説明

基準電圧制御回路

【課題】出力電圧の立ち上がり時間を正確に設定することも随意に変更することも困難であった。
【解決手段】カレントミラー回路(CM1)より供給される電流(i)で容量(C1)を充電し、その充電電圧を出力する基準電圧制御回路において、前記カレントミラー回路(CM1)より出力される供給電流(I)を外部からの制御信号により変更可能として、当該基準電圧制御回路が出力する基準電圧の立ち上がりを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発生電圧の立ち上がりを制御した基準電圧制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来例を図7に示している。この図7において、SLP信号が“H”から“L”に変化してスイッチSW1が開放されることで、パワーダウンが解除され、SMUTE端子電圧は、オペアンプOP1が出力するVREF電圧まで、抵抗R1および容量C1による時定数に従って指数関数的に上昇する。
【0003】
立ち上がりを緩やかにしたい場合、R1またはC1の値を大きくすればよいが、高密度に実装された電子回路基板では、サイズの小型化のためC1は大きくせずに抵抗R1を大きくしている。ところがR1をあまり大きくすると、SMUTE端子のインピーダンスが高くなり、外部雑音による端子電圧の不安定化が懸念され、抵抗自身の熱雑音も無視できなくなる。更に、SMUTE端子に保護回路D0を設けている場合には、その保護回路D0に流れる漏れ電流によってSMUTE端子電圧が所望とする電圧から外れてしまう。加えて、最終到達電圧の近傍では、電圧変化の傾きが極めて緩やかになっているため、正確な目標電圧を得るには、更に時定数を長くする必要があった。
【0004】
このような不具合を解消するために本出願人は、図8に示した特許文献1の「基準電圧制御回路」を提案している。この図8においては、図7に示した回路構成に対し、電圧比較回路CP1、論理ゲートOR、定電流源を有するカレントミラー回路CMが付加されたものとなっている。このカレントミラー回路CMは図9に示すように、トランジスタTr1に流れる電流をIref、トランジスタTr2に流れる電流をiとしたとき、Tr1のサイズを×1、Tr2のサイズを×20(=×1)、つまり同サイズのとき、Iref=iとなる。
【0005】
図8の動作を図10のタイムチャートを参照しながら説明する。オペアンプOP1および電圧比較器CP1は、それぞれのSLEEP端子に“H”レベルが印加されることでパワーダウン状態となる。そしてこのパワーダウン状態では、OP1の出力(OPOUT)はハイインピーダンス、CP1の出力(CPOUT)は“L”レベルとなり、基準電流Irefは0になる。
【0006】
いま、SLP端子に“H”レベルが印加されている状態では、上述のようにこの回路はパワーダウン状態にある。この状態下では、スイッチSW1はオンでSMUTE端子はVSS電位にあり、容量C1は放電された状態にある。また、CP1の出力は“L”レベルのためカレントミラー回路CMの出力電流iは流れない。
【0007】
次に、SLP端子が“L”レベルに切り替ると、電圧比較器CP1の基準電圧CPREFはVREF(=外部DC電圧)に等しく、スイッチSW1はオン、CPOUT=“H”レベルとなり、容量C1は電流iで充電され、SMUTE端子電圧は、dV/dt=i/C1の傾きで上昇を始める。この時点ではオペアンプOP1はまだパワーダウン状態である。
【0008】
SMUTE端子電圧がCPREF電位に達すると、CP1の出力(CPOUT)が“L”レベルに反転することにより、電流iは0になる。同時にOP1が動作状態となり、ボルテージフォロワ接続のOP1の出力(OPOUT)はVREF電圧となる。一方、スイッチSW2がオンし、CPREF=VREF・R3/(R2+R3)となり、CP1の再反転を防止する。また、SMUTE端子は、充電期間中はハイインピーダンスであったものが、充電完了後は抵抗R1と容量C1によるものだけとなるため、低インピーダンス化を実現している。
【0009】
図8で所望の時定数を得るために抵抗R1に数MΩもの大きな抵抗が必要となる場合でも、図9の回路では、電流iを設定するだけでよく、R1は数KΩで実現できる。
【特許文献1】特願2001−26803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図10でわかるように、SMUTE端子電圧が所定の電圧に達するまでの時間は、容量C1と充電電流iのみで決まる。しかしながら、電流iはカレントミラー回路CMにおける基準電流Iref、同回路のミラー比および容量C1のそれぞれの精度によって変動するため、SMUTE端子の電圧立ち上がり時間も変動した。
【0011】
本発明は、充電電流iを制御することで電圧の立ち上がり時間を所定の値に変更もしくは修正可能とした回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の基準電圧制御回路は、カレントミラー回路(CM1)より供給される電流(i)で容量(C1)を充電し、その充電電圧を出力する基準電圧制御回路であって、前記カレントミラー回路(CM1)より供給する電流(I)を信号により変更させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基準電圧制御回路の製造後であっても、出力する基準電圧の電圧の立ち上がり時間を外部より随意に変更できるため、製造バラツキによる歩留まり低下を防ぐことができ、また、同じ容量値を用いながら異なる立ち上がり時間を設定することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に本発明の1実施形態を示しており、図8の回路と異なる個所は、電流比を可変としたカレントミラー回路CM1を採用している点であり、その回路の詳細を図3に示す。トランジスタTr2(サイズ×20=×1)と並列に、トランジスタTr3(サイズ×21=×2)、Tr4(サイズ×22=×4)、Tr5(サイズ×23=×8)の各ソースおよびゲートを接続し、各ドレインはスイッチが接続され、それらのスイッチの他端が相互接続され、電流iの供給部となる。各スイッチは電流比制御信号として供給される4ビットのデータにより、いずれか1つがオンになる。
【0015】
スイッチ11がオンになれば、トランジスタTr1と同サイズのトランジスタTr2のみ作用するため、i=Irefとなる。
スイッチ12がオンになれば、トランジスタTr1の2倍サイズのトランジスタTr3のみ作用するため、i=2・Irefとなる。
スイッチ13がオンになれば、トランジスタTr1の4倍サイズのトランジスタTr4のみ作用するため、i=4・Irefとなる。
スイッチ134オンになれば、トランジスタTr1の8倍サイズのトランジスタTr5のみ作用するため、i=8・Irefとなる。
【0016】
このように電流iの大きさを希望の値に変えることにより、図2に示すように、SMUTE端子電圧の立ち上がりを随意に変えることができる。
【0017】
SMUTE端子電圧がVREF電位に達した時、スイッチSW2がオンし、電圧比較器CP1の基準電圧CPREFをVREF・R3/(R2+R3)に低下させ、CP1の再反転を防止する点は図8のものと同じである。
【0018】
図3のカレントミラー回路CM1の別の回路例を図4、図5および図6に示す。図4のカレントミラー回路CM2では、図3のスイッチ11〜14以外に、各トランジスタのソース・ドレイン間にそれぞれスイッチ21〜24が接続される。また図5のカレントミラー回路CM3では、各トランジスタのドレインをVDDラインかトランジスタTr1のドレインに接続する一対のスイッチ(31、41)、(32、42)、(33、43)、(34、44)が接続されている。
【0019】
図6のカレントミラー回路CM4におけるスイッチの接続状況は図4の場合と同じであるが、電流iと電流Irefとが入れ替わっている。従ってこの場合は以下のようになる。
スイッチ11がオンになれば、トランジスタTr1と同サイズのトランジスタTr2のみ作用するため、i=Irefとなる。
スイッチ12がオンになれば、トランジスタTr1の2倍サイズのトランジスタTr3のみ作用するため、i=(1/2)・Irefとなる。
スイッチ13がオンになれば、トランジスタTr1の4倍サイズのトランジスタTr4のみ作用するため、i=(1/4)・Irefとなる。
スイッチ134オンになれば、トランジスタTr1の8倍サイズのトランジスタTr5のみ作用するため、i=(1/8)・Irefとなる。
【0020】
以上の実施形態では、Tr2、Tr3、Tr4、Tr5のサイズをTr1の1倍、2倍、4倍、8倍としたので、充電電流iの大きさをIref の1倍、2倍、4倍、8倍、もしくは、(1/1)倍、(1/2)倍、(1/4)倍、(1/8)倍にしたので、1つの規格で複数の規格に対応させることができる。一方、Tr2、Tr3、Tr4、Tr5のサイズを、例えばTr1の96%、98%、100%、102%のように選定すれば、上述したバラツキを補正することもできる。又、上記各スイッチはいずれか1つのトランジスタがアクティブになるようにスイッチオンさせたが、複数個のトランジスタをアクティブにし、希望のサイズを得るようにしてもよい。
【0021】
更に、上記カレントミラー回路CM1では、同回路を構成する1対のトランジスタのうちの一方のサイズを変更するようにしたが、双方のトランジスタをそれぞれ変更するようにすれば、更に広い範囲で立ち上がり時間を選択できるし、より正確に立ち上がり時間を設定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態を示した基準電圧制御部の回路図
【図2】図1の回路の出力電圧を示したグラフ
【図3】図1におけるカレントミラー回路の第1の回路例を示した図
【図4】図1におけるカレントミラー回路の第2の回路例を示した図
【図5】図1におけるカレントミラー回路の第3の回路例を示した図
【図6】図1におけるカレントミラー回路の第4の回路例を示した図
【図7】従来の基準電圧制御部の回路図
【図8】先に出願された基準電圧制御部の回路図
【図9】図8におけるカレントミラー回路の回路例
【図10】図8の回路の動作を示したタイムチャート
【符号の説明】
【0023】
CM1 カレントミラー回路
CP1 電圧比較回路
OR 論理ゲート
R 抵抗
C1 容量
SW スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カレントミラー回路(CM1)より供給される電流(i)で容量(C1)を充電し、その充電電圧を出力する基準電圧制御回路であって、
前記カレントミラー回路(CM1)より供給する電流(I)を信号により変更させることを特徴とする基準電圧制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−313568(P2006−313568A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204927(P2006−204927)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【分割の表示】特願2001−399841(P2001−399841)の分割
【原出願日】平成13年12月28日(2001.12.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】