説明

多層プリント配線基板の製造方法

【課題】柔軟性を有するエリアと部品実装可能な剛性を有するエリアとを共に備えると共に、ガラス繊維の繊維屑が残る不具合の発生や、水蒸気破裂の発生を防止することが可能な多層プリント配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】複数枚のフレキシブルプリント配線基材間に、中空部が形成された該接着剤含浸ガラス繊維基布を挟持すると共に、加熱加圧により接着して形成された多層フレキシブルプリント配線原板を、所定形状に切断して、柔軟性を有するフレキシブルエリアと、剛性を有し部品実装可能な剛性エリアとを備える多層プリント配線基板の製造方法を、ガラス繊維基布切除工程(S1)、プリント配線原板形成工程(S2)、第1切断工程(S3)、高圧水洗浄工程(S4)、及び、第2切断工程(S5)を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性を有する剛性エリアと柔軟性を有するフレキシブルエリアとを備えた多層プリント配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層プリント配線基板は、一般に、ガラスエポキシ樹脂板をベースとする複数のプリント配線基板を、該プリント配線基板間に熱硬化性の接着剤を挟んで加熱加圧することにより接着して形成される。このようにして形成されたガラスエポキシ樹脂板をベースとする多層プリント配線基板では、該多層プリント配線基板が電子装置等に組込まれた後に、このプリント配線基板の端面に残るガラス繊維の繊維屑が、電子装置等の筐体内で乖離して不具合の原因となっている。
【0003】
この不具合は、電子装置等の小型化が進んで、多層プリント配線基板のパターンの微細化や実装密度の向上に伴い、大きな問題となっている。そこで、このような不具合を解消すべく、プリント配線基板の製造現場では、ベースの板材から切断して成形されたプリント配線基板を、高圧水洗浄することで、プリント配線基板の端面にガラス繊維の繊維屑が残らないようにしている。又、技術的には、プリント配線基板の端面にガラス繊維の繊維屑が残らないようにするための種々の提案がなされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
ところで、最近、電子装置に、多層プリント配線基板に部分的に柔軟性を備えたフレキシブル多層プリント配線基板が採用されている。このフレキシブル多層プリント配線基板は、柔軟性を有する部分を備えているので、電子装置への装着の自由度が向上することから、特に小型化が要求される電子装置に好都合である。
【0005】
このフレキシブル多層プリント配線基板は、基板のベース材にポリイミド等の柔軟性を有する素材が用いられているが、これらの素材そのものは、ガラス繊維を含まないことから、ガラスエポキシ樹脂板をベースとする多層プリント配線基板で見られるような、プリント配線基板の端面にガラス繊維の繊維屑が残るような不具合は生じない。
【特許文献1】特開平11−145580号公報
【特許文献2】特開2003−31912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フレキシブル多層プリント配線基板に部品を実装するには、この部品を実装する基板のエリアが剛性を有しているのが望ましく、そのため、フレキシブル多層プリント配線基板の剛性エリアを形成する方法として、複数枚のポリイミド等のシートの間に、接着剤含浸ガラス繊維基布を挟持させて加熱加圧により接着して積層する方法が用いられている。
【0007】
この場合、フレキシブル多層プリント配線基板の柔軟性を備える部分には、ポリイミド等のシートの柔軟性をそのまま維持させるために、接着剤含浸ガラス繊維基布は使用せず、そのため、このフレキシブル多層プリント配線基板の柔軟性を備える部分は、複数枚のシートを用いたフレキシブル多層プリント配線基板では、このシート間に中空部が形成される。
【0008】
上記の方法では、接着剤含浸ガラス繊維基布を用いるので、部品実装が可能な剛性を有するエリアを備えることができ、部品の実装に好都合である。しかし、接着剤含浸ガラス繊維基布を用いるので、この接着剤含浸ガラス繊維基布のエッジの部分では、上述したガラスエポキシ樹脂板をベースとしたプリント配線基板と同様の、ガラス繊維の繊維屑が残る不具合が生じる。
【0009】
この場合に、上記のフレキシブル多層プリント配線基板に、上述した高圧水洗浄を用いようとすると、上記のフレキシブル多層プリント配線基板の柔軟性を有する部分に形成されている中空部に水が浸入して、洗浄後に行われる乾燥工程終了後も水分が残り、この多層プリント配線基板に部品を実装する段階で、水蒸気破裂を起こす原因となっていた。
【0010】
そこで、この発明は、このような状況に対処するためになされたものであって、柔軟性を有するエリアと部品実装可能な剛性を有するエリアとを共に備えると共に、ガラス繊維の繊維屑が残る不具合の発生や、水蒸気破裂の発生を防止することが可能な多層プリント配線基板の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の多層プリント配線基板の製造方法は、次のような方法である。即ち、複数枚のフレキシブルプリント配線基材間に、接着剤含浸ガラス繊維基布の一部が切除されて中空部が形成された該接着剤含浸ガラス繊維基布を挟持すると共に、加熱加圧により接着して形成された多層フレキシブルプリント配線原板を、所定形状に切断して、該多層フレキシブルプリント配線原板における接着剤含浸ガラス繊維基布の中空部が形成された部分に、柔軟性を有するフレキシブルエリアが形成され、それ以外の部分に剛性を有し部品実装可能な剛性エリアが形成される多層プリント配線基板を製造する製造方法である。
【0012】
上記の多層プリント配線基板の製造方法は、ガラス繊維基布切除工程、プリント配線原板形成工程、第1切断工程、及び、第2切断工程を、少なくとも備えることを特徴としている。
【0013】
上記のガラス繊維基布切除工程は、接着剤含浸ガラス繊維基布の中空部を構成するエリアが、多層プリント配線基板のフレキシブルエリアの外形線の外側に設けられた仮外形線を有する拡張フレキシブルエリアで構成されるように、接着剤含浸ガラス繊維基布を切除する工程である。
【0014】
プリント配線原板形成工程は、中空部が形成された接着剤含浸ガラス繊維基布をフレキシブルプリント配線基材間に挟持させて構成した多層フレキシブルプリント配線原板の、加熱加圧による接着を、該接着による、中空部の周囲の一部である仮外形線からの接着剤含浸ガラス繊維基布に含浸されている接着剤の染出が、フレキシブルエリアの外形線に至らない範囲となるようにして行う工程である。
【0015】
第1切断工程は、上記の接着剤染出部が形成された多層フレキシブルプリント配線原板を切断して、剛性エリアの外形線と、仮外形線よりも更に外側に設けられた仮切断外形線とで囲まれる仮多層プリント配線基板を形成する工程である。そして、第2切断工程は、仮多層プリント配線基板を更に切断して、フレキシブルエリアの周囲が、該フレキシブルエリアの外形線で囲まれる多層プリント配線基板を形成する工程である。
【0016】
上記の多層プリント配線基板の製造方法によれば、接着剤含浸ガラス繊維基布に含浸されている接着剤が、中空部の周囲の一部である仮外形線からフレキシブルエリアの外形線に至らない範囲に染出て、該範囲の中空部を塞ぎ、該中空部の内部と外部とを遮断する接着剤染出部が該範囲に形成される。そして、この接着剤染出部が形成された多層フレキシブルプリント配線原板を切断することにより、剛性エリアの外形線と、仮外形線よりも更に外側に設けられた仮切断外形線とで囲まれる形状の仮多層プリント配線基板が形成される。
【0017】
そこで、仮多層プリント配線基板の剛性エリアの外形線に沿って切断された部分は、切断面に、接着剤含浸ガラス繊維基布の切断面が露出している。そのため、接着剤含浸ガラス繊維基布の切断面には、ガラス繊維屑が残っている可能性が高いが、このガラス繊維屑は、後述する高圧水洗浄工程を経ることにより除去することが可能である。
【0018】
又、仮多層プリント配線基板のフレキシブルエリアの部分は、仮外形線よりも更に外側に設けられた仮切断外形線により切断されて形成されており、この仮切断外形線の部分から仮外形線にかけてのエリア、即ち、仮切断外形線と仮外形線とで挟まれるエリア(以下、峡間エリアと称する)のフレキシブルプリント配線基材間には、接着剤含浸ガラス繊維基布が挟持されている。そのため、仮多層プリント配線基板のフレキシブルエリアの内部に形成されている中空部は、峡間エリアに存在する接着剤含浸ガラス繊維基布で塞がれて、該中空部の内部と外部とが遮断されている。
【0019】
従って、上記の仮多層プリント配線基板を後述する高圧水洗浄工程で高圧水洗浄しても、仮多層プリント配線基板のフレキシブルエリアの内部に形成されている中空部に、洗浄水が浸入するのを防止することができる。
【0020】
又、上記の仮多層プリント配線基板を更に切断して、フレキシブルエリアの周囲が、該フレキシブルエリアの外形線で囲まれる多層プリント配線基板を形成するが、この多層プリント配線基板のフレキシブルエリアの部分は、本来のフレキシブルエリアの外形線により切断されて形成されている。このフレキシブルエリアの外形線には、接着剤含浸ガラス繊維基布に含浸された接着剤の染出が及んでいない。そのため、最終製品としての多層プリント配線基板のフレキシブルエリアは、フレキシブルプリント配線基材のみで形成され、フレキシブルプリント配線基材の有する柔軟性をそのまま備えることになる。
【0021】
従って、この多層プリント配線基板の製造方法によれば、柔軟性を有するエリアと部品実装可能な剛性を有するエリアとを共に備えると共に、ガラス繊維の繊維屑が残る不具合の発生や、水蒸気破裂の発生を防止することが可能な多層プリント配線基板を製造することができる。
【0022】
上記の多層プリント配線基板の製造方法において、第1切断工程と第2切断工程との間に、上述したような、仮多層プリント配線基板を高圧水洗浄する高圧水洗浄工程を設けるのが好ましい。
【0023】
このようにすることにより、上述したように、仮多層プリント配線基板の剛性エリアの外形線に沿って切断された部分に残留している可能性の高い繊維屑を除去することができる。又、上述したように、仮多層プリント配線基板のフレキシブルエリアの内部に形成されている中空部は、上記の峡間エリアに存在する接着剤含浸ガラス繊維基布で塞がれて、該中空部の内部と外部とが遮断されている。そのため、上記の高圧水洗浄工程で、仮多層プリント配線基板のフレキシブルエリアの内部に形成されている中空部に、洗浄水が浸入するのを防止することができる。従って、この多層プリント配線基板の製造方法によれば、ガラス繊維の繊維屑が残る不具合の発生や、水蒸気破裂の発生を防止することが可能な多層プリント配線基板を製造することができる。
【0024】
上記の多層プリント配線基板の製造方法では、第1切断工程における切断で、フレキシブルエリアの仮外形線よりも更に外側に設けられた仮切断外形線で切断されて、仮多層プリント配線基板が形成される。そこで、この仮多層プリント配線基板では、上述したように、仮外形線と仮切断外形線とで挟まれるエリアである上記の峡間エリアでは、フレキシブルプリント配線基材間に、接着剤含浸ガラス繊維基布が挟持されている。この状態の仮多層プリント配線基板が、第2切断工程における切断で、仮外形線の内側に位置する本来のフレキシブルエリアの外形線で切断されて、最終製品としての多層プリント配線基板が形成されることになる。
【0025】
そこで、この第2切断工程における切断で、本来のフレキシブルエリアの外形線で切断して最終製品としての多層プリント配線基板を形成するためには、この第2切断工程における切断の際に、本来のフレキシブルエリアの外形線のみならず、この本来のフレキシブルエリアの外形線に連なる剛性エリアの外形線、即ち、上記の峡間エリアと剛性エリアとの境界線である峡間エリア境界線に沿って切断しなければならない。この峡間エリア境界線の切断は、フレキシブルプリント配線基材間に接着剤含浸ガラス繊維基布が挟持されているエリアを切断することになるので、この切断面に接着剤含浸ガラス繊維基布の切断面が露出し、この切断により切断された部分に繊維屑が残留する可能性がある。
【0026】
しかし、この繊維屑を除去しようとして高圧水洗浄を行おうとしても、この第2切断工程を終了した段階では、フレキシブルエリアの中空部に洗浄水が浸入する恐れがあるので、高圧水洗浄を行うことはできず、上記の繊維屑はそのまま残留することになる。そこで、このような状態を回避するために、上記の多層プリント配線基板の製造方法において、更に、次のような処理を追加するのが好ましい。
【0027】
即ち、ガラス繊維基布切除工程において、拡張フレキシブルエリア及び剛性エリアに隣接するようにして、仮外形線から所定幅で所定距離外側に向かって伸びる拡張エリアを形成すると共に、該拡張エリアを拡張フレキシブルエリアに加えた再拡張フレキシブルエリアが、接着剤含浸ガラス繊維基布の中空部を構成するエリアとなるように、接着剤含浸ガラス繊維基布を切除する。
【0028】
又、プリント配線原板形成工程において、拡張エリアに接着剤含浸ガラス繊維基布に含浸されている接着剤を染出させて、該拡張エリアに該拡張エリアの中空部を塞ぐ接着剤染出部を形成する。そして、第1切断工程において、仮切断外形線が、拡張エリアの略中央部を仮外形線に略平行に横断するように切断して、仮多層プリント配線基板を形成するようにするのである。
【0029】
上記のようにすることにより、本来のフレキシブルエリアの外形線に連なる剛性エリアの外形線に沿って、拡張エリアが形成され、この拡張エリアでは、フレキシブルプリント配線基材間に接着剤含浸ガラス繊維基布が挟持されず中空部が形成されると共に、この中空部に接着剤含浸ガラス繊維基布に含浸されている接着剤が染出して、この中空部を塞ぎ接着剤染出部が形成される。
【0030】
又、第1切断工程において、仮切断外形線が、この拡張エリアの略中央部を仮外形線に略平行に横断するように切断して、仮多層プリント配線基板を形成するので、この仮多層プリント配線基板では、剛性エリアは峡間エリアとの間に拡張エリアが残っている。この残っている拡張エリアには、接着剤含浸ガラス繊維基布は存在せず、接着剤含浸ガラス繊維基布に含浸されている接着剤が染出して形成された接着剤染出部が、存在するのみである。
【0031】
そこで、仮多層プリント配線基板が、第2切断工程における切断で、仮外形線の内側に位置する本来のフレキシブルエリアの外形線で切断される際の、本来のフレキシブルエリアの外形線と連なる部分の剛性エリアの外形線の切断は、拡張エリアと剛性エリアとの境界線である峡間エリア境界線に沿って行われるが、拡張エリアには接着剤含浸ガラス繊維基布は存在しないことから、第2切断工程における切断では、切断された部分に繊維屑が残留するのを回避することができる。
【0032】
従って、この多層プリント配線基板の製造方法によれば、ガラス繊維の繊維屑が残る不具合の発生を更に確実に防止することが可能な多層プリント配線基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、柔軟性を有するエリアと部品実装可能な剛性を有するエリアとを共に備えると共に、ガラス繊維の繊維屑が残る不具合の発生や、水蒸気破裂の発生を防止することが可能な多層プリント配線基板を製造する多層プリント配線基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
<実施の形態1>
以下、本発明の実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図1(a)は、実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法により製造される多層プリント配線基板1の平面図、図1(b)は、図1(a)の、X−X断面図である。
【0035】
この多層プリント配線基板1は、剛性を有し部品実装が可能な剛性エリア11と、順軟性を有するフレキシブルエリア12とを備えている。剛性エリア11は、2箇所に分かれており、各剛性エリア11は平面視正方形状をしていると共に、この2つの各剛性エリア11の間に、各剛性エリア11の1辺よりも短い幅の帯状のフレキシブルエリア12が形成されている。
【0036】
上記の多層プリント配線基板1は、ポリイミド等の柔軟性を備えたシート状の2枚のフレキシブルプリント配線基材2,4の間に、剛性エリア11の部分のみ、エポキシ系の樹脂でなる接着剤を含浸させた接着剤含浸ガラス繊維基布3を挟持させて加熱加圧により接着して形成され、フレキシブルエリア12の2枚のフレキシブルプリント配線基材2,4の間は、中空部10が形成されている。そのため、上述したように、多層プリント配線基板1の剛性エリア11は、剛性を備えると共に、多層プリント配線基板1のフレキシブルエリア12は、柔軟性を備えている。
【0037】
上記の多層プリント配線基板1において、図1には図示されていないが、フレキシブルプリント配線基材2,4の剛性エリア11の表裏の各表面には、銅箔でなる配線パターンが形成されると共に、フレキシブルプリント配線基材2の表裏、或いは、フレキシブルプリント配線基材4の表裏を接続するVIAや、フレキシブルプリント配線基材2の表裏とフレキシブルプリント配線基材4の表裏とを接続するスルホール等が、設けられている。
【0038】
次に、上記の多層プリント配線基板1の実施の形態1における製造方法について説明する。尚、上記の多層プリント配線基板1は、上述したように、2枚のフレキシブルプリント配線基材2,4の間に接着剤含浸ガラス繊維基布3を挟持した構造である。即ち、上記の多層プリント配線基板1は、2枚のフレキシブルプリント配線基材2,4と、このフレキシブルプリント配線基材2,4の間に挟まれた接着剤含浸ガラス繊維基布3とを、重ね合わせて形成した多層フレキシブルプリント配線原板5から、所定形状の多層プリント配線基板1が切り出されることにより形成される。
【0039】
そこで、本明細書の実施の形態における説明では、上記の多層プリント配線基板1が切り出される前の、フレキシブルプリント配線基材2,4及び接着剤含浸ガラス繊維基布3において、切り出されると上記の多層プリント配線基板1の各部分となる部分の切り出し前における名称は、切り出された後の上記の多層プリント配線基板1の各部分の名称と同じ名称を用いる。
【0040】
例えば、フレキシブルプリント配線基材2,4において、切り出されると多層プリント配線基板1の剛性エリア11となる部分の切り出し前の名称を、フレキシブルプリント配線基材2,4の剛性エリア11と称し、同じく、切り出されると多層プリント配線基板1のフレキシブルエリア12となる部分の切り出し前の名称を、フレキシブルプリント配線基材2,4のフレキシブルエリア12と称する。又、接着剤含浸ガラス繊維基布3において、切り出されると多層プリント配線基板1の剛性エリア11となる部分の切り出し前の名称を、接着剤含浸ガラス繊維基布3の剛性エリア11と称し、同じく、切り出されると多層プリント配線基板1のフレキシブルエリア12となる部分の切り出し前の名称を、接着剤含浸ガラス繊維基布3のフレキシブルエリア12と称する。
【0041】
又、フレキシブルプリント配線基材2,4、又は、接着剤含浸ガラス繊維基布3のいずれか一方の個別のエリアに対して付された名称は、そのエリアと重なる同じ位置の他方のエリアの名称にも用いる。例えば、接着剤含浸ガラス繊維基布3の個別のエリアに付された拡張フレキシブルエリアの名称は、この接着剤含浸ガラス繊維基布3の拡張フレキシブルエリアと重なる同じ位置のフレキシブルプリント配線基材2,4のエリアの名称にも用い、フレキシブルプリント配線基材2,4のこのエリアを、フレキシブルプリント配線基材2,4の拡張フレキシブルエリアと称する。上述した各対処は、線分の名称についても同様とする。
【0042】
図2は、実施の形態1における多層プリント配線基板1の製造方法を示したフローチャートである。図2において、実施の形態1における多層プリント配線基板1の製造方法は、ガラス繊維基布切除工程(S1)、プリント配線原板形成工程(S2)、第1切断工程(S3)、高圧水洗浄工程(S4)、及び、第2切断工程(S5)で構成される。
【0043】
これらの工程の概要を説明すると、上記のガラス繊維基布切除工程(S1)では、接着剤含浸ガラス繊維基布3の切断加工が行われ、プリント配線原板形成工程(S2)では、この加工済みの接着剤含浸ガラス繊維基布3を用いて多層フレキシブルプリント配線原板5が形成され、第1切断工程(S3)では、この多層フレキシブルプリント配線原板5から仮多層プリント配線基板6が形成され、高圧水洗浄工程(S4)の後、第2切断工程(S5)では、この仮多層プリント配線基板6から最終製品の多層プリント配線基板1が形成される。
【0044】
実施の形態1における多層プリント配線基板1の製造方法では、上述したように、上記の多層プリント配線基板1は、2枚のフレキシブルプリント配線基材2,4を、該フレキシブルプリント配線基材2,4間に接着剤含浸ガラス繊維基布3を挟持して、加熱加圧により接着し積層して形成した多層フレキシブルプリント配線原板5を、所定形状に切断して形成される。
【0045】
図3は、この実施の形態1における多層プリント配線基板1の製造方法で形成される多層フレキシブルプリント配線原板5の構成を示した分解斜視図である。この分解斜視図に示す該フレキシブルプリント配線基材2,4、及び、接着剤含浸ガラス繊維基布3には、剛性エリアの外形線21やフレキシブルエリアの外形線22等が、点線で表示されている。又、図4〜図7は、製造途中の多層フレキシブルプリント配線原板5や仮多層プリント配線基板6の平面図であり、この内、図4、図5は、上側のフレキシブルプリント配線基材2を外した状態を示し、図6、図7は、フレキシブルプリント配線基材2を外さない状態を示している。
【0046】
図3〜図7には図示されていないが、実際には、上述したように、フレキシブルプリント配線基材2,4の剛性エリア11の表裏の各表面には、銅箔でなる配線パターンが形成されると共に、フレキシブルプリント配線基材2の表裏、或いは、フレキシブルプリント配線基材4の表裏を接続するVIAや、フレキシブルプリント配線基材2の表裏とフレキシブルプリント配線基材4の表裏とを接続するスルホール等が、設けられている。
【0047】
次に、実施の形態1における多層プリント配線基板1の製造方法について、更に詳しく説明する。まず、最初に、ガラス繊維基布切除工程(S1)が実行される。このガラス繊維基布切除工程(S1)では、接着剤含浸ガラス繊維基布3から拡張フレキシブルエリア31が切除される。図3には、拡張フレキシブルエリア31が切除された接着剤含浸ガラス繊維基布3が示されている。この拡張フレキシブルエリア31の切除された接着剤含浸ガラス繊維基布3は、その表面を上から見ると、図4に示す形状をしており、斜線で示す部分が切除された拡張フレキシブルエリア31である。この拡張フレキシブルエリア31の切除により、接着剤含浸ガラス繊維基布3には、中空部10が形成される。
【0048】
上記の拡張フレキシブルエリア31は、剛性エリア11とフレキシブルエリア12との境界線23、第1仮外形線24、及び、境界線23と連なる剛性エリアの外形線21で囲まれている。この内、第1仮外形線24は、フレキシブルエリアの外形線22から一定距離L1外側に離れている。即ち、第1仮外形線24は、フレキシブルエリアの外形線22の外側に設けられている。この第1仮外形線24が、前述の「フレキシブルエリアの外形線の外側に設けられた仮外形線」に相当する。上記の一定距離L1については後述する。
【0049】
次に、プリント配線原板形成工程(S2)が実行される。このプリント配線原板形成工程(S2)では、中空部10が形成された接着剤含浸ガラス繊維基布3を2枚のフレキシブルプリント配線基材2,4の間に挟んで、多層フレキシブルプリント配線原板5を構成し、この多層フレキシブルプリント配線原板5を加熱加圧により接着する。この多層フレキシブルプリント配線原板5には、内部に中空部10が存在している。
【0050】
接着された多層フレキシブルプリント配線原板5では、図5に斜線で示すように、接着剤含浸ガラス繊維基布3に含浸されている接着剤が、上記の中空部10の内部に染出す。この染出において、第1仮外形線24に沿って生じる染出は、この第1仮外形線24から内側の部分で、フレキシブルエリアの外形線22に至らない範囲である接着剤染出範囲33に染出す。そして、中空部10のこの接着剤染出範囲33の部分がこの染出した接着剤で塞がれることにより、接着剤染出範囲33に接着剤染出部が形成される。
【0051】
上述した一定距離L1は、この接着剤含浸ガラス繊維基布3に含浸されている接着剤が、中空部10の内部で、第1仮外形線24からフレキシブルエリアの外形線に向かって、この外形線に至らない範囲である接着剤染出範囲33に染出して、接着剤染出部が形成されるような値とする。この値は、一般的には、0.6mm〜1.5mm程度である。
【0052】
次に、第1切断工程(S3)が実行される。この第1切断工程(S3)では、図6に示すように、多層フレキシブルプリント配線原板5を切断することにより、仮多層プリント配線基板6を多層フレキシブルプリント配線原板5から切り出す。図6の左下がりの斜線の部分が、切り出しにより形成される仮多層プリント配線基板6である。この切断により形成される仮多層プリント配線基板6は、剛性エリアの外形線21、及び、仮切断外形線27で囲まれた形状をしている。この内、仮切断外形線27は、第1仮外形線24から一定距離L4外側に離れた位置に設けられている。即ち、仮切断外形線27は、第1仮外形線24よりも更に外側に設けられている。この、仮切断外形線27が、前述の、「仮外形線(第1仮外形線24)よりも更に外側に設けられた仮切断外形線」に相当する。上記の一定距離L4は、上述した一定距離L1の半分程度とする。
【0053】
上記の多層フレキシブルプリント配線原板5から仮多層プリント配線基板6を切離す切断は、剛性エリアの外形線21、及び、仮切断外形線27で囲まれる形状で切断される。従って、剛性エリアの外形線21に沿って切断された部分は、切断面に、接着剤含浸ガラス繊維基布3の切断面が露出している。そのため、この接着剤含浸ガラス繊維基布3の切断面には、ガラス繊維屑が残留している可能性があるが、このガラス繊維屑は、後述する高圧水洗浄工程(S4)における高圧水洗浄により除去される。
【0054】
又、仮多層プリント配線基板6のフレキシブルエリア12が存在する部分は、上述したように、第1仮外形線24よりも更に外側に設けられた仮切断外形線27により切断されて形成されており、この仮切断外形線27の部分から第1仮外形線24にかけてのエリア、即ち、仮切断外形線27と第1仮外形線24とで挟まれるエリアである、図6に右下がりの斜線で示す、峡間エリア35では、この峡間エリア35におけるフレキシブルプリント配線基材2,4間に、接着剤含浸ガラス繊維基布3が挟持されている。又、第1仮外形線24に沿ってこの第1仮外形線24から内側の部分でフレキシブルエリアの外形線22に至らない範囲である接着剤染出範囲33に、接着剤含浸ガラス繊維基布3に含浸されている接着剤が染出して、接着剤染出部が形成されている。
【0055】
次に、高圧水洗浄工程(S4)が実行される。この高圧水洗浄工程(S4)では、第1切断工程(S3)で多層フレキシブルプリント配線原板5から切離された仮多層プリント配線基板6を高圧水洗浄する。この高圧水洗浄により、仮多層プリント配線基板6の剛性エリアの外形線21の切断面に残っているガラス繊維屑が除去される。
【0056】
この仮多層プリント配線基板6では、上述したように、仮多層プリント配線基板6のフレキシブルエリア12の内部に形成されている中空部10は、上記の峡間エリア35に存在する接着剤含浸ガラス繊維基布3で塞がれて、該中空部10の内部と外部とが遮断されている。そこで、高圧水洗浄工程(S4)で、高圧水洗浄が行われても、仮多層プリント配線基板6の内部に形成されている上記の中空部10に洗浄水が浸入することはない。即ち、仮多層プリント配線基板6の内部に形成されている中空部10に、洗浄水が浸入するのを防止することができる。
【0057】
次に、第2切断工程(S5)が実行される。この第2切断工程(S5)では、図7に示すように、高圧水洗浄工程(S4)で洗浄された仮多層プリント配線基板6の一部を切断して、最終製品の多層プリント配線基板1を形成する。即ち、仮多層プリント配線基板6から、フレキシブルエリアの外形線22、境界線23と連なる剛性エリアの外形線21、及び、仮切断外形線27で囲まれる切断除去エリア34が、切断により除去されて、多層プリント配線基板1が完成する。図7に左下がりの斜線で示される部分が切断除去エリア34である。又、図7に右下がりの斜線で示される部分は、峡間エリア35を示している。
【0058】
この切断除去エリア34の切断は、フレキシブルエリアの外形線22に沿ってなされるが、このフレキシブルエリアの外形線22の部分には、前述したように、接着剤含浸ガラス繊維基布3に含浸されている接着剤の染出しは及んでいないので(図5参照)、第2切断工程(S5)で形成される最終製品の多層プリント配線基板1のフレキシブルエリア12には、接着剤含浸ガラス繊維基布3も存在せず、又、接着剤含浸ガラス繊維基布3に含浸されている接着剤の染出しも存在しない。従って、多層プリント配線基板1のフレキシブルエリア12は、フレキシブルプリント配線基材2,4のみで形成され、フレキシブルプリント配線基材2,4の有する柔軟性をそのまま備えることになる。
【0059】
上記の多層プリント配線基板の製造方法によれば、仮多層プリント配線基板6のフレキシブルエリア12の内部に形成されている中空部10は、上記の峡間エリア35に存在する接着剤含浸ガラス繊維基布3で塞がれて、該中空部10の内部と外部とが遮断されている。又、接着剤含浸ガラス繊維基布3に含浸されている接着剤が、中空部10の周囲の一部である第1仮外形線24からフレキシブルエリアの外形線22に至らない範囲である接着剤染出範囲33に染出て、該範囲33の中空部10を塞ぎ、該中空部10の内部と外部とを遮断する接着剤染出部が該範囲33に形成される。そして、この多層フレキシブルプリント配線原板5を切断することにより、剛性エリアの外形線21と、第1仮外形線24よりも更に外側に設けられた仮切断外形線27とで囲まれる形状の仮多層プリント配線基板6が形成される。
【0060】
そこで、この仮多層プリント配線基板6の剛性エリアの外形線21に沿って切断された部分は、切断面に、接着剤含浸ガラス繊維基布3の切断面が露出しており、この接着剤含浸ガラス繊維基布3の切断面には、ガラス繊維屑が残っている可能性があるが、このガラス繊維屑は、高圧水洗浄工程(S4)における高圧水洗浄により除去することができる。
【0061】
又、仮多層プリント配線基板6のフレキシブルエリア12の内部に形成されている中空部10は、上記の峡間エリア35に存在する接着剤含浸ガラス繊維基布3で塞がれて、該中空部10の内部と外部とが遮断されている。従って、仮多層プリント配線基板6を高圧水洗浄しても、仮多層プリント配線基板6のフレキシブルエリア12の内部に形成されている中空部10に、洗浄水が浸入するのを防止することができる。
【0062】
又、上記の仮多層プリント配線基板6を更に切断して、フレキシブルエリア12の周囲が、該フレキシブルエリアの外形線で囲まれる多層プリント配線基板1を形成するが、この多層プリント配線基板1のフレキシブルエリア12の部分は、本来のフレキシブルエリアの外形線22により切断されて形成されている。このフレキシブルエリアの外形線22には、接着剤含浸ガラス繊維基布3に含浸された接着剤の染出が及んでおらず、接着剤染出部は形成されていない。そのため、最終製品としての多層プリント配線基板1のフレキシブルエリア12は、フレキシブルプリント配線基材2,4のみで形成され、フレキシブルプリント配線基材2,4の有する柔軟性をそのまま備えることになる。
【0063】
従って、上記の多層プリント配線基板の製造方法によれば、柔軟性を有するエリアと部品実装可能な剛性を有するエリアとを共に備えると共に、ガラス繊維の繊維屑が残る不具合の発生や、水蒸気破裂の発生を防止することが可能な多層プリント配線基板を製造することができる。
【0064】
<実施の形態2>
上記の実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法では、図8に示すように、第1切断工程(S3)における切断で、フレキシブルエリア12の第1仮外形線24よりも更に外側に設けられた仮切断外形線27で切断されて、仮多層プリント配線基板6が形成される。そこで、この仮多層プリント配線基板6では、上述したように、第1仮外形線24と仮切断外形線27とで挟まれるエリアである、図8に右下がりの点線斜線で示す、峡間エリア35では、この峡間エリア35のフレキシブルプリント配線基材2,4間に、接着剤含浸ガラス繊維基布3が挟持されている。この状態の仮多層プリント配線基板6が、第2切断工程(S5)における切断で、第1仮外形線24の内側に位置する本来のフレキシブルエリアの外形線22で切断されて、最終製品としての多層プリント配線基板1が形成される。
【0065】
そのため、この第2切断工程(S5)における切断で、本来のフレキシブルエリアの外形線22で切断して最終製品としての多層プリント配線基板1を形成するために、図8に左下がりの実斜線で示す、切断除去エリア34が切断されて除去される。この第2切断工程(S5)における切断の際に、図8において、本来のフレキシブルエリアの外形線22のみならず、この本来のフレキシブルエリアの外形線22に連なる剛性エリアの外形線21、即ち、上記の峡間エリア35と剛性エリア11との境界線である峡間エリア境界線28に沿って切断しなければならない。この峡間エリア境界線28の切断は、フレキシブルプリント配線基材2,4間に接着剤含浸ガラス繊維基布3が挟持されているエリアを切断することになるので、この峡間エリア境界線28の切断面に接着剤含浸ガラス繊維基布3の切断面が露出し、この切断により切断された部分に繊維屑が残留する可能性がある。
【0066】
しかし、この繊維屑を除去しようとして高圧水洗浄を行おうとしても、この第2切断工程(S5)を終了した段階では、フレキシブルエリア12の中空部10に洗浄水が浸入する恐れがあるので、高圧水洗浄を行うことはできず、上記の繊維屑はそのまま残留することになる。そこで、このような状態を回避するための対策を施したのが、実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法である。
【0067】
この実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法で製造される多層プリント配線基板は、実施の形態1の多層プリント配線基板の製造方法で製造される、図1に示す多層プリント配線基板1と、外観や寸法が全く同じである。又、この実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法は、上記の対策を実現するために、実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法に、後述する処理を追加したものである。
【0068】
図9〜図12は、この実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法で製造される、製造途中の多層フレキシブルプリント配線原板5や仮多層プリント配線基板6の平面図であり、この内、図9、図10は、上側のフレキシブルプリント配線基材2を外した状態を示し、図11、図12は、フレキシブルプリント配線基材2を外さない状態を示している。
【0069】
上述した追加処理の具体的内容は、以下に示す、3つである。まず、第1に、実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法のガラス繊維基布切除工程(S1)において、図9に示すように、接着剤含浸ガラス繊維基布3の中空部10を構成するエリアとして、図9に左下がりの斜線で示す拡張フレキシブルエリア31のほか、図9に右下がりの斜線で示す拡張エリア32を追加し、この拡張エリア32を拡張フレキシブルエリア31に加えた再拡張フレキシブルエリアが、接着剤含浸ガラス繊維基布3の中空部10を構成するエリアとなるように、接着剤含浸ガラス繊維基布3を切除する。上記の拡張エリア32は、図9に示すように、拡張フレキシブルエリア31及び剛性エリア11に隣接するようにして、第1仮外形線24から所定幅L3で所定距離L2外側に向かって伸びるようにして形成する。この所定距離L2、及び、所定幅L3については後述する。
【0070】
第2に、実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法のプリント配線原板形成工程(S2)において、図10に斜線で示すように、上記の拡張エリア32に接着剤含浸ガラス繊維基布3に含浸されている接着剤を染出させて、該拡張エリア32に該拡張エリア32の中空部10を塞ぐ接着剤染出部を形成する。上記の所定距離L2、及び、所定幅L3は、拡張エリア32に、接着剤含浸ガラス繊維基布3に含浸されている接着剤が染出して、該拡張エリア32の中空部10が塞がれる接着剤染出部が該拡張エリア32に形成されるような値とする。この所定距離L2の値は、3mm〜5mm、所定幅L3の値は、0.6mm〜1.5mm程度である。
【0071】
そして、第3に、実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法の第1切断工程(S3)において、図11に示すように、仮切断外形線27が、拡張エリア32の略中央部を第1仮外形線24に略平行に横断するように切断して、仮多層プリント配線基板6を形成するようにする。従って、図11及び図12に示す、実施の形態2における仮切断外形線27と、第1仮外形線24との距離L4は、上記の所定距離L2の半分程度であり、一般的には、1.5mm〜2.5mm程度である。
【0072】
上記の第1切断工程(S3)により形成される仮多層プリント配線基板6は、図11において、斜線で示す部分である。そして、この仮多層プリント配線基板6から、更に、第2切断工程(S5)により、図12に斜線で示す切断除去エリア34を切断除去して、最終製品の多層プリント配線基板1を形成する。
【0073】
上記の実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法によれば、図13において、本来のフレキシブルエリアの外形線22に連なる剛性エリアの外形線21に沿って、、図13に右下がりの実斜線で示す拡張エリア32が形成され、この拡張エリア32では、フレキシブルプリント配線基材2,4間に接着剤含浸ガラス繊維基布3が挟持されず中空部10が形成されると共に、この中空部10に接着剤含浸ガラス繊維基布3に含浸されている接着剤が染出して、この中空部10を塞ぎ接着剤染出部が形成される。
【0074】
又、第1切断工程(S3)において、図13に左下がりの実斜線で示す切断除去エリア34の切除の際に、仮切断外形線27が、上記の拡張エリア32の略中央部を仮外形線24に略平行に横断するように切断して、仮多層プリント配線基板6を形成するので、この仮多層プリント配線基板6では、剛性エリア11は、図13に右下がりの点線斜線で示す峡間エリア35との間に、拡張エリア32が残っている。この残っている拡張エリア32には、接着剤含浸ガラス繊維基布3は存在せず、接着剤含浸ガラス繊維基布3に含浸されている接着剤が染出して形成された接着剤染出部が、存在するのみである。
【0075】
そこで、仮多層プリント配線基板6が、第2切断工程(S5)における切断で、第1仮外形線24の内側に位置する本来のフレキシブルエリアの外形線22で切断される際に、本来のフレキシブルエリアの外形線22と連なる部分の剛性エリアの外形線21の切断は、拡張エリア32と剛性エリア11との境界線である峡間エリア境界線28に沿って行われるが、拡張エリア32には接着剤含浸ガラス繊維基布3は存在しないことから、第2切断工程(S5)における切断では、切断された部分に繊維屑が残留するのを回避することができる。
【0076】
従って、上記の実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法によれば、ガラス繊維の繊維屑が残る不具合の発生を更に確実に防止することが可能な多層プリント配線基板を製造することができる。
【0077】
上述した実施の形態1、又は、実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法では、図1に示す2枚のフレキシブルプリント配線基材2,4の間に、接着剤含浸ガラス繊維基布3を1枚挟持した構造の多層プリント配線基板1を、製造対象としているが、この多層プリント配線基板1に代えて、他の構造の多層プリント配線基板を製造対象とすることもできる。
【0078】
例えば、厚さの異なる接着剤含浸ガラス繊維基布の中から、製造する多層プリント配線基板の厚さに応じて、選ばれた最適な厚さの接着剤含浸ガラス繊維基布を用いた多層プリント配線基板を製造対象とする。或いは、製造する多層プリント配線基板の厚さに応じて、枚数の異なる複数の接着剤含浸ガラス繊維基布を重ねて使用した多層プリント配線基板を製造対象とするのである。
【0079】
これらの多層プリント配線基板の製造方法は、上述した実施の形態1、又は、実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法において、接着剤含浸ガラス繊維基布3に代えて、厚さの異なる接着剤含浸ガラス繊維基布を用いたり、枚数の異なる複数枚の接着剤含浸ガラス繊維基布を用いたりすればよい。
【0080】
又、そのほかの例として、図14に示すような多層プリント配線基板1aを製造対象とすることもできる。図14(a)は、この多層プリント配線基板1aの平面図、図14(b)は、図14(a)のY−Y断面図を示したものである。
【0081】
この多層プリント配線基板1aは、実施の形態1、又は、実施の形態2における多層プリント配線基板1の接着剤含浸ガラス繊維基布3に代えて、ガラスエポキシやポリイミド等で形成された1枚の中間材7を、2枚の接着剤含浸ガラス繊維基布3で狭持すると共に接着して形成する中間基材8を使用して、製造する。即ち、多層プリント配線基板1aは、この中間基材8を2枚のフレキシブルプリント配線基材2,4で狭持した構造をしている。
【0082】
この多層プリント配線基板1aの製造は、上述したように、接着剤含浸ガラス繊維基布3に代えて、中間基材8を使用して行うので、この多層プリント配線基板1aの製造方法としては、上述した実施の形態1、又は、実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法の、ガラス繊維基布切除工程(S1)、プリント配線原板形成工程(S2)、第1切断工程(S3)、高圧水洗浄工程(S4)、及び、第2切断工程(S5)の各工程において、接着剤含浸ガラス繊維基布3を中間基材8に置き換えたものである。
【0083】
従って、例えば、ガラス繊維基布切除工程(S1)における接着剤含浸ガラス繊維基布3の切断加工では、接着剤含浸ガラス繊維基布3に対するのと同じ加工が、中間基材8に対しても行われるので、中間基材8には、実施の形態1、又は、実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法で接着剤含浸ガラス繊維基布3に形成されるのと同じ形状の中空部10が形成される。
【0084】
この中空部10が形成されている中間基材8を製造する方法としては、上記のように、先に、中間材7を、2枚の接着剤含浸ガラス繊維基布3で狭持し、接着して中間基材8を形成した後に切除加工を施す方法のほか、先に、中間材7及び接着剤含浸ガラス繊維基布のそれぞれに切除加工を施した後、これらを接着して中間基材8を形成するようにしてもよい。
【0085】
多層プリント配線板の製造方法として、上記のような製造方法を用いることにより、実施の形態1、又は、実施の形態2における多層プリント配線板の製造方法と比較して、製造される多層プリント配線板に対して、この多層プリント配線板の部品実装可能な剛性エリアの剛性を更に高めることができる。或いは、多層プリント配線板の厚みを調整することが可能な多層プリント配線板の製造方法を提供することができる。
【0086】
上記の各実施の形態における説明では、多層プリント配線基板として、2枚のフレキシブルプリント配線基材2,4の間に接着剤含浸ガラス繊維基布3を挟持した構造の多層プリント配線基板を用いており、この多層プリント配線基板は、いわゆる4層基板である。しかし、本発明の多層プリント配線基板の製造方法の製造対象となる多層プリント配線基板は、これには限られず、3層基板や、5層以上の基板も製造対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】(a)は、実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法により製造される多層プリント配線基板の平面図、(b)は、(a)の、X−X断面図である。
【図2】実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法を示したフローチャートである。
【図3】実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法により製造される多層フレキシブルプリント配線原板の構成を示した分解斜視図である。
【図4】実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法による製造途中の多層フレキシブルプリント配線原板の平面図(その1)である。
【図5】実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法による製造途中の多層フレキシブルプリント配線原板の平面図(その2)である。
【図6】実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法による製造途中の仮多層プリント配線基板の平面図(その1)である。
【図7】実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法による製造途中の仮多層プリント配線基板の平面図(その2)である。
【図8】実施の形態1における多層プリント配線基板の製造方法による製造途中の多層フレキシブルプリント配線原板の部分拡大図である。
【図9】実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法による製造途中の多層フレキシブルプリント配線原板の平面図(その1)である。
【図10】実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法による製造途中の多層フレキシブルプリント配線原板の平面図(その2)である。
【図11】実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法による製造途中の仮多層プリント配線基板の平面図(その1)である。
【図12】実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法による製造途中の仮多層プリント配線基板の平面図(その2)である。
【図13】実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法による製造途中の多層フレキシブルプリント配線原板の部分拡大図である。
【図14】(a)は、実施の形態1又は、実施の形態2における多層プリント配線基板の製造方法により製造される他の例の多層プリント配線基板の平面図、(b)は、(a)の、Y−Y断面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 多層プリント配線基板
1a 多層プリント配線基板
2 フレキシブルプリント配線基材
3 接着剤含浸ガラス繊維基布
4 フレキシブルプリント配線基材
5 多層フレキシブルプリント配線原板
6 仮多層プリント配線基板
7 中間材
8 中間基材
10 中空部
11 剛性エリア
12 フレキシブルエリア
21 剛性エリアの外形線
22 フレキシブルエリアの外形線
23 境界線
24 第1仮外形線
25 第2仮外形線
26 第3仮外形線
27 仮切断外形線
28 峡間エリア境界線
31 拡張フレキシブルエリア
32 拡張エリア
33 接着剤染出範囲
34 切断除去エリア
35 峡間エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のフレキシブルプリント配線基材間に、接着剤含浸ガラス繊維基布の一部が切除されて中空部が形成された該接着剤含浸ガラス繊維基布を挟持すると共に、加熱加圧により接着して形成された多層フレキシブルプリント配線原板を、所定形状に切断して、該多層フレキシブルプリント配線原板における前記接着剤含浸ガラス繊維基布の前記中空部が形成された部分に、柔軟性を有するフレキシブルエリアが形成され、それ以外の部分に剛性を有し部品実装可能な剛性エリアが形成される多層プリント配線基板を製造する製造方法であって、
前記接着剤含浸ガラス繊維基布の中空部を構成するエリアが、前記多層プリント配線基板のフレキシブルエリアの外形線の外側に設けられた仮外形線を有する拡張フレキシブルエリアで構成されるように、前記接着剤含浸ガラス繊維基布を切除するガラス繊維基布切除工程と、
前記中空部が形成された前記接着剤含浸ガラス繊維基布を前記フレキシブルプリント配線基材間に挟持させて構成した前記多層フレキシブルプリント配線原板の、加熱加圧による接着を、該接着による、前記中空部の周囲の一部である前記仮外形線からの前記接着剤含浸ガラス繊維基布に含浸されている接着剤の染出が、前記フレキシブルエリアの前記外形線に至らない範囲となるようにして行うプリント配線原板形成工程と、
前記多層フレキシブルプリント配線原板を切断して、前記剛性エリアの外形線と、前記仮外形線よりも更に外側に設けられた仮切断外形線とで囲まれる仮多層プリント配線基板を形成する第1切断工程と、
前記仮多層プリント配線基板を更に切断して、前記フレキシブルエリアの周囲が、該フレキシブルエリアの外形線で囲まれる前記多層プリント配線基板を形成する第2切断工程と、を備えることを特徴とする多層プリント配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1切断工程と前記第2切断工程との間に、前記仮多層プリント配線基板を高圧水洗浄する高圧水洗浄工程を設けた請求項1記載の多層プリント配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記ガラス繊維基布切除工程において、前記拡張フレキシブルエリア及び前記剛性エリアに隣接するようにして、前記仮外形線から所定幅で所定距離外側に向かって伸びる拡張エリアを形成すると共に、該拡張エリアを前記拡張フレキシブルエリアに加えた再拡張フレキシブルエリアが、前記接着剤含浸ガラス繊維基布の前記中空部を構成するエリアとなるように、前記接着剤含浸ガラス繊維基布を切除し、
前記プリント配線原板形成工程において、前記拡張エリアに前記接着剤含浸ガラス繊維基布に含浸されている接着剤を染出させて、該拡張エリアに該拡張エリアの前記中空部を塞ぐ接着剤染出部を形成し、
前記第1切断工程において、前記仮切断外形線が、前記拡張エリアの略中央部を前記仮外形線に略平行に横断するように切断して、前記仮多層プリント配線基板を形成する請求項1又は2記載の多層プリント配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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