妨害信号送信機
【課題】本発明は、LF送信機が送信する起動信号の受信できる空間的な領域を任意の範囲に限定しタグの誤検出を防止することができる妨害信号送信機を提供する。
【解決手段】LF送信機102aは、周期ctでタグへ起動信号1401を送信し、妨害信号送信機151aは、LF送信機102aと連携せず独立して動作し、LF送信機102aが送信する起動信号を検知して、起動信号1401の送信時間stを算出し、stよりも短い周期it1で妨害信号(1411、1412等)を送信することにより、タグにより起動信号1401が受信される空間的範囲を制限する。妨害信号の送信時間lt1は、少なくともタグによる誤り訂正が可能な信号長(nビット相当)よりも長い信号長である。
【解決手段】LF送信機102aは、周期ctでタグへ起動信号1401を送信し、妨害信号送信機151aは、LF送信機102aと連携せず独立して動作し、LF送信機102aが送信する起動信号を検知して、起動信号1401の送信時間stを算出し、stよりも短い周期it1で妨害信号(1411、1412等)を送信することにより、タグにより起動信号1401が受信される空間的範囲を制限する。妨害信号の送信時間lt1は、少なくともタグによる誤り訂正が可能な信号長(nビット相当)よりも長い信号長である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タグを用いてその所持者の所在を管理する技術に関し、特に、タグの誤検出防止に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タグリーダとタグを用いて、タグの所在管理を行うシステムが提案されている(特許文献1、2)。例えば、オフィスなどでは、並んでいる机1つ1つにタグリーダを設置し、タグを各人に持たせておけば、そのタグを持った人がタグリーダに近づいた場合に検知できるので、在席管理をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−177775号公報
【特許文献2】特開2008−182566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような在席管理では、タグリーダの送信する起動信号に関し、その受信を望む全空間をカバーできるようにタグリーダの起動信号の送信出力を定めることになるが、起動信号の到達範囲が、起動信号の受信を望まない領域にまで及んでしまう場合がある。例えば、机近辺でのみタグに起動信号を受信させればよいところ、オフィスのレイアウト等の制限から通路まで起動信号の到達範囲が及ぶ場合などが想定される。この場合、単に通路を通過する人が所持しているタグが起動信号を受信してしまい、その通行人が在席しているとの誤検知がされてしまう。
【0005】
上記の課題に鑑み、本発明は、タグリーダとしてのLF送信機が送信する起動信号の受信できる空間的な領域を任意の範囲に限定しタグの誤検出を防止することができる妨害信号送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、周期的にタグへ起動信号を送信する送信機と共に用いられ、タグにより起動信号が受信される空間的範囲を制限する妨害信号送信機であって、起動信号の1周期における送信時間よりも短い間隔で周期的に妨害信号を送信する。
また、前記妨害信号として、前記起動信号と同周波数の信号を前記起動信号より弱い信号出力で送信することとしてもよい。
【0007】
また、前記起動信号の送信時間を、前記起動信号を検波して取得することとしてもよい。
また、前記妨害信号として、前記タグによる誤り訂正が可能な信号長よりも長い信号長の妨害信号を送信することとしてもよい。
また、前記妨害信号の出力レベルは、前記起動信号を検波し、検波した受信レベルに所定割合を乗じたレベルに決定することとしてもよい。
【0008】
また、ユーザが前記妨害信号の出力レベルを指定するためのインターフェイスを有し、指定された出力レベルで前記妨害信号を出力することとしてもよい。
また、前記周期的な妨害信号の送信として、前記起動信号を検波する毎に前記妨害信号を送信することとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の妨害信号送信機は、上述の構成を備えることにより、起動信号の受信できる空間的な領域を任意の範囲に限定しタグの誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る所在管理システムの構成の一例を示した図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る所在管理システムにおける設置前構成の一例を示した図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るコントローラの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るLF送信機の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るタグの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る妨害信号送信機の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るLF送信機が起動信号を送信するタイミングを示す図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る起動信号の受信可能領域の妨害信号による変更について説明するための図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る起動信号と、妨害信号の送信タイミングについて説明するための図である。
【図10】本発明の変形例に係る起動信号と妨害信号との送信タイミング等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る妨害信号送信機の一実施形態である所在管理システムについて説明する。
1.概要
本所在管理システムは、タグの所在管理を行うサーバと、複数のタグと、LF(Low Frequency)帯を用いタグを起動するための起動信号を送信する複数のLF送信機と、LF送信機による起動信号の送信タイミングの調整、起動されたタグからUHF(Ultra High Frequency)帯を用いて送信される信号の受信、受信結果のサーバへの送信とを行うコントローラと、妨害信号送信機とを含んで構成される。
【0012】
タグ、LF送信機、コントローラは、各々識別情報であるタグID、LFアンテナID、コントローラIDを記憶しており、これらの識別情報を互いに伝達し合う。
複数のLF送信機は、予め管理対象となるエリア内の異なる位置に配置されており、送信する起動信号には、LF送信機を識別するLFアンテナIDが含まれる。
タグは、起動信号を受信した場合に、起動信号に含まれるLFアンテナIDと、タグIDとをコントローラに送信する。コントローラは、そのタグID、LFアンテナID及びコントローラIDをサーバに送信する。サーバは、LFアンテナIDにより識別されるLF送信機の配置を予め記憶しており、受信したタグID、LFアンテナIDを用いタグの位置を把握する。
【0013】
ここで、各LF送信機の起動信号の送信出力は、起動信号の到達範囲がその受信を望む領域をカバーできるように設定されており、このため起動信号の到達範囲が、起動信号の受信を望まない領域(以下、受信不要領域という。)にまで及んでしまう場合がある。
妨害信号送信機は、妨害信号を送信することによって受信不要領域でのタグによる起動信号の受信を不能にする。すなわち、妨害信号送信機は、起動信号のタグによる受信可能範囲を任意の範囲に制限する。
2.構成
2.1.全体構成
図1は、本実施の形態に係る所在管理システムの構成の一例を示した図であり、例えば、あるオフィス内の1エリアを示す。
【0014】
このエリアでは、机103a〜103dと椅子104a〜104dが2個ずつ2列に配されており、各列とエリア中央部分の通路とがパーティション171a及び171b並びにパーティション171c及び171dにより仕切られている。各机103a〜103dの上にはLF帯(例えば120kHz〜130kHz帯)で信号を無線送信するLF送信機102a〜102dが配置されている。LF送信機102a〜102dのそれぞれは、RS485などの通信ケーブルを介して1台のコントローラ101に接続されている。また、コントローラ101はサーバ106に接続されている。
【0015】
エリア内の椅子104a〜104dのいずれか(例えば、椅子104a)に管理対象となる人が着席すると、その椅子近辺のLF送信機102a〜102dのいずれか(例えば、LF送信機102a)が送信する起動信号をその人が所持するタグが受信する。起動信号には、起動信号を送信したLF送信機を識別するLFアンテナIDが含まれており、タグは、そのLFアンテナIDと、タグIDとをコントローラ101に送信する。コントローラ101からサーバ106へタグの情報が伝えられることにより、所在管理が実現される。
【0016】
ここで、図1に破線で示す領域121aは、LF送信機102aが送信する起動信号をタグが受信可能な領域を示す。破線の内側が受信可能な領域である。破線で示す領域121b〜121dについても破線121aと同様に、LF送信機102b〜102dが送信する起動信号をタグが受信可能な領域を示している。ここで、領域121aは、元々は起動信号が受信可能であった領域を、妨害信号送信機151aが送信する妨害信号によって任意に変更した後の領域を示している。領域121b〜121dについても領域121aと同様である。
【0017】
図2は、図1に示す構成から妨害信号送信機151a、151bを設置する前の構成(以下、設置前構成という。)を示し、起動信号が受信可能な領域は変更されていない。
設置前構成において、LF送信機102aが送信する起動信号は、円形の破線で示す領域121a’において受信可能であり、受信可能範囲は、パーティション171aの裏側(通路側)までも及んでいる。
【0018】
この場合に、通路を通過する通行人がタグを所持しつつ、図2のハッチで示す領域122aに至ると、その通行人のタグがLF送信機102aによる起動信号を受信し、コントローラ101と通信してしまう。そして最終的には、サーバ106においてその通行人もLF送信機102aに係る椅子に着席しているとの誤判断がされてしまうことになる。
妨害信号送信機151aは、このような誤判断がなされてしまう状況を回避するために、妨害信号を送信して領域122aでの起動信号の受信を妨げる。すなわち、妨害信号送信機151aは、妨害信号を送信することで、LF送信機102aが送信する起動信号が受信可能な領域を、図2に示す領域121a’から図1に示す領域121aへと変更する。なお、LF送信機102aにおける起動信号の送信出力を弱めれば、起動信号がパーティション171aの裏側に回り込むのを避けることもできるが、そうすると起動信号の受信可能領域自体が全体的に狭まってしまい、起動信号の受信が必要であるにもかかわらず受信ができない領域が生じてしまう。
【0019】
ここで、起動信号の受信可能領域の妨害信号による変更について図8を用いて説明する。
図8(c)は、LF送信機と妨害信号送信機との配置を示す図である。
LF送信機Aは、xy平面の原点位置に配され、LF送信機Aを囲むように、x軸上に妨害信号送信機C、Eが配され、y軸上に妨害信号送信機B、Dが配されている。
【0020】
なお、図8(c)の構成は、起動信号の受信可能領域が妨害信号によって任意に変更可能であることについて説明するためのものであり、上述の図1、図2の構成に1対1に対応したものではない。
図8(c)の領域1721は、妨害信号送信機B〜Eによる妨害信号の送信が無いと仮定した場合において、LF送信機Aが送信する起動信号をタグが受信可能な領域を示す。
【0021】
図8(c)の領域1722は、妨害信号送信機B〜Eによる妨害信号の送信がある場合において、LF送信機Aが送信する起動信号をタグが受信可能な領域を示す。
以降の説明は、妨害信号が無い場合に起動信号の受信が可能であった円形の領域1721が、妨害信号送信機B〜Eによる妨害信号の送信によって矩形の領域1722に変更されることについて行うものである。
【0022】
図8(a)は、図8(c)のx軸上におけるLF送信機A、妨害信号送信機C及びEが送信する電波による受信電界強度を示す。
図8(a)の横軸は、図8(c)のx軸に相当し、縦軸は各位置における受信電界強度を示す。
波形1701は、妨害信号が無いとした場合における、LF送信機Aが送信する起動信号の受信電界強度を示す。
【0023】
波形1702、波形1703は、それぞれ、妨害信号送信機C及びEが送信する妨害信号の受信電界強度を示す。妨害信号は、起動信号と同周波数の信号である。
ここで、図8(a)中の境界線1704は、起動信号が受信できる最低受信電界強度(114dBuV/m)を示しており、この境界線1704を下回る範囲では起動信号は受信できない。
【0024】
波形1701は、この境界線1704と、点P1(x座標:P1x、y座標:P1y)及び点P2(x座標:P2x、y座標:P2y)で交わっている。妨害信号が無いとした場合、波形1701における点P1〜点P2までの間では、受信電界強度が最低受信電界強度を上回っているので、タグ111は起動信号を受信することができる。P1x、P2xは、図8(c)における領域1721とx軸との交点のx座標に一致する。
【0025】
図8(b)は、妨害信号が有る場合におけるLF送信機Aによる起動信号と、妨害信号送信機C、Eによる妨害信号との受信電界強度の差分を示す図である。
横軸は、図8(c)のx軸と一致し、縦軸はCN(Carrier to Noise ratio)比を示す。
図8(b)の波形1711は、LF送信機Aによる起動信号と、妨害信号送信機C、Eによる妨害信号との受信電界強度の差分を示している。
【0026】
ここで、図8(b)における境界線1712は、起動信号が受信できる最低CN比(例えば18dB)を示している。CN比が、最低CN比を下回る範囲では、タグは起動信号を受信することはできない。
波形1711は、この境界線1712と、点P4(x座標:P4x、y座標:P4y)及び点P5(x座標:P5x、y座標:P5y)で交わる。波形1711における点P4〜点P5までの範囲は最低CN比を上回っているので、この間ではタグ111は起動信号を受信し得る。
【0027】
以上の説明は、図8(c)のx軸についての説明であったがy軸についても同様である。
ここで、実際に起動信号を受信できる領域は、図8(a)で示すように受信電界強度が最低受信電界強度を上回り(条件1)、かつ図8(b)で示すようにCN比が最低CN比を上回る(条件2)領域である。
【0028】
よって、妨害信号が有る場合に起動信号を受信できる範囲は、条件1と条件2の双方を満たす図8(c)の領域1722となる。
以上説明したように、LF送信機により送信される起動信号のタグによる受信可能領域は、妨害信号送信機が妨害信号を送信することで、任意の領域へと変更できる。
2.2.個別構成
以下、各機器の構成について説明する。
【0029】
図3は、コントローラ101の構成を示すブロック図である。
コントローラ101は、主としてUHF帯受信部310と制御部320と記憶部330とから構成される。
記憶部330は、メモリ等を含んで構成され、コントローラ101が動作上必要とする各種データ、プログラムを記憶する機能を有する。また、記憶部330は、コントローラID331を記憶している。
【0030】
UHF帯受信部310は、タグとの通信を実行するものであり、UHFアンテナ311と接続している。UHF帯受信部310は、制御部320の制御下で、UHF帯(例えば300MHz、400MHz、900MHz、2.4GHz帯)の無線信号として送信されるタグID、LFアンテナID、コントローラID等を含む受信通知信号を受信して復調し、復調後のデジタルデータである受信通知データを制御部320に通知する機能を有する。
【0031】
制御部320は、記憶しているプログラムをプロセッサにより実行することにより、コントローラ101の各部を制御する機能を有する。具体的には、制御部320は、UHF帯受信部310から受け取った受信通知データに含まれるタグIDの検査等を行い、タグID、コントローラID、コントローラIDを含むタグID通知データをサーバ106に送信する機能を有する。また、制御部320は、外部の8つのLF送信機に対し起動信号を送信するよう指示する。
【0032】
図4は、LF送信機102aの構成を示すブロック図である。
LF送信機102aは、主としてLF帯送信部410、制御部420、記憶部430から構成される。
記憶部430は、メモリ等を含んで構成され、LF送信機102が動作上必要とする各種データ、プログラム、LFアンテナID431を記憶する機能を有する。
【0033】
LF帯送信部410は、LFアンテナ411と接続しており、ウエイクパターン、LFアンテナID431、起動信号の送信指示を行ったコントローラのコントローラID等を含む起動信号をLFアンテナ411を介してタグに送信する機能を有する。
制御部420は、記憶部430に記憶されているプログラムをプロセッサにより実行することにより、LF送信機102aの各部を制御する機能を有する。制御部420は、コントローラ101からの指示を受けて、LFアンテナID等を含んだ起動信号を送信するようLF帯送信部410に指示する。
【0034】
なお、LF送信機102b〜102hも、LF送信機102aと同様の構成を備える。
図5は、タグ111の構成を示すブロック図である。
タグ111は、LF帯受信部510、UHF帯送信部520、制御部530、記憶部540、及び各部に電力を供給する電池550を有する。
記憶部540は、メモリ等を含んで構成され、タグ111が動作上必要とする各種データ、プログラムを記憶する機能を有する。また、記憶部540はタグID541を記憶している。
【0035】
LF帯受信部510は、LFアンテナ511と接続しており、LF送信機からのLF帯での起動信号を受信し、受信した起動信号を復調し、復調したデジタルデータである起動データを制御部530に通知する機能を有する。
UHF帯送信部520は、UHF帯で信号を送信するためのUHFアンテナ521と接続しており、制御部530から通知されたタグID541、受信したLFアンテナID、コントローラID等を含む受信通知データを変調し受信通知信号としてコントローラに送信する機能を有する。
【0036】
制御部530は、記憶部540に記憶されているプログラムをプロセッサにより実行することにより、タグ111の各部を制御する機能を有する。制御部530は、起動データの先頭のウェイクパターンを認識したときに処理を開始する。制御部530は、起動データ中のLFアンテナID、コントローラIDと、タグID541とを含む受信通知データを生成してUHF帯送信部520へ通知する機能を有する。
【0037】
図6は、妨害信号送信機151aの構成を示すブロック図である。
妨害信号送信機151aは、主としてLF帯送信部610、制御部620、記憶部630から構成される。
LF帯送信部610は、LFアンテナ611と接続しており、妨害信号をLFアンテナ611を介して送信する機能を有する。
【0038】
妨害信号は、LF送信機102aにより送信される起動信号と同周波数の信号である。
制御部620は、記憶部630に記憶されているプログラムをプロセッサにより実行することにより、妨害信号送信機151aの各部を制御する機能を有する。
制御部620は、LF送信機が送信する起動信号を検知し、検知した起動信号を解析することで、妨害信号の送信周期、送信タイミング、送信時間長等を算出し、LF帯送信部610に妨害信号を送信させる。
【0039】
記憶部630は、メモリ等を含んで構成され、妨害信号送信機151aが動作上必要とする各種データ、プログラムを記憶する機能を有する。なお、妨害信号送信機151bも、妨害信号送信機151aと同様の構成を備える。
3.動作
以下、上述の構成を備える所在管理システムの動作について説明する。
3.1.全体動作
サーバ106は、各エリアに配置された各コントローラにコントローラ設定用データを送信し、これを用いて各コントローラは動作する。コントローラ101は、4つの机に設置されたLF送信機102a〜102dに対して送信指示を行うなどの送信制御処理を行う。送信指示を受けたLF送信機102a〜102dはそれぞれ、各机に対応して着席や離席を行う人が所持するタグが受信できるように起動信号を送信する。
【0040】
図7は、LF送信機102a〜LF送信機102dまでの4台それぞれが起動信号を送信するタイミングを示している。LF送信機102a〜LF送信機102dのそれぞれにはt1/4の期間が割り当てられており、割り当てられた期間内に起動信号を送信する。図中のバー(例えばバー1001)は、起動信号の送信開始から送信終了までの期間を示している。
【0041】
各机の付近にタグを所持する人が存在(着席等)した場合には、タグはこの起動信号に呼応して、タグID、起動信号に含まれるLFアンテナIDを含む受信通知信号を送信する。コントローラ101は、受信通知信号を受信し、次いで、LFアンテナID、タグIDを含むタグID通知データをサーバ106に送信する。サーバ106は、タグID通知データに含まれるタグID、LFアンテナIDを確認することにより、タグの存在位置を管理する。
【0042】
妨害信号送信機151a及び151bは、妨害信号を送信することで、LF送信機102a〜102dが送信する起動信号の受信可能範囲を、図2の破線121a’〜121d’で示した範囲から、図1の破線121a’〜121d’で示した範囲に変更する。以下、妨害信号の送信タイミングと送信時間について説明する。
3.2.妨害信号の送信タイミング及び送信時間
上述のように、妨害信号送信機は、LF送信機と独立して動作しながらも、起動信号の受信可能領域を任意の領域に変更するものである。
【0043】
ここで、妨害信号送信機が、妨害信号を常に(連続する信号として)送信するとした場合、妨害信号を間欠的に送信する場合に比べて低消費電力の面で劣る。
妨害信号を間欠的に送信するとした場合に、妨害信号を送信するタイミング及び送信長は、起動信号の仕様、起動信号を受信する側であるタグの誤り訂正能力によっても異なってくる。例えば、タグが、起動信号の一部を受信できなかった場合に、起動信号全てを破棄するとの仕様に基づくものであれば、妨害信号送信機は、起動信号の一部をタグに受信させなければ足りる。
【0044】
また、起動信号の一部を受信不能とする際に、特定の箇所(例えば、ウェイクパターン)を受信不能とする必要がある場合も想定される。
以下に、(1)起動信号の一部(不特定箇所)を受信不能とする場合、(2)起動信号の一部(特定箇所)を受信不能とする場合について説明する。
(1)不特定箇所を受信不能とする場合
タグは、受信した起動信号が一部でも欠けていた場合に、受信した信号全てを不正な信号として破棄するとの仕様に基づき動作する。
【0045】
図9(a)は、LF送信機102aが送信する起動信号と、妨害信号送信機151aが送信する妨害信号の送信タイミングについて説明するための図である。
LF送信機102aは、周期ct毎に、送信開始から送信終了までの時間(送信時間)がstである送信信号1401を送信するものとする。
妨害信号送信機151aは、まず、LF送信機102aが出力する起動信号をLF帯送信部610において検波し、検波した結果から制御部620において起動信号の信号長stを算出し、stを記憶部630に記憶しておく。
【0046】
そして、制御部620は、stよりも短い周期であるit1(it1 < st)を決定し、周期it1毎に、妨害信号(1411、1412、1413・・・)を送信する。
これにより、起動信号1401の送信期間中に必ず妨害信号が送信されることになるので、タグにおいて起動信号のうちの少なくとも一部が必ず受信不能となる。よって、タグは完全な起動信号を受信することができない。
【0047】
ここで、妨害信号の送信時間長lt1は、タグの誤り訂正能力を超えるビット長に相当する時間長とする必要がある。タグが誤り訂正機能を備えていない場合、lt1は1ビット長に相当する時間長以上であればよい。
(2)特定箇所を受信不能にする場合
タグが、起動信号のうち特定の箇所(一例として、ウェイクパターン)を受信できない場合に、正常な処理ができなくなる例について説明する。
【0048】
ここで、ウェイクパターンは、タグに含まれる制御部530を起動するための特定パターンのビット列である。
図9(b)は、LF送信機102aが送信する起動信号(ウェイクパターン)と、妨害信号送信機151aが送信する妨害信号の送信タイミングについて説明するための図である。
【0049】
LF送信機102aは、周期ct毎に、送信開始から送信終了までの時間(送信時間)がstであり、先頭にウェイクパターンを含む送信信号1401を送信するものとする。
妨害信号送信機151aは、まず、LF送信機102aが出力する起動信号をLF帯送信部610において検波し、検波した結果から制御部620において起動信号の信号長stを算出し、stを記憶部630に記憶しておく。
【0050】
また、stに、ウェイクパターンの起動信号全体に占める割合を乗じることで、ウェイクパターンの送信時間長wtを算出し、記憶部6430に記憶しておく。
そして、妨害信号送信機151aの制御部620は、wtよりも短い妨害信号の送信周期it2を決定し(it2<wt)、送信周期it2毎に、妨害信号(1471、1472、・・・、1473、1474・・・)を送信する。
【0051】
これにより、いずれのウェイクパターンについても、ウェイクパターンのうちの少なくとも一部が妨害信号により受信不能となり、タグにおいて完全なウェイクパターンが復元できなくなる。ここで、妨害信号の送信時間長lt2は、タグの誤り訂正能力を超えるビット長に相当する時間長とする必要がある。
以上説明したように、妨害信号送信機が、上述した時刻、タイミング等に基づき妨害信号を間欠的に送信することで、確実に受信不要領域での起動信号の受信を妨げることができ、なおかつ、妨害信号を連続信号として送信する場合に比べて低消費電力化を実現することができる。
4.変形例
以上、本発明に係るタグ管理システムの実施形態を説明したが、例示したタグ管理システムの一例としての所在管理システムを以下のように変形することも可能であり、本発明が上述の実施形態で示した通りの所在管理システムに限られないことは勿論である。
(1)上述の実施の形態では、妨害信号は周期的に送信することとしていたが、これに限らず、起動信号を検出する毎に妨害信号を送信することとしてもよい。
【0052】
例えば、上述のように起動信号の不特定箇所を受信不能とすればよい場合、妨害信号送信機は、起動信号の送信開始を検出するたびに、その検出直後に妨害信号を送信する。
また、起動信号のうちの特定箇所(一例としてウェイクパターン)を受信不能とすればよい場合について図10(a)及び図10(b)を用いて説明する。
図10(b)は、図10(a)の一部を拡大したものである。
【0053】
図10(a)に示すようにLF送信機102aが送信する起動信号は、信号送信時間がstであり、周期ct毎に送信される。
起動信号は、図10(b)に示すように、一例として、ウェイクパターン、UW(ユニークワード)、UHFチャネル、コントローラID、LFアンテナID、予約領域、及びCRCを含むデジタルデータが変調されたものである。
【0054】
なお、デジタルデータの各内容を簡単に補足説明すると、UWはデータの先頭を表す固有識別情報である。UHFチャネル情報は、UHF帯における複数の周波数帯のうち、いずれをタグが用いるべきかを示す情報である。CRCは、誤り訂正用に起動信号で送信されるデジタルデータの最後に入れられたデータである。
図10(a)は、LF送信機102aが送信する起動信号と、妨害信号送信機151aが送信する妨害信号の送信タイミングについて説明するための図である。
【0055】
妨害信号送信機151aは、まず、起動信号の送信周期ct、送信長st、ウェイクパターンの送信長wtを算出する。これらの算出方法については、実施の形態で既に説明済みである。
その後、妨害信号送信機151は、起動信号が送信されるのを常に監視する。
起動信号が送信されたことを検出すると、図10(b)に妨害信号1として示すように、起動信号の先頭から時間it3(<wt)以内に、妨害信号1631を送信する。
【0056】
これにより、妨害信号送信機は、タグによるウェイクパターンの受信を妨げることができる。また、妨害信号送信機は、周期的に妨害信号を送信する必要が無くなり、省電力化を図ることができる。
(2)上記変形例(1)では、起動信号の先頭に配されているウェイクパターンの受信を妨げる例で説明したが、これに限るものではない。例えば、LFアンテナIDのような、起動信号の先頭に配されてはいないデータの受信を妨げることもできる。
【0057】
この場合、妨害信号送信機151aは、まず、起動信号の送信周期ct、送信長stを算出する。これらの算出方法については、実施の形態で既に説明済みである。
また、起動信号が送信開始されてからLFアンテナIDが送信されるまでの時間を算出する。起動信号により送出されるデジタルデータの先頭から何バイト目にLFアンテナIDが配置されているかは既知であるから、起動信号の送信開始から、どの位の期間が経過したときにLFアンテナIDが送信開始され(図10中のit4)、また送信終了するか(図10中のit5)を算出することができる。
【0058】
そして、起動信号の送信開始を検知してから、it4経過後it5経過前の期間を含む期間において、妨害信号を送出する。
これにより、妨害信号送信機は、タグによるLFアンテナIDの受信を妨げることができる。
なお、LFアンテナIDが受信できなければ、タグと、LF送信機とを対応づけることができないので、起動信号全体の受信を妨げるのと同様の効果を奏しうる。
【0059】
また、妨害信号送信機は、周期的に妨害信号を送信する必要が無いので省電力化を図ることができる。
(3)妨害信号の出力レベルは、LF送信機による起動信号の出力レベルに応じて定めてもよい。
例えば、妨害信号送信機は、LF送信機が送信する起動信号を検波して、検波した受信レベルに所定割合を乗じたレベルで妨害信号を送信してもよい。
【0060】
また、妨害信号送信機は、ユーザが妨害信号の出力レベルを指定するためのインターフェイスを有し、ユーザがそのインターフェイスを用いて指定した出力レベルで妨害信号を出力することとしてもよい。
(4)実施の形態及び変形例で示した各装置のプロセッサ、及びそのプロセッサに接続された各種回路に実行させるための機械語或いは高級言語のプログラムコードからなる制御プログラムを、記録媒体に記録すること、又は各種通信路等を介して流通させ頒布することもできる。このような記録媒体には、ICカード、ハードディスク、光ディスク、フレキシブルディスク、ROM、フラッシュメモリ等がある。流通、頒布された制御プログラムはプロセッサに読み出され得るメモリ等に格納されることにより利用に供され、そのプロセッサがその制御プログラムを実行することにより各実施形態で示したような各機能が実現されるようになる。なお、プロセッサは、制御プログラムを直接実行する他、コンパイルして実行或いはインタプリタにより実行してもよい。
(5)実施の形態及び変形例で示した各機能構成要素は、その機能を実行する回路として実現されてもよいし、1又は複数のプロセッサによりプログラムを実行することで実現されてもよい。また、実施の形態及び変形例で示したシステムは、IC、LSIその他の集積回路のパッケージとして構成されるものとしてもよい。このパッケージは各種装置に組み込まれて利用に供され、これにより各種装置は、各実施形態で示したような各機能を実現するようになる。
(6)本発明の一実施形態に係る妨害信号送信機は、一例として図9に示すように、周期的にタグへ起動信号を送信する送信機と共に用いられ、タグにより起動信号が受信される空間的範囲を制限する妨害信号送信機であって、起動信号の1周期における送信時間よりも短い間隔で周期的に妨害信号を送信する。
【0061】
この構成により、起動信号1401のタグによる受信が、妨害信号1411、1412、・・・等により必ず妨げられることになる。
また、図8に示すように、前記妨害信号として、前記起動信号と同周波数の信号を前記起動信号より弱い信号出力で送信することとしてもよい。
この構成により、図8(b)に示すように、P4〜P5の範囲でのみ受信可能なCN比を上回ることとなり、起動信号の受信範囲を領域1722に制限することができる。
【0062】
また、図10に示すように、前記起動信号の1周期における送信時間を、前記起動信号を検波して取得することとしてもよい。
この構成により、妨害信号の送信周期を、起動信号の実際の送信時間を用いて算出することができる。
また、図9に示すように、前記各送信機は、前記タグによる誤り訂正が可能な信号長よりも長い信号長の妨害信号を送信することとしてもよい。
【0063】
この構成により、誤り訂正機能をタグが備える場合にも、起動信号の受信を確実に妨害することができる。
また、前記妨害信号の出力レベルは、前記起動信号を検波し、検波した受信レベルに所定割合を乗じたレベルに決定することとしてもよい。
この構成により、妨害信号の出力を、起動信号の受信を妨げるのに必要十分な電力で行うことができる
また、ユーザが前記妨害信号の出力レベルを指定するためのインターフェイスを有し、指定された出力レベルで前記妨害信号を出力することとしてもよい。
【0064】
この構成により、ユーザの所望の出力を用いた妨害信号の送信を行うことができる。
また、図10に示すように、前記周期的な妨害信号の送信として、前記起動信号を検波する毎に前記妨害信号を送信することとしてもよい。
この構成により、起動信号が送信された場合にのみ妨害信号を出力することで、不要な妨害信号の出力を抑制し、消費電力低減を図ることができる。
(7)上述の各実施形態及び各変形例を、部分的に組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0065】
106 サーバ
101 コントローラ
102a〜102d LF送信機
111 タグ
121a〜121d 起動信号受信可能領域
151a、151b 妨害信号送信機
【技術分野】
【0001】
本発明は、タグを用いてその所持者の所在を管理する技術に関し、特に、タグの誤検出防止に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タグリーダとタグを用いて、タグの所在管理を行うシステムが提案されている(特許文献1、2)。例えば、オフィスなどでは、並んでいる机1つ1つにタグリーダを設置し、タグを各人に持たせておけば、そのタグを持った人がタグリーダに近づいた場合に検知できるので、在席管理をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−177775号公報
【特許文献2】特開2008−182566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような在席管理では、タグリーダの送信する起動信号に関し、その受信を望む全空間をカバーできるようにタグリーダの起動信号の送信出力を定めることになるが、起動信号の到達範囲が、起動信号の受信を望まない領域にまで及んでしまう場合がある。例えば、机近辺でのみタグに起動信号を受信させればよいところ、オフィスのレイアウト等の制限から通路まで起動信号の到達範囲が及ぶ場合などが想定される。この場合、単に通路を通過する人が所持しているタグが起動信号を受信してしまい、その通行人が在席しているとの誤検知がされてしまう。
【0005】
上記の課題に鑑み、本発明は、タグリーダとしてのLF送信機が送信する起動信号の受信できる空間的な領域を任意の範囲に限定しタグの誤検出を防止することができる妨害信号送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、周期的にタグへ起動信号を送信する送信機と共に用いられ、タグにより起動信号が受信される空間的範囲を制限する妨害信号送信機であって、起動信号の1周期における送信時間よりも短い間隔で周期的に妨害信号を送信する。
また、前記妨害信号として、前記起動信号と同周波数の信号を前記起動信号より弱い信号出力で送信することとしてもよい。
【0007】
また、前記起動信号の送信時間を、前記起動信号を検波して取得することとしてもよい。
また、前記妨害信号として、前記タグによる誤り訂正が可能な信号長よりも長い信号長の妨害信号を送信することとしてもよい。
また、前記妨害信号の出力レベルは、前記起動信号を検波し、検波した受信レベルに所定割合を乗じたレベルに決定することとしてもよい。
【0008】
また、ユーザが前記妨害信号の出力レベルを指定するためのインターフェイスを有し、指定された出力レベルで前記妨害信号を出力することとしてもよい。
また、前記周期的な妨害信号の送信として、前記起動信号を検波する毎に前記妨害信号を送信することとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の妨害信号送信機は、上述の構成を備えることにより、起動信号の受信できる空間的な領域を任意の範囲に限定しタグの誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る所在管理システムの構成の一例を示した図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る所在管理システムにおける設置前構成の一例を示した図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るコントローラの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るLF送信機の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るタグの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る妨害信号送信機の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るLF送信機が起動信号を送信するタイミングを示す図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る起動信号の受信可能領域の妨害信号による変更について説明するための図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る起動信号と、妨害信号の送信タイミングについて説明するための図である。
【図10】本発明の変形例に係る起動信号と妨害信号との送信タイミング等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る妨害信号送信機の一実施形態である所在管理システムについて説明する。
1.概要
本所在管理システムは、タグの所在管理を行うサーバと、複数のタグと、LF(Low Frequency)帯を用いタグを起動するための起動信号を送信する複数のLF送信機と、LF送信機による起動信号の送信タイミングの調整、起動されたタグからUHF(Ultra High Frequency)帯を用いて送信される信号の受信、受信結果のサーバへの送信とを行うコントローラと、妨害信号送信機とを含んで構成される。
【0012】
タグ、LF送信機、コントローラは、各々識別情報であるタグID、LFアンテナID、コントローラIDを記憶しており、これらの識別情報を互いに伝達し合う。
複数のLF送信機は、予め管理対象となるエリア内の異なる位置に配置されており、送信する起動信号には、LF送信機を識別するLFアンテナIDが含まれる。
タグは、起動信号を受信した場合に、起動信号に含まれるLFアンテナIDと、タグIDとをコントローラに送信する。コントローラは、そのタグID、LFアンテナID及びコントローラIDをサーバに送信する。サーバは、LFアンテナIDにより識別されるLF送信機の配置を予め記憶しており、受信したタグID、LFアンテナIDを用いタグの位置を把握する。
【0013】
ここで、各LF送信機の起動信号の送信出力は、起動信号の到達範囲がその受信を望む領域をカバーできるように設定されており、このため起動信号の到達範囲が、起動信号の受信を望まない領域(以下、受信不要領域という。)にまで及んでしまう場合がある。
妨害信号送信機は、妨害信号を送信することによって受信不要領域でのタグによる起動信号の受信を不能にする。すなわち、妨害信号送信機は、起動信号のタグによる受信可能範囲を任意の範囲に制限する。
2.構成
2.1.全体構成
図1は、本実施の形態に係る所在管理システムの構成の一例を示した図であり、例えば、あるオフィス内の1エリアを示す。
【0014】
このエリアでは、机103a〜103dと椅子104a〜104dが2個ずつ2列に配されており、各列とエリア中央部分の通路とがパーティション171a及び171b並びにパーティション171c及び171dにより仕切られている。各机103a〜103dの上にはLF帯(例えば120kHz〜130kHz帯)で信号を無線送信するLF送信機102a〜102dが配置されている。LF送信機102a〜102dのそれぞれは、RS485などの通信ケーブルを介して1台のコントローラ101に接続されている。また、コントローラ101はサーバ106に接続されている。
【0015】
エリア内の椅子104a〜104dのいずれか(例えば、椅子104a)に管理対象となる人が着席すると、その椅子近辺のLF送信機102a〜102dのいずれか(例えば、LF送信機102a)が送信する起動信号をその人が所持するタグが受信する。起動信号には、起動信号を送信したLF送信機を識別するLFアンテナIDが含まれており、タグは、そのLFアンテナIDと、タグIDとをコントローラ101に送信する。コントローラ101からサーバ106へタグの情報が伝えられることにより、所在管理が実現される。
【0016】
ここで、図1に破線で示す領域121aは、LF送信機102aが送信する起動信号をタグが受信可能な領域を示す。破線の内側が受信可能な領域である。破線で示す領域121b〜121dについても破線121aと同様に、LF送信機102b〜102dが送信する起動信号をタグが受信可能な領域を示している。ここで、領域121aは、元々は起動信号が受信可能であった領域を、妨害信号送信機151aが送信する妨害信号によって任意に変更した後の領域を示している。領域121b〜121dについても領域121aと同様である。
【0017】
図2は、図1に示す構成から妨害信号送信機151a、151bを設置する前の構成(以下、設置前構成という。)を示し、起動信号が受信可能な領域は変更されていない。
設置前構成において、LF送信機102aが送信する起動信号は、円形の破線で示す領域121a’において受信可能であり、受信可能範囲は、パーティション171aの裏側(通路側)までも及んでいる。
【0018】
この場合に、通路を通過する通行人がタグを所持しつつ、図2のハッチで示す領域122aに至ると、その通行人のタグがLF送信機102aによる起動信号を受信し、コントローラ101と通信してしまう。そして最終的には、サーバ106においてその通行人もLF送信機102aに係る椅子に着席しているとの誤判断がされてしまうことになる。
妨害信号送信機151aは、このような誤判断がなされてしまう状況を回避するために、妨害信号を送信して領域122aでの起動信号の受信を妨げる。すなわち、妨害信号送信機151aは、妨害信号を送信することで、LF送信機102aが送信する起動信号が受信可能な領域を、図2に示す領域121a’から図1に示す領域121aへと変更する。なお、LF送信機102aにおける起動信号の送信出力を弱めれば、起動信号がパーティション171aの裏側に回り込むのを避けることもできるが、そうすると起動信号の受信可能領域自体が全体的に狭まってしまい、起動信号の受信が必要であるにもかかわらず受信ができない領域が生じてしまう。
【0019】
ここで、起動信号の受信可能領域の妨害信号による変更について図8を用いて説明する。
図8(c)は、LF送信機と妨害信号送信機との配置を示す図である。
LF送信機Aは、xy平面の原点位置に配され、LF送信機Aを囲むように、x軸上に妨害信号送信機C、Eが配され、y軸上に妨害信号送信機B、Dが配されている。
【0020】
なお、図8(c)の構成は、起動信号の受信可能領域が妨害信号によって任意に変更可能であることについて説明するためのものであり、上述の図1、図2の構成に1対1に対応したものではない。
図8(c)の領域1721は、妨害信号送信機B〜Eによる妨害信号の送信が無いと仮定した場合において、LF送信機Aが送信する起動信号をタグが受信可能な領域を示す。
【0021】
図8(c)の領域1722は、妨害信号送信機B〜Eによる妨害信号の送信がある場合において、LF送信機Aが送信する起動信号をタグが受信可能な領域を示す。
以降の説明は、妨害信号が無い場合に起動信号の受信が可能であった円形の領域1721が、妨害信号送信機B〜Eによる妨害信号の送信によって矩形の領域1722に変更されることについて行うものである。
【0022】
図8(a)は、図8(c)のx軸上におけるLF送信機A、妨害信号送信機C及びEが送信する電波による受信電界強度を示す。
図8(a)の横軸は、図8(c)のx軸に相当し、縦軸は各位置における受信電界強度を示す。
波形1701は、妨害信号が無いとした場合における、LF送信機Aが送信する起動信号の受信電界強度を示す。
【0023】
波形1702、波形1703は、それぞれ、妨害信号送信機C及びEが送信する妨害信号の受信電界強度を示す。妨害信号は、起動信号と同周波数の信号である。
ここで、図8(a)中の境界線1704は、起動信号が受信できる最低受信電界強度(114dBuV/m)を示しており、この境界線1704を下回る範囲では起動信号は受信できない。
【0024】
波形1701は、この境界線1704と、点P1(x座標:P1x、y座標:P1y)及び点P2(x座標:P2x、y座標:P2y)で交わっている。妨害信号が無いとした場合、波形1701における点P1〜点P2までの間では、受信電界強度が最低受信電界強度を上回っているので、タグ111は起動信号を受信することができる。P1x、P2xは、図8(c)における領域1721とx軸との交点のx座標に一致する。
【0025】
図8(b)は、妨害信号が有る場合におけるLF送信機Aによる起動信号と、妨害信号送信機C、Eによる妨害信号との受信電界強度の差分を示す図である。
横軸は、図8(c)のx軸と一致し、縦軸はCN(Carrier to Noise ratio)比を示す。
図8(b)の波形1711は、LF送信機Aによる起動信号と、妨害信号送信機C、Eによる妨害信号との受信電界強度の差分を示している。
【0026】
ここで、図8(b)における境界線1712は、起動信号が受信できる最低CN比(例えば18dB)を示している。CN比が、最低CN比を下回る範囲では、タグは起動信号を受信することはできない。
波形1711は、この境界線1712と、点P4(x座標:P4x、y座標:P4y)及び点P5(x座標:P5x、y座標:P5y)で交わる。波形1711における点P4〜点P5までの範囲は最低CN比を上回っているので、この間ではタグ111は起動信号を受信し得る。
【0027】
以上の説明は、図8(c)のx軸についての説明であったがy軸についても同様である。
ここで、実際に起動信号を受信できる領域は、図8(a)で示すように受信電界強度が最低受信電界強度を上回り(条件1)、かつ図8(b)で示すようにCN比が最低CN比を上回る(条件2)領域である。
【0028】
よって、妨害信号が有る場合に起動信号を受信できる範囲は、条件1と条件2の双方を満たす図8(c)の領域1722となる。
以上説明したように、LF送信機により送信される起動信号のタグによる受信可能領域は、妨害信号送信機が妨害信号を送信することで、任意の領域へと変更できる。
2.2.個別構成
以下、各機器の構成について説明する。
【0029】
図3は、コントローラ101の構成を示すブロック図である。
コントローラ101は、主としてUHF帯受信部310と制御部320と記憶部330とから構成される。
記憶部330は、メモリ等を含んで構成され、コントローラ101が動作上必要とする各種データ、プログラムを記憶する機能を有する。また、記憶部330は、コントローラID331を記憶している。
【0030】
UHF帯受信部310は、タグとの通信を実行するものであり、UHFアンテナ311と接続している。UHF帯受信部310は、制御部320の制御下で、UHF帯(例えば300MHz、400MHz、900MHz、2.4GHz帯)の無線信号として送信されるタグID、LFアンテナID、コントローラID等を含む受信通知信号を受信して復調し、復調後のデジタルデータである受信通知データを制御部320に通知する機能を有する。
【0031】
制御部320は、記憶しているプログラムをプロセッサにより実行することにより、コントローラ101の各部を制御する機能を有する。具体的には、制御部320は、UHF帯受信部310から受け取った受信通知データに含まれるタグIDの検査等を行い、タグID、コントローラID、コントローラIDを含むタグID通知データをサーバ106に送信する機能を有する。また、制御部320は、外部の8つのLF送信機に対し起動信号を送信するよう指示する。
【0032】
図4は、LF送信機102aの構成を示すブロック図である。
LF送信機102aは、主としてLF帯送信部410、制御部420、記憶部430から構成される。
記憶部430は、メモリ等を含んで構成され、LF送信機102が動作上必要とする各種データ、プログラム、LFアンテナID431を記憶する機能を有する。
【0033】
LF帯送信部410は、LFアンテナ411と接続しており、ウエイクパターン、LFアンテナID431、起動信号の送信指示を行ったコントローラのコントローラID等を含む起動信号をLFアンテナ411を介してタグに送信する機能を有する。
制御部420は、記憶部430に記憶されているプログラムをプロセッサにより実行することにより、LF送信機102aの各部を制御する機能を有する。制御部420は、コントローラ101からの指示を受けて、LFアンテナID等を含んだ起動信号を送信するようLF帯送信部410に指示する。
【0034】
なお、LF送信機102b〜102hも、LF送信機102aと同様の構成を備える。
図5は、タグ111の構成を示すブロック図である。
タグ111は、LF帯受信部510、UHF帯送信部520、制御部530、記憶部540、及び各部に電力を供給する電池550を有する。
記憶部540は、メモリ等を含んで構成され、タグ111が動作上必要とする各種データ、プログラムを記憶する機能を有する。また、記憶部540はタグID541を記憶している。
【0035】
LF帯受信部510は、LFアンテナ511と接続しており、LF送信機からのLF帯での起動信号を受信し、受信した起動信号を復調し、復調したデジタルデータである起動データを制御部530に通知する機能を有する。
UHF帯送信部520は、UHF帯で信号を送信するためのUHFアンテナ521と接続しており、制御部530から通知されたタグID541、受信したLFアンテナID、コントローラID等を含む受信通知データを変調し受信通知信号としてコントローラに送信する機能を有する。
【0036】
制御部530は、記憶部540に記憶されているプログラムをプロセッサにより実行することにより、タグ111の各部を制御する機能を有する。制御部530は、起動データの先頭のウェイクパターンを認識したときに処理を開始する。制御部530は、起動データ中のLFアンテナID、コントローラIDと、タグID541とを含む受信通知データを生成してUHF帯送信部520へ通知する機能を有する。
【0037】
図6は、妨害信号送信機151aの構成を示すブロック図である。
妨害信号送信機151aは、主としてLF帯送信部610、制御部620、記憶部630から構成される。
LF帯送信部610は、LFアンテナ611と接続しており、妨害信号をLFアンテナ611を介して送信する機能を有する。
【0038】
妨害信号は、LF送信機102aにより送信される起動信号と同周波数の信号である。
制御部620は、記憶部630に記憶されているプログラムをプロセッサにより実行することにより、妨害信号送信機151aの各部を制御する機能を有する。
制御部620は、LF送信機が送信する起動信号を検知し、検知した起動信号を解析することで、妨害信号の送信周期、送信タイミング、送信時間長等を算出し、LF帯送信部610に妨害信号を送信させる。
【0039】
記憶部630は、メモリ等を含んで構成され、妨害信号送信機151aが動作上必要とする各種データ、プログラムを記憶する機能を有する。なお、妨害信号送信機151bも、妨害信号送信機151aと同様の構成を備える。
3.動作
以下、上述の構成を備える所在管理システムの動作について説明する。
3.1.全体動作
サーバ106は、各エリアに配置された各コントローラにコントローラ設定用データを送信し、これを用いて各コントローラは動作する。コントローラ101は、4つの机に設置されたLF送信機102a〜102dに対して送信指示を行うなどの送信制御処理を行う。送信指示を受けたLF送信機102a〜102dはそれぞれ、各机に対応して着席や離席を行う人が所持するタグが受信できるように起動信号を送信する。
【0040】
図7は、LF送信機102a〜LF送信機102dまでの4台それぞれが起動信号を送信するタイミングを示している。LF送信機102a〜LF送信機102dのそれぞれにはt1/4の期間が割り当てられており、割り当てられた期間内に起動信号を送信する。図中のバー(例えばバー1001)は、起動信号の送信開始から送信終了までの期間を示している。
【0041】
各机の付近にタグを所持する人が存在(着席等)した場合には、タグはこの起動信号に呼応して、タグID、起動信号に含まれるLFアンテナIDを含む受信通知信号を送信する。コントローラ101は、受信通知信号を受信し、次いで、LFアンテナID、タグIDを含むタグID通知データをサーバ106に送信する。サーバ106は、タグID通知データに含まれるタグID、LFアンテナIDを確認することにより、タグの存在位置を管理する。
【0042】
妨害信号送信機151a及び151bは、妨害信号を送信することで、LF送信機102a〜102dが送信する起動信号の受信可能範囲を、図2の破線121a’〜121d’で示した範囲から、図1の破線121a’〜121d’で示した範囲に変更する。以下、妨害信号の送信タイミングと送信時間について説明する。
3.2.妨害信号の送信タイミング及び送信時間
上述のように、妨害信号送信機は、LF送信機と独立して動作しながらも、起動信号の受信可能領域を任意の領域に変更するものである。
【0043】
ここで、妨害信号送信機が、妨害信号を常に(連続する信号として)送信するとした場合、妨害信号を間欠的に送信する場合に比べて低消費電力の面で劣る。
妨害信号を間欠的に送信するとした場合に、妨害信号を送信するタイミング及び送信長は、起動信号の仕様、起動信号を受信する側であるタグの誤り訂正能力によっても異なってくる。例えば、タグが、起動信号の一部を受信できなかった場合に、起動信号全てを破棄するとの仕様に基づくものであれば、妨害信号送信機は、起動信号の一部をタグに受信させなければ足りる。
【0044】
また、起動信号の一部を受信不能とする際に、特定の箇所(例えば、ウェイクパターン)を受信不能とする必要がある場合も想定される。
以下に、(1)起動信号の一部(不特定箇所)を受信不能とする場合、(2)起動信号の一部(特定箇所)を受信不能とする場合について説明する。
(1)不特定箇所を受信不能とする場合
タグは、受信した起動信号が一部でも欠けていた場合に、受信した信号全てを不正な信号として破棄するとの仕様に基づき動作する。
【0045】
図9(a)は、LF送信機102aが送信する起動信号と、妨害信号送信機151aが送信する妨害信号の送信タイミングについて説明するための図である。
LF送信機102aは、周期ct毎に、送信開始から送信終了までの時間(送信時間)がstである送信信号1401を送信するものとする。
妨害信号送信機151aは、まず、LF送信機102aが出力する起動信号をLF帯送信部610において検波し、検波した結果から制御部620において起動信号の信号長stを算出し、stを記憶部630に記憶しておく。
【0046】
そして、制御部620は、stよりも短い周期であるit1(it1 < st)を決定し、周期it1毎に、妨害信号(1411、1412、1413・・・)を送信する。
これにより、起動信号1401の送信期間中に必ず妨害信号が送信されることになるので、タグにおいて起動信号のうちの少なくとも一部が必ず受信不能となる。よって、タグは完全な起動信号を受信することができない。
【0047】
ここで、妨害信号の送信時間長lt1は、タグの誤り訂正能力を超えるビット長に相当する時間長とする必要がある。タグが誤り訂正機能を備えていない場合、lt1は1ビット長に相当する時間長以上であればよい。
(2)特定箇所を受信不能にする場合
タグが、起動信号のうち特定の箇所(一例として、ウェイクパターン)を受信できない場合に、正常な処理ができなくなる例について説明する。
【0048】
ここで、ウェイクパターンは、タグに含まれる制御部530を起動するための特定パターンのビット列である。
図9(b)は、LF送信機102aが送信する起動信号(ウェイクパターン)と、妨害信号送信機151aが送信する妨害信号の送信タイミングについて説明するための図である。
【0049】
LF送信機102aは、周期ct毎に、送信開始から送信終了までの時間(送信時間)がstであり、先頭にウェイクパターンを含む送信信号1401を送信するものとする。
妨害信号送信機151aは、まず、LF送信機102aが出力する起動信号をLF帯送信部610において検波し、検波した結果から制御部620において起動信号の信号長stを算出し、stを記憶部630に記憶しておく。
【0050】
また、stに、ウェイクパターンの起動信号全体に占める割合を乗じることで、ウェイクパターンの送信時間長wtを算出し、記憶部6430に記憶しておく。
そして、妨害信号送信機151aの制御部620は、wtよりも短い妨害信号の送信周期it2を決定し(it2<wt)、送信周期it2毎に、妨害信号(1471、1472、・・・、1473、1474・・・)を送信する。
【0051】
これにより、いずれのウェイクパターンについても、ウェイクパターンのうちの少なくとも一部が妨害信号により受信不能となり、タグにおいて完全なウェイクパターンが復元できなくなる。ここで、妨害信号の送信時間長lt2は、タグの誤り訂正能力を超えるビット長に相当する時間長とする必要がある。
以上説明したように、妨害信号送信機が、上述した時刻、タイミング等に基づき妨害信号を間欠的に送信することで、確実に受信不要領域での起動信号の受信を妨げることができ、なおかつ、妨害信号を連続信号として送信する場合に比べて低消費電力化を実現することができる。
4.変形例
以上、本発明に係るタグ管理システムの実施形態を説明したが、例示したタグ管理システムの一例としての所在管理システムを以下のように変形することも可能であり、本発明が上述の実施形態で示した通りの所在管理システムに限られないことは勿論である。
(1)上述の実施の形態では、妨害信号は周期的に送信することとしていたが、これに限らず、起動信号を検出する毎に妨害信号を送信することとしてもよい。
【0052】
例えば、上述のように起動信号の不特定箇所を受信不能とすればよい場合、妨害信号送信機は、起動信号の送信開始を検出するたびに、その検出直後に妨害信号を送信する。
また、起動信号のうちの特定箇所(一例としてウェイクパターン)を受信不能とすればよい場合について図10(a)及び図10(b)を用いて説明する。
図10(b)は、図10(a)の一部を拡大したものである。
【0053】
図10(a)に示すようにLF送信機102aが送信する起動信号は、信号送信時間がstであり、周期ct毎に送信される。
起動信号は、図10(b)に示すように、一例として、ウェイクパターン、UW(ユニークワード)、UHFチャネル、コントローラID、LFアンテナID、予約領域、及びCRCを含むデジタルデータが変調されたものである。
【0054】
なお、デジタルデータの各内容を簡単に補足説明すると、UWはデータの先頭を表す固有識別情報である。UHFチャネル情報は、UHF帯における複数の周波数帯のうち、いずれをタグが用いるべきかを示す情報である。CRCは、誤り訂正用に起動信号で送信されるデジタルデータの最後に入れられたデータである。
図10(a)は、LF送信機102aが送信する起動信号と、妨害信号送信機151aが送信する妨害信号の送信タイミングについて説明するための図である。
【0055】
妨害信号送信機151aは、まず、起動信号の送信周期ct、送信長st、ウェイクパターンの送信長wtを算出する。これらの算出方法については、実施の形態で既に説明済みである。
その後、妨害信号送信機151は、起動信号が送信されるのを常に監視する。
起動信号が送信されたことを検出すると、図10(b)に妨害信号1として示すように、起動信号の先頭から時間it3(<wt)以内に、妨害信号1631を送信する。
【0056】
これにより、妨害信号送信機は、タグによるウェイクパターンの受信を妨げることができる。また、妨害信号送信機は、周期的に妨害信号を送信する必要が無くなり、省電力化を図ることができる。
(2)上記変形例(1)では、起動信号の先頭に配されているウェイクパターンの受信を妨げる例で説明したが、これに限るものではない。例えば、LFアンテナIDのような、起動信号の先頭に配されてはいないデータの受信を妨げることもできる。
【0057】
この場合、妨害信号送信機151aは、まず、起動信号の送信周期ct、送信長stを算出する。これらの算出方法については、実施の形態で既に説明済みである。
また、起動信号が送信開始されてからLFアンテナIDが送信されるまでの時間を算出する。起動信号により送出されるデジタルデータの先頭から何バイト目にLFアンテナIDが配置されているかは既知であるから、起動信号の送信開始から、どの位の期間が経過したときにLFアンテナIDが送信開始され(図10中のit4)、また送信終了するか(図10中のit5)を算出することができる。
【0058】
そして、起動信号の送信開始を検知してから、it4経過後it5経過前の期間を含む期間において、妨害信号を送出する。
これにより、妨害信号送信機は、タグによるLFアンテナIDの受信を妨げることができる。
なお、LFアンテナIDが受信できなければ、タグと、LF送信機とを対応づけることができないので、起動信号全体の受信を妨げるのと同様の効果を奏しうる。
【0059】
また、妨害信号送信機は、周期的に妨害信号を送信する必要が無いので省電力化を図ることができる。
(3)妨害信号の出力レベルは、LF送信機による起動信号の出力レベルに応じて定めてもよい。
例えば、妨害信号送信機は、LF送信機が送信する起動信号を検波して、検波した受信レベルに所定割合を乗じたレベルで妨害信号を送信してもよい。
【0060】
また、妨害信号送信機は、ユーザが妨害信号の出力レベルを指定するためのインターフェイスを有し、ユーザがそのインターフェイスを用いて指定した出力レベルで妨害信号を出力することとしてもよい。
(4)実施の形態及び変形例で示した各装置のプロセッサ、及びそのプロセッサに接続された各種回路に実行させるための機械語或いは高級言語のプログラムコードからなる制御プログラムを、記録媒体に記録すること、又は各種通信路等を介して流通させ頒布することもできる。このような記録媒体には、ICカード、ハードディスク、光ディスク、フレキシブルディスク、ROM、フラッシュメモリ等がある。流通、頒布された制御プログラムはプロセッサに読み出され得るメモリ等に格納されることにより利用に供され、そのプロセッサがその制御プログラムを実行することにより各実施形態で示したような各機能が実現されるようになる。なお、プロセッサは、制御プログラムを直接実行する他、コンパイルして実行或いはインタプリタにより実行してもよい。
(5)実施の形態及び変形例で示した各機能構成要素は、その機能を実行する回路として実現されてもよいし、1又は複数のプロセッサによりプログラムを実行することで実現されてもよい。また、実施の形態及び変形例で示したシステムは、IC、LSIその他の集積回路のパッケージとして構成されるものとしてもよい。このパッケージは各種装置に組み込まれて利用に供され、これにより各種装置は、各実施形態で示したような各機能を実現するようになる。
(6)本発明の一実施形態に係る妨害信号送信機は、一例として図9に示すように、周期的にタグへ起動信号を送信する送信機と共に用いられ、タグにより起動信号が受信される空間的範囲を制限する妨害信号送信機であって、起動信号の1周期における送信時間よりも短い間隔で周期的に妨害信号を送信する。
【0061】
この構成により、起動信号1401のタグによる受信が、妨害信号1411、1412、・・・等により必ず妨げられることになる。
また、図8に示すように、前記妨害信号として、前記起動信号と同周波数の信号を前記起動信号より弱い信号出力で送信することとしてもよい。
この構成により、図8(b)に示すように、P4〜P5の範囲でのみ受信可能なCN比を上回ることとなり、起動信号の受信範囲を領域1722に制限することができる。
【0062】
また、図10に示すように、前記起動信号の1周期における送信時間を、前記起動信号を検波して取得することとしてもよい。
この構成により、妨害信号の送信周期を、起動信号の実際の送信時間を用いて算出することができる。
また、図9に示すように、前記各送信機は、前記タグによる誤り訂正が可能な信号長よりも長い信号長の妨害信号を送信することとしてもよい。
【0063】
この構成により、誤り訂正機能をタグが備える場合にも、起動信号の受信を確実に妨害することができる。
また、前記妨害信号の出力レベルは、前記起動信号を検波し、検波した受信レベルに所定割合を乗じたレベルに決定することとしてもよい。
この構成により、妨害信号の出力を、起動信号の受信を妨げるのに必要十分な電力で行うことができる
また、ユーザが前記妨害信号の出力レベルを指定するためのインターフェイスを有し、指定された出力レベルで前記妨害信号を出力することとしてもよい。
【0064】
この構成により、ユーザの所望の出力を用いた妨害信号の送信を行うことができる。
また、図10に示すように、前記周期的な妨害信号の送信として、前記起動信号を検波する毎に前記妨害信号を送信することとしてもよい。
この構成により、起動信号が送信された場合にのみ妨害信号を出力することで、不要な妨害信号の出力を抑制し、消費電力低減を図ることができる。
(7)上述の各実施形態及び各変形例を、部分的に組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0065】
106 サーバ
101 コントローラ
102a〜102d LF送信機
111 タグ
121a〜121d 起動信号受信可能領域
151a、151b 妨害信号送信機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的にタグへ起動信号を送信する送信機と共に用いられ、タグにより起動信号が受信される空間的範囲を制限する妨害信号送信機であって、
起動信号の1周期における送信時間よりも短い間隔で周期的に妨害信号を送信する
ことを特徴とする妨害信号送信機。
【請求項2】
前記妨害信号として、前記起動信号と同周波数の信号を前記起動信号より弱い信号出力で送信する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【請求項3】
前記起動信号の1周期における送信時間を、前記起動信号を検波して取得する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【請求項4】
前記妨害信号として、前記タグによる誤り訂正が可能な信号長よりも長い信号長の妨害信号を送信する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【請求項5】
前記妨害信号の出力レベルは、前記起動信号を検波し、検波した受信レベルに所定割合を乗じたレベルに決定する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【請求項6】
ユーザが前記妨害信号の出力レベルを指定するためのインターフェイスを有し、
指定された出力レベルで前記妨害信号を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【請求項7】
前記周期的な妨害信号の送信として、前記起動信号を検波する毎に前記妨害信号を送信する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【請求項1】
周期的にタグへ起動信号を送信する送信機と共に用いられ、タグにより起動信号が受信される空間的範囲を制限する妨害信号送信機であって、
起動信号の1周期における送信時間よりも短い間隔で周期的に妨害信号を送信する
ことを特徴とする妨害信号送信機。
【請求項2】
前記妨害信号として、前記起動信号と同周波数の信号を前記起動信号より弱い信号出力で送信する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【請求項3】
前記起動信号の1周期における送信時間を、前記起動信号を検波して取得する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【請求項4】
前記妨害信号として、前記タグによる誤り訂正が可能な信号長よりも長い信号長の妨害信号を送信する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【請求項5】
前記妨害信号の出力レベルは、前記起動信号を検波し、検波した受信レベルに所定割合を乗じたレベルに決定する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【請求項6】
ユーザが前記妨害信号の出力レベルを指定するためのインターフェイスを有し、
指定された出力レベルで前記妨害信号を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【請求項7】
前記周期的な妨害信号の送信として、前記起動信号を検波する毎に前記妨害信号を送信する
ことを特徴とする請求項1記載の妨害信号送信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−70237(P2013−70237A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207339(P2011−207339)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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