説明

多変数伝送器及び伝送器

【課題】 変化する精度情報を伝送器内部で演算する機能を持つようにすると共に、ユーザ側の機器管理ツール或いは携帯設定調整装置は現在の計測値に対する精度情報を通信インターフェースを利用して容易に知ることができるようにした多変数伝送器を提供する。
【解決手段】 多変数伝送器は、プロセスの物理量に関連する複数の変数を入力し、該入力した複数の変数の演算により計測値を求める演算処理手段と、前記演算処理手段の出力を外部に伝送信号として出力する出力手段と、を具備し、通信信号で外部サポートツールと通信可能な多変数伝送器であって、前記演算処理手段には、前記演算処理手段により求められた計測値に対する精度情報を演算する機能を備え、該演算により得られた精度情報は、前記サポートツールのアクセスにより読み出すことができる通信インターフェースを備えたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多変数伝送器に関し、詳しくは変化する精度情報を伝送器内部で演算する機能を持つことにより、ユーザは通信機能で現在の計測値の精度を容易に知ることができるようにした多変数伝送器に関する。
【0002】
また、本発明は、差圧、圧力等の物理量を計測する伝送器に関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術における多変数伝送器において、プロセス制御のフィールド機器として使用される汎用の差圧伝送器を用いた質量流量計等では、直接的な測定対象物理量である差圧を差圧センサで測定すると共に、質量流量演算のための物理量である圧力及び温度を、圧力センサ及び温度センサで測定し、3個の変数による演算処理によって目的の物理量である質量流量を間接的に測定している。
【0004】
図2は、このような多変数伝送器の従来構成を示す機能ブロック図である。測定対象物理量である差圧を測定する差圧センサ11と、この差圧センサ11で測定した測定信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ12と、質量流量演算のための物理量である圧力を測定する圧力センサ13と、この圧力センサ13で測定した測定信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ14と、質量流量演算のための物理量である温度を測定する温度センサ15と、この温度センサ15で測定した測定信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ16と、3個のセンサ11、13、15からのディジタル値に変換された信号を入力して質量流量演算処理するマイクロプロセッサで構成されている演算処理手段17と、設定スパンに対する精度情報を設定する設定/調整スイッチ18と、設定スパンに対する精度情報等を記憶するメモリ19と、演算処理手段17により得られた質量流量信号をアナログ値に変換するD/Aコンバータ20と、このD/Aコンバータ20でアナログ値に変換された電圧値を4−20mA等の電流伝送信号に変換し、外部負荷23と直流電源24の直列回路に供給する出力手段21と、出力手段21に並列に接続され伝送信号に重畳するディジタル通信信号により通信インターフェース22を介して演算処理手段17と通信し、入出力特性が設計値通りであることの確認やレンジ設定等のコンフィギュレーション確認を行う機器管理ツール25と、出力手段21に並列に接続され伝送信号に重畳するディジタル通信信号により通信インターフェース22を介して演算処理手段17と通信し、入出力特性が設計値通りであることの確認や、レンジ設定等のコンフィギュレーション確認を行う携帯設定調整装置26と、から大略構成されている。
【0005】
このような構成の多変数伝送器において、設定スパンに対する精度情報は製品スペックとして下記に示す計算式により計算され、メモリ19に記憶されている。
【0006】
x≧Prefの時 ±0.1%
x<Rrefの時 ±(0.025+0.075×(Pref/x))%
Pref:5kPa
x:レンジの下限値と上限値の絶対値及びスパンの値の中の最大値
【0007】
この製品スペックとしての精度情報は設定スパンに対する精度であり、スパン設定状態において一定値である。
【0008】
【特許文献1】特開2004−85288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来技術で説明した、製品スペックとしての精度情報は、メモリに記憶されているが、その情報をユーザ側の機器管理ツール或いは携帯設定調整装置において、スパン設定を変更した時に、その変更した精度情報をユーザ側の機器管理ツール或いは携帯設定調整装置で容易に知ることができないという問題がある。
又、現在の計測値によって変化する読み値に対する精度情報をユーザ側の機器管理ツール或いは携帯設定調整装置で容易に知ることができないという問題もある。
【0010】
従って、変化する精度情報を伝送器内部で演算する機能を持つようにすると共に、ユーザ側の機器管理ツール或いは携帯設定調整装置は現在の計測値に対する精度情報を通信インターフェースを利用して容易に知ることができるようにした多変数伝送器に解決しなければならない課題を有する。
【0011】
また、本発明の目的は、ユーザが、通信機能を介して、計測値の精度を容易に確認ができる簡便な伝送器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本願発明の多変数伝送器は、次に示す構成にしたことである。
【0013】
(1)多変数伝送器は、プロセスの物理量に関連する複数の変数を入力し、該入力した複数の変数の演算により計測値を求める演算処理手段と、前記演算処理手段の出力を外部に伝送信号として出力する出力手段と、を具備し、通信信号で外部サポートツールと通信可能な多変数伝送器であって、前記演算処理手段には、前記演算処理手段により求められた計測値に対する精度情報を演算する機能を備え、該演算により得られた精度情報は、前記サポートツールのアクセスにより読み出すことができる通信インターフェースを備えたことである。
(2)前記演算された計測値の精度情報は、メモリに記憶するようにしたことを特徴とする(1)に記載の多変数伝送器。
(3)前記計測値の精度情報は、製品スペックとしての精度情報と、読み値に対する精度情報であることを特徴とする(1)に記載の多変数伝送器。
(4)プロセスの物理量を入力し、前記物理量に基づく計測値を出力する伝送器において、前記計測値の精度情報を出力することを特徴とする伝送器。
【発明の効果】
【0014】
本提案によれば、伝送器内部で変化する精度情報を演算する機能を持ち且つその精度情報をメモリに記憶させるようにすると共に、ユーザ側の機器管理ツール或いは携帯設定調整装置は現在の計測値に対する精度情報を通信インターフェースを利用して容易に知ることができるようにしたことで、変化する計測値によって変化する読み値に対する精度情報を簡単に入手することで正確な計測値を得ることが可能になる。
【0015】
また、本発明によれば、ユーザが、通信機能を介して、計測値の精度を容易に確認ができる簡便な伝送器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本願発明に係る差圧・圧力伝送器の実施形態について、図面を参照して以下説明ずる。尚、従来技術で説明したものと同じものには同一符号を付与して説明する。
【0017】
本願発明の多変数伝送器において、従来技術で説明した多変数伝送器と同様に、プロセス制御のフィールド機器として使用される汎用の差圧伝送器を用いた質量流量計等においては、直接的な測定対象物理量である差圧を差圧センサで測定すると共に、質量流量演算のための物理量である圧力及び温度を、圧力センサ及び温度センサで測定し、3個の変数による演算処理によって目的の物理量である質量流量を間接的に測定している。
【0018】
図1は、このような多変数伝送器の構成を示す機能ブロック図である。測定対象物理量である差圧を測定する差圧センサ11と、この差圧センサ11で測定した測定信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ12と、質量流量演算のための物理量である圧力を測定する圧力センサ13と、この圧力センサ13で測定した測定信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ14と、質量流量演算のための物理量である温度を測定する温度センサ15と、この温度センサ15で測定した測定信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ16と、3個のセンサ11、13、15からのディジタル値に変換された信号を入力して質量流量演算処理するマイクロプロセッサで構成されている演算処理手段17と、設定スパンに対する精度情報を設定する設定/調整スイッチ18と、設定スパンに対する精度情報等を記憶するメモリ19と、演算処理手段17により得られた質量流量信号をアナログ値に変換するD/Aコンバータ20と、このD/Aコンバータ20でアナログ値に変換された電圧値を4−20mA等の電流伝送信号に変換し、外部負荷23と直流電源24の直列回路に供給する出力手段21と、出力手段21に並列に接続され伝送信号に重畳するディジタル通信信号により通信インターフェース22を介して演算処理手段17と通信し、入出力特性が設計値通りであることの確認やレンジ設定等のコンフィギュレーション確認を行う機器管理ツール25と、出力手段21に並列に接続され伝送信号に重畳するディジタル通信信号により通信インターフェース22を介して演算処理手段17と通信し、入出力特性が設計値通りであることの確認や、レンジ設定等のコンフィギュレーション確認を行う携帯設定調整装置26と、から大略構成されている。
【0019】
このなかで、機器管理ツール25と携帯設定調整装置26がサポートツールである。
演算処理手段17には、演算処理手段17により求められた計測値に対する精度情報を演算する精度演算機能手段27を備えた構成になっている。
この精度演算機能手段27は、先ず、従来技術で説明した設定スパンに対する精度情報としての製品スペックを下記に示す計算式により計算され、メモリ19に保存する。
【0020】
x≧Prefの時 ±0.1%
x<Rrefの時 ±(0.025+0.075×(Pref/x))%
Pref:5kPa
x:レンジの下限値と上限値の絶対値及びスパンの値の中の最大値
【0021】
次に、読み値に対する精度を次式で計算してメモリ19に保存する。
読み値に対する精度(%)=(δy/y)×100
δy:製品スペック精度から計算する計測値誤差量
y:計測値
【0022】
これらのメモリ19に保存されている製品スペック及び読み値に対する精度情報は、通信インターフェース22を介してサポートツール(携帯設定調整装置26或は機器管理ツール25)のアクセスにより読み出すことができる。
【0023】
一方、これらの精度情報に加えて、計測した差圧値の読み値に対する精度を次式に示す伝送器における質量流量不確かさの計算に用いる差圧不確かさとして質量流量不確かさを計算してメモリ19に保存するようにしてもよい。
【0024】
質量流量不確かさ式
δqm/qm=[(δC/)^2+(δε/ε)^2
+(2×β4/(1−β4)^2×(δD/D)^2
+(2/(1−β4))^2×(δd/d)^2
+(1/4)×(δΔp/Δp)^2
+(1/4)×(δρ/ρ)^2]^(1/2)
δqm/qm:質量流量不確かさ
δC/C :流出係数不確かさ
δε/ε :期待の膨張補正係数不確かさ
δD/D :管孔径不確かさ
δd/d :絞り孔径不確かさ
δΔp/Δp:差圧不確かさ
δρ/ρ :密度不確かさ
【0025】
このようにして演算にして求めた質量流量不確かさに対しても、上記のメモリ19に保存されている製品スペック及び読み値に対する精度情報に加えて、通信インターフェース22を介してサポートツール(携帯設定調整装置26或は機器管理ツール25)のアクセスにより読み出すことができる。
【0026】
このようにして、機器管理ツール25或いは携帯設定調整装置26であるサポートツールにおいて、変化する精度情報を伝送器内部の演算処理手段17に設けた精度演算機能手段27により演算してメモリ19に保存すると共に、通信インターフェース22を介してそのメモリ19に保存されている精度情報を容易に得ることができるのである。
【0027】
また、上述の実施例は、多変数伝送器で形成したが、これとは別に、一般的な伝送器で形成しても同等の作用効果がある。
【0028】
以上のように、本発明は、上述の実施例に限定されることなく、その本質を逸脱しない範囲でさらに多くの変更及び変形を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
伝送器内部の演算処理手段に精度情報を演算する機能を備え、その演算された精度情報をメモリに保存し、通信インターフェースを介してその精度情報をユーザ側のサポートツールで容易に得ることができる多変数伝送器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本願発明の多変数伝送器を略示的に示した機能ブロック図である。
【図2】従来技術における多変数伝送器を略示的に示した機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
11 差圧センサ
12 A/Dコンバータ
13 圧力センサ
14 A/Dコンバータ
15 温度センサ
16 A/Dコンバータ
17 演算処理手段
18 設定/調整スイッチ
19 メモリ
20 D/Aコンバータ
21 出力手段
22 通信インターフェース
23 外部負荷
24 直列電源
25 機器管理ツール(サポートツール)
26 携帯設定調整装置(サポートツール)
27 精度演算機能手段。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスの物理量に関連する複数の変数を入力し、該入力した複数の変数の演算により計測値を求める演算処理手段と、前記演算処理手段の出力を外部に伝送信号として出力する出力手段と、を具備し、通信信号で外部サポートツールと通信可能な多変数伝送器であって、
前記演算処理手段には、前記演算処理手段により求められた計測値に対する精度情報を演算する機能を備え、該演算により得られた精度情報は、前記サポートツールのアクセスにより読み出すことができる通信インターフェースを備えたことを特徴とする多変数伝送器。
【請求項2】
前記演算された計測値の精度情報は、メモリに記憶するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の多変数伝送器。
【請求項3】
前記計測値の精度情報は、製品スペックとしての精度情報と、読み値に対する精度情報であることを特徴とする請求項1に記載の多変数伝送器。
【請求項4】
プロセスの物理量を入力し、前記物理量に基づく計測値を出力する伝送器において、
前記計測値の精度情報を出力することを特徴とする伝送器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−171935(P2006−171935A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360819(P2004−360819)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】