説明

堆積物除去方法

【課題】堆積物が有機物を含んでいる場合であっても、効率的に堆積物を除去することのできる堆積物の除去方法を提供する。
【解決手段】基板上にエッチングによって形成されたパターンの表面に堆積した堆積物を除去する堆積物除去方法であって、基板を、フッ化水素ガスを含む雰囲気に晒す第1処理工程と、第1処理工程の後に、基板を加熱しながら酸素プラズマに晒す酸素プラズマ処理工程と、酸素プラズマ処理工程の後に、基板を、フッ化水素ガスを含む雰囲気に晒す第2処理工程と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造分野においては、半導体ウエハ等の基板に、成膜処理やエッチング処理を行って、所望のパターンを形成することが行われている。このような半導体装置の製造工程において、STI(シャロー・トレンチ・アイソレーション)プロセスを実施すると、パターンの側壁部分にシリコン酸化物(例えば、SiOゃSiOBr)の堆積物が堆積する。従来、このような堆積物の除去は、例えば、フッ化水素(HF)単ガスを用いた処理によって行われていた。
【0003】
しかしながら、堆積物の組成や結合の状態がパターン中の構造物の二酸化シリコン(例えば、ゲート酸化膜)と近い場合、これらとの選択比が取れないという問題がある。なお、堆積物とフッ化水素との反応(SiO+4HF→SiF+2HO)によって生成される副産物の水が反応を加速して連鎖反応を引き起こし、堆積物のみではなくパターン中の構造物の二酸化シリコンが削られてしまう場合がある。また、エッチング処理後の放置時間(q−time)が長くなると、堆積物の吸湿状態に依存して水分の影響が出てしまうため、更に選択比が悪くなる場合がある。
【0004】
シリコン基板表面に形成された自然酸化膜を除去する技術としては、フッ化水素蒸気およびHOまたはアルコール蒸気を使用する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この技術は自然酸化膜を除去する技術であり、パターンの側壁部分に堆積した堆積物を除去する技術ではない。
【0005】
また、真空領域でフッ化水素ガスに曝すことでポリシリコン膜の表面に形成された自然酸化膜を除去した後、連続的に、高いエッチング選択性をもったエッチング条件で、ポリシリコン膜をエッチングする技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、特許文献2には、炭素を含むエッチングガスを用いて酸化膜をエッチングした場合、炭素系物質を含むエッチング副生成物がポリシリコン膜の表面に付着する問題が記載されているが、この問題に対する解決策は何等開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−263416号公報
【特許文献2】特開平5−304122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したとおり、従来においては、パターンに堆積した堆積物を除去する際に、堆積物とパターン中の構造物の二酸化シリコンとの選択比が低く、パターン中の構造物の二酸化シリコンがダメージを受けるという問題があった。さらに、エッチング処理後の放置時間(q−time)が長くなると、堆積物の吸湿状態に依存して水分の影響が出てしまうため、更に選択比が悪くなるという問題があった。
【0008】
また、本発明者等が詳査したところ、シリコンやその前後の膜種をエッチングする際に、エッチングガスにカーボンを含むガスを使用すると、堆積物が有機物を含んでいる場合があり、この場合、シリコン酸化物(例えば、SiOゃSiOBr)の堆積物を除去する方法では、堆積物を除去しきれないという問題が発生することが判明した。
【0009】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、堆積物が有機物を含んでいる場合であっても、効率的に堆積物を除去することのできる堆積物の除去方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の堆積物除去方法の一態様は、基板上にエッチングによって形成されたパターンの表面に堆積した堆積物を除去する堆積物除去方法であって、前記基板を、フッ化水素ガスを含む雰囲気に晒す第1処理工程と、前記第1処理工程の後に、前記基板を加熱しながら酸素プラズマに晒す酸素プラズマ処理工程と、前記酸素プラズマ処理工程の後に、前記基板を、フッ化水素ガスを含む雰囲気に晒す第2処理工程と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、堆積物が有機物を含んでいる場合であっても、効率的に堆積物を除去することのできる堆積物の除去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に用いるプラズマ処理装置の断面概略構成を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に用いるガス処理装置の断面概略構成を示す図。
【図3】本発明の一実施形態の工程を示すフローチャート。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体ウエハの断面概略構成を拡大して示す図。
【図5】本発明の一実施形態における圧力の変化の状態を示すグラフ。
【図6】実施例に係る半導体ウエハの状態を示す電子顕微鏡写真。
【図7】比較例に係る半導体ウエハの状態を示す電子顕微鏡写真。
【図8】堆積物除去可能な圧力、メタノールガス流量、温度の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態の堆積物除去方法における酸素プラズマ処理工程に使用するプラズマ処理装置100の構成例を模式的に示す縦断面図である。同図に示すようにこのプラズマ処理装置100は、内部を気密に閉塞可能とされた処理チャンバー101を具備している。この処理チャンバー101内には、半導体ウエハ(基板)Wを載置するためのステージ102が設けられている。ステージ102は、図示しない温度制御機構を具備しており、ステージ102上に載置された半導体ウエハWの温度を所定温度に維持できるようになっている。
【0015】
処理チャンバー101は、例えばクォーツ等から構成されており、その天井部には、クォーツ製の窓103が形成されている。そして、この窓103の外側には、図示しない高周波電源に接続されたRFコイル104が設けられている。窓103の部分には、酸素ガスを含む所定の処理ガス(例えば、Oガス単ガス)を処理チャンバー101内に導入するためのガス導入部105が設けられている。そして、RFコイル104に供給された高周波の作用によって、ガス導入部105から導入された処理ガスのプラズマPを発生させるようになっている。
【0016】
窓103の下方には、プラズマの遮蔽とガスの分散を行うためのガス拡散板106が設けられており、このガス拡散板106を介してプラズマ中のラジカルが分散した状態でステージ102上の半導体ウエハWに供給されるようになっている。なお、基板にプラズマを作用させる場合、直接基板とプラズマとを接触させてもよく、また本実施形態のように、リモートプラズマによる処理、すなわち、直接基板とプラズマとを接触させるのではなく、基板とは離間した部位で発生させたプラズマ中から引き出されたラジカルを基板に作用させてもよい。
【0017】
また、処理チャンバー101の底部には、排気管107が設けられている。この排気管107は、図示しない真空ポンプ等に接続されており、処理チャンバー101内を所定の圧力に排気できるようになっている。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態の堆積物除去方法における半導体ウエハ(基板)Wを、フッ化水素(HF)ガスを含む雰囲気に晒す工程(第1処理工程及び第2処理工程)に使用するガス処理装置200の構成例を模式的に示す縦断面図である。同図に示すようにこのガス処理装置200は、内部を気密に閉塞可能とされた処理チャンバー201を具備している。この処理チャンバー201内には、半導体ウエハ(基板)Wを載置するためのステージ202が設けられている。ステージ202は、図示しない温度制御機構を具備しており、ステージ202上に載置された半導体ウエハWの温度を所定温度に維持できるようになっている。
【0019】
処理チャンバー201の上部には、処理チャンバー201内に所定の処理ガス(本実施形態ではフッ化水素ガスとメタノールガスとの混合ガス)を導入するためのガス導入部203が設けられている。また、ガス導入部203が処理チャンバー201内に開口する開口部204の下方には、多数の透孔205が形成されたガス拡散板206が設けられており、このガス拡散板206の透孔205から、均一に分散された状態で処理ガスが半導体ウエハWの表面に供給されるように構成されている。
【0020】
また、処理チャンバー201の底部には、排気管207が設けられている。この排気管207は、図示しない真空ポンプ等に接続されており、処理チャンバー201内を所定の圧力に排気できるようになっている。
【0021】
上記構成のプラズマ処理装置100及びガス処理装置200を用いて本実施形態では、次のようにして堆積物除去処理を行う。
【0022】
図3のフローチャートに示すように、前工程においてエッチング処理が行われ(ステップ301)、所定のパターンが形成された半導体ウエハには、パターンの側壁部分にエッチング処理に伴う堆積物(所謂デポ物)が堆積する。例えば、STI(シャロー・トレンチ・アイソレーション)プロセスを実施すると、パターンの側壁部分にシリコン酸化物(例えば、SiOゃSiOBr)の堆積物が堆積する。そこで、本実施形態における堆積物除去処理によって、パターンの側壁部分に堆積した堆積物を除去する。図4は、このようなエッチング処理が行われた半導体ウエハの断面構成の一例を拡大して示すものである。図4に示すように、シリコン基板3上には、ゲート酸化膜2及びフローティングポリシリコン膜1等からなり所定形状にパターニングされた複数のパターンが形成されており、これらのパターン側方には、トレンチ(STI)4が形成されている。そして、パターンの側壁部及びトレンチ(STI)4内には、堆積物6が付着している。
【0023】
上記のエッチング処理(ステップ301)は、例えば、以下に示すようなエッチングガスを用いて実施する。
エッチングガス:HBr/NF/CO/O
エッチングガス:HBr/CF/CO/O
【0024】
上記のように、エッチングガスとして、炭素を含むエッチングガスを用いた場合、堆積物が有機物を含む場合がある。そして、このように堆積物が有機物を含む場合、フッ化水素ガス、又は、フッ化水素ガスとアルコールガスとの混合ガスを用いた堆積物除去処理では、堆積物の除去を十分に行うことができず、パターンの側壁部に、堆積物が残った状態となる場合が多い。そこで、本実施形態では、図3のフローチャートに示すように、半導体ウエハ(W)を、フッ化水素ガスを含む雰囲気に晒す第1処理(ステップ303)を行った後、酸素プラズマ処理(ステップ304)を行い、その後、半導体ウエハ(W)を、フッ化水素ガスを含む雰囲気に晒す第2処理(ステップ305)を行う。
【0025】
また、本実施形態では、上記した第1処理(ステップ303)に先立って、エッチング処理の後、酸素プラズマによる前処理を行う(ステップ302)。この酸素プラズマによる前処理は、図1に示したプラズマ処理装置100等によって実施することができる。
【0026】
この酸素プラズマによる前処理は、エッチング処理後の放置時間(q−time)の長短に係わらず、パターン及び堆積物の吸湿状態を一定にする(脱水する)ために行うものである。これにより、後に行う処理工程において、吸湿状態の差異による影響を排除することによってパターンの側壁に堆積した堆積物であるシリコン酸化物(例えば、SiOゃSiOBr)を除去することができ、かつ、反応が過剰になってパターン構造物であるゲート酸化膜等のSiO層がダメージを受けること等を抑制することができる。しかしながら、エッチング処理後の放置時間(q−time)が短い場合は、この酸素プラズマによる前処理は、省略してもよい。
【0027】
プラズマ処理装置100における酸素プラズマによる前処理は、例えば以下のように実施する。すなわち、酸素プラズマによる前処理では、予め所定温度に設定されたステージ102上に半導体ウエハWが載置され、図示しない静電チャック等によって吸着されることによって半導体ウエハWが所定温度に加熱された状態となる。この状態でガス導入部105から酸素ガスを含む所定の処理ガスが導入されるとともに、排気管107から排気が行われ、処理チャンバー101内が所定圧力の処理ガス雰囲気とされる。そして、RFコイル104に高周波電力が印加されることによって、酸素ガスの誘導結合プラズマが生起される。このプラズマ中のイオンは、ガス拡散板106によって遮蔽され、電荷を有しない酸素ラジカルが分散した状態でステージ102上の半導体ウエハWに供給され、酸素ラジカルの作用による処理が行われる。
【0028】
この酸素プラズマによる前処理では、処理ガスとして酸素を含むガス例えば、酸素ガスの単ガス若しくは酸素ガスと窒素ガスの混合ガス等を使用し、半導体ウエハWの加熱温度(ステージ温度)は例えば200℃〜300℃程度に設定される。また、圧力は、例えば66.5Pa(0.5Torr)〜266Pa(2Torr)程度とされる。
【0029】
上記の酸素プラズマによる前処理の後、堆積物除去処理における第1処理(ステップ303)を実施する。この第1処理は、半導体ウエハ(基板)Wを、フッ化水素ガスを含む雰囲気(本実施形態では、フッ化水素ガスとアルコールガスの混合ガスの雰囲気)に晒すことによって行い、図2に示したガス処理装置200等によって実施することができる。
【0030】
ガス処理装置200における第1処理は、例えば、以下のように実施される。すなわち、予め所定温度に設定されたステージ202上に半導体ウエハWが載置されることによって半導体ウエハWが所定温度に維持された状態となる。この状態でガス導入部203から所定の処理ガス(本実施形態ではフッ化水素ガス+メタノールガス)が導入されるとともに、排気管207から排気が行われ、処理チャンバー201内が所定圧力の処理ガス雰囲気とされる。
【0031】
本実施形態において、第1処理(ステップ303)は、図3のフローチャートに示すように、アルコールガス(メタノールガス)の分圧を第1の分圧とする第1の期間(ステップ311)と、処理チャンバー内を排気しアルコールガス(メタノールガス)の分圧を第1の分圧より低い第2の分圧とする第2の期間(ステップ312)とを、複数サイクル繰り返す(ステップ313)。このようにアルコールガス(メタノールガス)の分圧を変動させる方法としては、例えば、以下のような方法を用いることができる。
【0032】
すなわち、ガスの供給を変化させ、例えば、第1の期間では所定流量の混合ガスを供給し、第2の期間では混合ガスの供給を停止し所定流量の窒素ガス等を供給する方法、また、第1の期間では所定流量の混合ガスを供給しつつ自動圧力制御装置(APC)で処理チャンバー内を所定圧力に維持し、第2の期間では自動圧力制御装置(APC)の設定圧力を低く又は全開として真空ポンプで全引きし、圧力を低くする方法、等である。本実施形態では、図5のグラフに示すように、後者の方法を用いて第1の期間と第2の期間とを設定する。
【0033】
この時、半導体ウエハWの温度は、例えば数十度(例えば30℃)以下の低温とすることが好ましい。また、第1の期間における圧力は、例えば665Pa(5Torr)〜1330Pa(10Torr)程度が好ましく、処理ガスは、フッ化水素ガス+アルコールガス(本実施形態ではメタノール(CHOHガス))の混合ガスを使用する。
【0034】
このようなサイクル処理において、第1の期間は、混合ガスの作用によって堆積物が除去され得るアルコールガス(メタノールガス)の分圧に設定する。また、第2の期間は、アルコールガス(メタノールガス)の分圧を低下させ、堆積物が除去されずに第1の期間中に堆積物と混合ガスとの反応によって生成された物質(HO等)を排気して処理チャンバー201外に排出する期間とする。このような第1の期間及び第2の期間は、夫々5秒から20秒程度とし、このサイクルを複数回繰り返して行う。
【0035】
そして、上記のサイクル処理を所定回数繰り返すことによって第1処理(ステップ303)を実施した後、酸素プラズマ処理(ステップ304)を行う。この酸素プラズマ処理(ステップ304)は、図1に示したプラズマ処理装置100等によって実施することができる。
【0036】
プラズマ処理装置100における酸素プラズマ処理は、例えば以下のように実施する。すなわち、予め所定温度に設定されたステージ102上に半導体ウエハWが載置され、図示しない静電チャック等によって吸着されることによって半導体ウエハWが所定温度に加熱された状態となる。この状態でガス導入部105から酸素ガスを含む所定の処理ガスが導入されるとともに、排気管107から排気が行われ、処理チャンバー101内が所定圧力の処理ガス雰囲気とされる。そして、RFコイル104に高周波電力が印加されることによって、酸素ガスの誘導結合プラズマが生起される。このプラズマ中のイオンは、ガス拡散板106によって遮蔽され、電荷を有しない酸素ラジカルが分散した状態でステージ102上の半導体ウエハWに供給され、酸素ラジカルの作用による処理が行われる。これによって、有機物を含む堆積物を除去することができる。
【0037】
この酸素プラズマ処理では、処理ガスとして酸素を含むガス例えば、酸素ガスの単ガス若しくは酸素ガスと窒素ガスの混合ガス等を使用し、半導体ウエハWの加熱温度(ステージ温度)は例えば200℃〜300℃程度に設定される。また、圧力は、例えば66.5Pa(0.5Torr)〜266Pa(2Torr)程度とされる。
【0038】
図3のフローチャートに示すように、上記酸素プラズマ処理(ステップ304)を行った後、第2処理(ステップ305)を実施する。この第2処理(ステップ305)は、半導体ウエハ(基板)Wを、フッ化水素ガスを含む雰囲気(本実施形態では、フッ化水素ガスとアルコールガスの混合ガスの雰囲気)に晒すことによって行い、図2に示したガス処理装置200等によって実施することができる。
【0039】
ガス処理装置200における第2処理は、例えば、以下のように実施される。すなわち、予め所定温度に設定されたステージ202上に半導体ウエハWが載置されることによって半導体ウエハWが所定温度に維持された状態となる。この状態でガス導入部203から所定の処理ガス(本実施形態ではフッ化水素ガス+メタノールガス)が導入されるとともに、排気管207から排気が行われ、処理チャンバー201内が所定圧力の処理ガス雰囲気とされる。
【0040】
本実施形態において、第2処理(ステップ305)は、図3のフローチャートに示すように、アルコールガス(メタノールガス)の分圧を第1の分圧とする第1の期間(ステップ321)と、処理チャンバー内を排気しアルコールガス(メタノールガス)の分圧を第1の分圧より低い第2の分圧とする第2の期間(ステップ322)とを、複数サイクル繰り返す(ステップ323)。このようにメタノールガスの分圧を変動させる方法としては、前述した第1処理(ステップ303)と同様な方法を用いることができる。
【0041】
この第2処理(ステップ305)では、半導体ウエハWの温度は、例えば数十度(例えば30℃)以下の低温とすることが好ましい。また、第1の期間における圧力は、例えば665Pa(5Torr)〜1330Pa(10Torr)程度が好ましく、処理ガスは、フッ化水素ガス+アルコールガス(本実施形態ではメタノールガス(CHOHガス))の混合ガスを使用する。
【0042】
このようなサイクル処理において、第1の期間は、混合ガスの作用によって堆積物が除去され得るメタノールガスの分圧に設定する。また、第2の期間は、メタノールガスの分圧を低下させ、堆積物が除去されずに第1の期間中に堆積物と混合ガスとの反応によって生成された物質(HO等)を排気して処理チャンバー201外に排出する期間とする。このような第1の期間及び第2の期間は、夫々5秒から20秒程度とし、このサイクルを複数回繰り返して行う。
【0043】
そして、第2処理(ステップ305)におけるサイクル処理(ステップ321〜323)が所定回数に到達すると、堆積物除去処理が終了する。
【0044】
以上のように、本実施形態では、第1処理(ステップ303)を行った後、酸素プラズマ処理(ステップ304)を行い、その後、第2処理(ステップ305)を行うことによって、堆積物に有機物が含まれている場合であっても、この堆積物を除去することができる。
【0045】
また、本実施形態では、酸素プラズマによる前処理によってパターン及び堆積物の吸湿状態をエッチング処理後の放置時間(q−time)の長短に係わらず一定にしている。ここで、酸素プラズマによる前処理を行うと、フッ化水素(HF)単ガスによる処理では堆積物の除去を行うことが困難になる。このため、本実施形態における第1処理及び第2処理では、フッ化水素ガス+アルコールガス(本実施形態ではメタノールガス)の混合ガスを用いる。この場合、反応によって生じたHO量が過剰になり、パターン構造物であるゲート酸化膜等がダメージを受けたり、逆反応によって堆積(再デポ)が生じる場合がある。このため、第1処理及び第2処理では、サイクル処理により、堆積物の除去が行われる第1の期間と、堆積物の除去が行われず反応生成物が排気される第2の期間とを繰り返して行うことによってHO量が過剰になることを防止する。
【0046】
これによって、パターンの側壁に堆積した堆積物(シリコン酸化物(例えば、SiOゃSiOBr)及び有機物)を除去することができ、かつ、HOによる触媒作用によって反応が過剰に進行し、パターン構造物であるゲート酸化膜等のSiO層がダメージを受けることを抑制することができる。
【0047】
実施例として、エッチングによりパターンを形成した半導体ウエハに、酸素プラズマによる前処理を実施した後、堆積物除去を行った。酸素プラズマによる前処理は、以下の処理条件によって行った。
圧力:133Pa(1Torr)
高周波電力:1000W
処理ガス:O=2000sccm
ステージ温度:250℃
時間:120秒
【0048】
次に、第1処理を以下の処理条件によって行った。
圧力:(931Pa(7Torr)10秒⇔173Pa(1.3Torr)10秒)×3サイクル
処理ガス:HF/CHOH=2800/65sccm
ステージ温度:10℃
【0049】
なお、上記のサイクル処理における圧力の設定は、前述したとおり、第1の期間では、APCの圧力設定を931Pa(7Torr)とした時間を10秒維持し、第2の期間では、処理ガスを流した状態でAPCを全開とした状態を10秒維持したものであり、実際の処理チャンバー201内の圧力の変動は、図5のグラフに示したようになる。すなわち、APCが全開の状態からAPCの圧力設定を931Pa(7Torr)としても、実際の圧力が931Pa(7Torr)に到達するまで4〜5秒程度かかる。また、APCの圧力設定を931Pa(7Torr)から全開にすると比較的短時間で圧力が173Pa(1.3Torr)程度で一定となる。
【0050】
ここで、上記のステージ温度及び処理ガスの流量の条件では、堆積物除去(デポ剥離)が可能となるメタノールガスの分圧となる圧力は、665Pa(5Torr)程度となる。したがって、この場合のサイクル処理における1/2サイクルの時間は、5〜20秒程度とすることが好ましい。なお、第1の期間と第2の期間は、必ずしも同じにする必要はなく、異なるようにしてもよい。
【0051】
次に、酸素プラズマ処理を以下の処理条件によって行った。
圧力:133Pa(1Torr)
高周波電力:1000W
処理ガス:O=2000sccm
ステージ温度: 250℃
時間:30秒
【0052】
次に、第2処理を以下の処理条件によって行った。
圧力:(931Pa(7Torr)10秒⇔173Pa(1.3Torr)10秒)×3サイクル
処理ガス:HF/CHOH=2800/65sccm
ステージ温度:10℃
【0053】
以上の堆積物除去を実施した後の半導体ウエハを電子顕微鏡(SEM)で拡大して観察したところ、パターンの側壁部に堆積した堆積物が除去され、かつ、パターン構造物であるゲート酸化膜等のSiO層がダメージを受けていなかった。この実施例の半導体ウエハの電子顕微鏡(SEM)による写真を図6に示す。
【0054】
一方、比較例として、実施例における酸素プラズマ処理(ステップ304)及び第2処理(ステップ305)を行わず、第1処理(ステップ303)におけるサイクル処理を6サイクル行ったところ、パターンの側壁部に堆積物が残存し、堆積物を完全に除去することができなかった。この比較例の半導体ウエハの電子顕微鏡(SEM)による写真を図7に示す。図7の写真では、パターンの側壁に残存する堆積物が白く写っている。なお、上記比較例においてサイクル処理を12サイクル行った場合においても、やはり、パターンの側壁部に堆積物が残存し、堆積物を完全に除去することができなかった。
【0055】
次に、堆積物を除去可能となる処理の条件を調べた結果について説明する。まず、処理ガスにおけるメタノールガス添加量と堆積物の剥離力との関係を調べたところ、メタノールガスを添加しなかった場合に堆積物を除去できなかったサンプルに対して、メタノールガスを100sccm添加した場合は、堆積物を除去することができた。また、メタノールガスの添加量を200sccmに増やすと、堆積物の剥離力が増大することを確認できた。但し、この実験は、サイクル処理を行うことなく、連続的にガス処理を行ったため、パターンの構造物であるゲート酸化膜が削られてダメージが発生した。
【0056】
また、処理ガスの圧力と堆積物の剥離力との関係を調べるため、圧力を665Pa(5Torr)、1330Pa(10Torr)、1995Pa(15Torr)として、サンプルの堆積物の除去を行った。この結果、高圧化することによって、堆積物の剥離力が増大することを確認できた。但し、この実験は、サイクル処理を行うことなく、連続的にガス処理を行ったため、パターンの構造物であるゲート酸化膜が削られてダメージが発生した。
【0057】
さらに、温度と堆積物の剥離力との関係を調べるため、温度を10℃、30℃、50℃として、サンプルの堆積物の除去を行った。この結果、低温化することによって、堆積物の剥離力が増大することを確認できた。但し、この実験は、サイクル処理を行うことなく、連続的にガス処理を行ったため、パターンの構造物であるゲート酸化膜が削られてダメージが発生した。
【0058】
上記の結果から、縦軸を圧力、横軸をメタノールガス流量とした図8のグラフに示すように、各処理温度毎に、堆積物の除去が進行する領域と堆積物の除去が進行しない領域とを仕切る境界線を求めることができる。そして、この境界線を跨ぐように処理条件(圧力又はメタノールガス流量又はこれら双方)を変更すれば、サイクル処理における堆積物の除去が行われるメタノールガスの分圧となる第1の期間と、堆積物の除去が行われないメタノールガスの分圧となる第2の期間とを設定することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。例えば、上記実施形態及び実施例では、酸素プラズマによる前処理を行った場合について説明したが、この酸素プラズマによる前処理は省略することができる。また、酸素プラズマによる前処理を省略した場合、第1処理工程及び第2処理工程に使用するガスを、アルコールを含まないフッ化水素ガスの単ガスとすることができ、この場合サイクル処理とせずに圧力を一定とした処理を行うことができる。さらに、上記実施形態及び実施例では、アルコールガスとしてメタノールガスを使用した場合について説明したが、他のアルコールガス、例えばエタノールガスやイソプロピルアルコールガス等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
W……半導体ウエハ、100……プラズマ処理装置、101……処理チャンバー、102……ステージ、103……窓、104……RFコイル、105……ガス導入部、106……ガス拡散板、107……排気管、200……ガス処理装置、201……処理チャンバー、202……ステージ、203……ガス導入部、204……開口部、205……透孔、206……ガス拡散板、207……排気管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にエッチングによって形成されたパターンの表面に堆積した堆積物を除去する堆積物除去方法であって、
前記基板を、フッ化水素ガスを含む雰囲気に晒す第1処理工程と、
前記第1処理工程の後に、前記基板を加熱しながら酸素プラズマに晒す酸素プラズマ処理工程と、
前記酸素プラズマ処理工程の後に、前記基板を、フッ化水素ガスを含む雰囲気に晒す第2処理工程と、
を具備したことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項2】
請求項1記載の堆積物除去方法であって、
前記堆積物が、シリコン酸化物と有機物を含む
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項3】
請求項2記載の堆積物除去方法であって、
前記堆積物中の有機物が、前記パターンを形成する際のエッチングで炭素を含むガスを用いることによって形成された
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の堆積物除去方法であって、
前記第1処理工程及び前記第2処理工程におけるフッ化水素ガスを含む雰囲気は、フッ化水素ガスとアルコールガスの混合ガスの雰囲気である
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項5】
請求項4記載の堆積物除去方法であって、
前記第1処理工程、前記第2処理工程のうちの少なくとも一方は、
処理チャンバー内で実施し、前記アルコールガスの分圧を第1の分圧とする第1の期間と、処理チャンバー内を排気し前記アルコールガスの分圧を第1の分圧より低い第2の分圧とする第2の期間とを、複数サイクル繰り返すサイクル処理によって行う
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項6】
請求項5記載の堆積物除去方法であって、
前記第1の分圧が、前記混合ガスの作用によって前記堆積物を除去可能な分圧である
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項記載の堆積物除去方法であって、
前記第1処理工程の前に、
前記基板を加熱しながら酸素プラズマに晒す酸素プラズマによる前処理工程を行う
ことを特徴とする堆積物除去方法。
【請求項8】
請求項は1〜7いずれか1項記載の堆積物除去方法であって、
前記パターンが、構造物として二酸化ケイ素を含む
ことを特徴とする堆積物除去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−74220(P2013−74220A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213677(P2011−213677)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】