説明

外反母趾用装具

【課題】足の親指と人差し指の間に挟持して使用される外反母趾用装具において、詰め物によって足指の開き具合を調節可能であると共に、足指の開き具合が適切に調節された状態を長時間に亘って維持できるようにする。
【解決手段】弾性樹脂から成る外反母趾用装具10において、足の親指と人差し指の間に挟持される挟持部11と、該挟持部11内に設けられた空洞から成る詰め物収容部14と、前記挟持部11の足指の付け根側の上面から延出し、足の甲の一部を被覆する第1延出片12と、前記挟持部11の足指の付け根側の下面から延出し、足の裏の一部を被覆する第2延出片13とを設け、前記詰め物収容部14に詰め物20を収容するための開口部15を前記挟持部11の足指の付け根側の端面に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外反母趾の症状を緩和するために足指の間に取り付けて使用される外反母趾用装具に関する。
【背景技術】
【0002】
外反母趾とは、足の親指が小指の方向に向かって屈曲した状態をいい、遺伝・疾患等の体質や健康状態、靴・仕事・スポーツ等の生活環境、及び身体の姿勢異常や歩行バランスの異常が主な原因とされている。
【0003】
外反母趾の症状が進行すると足の痛みが生じるのみならず、姿勢の悪化を招いて膝の痛みや腰痛等の原因ともなる。そこで、従来、外反母趾の症状を緩和するための各種装具が開発されている。こうした外反母趾用装具としては、例えば、伸縮性を有する布バンドを足の甲、足の裏、及び足指に巻回することで親指を引っ張って正常な位置に保持するものや、足の親指と人差し指の間に弾性樹脂等から成るパッドを挟持して指の間を押し広げることで親指の曲がりを補正するものなどが知られている。
【0004】
前記のように足指の間にパッドを挟持するものは、布バンドを使用するものに比べて足への装着が簡単であり、洗浄・乾燥等も容易であるため、手軽に使用できるという利点がある。しかしながら、指の開き具合を微調整することができないため、症状に応じて種々のサイズのものを用意する必要があった。
【0005】
そこで、こうした問題を解消するものとして、特許文献1には、弾性樹脂から成る外反母趾用装具において、足指の間に挟持されるパッドに上下方向(鉛直方向)に延びる縦溝を設け、ここにコットン等の詰め物を挿入可能としたものが開示されている。このような構成によれば、詰め物の量を変更することによりパッドの厚みを変更することができるため、外反母趾の症状に合わせて足指の開き具合を調節することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-93399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の厚さ調節機能を備えた外反母趾用装具では、上記の縦溝に挿入した詰め物が使用中に装具から脱落する場合があり、特に、比較的少量の詰め物を使用する場合や、装具を装着した状態でユーザが歩行する場合等において、適切な使用状態を長時間維持することが困難な場合があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、足指の間に挟持して使用される外反母趾用装具において、詰め物によって足指の開き具合を調節可能であると共に、足指の開き具合が適切に調節された状態を長時間に亘って維持することのできる外反母趾用装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る外反母趾用装具は、弾性樹脂から成る外反母趾用装具であって、
a)足の親指と人差し指の間に挟持される挟持部と、
b)該挟持部内に設けられた空洞から成る詰め物収容部と、
c)前記挟持部の足指の付け根側の上面から延出し、足の甲の一部を被覆する第1延出片と、
d)前記挟持部の足指の付け根側の下面から延出し、足の裏の一部を被覆する第2延出片と、
を有し、前記詰め物収容部に詰め物を収容するための開口部が、前記挟持部の足指の付け根側の端面に設けられていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、前記詰め物収容部に収容する詰め物の硬さ、形状、サイズ、数、又は量を変えることで、足指の開き具合(すなわち親指と人差し指の間隔又は両者の成す角度)を調節できると共に、使用時には、該詰め物を出し入れするための開口部が足の親指と人差し指の間(すなわち指の股)の体表面によって覆われるため、使用中に詰め物収容部から詰め物が脱落するのを防止することができる。
【0011】
また、本発明に係る外反母趾用装具は、前記詰め物収容部を、前記挟持部の足の親指の第1関節よりも付け根側に位置する領域のみに設けたものとすることが望ましい。
【0012】
このような構成によれば、足指の先端側における挟持部の硬さ又は幅を一定に保ったまま、足指の付け根側における挟持部の硬さ又は幅を詰め物によって変更することが可能となる。これにより、足指の間を押し広げる力を指の付け根側で大きくして高い症状改善効果を発揮すると共に、この力を指の先端側では小さくして足指の間の異物感を軽減することができるため、優れた使用感を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明した通り、上記構成から成る本発明の外反母趾用装具によれば、詰め物によって足指の開き具合を調節可能であると共に、該詰め物が使用中に装具から脱落するのを防止することができる。従って、足指の開き具合が適切に調節された状態を長時間に亘って維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係る外反母趾用装具を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】同実施例に係る外反母趾用装具への詰め物の取り付け方法を示す側面図である。
【図3】同実施例に係る外反母趾用装具を足に装着した状態を示す平面図。
【図4】本発明の他の実施例に係る外反母趾用装具を示す側面図。
【図5】同実施例に係る外反母趾用装具の変形例を示す側面図。
【図6】本発明の更に別の実施例に係る外反母趾用装具を示す平面図。
【図7】同実施例に係る外反母趾用装具を足に装着した状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について実施例を挙げて説明する。図1は本実施例に係る外反母趾用装具の構成を示す平面図及び側面図であり、図2は前記外反母趾用装具への詰め物の取り付け方法を示す側面図である。なお、以下では、本実施例に係る外反母趾用装具を足に装着した状態において、爪先側を前、かかと側を後、足の甲側を上、足裏側を下として、前後、上下、左右を定義する。また、左右方向の寸法を幅と呼ぶ。
【0016】
本実施例に係る外反母趾用装具10は、全体が軟質のシリコン樹脂(シリコンゴム)で形成されており、足の親指と人差し指の間に挟持される挟持部11と、前記挟持部11の上面から後方に延出する第1延出片12と、前記挟持部11の下面から後方に延出する第2延出片13とが一体に成形された構成となっている。
【0017】
挟持部11は、ヒトの足指を模した形状となっており、その内部には詰め物20を収容するための空洞(以下、詰め物収容部14と呼ぶ)が設けられている。該詰め物収容部14は、挟持部11の後端面、すなわち挟持部11を足指の間に挟持した際に指の股と対向する面に開口部15を有しており、この開口部15から詰め物20を出し入れできるようになっている。
【0018】
第1延出片12及び第2延出片13は、それぞれ使用時に足の甲及び足の裏に当接する部分であり、第1延出片12は足の甲に沿うように湾曲した形状となっている。また、第1延出片12の下面、第2延出片13の上面、及び挟持部11の内面には、粘着性のシリコン樹脂から成る粘着層16が設けられている。なお、この粘着層16は、第1延出片12の下面及び第2延出片13の上面のみに設けてもよい。
【0019】
詰め物20は、前記詰め物収容部14に収容可能な形状及び寸法から成り、例えば、本実施例の外反母趾用装具10を構成するシリコン樹脂よりも相対的に硬質のシリコン樹脂から形成されたものを好適に使用することができる。なお、図2では、詰め物収容部14を挟持部11と略同一形状とし、そこに詰め物収容部14と略同一形状の詰め物20を挿入する構成を示したが、詰め物収容部14及び詰め物20の形状はこれに限定されるものではなく、球状や円柱状、角柱状など種々の形状とすることができる。
【0020】
詰め物20は、同一の形状及び寸法で硬さが異なるものを複数個用意しておき、症状や好みに応じて詰め物収容部14に収容する詰め物20を適宜交換できるようにする。このとき、相対的に柔らかい詰め物は押圧により変形しやすいため指の間を押し広げる効果が比較的小さく、相対的に硬い詰め物は変形しにくいため指の間を広げる効果が比較的大きい。そこで、例えば、使用開始当初は比較的柔らかい詰め物を使用して指を慣らしていき、症状の改善に合わせて徐々に硬い詰め物を使用していくといったことが可能である。これにより、無理なく効果的に症状の改善を図ることができる。なお、本実施例の外反母趾用装具10自体は軟質のシリコン樹脂で形成されているため、詰め物20として比較的硬質のものを使用した場合であっても、強い異物感を生じたり皮膚を傷つけたりすることがない。そのため、高い症状改善効果と優れた使用感を同時に達成することができる。
【0021】
本実施例に係る外反母趾用装具10は、詰め物収容部14に所望の詰め物20を収容した状態で、図3に示すように、挟持部11を足の親指と人差し指の間に挟み、第1延出片12を足の甲に、第2延出片13を足の裏に当接させて使用する。上述の通り、第1延出片12及び第2延出片13の身体と当接する面には粘着層16が設けられているため、第1延出片12及び第2延出片13をそれぞれを足の甲及び足の裏に押し当てるだけで装具10を容易に足に固定することができる。
【0022】
上記構成から成る本実施例の外反母趾用装具10によれば、詰め物収容部14に収容する詰め物20を適宜変更することにより、症状や好みに合わせて足指の開き具合や外反母趾用装具10と足指との接触面の硬さを調節することができる。更に、本実施例の外反母趾用装具10では、詰め物20を出し入れするための開口部15が挟持部11の後端に設けられており、使用時には該開口部15が指の間の体表面によって塞がれるため、使用中に詰め物20が脱落するのを効果的に防止することができる。また、使用時には開口部15が外から見えないため、美観的にも優れたものとすることができる。
【0023】
また、上記の通り、第1延出片12及び第2延出片13には粘着層16が設けられ、且つ第1延出片12が足の甲に沿った湾曲形状となっているため、装具10が足にフィットしてずれにくいという効果も得られる。
【0024】
また、挟持部11の外観を足指を模したものとしたことにより、使用時には一見すると足指が6本あるかのように見えるため、見る者に意外性を与えると共にユーモアに富んだ印象をもたらすことができる。更に、このようにユーモアに富んだ外観とすることにより、ユーザの気持ちを明るくし、楽しみながら使用を継続させることができる。また、挟持部11の爪に相当する部分18にマニキュアやネイルアート等による装飾を施すこともできる。
【0025】
なお、歩行等によって爪先に体重が掛かると足指の腹が荷重によって多少潰れるため、足指の先端側では体重が掛かっているときとそれ以外のときで指同士の間隔が大きく変化する。これに対し、足指の付け根側では歩行時等でも指同士の間隔はあまり変化しない。そこで、本発明に係る外反母趾用装具は、上記挟持部11の後端側のみに詰め物収容部14を形成することにより、指の付け根側と先端側で挟持部11の硬さ又は幅を変えられるようにしてもよい。このような場合の構成例を図4に示す。
【0026】
この例では、挟持部11のうち、使用時に親指の付け根から第1関節に沿う領域のみに詰め物収容部14が設けられ、親指の第1関節よりも先端に沿う領域は中実構造となっている。以下、挟持部11のうち、内部に詰め物収容部14が形成されている領域を基部11bと呼び、該基部11bよりも前端側の領域を前端部11aと呼ぶ。
【0027】
このような構成によれば、外反母趾用装具10を構成するシリコン樹脂よりも硬い素材から成る詰め物20を詰め物収容部14に収容することによって基部11bを硬く潰れにくい状態とすることができ、この部分で足指の付け根を比較的強く押し広げることができる。一方、前端部11aには詰め物が収容されず、外反母趾用装具10を構成する軟質のシリコン樹脂のみが存在することとなるため、この部分は相対的に柔らかく潰れやすい状態となる。そのため、該前端部11aは歩行時の荷重による指先の変形に追従して容易に潰れたり復元したりすることができ、足指の間の異物感を低減することができる。
【0028】
なお、図5に示すように、前端部11aの内部に中空部17を設けるようにしてもよい。これにより、前端部11aがより潰れやすくなり、歩行時の異物感を一層低減することができる。この場合、前記中空部17に対して空気が出入りできるよう、該中空部17は詰め物収容部14と連通させることが望ましい。このとき、詰め物収容部14と詰め物20の間に隙間ができない場合には、詰め物20に貫通孔を設けるか詰め物20としてスポンジ状のもの(連続気孔を有する発泡樹脂)を使用するなどして空気の流通を妨げないようにする。また、前記中空部17に詰め物20が進入しないよう、該中空部17と詰め物収容部14の接続部の径を詰め物収容部14の内径よりも小さくすることが望ましい。
【0029】
また、一般にヒトの足指は付け根側が細く、先端部が太くなっており、これにより、指同士の間隔は付け根側ほど広く、先端側ほど狭くなっている。そこで、図6、7に示すように、挟持部11の基部11bを相対的に幅広とし、前端部11aを相対的に幅狭にしてもよい。なお、図6では、前端部11aを中空構造とした例を示したが、これに限らず、前端部11aを中実構造としてもよい。
【0030】
以上、実施例を挙げて本発明を実施するための形態について説明を行ったが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。例えば、本発明に係る外反母趾用装具を構成する素材は、上記のシリコン樹脂(シリコンゴム)に限らず、ウレタンゴム等の各種合成ゴムなど、種々の弾性樹脂を使用することができる。また、詰め物を構成する素材についても各種の素材を使用可能であり、上述のシリコン樹脂のような軟質樹脂に限らず、硬質の樹脂や発泡樹脂、天然繊維や合成繊維から成る繊維塊、又は前記繊維塊と樹脂との混成物などを用いることもできる。
【0031】
また、上記の例では、硬さの異なる複数の詰め物を用意し、詰め物収容部に収容する詰め物を交換することで足指の開き具合を調節可能な構成としたが、これに限らず、硬さ、形状、及び寸法のうち少なくともいずれか1つが異なる詰め物を複数個用意し、症状や好みに応じて適当なものを選択して使用できるようにしてもよい。また、詰め物収容部に複数の詰め物を収容できるようにし、該詰め物収容部に収容する詰め物の数によって足指の開き具合を調節可能な構成としてもよい。また、詰め物として脱脂綿等の繊維塊を用いる場合には、詰め物収容部に収容する詰め物の量により、足指の開き具合を調整することができる。
【0032】
更に、上記では挟持部を足指に模した形状とする例を示したが、これに限らず種々の形状とすることができる。また、上記の実施例では粘着層によって第1延出片と第2延出片を足に固定するものとしたが、このような粘着層を設けず、第1延出片及び第2延出片を粘着剤や医療用テープ等を用いて足に固定するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10…外反母趾用装具
11…挟持部
11a…前端部
11b…基部
12…第1延出片
13…第2延出片
14…詰め物収容部
15…開口部
16…粘着層
17…中空部
20…詰め物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性樹脂から成る外反母趾用装具であって、
a)足の親指と人差し指の間に挟持される挟持部と、
b)該挟持部内に設けられた空洞から成る詰め物収容部と、
c)前記挟持部の足指の付け根側の上面から延出し、足の甲の一部を被覆する第1延出片と、
d)前記挟持部の足指の付け根側の下面から延出し、足の裏の一部を被覆する第2延出片と、
を有し、
前記詰め物収容部に詰め物を収容するための開口部が、前記挟持部の足指の付け根側の端面に設けられていることを特徴とする外反母趾用装具。
【請求項2】
前記詰め物収容部が、前記挟持部の足の親指の第1関節よりも付け根側に位置する領域のみに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の外反母趾用装具。
【請求項3】
更に、前記挟持部の足の親指の第1関節よりも先端側に位置する領域に中空部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の外反母趾用装具。
【請求項4】
硬さ、形状、及び寸法のうち少なくともいずれか1つが異なる複数の詰め物を有し、前記詰め物収容部に収容する詰め物を交換することで足の親指と人差し指の開き具合を調節可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の外反母趾用装具。
【請求項5】
更に、前記詰め物収容部に収容可能な複数の詰め物を有し、前記詰め物収容部に収容する詰め物の数によって足指の開き具合を調節可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の外反母趾用装具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−125396(P2012−125396A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279295(P2010−279295)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(597148873)株式会社佐藤技研 (2)
【Fターム(参考)】