説明

壁面用植栽基盤とその製造方法

【課題】垂直壁面に取り付けた場合でも夫々の植栽ポットから土壌が零れ落ちることのない構成であって、廉価に製造することができ、収納時にも嵩張らず、壁面に取付ける際にも簡単な施工で取り付けることができる壁面用植栽基盤及びその製法方法を提供する。
【解決手段】周囲に周枠2aを有する受皿2と、該受皿に収容する裁頭円錐形の植栽ポット3を形成したトレー4と、該トレーに付設した状態で植栽ポット3と同径且つ位置を合わせて突出する一部開口形のポケット5を設けたホルダー6と、ポケットを外方へ突出させる開放窓7aとポケットの周囲を押える押え桟7とを有する押え蓋8とから成る基盤であって、ホルダーのポケットをトレーの植栽ポットから外方へ突出した状態にして押え蓋8の側枠8aを受皿2の周枠2aに嵌合すると共に、この状態で壁面に取り付けて夫々のポケットと植栽ポットとで形成される連続室27に植物を植栽するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル等の建造物の壁面に取り付けることによって壁面を緑化するポット植栽を可能とした壁面用植栽基盤とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビル等の建造物の壁面に植物を植栽することによって壁面を緑化するようにした壁面緑化の技術が開発されている。このような壁面緑化に関する従来の技術として特許文献1をあげると、図16(a)又は(b)に示すように、メッシュ状箱形(メッシュ53)に形成された本体51と蓋体52とを結合して成る方形ユニット50の内部に土壌61が充填され、本体51の平面部55にスリット56を有する所定数の植栽ポット57が一体的に設けられて成り、夫々の植栽ポット57に草花又は樹木を植栽し、所望のレイアウトで配置するようにしたものである。
【特許文献1】特開2005−176829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の特許文献1の図16(b)に示す構造は、本体51の平面部55の所定個所に設けられた複数の開口縁54、54…に着脱式植栽ポット57を挿入したものであり、夫々の植栽ポット57を円柱体を斜めにした形状とすることによって、垂直壁面58に金具59で固定した状態の本体51の植栽ポット57に植物60の根部を入れて植栽するようにしたものである。
【0004】
ところが、上記のように方形ユニット50を垂直壁面58に取り付けた場合、植栽ポット57の開口57aが垂直状になってポット内の土壌61が零れやすいという欠点がある。また、夫々の植栽ポット57は夫々の開口縁54に一個ずつ個別的に挿入するように設けられているため、そのような挿入作業に手間を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたもので、ビル等の建造物の壁面に植物を植栽することによって壁面を緑化するのに使用する壁面用植栽基盤であって、垂直壁面に取り付けた場合でも夫々の植栽ポットから土壌が零れ落ちることのない構成であって、廉価に製造することができ、収納時にも嵩張らず、壁面に取付ける際にも簡単な施工で取り付けることができる壁面用植栽基盤及びその製法方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明による請求項1に記載の壁面用植栽基盤は、周囲に周枠を有する受皿と、該受皿に収容する裁頭円錐形の植栽ポットを形成したトレーと、該トレーに付設した状態で前記植栽ポットと同径且つ位置を合わせて突出する一部開口形のポケットを設けたホルダーと、前記ポケットを外方へ突出させる開放窓と前記ポケットの周囲を押える押え桟とを有する押え蓋とから成る基盤であって、該基盤を収納する際には前記ホルダーのポケットを前記トレーの植栽ポット内に収容するか又は前記トレーの植栽ポットを前記ホルダーのポケット内に収容した状態で前記押え蓋の側部に設けられた側枠を前記受皿の周枠に嵌合し、該基盤を壁面に取付ける際には前記ホルダーのポケットを前記トレーの植栽ポットから外方へ突出した状態にして前記押え蓋の側枠を前記受皿の周枠に嵌合すると共に、この状態で壁面に取り付けて夫々のポケットと植栽ポットとで形成される連続室に植物を植栽したことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の壁面用植栽基盤は、請求項1記載の壁面用植栽基盤において、前記押え蓋と前記受皿との夫々の周囲に設けられたネジ穴にネジを挿通して前記押え蓋と前記受皿とを結合したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の壁面用植栽基盤は、請求項1又は2記載の壁面用植栽基盤において、前記基盤の受皿の底面の離間位置に断面カギ形状を下向きにした取付金具を固定する一方、壁面の上下方向に沿って所定の複数個所に断面カギ形状を上向きにした受け金具を固定し、前記基盤側の取付金具を前記壁面側の受け金具に掛止すると共に、該掛止した基盤の上部に他の基盤を上載した状態にして前記壁面側の受け金具に前記受皿側の取付金具を掛止することを繰り返すことによって、壁面に所望数の基盤を固定し、さらに最上部の基盤を上側から押える押さえ金具を壁面に固定したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の壁面用植栽基盤は、請求項1、2又は3記載の壁面用植栽基盤において、前記基盤のホルダーから外方へ突出するポケットを覆うようにメッシュ枠が取り付けられることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の請求項5に記載の壁面用植栽基盤の製造方法は、周囲に周枠を有する受皿と、該受皿に収容する裁頭円錐形の植栽ポットを形成したトレーと、該トレーに付設した状態で前記植栽ポットと同径且つ位置を合わせて突出する一部開口形のポケットを設けたホルダーと、前記ポケットを外方へ突出させる開放窓と前記ポケットの周囲を押える押え桟とを有する押え蓋とから成る基盤の前記トレーと前記ホルダーとを合成樹脂によって射出成形する際、前記トレーの植栽ポットと前記ホルダーのポケットとに共通する凹形状を形成した雌型と、前記トレーの植栽ポット用入れ子と前記ホルダーのポケット用入れ子とを取替え可能にした雄型とを組み合わせた成形用型を使用して前記トレーと前記ホルダーとを成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の壁面用植栽基盤によれば、周囲に周枠を有する受皿と、該受皿に収容する裁頭円錐形の植栽ポットを形成したトレーと、該トレーに付設した状態で前記植栽ポットと同径且つ位置を合わせて突出する一部開口形のポケットを設けたホルダーと、前記ポケットを外方へ突出させる開放窓と前記ポケットの周囲を押える押え桟とを有する押え蓋とから成る簡単な構成によって基盤を作成することができる。
【0012】
このような構成により、本発明の壁面用植栽基盤を運搬や保管等する際には、ホルダーのポケットをトレーの植栽ポット内に収容するか又はトレーの植栽ポットをホルダーのポケット内に収容した状態でホルダーのポケットをトレーの植栽ポット内に収容した状態で押え蓋の側部に設けられた側枠を受皿の周枠に嵌合することによって嵩張らずにコンパクトに収納することが可能となる。この際、押え蓋と受皿との夫々の周囲に設けられたネジ穴にネジを挿通して押え蓋と受皿とを結合することも可能である。
【0013】
また、本発明の壁面用植栽基盤を壁面に取付ける際にはホルダーのポケットをトレーの植栽ポットから外方へ突出した状態にして押え蓋の側枠を受皿の周枠に嵌合すると共に、この状態で壁面に取り付けて夫々のポケットと植栽ポットとで形成される連続室に植物を植栽することができる。このような構成において、連続室はポケットの形状によって内部の土壌が零れにくく、植物の育成を健全に図ることが可能となるものである。
【0014】
また、多数の基盤を壁面に取り付ける際に取付金具を用いることによって容易に壁面に固定することが可能となる。この取付金具によれば、基盤を壁面に固定した受け金具に掛止するだけの作業で取付けが可能であり、このように掛止した基盤の上部に他の基盤を上載した状態にして壁面側の受け金具に基盤側の取付金具を掛止することを繰り返すことによって壁面に所望数の基盤を固定することができ、さらに最上部の基盤を上側から押える押さえ金具を壁面に固定するだけで、その縦列に配した全ての基盤を一括して固定することが可能となる。
【0015】
さらに、上記のように取付金具を基盤の底側に取り付ける際に、壁面用植栽基盤の外方を覆うメッシュ枠を取り付けることによって、植物の茎や葉が生育する際、前面のメッシュ枠に誘引されて成長し、外観的にも植物の生育エリアを広げて基盤を覆う緑化効果を得ることができる。特にツタ類の植物の場合、メッシュ枠に沿って登攀したり、下垂したりする成長を促進することができ、植物の重量をメッシュ枠に持たせることができ、茎が切れたり損傷したりすることを防止することが可能となる。
【0016】
さらに、メッシュ枠によって基盤と該基盤に植栽した植物を保護することが可能となり、機械による剪定作業の際にメッシュ枠の外側に沿って剪定することにより、メッシュ枠の外側の葉だけを切って茎の切りすぎを防止すると共に、基盤そのものを剪定刃から保護することが可能となる。
【0017】
また、本発明の壁面用植栽基盤の製造方法によれば、トレーとホルダーとを合成樹脂によって射出成形する際、トレーの植栽ポットとホルダーのポケットとに共通する所定数の凹形状を形成した雌型と、トレーの植栽ポット用入れ子とホルダーのポケット用入れ子とを取替え可能にした雄型とを組み合わせた成形用型を使用してトレーとホルダーとを成形することにより、雄型と雌型とのベース部分に共通のものを使用することができるため、大幅なコストダウンを実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0019】
本実施例の壁面用植栽基盤1は、図1〜図4に示すように、周囲に周枠2aを有する受皿2と、該受皿2に収容する裁頭円錐形の植栽ポット3を形成したトレー4と、該トレー4に付設した状態で植栽ポット3と同径且つ位置を合わせて突出する一部開口形5aのポケット5を設けたホルダー6と、ポケット5を外方へ突出させる開放窓7aとポケット5の周囲を押える押え桟7とを有する押え蓋8とから成るものである。
【0020】
このような壁面用植栽基盤(単に「基盤」という)について詳細に述べると、上記の構成部材は、図3に示すように、最下部に平面形状が四角形に形成された受皿2を有し、この受皿2に収納される四角形状のトレー4とホルダー6とは全体形状が略同様の四角形状を有し、押え蓋8はこれらのトレー4とホルダー6とに覆い被さるように周囲に側枠8aを有して受皿2の周枠2aの内側に嵌合されるものである。なお、本実施例の壁面用植栽基盤1を構成するこれらの受皿2とトレー4とホルダー6と押え蓋8とは合成樹脂による射出成形により形成することが可能である。
【0021】
上記の受皿2は、図6(a)〜(d)に示すように、平板四角形状の周囲に、例えば2cm程度の高さを有する周枠2aが設けられた皿形状をなし、四方には底側に凸形状を有する底面2bが形成され、それ以外は底上げ面2cとして形成されている。また、周枠2aの各辺には、図4(c)に示すように、後述する押え蓋8の側枠8aに設けられた嵌合溝9に係止されるツメ片10が形成されている。
【0022】
さらに、図6(a)〜(d)に示すように、この受皿2の四隅には上記の底面2bの角部を内方に凹ませた形状にし、その凹み形状2dを有する四隅にネジ穴11が形成され、このネジ穴11に後述するネジ12(図11参照)を挿通することができるようにされている。
【0023】
また、本実施例におけるトレー4は、図7(a)又は(b)に示すように、平坦な上面部4aに、例えば縦横3個ずつの植栽ポット3を間隔をあけて配設してあり、各植栽ポット3は裁頭円錐形を成し、各植栽ポット3の周囲の上面部4aや各植栽ポット3の内部には通気又は通水用のスリット14が形成されている。また、トレー4の上面部4aの四隅には凹み形状4bが形成されている。この凹み形状4bは、上記の受皿2の底面2bの角部に設けられた凹み形状2dに対応して設けられ、受皿2の四隅のネジ穴11に挿通されたネジ12を避ける空所として機能する。
【0024】
さらに、本実施例におけるホルダー6は、図8(a)又は(b)に示すように、平坦な上面部6aに、例えば縦横3個ずつのポケット5を間隔をあけて配設してあり、各ポケット5の周囲の上面部6aにはスリット14が形成されている。また、上記のトレー4と同様に、このホルダー6の上面部6aの四隅には凹み形状6bが形成され、受皿2の四隅のネジ穴11に挿通されたネジ12を避ける空所として機能するものである。
【0025】
ところで、このホルダー6に設けられた各ポケット5は、トレー4の植栽ポット3と同径の裁頭円錐形を有すると共に、夫々の植栽ポット3の形成位置に合わせて設けられ、上方向(基盤1を壁面に取り付けた場合の上方向)に一部開口形5aを有するポケット形状に形成されている。
【0026】
また、押え蓋8は、図2又は図9に示すように、トレー4に被せた状態でホルダー6のポケット5を外方へ突出させる開放窓7aと該ポケット5の周囲を押える押え桟7とを有する押え蓋8とから構成され、周囲に設けられた側枠8aにはスリット14が設けられると共に、夫々の側枠8aには受皿2の周枠2aに設けられたツメ片10に係止される嵌合溝9が形成され、また上面の四隅にはネジ穴15が形成されている。
【0027】
この受皿2の周枠2aに設けられたツメ片10と押え蓋8の側枠8aに設けられた嵌合溝9の構成について述べると、図4(b)及び(c)に示すように、受皿2の周枠2aの内側に突出するように複数のツメ片10が形成され、図4(c)に示すように、押え蓋8の側枠8aの外側には、夫々のツメ片10に嵌合する嵌合溝9が夫々の対応位置に形成されている。
【0028】
本実施例の基盤1においては、上記のように、受皿2の周枠2aのツメ片10と押え蓋8の側枠8aの嵌合溝9とを互いに嵌合するだけで押え蓋8は受皿2に結合される。従って、本実施例の基盤1を運搬したり保管したりするような収納の際には、図5(a)〜(c)に示すように、ホルダー6のポケット5を内方に向けてトレー4の各植栽ポット3に収納して押え蓋8を受皿2に嵌合するだけでよい。また、不図示であるが、上記とは逆に、トレー4の植栽ポット3をホルダー6のポケット5内に収容した状態にして押え蓋8を受皿2に嵌合するようにしてもよい。このような状態においては、各ポケット5は夫々の植栽ポット3の内部に収納されているため、押え蓋8から外方に突出するものは何もなく、嵩張らずにコンパクトな状態で収納することが可能となる。
【0029】
また、このように収納された基盤1を使用する際、押え蓋8の側枠8aを内方へ押し込むことによって、押え蓋8の嵌合溝9から受皿2のツメ片10を離脱して、押え蓋8を受皿2から分解した状態にし、押え蓋8の内部のホルダー6やトレー4を分解状態にすることができる。
【0030】
ところで、本実施例の基盤1を壁面に取り付ける際には、図4(a)〜(c)に示すように、ホルダー6の各ポケット5をトレー4の各植栽ポット3から外方に向けた状態にし、押え蓋8を受皿2に嵌合する。即ち、ホルダー6の各ポケット5をトレー4の各植栽ポット3から外方へ突出した状態にして押え蓋8の側枠8aを受皿2の周枠2aに嵌合する。この状態においては、図11に示すように、基盤1の各植栽ポット3とポケット5によって形成された連続室27に土壌25を入れて植物26を植栽することが可能となり、連続室27はポケット5の形状によって内部の土壌25が零れにくいため、植物の育成を健全に図ることが可能となる。
【0031】
また、図11に示すように、押え蓋8を受皿2に対してより堅固に結合するため、受皿2の四隅に設けられたネジ穴11と押え蓋8の四隅に設けられたネジ穴15にネジ12を挿通し、該ネジ12の先部にナット13を締結することによって固定することができる。
【0032】
ただし、図11に示すような施工状態においては、基盤1を壁面20に取り付ける際に取付金具16を用いるようにしている。この取付金具16は、図12に示すように、両側に配した金属製の縦部材17、17の上下に離間して金属製の断面カギ形状の横部材18、18を固設したもので、両側の縦部材17、17の上端と下端とにはネジ穴19、19…が形成されている。
【0033】
この取付金具16を図14に示すように基盤1の受皿2の底側に付設して、四方のネジ穴19、19…を受皿2の四隅のネジ穴11、11…に合わせ、ネジ12を挿入することによって、図11に示すようにネジ12の先端を外方へ突出させ、ナット13で締結することによって、取付金具16は基盤1の受皿2に固定された状態になる。
【0034】
また、図12(b)に示すように、壁面20の上下方向に沿って所定の複数個所に断面カギ形状を上向きにした受け金具21を固定し、この壁面20側の受け金具21に基盤1側の取付金具16の横部材18を上方から掛止する。さらに、図15に示すように、多数の基盤1を壁面20に取付ける場合には、壁面20に掛止した基盤1の上部に接して他の基盤1を上乗せした状態にし、この上乗せした基盤1の取付金具16を壁面20側の受け金具21に掛止することを繰り返すことによって壁面20に所望数の壁面用植栽基盤1を固定することができることとなる。また、このようにして所望数の基盤1を上乗せして壁面20に固定した状態で、最上部の基盤1の上部に押え金具28を係止した状態で壁面20に固定することによって、その列全体の基盤1、1…を一括して固定状態にすることが可能となる。
【0035】
また、上記のように取付金具16を基盤1の底側に取り付ける際に、壁面用植栽基盤1の外方を覆うメッシュ枠22を取り付けるようにしてもよい。このメッシュ枠22は、図13に示すように、金属製の細径棒部材を用いて複数の横棒23と複数の縦棒24とで縦横に碁盤状の網目を形成すると共に、夫々の縦棒24、24…の上下を屈曲して、全体の側面形状をチャンネル形にすることにより、図15(b)に示すように、基盤1の前部と上下部を覆うように被せることが可能である。
【0036】
また、図15(a)に示すように、メッシュ枠22を基盤1の上方に被せた状態にして、夫々の横棒23と縦棒24とをホルダー6の各ポケット5の間に位置するように取付けるのが望ましいが、この網目の形状は、縦横に四角形を配した形状だけではなく、ひし形を配した形状、六角形を配した形状、三角形を配した形状、さらには円形等を配した形状にしてもよい。
【0037】
また、図14又は図15(b)に示すように、基盤1の背面において、メッシュ枠22を構成する縦棒24の端部に接合した横棒23を取付金具16と受皿2の間に挿入した状態にして、取付金具16を基盤1側に固定するネジ12でメッシュ枠22の端部を止めることによって、メッシュ枠22は1個の基盤1の前部と上下部とを覆う状態で取り付けられることとなる。
【0038】
このようにメッシュ枠22を設けたことによって、図15(a)又は(b)に示すように、植物26の茎や葉が生育する際、前面のメッシュ枠22に誘引されて成長し、外観的にも植物26の生育エリアを広げて基盤1を覆う緑化効果を得ることができる。特にツタ類の植物の場合、メッシュ枠22に沿って登攀したり、下垂したりする成長を促進することができる。この際、植物26の重量をメッシュ枠22に持たせることができ、茎が切れたり損傷したりすることを防止することが可能となる。
【0039】
さらに、メッシュ枠22によって基盤1と該基盤1に植栽した植物26を保護することが可能となる。さらに、機械による剪定作業の際に、メッシュ枠22の外側に沿って剪定することにより、メッシュ枠22の外側の葉だけを切って茎の切りすぎを防止すると共に、基盤1そのものを剪定刃から保護することが可能となる。
【0040】
ここで、図10(a)及び(b)を参照しながら、本発明の壁面用植栽基盤の製造方法について説明すると、この製法は、上記のトレー4とホルダー6を効率的且つ安価に製造することができるものである。
【0041】
即ち、これらのトレー4とホルダー6とを合成樹脂によって射出成形する際、トレー4の植栽ポット3とホルダー6のポケット5とに共通する所定数の凹形状30を形成した雌型31と、トレー4の植栽ポット用入れ子32とホルダー6のポケット用入れ子33とを取替え可能にした雄型34とを組み合わせた成形用型35を使用してトレー4とホルダー6とを成形するようにしたものである。このような成形方法により、トレー4とホルダー6を成形する際に、雄型34と雌型31とのベース部分に共通のものを使用することができるため、大幅なコストダウンを実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の壁面用植栽基盤及びその製造方法は、垂直壁面に取り付けた場合でも夫々の植栽ポットから土壌が零れ落ちることのない構成であって、廉価に製造することができ、収納時にも嵩張らず、壁面に取付ける際にも簡単な施工で取り付けることができる壁面用植栽基盤及びその製法方法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による壁面用植栽基盤の全体斜視図である。
【図2】本発明による壁面用植栽基盤の全体平面図である。
【図3】本発明による壁面用植栽基盤の構成部材を分解すると共に、夫々をずらした状態にした平面図である。
【図4】(a)は本発明による壁面用植栽基盤の側面図であり、(b)は図2のA−A線に沿う断面図であり、(c)は図4(b)又は図5(b)のB−B線に沿う断面図である。
【図5】本発明による壁面用植栽基盤の収納時の状態を示し、(a)は側面図であり、(b)は図5(a)の縦断面図であり、(c)は全体斜視図である。
【図6】(a)は本発明による壁面用植栽基盤の受皿の上面図であり、(b)は図6(a)のC−C線に沿う断面図であり、(c)は受皿の底面図であり、(d)は受皿の側面図である。
【図7】(a)は本発明による壁面用植栽基盤のトレーの全体斜視図であり、(b)はトレーの側面図である。
【図8】(a)は本発明による壁面用植栽基盤のホルダーの全体斜視図であり、(b)はホルダーの側面図である。
【図9】本発明による壁面用植栽基盤の押え蓋の全体平面図である。
【図10】(a)及び(b)は、本発明による壁面用植栽基盤の製造方法を示す概略断面図である。
【図11】本発明による壁面用植栽基盤を垂直壁面に取り付けた施工状態を示す部分断面側面図である。
【図12】(a)は本発明による壁面用植栽基盤に取付ける取付金具の平面図であり、(b)はその取付金具を壁面に取り付ける受け金具を併せて図示した側面図である。
【図13】本発明による壁面用植栽基盤に取付けるメッシュ枠の斜視図である。
【図14】本発明による壁面用植栽基盤の受皿にメッシュ枠と取付金具を取り付けた状態を示す壁面用植栽基盤の背面図である。
【図15】(a)は本発明による壁面用植栽基盤の受皿にメッシュ枠と取付金具を取り付けた状態でこの壁面用植栽基盤を縦に二連にして壁面に取り付けた状態を示す正面図であり、(b)は側面図である。
【図16】(a)は特許文献1の多目的緑化盤を示す斜視図であり、(b)はこの緑化盤を壁面に取り付けた状況を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 壁面用植栽基盤(基盤)
2 受皿
2a 周枠
2b 底面
2c 底上げ面
2d 凹み形状
3 植栽ポット
4 トレー
4a トレーの上面部
4b 凹み形状
5 ポケット
5a 一部開口形
6 ホルダー
6a ホルダーの上面部
6b 凹み形状
7 押え桟
7a 開放窓
8 押え蓋
8a 側枠
9 嵌合溝
10 ツメ片
11 ネジ穴
12 ネジ
13 ナット
14 スリット
15 ネジ穴
16 取付金具
17 縦部材
18 横部材
19 ネジ穴
20 壁面
21 受け金具
22 メッシュ枠
23 横棒
24 縦棒
25 土壌
26 植物
27 連続室
28 押え金具
30 凹形状
31 雌型
32 植栽ポット用入れ子
33 ポケット用入れ子
34 雄型
35 成形用型



【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲に周枠を有する受皿と、該受皿に収容する裁頭円錐形の植栽ポットを形成したトレーと、該トレーに付設した状態で前記植栽ポットと同径且つ位置を合わせて突出する一部開口形のポケットを設けたホルダーと、前記ポケットを外方へ突出させる開放窓と前記ポケットの周囲を押える押え桟とを有する押え蓋とから成る基盤であって、該基盤を収納する際には前記ホルダーのポケットを前記トレーの植栽ポット内に収容するか又は前記トレーの植栽ポットを前記ホルダーのポケット内に収容した状態で前記押え蓋の側部に設けられた側枠を前記受皿の周枠に嵌合し、該基盤を壁面に取付ける際には前記ホルダーのポケットを前記トレーの植栽ポットから外方へ突出した状態にして前記押え蓋の側枠を前記受皿の周枠に嵌合すると共に、この状態で壁面に取り付けて夫々のポケットと植栽ポットとで形成される連続室に植物を植栽したことを特徴とする壁面用植栽基盤。
【請求項2】
前記押え蓋と前記受皿との夫々の周囲に設けられたネジ穴にネジを挿通して前記押え蓋と前記受皿とを結合したことを特徴とする請求項1記載の壁面用植栽基盤。
【請求項3】
前記基盤の受皿の底面の離間位置に断面カギ形状を下向きにした取付金具を固定する一方、壁面の上下方向に沿って所定の複数個所に断面カギ形状を上向きにした受け金具を固定し、前記基盤側の取付金具を前記壁面側の受け金具に掛止すると共に、該掛止した基盤の上部に他の基盤を上載した状態にして前記壁面側の受け金具に前記受皿側の取付金具を掛止することを繰り返すことによって、壁面に所望数の基盤を固定し、さらに最上部の基盤を上側から押える押さえ金具を壁面に固定したことを特徴とする請求項1又は2記載の壁面用植栽基盤。
【請求項4】
前記基盤のホルダーから外方へ突出するポケットを覆うようにメッシュ枠が取り付けられることを特徴とする請求項1、2又は3記載の壁面用植栽基盤。
【請求項5】
周囲に周枠を有する受皿と、該受皿に収容する裁頭円錐形の植栽ポットを形成したトレーと、該トレーに付設した状態で前記植栽ポットと同径且つ位置を合わせて突出する一部開口形のポケットを設けたホルダーと、前記ポケットを外方へ突出させる開放窓と前記ポケットの周囲を押える押え桟とを有する押え蓋とから成る基盤の前記トレーと前記ホルダーとを合成樹脂によって射出成形する際、前記トレーの植栽ポットと前記ホルダーのポケットとに共通する凹形状を形成した雌型と、前記トレーの植栽ポット用入れ子と前記ホルダーのポケット用入れ子とを取替え可能にした雄型とを組み合わせた成形用型を使用して前記トレーと前記ホルダーとを成形することを特徴とする壁面用植栽基盤の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−104986(P2007−104986A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299955(P2005−299955)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(390014649)日本地工株式会社 (20)
【Fターム(参考)】