説明

対向ピストン型ディスクブレーキ

【課題】 キャリパ5bの剛性向上を図れると共に、このキャリパ5bからの各パッド10a、11aの不用意な脱落を防止できる、安価で且つ軽量な構造を実現する。
【解決手段】 アウタ、インナ両ボディ部3b、4bの間で径方向外側に設けられた開口部22の周方向中央部に壁部24、24を設けると共に、これら各壁部24、24にパッドピン23の両端寄り部分を支持する事により、このパッドピン23を上記両ボディ部3b、4b同士の間に掛け渡す。このパッドピン23の中間部に上記各パッド10a、11aを、ロータの軸方向に関する変位を自在に支持する。上記各壁部24、24の、上記パッドピン23の両端寄り部分を挿通した部分よりも、ロータの径方向外側に中間リブ34の両端部を結合する。この中間リブ34を、パッドピン23の中間部の、ロータの径方向外側を覆う状態で、上記両ボディ部3b、4b同士の間に掛け渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の制動に使用するディスクブレーキのうち、ロータの両側にピストンを、互いに対向する状態で設けた、対向ピストン型ディスクブレーキの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の制動を行なう為に、ディスクブレーキが広く使用されている。ディスクブレーキによる制動時には、車輪と共に回転するロータの軸方向両側に配置された1対のパッドを、ピストンによりこのロータの両側面に押し付ける。この様なディスクブレーキとして従来から各種構造のものが知られているが、ロータの両側にピストンを、互いに対向する状態で設けた、対向ピストン型ディスクブレーキは、安定した制動力を得られる事から、近年使用例が増えている。図12は、例えば特許文献1に記載された対向ピストン型のディスクブレーキの従来構造の第1例を示している。この対向ピストン型のディスクブレーキ1は、ロータ2を挟む両側位置にアウタボディ部3及びインナボディ部4から成るキャリパ5を設け、これら各ボディ部3、4内にアウタシリンダ及びインナシリンダを、それぞれの開口部を上記ロータ2を介して互いに対向させた状態で設けている。そして、これらアウタシリンダ及びインナシリンダ内にアウタピストン及びインナピストンを、液密に、且つ上記ロータ2の軸方向に関する変位自在に嵌装している。又、上記アウタボディ部3にはアウタパッドを、上記インナボディ部4にはインナパッドを、それぞれ上記ロータ2の軸方向に変位自在に支持している。
【0003】
制動時には、上記アウタシリンダ及びインナシリンダ内に圧油を送り込み、上記アウタピストン及びインナピストンにより、上記アウタパッド及びインナパッドを、上記ロータ2の内外両側面に押し付ける。尚、図12に示した特許文献1に記載された構造の場合には、互いに別個に形成した上記アウタボディ部3とインナボディ部4とを、複数本の結合ボルトにより結合して、上記キャリパ5としている。
【0004】
又、図13〜14は、特許文献2に記載された対向ピストン型のディスクブレーキの従来構造の第2例を示している。この対向ピストン型のディスクブレーキ1aの場合も、上述の図12に示したディスクブレーキ1と同様に、アウタ、インナ両ボディ部3a、4aを、複数本の結合ボルト6、7により結合して、キャリパ5aとしている。又、上記両ボディ部3a、4aの間で、ロータ2の径方向外側(図13、14の上側)に設けられた開口部8のこのロータ2の周方向(図13の左右方向)中央部に、パッドピン9を、上記両ボディ部3a、4a同士の間に掛け渡す状態で設けている。
【0005】
そして、アウタパッド10及びインナパッド11をそれぞれ構成するプレッシャプレート12、12の、ロータ2の周方向中央部に設けた各通孔13に、上記パッドピン9の中間部を、それぞれ軸方向の摺動自在に挿通している。又、上記各プレッシャプレート12、12の上記周方向両端部に設けた第一、第二の突部14、15の側面を、上記各結合ピン6、6の中間部下面と、上記開口部8の上記周方向両側縁とに、それぞれ対向させている。制動時には、上記両ボディ部3a、4aに設けられた図示しないアウタ、インナ各シリンダに圧油を送り込み、これら各シリンダに嵌装されたやはり図示しないアウタ、インナ各ピストンにより、上記アウタ、インナ各パッド10、11を、上記ロータ2の両側面に押し付ける。
【0006】
尚、図示はしないが、特許文献3、4にも、特許文献1、2に記載された構造と同様に、アウタ、インナ両ボディ部を、複数本の結合ボルトにより結合してキャリパとした、対向ピストン型ディスクブレーキが記載されている。これに対して、特許文献5、6に記載されている様に、アウタボディ部とインナボディ部とを一体とした(一体成形した)キャリパを備えた、対向ピストン型ディスクブレーキも、従来から知られている。この様な特許文献5、6に記載された構造の場合には、上述の図12〜14に示した構造の場合と異なり、アウタ、インナ両ボディ部同士を結合固定する手間が不要となる分、対向ピストン型ディスクブレーキの組立作業性が有利になる。
【0007】
但し、上述の図12〜14に示した様な、アウタ、インナ両ボディ部3、3a、4、4aを複数本の結合ボルト6、7により結合してキャリパ5、5aとした、所謂分割型のキャリパを備えた構造の場合も、特許文献5、6に記載されたアウタ、インナ両ボディ部を一体とした、所謂一体型のキャリパを備えた構造の場合も、何れの場合も、キャリパ5、5aの剛性を向上させる面から未だ改良の余地がある。例えば、上述の図13〜14に示した特許文献2に記載された構造の場合、制動時にアウタ、インナ各ピストンをロータ2に押し付けた状態で、アウタボディ部3aとインナボディ部4aとに反力が加わり、これら両ボディ部3a、4aが互いの間隔が広がる方向に変形し、その分アウタ、インナ各シリンダ内へのブレーキ液の送り込み量を増大させる必要が生じて、ブレーキペダルの操作感が悪化する。
【0008】
この様な原因でのブレーキペダルの操作感の悪化を防止する為に、従来から、キャリパの剛性を向上させるべく、アウタ、インナ両ボディ部の間でロータの径方向外側に設けられた開口部の、このロータの周方向中央部に、センターブリッジと呼ばれる中間補強部を設け、この中間補強部により上記アウタ、インナ両ボディ部同士を結合する事が考えられている。但し、前述の図13〜14に示した構造の様に、1本のパッドピン9によりアウタ、インナ各パッド10、11をロータ2の軸方向の変位自在に支持した構造で、上述の様な中間補強部を設けた構造は、従来から知られていない。
【0009】
これに対して、図示は省略するが、キャリパに上述の様な中間補強部を設けると共に、アウタ、インナ両ボディ部の間で上記ロータの径方向外側に設けられた開口部の、上記中間補強部を挟む両側に、1対のパッドピンを、この開口部に掛け渡す状態で設ける事も考えられる。この様な構造の場合、アウタ、インナ各パッドのプレッシャプレートの周方向両端寄り部分にそれぞれ1対ずつ設けた突部に軸方向に貫通する通孔を形成し、これら各通孔に上記各パッドピンの中間部を、ロータの軸方向の変位自在に挿通する。この構成により、上記各パッドは、キャリパに対し、ロータの軸方向の変位自在に支持される。但し、この様に中間補強部と、この中間補強部の両側の1対のパッドピンとを備えた、対向ピストン型ディスクブレーキの場合、パッドピンの本数が増えるだけでなく、これら各パッドピンを挿通する為の突部を、上記アウタ、インナ各パッドにそれぞれ2個ずつ形成する必要がある。この為、対向ピストン型ディスクブレーキのコスト及び重量が徒に嵩む原因となる。
【0010】
又、やはり図示は省略するが、キャリパに上述の様な中間補強部を設けた構造で、アウタ、インナ各パッドをキャリパに支持する為のパッドピンを省略する事も考えられる。この場合には、アウタ、インナ両ボディ部のロータの径方向内側に設けた係合部により、上記各パッドの両端部を、ロータの軸方向の変位自在に支持する。但し、二輪自動車用のディスクブレーキにこの様な構造を採用した場合には、キャリパからアウタ、インナ各パッドが不用意に脱落する可能性がある。即ち、二輪自動車では、タイヤの交換作業を行なう場合に、この二輪自動車の車体からタイヤとロータとが一体で外れる。この為、上記中間補強部を設けたキャリパでパッドピンを設けない構造の場合には、タイヤ交換時に、アウタ、インナ両パッドの間からロータが外れた後、これら各パッドがこの間部分側に変位して、キャリパからこれら各パッドが不用意に脱落する可能性がある。又、別の不都合として、この様にパッドピンを省略した場合、キャリパをアウタ、インナ各パッドと共に自動車等の車両に組み付ける際に、作業者がキャリパからの各パッドの脱落を防止しつつ、このキャリパを車体に取り付ける必要があり、組み付け作業に手間を要する。
【0011】
【特許文献1】実開平5−27364号公報
【特許文献2】実公平5−26350号公報
【特許文献3】特開2001−271856号公報
【特許文献4】実用新案登録第2566698号公報
【特許文献5】特開2001−107994号公報
【特許文献6】特開平1−210628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、対向ピストン型ディスクブレーキを構成するキャリパの剛性を向上させるべく、このキャリパの開口部のロータの周方向中央部に中間補強部を設けた構造で、このキャリパからのパッドの不用意な脱落を防止できる、安価で且つ軽量な構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の対向ピストン型ディスクブレーキは、例えば前述の図12〜14に示した様に、特許文献1、2に記載されて従来から広く知られている対向ピストン型ディスクブレーキと同様に、車輪と共に回転するロータを挟んで設けられたアウタボディ部及びインナボディ部を有するキャリパと、これら両ボディ部に、互いに対向して設けられたアウタシリンダ及びインナシリンダと、これら各シリンダ内に液密に且つ上記ロータの軸方向に関する変位自在に嵌装されたピストンと、この軸方向に関する変位を自在に支持された1対のパッドとを備える。
【0014】
特に、本発明の対向ピストン型ディスクブレーキに於いては、上記両ボディ部の間で径方向外側に設けられた開口部の周方向中央部に、パッドピンを上記両ボディ部同士の間に掛け渡して設けている。又、このパッドピンに上記各パッドを上記ロータの軸方向に関する変位を自在に支持している。又、上記開口部の周方向中央部に中間補強部を設けて、この中間補強部を上記パッドピンの少なくとも中間部の径方向外側を覆う状態で上記両ボディ部同士の間に掛け渡している。
尚、本明細書及び特許請求の範囲で「周方向」とは、特に断らない限り、上記ロータの円周方向(=回転方向)を言い、同じく「径方向」とは、このロータの半径方向を言う。
【発明の効果】
【0015】
上述の様に構成する本発明の対向ピストン型ディスクブレーキの場合、アウタ、インナ両ボディ部の間で径方向外側に設けられた開口部の周方向中央部に中間補強部を設け、この中間補強部を、上記両ボディ部同士の間に掛け渡している為、前述の図12〜14に示した様に、中間補強部を設けていない場合と比べて、キャリパの剛性を向上させる事ができる。
【0016】
しかも、上記両ボディ部の間で径方向外側に設けられた開口部の周方向中央部に、パッドピンを、上記両ボディ部同士の間に掛け渡して設けており、このパッドピンに上記各パッドを上記ロータの軸方向に関する変位を自在に支持している。又、上記中間補強部を、上記パッドピンの少なくとも中間部の径方向外側を覆う状態で上記両ボディ部同士の間に掛け渡している。この為、上記各パッドをキャリパに対し軸方向の変位を自在に支持する為に、パッドピンを1個のみ設ければ良く、部品点数の削減と、低コスト化及び軽量化とを図れる。しかも、上記キャリパに各パッドを、上記パッドピンを介して支持している為、本発明の構造を二輪自動車用として使用した場合に於けるタイヤの交換時、キャリパの車両への組み付け時等でも、このキャリパから上記各パッドが不用意に脱落する事を有効に防止できる。又、これら各パッドは、ロータの周方向中央に関して対称形状を有するものを使用し易くでき、インナ、アウタ両パッド同士での共通化を図り易くなる。この結果、本発明によれば、キャリパの剛性向上を図れると共に、このキャリパからの各パッドの不用意な脱落を防止できる、軽量で且つ安価な構造を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した様に、上記中間補強部を、パッドピンの軸方向中間部外周面に対してロータの径方向に対向する凹部を有するものとする。
この好ましい構成によれば、キャリパの剛性向上とパッドの脱落防止とを高次元で両立させつつ、このキャリパの中間補強部の外面がこのキャリパの他の部分よりもロータの径方向外側に大きく突出するのを抑える事ができる。この為、キャリパの軽量化及び小型化を図れると共に、このキャリパを配置する空間の有効利用を図れる(レイアウト性の向上を図れる)。又、タイヤ交換時やディスクブレーキの使用時に、パッドピンの中間部に他の部分や飛び石等が誤って衝突する事を、より有効に防止でき、このパッドピンの損傷を、より有効に防止できる。
【0018】
又、より好ましくは、上記中間補強部にロータの径方向に貫通する放熱用貫通孔を形成する。
このより好ましい構成によれば、キャリパを車両に組み付けた状態で、放熱用貫通孔の端部を車両の進行方向と同じ側に開口させれば、上記中間補強部の存在に拘らず、制動時にロータと各パッドとの摩擦に伴う発熱により温度上昇したキャリパ内の空気を、走行風によりキャリパ外に効率良く排出できる。この為、このキャリパの剛性向上を図りつつ、制動時に発生する熱を周囲に放散し易くでき、このキャリパの温度上昇を有効に抑える事ができる。
【実施例1】
【0019】
図1〜6は、本発明の実施例1を示している。本実施例のディスクブレーキ1bは、車輪と共に回転するロータ2(図2〜5)を跨ぐ状態で配置されたキャリパ5bを備える。このキャリパ5bは、アルミニウム合金等の軽合金、或は鉄系合金の鋳造等により一体成形したもので、上記ロータ2の軸方向(図2の上下方向、図3、4の表裏方向、図5の左右方向)両側に配置されたアウタボディ部3b及びインナボディ部4bと、これら両ボディ部3b、4bの周方向(図1〜4の左右方向)両端部同士を連結する1対の連結部16、16とを備える。又、本実施例の場合には、上記両ボディ部3b、4bにそれぞれ2個ずつ、合計4個のアウタ、インナ各シリンダ17(図3にインナシリンダ17のみ図示し、アウタシリンダの図示は省略する。)を設け、これら各シリンダ17にアウタ、インナ各ピストン19、20を、それぞれ液密に且つ上記ロータ2の軸方向の変位自在に嵌装している。上記各シリンダ17は、上記両ボディ部3b、4b及び少なくとも何れかの連結部16内に設けた通油路により、互いに連通させている。従って、上記インナボディ部4bに設けた給油ポート36を通じて何れかのシリンダ19内に圧油を給排すれば、総てのシリンダ19内に圧油を給排できる。尚、車両への設置状態で上端部となる上記通油路の端部は、ブリーダスクリュ21により塞いでいる。
【0020】
又、上記両ボディ部3b、4bの間で径方向外側に設けられた開口部22の周方向中央部に、パッドピン23を、上記両ボディ部3b、4b同士の間に掛け渡した状態で支持している。即ち、これら両ボディ部3b、4bの、開口部22位置の径方向外側の周縁部に径方向に突出する壁部24、24を設け、これら壁部24、24の周方向中央部にロータ2の軸方向に貫通する支持孔25a、25b(図4、5)を、互いに同心に形成している。又、上記パッドピン23は、基端部(図1、5の左端部、図2の下端部、図3の表側端部)に大径の頭部26を設けた杆状で、先端部(図1、5の右端部、図2の上端部、図6の左端部)に、上記パッドピン23の径方向に貫通する係止孔27を形成している。上記頭部26の直径は、上記各ボディ部3b、4bに形成した支持孔25a、25bの内径よりも大きい。そして、インナボディ部4bの支持孔25b及びアウタボディ部3bの支持孔25aに上記パッドピン23を、先端部を先にした状態で順に挿通させ、上記アウタボディ部3bの支持孔25aから突出したパッドピン23の先端部に存在する係止孔27に、抜け止め部材であるクリップ28を係止している。このクリップ28は、図6に詳示する様に、硬鋼線や他のばね材等の金属製の線材により造ったもので、基部29の両端から互いに同方向に折り曲げた1対の脚部30a、30bを有し、一方の脚部30aを上記係止孔に挿通可能な直線状とすると共に、他方の脚部30bに上記パッドピン23の外周面と係合自在な円弧部31を形成する事で、上記係止孔27からの上記クリップ28の抜け止めを図れる構造としている。この様なクリップ28を係止したパッドピン23は、このクリップ28と上記頭部26とにより、上記キャリパ5bに対する軸方向両側への変位が規制され、上記両ボディ部3b、4b同士の間に掛け渡した状態で上記キャリパ5bに支持される。
【0021】
又、上記パッドピン23の中間部に、アウタ、インナ各パッド10a、11aを、ロータ2の軸方向に関する変位を自在に支持している。即ち、これら各パッド10a、11aは、プレッシャプレート12、12と、これら各プレッシャプレート12、12の片面に添着したライニング38、38とを備えており、これら各プレッシャプレート12、12の周方向中央部に、径方向外側に突出する突部32、32を形成している。又、これら各突部32、32に、ロータ2の周方向に長い長孔33、33を、それぞれ形成している。そして、これら各長孔33、33に上記パッドピン23の中間部を、軸方向の摺動自在に挿通させている。この結果、上記各パッド10a、10bは、上記キャリパ5bに支持されたパッドピン23に、上記ロータ2の軸方向に関する変位を自在に支持される。又、この状態で、上記各パッド10a、11aを構成するプレッシャプレート12、12の周方向両側面の径方向外寄り部分に存在する平面部39、39を、前記各連結部16、16の内側面(各連結部16、16同士で互いに対向する側の面)に当接若しくは近接対向させている。上記各プレッシャプレート12、12の平面部39、39と、各連結部16、16の内側面とは、互いの面接触を可能としている。
【0022】
又、上記キャリパ5bの開口部22の周方向中央部に中間補強部である、中間リブ34を、上記両ボディ部3b、4b同士の間に掛け渡した状態で設けている。即ち、上記両ボディ部3b、4bに設けた壁部24、24の、上記パッドピン23の両端寄り部分を挿通させた支持孔25a、25bを形成した部分よりも、ロータ2の径方向外側に、中間リブ34の両端部を結合している。この様な中間リブ34は、アウタ、インナ両ボディ部3b、4bと一体成形している。又、この中間リブ34の長さ方向中間部に、パッド10a、10b側に開口した断面略コ字形の凹部35を形成しており、この凹部35内に、上記各パッド10a、10bのプレッシャプレート12、12の周方向中央部に設けた突部32、32の先端部を挿入している。又、上記パッドピン23の中間部で、各パッド10a、10b同士の間に位置する部分は、上記凹部35に対して、ロータ2の径方向に対向させている。そして、上記パッドピン23の中間部の、ロータ2の径方向外側を、上記中間リブ34により覆っている。
【0023】
制動時には、前記各ピストン19、20により、上記ロータ2を挟んで上記両ボディ部3b、4bに支持されたアウタ、インナ両パッド10a、11aのライニング11、11を、上記ロータ2の両側面に押圧する事で制動を行なう。
【0024】
上述の様に構成する本実施例の対向ピストン型ディスクブレーキの場合、アウタ、インナ両ボディ部3b、4bの間で径方向外側に設けられた開口部22の周方向中央部に中間補強部である、中間リブ34を設けて、この中間リブ34を、上記両ボディ部3b、4b同士の間に掛け渡している。この為、前述の図12〜14に示した様に、中間リブ34を設けていない場合と比べて、キャリパ5bの剛性を向上させる事ができる。又、上記中間リブ34は、上記開口部22の周方向中央部に設ける事で、(別の部位に設ける場合よりも)最も剛性アップに寄与できる。
【0025】
しかも、上記開口部22の周方向中央部に、パッドピン23を、上記両ボディ部3b、4b同士の間に掛け渡した状態で設けており、このパッドピン23の中間部に上記各パッド10a、10bを、上記ロータ2の軸方向に関する変位を自在に支持している。又、上記中間リブ34を、上記パッドピン23の中間部の径方向外側を覆う状態で上記両ボディ部3b、4b同士の間に掛け渡している。この為、上記各パッド10a、10bをキャリパ5bに対し軸方向の変位を自在に支持する為に、パッドピン23を1個のみ設ければ良く、部品点数の削減と、低コスト化及び軽量化とを図れる。しかも、上記キャリパ5bに上記各パッド10a、10bを、上記パッドピン23を介して支持している為、本実施例の構造を二輪自動車用として使用した場合に於けるタイヤの交換時、キャリパ5bの車両への組み付け時等でも、このキャリパ5bから上記各パッド10a、10bが不用意に脱落する事を有効に防止できる。又、これら各パッド10a、10bは、ロータ2の周方向中央に関して対称形状を有するものを使用し易くでき、インナ、アウタ両パッド10a、10b同士での共通化を図り易くなる。この結果、本発明によれば、キャリパ5bの剛性向上を図れると共に、このキャリパ5bからの各パッド10a、10bの不用意な脱落を防止できる、軽量で且つ安価な構造を得られる。
【0026】
更に、本実施例の場合には、上記中間リブ34が、上記パッドピン23の中間部外周面に対してロータ2の径方向に対向する凹部35を有するものである。この為、キャリパ5bの剛性向上とパッド10a、10bの脱落防止とを高次元で両立させつつ、このキャリパ5bの中間リブ34の外面がキャリパ5bの他の部分よりもロータ2の径方向外側に大きく突出するのを抑える事ができる。この為、キャリパ5bの軽量化及び小型化を図れると共に、このキャリパ5bを配置する空間の有効利用を図れる(レイアウト性の向上を図れる)。又、タイヤ交換時やディスクブレーキ1bの使用時に、パッドピン23の中間部に他の部分や飛び石等が誤って衝突する事を、より有効に防止でき、このパッドピン23の損傷を、より有効に防止できる。又、中間リブ34とパッドピン23とがロータ2の周方向で同じ位置にあるので、開口部22を遮る部品面積が少なく、放熱性が良い。
【実施例2】
【0027】
次に、図7〜10は、本発明の実施例2を示している。本実施例のディスクブレーキ1cの場合には、アウタ、インナ両ボディ部3b、4bに掛け渡した中間リブ34aの長さ方向中間部の長さ方向複数個所(図示の例の場合は3個所)に、それぞれがロータ2(図8〜11)の径方向に貫通する放熱用貫通孔37、37を形成している。ディスクブレーキ1cの使用時には、キャリパ5cを、ブリーダスクリュ21を設けた一方(図7〜10の左方)の連結部16を上端側に、他方(図7〜10の右方)の連結部16を下端側に、それぞれ配置する様に車両に組み付ける。そして、上記各放熱用貫通孔37、37の両端部のうち、ロータ2の径方向内側の内端部を車両の進行方向と同じ側に開口させる。従って、車両の前進時には、走行風が、図9〜11の矢印イ、ロで示す方向に、キャリパ5bの内側から外側に、開口部22及び各放熱用貫通孔37、37を通じて抜ける。
【0028】
上述の様に構成する本実施例の場合には、上述の様に、キャリパ5cを車両に組み付けた状態で、放熱用貫通孔37、37の内端部を車両の進行方向と同じ側に開口させる事により、上記中間リブ34aの存在に拘らず、制動時にロータ2と各パッド10a、10bとの摩擦に伴う発熱により温度上昇したキャリパ5c内の空気を、走行風によりキャリパ5c外に効率良く排出できる。この為、このキャリパ5cの剛性向上を図りつつ、制動時に発生する熱を周囲に放散し易くでき、このキャリパ5cの温度上昇を有効に抑える事ができる。
その他の構成及び作用に就いては、上述の実施例1の場合と同様である為、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0029】
尚、上述した各実施例の場合には、キャリパ5b、5cに設ける中間補強部を、アウタ、インナ両ボディ部3b、4bと一体成形した中間リブ34、34aとしているが、本発明は、この様な構造に限定するものではなく、例えば、アウタ、インナ両ボディ部と、中間補強部とを別体の部材として、この中間補強部の両端部を、これら両ボディ部に、ボルト等の締結部材、又は、溶接等により結合したものでも良い。又、キャリパ5b、5cに対するパッドピン23の支持構造は、このパッドピン23の端部に雄ねじ部を形成し、この雄ねじ部をこのキャリパ5b、5cの一部に設けた軸方向のねじ孔に螺合・緊締する事で、このキャリパ5b、5cに結合した構造とする事もできる。又、この様な雄ねじ部とねじ孔との結合構造を採用すると共に、上述した各実施例と同様に、パッドピン23に形成した係止孔27にクリップ28を係止した構造を採用する事もできる。
【0030】
更に、上述した各実施例の場合には、アウタボディ部3bとインナボディ部4bとを一体とした、所謂一体型のキャリパ5b、5cを備えた構造に本発明を適用した場合に就いて説明した。但し、本発明は、アウタ、インナ両ボディ部を、複数本の結合ボルトにより結合してキャリパとした、所謂分割型のキャリパを備えた構造でも実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1を示す斜視図。
【図2】同平面図。
【図3】図2の下方から見た図。
【図4】同A−A断面図。
【図5】図3のB−B断面図。
【図6】図1からパッドピンを取り出して先端部とクリップとの係合状態を示す斜視図。
【図7】本発明の実施例2を示す斜視図。
【図8】同平面図。
【図9】図8の下方から見た図。
【図10】図8のC−C断面図。
【図11】図9のD−D断面図。
【図12】従来から知られているディスクブレーキの第1例を示す斜視図。
【図13】同第2例を示す断面図。
【図14】図13のE−E断面図。
【符号の説明】
【0032】
1、1a、1b、1c ディスクブレーキ
2 ロータ
3、3a、3b アウタボディ部
4、4a、4b インナボディ部
5、5a、5b、5c キャリパ
6 結合ボルト
7 結合ボルト
8 開口部
9 パッドピン
10、10a アウタパッド
11、11a インナパッド
12 プレッシャプレート
13 通孔
14 第一の突部
15 第二の突部
16 連結部
17 インナシリンダ
19 アウタピストン
20 インナピストン
21 ブリーダスクリュ
22 開口部
23 パッドピン
24 壁部
25a、25b 支持孔
26 頭部
27 係止孔
28 クリップ
29 基部
30a、30b 脚部
31 円弧部
32 突部
33 長孔
34、34a 中間リブ
35 凹部
36 給油ポート
37 放熱用貫通孔
38 ライニング
39 平面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するロータを挟んで設けられたアウタボディ部及びインナボディ部を有するキャリパと、これら両ボディ部に、互いに対向して設けられたアウタシリンダ及びインナシリンダと、これら各シリンダ内に液密に且つ上記ロータの軸方向に関する変位自在に嵌装されたピストンと、この軸方向に関する変位を自在に支持された1対のパッドとを備えた対向ピストン型ディスクブレーキに於いて、
上記両ボディ部の間で径方向外側に設けられた開口部の周方向中央部に、パッドピンを上記両ボディ部同士の間に掛け渡して設け、このパッドピンに上記各パッドを上記ロータの軸方向に関する変位を自在に支持しており、上記開口部の周方向中央部に中間補強部を設けて、この中間補強部を上記パッドピンの少なくとも中間部の径方向外側を覆う状態で上記両ボディ部同士の間に掛け渡している事を特徴とする対向ピストン型ディスクブレーキ。
【請求項2】
上記中間補強部が、パッドピンの軸方向中間部外周面に対してロータの径方向に対向する凹部を有するものである、請求項1に記載した対向ピストン型ディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−24290(P2007−24290A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211448(P2005−211448)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】