説明

密封要素用組込式固定装置を備えた切断肢端収納スリーブ

切断肢端収納スリーブ内部の遠位区域を切断肢端およびその周囲大気に対して密封することによって切断肢端を固定するための組込式固定装置を備えた切断肢端収納スリーブ(1)において、収納スリーブ内部に前記装置の機能要素(3)が組み込まれており、該要素に対して内部へ到達する密封要素(5)を可逆的、形状結合的、かつ空気が背面流動できないように取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密封要素のための、組み込み可能な、あるいは組み込まれた収納機構を備えた切断肢端収納スリーブに関する。切断肢端は、切断肢端収納スリーブにおいて、切断肢端収納スリーブ内部の遠位区域を切断肢端およびその周囲大気に対して前記密封要素を用いて密封することにより固定される。
【背景技術】
【0002】
患者の切断肢端を切断肢端収納スリーブに結合する際、通常、ライニング被覆された切断肢端が、上方から切断肢端収納スリーブの閉じた遠位端方向へ挿入されて固定される。
【0003】
この固定は、切断肢端の取付けの際の切断肢端収納スリーブにおいて生じる負圧により行われる。そのために多数の切断肢端収納スリーブはそれらの遠位端付近に弁を備えており、切断肢端の挿入中に圧縮空気が前記弁を介してスリーブから排出できる。
【0004】
収納スリーブに対するライニングの密封は、多くの実施形態においてこれらの両部材間の面的密着に基づく密封のみにより行われているため、使用される材料ならびにライニングおよび切断肢端収納スリーブの寸法的仕様により左右される。ライニング外径が少なくともシャフト内径に合致するならば、この面的密封形状によってシャフト内に負圧を持続的に発生させることができる。しかし、ライニングを含む切断肢端収納スリーブの外径がシャフト内径より大きいならば、それから生じるシャフトに対する圧力は不快に感じられ、また人工補装具への挿入が困難となる。大半の人工補装具においては切断肢端容積の変動が認められるため、収納スリーブとライニングとの間に生じるはめ合いが変化する。
【0005】
さらに切断肢端の動作、例えば歩行時には、切断肢端と収納スリーブの間に一時的な隙間が生じ得るが、それを通って内圧が消散して、収納スリーブにおける切断肢端の坐りが劣化する。所望の携帯快適性のゆえに、収納スリーブに対する切断肢端のはめ合いがあまり適切でない場合には、前記の劣化が顕著となる。四肢の持上げ動作における切断肢端収納スリーブからの切断肢端の引出し時に、前記の支障が生じることが多い。
【0006】
欧州特許第EP0631765B1号において、この問題を解決するために切断肢端収納装置が提案されている。該装置には、ほぼ円形に形成されて中央に開口を有する密封要素が設けられており、切断肢端は前記開口を通って挿入される。それにより、この密封膜とライニングおよび切断肢端自体との間のスリーブにおける切断肢端の動作時にも、密封が行われる。
【0007】
上記の密封要素は周縁にリングを備えており、該リングは切断肢端収納スリーブに設けられた溝にはまり込み、そこで固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第EP0631765B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの実施形態の短所として挙げられているのは、第一に、前記密封要素のリングがはまり込む溝における密封に問題があること、あるいは製作コストが極めて高額であることが挙げられ、第二に、溝におけるリングの形状結合性が不十分なことが挙げられる。
【0010】
切断肢端収納スリーブへの切断肢端の装着および切断肢端収納スリーブからの切断肢端の離脱の際に、周縁リングが引き出されることが頻繁であるが、それにより当然ながら機能が奏功しないこと、あるいは密封要素の再はめ込みに手間取ることが生じ得る。しかも、周縁溝を切断肢端収納スリーブ内部において形状結合的かつ気泡を生ぜずに形成することは、極めて面倒である。
【0011】
本発明の目的は、密封要素用の組込式収納装置を備えた切断肢端収納スリーブにおいて、患者の切断肢端を切断肢端収納スリーブに容易に装着することができると共に、切断肢端収納スリーブの遠位区域において生じる負圧によって、切断肢端が良好、安全かつ確実な坐りを獲得できる切断肢端収納スリーブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1を説明する部分の各特徴事項により達成される。本発明のその他の特徴および有利な実施形態は、その他の請求項において説明されている。
【0013】
本発明にしたがって、可逆的、形状結合的、かつ空気が背面流動できないように設置できる内部まで達する密封要素用の組込式スリーブを備えた切断肢端収納スリーブが提供される。
【0014】
それにより、切断肢端収納スリーブ内部における遠位区域を切断肢端および周囲大気に対して密封することによる切断肢端の固定が保証される。
【0015】
本発明に基づくスリーブおよびそれに属する密封要素を備えた切断肢端収納スリーブは、好ましくは密封装置下部の遠位区域に設けられた弁を有する。
【0016】
切断肢端を収納スリーブに装着する際に、切断肢端は密封要素を通ってスリーブに挿入され、その際に圧縮された空気は弁により外部へ排出することができる。弁の好ましい仕様により、弁を開くことなく外部からの空気を切断肢端収納スリーブの遠位区域へ流入できるため、切断肢端をスリーブから引き出す際の引っ張り力により生じる負圧が維持されて、切断肢端を収納スリーブにおいて固定する。
【0017】
密封要素が取り付けられる機能要素は、好ましくは収納スリーブ内部に存在する周回溝に分離不能にかつ空気が背面流動しないように固定されるが、機能要素をそのために包囲、圧入、接着、鋳込み、あるいは例えば加硫することができる。
【0018】
機能部は好ましくは弾性または少なくとも部分的弾性材料で製作されており、かつ優れた密封特性を有する。さらなる本発明に基づく実施形態によれば、機能要素は背部切欠きを備えており、後方へ台形状に拡大しているため、背部切欠きは収納スリーブ内部の対応溝にはまり込むことにより、適切な密封を有する溝における確実な坐りが達成される。
【0019】
切断肢端収納スリーブ内部の溝に固定された機能要素には、好ましくは中央の長円ないし三長円あるいは円形の開口を備えた内部に到達する密封要素を設けることができるため、切断肢端収納スリーブ内面を周回するリング状スリーブが形成される。
【0020】
このスリーブは好ましくは切断肢端収納スリーブ内部に向いた側に周回溝を備えており、この溝には再び密封要素を可逆的、形状結合的、かつ空気が背面流動できないように取り付けることができる。
【0021】
機能要素における前記周回溝には、本質的に剛性で切断端形状に適合可能な周回リングによって、密封要素を形状固定的かつ空気が背面流動できないように取り付けることができる。
【0022】
この好ましい実施形態により機能要素と密封要素との間に密封的結合が生じるが、密封要素は切断端を収納スリーブに装着する際に切断端に当着して、その周縁を外部大気に対して密封する。機能要素のリング下部の収納スリーブの遠位区域において生じた圧力は、弁を介して排出できるため、切断肢端の引出しの際に説明した負圧が収納スリーブ内部に生じて、切断肢端が固定される。
【0023】
切断肢端およびライニングの周囲と係合する密封要素は、切断肢端への装着時に切肢断端と共に切断肢端スリーブの遠位端方向へ引っ張られて、切断肢端と切断肢端収納スリーブ内壁との間で周回状に当着する。収納スリーブ内部には、周回機能要素の遠位に切欠きおよび縮小部が設けられており、密封膜および特に膜と周回リングとの間の移行部が装着後に前記部分へ引き戻されるため、この区域では生理的に不利な追加的に切断肢端に対して環状に作用する圧力が生じない。
【0024】
密封要素を溝に固定する周回状密封要素自体も、切断肢端収納スリーブの溝におけるその遠位端に切欠きを有する、つまり溝のこの個所では肢体切断患者への装着時に変形する密封要素に対する余地をこの区域において与えるために、その直径が減少している。
【0025】
通常はライニング被覆された切断肢端を持つ肢体切断患者へ装着する前に、切断肢端収納スリーブに密封要素を取り付けるが、該密封要素は密封膜と分離不能に結合されたその周回剛性縁により肢端収納スリーブ内部の溝に固定された機能要素と形状結合的に結合される。
【0026】
密封膜自体好ましくは弾性プラスチック材料から製作されて、基本的に中央に三長円および長円状あるいは環状の開口を備えており、この開口を通って切断肢端が切断肢端収納スリーブに装着される。密封要素の材料は好ましくは、使用されたライニングに対する密封部および密封膜の付着が阻止されるように構成される。
【0027】
密封膜の周囲に設けられる締結リングは材料および形状において、回転により容易にスリーブへ挿入され、また収納スリーブ内部に向いた機能部材面に装着されると共に、そこで周回機能要素リングに対して形状結合的および密封的結合を形成するように構成される。
【0028】
この結合は形状結合であり、切断肢端を収納スリーブに挿入する、あるいはそれから取り出す際の密封要素に対する引っ張りを問題なく、また空気の背面流動を阻止すべく処理できるため、密封区域において切断肢端を圧迫するような起伏や突起などの不快個所が防止できる。
【0029】
切断肢端収納スリーブにおける切断肢端の固定は、上記のように、収納スリーブの遠位区域において生じる負圧により行われる。上記の容積仕切りは好ましくはシャフトに取り付けられた弁によって、患者が切断肢端を収納スリーブから引き出すために背面通気できるが、そのために複数の弁を使用する、あるいは遮断式および方向変更式の弁を異なる流動方向に使用することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、密封要素用の組込式収納装置を備えた切断肢端収納スリーブにおいて、患者の切断肢端を切断肢端収納スリーブに容易に装着することができると共に、切断肢端収納スリーブの遠位区域において生じる負圧によって、切断肢端が良好、安全かつ確実な坐りを獲得できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、収納スリーブに取り付けられた機能要素に装着された密封要素の図である。
【図2】図2は、機能要素の斜視図である。
【図3】図3は、密封要素の斜視図である。
【図4】図4は、保持リング構造の斜視図である。
【図5】図5は、装置全体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、いくつかの図面に基づいて以下に例示的に説明される。図1において実際に見てとれるのは、収納スリーブ1および全体装置4の断面図であるが、収納スリーブの左側は除外されている。収納スリーブ1には溝6が加工されており、それは図から見てとれるように、背部切欠きを備えており、全体装置4の機能要素3が好ましくは持続的に前記切欠きに挿入される。機能要素3は収納スリーブ1の溝6における良好な坐りのために、収納スリーブ1における背部切欠きに合致した蟻つぎを備えており、さらに接着、鋳込みなどの適切な措置により持続的かつ確実に固定されている。
【0033】
収納スリーブ1において周縁状に固定されている機能要素3は、図2から良く見てとれるように、やはり周回溝8を備えており、図3における密封要素5が前記溝に挿入できるが、該要素はこの溝8において形状結合的に、かつ空気が背面流動できないように取り付けられている。
【0034】
この結合は、密封要素5に持続的かつ分離不能に取り付けられたリング12により、あるいは図4に示されたように、より高い剛性の材料からなる保持リング11により達成される。
【0035】
図5には、収納スリーブの周回溝6において最終的に使用される装置が示されている。機能要素3は収納スリーブ1の周回溝6に当初設置後に持続的に固定されているが、密封要素5および保持リング11は取り外されて、場合により交換することができる。
患者がその切断肢端を切断肢端収納スリーブ1に装着する場合には、周知のように、密封要素5の中央の開口10を介して行われる。
【0036】
その際に、密封要素5は切断肢端およびそれを囲むライニングに当着して、前記部材および収納スリーブを大気に対して密封する。
【0037】
切断肢端直径をこの個所で増大させる密封要素5の肉厚は、図1に示されたように、切断肢端をスリーブの切欠き9に挿入する際に、スリーブ1の内部で減少する。密封要素5とスリーブ12との間の直接的移行部についても、減少空間が設けられているため、収納スリーブにおける切断肢端の最終的位置決めの際に密封要素の突出しが生じない。これらの措置により、密封要素5および前記移行部による切断肢端への追加的圧力が効果的に阻止されるため、生理的にも不利な切断肢端に対する付加的な環状作用圧力が生じない。
【0038】
本発明の好ましい実施形態を添付図面に関連して説明したが、ここで留意すべきは、本発明がこれらの厳密な実施形態に限定されないこと、さらに開示された各請求項において定義された本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって本発明の種々の変更および修正が実施できることである。
【符号の説明】
【0039】
1 収納スリーブ
3 機能要素
4 全体装置
5 密封要素
6 溝
7 背部切り欠き
8 周回溝
9 切り欠き
10 開口
11 保持リング
12 リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断肢端収納スリーブ内部の遠位区域を切断肢端およびその周囲大気に対して密封することによって切断肢端を固定するための組込式固定装置を備えた切断肢端収納スリーブであって、収納スリーブ(1)内部に前記装置(4)の機能要素(3)が組み込まれてなり、該要素に対して内部へ到達する密封要素(5)が可逆的、形状結合的、かつ空気が背面流動できないように設置できることを特徴とする切断肢端収納スリーブ。
【請求項2】
密封要素(5)を取り付けるための機能要素(3)が収納スリーブ(1)の溝(6)において、分離不能かつ空気が背面流動できないように固定されていることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項3】
密封要素(5)を取り付けるための機能要素(3)が形状結合的組込みのための背部切欠き(7)を以て、収納スリーブ(1)内部の対応溝(6)にはまり込んでいることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項4】
密封要素(5)を取り付けるための機能要素(3)が切断肢端収納スリーブ(1)内部に向いた側において周回溝(8)を有しており、密封要素(5)は前記溝に可逆的、形状結合的、かつ空気が背面流動しないように取り付けできることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項5】
切断肢端収納スリーブ(1)は、密封要素(5)を取り付けるための機能要素(3)の遠位にある切欠き(9)を有することを特徴とする請求項1記載の組込式固定装置を備えた切断肢端収納スリーブ。
【請求項6】
密封要素(5)は切断肢端を切断肢端収納スリーブ(1)に取り付けることができるその中央を囲む開口(10)を有することを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項7】
密封要素(5)は弾性プラスチック材料と、またこの弾性プラスチック材料のまわりに周回状に配置されてそれと結合されたより高い剛性の材料(11)とからなり、さらに密封要素(5)は前記材料により切断肢端収納スリーブ(1)内部に向いた機能要素(3)の溝(8)に可逆的、形状結合的、かつ空気が背面流動できないように固定できることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項8】
切断肢端収納スリーブ(1)は弁を有しており、切断肢端を切断肢端収納スリーブ(1)へ挿入する際に切断肢端、弾性要素(5)および切断肢端収納スリーブ(1)の間に存在する空気がそこに負圧が存在する場合に、この容積仕切りに流入することなく前記弁により排出されることを特徴とする請求項1記載の組込式固定装置を備えた切断肢端収納スリーブ。
【請求項9】
シャフトに組み込みできる弁を有しており、肢体切断患者が切断肢端を切断肢端収納スリーブ(1)から引き出すことができるように、請求項8に記載された容積仕切りが前記弁により背面通気できることを特徴とする請求項1記載の固定装置。
【請求項10】
弾性密封要素(5)が切断肢端周囲のライニング表面に対して非付着性の滑り特性を有することを特徴とする請求項1記載の固定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2011−516124(P2011−516124A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502224(P2011−502224)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000425
【国際公開番号】WO2009/121340
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510266354)メディ・ゲーエムベーハー・アンド・コンパニー・カーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】MEDI GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】