した時の角度誤差を検出することが可能であり、検出した角度誤差からθ軸の角度補正を行う機能を有する基板搬送装置を提供する。
【解決手段】アーム13を有し基板7を搬送する搬送ロボット2と、基板7を外部に搬送するための開口部8とを備える。搬送ロボット2は、θ軸モータによりアーム13を回転させ、R軸モータ110によりアーム13を伸縮させる。開口部8のフレームに、投光器から受光器へセンサ光を投射する検出センサ4、4’を備える。搬送ロボット2が、アーム13を伸縮して、開口部8を通して基板7を搬送する過程において、基板7が検出センサ4及び検出センサ4’のセンサ光を遮光し始めた時と、検出センサ4及び検出センサ4’がセンサ光の遮光が終了して再び受光し始めた時との、R軸モータ110の回転角度を用いて、θ軸モータの回転角度とアーム13の回転角度との差である角度誤差αを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を搬送する搬送ロボットを備える基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板搬送装置は、ウェーハ搬送装置(EFEM:Equipment Front End Module)とも呼ばれ、基板であるウェーハを、半導体製造装置や半導体検査装置等の上位装置に供給し、上位装置から回収する。基板搬送装置は、基板を搬送する搬送ロボット(ウェーハ搬送ロボット、以下単に「ロボット」とも称する)、アライナ、及び搬送ロボットとアライナを制御するコントローラを備える。
【0003】
搬送ロボットは、ロボットアームの先端に取り付けられたハンドで、ロードポートに載置されたウェーハ密閉容器(FOUP:Front Opening Unified Pod)からウェーハを取り出し、アライナに供給する。アライナは、ウェーハの載置位置について補正を行う。例えば、Vノッチまたはオリフラ(オリエンテーションフラット)の位置補正(角度補正)と、水平方向の位置補正(偏芯補正)を行う。ウェーハは、アライナでの角度補正と偏芯補正の終了後、上位装置に搬送される。また、搬送ロボットは、上位製造装置から処理後のウェーハを取り出し、FOUPに収納することも可能である。
【0004】
基板搬送装置の技術動向としては、デバイスの微細化及びコスト低減に伴い、ウェーハの搬送精度と搬送スループットの向上が要求されている。
【0005】
ウェーハの搬送精度を向上させる技術の例は、特許文献1に開示されている。特許文献1には、ロボットのθ軸及びR軸に、ウェーハの遮光角度を検出するセンサとウェーハの遮光距離を検出するセンサをそれぞれ設け、ウェーハを搬送させながらセンサの遮光距離を測定し、ハンド上のウェーハの位置ずれを求める方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−123556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高スループット化に対応するため、基板搬送装置では、搬送ロボットの動作速度を上げる必要がある。搬送ロボットは、4軸または5軸の駆動軸を有するが、動作速度が上がると、動作時に大きなトルクが駆動軸に発生する。その結果、搬送ロボットのギヤなど構成部品に生じるねじれやバックラッシュが増大し、搬送誤差の原因となり、ウェーハの搬送精度の向上が困難となる。
【0008】
また、高精度な搬送を実現するには、搬送ロボットの位置決め精度を向上させる必要がある。このためには、搬送ロボットの各部位の剛性を上げ、振動の抑制、たわみの低減、整定時間の短縮が欠かせない。一般的に剛性を向上させるためには、各機構部の強度アップが必要となるため、搬送ロボットの重量が大きくなる傾向にある。重量の増加は、搬送ロボットの動作時に駆動軸に掛かるトルクの増加を助長させている。
【0009】
特に、ロボットの移動方向とロボットアームの伸縮方向が直交する直交型ロボットでは、ロボットが旋回する時の軸である旋回軸に発生する角度誤差は、ウェーハの取り出し・格納などで伸びた状態のロボットアームの先端位置に大きく現れ、ウェーハの搬送精度に大きな影響を与える。
【0010】
以下、ロボットの旋回軸を「θ軸」と称し、ロボットアームの伸縮方向を「R軸」と称する。R軸方向は、ロボットアームの先端に取り付けられたハンドの移動方向でもある。
【0011】
従来、θ軸の角度制御は、ロボットを旋回させるθ軸モータの回転軸にエンコーダなどの角度検出器を設け、回転軸の回転後の角度を検出し、コントローラの回転角度の指令値に対する角度検出器の回転角度の検出値をフィードバックすることで行っている。θ軸モータの回転軸自体に角度検出器を取り付ける方法は、取り付けが容易で、かつ安価な手段であるので、多くのロボットに利用されている。
【0012】
しかし、この方法では、θ軸の角度位置は、θ軸モータの回転軸の回転角度でしか検出できない。したがって、回転軸に取り付けられたハーモニックギヤやカップリングなどで生じたθ軸の角度誤差は、検出が不可能である。このため、基板搬送装置としては、ウェーハの取り出しや収納時の搬送精度の低下を検出できず、角度補正もできないこととなる。
【0013】
また、θ軸の角度誤差を検出するためには、θ軸の機構部の先端(ロボットアームの設置位置)、例えばθ軸の回転を案内するクロスローラベアリングなどに、角度検出器を取り付ける方法が考えられる。しかし、この方法は、実装スペースの確保や取り付け精度などの実装面で困難である。
【0014】
本発明の目的は、搬送ロボットのθ軸が回転した時の角度誤差を検出することが可能な基板搬送装置を提供することである。さらに、検出した角度誤差からθ軸の角度補正を行う機能を有する基板搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による基板搬送装置は、次のような特徴を有する。
【0016】
アームを有し基板を搬送する搬送ロボットと、前記基板を外部に搬送するための開口部とを備える。前記搬送ロボットは、θ軸モータにより前記アームを回転させ、R軸モータにより前記アームを伸縮させる。前記開口部のフレームに、投光器と受光器を有し前記投光器から前記受光器へセンサ光を投射する検出センサを2つ備える。前記搬送ロボットが、前記アームを伸ばしまたは縮めて、前記開口部を通して前記基板を搬送する過程において、前記基板が一方の前記検出センサの前記センサ光を遮光し始めた時の、前記R軸モータの回転角度θa(a2)と、前記基板が他方の前記検出センサの前記センサ光を遮光し始めた時の、前記R軸モータの回転角度θa(b2)と、一方の前記検出センサが、前記センサ光の遮光が終了して再び受光し始めた時の、前記R軸モータの回転角度θa(a1)と、他方の前記検出センサが、前記センサ光の遮光が終了して再び受光し始めた時の、前記R軸モータの回転角度θa(b1)とを用いて、前記θ軸モータの回転角度と前記アームの回転角度との差である角度誤差αを求める。
【発明の効果】
【0017】
本発明による基板搬送装置では、搬送ロボットのθ軸が回転した時の角度誤差を検出することが可能である。さらに、検出した角度誤差からθ軸の角度補正を行うことが可能である。したがって、ウェーハの搬送精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施例による基板搬送装置の搬送ロボットの上面図である。
【図2】本実施例による基板搬送装置の構成を示す上面図である。
【図3】本実施例による搬送ロボットのθ軸機構部の構成の概略を示す斜視図である。
【図4】本実施例での、θ軸角度誤差を求める方法を説明する図である。
【図5】本実施例での、θ軸角度誤差を補正する方法を説明する図である。
【図6】本実施例によるロボットコントローラの制御ブロック図である。
【図7】本実施例での、θ軸角度誤差を検出するための処理フローを示す図である。
【図8】本実施例での、R軸モータの回転角度からロボットアームの伸び位置を求める方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面に用いて説明する。以下では、搬送ロボットが旋回する時の軸である旋回軸を「θ軸」と称し、ロボットアームの伸縮方向を「R軸」と称する。R軸方向は、ロボットアームの先端に取り付けられてウェーハを把持するハンドの移動方向でもある。
【0020】
図2は、本実施例による基板搬送装置の構成を示す上面図である。基板搬送装置1は、搬送ロボット2とロボットコントローラ100を備える。ロボットコントローラ100は、搬送ロボット2を制御する。搬送ロボット2は、基板であるウェーハ7をロードポート3からユーザポート5に搬送することで、半導体製造装置や半導体検査装置等の上位装置にウェーハ7を供給する。また、ユーザポート5を経由して上位装置からウェーハ7を回収し、ロードポート3に戻す。ロードポート3は、基板であるウェーハ7を収納したウェーハ収納容器を載置することができる。ユーザポート5は、上位装置とのウェーハ7の受け渡し場所である。ユーザポート5内で、ウェーハ7を搬送する基準となる位置を、ユーザポート搬送座標6と称する。
【0021】
基板搬送装置1は、基板搬送装置1の外部に設けたユーザポート5に対してウェーハ7を搬入・搬出するための開口部(ユーザポート開口部8)を有する。ウェーハ7の搬送経路であるユーザポート開口部8のフレームには、投光器と受光器から構成される2つの検出センサ4、4’を設ける。投光器と受光器は、図2において紙面に垂直方向に配置される。投光器からは、受光器に向かってセンサ光が投射される。したがって、センサ光の経路(センサ光軸)は、図2において紙面に垂直方向である。すなわち、センサ光軸は、基板搬送装置1の上下方向であり、基板搬送装置1からユーザポート5へのウェーハ7の搬送方向に対して直交する。
【0022】
搬送ロボット2は、上位装置からの指令により、ロードポート3からユーザポート開口部8を通してユーザポート5へ、ウェーハ7を搬送する。また、上位装置で処理済み後のウェーハ7については、ユーザポート開口部8を通してユーザポート5からウェーハ7を取り出し、ロードポート3に載置したウェーハ収納容器に搬送して格納する。搬送ロボット2は、ロボットコントローラ(図示せず)により制御される。
【0023】
基板搬送装置1は、近年の生産効率向上に伴い、ウェーハの搬送精度と搬送スループットの向上を要求されている。
【0024】
図3は、搬送ロボット2のθ軸を駆動するθ軸機構部の構成の概略を示す斜視図である。搬送ロボット2は、θ軸機構部と、θ軸機構部の上部に取り付けられたロボットアーム13を備える。
【0025】
θ軸機構部は、主要機構として、θ軸モータ25とクロスローラベアリング21を備える。搬送ロボット2のθ軸は、回転駆動力を発生するθ軸モータ25により回転駆動される。θ軸機構部の上部にあるクロスローラベアリング21には、ロボットアーム13が取り付けられる。ロボットアーム13は、θ軸モータ25によって、θ軸の回転方向に回転する。
【0026】
θ軸モータ25の回転軸には、減速機構と角度検出器が取り付けられる。減速機構には、例えばハーモニックギヤ24を用い、角度検出器には、例えば、エンコーダ26を用いる。エンコーダ26は、ロボットコントローラ(図示せず)に接続され、ロボットコントローラでθ軸モータ25の回転軸の回転角度を検出するための装置である。
【0027】
θ軸モータ25の回転軸には、回転駆動力を伝達するシャフト22の一端が、ハーモニックギヤ24を介して接続される。シャフト22とハーモニックギヤ24との間は、回転軸のズレや振動を吸収するため、カップリング23で締結する。シャフト22の他端は、回転機構を案内するクロスローラベアリング21に固定される。クロスローラベアリング21は、θ軸機構部の上部に配置される。
【0028】
θ軸機構部は、以上のように構成され、上部に設けられたクロスローラベアリング21には、ロボットアーム13が実装される。ロボットアーム13の先端には、ウェーハを把持するハンド(図示せず)が設けられる。ウェーハの搬送時に伸縮動作を行うロボットアーム13は、アーム機構全体がクロスローラベアリング21と共に回転する。
【0029】
以下では、角度検出器であるエンコーダ26で検出する回転角度(すなわち、θ軸モータ25の回転軸の回転角度)と、クロスローラベアリング21の回転角度(すなわち、ロボットアーム13の回転角度)との差を、「角度誤差」または「θ軸角度誤差」と称する。
【0030】
搬送ロボット2の搬送精度を決定する上で、θ軸機構部は重要な構成要素となる。例えば、ハーモニックギヤ24のバックラッシュ、ねじれ、及びシャフト22のねじれなどに起因して生じるθ軸角度誤差は微小である。しかし、角度誤差が畳重された状態でロボットアーム13を伸ばし、ロボットアーム13の先端にあるハンドの到達位置で見ると、角度誤差の影響は大きくなり、ウェーハの搬送誤差は増大される。
【0031】
一般的に、減速機構に生じるバックラッシュとねじれは、構造上避けられないものである。最適策を講じて角度誤差を低減することは可能であるが、バックラッシュとねじれにより生じる角度誤差を無くすことは不可能である。
【0032】
また、θ軸モータ25の回転軸に取り付けられている減速機構(ハーモニックギヤ24)やシャフト22により生じる角度誤差は、回転軸に備えられたエンコーダ26では検出できない。したがって、角度誤差の補正も困難である。
【0033】
角度誤差の検出方法として、θ軸機構部の上部、図3ではクロスローラベアリング21に角度検出器を取り付けて、θ軸の回転角度を検出することも考えられる。しかし、搬送ロボット2の上部へ角度検出器を取り付ける場合の実装スペースや、角度検出器を構成する光電センサ及び回転スリット板を取り付ける際の位置決め精度、ロボットアーム13との干渉など、実装上の課題を考慮すると、現実的に困難である。
【0034】
本実施例による基板搬送装置では、図2に示したように、投光器と受光器から構成される2つの検出センサ4、4’を、ウェーハ7の搬送経路であるユーザポート開口部8のフレームに設ける。投光器からは、受光器に向かってセンサ光が投射される。搬送ロボット2がウェーハ7をユーザポート5に(または、ユーザポート5から)搬送する動作中に、センサ光がウェーハ7によって遮光され始めた時(以下、「遮光開始タイミング」と称する)と、遮光が終了して再び受光器が受光し始めた時(以下、「遮光終了タイミング」と称する)を求める。そして、遮光開始タイミングと遮光終了タイミングのそれぞれにおける、ロボットアーム13を伸縮させるモータ(R軸モータ)の回転角度を検出する。検出した回転角度から、遮光開始タイミングと遮光終了タイミングのそれぞれにおけるロボットアーム13の伸び位置(ハンドの位置)を求める。求めたロボットアーム13の伸び位置から、θ軸角度誤差を求める。ロボットアーム13の伸び位置からは、遮光開始タイミングでのウェーハ7内の位置(以下、「遮光開始位置」と称する)と、遮光終了タイミングでのウェーハ7内の位置(以下、「遮光終了位置」と称する)を知ることができる。
【0035】
また、求めたθ軸角度誤差を角度補正値として利用し、ユーザポート5にウェーハ7を載置する前に、θ軸の角度補正を行う。
【0036】
図1は、本実施例による基板搬送装置の搬送ロボットの上面図であり、搬送ロボットの動作を説明するための図である。
【0037】
搬送ロボット2は、クロスローラベアリング21を有するθ軸機構部と、θ軸機構部の上部に取り付けられたロボットアーム13を備え、θ軸機構部による旋回とロボットアーム13の伸縮動作とにより、ウェーハ7を搬送する。ロボットアーム13を伸ばすと、ウェーハ7を基板搬送装置1からユーザポート5内にあるウェーハテーブル10に搬送することができる。ロボットアーム13を縮めると、ウェーハ7をユーザポート5から基板搬送装置1に搬送することができる。
【0038】
以下の実施例では、ロボットアーム13を伸ばして、ウェーハ7を基板搬送装置1からユーザポート5に搬送する場合について説明する。ロボットアーム13を縮めて、ウェーハ7をユーザポート5から基板搬送装置1に搬送する場合については、ウェーハ7の移動方向を逆にして考えればよいので、説明を省略する。
【0039】
ロボットアーム13は、ベルト12、プーリー11、及びR軸モータ110で構成され、先端にハンド14を備える。ハンド14は、基板であるウェーハ7を吸着する。ベルト12、プーリー11、及びR軸モータ110は、ロボットアーム13を伸縮させ、ハンド14が吸着して把持したウェーハ7をR軸方向に移動させるための駆動機構である。R軸モータ110の回転により、ロボットアーム13は伸縮する。
【0040】
なお、図3を用いて説明したように、搬送ロボット2のθ軸は、θ軸機構部のθ軸モータ25により回転する。ロボットアーム13は、搬送ロボット2のθ軸の回転と共に回転する
搬送ロボット2は、ユーザポート搬送座標6が教示され、ユーザポート搬送座標6にウェーハ7を載置するように、ハンド14を移動させる。ハンド14の移動位置は、R軸方向については、ユーザポート搬送座標6に合わせて設定する。θ軸方向については、基板搬送装置への搬送ロボット2の組み込み時に、θ軸の回転角度53(以下、「θ軸角度53」と称する)が、ユーザポート開口部8に対して90°になるように(すなわち、ハンド14の移動方向がユーザポート開口部8に対して垂直になるように)角度調整する。
【0041】
θ軸角度誤差の検出は、ウェーハ7をウェーハテーブル10に搬送する動作中に行う。
【0042】
ウェーハ7の搬送時に、搬送ロボット2を制御するロボットコントローラ100は、回転角度を指令することにより、R軸モータ110を所望の角度に回転させる。この回転の動力をプーリー11とベルト12が伝達し、ロボットアーム13を伸縮させると、ウェーハ7を把持したハンド14は、R軸方向に移動する。
【0043】
ロボットコントローラ100は、R軸モータ110を所望の角度に回転させると同時に、フィードバック形の角度制御を行うために、R軸モータ110の回転軸に取り付けたエンコーダやレゾルバなどの角度検出器から現在の角度を検出する。
【0044】
また、ウェーハ7の搬送経路となるユーザポート開口部8のフレームには、2つの検出センサ4、4’が設けられており、ロボットコントローラ100は、検出センサ4、4’のセンサ光の入遮光変化(入光状態から遮光状態への変化と、遮光状態から入光状態への変化)を常時検出する。
【0045】
ウェーハテーブル10にウェーハ7を搬送する動作中に、2つの検出センサ4、4’の入遮光変化と、入遮光変化が起きた時の(すなわち、遮光開始タイミングと遮光終了タイミングでの)R軸モータ110の回転角度とを、ロボットコントローラ100で検出する。この回転角度から、遮光開始タイミングと遮光終了タイミングでのロボットアーム13の伸び位置(ハンド14の位置)を求めることで、θ軸角度誤差を求めることができる。θ軸角度誤差を求める方法の詳細は、図4を用いて後述する。
【0046】
本実施例で使用する検出センサ4、4’は、検出精度と応答性が重要であり、かつ、ウェーハ7の表面処理の影響を受けにくいことが必要である。検出センサ4、4’の一例として、レーザまたはLEDを光源とした透過型の光電センサを用いる。
【0047】
検出センサ4と検出センサ4’の間隔は、搬送するウェーハ7のハンド14に対する位置ずれを許容する範囲の最適値を選定する。ウェーハ収納容器内のウェーハ7をそのまま把持することを想定すると、容器内で発生し得るウェーハ7の位置ずれは、水平方向にSEMI規格上±2〜3mm程度である。この程度の位置ずれを許容することを目的とすれば、搬送経路中のウェーハ7の両端から5mm程度内側に検出センサ4、4’を取り付ければ良い。
【0048】
ただし、検出センサ4と検出センサ4’の間隔が大きいと、センサ光はウェーハ7の中心から遠い部分で遮光されて遮光量が少なくなるため、θ軸角度誤差の演算精度低下の恐れがあり、また、ユーザポート搬送座標6の変更に対し柔軟な対応ができなくなる。逆に、検出センサ4と検出センサ4’の間隔が小さすぎる場合は、ハンド14がセンサ光と干渉し、遮光開始タイミングと遮光終了タイミングを正確に検出することが不可能となる。
【0049】
本実施例では、φ300mmのウェーハ7を対象とし、図1に示す搬送経路の中心15(ユーザポート搬送座標6を通るR軸方向の線)から100mm離れた位置に、検出センサ4、4’を取り付けるものとする。
【0050】
図4は、θ軸角度誤差を求める方法を説明する図である。図4では、ウェーハ7と基板搬送装置のユーザポート開口部8と検出センサ4、4’を図示している。検出センサ4、4’は、距離pだけ離れてユーザポート開口部8のフレームに設けられている。また、図示していないが、紙面に向かって下側にロードポートと搬送ロボットがあり、上側にユーザポートがある。
【0051】
本実施例では、ロードポートからユーザポートへウェーハ7を搬送する場合を例に説明する。したがって、ウェーハ7は、紙面に向かって下から上へ搬送される。ロボットアーム13は、伸縮動作として伸びる動作を行い、紙面に向かって上方向が伸び方向となり、伸び量は正の数値で表される。
【0052】
図4では、ウェーハ7は、ユーザポート開口部8を通り過ぎている。したがって、検出センサ4、4’は、ウェーハ7によりいったん遮光され、その後、遮光が終了して受光を再開している。図4には、この時のウェーハ7の遮光開始位置a2、b2と遮光終了位置a1、b1を示した。遮光開始位置a2と遮光終了位置a1は、検出センサ4により入遮光変化を検出した位置であり、遮光開始位置b2と遮光終了位置b1は、検出センサ4’により入遮光変化を検出した位置である。なお、本実施例では、遮光開始位置a2、b2と遮光終了位置a1、b1は、ロボットアーム13のハンド中心の原点位置51を基準にした位置である。
【0053】
また、図4では、θ軸機構部に角度αの角度誤差を生じた場合を示している。
【0054】
角度誤差が生じていない場合は、ユーザポート開口部8の開口面に直交する基準直線61、すなわち、図4では検出センサ4と検出センサ4’を結ぶ直線に直交する基準直線61に沿って、ロボットアーム13が伸縮して、ハンドが移動する。したがって、ウェーハ7の中心の軌道は、基準直線61に重なる。
【0055】
しかし、θ軸機構部に角度αの角度誤差が生じた場合は、図4に示したように、ウェーハ7の中心の軌道62と基準直線61は、重ならず、角度αで交差する。
【0056】
角度誤差は、遮光開始タイミングと遮光終了タイミングでのロボットアーム13の伸び位置(ハンドの位置)から求めることができる。ロボットアーム13の伸び位置は、R軸モータの回転角度から求めることができる。また、ロボットアーム13の伸び位置から、遮光開始位置a2、b2と遮光終了位置a1、b1を知ることができる。ロボットアーム13の伸び位置の求め方を、図8を用いて説明する。
【0057】
図8は、R軸モータの回転角度からロボットアーム13の伸び位置(ハンドの位置)を求める方法を示す図である。
【0058】
ロボットアーム13は、R軸モータ110と、プーリー11a、11b、11c、11dと、ベルト12により、R軸方向に伸縮する。ハンド14は、ロボットアーム13の伸縮により、R軸方向に直動する。
【0059】
ロボットアーム13の伸び位置Sは、ロボットアーム13の原点位置51からハンド14の中心52までの距離である。原点位置51は、ロボットアーム13が最も縮んだ時のハンド14の中心52の位置であり、原点センサなどにより定めることができる。ハンド14の中心52が原点位置51にある時は、伸び位置S=0である。伸び位置S=0となった時のR軸モータ110の回転角度を、R軸モータ110の原点角度θ0と呼ぶ。
【0060】
ロボットアーム13の伸び位置Sは、アームリンクの長さC、R軸モータ110の回転角度θa、R軸モータ110の原点角度θ0、及びプーリー11a〜11dのサイズ比(プーリー比)から求められる。プーリー比をP1:P2:P3:P4=1:2:1:2とすると、伸び位置Sは、
S=2C((1−cos(θa))−(1−cos(θ0)))・・・(1)
と表される。
【0061】
ここで、検出センサ4についての遮光開始タイミングでのR軸モータ110の回転角度をθa(a2)、検出センサ4についての遮光終了タイミングでのR軸モータ110の回転角度をθa(a1)、検出センサ4’についての遮光開始タイミングでのR軸モータ110の回転角度をθa(b2)、検出センサ4’についての遮光終了タイミングでのR軸モータ110の回転角度をθa(b1)とする。各タイミングでのロボットアーム13の伸び位置を、Sa2、Sa1、Sb2、Sb1で表すと、式(1)より、
Sa2=2C((1−cos(θa(a2)))−(1−cos(θ0)))・・・(2)
Sa1=2C((1−cos(θa(a1)))−(1−cos(θ0)))・・・(3)
Sb2=2C((1−cos(θa(b2)))−(1−cos(θ0)))・・・(4)
Sb1=2C((1−cos(θa(b1)))−(1−cos(θ0)))・・・(5)
と求められる。
【0062】
図4において、遮光開始位置a2と遮光終了位置a1の中心位置をs1とし、遮光開始位置b2と遮光終了位置b1の中心位置をs2とすると、
s1=(Sa2+Sa1)/2・・・(6)
s2=(Sb2+Sb1)/2・・・(7)
となる。
【0063】
s1とs2のR軸方向の距離の差を差分dとする。差分dは、s1を基準とすると、
d=s1−s2・・・(8)
となる。なお、s2を基準として、d=s2−s1としてもよい。
【0064】
θ軸機構部に角度誤差が生じていない場合、すなわち、ウェーハ7の中心の軌道が基準直線61に重なる場合は、差分d=0となる。d=0となっている状態の搬送ロボット2を装置に組み込み、θ軸機構部を角度調整した初期値とする。
【0065】
θ軸機構部の角度誤差αは、検出センサ4と検出センサ4’の距離pと差分dとを用いて、
α=tan−1(d/p) (deg)・・・(9)
と求めることができる。本実施例では、p=200mmであるので、dの単位をmmとすると、
α=tan−1(d/200) (deg)・・・(10)
となる。
【0066】
式(9)は、図3に示した減速機構(ハーモニックギヤ24)やシャフト22など、θ軸機構部の機構系で生じるθ軸角度誤差の範囲を、±1deg以内と仮定した時の角度誤差αの算出方法である。実際の角度誤差αは±1deg以内であるので、式(9)を用いて角度誤差αを求めることができる。
【0067】
ウェーハの搬送動作において、θ軸角度誤差が大きいと判断した場合には、エラーを出力することができる。例えば、差分dまたは角度誤差αの許容値を予め設定しておき、求めた差分dまたは角度誤差αと設定した許容値との大小関係を比較し、求めた差分dまたは角度誤差αが許容値より大きい場合にはエラーを出力するようにする。差分dまたは角度誤差αの許容値は、設定後、ロボットコントローラ100が備える不揮発性メモリ(例えば、FRAM)に保存するものとする。
【0068】
本実施例では、求めた角度誤差αに基づき、θ軸角度誤差を補正する角度補正も可能である。θ軸の角度補正をする場合は、差分dから求めた角度誤差αを用い、搬送ロボット2のθ軸を回転させてロボットアーム13を−αの角度だけ回転させ、ハンド14の位置をユーザポート搬送座標6に対して−αの角度だけ移動させればよい。
【0069】
本発明の特徴は、ウェーハ7を真円と仮定すれば、差分dは、ハンド14とウェーハ7の位置関係に影響されない点にある。したがって、ウェーハ収納容器内で位置ずれの生じたウェーハ7を搬送する場合でも、位置ずれに影響されることなく、正確なθ軸角度誤差の検出が可能となる。
【0070】
また、本実施例では、搬送ロボット2がユーザポート5にウェーハ7を搬入する場合について説明したが、ユーザポート5からウェーハ7を取り出す場合でも、同様にして角度誤差を検出することが可能である。ユーザポート5からウェーハ7を取り出す場合には、上述の説明において、遮光開始タイミングと遮光終了タイミングとを入れ替え、遮光開始位置と遮光終了位置とを入れ替えればよい。このように、ウェーハ7の搬送及び取り出しという双方向の動作に対して、本発明は有効である。
【0071】
さらに、ロボットアームを2つ備えたダブルハンド形搬送ロボットに対しても、本発明は適用できる。すなわち、同じ搬送経路を持つ2つの異なるロボットアームについても、本実施例に示したような1つの検出系で、両ロボットアームの搬送動作におけるθ軸角度誤差を検出できる。
【0072】
本発明のその他の効果として、ロボットアーム13の搬送軌道(ウェーハ7の中心の軌道)の経時変化も、θ軸角度誤差と同様に検出ができる。ロボットアーム13を構成する部品の1つに動力伝達を行うベルト12があるが、搬送動作の繰り返しや経時変化によりベルト12の張力低下が生じた場合は、ロボットアーム13の搬送軌道は蛇行に似た軌道となる。結果的に、搬送軌道の変化(蛇行)による影響は、搬送中のウェーハ7が検出センサ4、4’のセンサ光をよぎる時の角度誤差に現れるため、θ軸角度誤差と同様に検出することができる。
【0073】
ロボットアーム13の搬送軌道の変化は、搬送ロボット2の搬送精度の低下の原因にもなるので、異常状態の早期発見を目的とした予防保全に役立てられる。
【0074】
図5は、θ軸角度誤差を補正する方法を説明する図である。図5において、図1と同一の符号は、図1と同一の要素を示し、説明を省略する。
【0075】
図5では、θ軸角度53に、角度αの角度誤差が生じた場合を示している。θ軸角度53は、基板搬送装置への搬送ロボット2の組み込み時に、ユーザポート開口部8に対して90°になるように角度調整している。しかし、θ軸機構部の諸々の要因で、角度誤差αが生じた例を示している。
【0076】
図5に示したように、角度誤差αの発生に伴い、ロボットアーム13の伸び位置(ハンドの位置)がずれ、ウェーハ7の搬送位置がウェーハテーブル10内に設定したユーザポート搬送座標6(図5では示していない。図1を参照)からずれている。しかし、上述した方法により、θ軸角度誤差αを検出することができるので、ハンド14が搬送位置に到達した後、ウェーハ7をウェーハテーブル10に載置する前に、ロボットアーム13を−αの角度だけ回転させてθ軸の角度補正を行い、正常位置(ユーザポート搬送座標6)にウェーハ7を搬送することができる。ウェーハ7は、正常位置に搬送された後、ウェーハテーブル10に載置される。
【0077】
図6は、ロボットコントローラの制御ブロック図である。図6を用いて、搬送ロボット2を制御するロボットコントローラ100の構成と、動作を説明する。本説明では、説明を簡略化するため、搬送ロボット2の動作を、R軸とθ軸に限定する。
【0078】
ロボットコントローラ100は、半導体製造装置や半導体検査装置等の上位装置と接続される。上位装置の上位コントローラ109からは、通信コマンドにて搬送命令が送信される。ロボットコントローラ100の通信回路108は、送信された搬送命令を受信する。
【0079】
CPU106は、通信回路108を介して搬送命令を受信する。搬送命令の受信後、CPU106は、まず、搬送ロボット2をユーザポート5の方向に回転させるため、θ軸モータ制御回路104に角度指令を出す。
【0080】
θ軸モータ制御回路104は、θ軸モータ25を所望の角度に回転させるため、角度指令を動作指令パルスに変換して出力する。動作指令パルスに追従して回転するθ軸モータ25から、現在の回転角度としてエンコーダパルスを読み出す。エンコーダパルスと動作指令パルスが同値となった時点にて、位置決め完了と判断する。
【0081】
次に、CPU106は、ハンド14でウェーハ7を把持したロボットアーム13を所望の位置に伸ばすため、R軸モータ制御回路101に指令を出す。
【0082】
R軸モータ制御回路101は、R軸モータ110に動作指令パルスを出力する。
【0083】
本実施例によるθ軸の角度誤差の検出は、以下に説明するロボットアーム13の伸縮動作中に行う。
【0084】
動作指令パルスに追従して回転するR軸モータ110のエンコーダパルスは、パルス検出回路102で検出し、カウンタ回路105で積算する。パルス検出回路102は、エンコーダパルスの回転方向を無視し、カウンタ値が常に増加するよう変換する。したがって、ロボットアーム13の伸縮方向に関わらず、ロボットアーム13の伸縮動作が開始すれば、カウンタは常にインクリメント動作となる。カウンタ回路105で積算したカウンタ値に基づき、R軸モータ110の回転角度θaを求めることができる。
【0085】
また、カウンタ回路105のカウンタ値は、ロボットアーム13の伸縮動作の開始前に必ずリセット(クリア)する。
【0086】
図6では、検出センサ4、4’のうち、検出センサ4のみを示している。以下では、代表して検出センサ4のみについて説明する。検出センサ4は、投光器4aと受光器4bから構成される。投光器4aと受光器4bは、ウェーハ7の搬送中にセンサ光軸112(センサ光の経路)とウェーハ7が交差し、センサ光が遮られるような位置に取り付ける。
【0087】
また、検出センサ4は、センサ検出回路103に接続されている。センサ検出回路103は、受光器4bがセンサ光を受光しているか否か(すなわち、検出センサ4が入光状態か遮光状態か)を、ON/OFF信号で検出する。カウンタ回路105は、ON/OFF信号が変化した回数(すなわち、検出センサ4、4の入光状態と遮光状態が変化した回数)をカウントして保持する。
【0088】
ロボットアーム13の伸縮動作の開始前には、ユーザポート5へのウェーハ7の搬送経路上とセンサ光軸112上にはウェーハ7がないため、検出センサ4は入光状態となっている。このとき、センサ検出回路103は、OFF信号を検出する。
【0089】
次に、ロボットアーム13の伸縮動作の開始後、搬送中のウェーハ7の一方のエッジが、センサ光軸112をよぎり始め、センサ光がウェーハ7に遮られると、検出センサ4は遮光状態に変化する。すると、センサ検出回路103は、ON信号を検出する。
【0090】
さらに、ユーザポート搬送座標6にウェーハ7を搬送するため、ロボットアーム13をさらに伸ばしていくと、搬送中のウェーハ7の他方のエッジがセンサ光軸112を通過する。この時、ウェーハ7によるセンサ光の遮光が終了し、検出センサ4は再度入光状態に変化する。すると、センサ検出回路103は、再度OFF信号を検出する。
【0091】
カウンタ回路105は、ON/OFF信号が変化した回数をカウントし、保持する。
【0092】
本実施例では、センサ検出回路103で検出したON/OFF信号の変化をトリガとして、ON/OFF信号が変化した時のカウンタ回路105のカウンタ値を保持し、CPU106でロボットアーム13の伸び位置を演算し、θ軸角度誤差を求める。
【0093】
ロボットコントローラ100は、不揮発性メモリであるFRAM107を備えており、ロボットアーム13の伸び位置を基に算出したθ軸角度誤差を保存することができる。θ軸角度誤差を動作状態ログとして記録する場合は、搬送動作毎に、θ軸角度誤差をFRAM107に順次保存すればよい。FRAM107には、各種のエラー情報もログとして保存できる。
【0094】
図7は、ロボットコントローラの、θ軸角度誤差を検出するための処理フローの1例を示す図である。図7のフローでは、搬送ロボット2が、θ軸の回転後に、ハンド14に把持したウェーハ7をウェーハテーブル10のユーザポート搬送座標6に搬送して載置する時の処理を示している。
【0095】
ステップS001〜ステップS004、ステップS008、及びS009は、搬送開始前に行う、検出センサ4、4’の動作確認の処理(自己診断処理)である。
【0096】
ステップS001で、検出センサ4、4’ が入光状態であるか遮光状態であるかを読み出す。
【0097】
ステップS002において、読み出した検出センサ4、4’の状態から自己診断を行う。搬送開始前は、センサ光を遮るものがないため、検出センサ4、4’が正常動作をしていれば、必ず入光状態になる。入光状態であれば、ステップS003に進む。遮光状態である場合は、検出センサ4、4’に何らかの異常があるか、センサ光軸112に遮光物が存在する場合なので、異常状態と判定し、ステップS009に進む。
【0098】
ステップS009では、検出センサ4、4’に異常があるとして、センサエラー情報をログに記録する。ステップS010において、上位装置に対してセンサエラーコマンドを送信して、センサエラーを通知する。
【0099】
ステップS003は、検出センサ4、4’が正常状態の場合の処理である。ステップS003では、カウンタ回路105のカウンタ値、及びエラー発生の有無を示すステータス情報をクリアする。
【0100】
ステップS004において、角度誤差を検出するロボットアーム13を設定する。ステップS005において、ロボットアーム13の伸縮動作が始まる。
【0101】
ステップS006では、ロボットアーム13の伸縮動作中に、パルス検出回路102がR軸モータ110のエンコーダパルスの検出を開始し、カウンタ回路105が入遮光変化時のエンコーダパルスのカウントを開始する。カウンタ値は、カウンタ回路105で積算する。そして、センサ検出回路103が、検出センサ4、4が入光状態か遮光状態かをON/OFF信号で検出する。ON/OFF信号が変化した回数(検出センサ4、4の入光状態と遮光状態が変化した回数)は、カウンタ回路105でカウントし保持する。
【0102】
ステップS007において、ロボットアーム13の伸縮動作の終了を確認するとともに、ステータス情報を読み出して、確認エラー発生の有無をする。なお、この時はまだ、ウェーハ7は、ロボットアーム13のハンド14に把持されたままであり、ユーザポート搬送座標6に載置されていない。
【0103】
ステップS008において、カウンタ回路105で積算した、R軸モータ110のエンコーダパルスのカウンタ値を読み出す。
【0104】
ステップS011において、R軸モータ110のエンコーダパルスのカウンタ値が1以上か判定する。カウンタ値が1以上でない、すなわち0である場合は、パルス検出回路102またはカウンタ回路105の異常と判定し、ステップS014に進む。
【0105】
ステップS014では、パルス検出回路102またはカウンタ回路105に異常があるとして、検出エラー情報をログに記録する。ステップS015において、上位装置に対して検出エラーコマンドを送信して、検出エラーを通知する。
【0106】
ステップS012は、ステップS011において、カウンタ値が1以上の場合の処理である。ステップS012では、カウンタ回路105が保持している、ON/OFF信号が変化した回数(検出センサ4、4の入光状態と遮光状態が変化した回数)が2回であるか判定する。検出センサ4、4’のセンサ光の入遮光変化が正常に検出されれば、ON/OFF信号が変化した回数は、検出センサ4、4’で2回ずつとなる。
【0107】
しかし、ON/OFF信号が変化した回数が3回以上の場合は、搬送動作中のロボットアーム13の振動や、検出センサ4、4’の出力チャタリングなどの異常が発生したと考えられる。また、ON/OFF信号が変化した回数が1回だけの場合は、搬送動作や検出センサ4、4’に異常が発生したと考えられる。ON/OFF信号が変化した回数が2回以外の場合は、正常な検出ができないため、エラーが発生したとしてステップS014とS015を行う。
【0108】
ステップS013は、ステップS012において、ON/OFF信号が変化した回数が2回の場合の処理である。ステップS013では、ステップS008で読み出した、R軸モータ110のエンコーダパルスの入遮光変化時のカウンタ値から、R軸モータ110の回転角度θaを求める。そして、式(2)〜(5)を用いて、ロボットアーム13の伸び位置を求め、入遮光変化時のロボットアーム13の伸び位置Sa2、Sa1、Sb2、Sb1を求める。そして、式(6)〜(8)を用いて差分dを求め、式(9)を用いて差分dからθ軸角度誤差αを計算する。
【0109】
ステップS016において、予め設定した角度誤差αの許容値をFRAM107から読み出し、求めたθ軸角度誤差αが設定した許容値以内かどうかを判定する。許容値以内であれば、そのままウェーハテーブル10にウェーハ7を載置し、ウェーハ7の搬送処理を終了する。θ軸角度誤差αが許容値を超えていた場合は、ステップS017に進む。
【0110】
ステップS017では、θ軸角度誤差を補正するか、エラーを出力しウェーハ7の搬送動作を停止するかの分岐処理を行う。θ軸角度誤差を補正する場合は、ステップS018に進み、エラーで搬送動作を停止する場合は、ステップS019に進む。θ軸角度誤差を補正する処理と搬送動作を停止する処理のどちらを行うかは予め設定しておき、処理がステップS017に到達したら、この設定に従って自動的に分岐する。
【0111】
ステップS018において、搬送ロボット2のθ軸をθ軸角度誤差αだけ補正する。すなわち、搬送ロボット2のθ軸を−αの角度だけ回転させて、ロボットアーム13を−αの角度だけ回転させる。これにより、ハンド14の位置を、ユーザポート搬送座標6に対して−αの角度だけ移動させることができる。θ軸角度誤差の補正が終了したら、ウェーハ7をウェーハテーブル10に載置し、ウェーハ7の搬送処理を終了する。
【0112】
ステップS019では、θ軸角度誤差αが許容値を超えているとして、θ軸エラー情報をログに記録し、ウェーハ7の搬送動作を停止する。ステップS020において、上位装置に対してθ軸エラーコマンドを送信して、θ軸エラーを通知する。
【0113】
本発明によれば、ユーザポート開口部8などのウェーハ7の搬送経路に2つの検出センサ4、4’を取り付けるだけの安価な構成で、かつ、搬送ロボット2と独立した簡素な機構で、θ軸の角度誤差を検出することができる。また、経年変化や磨耗などの影響を受ける機構もなく、高い信頼性でθ軸角度誤差を検出可能である。θ軸角度誤差の検出は、ウェーハ7の通常の搬送動作中に行うことができるため、搬送スループットを低下することはない。そのうえ、θ軸角度誤差を検出するための特殊治具が不要であり、基板搬送装置1を停止して行う調整作業なども不要である。
【0114】
本発明では、ウェーハ7を真円と仮定すると、ウェーハ収納容器内で発生した位置ずれにより、ハンド14上のウェーハ7の位置がずれていても、すなわち、ハンド14の中心にウェーハ7を把持していなくても、この状態で検出センサ4、4’のセンサ光をよぎらせることで、正確にθ軸角度誤差を検出することができる。
【符号の説明】
【0115】
1…基板搬送装置、2…搬送ロボット、3…ロードポート、4、4’…検出センサ、4a…投光器、4b…受光器、5…ユーザポート、6…ユーザポート搬送座標、7…ウェーハ、8…ユーザポート開口部、10…ウェーハテーブル、11、11a、11b、11c、11d…プーリー、12…ベルト、13…ロボットアーム、14…ハンド、15…搬送経路の中心、21…クロスローラベアリング、22…シャフト、23…カップリング、24…ハーモニックギヤ、25…θ軸モータ、26…エンコーダ、51…原点位置、52…ハンドの中心、53…θ軸角度、61…基準直線、62…ウェーハの中心の軌道、100…ロボットコントローラ、101…R軸モータ制御回路、102…パルス検出回路、103…センサ検出回路、104…θ軸モータ制御回路、105…カウンタ回路、106…CPU、107…FRAM、108…通信回路、109…上位コントローラ、110…R軸モータ、112…センサ光軸、a1、b1…遮光終了位置、a2、b2…遮光開始位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームを有し基板を搬送する搬送ロボットと、前記基板を外部に搬送するための開口部とを備え、前記搬送ロボットは、θ軸モータにより前記アームを回転させ、R軸モータにより前記アームを伸縮させる基板搬送装置であって、
前記開口部のフレームに、投光器と受光器を有し前記投光器から前記受光器へセンサ光を投射する検出センサを2つ備え、
前記搬送ロボットが、前記アームを伸ばしまたは縮めて、前記開口部を通して前記基板を搬送する過程において、
前記基板が一方の前記検出センサの前記センサ光を遮光し始めた時の、前記R軸モータの回転角度θa(a2)と、
前記基板が他方の前記検出センサの前記センサ光を遮光し始めた時の、前記R軸モータの回転角度θa(b2)と、
一方の前記検出センサが、前記センサ光の遮光が終了して再び受光し始めた時の、前記R軸モータの回転角度θa(a1)と、
他方の前記検出センサが、前記センサ光の遮光が終了して再び受光し始めた時の、前記R軸モータの回転角度θa(b1)とを用いて、
前記θ軸モータの回転角度と前記アームの回転角度との差である角度誤差αを求める、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板搬送装置であって、
前記搬送ロボットが、前記アームを伸ばしまたは縮めて、前記開口部を通して前記基板を搬送する過程において、
前記基板が一方の前記検出センサの前記センサ光を遮光し始めた時の、前記搬送ロボットの前記アームの位置Sa2を、前記θa(a2)から求め、
前記基板が他方の前記検出センサの前記センサ光を遮光し始めた時の、前記搬送ロボットの前記アームの位置Sb2を、前記θa(b2)から求め、
一方の前記検出センサが、前記センサ光の遮光が終了して再び受光し始めた時の、前記搬送ロボットの前記アームの位置Sa1を、前記θa(a1)から求め、
他方の前記検出センサが、前記センサ光の遮光が終了して再び受光し始めた時の、前記搬送ロボットの前記アームの位置Sb1を、前記θa(b1)から求め、
求めたSa2、Sb2、Sa1、Sb1を用いて、前記角度誤差αを求める基板搬送装置。
【請求項3】
請求項2記載の基板搬送装置であって、
前記アームの位置Sa2と前記アームの位置Sa1の中心位置s1と、前記アームの位置Sb2と前記アームの位置Sb1の中心位置s2とを求め、
前記アームが伸びた方向または縮んだ方向についての、前記中心位置s1と前記中心位置s2との距離の差dを求め、
求めた差dを用いて、前記角度誤差αを求める基板搬送装置。
【請求項4】
請求項3記載の基板搬送装置において、
前記差dと、一方の前記検出センサと他方の前記検出センサとの距離pとから、前記角度誤差αを求める基板搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の基板搬送装置において、
前記θ軸モータにより前記アームを−αの角度だけ回転させることで、前記角度誤差αを補正する基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−231041(P2012−231041A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99000(P2011−99000)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】