説明

射出成形基板と実装部品との取付構造、および射出成形基板

【課題】 射出成形により成形される射出基板に対し実装部品を半田接合する際において、半田接続部を外部から容易に視認可能な射出基板と実装部品との取付構造を提供する。
【解決手段】 基板1は、実装部品3の両側部(電極5の外方)に実装部品3を囲むように囲い部13が形成される。囲い部13の内周面(実装部品側)は、下部(導体部側の端部近傍)が半田保持部17であり、半田保持部17の上方に半田視認部19が形成される。半田保持部17は、半田9が周囲に流れ出すことを防止し、半田9の設けられる範囲を規制するものである。半田保持部17は、基板の表面(接続部15の面)に対して略垂直に形成される。半田視認部19は、上方(基板側を下方とした場合に)に向かうにつれて、実装部品から離れる方向に広がるテーパ形状である。したがって、半田9の下方(接続部15近傍)を外部から容易に視認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子実装部品が実装され、射出成形により成形される射出成形基板と電子実装部品との取付構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板上に電子実装部品が搭載される電子基板が用いられている。このような電子基板は、導電部が銅合金等のめっき・エッチング等により構成され、絶縁部に樹脂が形成される。導電部は回路を形成し、導電部の所定の位置に電子実装部品が半田により接続される。
【0003】
このような電子実装基板としては、例えば、実装部品下部において基板と半田接合を行うとともに、実装基板の外側面において、電子実装部品と基板との間隔をあけて複数の接着剤で接着した電子回路ユニットがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−311898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、DC−DCコンバータ等のように高電圧・大電流が負荷されるような回路においては、従来のような基板を用いることは困難である。導電部の断面積が小さく、このような高電圧・大電流に耐えることが困難であるためである。
【0006】
このような高電圧・大電流が負荷される基板としては、より厚い(断面積の大きな)導電体(例えば厚銅)を用いた基板を用いる必要がある。厚銅基板は、例えば射出成形のように、従来の基板とは異なる成形方法が利用できる。
【0007】
ここで、基板表面の導体部に実装部品を設置するには、半田が用いられる。すなわち、実装部品と基板との接続部には半田接合部が形成される。半田の形成範囲を所定範囲に規制してランドを形成するには、接続部の周囲に樹脂等を形成する必要がある。しかし、射出成形によって樹脂部が形成される場合には、樹脂部の厚みも厚くなる。このため、半田接続部の周囲が樹脂で囲まれ、半田との接続部が視認できず、半田接合の良否や形態等を判断することが困難である。
【0008】
図7は、基板50を示す図であり、図7(a)は立面図、図7(b)は平面図である。基板50は、銅合金等で構成される導体部37と、絶縁部である樹脂部41等から構成され、導体部37の接続部45には、実装部品31が接続される。すなわち、実装部品31の両側部の電極35は、それぞれの接続部45と、半田39により接合される。
【0009】
接続部45の周囲には、実装部品31を囲むように樹脂製の囲い部43が形成される。したがって、接続部45の半田39の接合範囲が規制される。樹脂部41および囲い部43は、射出成形によって形成される。
【0010】
しかし、前述のように、射出成形により囲い部43が形成されるため、射出時の樹脂の流動性や基板強度を考慮すると、囲い部43の厚さを薄くすることが困難である。したがって、囲い部43は、半田39の範囲を規制するために必要な厚さ以上に厚くせざるを得ない。このため、半田39の大部分が囲い部43によって囲まれ、半田39の視認性が悪くなる。したがって、半田39の接合状態等を外部から視認することが困難であり、半田接合不良等を目視で発見することが困難であるという問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、射出成形により成形される射出基板に対し実装部品を半田接合する際において、半田接続部を外部から容易に視認可能な射出基板と実装部品との取付構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達するために本発明は、射出成形基板と実装部品との取付構造であって、基板の表面の一部には導体部が形成され、実装部品が半田により前記導体部と接続部で接続されており、前記半田を囲むように樹脂製の囲い部が形成され、前記囲い部には、上方に向かうにつれて前記実装部品から離れる方向に広がる半田視認部が形成され、前記半田が前記実装部品と前記囲い部との間に形成された状態で、前記半田の接続部近傍の状態を外部から視認することが可能であることを特徴とする射出成形基板と実装部品との取付構造である。
【0013】
前記半田視認部は、少なくとも一部が前記基板から離れるにつれて拡径するテーパ形状を有してもよい。
【0014】
前記半田視認部は、少なくとも一部が前記基板から離れるにつれて拡径する段差形状を有してもよい。
【0015】
前記半田視認部の下部には、前記基板の表面に略垂直な半田保持部が形成されてもよい。
【0016】
本発明によれば、実装部品と基板上の導体部との接続部を容易に視認できるため、半田の状態を確認することができる。このため、基板と実装部品との接続の信頼性を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、射出成形により成形される射出基板に対し実装部品を半田接合する際において、半田接続部を外部から容易に視認可能な射出基板と実装部品との取付構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】基板1を示す図で、(a)は立面図、(b)は平面図。
【図2】基板20を示す図で、(a)は立面図、(b)平面図。
【図3】基板30を示す図で、(a)は立面図、(b)は平面図。
【図4】図3のA部であり、囲い部13a近傍の拡大図。
【図5】基板20を示す図で、(a)は立面図、(b)は平面図。
【図6】他の実施形態にかかる実装部品を搭載した状態を示す図。
【図7】基板50を示す図で、(a)は立面図、(b)は平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、基板1を示す図であり、図1(a)は立面図、図1(b)は平面図である。
【0020】
基板1は、プレス加工等で形成された導体部7と、射出成形により導体部7と一体成形された樹脂部11等から構成され、3〜10mm程度の厚みである。導体部7は1mm程度の厚みであり、例えば銅合金製である。樹脂部11は例えばPPS(ポリフェニンスルフィド)製である。なお、以下の説明においては、樹脂部11上に導体部7が形成された例を示すが、導体部7および樹脂部11が複数層に形成された基板に対しても本発明は当然に適用することができる。
【0021】
基板1上には電子実装部品である実装部品3が搭載される。実装部品3の両側部には電極5が形成されており、実装部品3は、電極5と導体部7とが半田9によって電気的に接続される。すなわち、基板1上には、実装部品3の両電極5に対応する部位に導体部7が形成され、それぞれの電極5が対応する導体部7と接続される。
【0022】
なお、以下の説明において、電極5と半田9により接続された導体部7の部位を接続部15とする。両接続部15同士は直接導通しないため、接続部15同士の間には樹脂部11が形成され、樹脂部11により両接続部15が離間される。すなわち、実装部品3の下方において、両接続部15間は樹脂部11が基板1を貫通する。
【0023】
実装部品3の両側部(電極5の外方)には、実装部品3(半田9)を囲むように囲い部13が形成される。囲い部13は樹脂製であり、樹脂部11と同様に射出成形により形成される。囲い部13は、実装部品3(電極5)を三方向から囲むように形成され、囲い部13においては、基板の導体部7は被覆される。なお、囲い部13は、基板1の裏面側の樹脂部11と一体化されていても良い。また、囲い部13は、電極5および半田9全体を囲うようにすることが望ましいが、電極5の側部を除く半田9のみの外方に設けてもよい。
【0024】
囲い部13は、電極5の周囲に半田9の領域だけ隙間を空けて形成される。すなわち、電極5と接続部15とを接続する半田9は、囲い部13で囲まれる。囲い部13は、半田9(接続部15)を所定範囲に規制することが可能である。
【0025】
囲い部13は、上方(基板側を下方とした場合に)に向かうにつれて、実装部品から離れる方向に広がるテーパ形状である。すなわち、囲い部13は、断面において、上方に行くにつれて囲い範囲が広くなるように形成される切り欠き形状を有する。このような囲い部13の切欠き部は、半田9の接続状態を外部から視認するための半田視認部19となる。したがって、半田視認部19は、半田9とは接触せず、半田9の下方(接続部15近傍)を外部から容易に視認することができる。テーパ部の角度としては、例えば45度程度でよい。
【0026】
なお、囲い部13の厚さは、射出成形での加工性や基板強度に応じて決定されるが、例えば、実装部品の電極5と略同厚さである。
【0027】
なお、半田視認部19のテーパ部は、図に示すように直線状であってもよく、または円弧状であってもよい。囲い部13の実装部品3の囲い範囲が広がるような連続した拡径部が形成されれば良い。
【0028】
第1の実施形態にかかる基板1によれば、囲い部13によって、半田9を所定範囲に確実に規制することができる。このため半田9が周囲に流れたりすることがない。また、半田視認部19によって、半田の状態を外部から視認することができる。このため、半田のフィレット形状や半田不良等を目視で確実に確認することができる。
【0029】
次に、第2の実施形態について説明する。図2は、第2の実施の形態にかかる基板20を示す図であり、図2(a)は基板20の立面図、図2(b)は基板20の平面図である。なお、以下の実施の形態において、図1に示した基板1と同様の機能を奏する構成要素については、図1と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
基板20には、基板1の囲い部13に代えて、囲い部21が設けられる。囲い部21は、下部側(基板との接触面側)から上方に向かって段差が形成され、実装部品から離れる方向に広がる階段形状である。
【0031】
基板20においては、囲い部21の最下段の段差の上面を含む2段目以上の段部が、半田視認部19となる。したがって、囲い部21によって、半田9の範囲が確実に規制され、また、2段目以上の段部である半田視認部19により、半田9の下方(接続部15近傍)を外部から容易に視認することができる。
【0032】
第2の実施形態にかかる基板20によれば、基板1と同様の効果を得ることができる。なお、半田視認部の態様としては、第1の実施の形態にかかるテーパ形状と第2の実施の形態に係る段差形状を組み合わせてもよい。
【0033】
次に、第3の実施形態について説明する。図3は、第3の実施の形態にかかる基板30を示す図であり、図3(a)は基板30の立面図、図3(b)は基板30の平面図である。
【0034】
基板30は、基板1の囲い部13に代えて、囲い部13aが設けられる。囲い部13aは、半田視認部19の下部に半田保持部17が設けられる。
【0035】
図4は、図3のA部拡大図であり、囲い部13aの形状を示す図である。囲い部13aの内周面(実装部品側)は、下部(基板側の端部近傍)が半田保持部17であり、半田保持部17の上方に半田視認部19が形成される。
【0036】
半田保持部17は、基板の表面(接続部15の面)に対して略垂直に形成される。半田保持部17は、囲い部13の全厚の例えば1/3程度あれば良い。それ以上では半田視認部19の効果が薄れるためである。半田保持部17は、半田9と接触して半田9が周囲に流れ出すことを防止し、半田9の設けられる範囲を規制するものである。また、半田保持部17によって半田が保持される結果、半田のフィレット形状を制御可能である。すなわち、必要な場合にはフィレット形状を上方に膨らむようにすることもできるし、あるいは逆に膨らまないように管理しやすくすることも可能である。
【0037】
すなわち、半田保持部17によって、半田9のフィレット形状を図に示すように盛り上げて(上方に膨らむように)形成することもでき、半田9の容積を増やしても半田9が周囲に流れ出すことがなく、確実に半田9を保持することができる。
【0038】
第3の実施形態にかかる基板30によれば、基板1と同様の効果を得ることができる。また、半田保持部17によって、半田9の範囲を記載できるとともに、半田9のフィレット形状を制御することができる。
【0039】
次に、第4の実施形態について説明する。図5は、第4の実施の形態にかかる基板40を示す図であり、図5(a)は基板40の立面図、図5(b)は基板40の平面図である。
【0040】
基板40は、基板20の囲い部21に代えて、囲い部21aが設けられる。囲い部21aは、半田視認部19の下部に半田保持部17が設けられる。すなわち、階段状の囲い部21aの最下段(最も基板側の段差)の内周面(基板表面から略垂直な内面)が半田保持部17となる。
【0041】
第4の実施形態にかかる基板40によれば、基板1と同様の効果を得ることができる。また、半田保持部17によって、半田9の範囲を記載できるとともに、半田9のフィレット形状を改善することができる。
【0042】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0043】
たとえば、上述した実施形態においては、実装部品として、両側方に一対の電極を有するものを示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図6(a)に示すように、ダイオード等のような3端子(電極)の実装部品3aに対しても適用することができる。この場合には、それぞれの電極5は、それぞれの接続部15によって導体部と半田9によって接続される。この際、それぞれの半田9(電極5)を囲むように、半田視認部19を形成すれば良い。半田視認部19をそれぞれの電極毎に形成することで、それぞれの電極5の接合部材である半田9の形成範囲を規制できるととともに、半田9の接続部近傍を容易に視認することができる。
【0044】
同様に、図6(b)に示すように、電界効果トランジスタのような3端子(電極)の実装部品3bに対しても適用が可能である。実装部品3bのように端子形状(電極形状)が同一でないような場合でも、それぞれの電極5(半田9)を囲むように半田視認部19を形成すれば良い。
【0045】
さらに、図6(c)に示すように、トランジスタのような6端子(電極)の実装部品3cに対しても適用が可能である。実装部品3cのように3端子以上の端子(電極)を有する場合でも、それぞれの電極5(半田9)を囲むように半田視認部19を形成すれば良い。本発明は、図6等に示した例に限られず、実装部品の形状、端子数や端子配置によらずに適用が可能である。また、図6に示す各例に対し、半田視認部の他の実施の形態(階段形状など)を組み合わせることも当然に可能である。
【符号の説明】
【0046】
1、20、30、40………基板
3………実装部品
5………電極
7………導体部
9………半田
11………樹脂部
13、21………囲い部
15………接続部
17………半田保持部
19………半田視認部
21………ガイド部
31………実装部品
35………電極
37………導体部
39………半田
41………樹脂部
43………囲い部
45………接続部
50………基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形基板と実装部品との取付構造であって、
基板の表面の一部には導体部が形成され、
実装部品が半田により前記導体部と接続部で接続されており、
前記半田を囲むように樹脂製の囲い部が形成され、
前記囲い部には、上方に向かうにつれて前記実装部品から離れる方向に広がる半田視認部が形成され、
前記半田が前記実装部品と前記囲い部との間に形成された状態で、前記半田の接続部近傍の状態を外部から視認することが可能であることを特徴とする射出成形基板と実装部品との取付構造。
【請求項2】
前記半田視認部は、少なくとも一部が前記基板から離れるにつれて拡径するテーパ形状を有することを特徴とする請求項1記載の射出成形基板と実装部品との取付構造。
【請求項3】
前記半田視認部は、少なくとも一部が前記基板から離れるにつれて拡径する段差形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の射出成形基板と実装部品との取付構造。
【請求項4】
前記半田視認部の下部には、前記基板の表面に略垂直な半田保持部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の射出成形基板と実装部品との取付構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の射出成形基板と実装部品との取付構造を有する射出成形基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−176179(P2011−176179A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39869(P2010−39869)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】