説明

多層基板

【課題】大型化が容易であり、かつ配線導体層の狭ピッチ化においても有効な多層基板を提供する。
【解決手段】絶縁層1と配線導体層2とが積層され、上下の配線導体層2同士が貫通導体3を介して電気的に接続されてなる複数の多層配線基板4が配列された多層配線基板集合体Tと、絶縁基板5の上面から下面にかけて導体6が形成されてなる複数の回路基板7が縦横の並びに配列されて、多層基板集合体Tの上面に積層された回路基板集合体Kとを備え、隣り合う多層配線基板4間に跨って回路基板7が重ねられて多層配線基板集合体Tと回路基板集合体Kとが一体的に接合されており、配線導体層2と導体6とが電気的に接続されている多層基板である。隣り合う多層配線基板4間に跨って接合された回路基板7の集合体Kによって一体化され、回路基板7の反り等を抑制することができるため、大型化および配線導体層2の狭ピッチ化に有効な多層基板を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路素子を収容するための半導体素子収納用パッケージ等の電子部品収納用パッケージや、半導体集積回路等の電気的な検査をするためのプローブカード等に使用される多層基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路は半導体素子の高集積化および処理信号数の増加によって、半導体基板上に形成される端子数が増加するとともに端子の狭ピッチ化が進んでいる。これにより、半導体集積回路素子を収容する半導体素子収納用パッケージの接続端子や、半導体集積回路の電気的な検査を行なうプローブカードのプローブも狭ピッチ化が要求されている。
【0003】
また、半導体集積回路素子を作製するためのシリコンウエハの大型化も進んでおり、シリコンウエハに多数が配列された半導体集積回路素子の電気的な検査を行うプローブカードには大型化が要求されている。
【0004】
これに対し、従来、一般的に半導体素子収納用パッケージやプローブカードを形成するために使用されていた配線基板は、セラミック焼結体からなる絶縁層と銀や銅のメタライズ層からなる配線導体層とを交互に積層し、上下の配線導体を、絶縁層を厚み方向に貫通する、銀や銅等のメタライズ導体からなる貫通導体で電気的に接続した構成であった。このような配線基板においては、未焼結のセラミック材料を焼結させて絶縁層とする際の収縮に起因した、例えばプローブを接続させる最表層の配線導体層の位置のばらつき等のために、狭ピッチ化や大型化が難しい。
【0005】
また、絶縁層を樹脂材料からなるものとし、配線導体層を薄膜導体層からなるものとした配線基板も使用されているが、この場合にも、絶縁層と配線導体層との収縮率の違い等に起因した、配線導体層の位置ずれや配線基板の反り等の問題点があり、同様に、狭ピッチ化や大型化が難しい。
【0006】
上記の要求、およびその要求を実現する上での課題に対して、本出願人は、半導体素子収納用パッケージやプローブカード等に使用される配線基板として、絶縁層と配線導体層とが交互に複数層積層されるとともに、上下に位置する前記配線導体層同士をそれらの間の前記絶縁層に形成した貫通導体を介して電気的に接続されて成る多層基板を複数個、層方向に配列し、該配列された複数の多層基板集合体の少なくとも一方の主面に、絶縁基板の一主面から他主面にかけて導体が形成された1つの回路基板を前記複数の多層基板と重なるように積層し、前記各多層基板の前記配線導体層と前記導体とを電気的に接続した配線基板を提案した(特許文献1を参照。)。
【0007】
この配線基板によれば、多層基板のサイズを小さく形成することによって、配線基板作製時の熱収縮による反りを低減して、貫通導体の位置ズレの影響を少なくすることができる。また、多層基板集合体の上側および下側の少なくとも一方に、絶縁基板に精度よく導体を形成してなる回路基板を積層し、導体と配線導体とを電気的に接続することによって、導体の位置ズレの影響の非常に少ない狭ピッチ化された大型の配線基板を形成することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−173429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年、半導体集積回路素子を作製するためのシリコンウエハには、より一層の大型化(12インチサイズから18インチサイズ)が進んでいる。これに対して、上記の配線基板では、シリコンウエハのサイズに合わせて大型化させたときには、回路基板において反りや導体の位置ずれ等が発生しやすくなる可能性がある。
【0010】
本発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、全体の反り等の不具合を抑制しながら、上記提案した配線基板に対して、より一層の大型化が可能であり、かつ配線導体層の狭ピッチ化においても有効な多層基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の多層基板は、絶縁層と配線導体層とが交互に複数層積層されているとともに、上下に位置する前記配線導体層同士が前記絶縁層を厚み方向に貫通する貫通導体を介して電気的に接続されてなる複数の多層配線基板が縦横の並びに配列された多層配線基板集合体と、絶縁基板の上面から下面にかけて導体が形成されてなる複数の回路基板が縦横の並びに配列されて、前記多層配線基板集合体の上面に積層された回路基板集合体とを備え、隣り合う前記多層配線基板間に跨って前記回路基板が重ねられて前記多層配線基板集合体と前記回路基板集合体とが一体的に接合されており、前記多層配線基板の前記配線導体層と前記回路基板の前記導体とが電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の多層基板は、上記構成において、前記回路基板の前記絶縁基板は複数の上部絶縁層が積層されて形成されており、前記回路基板の前記導体は、複数の前記上部絶縁層の層間および露出表面に形成された回路導体層と、前記上部絶縁層を厚み方向に貫通して上下の前記回路導体層間を電気的に接続する上部貫通導体とを含むことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の多層基板は、上記構成において、前記回路基板集合体は、平面視で前記回路基板の外辺が前記多層配線基板の外辺と斜めに交差するように前記多層配線基板集合体の上面に重ねられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多層基板によれば、複数の回路基板が縦横の並びに配列されてなる回路基板集合体が、複数の多層配線基板が縦横の並びに配列されてなる多層配線基板集合体の上面に積層され、隣り合う多層配線基板間に跨って回路基板が重ねられて多層配線基板集合体と回路基板集合体とが一体的に接合されていることから、上記の先に提案した配線基板に比べて、より一層の大型化が容易である。
【0015】
すなわち、複数の多層配線基板を一体化させるものとして、複数の回路基板が縦横に配列されてなる回路基板集合体を用いるようにしたことから、個々の回路基板における反りや導体の位置ずれ等を効果的に抑制することができる。そのため、回路基板集合体においても導体の位置ずれや反り等を効果的に抑制しながら、より一層の大型化をすることが容易である。したがって、多層基板としてのより一層の大型化も容易である。
【0016】
また、回路基板における導体の位置ずれが効果的に抑制されていることから、この導体と電気的に接続されている多層配線基板の配線導体層の狭ピッチ化に対しても有効である。
【0017】
また、本発明の多層基板は、上記構成において、回路基板の絶縁基板は複数の上部絶縁層が積層されて形成されており、回路基板の導体は、複数の上部絶縁層の層間および露出表面に形成された回路導体層と、上部絶縁層を厚み方向に貫通して上下の回路導体層間を電気的に接続する上部貫通導体とを含む場合には、回路基板の導体を形成する範囲(層数)がより大きくなり、導体の引き回しがより容易になるため、回路基板の導体についても高密度化が容易になり、多層基板としての高密度化がより容易になる。
【0018】
また、本発明の多層基板は、上記構成において、回路基板集合体は、平面視で回路基板の外辺が多層配線基板の外辺と斜めに交差するように多層配線基板集合体の上面に重ねられている場合には、多層配線基板と回路基板とで反りが発生する可能性がある方向がずれるため、多層基板全体の反りをより小さく抑える上で有利である。
【0019】
すなわち、個々の回路基板や多層配線基板においては、多層配線基板の絶縁層や回路基板の絶縁基板の外辺と平行な一方向に、わずかながら反りが発生する可能性があるが、これに対して、上記構成の場合には、反りの方向を上下(回路基板集合体と多層配線基板集合体と)で異ならせることができる。そのため、反りの方向が上下で揃って多層基板全体の反りが比較的大きくなるような可能性がより小さく抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)および(b)はそれぞれ本発明の多層基板の実施の形態の一例を示す上面図および下面図であり、(c)は(a)のA−A線における断面図である。
【図2】図1に示す多層基板の上面から透視した状態を模式的に示す上面図である。
【図3】(a)および(b)はそれぞれ本発明の多層基板の実施の形態の他の例を模式的に示す上面図(透視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の多層基板を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。図1(a)および(b)は、それぞれ本発明の多層基板の実施の形態の一例を示す上面図および下面図であり、図1(c)は図1(a)のA−A線における断面図であり、図2は、図1に示す多層基板を上面から透視した状態を模式的に示す上面図(透視図)である。図1および図2において、1は絶縁層,2は配線導体層,3は貫通導体,4は多層配線基板,5は絶縁基板,6は導体,7は回路基板を示している。そして、複数の多層配線基板4が縦横の並びに配列されてなる多層配線基板集合体Tの上面に、複数の回路基板7が縦横の並びに配列されてなる回路基板集合体Kが積層されて多層基板が形成されている。なお、図1(c)では、多層配線基板集合体Tと回路基板集合体Kとを分けて示しているが、実際には両者は一体化されている。また、図2においては、見やすくするために、配線導体層2,貫通導体3および導体6を省略している。
【0022】
多層基板は、例えば、回路基板7の上面に形成されている導体6が半導体集積回路素子(図示せず)の回路(図示せず)の所定部位に電気的に接続されるとともに、多層配線基板4の下面に形成されている配線導体層2が外部電気回路に電気的に接続される。そして、半導体集積回路素子の回路と外部電気回路とが多層基板の導体6と配線導体層2と貫通導体3とを介して電気的に接続され、半導体集積回路素子に対する電気的なチェックや、半導体集積回路素子と外部電気回路との電気信号の授受等が行なわれる。
【0023】
多層配線基板4は、複数の絶縁層1と配線導体層2とが交互に複数層積層されているとともに、上下に位置する配線導体層2同士が絶縁層1を厚み方向に貫通する貫通導体3を介して電気的に接続されて形成されている。
【0024】
絶縁層1は、酸化アルミニウム質焼結体やガラスセラミック焼結体,ムライト質焼結体等の酸化物系セラミック焼結体、表面に酸化物膜を有する窒化アルミニウム質焼結体,炭化珪素質焼結体等の非酸化物系セラミック焼結体、ガラス、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂材料、ガラス繊維から成る基材にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料を含浸させた複合材料等の電気絶縁材料からなる。
【0025】
絶縁層1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、酸化アルミニウムや酸化ケイ素,酸化マグネシウム,酸化カルシウム等のセラミック原料粉末に適当な有機バインダおよび溶剤等を添加混合して泥漿状となすとともに、これをドクターブレード法等を採用してシート状となすことにより複数枚のセラミックグリーンシートを得て、しかる後、セラミックグリーンシートを切断加工や打ち抜き加工により適当な形状とするとともにこれを複数枚積層し、最後にこの積層されたセラミックグリーンシートを還元雰囲気中、約1600℃の温度で焼成することによって製作することができる。
【0026】
また、絶縁層1が、例えばガラスセラミック焼結体からなる場合には、例えば上述の酸化アルミニウム質焼結体からなる場合の製作法において主成分の原料粉末にアルミナおよびガラスを用い、約900℃で焼成することによって絶縁層1を製作する。
【0027】
このような絶縁層1には、絶縁層1を厚み方向に貫通する貫通導体3が形成されている。貫通導体3は、絶縁層1の上下の配線導体層2同士の間を電気的に接続するためのものであり、タングステンやモリブデン,マンガン,銅,銀,パラジウム,金,白金,チタン,クロム等の金属材料からなる。
【0028】
貫通導体3は、例えば、絶縁層1にレーザ加工やブラスト加工,ドリル加工,エッチング加工等の加工を施して厚み方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔内に貫通導体3となる導体材料を充填することによって形成されている。貫通孔の内部への導体材料の充填は、スパッタリング法や真空蒸着法,めっき法等を用いてあるいは金属粉末に有機溶剤,樹脂バインダ等を添加して作製した金属ペーストを、貫通孔の内部に印刷塗布,充填することによって行なうことができる。
【0029】
また、貫通導体3は、絶縁層1となるセラミックグリーンシートに上記のような加工または金型を用いた打ち抜き加工を施して貫通孔を形成した後、タングステンやモリブデン等の上記金属材料のペーストを充填し、セラミックグリーンシートの積層体と同時焼成することによっても形成することができる。
【0030】
また、複数の絶縁層1は、複数の配線導体層2と交互に積層されており、絶縁層1の上下面に形成されている配線導体層2同士は貫通導体3を介して電気的に接続されている。これらの配線導体層2および貫通導体3とによって、前述したように半導体集積回路素子と外部電気回路との間を電気的に接続するための導電路の一部が構成されている。
【0031】
多層配線基板4の配線導体層2の形成方法は、例えば次の通りである。まず、絶縁層1の上面の全面に、クロム,モリブデン,チタン等から成る拡散防止層(バリア層)(図示せず)とその上に被着された主に銅から成る銅層とで構成された下地導体層(図示せず)を無電解めっき法やスパッタリング法等によって形成する。そして、下地導体層が形成された絶縁層1をフォトリソグラフィ法を用いて配線導体層2となる部分以外を覆うようにレジストパターン(図示せず)を形成した後、下地導体層の表面に配線導体層2の主導体層(図示せず)となる銅や金等の金属層を電解めっき法にて形成する。その後、レジストパターンを除去し、レジストパターンにより覆われていた余分な下地導体層をケミカルエッチング法やドライエッチング法等にて除去することにより配線導体層2が形成される。
【0032】
また、配線導体層2は、貫通導体3の場合と同様に、絶縁層1となるセラミックグリーンシートの表面にタングステン等の金属ペーストを所定の配線導体層2のパターンに印刷しておいて、セラミックグリーンシートの積層体と同時焼成することによっても形成することができる。
【0033】
このようにして、絶縁層1に配線導体層2,貫通孔,貫通導体3を形成し、複数枚積層することにより、または配線導体層2および貫通導体3となる金属ペーストが印刷および充填されたセラミックグリーンシートの積層体を焼成することにより多層配線基板4を得る。
【0034】
回路基板7は、絶縁基板5の上面から下面にかけて、一部が絶縁基板5を厚み方向に貫通して導体6が形成されている。この導体6のうち絶縁基板5の下面に位置する部分が多層配線基板4の上面に形成された配線導体層2と接続して、配線導体層2と導体6とが電気的に接続されている。回路基板7の導体6も、多層配線基板4の配線導体層2および貫通導体3と同様に、半導体集積回路素子と外部電気回路とを電気的に接続するための導電路の一部を構成している。
【0035】
回路基板7の絶縁基板5は、例えば多層配線基板4の絶縁層1と同様の材料を用い、同様の方法で製作することができる。また、回路基板7の導体6は、多層配線基板4の配線導体層2および貫通導体3と同様の金属材料を用い、同様の方法で形成することができる。
【0036】
本発明の多層基板は、複数の多層配線基板4が縦横の並びに配列された多層配線基板集合体Tの上面に、複数の回路基板7が縦横の並びに配列された回路基板集合体Kが積層されている。そして、隣り合う多層配線基板4間に跨って回路基板7が重ねられて多層配線基板集合体Tと回路基板集合体Kとが一体的に接合されており、多層配線基板4の配線導体層2と回路基板7の導体6とが電気的に接続されている。
【0037】
このような多層基板によれば、従来技術の配線基板に比べて、より一層の大型化が容易である。すなわち、複数の多層配線基板4を一体化させるものとして、複数の回路基板7が縦横に配列されてなる回路基板集合体Kを用いるようにしたことから、個々の回路基板7における反りや導体6の位置ずれ等を効果的に抑制することができる。そのため、回路基板集合体Kにおいても反りや導体6の位置ずれ等を効果的に抑制しながら、より一層の大型化をすることが容易である。したがって、多層基板としてのより一層の大型化も容易である。
【0038】
また、回路基板7における導体6の位置ずれが効果的に抑制されていることから、この導体6と電気的に接続されている多層配線基板4の配線導体層2の狭ピッチ化に対しても有効である。
【0039】
この多層基板において、多層配線基板集合体Tの複数の多層配線基板4をばらばらにしないようにするために(配列された複数の多層配線基板4の隣り合うもの同士を間接的に接合するために)、隣り合う多層配線基板4間に跨って回路基板7が重ねられている。すなわち、隣り合う多層配線基板4のそれぞれが1つの回路基板7と接合されていることによって、この回路基板7を介して隣り合う多層配線基板4同士が間接的に接合されている。
【0040】
多層配線基板4と回路基板7との接合は、例えば、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂,シロキサン変性ポリイミド樹脂,ポリイミド樹脂,ビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂接着剤や、シリカやアルミナ等を主成分にした無機接着剤等の接着剤(図示せず)を介して行なうことができる。この場合、銀や銅,金,錫,錫−銀合金,錫−銅合金,錫−銀−銅合金,金−錫合金等の金属ペーストを介して、回路基板7の導体6と多層配線基板4の配線導体層2とを電気的に接続しておく。また、異方性導電性樹脂からなる接着剤を介して多層配線基板4と回路基板7とを接続するようにすれば、両者の間の接着(機械的な接続)と電気的な接続とを同時に行なうことができる。
【0041】
また、接着剤は、シロキサン変性ポリアミド樹脂や無機接着剤を用いると、耐熱性が高いものとなるため、半導体集積回路素子やプリント回路基板等の外部電気回路の基板を実装する際の耐半田実装性が良好なものとなる。
【0042】
なお、多層基板は、例えば18インチサイズのシリコンウエハを用いた半導体集積回路素子に対するプローブカード等に使用する場合であれば、その外形寸法を18インチ(約457mm)以上とする必要がある。この場合、個々の多層配線基板4は、例えば外形寸法50×50mmで、厚みが2mm程度に設定し、これを、約10×10(個)程度の縦横の並びに配列すればよい。
【0043】
また、複数の多層配線基板4を上記のように配列する場合であれば、個々の回路基板7は、外形寸法70×70mmで、厚みが2mm程度に設定し、これを約10×10個程度の縦横の並びに配列すればよい。
【0044】
この場合、多層基板の外側面について、多層配線基板集合体Tの外側面と回路基板集合体Kの外側面とが平面視で同じ位置になるように、つまり面一になるようにするためには、例えば回路基板7のうち最外周に配列されるものは、他のものと異なる形状にする必要がある。この場合、回路基板7のうち最外周に配列されるもの等の一部のものについては、必ずしも隣り合う多層配線基板4の間に跨っている必要はない。
【0045】
ここで、本発明の多層基板の効果について、具体例を挙げて説明する。
【0046】
個々の多層配線基板4の外形寸法50×50mmで、厚みが2mm程度に設定し、これを、約10×10個の縦横の並びに配列して多層配線基板集合体Tを形成し、この上面に、個々の回路基板7の外形寸法70×70mmで、厚みが2mm程度に設定し、これを約10×10(個)程度の縦横の並びに配列した回路基板集合体Kを積層して、多層基板を作製した。なお、回路基板7のうち最外周に配列したものは、多層基板の外側面を面一に揃えるために外周側の一部を切断して用いた。多層配線基板4と回路基板7との接合はシロキサン変性ポリアミド樹脂からなる接着剤を用いて行なった。なお、接着剤は、約50μmの厚みの層状で多層配線基板集合体Tと回路基板集合体Kとの間に介在した。
【0047】
また、比較例として、多層配線基板集合体の上面を1つの回路基板の下面に接合して一体化させた多層基板(図示せず)を作製した。この比較例の多層基板は、1つの回路基板を用いたこと以外は、上記本発明の具体例の多層基板と同様の材料を用い、同様の方法で製作した。
【0048】
この多層基板について、全体の反りをレーザー変位計で測定した結果20μm程度の反りが確認された。また、この多層基板において、回路基板7の導体6は、最上面において50μmピッチ(隣り合う導体6間の間隔)であった。これに対して、比較例の多層基板では、全体の反りが200μm程度であり、また、最上面における回路基板の導体は、200μmピッチ程度であった。これにより、本発明の多層基板における、全体の反り等の不具合を抑制しながら、より一層の大型化が可能であり、かつ配線導体層2の狭ピッチ化においても有効な多層基板とすることが可能な効果を確認できた。
【0049】
また、本発明の多層基板は、例えば図2に示すように、回路基板7の絶縁基板5が、複数の上部絶縁層7aが積層されて形成されており、回路基板7の導体6が、複数の上部絶縁層5aの層間および露出表面に形成された回路導体層6aと、上部絶縁層5aを厚み方向に貫通して上下の回路導体層6a間を電気的に接続する上部貫通導体6bとを含む場合には、回路基板7の導体6を形成する範囲(層数)がより大きくなり、導体6の引き回しがより容易になるため、回路基板7の導体6についても高密度化が容易になり、多層基板としての高密度化がより容易になる。
【0050】
複数の上部絶縁層5aからなる絶縁基板5は、前述した多層配線基板4の積層された複数の絶縁層2と同様の材料を用い、同様の方法で製作することができる。例えば酸化アルミニウムや酸化ケイ素等のセラミック原料粉末と有機バインダおよび溶剤等とによって作製した複数枚のセラミックグリーンシートを積層し、この積層されたセラミックグリーンシートを還元雰囲気中、約1600℃の温度で焼成することによって製作することができる
また、導体6を構成する回路導体層6aおよび上部貫通導体6bは、それぞれ多層配線基板4の配線導体層2および貫通導体3と同様の材料を用い、同様の方法で形成することができる。例えば、まず、上部絶縁層5aとなるセラミックグリーンシートに打ち抜き加工等の加工を施して貫通孔を形成した後、タングステンやモリブデン等の金属材料のペーストを、貫通孔内に充填するとともに、セラミックグリーンシートの表面に所定の回路導体層6aのパターンに印刷しておいて、セラミックグリーンシートの積層体と同時焼成することによって形成することができる。
【0051】
また、本発明の多層基板は、例えば図3(a)および(b)に示すように、回路基板集合体Kについて、平面視で回路基板7の外辺が多層配線基板4の外辺と斜めに交差するように多層配線基板集合体Tの上面に重ねられている場合には、多層配線基板4と回路基板7とで反りが発生する可能性がある方向がずれるため、多層基板全体の反りをより小さく抑える上で有利である。なお、図3(a)および(b)は、それぞれ本発明の多層基板の実施の形態の他の例を模式的に示す上面図(透視図)である。図3において図1および図2と同様の部位には同様の符号を付している。また、図3においても、見やすくするために、配線導体層2,貫通導体3および導体6を省略している。
【0052】
すなわち、個々の回路基板7や多層配線基板4においては、多層配線基板4の絶縁層1や回路基板7の絶縁基板5の外辺と平行な一方向に、わずかながら反りが発生する可能性があるが、これに対して、上記構成の場合には、反りの方向を上下(回路基板集合体Kと多層配線基板集合体Tと)で異ならせることができる。そのため、反りの方向が上下で揃って多層基板全体の反りが比較的大きくなるような可能性がより小さく抑えられる。
【0053】
なお、図3(a)は、回路基板7および多層配線基板4の外形寸法を、外周部分に配列されるものを除いて同じ程度とした例である。この例の場合には、同様の加工治具を用いて多層配線基板4の絶縁層1および回路基板7の基体6の製作ができるので、多層基板の生産性やコスト等において有利である。図3(b)は、正方形状の回路基板7の外辺が、それよりも小さい正方形状の多層配線基板4の対角線上に位置するようにした例である。この例の場合には、多層基板の反りをより効果的に抑制する上で有利である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・絶縁層
2・・・配線導体層
3・・・貫通導体
4・・・多層配線基板
5・・・絶縁基板
5a・・上部絶縁層
6・・・導体
6a・・回路導体層
6b・・上部貫通導体
7・・・回路基板
T・・・多層配線基板集合体
K・・・回路基板集合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と配線導体層とが交互に複数層積層されているとともに、上下に位置する前記配線導体層同士が前記絶縁層を厚み方向に貫通する貫通導体を介して電気的に接続されてなる複数の多層配線基板が縦横の並びに配列された多層配線基板集合体と、
絶縁基板の上面から下面にかけて導体が形成されてなる複数の回路基板が縦横の並びに配列されて、前記多層基板集合体の上面に積層された回路基板集合体とを備え、
隣り合う前記多層配線基板間に跨って前記回路基板が重ねられて前記多層配線基板集合体と前記回路基板集合体とが一体的に接合されており、前記多層配線基板の前記配線導体層と前記回路基板の前記導体とが電気的に接続されていることを特徴とする多層基板。
【請求項2】
前記回路基板の前記絶縁基板は複数の上部絶縁層が積層されて形成されており、前記回路基板の前記導体は、複数の前記上部絶縁層の層間および露出表面に形成された回路導体層と、前記上部絶縁層を厚み方向に貫通して上下の前記回路導体層間を電気的に接続する上部貫通導体とを含むことを特徴とする請求項1記載の多層基板。
【請求項3】
前記回路基板集合体は、平面視で前記回路基板の外辺が前記多層配線基板の外辺と斜めに交差するように前記多層配線基板集合体の上面に重ねられていることを特徴とする請求項1記載の多層基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−134842(P2011−134842A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292208(P2009−292208)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】