床暖房構造体及びその施工方法
【課題】薄型化が可能であるとともに、床暖房運転時の床下への熱の逃げを抑制し、また、床暖房停止後の室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができる床暖房構造体を提供する。
【解決手段】本発明は、蓄熱層の上に、面状発熱体、床材が積層された床暖房構造体であり、該蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填されたものである。
【解決手段】本発明は、蓄熱層の上に、面状発熱体、床材が積層された床暖房構造体であり、該蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等における床暖房用として用いられる床暖房構造体及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の住宅環境に対する高まりを背景に、床暖房システムを備えた住宅が増加している。
床暖房システムでは、例えば、電熱線などで発熱した熱が床下へ逃げるのを防止するため、断熱材等を設置し、熱を床下へ逃さず、熱効率を向上させている。この場合、断熱材に、ある程度厚みを付けることにより、熱効率をより向上させることができる。
【0003】
このような床暖房システムにおいて、近年、床暖房構造の薄膜化が検討されている。
特に、リフォームにおける床暖房システムの設置においては、薄型であることが大きな利点となり、既存の床にそのまま設置したとしても居住空間が圧迫されず、さらに、従来のような既存の床構造、配線、配管等の修復や再施工が不要となるため、工期短縮とコスト削減を図ることができる。
床暖房構造の薄膜化においては、例えば、電熱線が配列された面状発熱シートを利用したり、蓄熱材を含有した蓄熱体(蓄熱シート)を導入(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等)する方法等が挙げられる。
蓄熱材を含有した蓄熱体を導入した場合、発熱した熱を蓄熱体に蓄えることができるため、通常用いられていた断熱材を使用しなくても、熱効率を向上させることが可能である。そのため、床暖房構造の薄型化が可能であり、かつ、床下への熱の逃げを抑制し、熱効率を向上させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−343864号公報
【特許文献2】特開2003−294323号公報
【特許文献3】特開2003−021349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、このような面状発熱シートや蓄熱シートを利用した床暖房システムでは、電源と電熱線をつなぐ配線コード等が存在し、床暖房構造の薄型化を図る場合、配線コードをどのように設置するかが、重要となってくる。
通常、蓄熱シートどうしの間に配線コード用の隙間を設け、その隙間に配線コードを収納する方法が導入されてきたが、このような方法では、該隙間から熱が逃げ出し、熱効率が低下させてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討をした結果、蓄熱層の上に、面状発熱体、床材が積層された床暖房構造体であって、蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填された床暖房構造体が、薄型化が可能であるとともに、床暖房運転時の床下への熱の逃げを抑制し、また、床暖房停止後の室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、以下の特徴を含むものである。
1.蓄熱層の上に、面状発熱体、床材層が積層された床暖房構造体であって、
蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填されていることを特徴とする床暖房構造体。
2.蓄熱層の上に、耐熱層、面状発熱体、床材層が積層された床暖房構造体であって、
蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填されていることを特徴とする床暖房構造体。
3.基材の上に、面状発熱体の配線コードを格納するための収納スペースを設けて、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めて蓄熱層を積層し、
該収納スペースに面状発熱体の配線コードを格納して、蓄熱層の上に面状発熱体を積層し、さらに収納スペースに潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填し、
その上に、床材層を積層することを特徴とする床暖房構造体の施工方法。
4.基材の上に、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めて蓄熱層を積層し、
該蓄熱層の一部に、面状発熱体の配線コードを格納するための収納スペースを設け、
該収納スペースに面状発熱体の配線コードを格納して、蓄熱層の上に面状発熱体を積層し、さらに収納スペースに潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填し、
さらにその上に、床材層を積層することを特徴とする床暖房構造体の施工方法。
5.蓄熱層と面状発熱体との間に、耐熱層を積層することを特徴とする3.または4.に記載の床暖房構造体の施工方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の床暖房構造体は、薄型化が可能であるとともに、床暖房運転時の床下への熱の逃げを抑制し、また、床暖房停止後の室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができる。
さらに、本発明の床暖房構造体の施工方法は、工期短縮とコスト削減を図ることができる、居住空間を圧迫することもなく、戸建て住宅をはじめ、アパート、マンション等の幅広い既存の床構造に対応した床暖房として適用可能であり、特にリフォーム用の簡易式の薄型床暖房構造体として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0010】
本発明の床暖房構造体は、蓄熱層の上に、面状発熱体、床材が積層されたものである。
【0011】
<蓄熱層>
本発明の蓄熱層は、潜熱蓄熱材が含有された蓄熱シートからなるものである。潜熱蓄熱材としては、例えば、無機潜熱蓄熱材、有機潜熱蓄熱材等が挙げられる。
【0012】
無機潜熱蓄熱材としては、例えば、硫酸ナトリウム10水和物、炭酸ナトリウム10水和物、リン酸水素ナトリウム12水和物、チオ硫酸ナトリウム5水和物、塩化カルシウム6水和物等の水和塩等が挙げられる。
【0013】
有機潜熱蓄熱材としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、脂肪酸トリグリセリド、ポリエーテル化合物等が挙げられ、これらの潜熱蓄熱材のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0014】
本発明では、特に有機潜熱蓄熱材を好適に用いることができる。有機潜熱蓄熱材は、沸点が高く揮発しにくいため、蓄熱シート成形時における体積変化(肉痩せ)がほとんど無く、また長期に亘り蓄熱性能が持続するため、好ましい。さらに、有機潜熱蓄熱材を用いた場合、用途に応じた相変化温度の設定が容易であり、例えば相変化温度の異なる2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合することで、容易に相変化温度の設定が可能となる。
【0015】
脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素を用いることができ、具体的には、n−テトラデカン(融点8℃)、ペンタデカン(融点10℃)、n−ヘキサデカン(融点17℃)、n−ヘプタデカン(融点22℃)、n−オクタデカン(融点28℃)、n−ノナデカン(融点32℃)、イコサン(融点36℃)、ドコサン(融点44℃)、およびこれらの混合物で構成されるn−パラフィンやパラフィンワックス等が挙げられる。
【0016】
長鎖アルコールとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖アルコールを用いることができ、具体的には、カプリルアルコール(融点7℃)、ラウリルアルコール(融点24℃)、ミリスチルアルコール(融点38℃)、ステアリルアルコール(融点58℃)等が挙げられる。
【0017】
長鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸を用いることができ、具体的には、オクタン酸(融点17℃)、デカン酸(融点32℃)、ドデカン酸(融点44℃)、テトラデカン酸(融点50℃)、オクタデカン酸(融点70℃)、ヘキサデカン酸(融点63℃)等の脂肪酸等が挙げられる。
【0018】
長鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ラウリン酸メチル(融点5℃)、ミリスチン酸メチル(融点19℃)、パルミチン酸メチル(融点30℃)、ステアリン酸メチル(融点38℃)、ステアリン酸ブチル(融点25℃)、アラキジン酸メチル(融点45℃)等が挙げられる。
【0019】
脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0020】
ポリエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エチルエチレングリコール等が挙げられる。
【0021】
本発明では潜熱蓄熱材として、特に、実用温度領域である25℃〜40℃に相変化温度(融点)を有する脂肪族炭化水素、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステルが、潜熱量が高く、化学的安定に優れ、好ましい。
【0022】
さらに潜熱蓄熱材としては、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖アルコール、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましく、さらには、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましい。中でも、炭素数15〜22の長鎖脂肪酸エステル、炭素数15〜22の脂肪族炭化水素を使用することが好ましく、このような潜熱蓄熱材は、潜熱量が高く、実用温度領域に相変化温度(融点)を有するため、様々な用途に使用しやすい。
【0023】
本発明では、融点の異なる2種以上の潜熱蓄熱材を用いることにより、適用温度領域の広い蓄熱シートを得ることができる。
【0024】
また、2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合して使用する場合は、相溶化剤を用いることが好ましい。相溶化剤を用いることにより、有機潜熱蓄熱材どうしの相溶性を向上させることができる。
相溶化剤としては、例えば、脂肪酸トリグリセリド、親水親油バランス(HLB)が1以上10未満(好ましくは1以上5以下)の非イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合し用いることができる。
【0025】
相溶化剤と潜熱蓄熱材の混合比は、通常潜熱蓄熱材100重量部に対し、相溶化剤0.1重量部から20重量部(好ましくは0.5重量部から10重量部)程度とすればよい。
【0026】
さらに蓄熱シートには、粘性調整剤、熱伝導性物質等を混合して用いることができる。
【0027】
粘性調整剤としては、例えば、粘土鉱物等が挙げられ、特に、有機処理された層状の粘土鉱物を用いることが好ましい。
潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物を混合することにより、有機処理された層状の粘土鉱物の層間に潜熱蓄熱材が入り込み、潜熱蓄熱材が有機処理された層状の粘土鉱物の層間に保持されやすい構造となる。
【0028】
このような有機処理された層状の粘土鉱物と潜熱蓄熱材を混合することにより、結果として、潜熱蓄熱材の粘度を上昇させ、蓄熱シート内に潜熱蓄熱材を担持し、より安定して担持され、保持し続けることができる。
【0029】
潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物混合時の粘度は、0.5〜20.0Pa・s程度とすればよい。なお、粘度は、B型回転粘度計を用い、温度23℃、相対湿度50%RHで測定した値である。
また、潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物混合時のTI値は、4.0〜9.0程度とすればよい。なお、TI値は、B型回転粘度計を用い、下記式1により求められる値である。
TI値=η1/η2 (式1)
(但し、η1:2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)、η2:20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
【0030】
有機処理された層状粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト、バーミキュライト、カオリナイト、アロフェン、雲母、タルク、ハロイサイト、セピオライト等が挙げられる。また、膨潤性フッ素雲母、膨潤性合成マイカ等も利用できる。
【0031】
有機処理としては、例えば、層状粘土鉱物の層間に存在する陽イオンを長鎖アルキルアンモニウムイオン等でイオン交換(インターカレート)すること等が挙げられる。
本発明では、特に、スメクタイト、バーミキュライトが有機処理されやすい点から、好適に用いられる。さらに、スメクタイトの中でも、特に、モンモリロナイトが好適に用いられ、本発明では、特に、有機処理されたモンモリロナイトを好適に用いることができる。
【0032】
具体的に、有機処理されたモンモリロナイトとしては、
ホージュン社製のエスベン、エスベン C、エスベン E、エスベン W、エスベン P、エスベン WX、エスベン NX、エスベン NZ、エスベン N-400、オルガナイト、オルガナイトーD、オルガナイトーT(商品名)
ズードケミー触媒社製のTIXOGEL MP、TIXOGEL VP、TIXOGEL VP、TIXOGEL MP、TIXOGEL EZ 100、MP 100、TIXOGEL UN、TIXOGEL DS、TIXOGEL VP−A、TIXOGEL VZ、TIXOGEL PE、TIXOGEL MP 250、TIXOGEL MPZ(商品名)
エレメンティスジャパン社製のBENTONE 34、38、52、500、1000、128、27、SD−1、SD−3(商品名)
等が挙げられる。
【0033】
有機処理された層状粘土鉱物と潜熱蓄熱材の混合比は、通常潜熱蓄熱材100重量部に対し、0.5重量部から50重量部(好ましくは1重量部から30重量部、より好ましくは3重量部から15重量部)程度とすればよい。
【0034】
本発明では、このような潜熱蓄熱材をカプセル化したものを何らかの方法で固定化したり、または、潜熱蓄熱材を多孔体に充填して蓄熱シートを形成することもできるし、潜熱蓄熱材をそのままフィルムに封入し蓄熱シートを形成することもできる。
【0035】
潜熱蓄熱材をカプセル化する方法としては、例えば、特願2005−134852、特願2006−95924等に記載の方法等が挙げられる。
【0036】
カプセル化した蓄熱性カプセルを、蓄熱シートとして用いる場合、何らかの方法で固定して用いればよい。例えば、蓄熱性カプセルをそのままフィルムに封入することもできるし、蓄熱性カプセルと結合剤を混練したスラリーの成形物を蓄熱シートとしてもよいし、各種材料に浸漬法、減圧・加圧注入法等により蓄熱性カプセルを含浸させて蓄熱シートとしてもよし、あるいはこれらの方法を組み合わせて蓄熱シートを製造してもよい。
【0037】
例えば、蓄熱性カプセルをそのまままフィルムに封入する方法としては、蓄熱性カプセルを水等の溶媒に分散させたものや蓄熱性カプセルの固体微粉末をフィルムに封入すればよい。
ここでフィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の有機材料等から選ばれる1種または2種以上、
アルミニウム、金、銀、銅、鉄、クロム、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニッケル、ビスマス、スズ、コバルトから選ばれる一種以上の金属、または、これら金属の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびこれらの複合物から選ばれる一種以上、等を主成分とするフィルムを用いることができる。
【0038】
また、蓄熱性カプセルと結合剤を混練したスラリーを形成する方法としては、公知のものを使用すればよい。
このような結合剤としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の溶剤可溶型樹脂、NAD型樹脂、水可溶型樹脂、水分散型樹脂、無溶剤型樹脂等、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機結合剤、
ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色セメント、焼石膏、コロイダルシリカ、水溶性珪酸アルカリ金属塩等の無機結合剤等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0039】
本発明では、特に有機結合剤を用いることが好ましく、有機結合剤のうち1液タイプ、2液タイプのいずれも使用することができるが、2液タイプがより好ましい。2液タイプを使用することにより、速やかに反応が進行し、高強度の成形物が形成され、かつ、蓄熱性カプセルが均一に分散した成形物が得られやすいため好ましい。
【0040】
2液タイプとしては、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とイミド基、ヒドロキシル基とアルデヒド基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボキシル基とアジリジン基等の架橋反応を利用したもの等が挙げられる。特に、ヒドロキシル基とイソシアネート基の架橋反応を利用したものが、速やかに反応が進行し、かつ、蓄熱性カプセルがより均一に分散した成形物が得られやすいため好ましい。
【0041】
また、スラリーには、結合剤の他に、溶剤、顔料、骨材、粘性調整剤、緩衝剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、難燃剤、レベリング剤、沈降防止剤、たれ防止剤、脱水剤等の各種添加剤を混練することもできる。
【0042】
このような成形物の形成においては、このようなスラリーを、公知の方法でシート化し形成してもよいし、あるいは、前述したフィルムにスラリー封入し形成してもよい。
【0043】
また、浸漬法、減圧・加圧注入法等により含浸させる方法においては、下記に示す材料に蓄熱性カプセルを含浸させればよい。
材料としては、例えば、コンクリート、石膏ボード、モルタル、スレート板等の無機材料、
ガラス繊維、パルプ繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維等の合成繊維、綿、木綿、石綿、麻、ヤシ、コルク、ケナフ等の天然繊維等の繊維材料、
アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機材料、
松、ラワン、ブナ、ヒノキ、合板等の木質材料、その他、紙、合成紙、セラミックペーパー等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0044】
蓄熱シートにおける蓄熱性カプセルの含有量としては、蓄熱シートの全体量に対し、10重量%以上、さらには20重量%以上70重量%以下であることが好ましい。このような範囲であることにより、優れた蓄熱性を有することができる。
【0045】
潜熱蓄熱材を多孔体に充填したものとしては、多孔体に潜熱蓄熱材が担持・保持されているものであれば、特に限定されない。
【0046】
多孔体の形状も、潜熱蓄熱材が担持・保持できれば、特に限定されず、例えば、粒子凝集型多孔体、スポンジ型多孔体、3次元編目構造型多孔体等の形状を有するもの等が挙げられる。本発明では、特に、潜熱蓄熱材がより担持・保持されやすい点から、3次元編目構造型多孔体が好ましい。
【0047】
また多孔体としては、無機多孔体、有機多孔体等特に限定されず用いることができるが、潜熱蓄熱材をより担持・保持しやすい点から有機多孔体が好適に用いられる。さらに、有機多孔体は潜熱蓄熱材の相変化(特に、液体から固体への変化)による体積収縮に起因する蓄熱シートの割れや形状変化も防ぐことができる。
【0048】
このような有機多孔体を形成する樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・ベオバ樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の溶剤可溶型、NAD型、水可溶型、水分散型、無溶剤型等、または、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0049】
さらに本発明では、上記樹脂成分のうち、1液タイプ、2液タイプのいずれも使用することができるが、2液タイプのほうが好ましい。例えば、反応性官能基を含有する化合物と該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を含有する化合物からなる2液タイプが好適に用いられる。
【0050】
このような、反応性官能基の組み合わせとしては、ヒドロキシル基とイソシアネート基、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とイミド基、ヒドロキシル基とアルデヒド基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボキシル基とアジリジン基等が挙げられる。
【0051】
さらに、反応性官能基の組み合わせとしては、特に、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物、エポキシ基を含有する化合物とアミノ基を含有する化合物等の組み合わせが好ましく、特にヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物の組み合わせが好ましい。このような、組み合わせでは、温和な条件下で架橋反応が進行しやすく、また、架橋密度等の調節も容易であるため好ましい。
【0052】
例えば、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物を用いる場合は、NCO/OH比率で通常0.1〜1.8、好ましくは0.2〜1.5、さらに好ましくは0.3〜1.3となる範囲内で設定すればよい。
このようなNCO/OH比率の範囲内であることにより、多孔体の強度を強靭なものとすることができ、潜熱蓄熱材の漏れのない均一な緻密な架橋構造を得ることができる。
NCO/OH比率が0.1より小さい場合は、架橋率が低くなり、硬化性、耐久性、強度等において十分な物性を確保することができない場合があり、また潜熱蓄熱材が漏れ易くなる。NCO/OH比率が1.8よりも大きい場合は、未反応のイソシアネートが残存し、多孔体の各種物性に悪影響を与え、多孔体が変形しやすくなり、潜熱蓄熱材が漏れやすくなる。
【0053】
多孔体の製造は、上記成分を用いて、公知の方法で製造すればよい。例えば、特願2005−322930、特願2006−280575等に記載の方法等が挙げられる。
【0054】
本発明多孔体中の潜熱蓄熱材含有率(充填率)は、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、最も好ましくは65重量%以上である。
【0055】
潜熱蓄熱材をそのままフィルムに封入する方法では、例えば、上述したフィルムを用いて、潜熱蓄熱材を封入すればよい。
【0056】
本発明の蓄熱シートは、上述した潜熱蓄熱材、あるいは、潜熱蓄熱材をカプセル化したもの、潜熱蓄熱材を多孔体に充填したもの、潜熱蓄熱材をフィルムに封入したものであり、このような蓄熱シートの厚さは、特に限定されないが、通常1mm〜20mm、さらには2mm〜15mm程度が好ましい。
<面状発熱体>
【0057】
本発明の面状発熱体は、特に限定されず、公知の面状発熱体を使用することができる。
面状発熱体としては、例えば、ニクロム線を蛇行させて絶縁体表面に配置したもの、電気抵抗発熱体と電極を積層したもの、PTC面状発熱体等が挙げられる。
【0058】
電気抵抗発熱体は、電気抵抗値が1×103Ω・cm以下(好ましくは、1×102Ω・cm以下)であれば、特に限定されるものではないが、樹脂成分と導電性粉末からなるものが好ましい。電気抵抗発熱体の電気抵抗値が1×103Ω・cmより大きい場合は、消費電力量が大きくなるため好ましくない。
【0059】
樹脂成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ブチラール樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、合成ゴム等、あるいはこれらを複合した樹脂等が挙げられる。
本発明では、特に、柔軟性を有する樹脂として、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、合成ゴム等が好ましく用いられる。
【0060】
導電性粉末としては、グラファイト粉末、鱗片状黒鉛、薄片状黒鉛、カーボンナノチューブ等の炭素粉末、グラファイト化された繊維、グラファイトを担持させた繊維等の炭素繊維、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、白金、パラジウム、鉄等の金属微粒子、これらの金属微粒子等の導電性成分を繊維表面に担持させた導電性繊維、また金属微粒子をマイカ、雲母、タルク、酸化チタン等の粉末の表面に担持させた導電性粉末、また、フッ素ドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、導電性酸化亜鉛等の導電性酸化物等を使用することができる。
【0061】
電気抵抗発熱体は、上記導電性粉末を上記樹脂中に均一に分散するように混合し、公知の方法で、フィルム状、シート状に形成することにより、製造することができる。
導電性粉末の混合量は、特に限定されないが、電気抵抗発熱体の電気抵抗値を1×103Ω・cm以下に調整できるように混合すればよく、樹脂成分の固形分100重量部に対して、10重量部以上300重量部以下(好ましくは30重量部以上100重量部以下)であることが好ましい。
【0062】
また、電気抵抗値が1×103Ω・cm以下にできる範囲であれば、樹脂成分以外に、必要に応じて、消泡剤、増粘剤、防腐剤、抗菌剤、変性剤、紫外線吸収剤、硬化剤、硬化触媒、増膜助剤、溶媒等の添加剤を加えることもできる。
【0063】
電気抵抗発熱体の厚さは、3mm以下であることが好ましい。3mmより厚くなると、柔軟性が低下し、また、電気抵抗発熱体に温度ムラが生じやすくなるため、均一な温度に成り難くなる場合がある。
【0064】
電極としては、電気抵抗値が電気抵抗発熱体よりも低いものであれば特に限定されないが、好ましくは、金属微粒子からなる電極および/またはそれら金属微粒子を混合したペーストを用いることができる。金属微粒子としては、特に限定されないが、銀、銅、金、白金等を用いることができる。
【0065】
電極は、公知の方法で、電気抵抗発熱体に積層することができる。例えば、スプレー、ローラー、刷毛塗り、ディップコーティング、スパッタ、蒸着、スクリーン印刷法、ドクターブレード法等で積層することができる。
【0066】
PTC面状発熱体は、PTC(Positive Temperature Coefficient;正の温度係数)特性を利用したもので、例えばポリエステルフイルムやPETフイルム等の樹脂フィルムに、PTC特性を示す特殊発熱インクを印刷することにより形成することができる。特殊発熱インクの材料としては、イットリウム、アンチモン、ランタンなどの希土類元素を微量ドープして半導体化したチタン酸バリウム系セラミックが用いられる。
このようなPTC面状発熱体は、PTC特性によって、通電すると素早く昇温し、所定温度に達し、自ら温度を制御、維持することができるため、センサー・コントローラー等を使用しなくてもよい。
【0067】
また、このPTC面状発熱体は、前記特殊発熱インクによる印刷方式であるため、薄型に形成でき、従って軽量化及び薄型化を図ることができる。更に、このPTC面状発熱体は、電源を入れてから所定温度になるまでは抵抗値が低く、昇温に要する消費電力を抑えることができ、さらに所定温度に達すると自己制御機能により消費電力を抑えることができるため、効率的に暖房できる。
<床材層>
【0068】
本発明の床材層としては、塩化ビニル、ポリオレフィン等の樹脂タイル及び樹脂シート、一枚板、フローリング材、合板、パーティクルボード、コルクタイル等の木質材料、繊維質材料、磁器タイル等のセラミックス材料、大理石、御影石、テラゾー等の石材料、モルタル等のコンクリート材料、ゴムやリノリウム等の天然樹脂タイル及び天然樹脂シート等を使用することができる。また畳、カーペット、じゅうたん等も床材層として使用することができる。本発明では、特に、耐熱性を有するものが、より好ましい。
床材層の厚さは、通常1〜20mm、好ましくは2〜15mm程度であればよい。
<施工方法>
【0069】
本発明の床暖房構造体は、新築やリフォーム等いずれの場合においても使用することができ、基材の上に積層することができる。本発明では、薄膜化が可能であり、特にリフォームの場合に好適に使用できる。
【0070】
基材としては、特に限定されず、コンクリート、モルタル、合板、または、既存のフローリング等が挙げられる。
【0071】
施工方法としては、まず、基材の上に、蓄熱シートを敷き詰めて蓄熱層を積層する。
この際、蓄熱層には面状発熱体の配線コードを格納するための収納スペースを設ける。収納スペースを設ける方法としては、特に限定されないが、蓄熱シートを敷き詰める際に蓄熱シートの間に一部収納スペースを設ける方法、または、蓄熱シートを敷き詰めた後該蓄熱シートの一部を切り取り収納スペースを設ける方法等が挙げられる。
本発明の蓄熱層として、潜熱蓄熱材を多孔体に充填した蓄熱シートを用いた場合、蓄熱シートをカッターやナイフ等で切り取ったとしても潜熱蓄熱材が漏れることがないため、簡便に収納スペースを設けることができる。
このような収納スペースは、配線コードと電源が接続しやすいように、適宜設ければよい。収納スペースの幅は、配線コードの種類や面状発熱体の積層面積等により適宜設定すればよいが、通常1cm〜10cm程度である。また収納スペースの長さは、積層する面状発熱体により適宜設定すればよい。
【0072】
次に、該収納スペースに配線コードを格納して面状発熱体を積層する。
面状発熱体の積層面積は、適宜設定すればよいが、面状発熱体を蓄熱層全面に積層することもできるし、蓄熱層の一部だけに積層してもよい。
さらに収納スペースには、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填する。
配線コードを格納した収納スペースには隙間が存在する。本発明では、このような隙間から熱が逃げ出さないように、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填することによって、熱効率の低下を抑えることができる。蓄熱体を充填する方法としては、例えば、上述した蓄熱体形成成分を液体状態で収納スペースに塗布し、固化させてもよいし、上述した蓄熱体形成成分からなる蓄熱シートを予め所定の大きさに成形しておき収納スペースに嵌め込んでもよい。本発明では、蓄熱層積層時に余った蓄熱シートや、収納スペース形成時に切り取った蓄熱シート等を使用すると施工上有利であり、好ましい。また、配線コードと蓄熱体との間、配線コードと蓄熱シートとの間には、必要に応じ後述する耐熱層を積層してもよい。
【0073】
さらにその上に床材層を積層する。床材層を積層する面状発熱体及び蓄熱層表面は、ほぼフラットであるため、簡便に積層できる。
【0074】
蓄熱層、面状発熱体、床材層の積層には、必要に応じ、公知の接着剤や接着テープ等を用いることができる。
【0075】
床暖房構造体の厚さは、本発明では特に25mm以下、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下であることが好ましい。25mm以下と薄膜化、軽量化することにより、簡便に施工することができ、特にリフォームにおいては、施工後、居住空間が圧迫されることがなく快適な居住空間を維持することができる。
また、本発明床暖房構造体は、優れた蓄熱性能を有し、厚さが25mmと薄くても、床暖房運転時の床下への熱の逃げを抑制し、また、床暖房停止後の、室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができる。したがって、消費電力量を抑え、かつ、快適な居住環境を維持することができる。
【0076】
<耐熱層>
本発明の床暖房構造体は、蓄熱層と面状発熱体の間に、耐熱層を積層することもできる。
耐熱層を積層することにより、電熱線などの過剰な温度上昇等に対して、蓄熱層の変形等を抑えることができる。
耐熱層としては、例えば、耐熱温度が100℃以上のガラス層、金属層、耐熱樹脂層等が挙げられる。本発明では薄型であることを考慮し、耐熱層の厚みは、5mm以下であることが好ましい。
なお、本発明でいう耐熱温度とは、耐熱層が変形しない上限温度のことをいう。つまり、耐熱温度より高くなると耐熱層が変形する可能性がある。
【0077】
ガラス層としては、例えば、ガラス板、または、ガラス繊維が、網目状、斑点状、あるいは、ランダムに配列されたガラス繊維質層等が挙げられる。
【0078】
金属層としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、クロム、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニッケル、ビスマス、スズ、コバルトから選ばれる一種以上の金属、または、これら金属の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびこれらの複合物から選ばれる一種以上を含むものが挙げられる。
【0079】
耐熱樹脂層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の合成樹脂のうち1種または2種以上を板状、フィルム状に形成したもの等が挙げられる。
【0080】
このような耐熱層を積層することによって、温度の過剰な上昇に伴う、蓄熱層の変形や燃焼を抑えることができる。さらに、蓄熱層の変形に伴う潜熱蓄熱材の漏れを防止することができる。
また、このような耐熱層には、床面全面を均一の温度にする均熱効果もあり、例えば、床面の一部に面状発熱体を積層した場合の局所的な温度上昇を、床面全面に広げることができる。特に金属層のような熱伝導率の高い層を積層することによって、より優れた均熱効果を発揮することができる。
また、熱伝導率の低いガラス層、耐熱樹脂層を積層することにより、急激な温度上昇を防止することもできる。
本発明では、耐熱性に加えて、均熱効果、急激な温度上昇防止効果も考慮し、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を積層した耐熱層、さらには、金属層とガラス層を積層した耐熱層を好適に適用することができる。また、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を2層さらには3層以上で積層してもよい。
【0081】
本発明では、耐熱層として、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を積層したものを使用した場合、少なくとも、蓄熱層側に、ガラス層または耐熱樹脂層が積層されるように耐熱層を積層することが好ましい。
【0082】
耐熱層を積層する方法としては、特に限定されないが、予め蓄熱シートと耐熱層を積層したものを上述の方法で積層する方法、蓄熱シートを積層した後に耐熱層を積層する方法、予め面状発熱体と耐熱層を積層したものを上述の方法で積層する方法等が挙げられる。
耐熱層は、少なくとも面状発熱体を積層する箇所において積層されていればよく、蓄熱層全面に積層してもよい。また、収納スペースにおいても、蓄熱体を充填した後耐熱層を積層してもよい。
【0083】
<断熱層>
本発明では、さらに断熱層を積層することもできる。
断熱層を積層することにより、外部の温度変化を緩和するとともに、面状発熱体で発熱した熱を外部に逃し難く、効率良く、床面を暖めることができる。
【0084】
断熱層を積層する箇所としては、特に限定されないが、基材や既存のフローリングと蓄熱層の間が好ましい。また、新たに断熱層を積層することもできるが、既に存在する断熱層を用いてもよい。
【0085】
断熱層としては、特に限定されないが、熱伝導率が0.1W/(m・K)未満(より好ましくは0.08W/(m・K)以下、さらに好ましくは0.05W/(m・K)以下)の断熱性を有するものであることが好ましい。熱伝導率が0.1W/(m・K)未満であることにより、優れた断熱性を有する。
【0086】
このような断熱層としては、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体、発泡ゴム、グラスウール、ロックウール、発泡セラミック等、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。また、市販の断熱層を使用してもよい。
【0087】
断熱層の厚さは、通常1mm以上30mm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
図1に示すように、基材(合板:620×360mm、厚さ5mm)の上に、蓄熱シート1を敷き詰めて蓄熱層を積層した。この際、面状発熱体の配線コードを収納するための収納スペースを設けた(収納スペースの幅:3cm)。
次に、図2に示すように、収納スペースに配線コードを収納し、面状発熱体を積層した。
次に、図3に示すように、収納スペースに充填できるように蓄熱シート1を所定の大きさに切り取り、該蓄熱シート1を収納スペースに充填した。この際、蓄熱シート1からの潜熱蓄熱材の漏れは、みられなかった。
次に、図4に示すように、面状発熱体の上に、床材層を積層し、床暖房構造体を得た。
蓄熱シート1:パルミチン酸メチル(相変化温度30.0℃、潜熱量200kJ/kg)80重量部、無溶剤ポリエステルポリオール(2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオールとアジピン酸の重縮合物、水酸基価58mgKOH/g、分子量2000)15.8重量部、HMDI系ポリイソシアネート(イソシアヌレート型、NCO%17.4%(固形分100%))4.2重量部を温度35℃で均一に混合し、ジブチル錫ジラウレート0.1重量部を加え、十分攪拌した。攪拌後、300×180×5mmの型枠中に流し込み、50℃で180分硬化させ、脱型して、潜熱蓄熱材が充填された蓄熱シート1を得た。なおNCO/OH比率は1.0であった。
面状発熱体:シリコンゴム中にニクロム線を蛇行させたシリコンラバーヒーター(300×180mm、厚さ2mm)
床材層:耐熱フローリング(300×180mm、厚さ12mm)
【0089】
(実施例2)
図5に示すように、基材(合板:620×360mm、厚さ5mm)の上に、蓄熱シート1・耐熱層1積層体を、後述する面状発熱体と耐熱層1側が接触するように、敷き詰めて蓄熱層を積層した。この際、蓄熱シート1からの潜熱蓄熱材の漏れは、みられなかった。また、面状発熱体の配線コードを収納するための収納スペースを設けた(収納スペースの幅:3cm)。
次に、図6に示すように、収納スペースに配線コードを収納し、面状発熱体を積層した。
次に、図7に示すように、収納スペースに充填できるように蓄熱シートを所定の大きさに切り取り、該蓄熱シートを収納スペースに充填した。
次に、図8に示すように、面状発熱体の上に、床材層を積層し、床暖房構造体を得た。
蓄熱シート1・耐熱層1積層体:パルミチン酸メチル(相変化温度30.0℃、潜熱量200kJ/kg)80重量部、無溶剤ポリエステルポリオール(2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオールとアジピン酸の重縮合物、水酸基価58mgKOH/g、分子量2000)15.8重量部、HMDI系ポリイソシアネート(イソシアヌレート型、NCO%17.4%(固形分100%))4.2重量部を温度35℃で均一に混合し、ジブチル錫ジラウレート0.1重量部を加え、十分攪拌した。攪拌後、耐熱層1(100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム))を敷いた300×180×5mmの型枠中に流し込み、50℃で180分硬化させ、脱型して、潜熱蓄熱材が充填された蓄熱シート1とPETフィルム(耐熱層1)の積層体を得た。なおNCO/OH比率は1.0であった。
【0090】
(実施例3)
蓄熱シート1・耐熱層1積層体を蓄熱シート1・耐熱層2積層体に代えて以外は、実施例2と同様の方法で、床暖房構造体を得た。この際、蓄熱シート1からの潜熱蓄熱材の漏れは、みられなかった。
蓄熱シート1・耐熱層2積層体:パルミチン酸メチル(相変化温度30.0℃、潜熱量200kJ/kg)80重量部、無溶剤ポリエステルポリオール(2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオールとアジピン酸の重縮合物、水酸基価58mgKOH/g、分子量2000)15.8重量部、HMDI系ポリイソシアネート(イソシアヌレート型、NCO%17.4%(固形分100%))4.2重量部を温度35℃で均一に混合し、ジブチル錫ジラウレート0.1重量部を加え、十分攪拌した。攪拌後、ガラス繊維質層側が蓄熱シート1側と接触するように、耐熱層2(100μmのアルミ張りクロス(アルミニウム/ガラス繊維質層))を敷いた300×180×5mmの型枠中に流し込み、50℃で180分硬化させ、脱型して、潜熱蓄熱材が充填された蓄熱シート1とPETフィルム(耐熱層1)の積層体を得た。なおNCO/OH比率は1.0であった。
【0091】
(実施例4)
図9に示すように、基材(合板:620×360mm、厚さ5mm)の上に、蓄熱シート1を敷き詰めて蓄熱層を積層した。さらに図10に示すように蓄熱シート1の一部をカッターで切り取り、面状発熱体の配線コードを収納するための収納スペースを設けた(収納スペースの幅:3cm)。この際、蓄熱シート1からの潜熱蓄熱材の漏れは、みられなかった。
次に、図11に示すように、収納スペースに配線コードを収納し、面状発熱体を積層した。
次に、図12に示すように、カッターで切り取った蓄熱シート1の一部を収納スペースに充填した。
次に、図13に示すように、面状発熱体の上に、床材層を積層し、床暖房構造体を得た。
【0092】
(比較例1)
図1に示すように、基材(合板:620×360mm、厚さ5mm)の上に、蓄熱シート1を敷き詰めて蓄熱層を積層した。この際、面状発熱体の配線コードを収納するための収納スペースを設けた(収納スペースの幅:3cm)。
次に、図2に示すように、収納スペースに配線コードを収納し、面状発熱体を積層した。
次に、図14に示すように、面状発熱体の上に、床材層を積層し、床暖房構造体を得た。
【0093】
(床暖房性能評価)
内寸が620×360×200mmとなるように、側面及び上面に厚さ25mmのポリスチレンフォームを設置し、底面には床暖房構造体の床材層側が内側となるように設置し、試験体ボックスを作製した。
さらに、床暖房構造体表面(配線コードの上)と、床暖房構造体表面から高さ100mmの位置にそれぞれ熱電対を設置した。
また、床暖房構造体表面には、表面温度を一定にするため、床表面に温度調節装置(温度調節器、変圧器)を取り付けた。
この試験体ボックスを恒温器の中に設置し、次の実験を行った。
恒温器中の温度を10℃に設定し、15時間放置した。その後恒温器中の温度を10℃に設定したまま、面状発熱体を180分加熱した。なお床表面は、温度調節装置(温度調節器、変圧器)により、30℃一定になるように設定した。
床暖房性能評価として、次の(1)(2)の温度を測定した。
(1)面状発熱体の加熱後60分後の床暖房構造体表面温度(表面温度)、及び、床暖房構造体表面から高さ100mmの位置の温度(空間温度)を測定した。
(2)また、180分加熱した後、加熱を停止し、停止60分後の表面温度、空間温度を測定した。
その結果、(1)加熱後60分の温度は、実施例1〜実施例4及び比較例1の表面温度は30.0℃、実施例1〜実施例4及び比較例1の空間温度は19.0℃〜20.0℃であった。
(2)加熱停止後60分の温度は、実施例1〜実施例4の表面温度は20.0℃〜21.0℃であるのに対し、比較例1の表面温度は18.8℃であった。また、実施例1〜実施例4の空間温度は16.0℃〜17.0℃であるのに対し、比較例1の空間温度は13.5℃であった。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例1における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図2】実施例1における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図3】実施例1における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図4】実施例1で得られる床暖房構造体のモデル図である。
【図5】実施例2、3における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図6】実施例2、3における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図7】実施例2、3における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図8】実施例2、3で得られる床暖房構造体のモデル図である。
【図9】実施例4における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図10】実施例4における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図11】実施例4における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図12】実施例4における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図13】実施例4で得られる床暖房構造体のモデル図である。
【図14】比較例1で得られる床暖房構造体のモデル図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等における床暖房用として用いられる床暖房構造体及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の住宅環境に対する高まりを背景に、床暖房システムを備えた住宅が増加している。
床暖房システムでは、例えば、電熱線などで発熱した熱が床下へ逃げるのを防止するため、断熱材等を設置し、熱を床下へ逃さず、熱効率を向上させている。この場合、断熱材に、ある程度厚みを付けることにより、熱効率をより向上させることができる。
【0003】
このような床暖房システムにおいて、近年、床暖房構造の薄膜化が検討されている。
特に、リフォームにおける床暖房システムの設置においては、薄型であることが大きな利点となり、既存の床にそのまま設置したとしても居住空間が圧迫されず、さらに、従来のような既存の床構造、配線、配管等の修復や再施工が不要となるため、工期短縮とコスト削減を図ることができる。
床暖房構造の薄膜化においては、例えば、電熱線が配列された面状発熱シートを利用したり、蓄熱材を含有した蓄熱体(蓄熱シート)を導入(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等)する方法等が挙げられる。
蓄熱材を含有した蓄熱体を導入した場合、発熱した熱を蓄熱体に蓄えることができるため、通常用いられていた断熱材を使用しなくても、熱効率を向上させることが可能である。そのため、床暖房構造の薄型化が可能であり、かつ、床下への熱の逃げを抑制し、熱効率を向上させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−343864号公報
【特許文献2】特開2003−294323号公報
【特許文献3】特開2003−021349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、このような面状発熱シートや蓄熱シートを利用した床暖房システムでは、電源と電熱線をつなぐ配線コード等が存在し、床暖房構造の薄型化を図る場合、配線コードをどのように設置するかが、重要となってくる。
通常、蓄熱シートどうしの間に配線コード用の隙間を設け、その隙間に配線コードを収納する方法が導入されてきたが、このような方法では、該隙間から熱が逃げ出し、熱効率が低下させてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討をした結果、蓄熱層の上に、面状発熱体、床材が積層された床暖房構造体であって、蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填された床暖房構造体が、薄型化が可能であるとともに、床暖房運転時の床下への熱の逃げを抑制し、また、床暖房停止後の室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、以下の特徴を含むものである。
1.蓄熱層の上に、面状発熱体、床材層が積層された床暖房構造体であって、
蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填されていることを特徴とする床暖房構造体。
2.蓄熱層の上に、耐熱層、面状発熱体、床材層が積層された床暖房構造体であって、
蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填されていることを特徴とする床暖房構造体。
3.基材の上に、面状発熱体の配線コードを格納するための収納スペースを設けて、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めて蓄熱層を積層し、
該収納スペースに面状発熱体の配線コードを格納して、蓄熱層の上に面状発熱体を積層し、さらに収納スペースに潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填し、
その上に、床材層を積層することを特徴とする床暖房構造体の施工方法。
4.基材の上に、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めて蓄熱層を積層し、
該蓄熱層の一部に、面状発熱体の配線コードを格納するための収納スペースを設け、
該収納スペースに面状発熱体の配線コードを格納して、蓄熱層の上に面状発熱体を積層し、さらに収納スペースに潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填し、
さらにその上に、床材層を積層することを特徴とする床暖房構造体の施工方法。
5.蓄熱層と面状発熱体との間に、耐熱層を積層することを特徴とする3.または4.に記載の床暖房構造体の施工方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の床暖房構造体は、薄型化が可能であるとともに、床暖房運転時の床下への熱の逃げを抑制し、また、床暖房停止後の室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができる。
さらに、本発明の床暖房構造体の施工方法は、工期短縮とコスト削減を図ることができる、居住空間を圧迫することもなく、戸建て住宅をはじめ、アパート、マンション等の幅広い既存の床構造に対応した床暖房として適用可能であり、特にリフォーム用の簡易式の薄型床暖房構造体として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0010】
本発明の床暖房構造体は、蓄熱層の上に、面状発熱体、床材が積層されたものである。
【0011】
<蓄熱層>
本発明の蓄熱層は、潜熱蓄熱材が含有された蓄熱シートからなるものである。潜熱蓄熱材としては、例えば、無機潜熱蓄熱材、有機潜熱蓄熱材等が挙げられる。
【0012】
無機潜熱蓄熱材としては、例えば、硫酸ナトリウム10水和物、炭酸ナトリウム10水和物、リン酸水素ナトリウム12水和物、チオ硫酸ナトリウム5水和物、塩化カルシウム6水和物等の水和塩等が挙げられる。
【0013】
有機潜熱蓄熱材としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、脂肪酸トリグリセリド、ポリエーテル化合物等が挙げられ、これらの潜熱蓄熱材のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0014】
本発明では、特に有機潜熱蓄熱材を好適に用いることができる。有機潜熱蓄熱材は、沸点が高く揮発しにくいため、蓄熱シート成形時における体積変化(肉痩せ)がほとんど無く、また長期に亘り蓄熱性能が持続するため、好ましい。さらに、有機潜熱蓄熱材を用いた場合、用途に応じた相変化温度の設定が容易であり、例えば相変化温度の異なる2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合することで、容易に相変化温度の設定が可能となる。
【0015】
脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素を用いることができ、具体的には、n−テトラデカン(融点8℃)、ペンタデカン(融点10℃)、n−ヘキサデカン(融点17℃)、n−ヘプタデカン(融点22℃)、n−オクタデカン(融点28℃)、n−ノナデカン(融点32℃)、イコサン(融点36℃)、ドコサン(融点44℃)、およびこれらの混合物で構成されるn−パラフィンやパラフィンワックス等が挙げられる。
【0016】
長鎖アルコールとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖アルコールを用いることができ、具体的には、カプリルアルコール(融点7℃)、ラウリルアルコール(融点24℃)、ミリスチルアルコール(融点38℃)、ステアリルアルコール(融点58℃)等が挙げられる。
【0017】
長鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸を用いることができ、具体的には、オクタン酸(融点17℃)、デカン酸(融点32℃)、ドデカン酸(融点44℃)、テトラデカン酸(融点50℃)、オクタデカン酸(融点70℃)、ヘキサデカン酸(融点63℃)等の脂肪酸等が挙げられる。
【0018】
長鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ラウリン酸メチル(融点5℃)、ミリスチン酸メチル(融点19℃)、パルミチン酸メチル(融点30℃)、ステアリン酸メチル(融点38℃)、ステアリン酸ブチル(融点25℃)、アラキジン酸メチル(融点45℃)等が挙げられる。
【0019】
脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0020】
ポリエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エチルエチレングリコール等が挙げられる。
【0021】
本発明では潜熱蓄熱材として、特に、実用温度領域である25℃〜40℃に相変化温度(融点)を有する脂肪族炭化水素、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステルが、潜熱量が高く、化学的安定に優れ、好ましい。
【0022】
さらに潜熱蓄熱材としては、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖アルコール、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましく、さらには、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましい。中でも、炭素数15〜22の長鎖脂肪酸エステル、炭素数15〜22の脂肪族炭化水素を使用することが好ましく、このような潜熱蓄熱材は、潜熱量が高く、実用温度領域に相変化温度(融点)を有するため、様々な用途に使用しやすい。
【0023】
本発明では、融点の異なる2種以上の潜熱蓄熱材を用いることにより、適用温度領域の広い蓄熱シートを得ることができる。
【0024】
また、2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合して使用する場合は、相溶化剤を用いることが好ましい。相溶化剤を用いることにより、有機潜熱蓄熱材どうしの相溶性を向上させることができる。
相溶化剤としては、例えば、脂肪酸トリグリセリド、親水親油バランス(HLB)が1以上10未満(好ましくは1以上5以下)の非イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合し用いることができる。
【0025】
相溶化剤と潜熱蓄熱材の混合比は、通常潜熱蓄熱材100重量部に対し、相溶化剤0.1重量部から20重量部(好ましくは0.5重量部から10重量部)程度とすればよい。
【0026】
さらに蓄熱シートには、粘性調整剤、熱伝導性物質等を混合して用いることができる。
【0027】
粘性調整剤としては、例えば、粘土鉱物等が挙げられ、特に、有機処理された層状の粘土鉱物を用いることが好ましい。
潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物を混合することにより、有機処理された層状の粘土鉱物の層間に潜熱蓄熱材が入り込み、潜熱蓄熱材が有機処理された層状の粘土鉱物の層間に保持されやすい構造となる。
【0028】
このような有機処理された層状の粘土鉱物と潜熱蓄熱材を混合することにより、結果として、潜熱蓄熱材の粘度を上昇させ、蓄熱シート内に潜熱蓄熱材を担持し、より安定して担持され、保持し続けることができる。
【0029】
潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物混合時の粘度は、0.5〜20.0Pa・s程度とすればよい。なお、粘度は、B型回転粘度計を用い、温度23℃、相対湿度50%RHで測定した値である。
また、潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物混合時のTI値は、4.0〜9.0程度とすればよい。なお、TI値は、B型回転粘度計を用い、下記式1により求められる値である。
TI値=η1/η2 (式1)
(但し、η1:2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)、η2:20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
【0030】
有機処理された層状粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト、バーミキュライト、カオリナイト、アロフェン、雲母、タルク、ハロイサイト、セピオライト等が挙げられる。また、膨潤性フッ素雲母、膨潤性合成マイカ等も利用できる。
【0031】
有機処理としては、例えば、層状粘土鉱物の層間に存在する陽イオンを長鎖アルキルアンモニウムイオン等でイオン交換(インターカレート)すること等が挙げられる。
本発明では、特に、スメクタイト、バーミキュライトが有機処理されやすい点から、好適に用いられる。さらに、スメクタイトの中でも、特に、モンモリロナイトが好適に用いられ、本発明では、特に、有機処理されたモンモリロナイトを好適に用いることができる。
【0032】
具体的に、有機処理されたモンモリロナイトとしては、
ホージュン社製のエスベン、エスベン C、エスベン E、エスベン W、エスベン P、エスベン WX、エスベン NX、エスベン NZ、エスベン N-400、オルガナイト、オルガナイトーD、オルガナイトーT(商品名)
ズードケミー触媒社製のTIXOGEL MP、TIXOGEL VP、TIXOGEL VP、TIXOGEL MP、TIXOGEL EZ 100、MP 100、TIXOGEL UN、TIXOGEL DS、TIXOGEL VP−A、TIXOGEL VZ、TIXOGEL PE、TIXOGEL MP 250、TIXOGEL MPZ(商品名)
エレメンティスジャパン社製のBENTONE 34、38、52、500、1000、128、27、SD−1、SD−3(商品名)
等が挙げられる。
【0033】
有機処理された層状粘土鉱物と潜熱蓄熱材の混合比は、通常潜熱蓄熱材100重量部に対し、0.5重量部から50重量部(好ましくは1重量部から30重量部、より好ましくは3重量部から15重量部)程度とすればよい。
【0034】
本発明では、このような潜熱蓄熱材をカプセル化したものを何らかの方法で固定化したり、または、潜熱蓄熱材を多孔体に充填して蓄熱シートを形成することもできるし、潜熱蓄熱材をそのままフィルムに封入し蓄熱シートを形成することもできる。
【0035】
潜熱蓄熱材をカプセル化する方法としては、例えば、特願2005−134852、特願2006−95924等に記載の方法等が挙げられる。
【0036】
カプセル化した蓄熱性カプセルを、蓄熱シートとして用いる場合、何らかの方法で固定して用いればよい。例えば、蓄熱性カプセルをそのままフィルムに封入することもできるし、蓄熱性カプセルと結合剤を混練したスラリーの成形物を蓄熱シートとしてもよいし、各種材料に浸漬法、減圧・加圧注入法等により蓄熱性カプセルを含浸させて蓄熱シートとしてもよし、あるいはこれらの方法を組み合わせて蓄熱シートを製造してもよい。
【0037】
例えば、蓄熱性カプセルをそのまままフィルムに封入する方法としては、蓄熱性カプセルを水等の溶媒に分散させたものや蓄熱性カプセルの固体微粉末をフィルムに封入すればよい。
ここでフィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の有機材料等から選ばれる1種または2種以上、
アルミニウム、金、銀、銅、鉄、クロム、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニッケル、ビスマス、スズ、コバルトから選ばれる一種以上の金属、または、これら金属の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびこれらの複合物から選ばれる一種以上、等を主成分とするフィルムを用いることができる。
【0038】
また、蓄熱性カプセルと結合剤を混練したスラリーを形成する方法としては、公知のものを使用すればよい。
このような結合剤としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の溶剤可溶型樹脂、NAD型樹脂、水可溶型樹脂、水分散型樹脂、無溶剤型樹脂等、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機結合剤、
ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色セメント、焼石膏、コロイダルシリカ、水溶性珪酸アルカリ金属塩等の無機結合剤等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0039】
本発明では、特に有機結合剤を用いることが好ましく、有機結合剤のうち1液タイプ、2液タイプのいずれも使用することができるが、2液タイプがより好ましい。2液タイプを使用することにより、速やかに反応が進行し、高強度の成形物が形成され、かつ、蓄熱性カプセルが均一に分散した成形物が得られやすいため好ましい。
【0040】
2液タイプとしては、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とイミド基、ヒドロキシル基とアルデヒド基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボキシル基とアジリジン基等の架橋反応を利用したもの等が挙げられる。特に、ヒドロキシル基とイソシアネート基の架橋反応を利用したものが、速やかに反応が進行し、かつ、蓄熱性カプセルがより均一に分散した成形物が得られやすいため好ましい。
【0041】
また、スラリーには、結合剤の他に、溶剤、顔料、骨材、粘性調整剤、緩衝剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、難燃剤、レベリング剤、沈降防止剤、たれ防止剤、脱水剤等の各種添加剤を混練することもできる。
【0042】
このような成形物の形成においては、このようなスラリーを、公知の方法でシート化し形成してもよいし、あるいは、前述したフィルムにスラリー封入し形成してもよい。
【0043】
また、浸漬法、減圧・加圧注入法等により含浸させる方法においては、下記に示す材料に蓄熱性カプセルを含浸させればよい。
材料としては、例えば、コンクリート、石膏ボード、モルタル、スレート板等の無機材料、
ガラス繊維、パルプ繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維等の合成繊維、綿、木綿、石綿、麻、ヤシ、コルク、ケナフ等の天然繊維等の繊維材料、
アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機材料、
松、ラワン、ブナ、ヒノキ、合板等の木質材料、その他、紙、合成紙、セラミックペーパー等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0044】
蓄熱シートにおける蓄熱性カプセルの含有量としては、蓄熱シートの全体量に対し、10重量%以上、さらには20重量%以上70重量%以下であることが好ましい。このような範囲であることにより、優れた蓄熱性を有することができる。
【0045】
潜熱蓄熱材を多孔体に充填したものとしては、多孔体に潜熱蓄熱材が担持・保持されているものであれば、特に限定されない。
【0046】
多孔体の形状も、潜熱蓄熱材が担持・保持できれば、特に限定されず、例えば、粒子凝集型多孔体、スポンジ型多孔体、3次元編目構造型多孔体等の形状を有するもの等が挙げられる。本発明では、特に、潜熱蓄熱材がより担持・保持されやすい点から、3次元編目構造型多孔体が好ましい。
【0047】
また多孔体としては、無機多孔体、有機多孔体等特に限定されず用いることができるが、潜熱蓄熱材をより担持・保持しやすい点から有機多孔体が好適に用いられる。さらに、有機多孔体は潜熱蓄熱材の相変化(特に、液体から固体への変化)による体積収縮に起因する蓄熱シートの割れや形状変化も防ぐことができる。
【0048】
このような有機多孔体を形成する樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・ベオバ樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の溶剤可溶型、NAD型、水可溶型、水分散型、無溶剤型等、または、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0049】
さらに本発明では、上記樹脂成分のうち、1液タイプ、2液タイプのいずれも使用することができるが、2液タイプのほうが好ましい。例えば、反応性官能基を含有する化合物と該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を含有する化合物からなる2液タイプが好適に用いられる。
【0050】
このような、反応性官能基の組み合わせとしては、ヒドロキシル基とイソシアネート基、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とイミド基、ヒドロキシル基とアルデヒド基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボキシル基とアジリジン基等が挙げられる。
【0051】
さらに、反応性官能基の組み合わせとしては、特に、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物、エポキシ基を含有する化合物とアミノ基を含有する化合物等の組み合わせが好ましく、特にヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物の組み合わせが好ましい。このような、組み合わせでは、温和な条件下で架橋反応が進行しやすく、また、架橋密度等の調節も容易であるため好ましい。
【0052】
例えば、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物を用いる場合は、NCO/OH比率で通常0.1〜1.8、好ましくは0.2〜1.5、さらに好ましくは0.3〜1.3となる範囲内で設定すればよい。
このようなNCO/OH比率の範囲内であることにより、多孔体の強度を強靭なものとすることができ、潜熱蓄熱材の漏れのない均一な緻密な架橋構造を得ることができる。
NCO/OH比率が0.1より小さい場合は、架橋率が低くなり、硬化性、耐久性、強度等において十分な物性を確保することができない場合があり、また潜熱蓄熱材が漏れ易くなる。NCO/OH比率が1.8よりも大きい場合は、未反応のイソシアネートが残存し、多孔体の各種物性に悪影響を与え、多孔体が変形しやすくなり、潜熱蓄熱材が漏れやすくなる。
【0053】
多孔体の製造は、上記成分を用いて、公知の方法で製造すればよい。例えば、特願2005−322930、特願2006−280575等に記載の方法等が挙げられる。
【0054】
本発明多孔体中の潜熱蓄熱材含有率(充填率)は、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、最も好ましくは65重量%以上である。
【0055】
潜熱蓄熱材をそのままフィルムに封入する方法では、例えば、上述したフィルムを用いて、潜熱蓄熱材を封入すればよい。
【0056】
本発明の蓄熱シートは、上述した潜熱蓄熱材、あるいは、潜熱蓄熱材をカプセル化したもの、潜熱蓄熱材を多孔体に充填したもの、潜熱蓄熱材をフィルムに封入したものであり、このような蓄熱シートの厚さは、特に限定されないが、通常1mm〜20mm、さらには2mm〜15mm程度が好ましい。
<面状発熱体>
【0057】
本発明の面状発熱体は、特に限定されず、公知の面状発熱体を使用することができる。
面状発熱体としては、例えば、ニクロム線を蛇行させて絶縁体表面に配置したもの、電気抵抗発熱体と電極を積層したもの、PTC面状発熱体等が挙げられる。
【0058】
電気抵抗発熱体は、電気抵抗値が1×103Ω・cm以下(好ましくは、1×102Ω・cm以下)であれば、特に限定されるものではないが、樹脂成分と導電性粉末からなるものが好ましい。電気抵抗発熱体の電気抵抗値が1×103Ω・cmより大きい場合は、消費電力量が大きくなるため好ましくない。
【0059】
樹脂成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ブチラール樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、合成ゴム等、あるいはこれらを複合した樹脂等が挙げられる。
本発明では、特に、柔軟性を有する樹脂として、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、合成ゴム等が好ましく用いられる。
【0060】
導電性粉末としては、グラファイト粉末、鱗片状黒鉛、薄片状黒鉛、カーボンナノチューブ等の炭素粉末、グラファイト化された繊維、グラファイトを担持させた繊維等の炭素繊維、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、白金、パラジウム、鉄等の金属微粒子、これらの金属微粒子等の導電性成分を繊維表面に担持させた導電性繊維、また金属微粒子をマイカ、雲母、タルク、酸化チタン等の粉末の表面に担持させた導電性粉末、また、フッ素ドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、導電性酸化亜鉛等の導電性酸化物等を使用することができる。
【0061】
電気抵抗発熱体は、上記導電性粉末を上記樹脂中に均一に分散するように混合し、公知の方法で、フィルム状、シート状に形成することにより、製造することができる。
導電性粉末の混合量は、特に限定されないが、電気抵抗発熱体の電気抵抗値を1×103Ω・cm以下に調整できるように混合すればよく、樹脂成分の固形分100重量部に対して、10重量部以上300重量部以下(好ましくは30重量部以上100重量部以下)であることが好ましい。
【0062】
また、電気抵抗値が1×103Ω・cm以下にできる範囲であれば、樹脂成分以外に、必要に応じて、消泡剤、増粘剤、防腐剤、抗菌剤、変性剤、紫外線吸収剤、硬化剤、硬化触媒、増膜助剤、溶媒等の添加剤を加えることもできる。
【0063】
電気抵抗発熱体の厚さは、3mm以下であることが好ましい。3mmより厚くなると、柔軟性が低下し、また、電気抵抗発熱体に温度ムラが生じやすくなるため、均一な温度に成り難くなる場合がある。
【0064】
電極としては、電気抵抗値が電気抵抗発熱体よりも低いものであれば特に限定されないが、好ましくは、金属微粒子からなる電極および/またはそれら金属微粒子を混合したペーストを用いることができる。金属微粒子としては、特に限定されないが、銀、銅、金、白金等を用いることができる。
【0065】
電極は、公知の方法で、電気抵抗発熱体に積層することができる。例えば、スプレー、ローラー、刷毛塗り、ディップコーティング、スパッタ、蒸着、スクリーン印刷法、ドクターブレード法等で積層することができる。
【0066】
PTC面状発熱体は、PTC(Positive Temperature Coefficient;正の温度係数)特性を利用したもので、例えばポリエステルフイルムやPETフイルム等の樹脂フィルムに、PTC特性を示す特殊発熱インクを印刷することにより形成することができる。特殊発熱インクの材料としては、イットリウム、アンチモン、ランタンなどの希土類元素を微量ドープして半導体化したチタン酸バリウム系セラミックが用いられる。
このようなPTC面状発熱体は、PTC特性によって、通電すると素早く昇温し、所定温度に達し、自ら温度を制御、維持することができるため、センサー・コントローラー等を使用しなくてもよい。
【0067】
また、このPTC面状発熱体は、前記特殊発熱インクによる印刷方式であるため、薄型に形成でき、従って軽量化及び薄型化を図ることができる。更に、このPTC面状発熱体は、電源を入れてから所定温度になるまでは抵抗値が低く、昇温に要する消費電力を抑えることができ、さらに所定温度に達すると自己制御機能により消費電力を抑えることができるため、効率的に暖房できる。
<床材層>
【0068】
本発明の床材層としては、塩化ビニル、ポリオレフィン等の樹脂タイル及び樹脂シート、一枚板、フローリング材、合板、パーティクルボード、コルクタイル等の木質材料、繊維質材料、磁器タイル等のセラミックス材料、大理石、御影石、テラゾー等の石材料、モルタル等のコンクリート材料、ゴムやリノリウム等の天然樹脂タイル及び天然樹脂シート等を使用することができる。また畳、カーペット、じゅうたん等も床材層として使用することができる。本発明では、特に、耐熱性を有するものが、より好ましい。
床材層の厚さは、通常1〜20mm、好ましくは2〜15mm程度であればよい。
<施工方法>
【0069】
本発明の床暖房構造体は、新築やリフォーム等いずれの場合においても使用することができ、基材の上に積層することができる。本発明では、薄膜化が可能であり、特にリフォームの場合に好適に使用できる。
【0070】
基材としては、特に限定されず、コンクリート、モルタル、合板、または、既存のフローリング等が挙げられる。
【0071】
施工方法としては、まず、基材の上に、蓄熱シートを敷き詰めて蓄熱層を積層する。
この際、蓄熱層には面状発熱体の配線コードを格納するための収納スペースを設ける。収納スペースを設ける方法としては、特に限定されないが、蓄熱シートを敷き詰める際に蓄熱シートの間に一部収納スペースを設ける方法、または、蓄熱シートを敷き詰めた後該蓄熱シートの一部を切り取り収納スペースを設ける方法等が挙げられる。
本発明の蓄熱層として、潜熱蓄熱材を多孔体に充填した蓄熱シートを用いた場合、蓄熱シートをカッターやナイフ等で切り取ったとしても潜熱蓄熱材が漏れることがないため、簡便に収納スペースを設けることができる。
このような収納スペースは、配線コードと電源が接続しやすいように、適宜設ければよい。収納スペースの幅は、配線コードの種類や面状発熱体の積層面積等により適宜設定すればよいが、通常1cm〜10cm程度である。また収納スペースの長さは、積層する面状発熱体により適宜設定すればよい。
【0072】
次に、該収納スペースに配線コードを格納して面状発熱体を積層する。
面状発熱体の積層面積は、適宜設定すればよいが、面状発熱体を蓄熱層全面に積層することもできるし、蓄熱層の一部だけに積層してもよい。
さらに収納スペースには、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填する。
配線コードを格納した収納スペースには隙間が存在する。本発明では、このような隙間から熱が逃げ出さないように、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填することによって、熱効率の低下を抑えることができる。蓄熱体を充填する方法としては、例えば、上述した蓄熱体形成成分を液体状態で収納スペースに塗布し、固化させてもよいし、上述した蓄熱体形成成分からなる蓄熱シートを予め所定の大きさに成形しておき収納スペースに嵌め込んでもよい。本発明では、蓄熱層積層時に余った蓄熱シートや、収納スペース形成時に切り取った蓄熱シート等を使用すると施工上有利であり、好ましい。また、配線コードと蓄熱体との間、配線コードと蓄熱シートとの間には、必要に応じ後述する耐熱層を積層してもよい。
【0073】
さらにその上に床材層を積層する。床材層を積層する面状発熱体及び蓄熱層表面は、ほぼフラットであるため、簡便に積層できる。
【0074】
蓄熱層、面状発熱体、床材層の積層には、必要に応じ、公知の接着剤や接着テープ等を用いることができる。
【0075】
床暖房構造体の厚さは、本発明では特に25mm以下、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは15mm以下であることが好ましい。25mm以下と薄膜化、軽量化することにより、簡便に施工することができ、特にリフォームにおいては、施工後、居住空間が圧迫されることがなく快適な居住空間を維持することができる。
また、本発明床暖房構造体は、優れた蓄熱性能を有し、厚さが25mmと薄くても、床暖房運転時の床下への熱の逃げを抑制し、また、床暖房停止後の、室内温度および床温度の温度の急激な低下を防ぐことができる。したがって、消費電力量を抑え、かつ、快適な居住環境を維持することができる。
【0076】
<耐熱層>
本発明の床暖房構造体は、蓄熱層と面状発熱体の間に、耐熱層を積層することもできる。
耐熱層を積層することにより、電熱線などの過剰な温度上昇等に対して、蓄熱層の変形等を抑えることができる。
耐熱層としては、例えば、耐熱温度が100℃以上のガラス層、金属層、耐熱樹脂層等が挙げられる。本発明では薄型であることを考慮し、耐熱層の厚みは、5mm以下であることが好ましい。
なお、本発明でいう耐熱温度とは、耐熱層が変形しない上限温度のことをいう。つまり、耐熱温度より高くなると耐熱層が変形する可能性がある。
【0077】
ガラス層としては、例えば、ガラス板、または、ガラス繊維が、網目状、斑点状、あるいは、ランダムに配列されたガラス繊維質層等が挙げられる。
【0078】
金属層としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、クロム、亜鉛、マグネシウム、チタン、ニッケル、ビスマス、スズ、コバルトから選ばれる一種以上の金属、または、これら金属の酸化物、塩化物、硫化物、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩およびこれらの複合物から選ばれる一種以上を含むものが挙げられる。
【0079】
耐熱樹脂層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の合成樹脂のうち1種または2種以上を板状、フィルム状に形成したもの等が挙げられる。
【0080】
このような耐熱層を積層することによって、温度の過剰な上昇に伴う、蓄熱層の変形や燃焼を抑えることができる。さらに、蓄熱層の変形に伴う潜熱蓄熱材の漏れを防止することができる。
また、このような耐熱層には、床面全面を均一の温度にする均熱効果もあり、例えば、床面の一部に面状発熱体を積層した場合の局所的な温度上昇を、床面全面に広げることができる。特に金属層のような熱伝導率の高い層を積層することによって、より優れた均熱効果を発揮することができる。
また、熱伝導率の低いガラス層、耐熱樹脂層を積層することにより、急激な温度上昇を防止することもできる。
本発明では、耐熱性に加えて、均熱効果、急激な温度上昇防止効果も考慮し、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を積層した耐熱層、さらには、金属層とガラス層を積層した耐熱層を好適に適用することができる。また、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を2層さらには3層以上で積層してもよい。
【0081】
本発明では、耐熱層として、金属層と、ガラス層及び/または耐熱樹脂層を積層したものを使用した場合、少なくとも、蓄熱層側に、ガラス層または耐熱樹脂層が積層されるように耐熱層を積層することが好ましい。
【0082】
耐熱層を積層する方法としては、特に限定されないが、予め蓄熱シートと耐熱層を積層したものを上述の方法で積層する方法、蓄熱シートを積層した後に耐熱層を積層する方法、予め面状発熱体と耐熱層を積層したものを上述の方法で積層する方法等が挙げられる。
耐熱層は、少なくとも面状発熱体を積層する箇所において積層されていればよく、蓄熱層全面に積層してもよい。また、収納スペースにおいても、蓄熱体を充填した後耐熱層を積層してもよい。
【0083】
<断熱層>
本発明では、さらに断熱層を積層することもできる。
断熱層を積層することにより、外部の温度変化を緩和するとともに、面状発熱体で発熱した熱を外部に逃し難く、効率良く、床面を暖めることができる。
【0084】
断熱層を積層する箇所としては、特に限定されないが、基材や既存のフローリングと蓄熱層の間が好ましい。また、新たに断熱層を積層することもできるが、既に存在する断熱層を用いてもよい。
【0085】
断熱層としては、特に限定されないが、熱伝導率が0.1W/(m・K)未満(より好ましくは0.08W/(m・K)以下、さらに好ましくは0.05W/(m・K)以下)の断熱性を有するものであることが好ましい。熱伝導率が0.1W/(m・K)未満であることにより、優れた断熱性を有する。
【0086】
このような断熱層としては、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体、発泡ゴム、グラスウール、ロックウール、発泡セラミック等、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。また、市販の断熱層を使用してもよい。
【0087】
断熱層の厚さは、通常1mm以上30mm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
図1に示すように、基材(合板:620×360mm、厚さ5mm)の上に、蓄熱シート1を敷き詰めて蓄熱層を積層した。この際、面状発熱体の配線コードを収納するための収納スペースを設けた(収納スペースの幅:3cm)。
次に、図2に示すように、収納スペースに配線コードを収納し、面状発熱体を積層した。
次に、図3に示すように、収納スペースに充填できるように蓄熱シート1を所定の大きさに切り取り、該蓄熱シート1を収納スペースに充填した。この際、蓄熱シート1からの潜熱蓄熱材の漏れは、みられなかった。
次に、図4に示すように、面状発熱体の上に、床材層を積層し、床暖房構造体を得た。
蓄熱シート1:パルミチン酸メチル(相変化温度30.0℃、潜熱量200kJ/kg)80重量部、無溶剤ポリエステルポリオール(2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオールとアジピン酸の重縮合物、水酸基価58mgKOH/g、分子量2000)15.8重量部、HMDI系ポリイソシアネート(イソシアヌレート型、NCO%17.4%(固形分100%))4.2重量部を温度35℃で均一に混合し、ジブチル錫ジラウレート0.1重量部を加え、十分攪拌した。攪拌後、300×180×5mmの型枠中に流し込み、50℃で180分硬化させ、脱型して、潜熱蓄熱材が充填された蓄熱シート1を得た。なおNCO/OH比率は1.0であった。
面状発熱体:シリコンゴム中にニクロム線を蛇行させたシリコンラバーヒーター(300×180mm、厚さ2mm)
床材層:耐熱フローリング(300×180mm、厚さ12mm)
【0089】
(実施例2)
図5に示すように、基材(合板:620×360mm、厚さ5mm)の上に、蓄熱シート1・耐熱層1積層体を、後述する面状発熱体と耐熱層1側が接触するように、敷き詰めて蓄熱層を積層した。この際、蓄熱シート1からの潜熱蓄熱材の漏れは、みられなかった。また、面状発熱体の配線コードを収納するための収納スペースを設けた(収納スペースの幅:3cm)。
次に、図6に示すように、収納スペースに配線コードを収納し、面状発熱体を積層した。
次に、図7に示すように、収納スペースに充填できるように蓄熱シートを所定の大きさに切り取り、該蓄熱シートを収納スペースに充填した。
次に、図8に示すように、面状発熱体の上に、床材層を積層し、床暖房構造体を得た。
蓄熱シート1・耐熱層1積層体:パルミチン酸メチル(相変化温度30.0℃、潜熱量200kJ/kg)80重量部、無溶剤ポリエステルポリオール(2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオールとアジピン酸の重縮合物、水酸基価58mgKOH/g、分子量2000)15.8重量部、HMDI系ポリイソシアネート(イソシアヌレート型、NCO%17.4%(固形分100%))4.2重量部を温度35℃で均一に混合し、ジブチル錫ジラウレート0.1重量部を加え、十分攪拌した。攪拌後、耐熱層1(100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム))を敷いた300×180×5mmの型枠中に流し込み、50℃で180分硬化させ、脱型して、潜熱蓄熱材が充填された蓄熱シート1とPETフィルム(耐熱層1)の積層体を得た。なおNCO/OH比率は1.0であった。
【0090】
(実施例3)
蓄熱シート1・耐熱層1積層体を蓄熱シート1・耐熱層2積層体に代えて以外は、実施例2と同様の方法で、床暖房構造体を得た。この際、蓄熱シート1からの潜熱蓄熱材の漏れは、みられなかった。
蓄熱シート1・耐熱層2積層体:パルミチン酸メチル(相変化温度30.0℃、潜熱量200kJ/kg)80重量部、無溶剤ポリエステルポリオール(2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオールとアジピン酸の重縮合物、水酸基価58mgKOH/g、分子量2000)15.8重量部、HMDI系ポリイソシアネート(イソシアヌレート型、NCO%17.4%(固形分100%))4.2重量部を温度35℃で均一に混合し、ジブチル錫ジラウレート0.1重量部を加え、十分攪拌した。攪拌後、ガラス繊維質層側が蓄熱シート1側と接触するように、耐熱層2(100μmのアルミ張りクロス(アルミニウム/ガラス繊維質層))を敷いた300×180×5mmの型枠中に流し込み、50℃で180分硬化させ、脱型して、潜熱蓄熱材が充填された蓄熱シート1とPETフィルム(耐熱層1)の積層体を得た。なおNCO/OH比率は1.0であった。
【0091】
(実施例4)
図9に示すように、基材(合板:620×360mm、厚さ5mm)の上に、蓄熱シート1を敷き詰めて蓄熱層を積層した。さらに図10に示すように蓄熱シート1の一部をカッターで切り取り、面状発熱体の配線コードを収納するための収納スペースを設けた(収納スペースの幅:3cm)。この際、蓄熱シート1からの潜熱蓄熱材の漏れは、みられなかった。
次に、図11に示すように、収納スペースに配線コードを収納し、面状発熱体を積層した。
次に、図12に示すように、カッターで切り取った蓄熱シート1の一部を収納スペースに充填した。
次に、図13に示すように、面状発熱体の上に、床材層を積層し、床暖房構造体を得た。
【0092】
(比較例1)
図1に示すように、基材(合板:620×360mm、厚さ5mm)の上に、蓄熱シート1を敷き詰めて蓄熱層を積層した。この際、面状発熱体の配線コードを収納するための収納スペースを設けた(収納スペースの幅:3cm)。
次に、図2に示すように、収納スペースに配線コードを収納し、面状発熱体を積層した。
次に、図14に示すように、面状発熱体の上に、床材層を積層し、床暖房構造体を得た。
【0093】
(床暖房性能評価)
内寸が620×360×200mmとなるように、側面及び上面に厚さ25mmのポリスチレンフォームを設置し、底面には床暖房構造体の床材層側が内側となるように設置し、試験体ボックスを作製した。
さらに、床暖房構造体表面(配線コードの上)と、床暖房構造体表面から高さ100mmの位置にそれぞれ熱電対を設置した。
また、床暖房構造体表面には、表面温度を一定にするため、床表面に温度調節装置(温度調節器、変圧器)を取り付けた。
この試験体ボックスを恒温器の中に設置し、次の実験を行った。
恒温器中の温度を10℃に設定し、15時間放置した。その後恒温器中の温度を10℃に設定したまま、面状発熱体を180分加熱した。なお床表面は、温度調節装置(温度調節器、変圧器)により、30℃一定になるように設定した。
床暖房性能評価として、次の(1)(2)の温度を測定した。
(1)面状発熱体の加熱後60分後の床暖房構造体表面温度(表面温度)、及び、床暖房構造体表面から高さ100mmの位置の温度(空間温度)を測定した。
(2)また、180分加熱した後、加熱を停止し、停止60分後の表面温度、空間温度を測定した。
その結果、(1)加熱後60分の温度は、実施例1〜実施例4及び比較例1の表面温度は30.0℃、実施例1〜実施例4及び比較例1の空間温度は19.0℃〜20.0℃であった。
(2)加熱停止後60分の温度は、実施例1〜実施例4の表面温度は20.0℃〜21.0℃であるのに対し、比較例1の表面温度は18.8℃であった。また、実施例1〜実施例4の空間温度は16.0℃〜17.0℃であるのに対し、比較例1の空間温度は13.5℃であった。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例1における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図2】実施例1における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図3】実施例1における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図4】実施例1で得られる床暖房構造体のモデル図である。
【図5】実施例2、3における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図6】実施例2、3における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図7】実施例2、3における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図8】実施例2、3で得られる床暖房構造体のモデル図である。
【図9】実施例4における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図10】実施例4における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図11】実施例4における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図12】実施例4における床暖房構造体の施工過程のモデル図である。
【図13】実施例4で得られる床暖房構造体のモデル図である。
【図14】比較例1で得られる床暖房構造体のモデル図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱層の上に、面状発熱体、床材層が積層された床暖房構造体であって、
蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填されていることを特徴とする床暖房構造体。
【請求項2】
蓄熱層の上に、耐熱層、面状発熱体、床材層が積層された床暖房構造体であって、
蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填されていることを特徴とする床暖房構造体。
【請求項3】
基材の上に、面状発熱体の配線コードを格納するための収納スペースを設けて、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めて蓄熱層を積層し、
該収納スペースに面状発熱体の配線コードを格納して、蓄熱層の上に面状発熱体を積層し、さらに収納スペースに潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填し、
その上に、床材層を積層することを特徴とする床暖房構造体の施工方法。
【請求項4】
基材の上に、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めて蓄熱層を積層し、
該蓄熱層の一部に、面状発熱体の配線コードを格納するための収納スペースを設け、
該収納スペースに面状発熱体の配線コードを格納して、蓄熱層の上に面状発熱体を積層し、さらに収納スペースに潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填し、
さらにその上に、床材層を積層することを特徴とする床暖房構造体の施工方法。
【請求項5】
蓄熱層と面状発熱体との間に、耐熱層を積層することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の床暖房構造体の施工方法。
【請求項1】
蓄熱層の上に、面状発熱体、床材層が積層された床暖房構造体であって、
蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填されていることを特徴とする床暖房構造体。
【請求項2】
蓄熱層の上に、耐熱層、面状発熱体、床材層が積層された床暖房構造体であって、
蓄熱層は、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めたものであり、該蓄熱層の一部には収納スペースが設けてあり、該収納スペースには、面状発熱体の配線コードが格納され、さらに、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体が充填されていることを特徴とする床暖房構造体。
【請求項3】
基材の上に、面状発熱体の配線コードを格納するための収納スペースを設けて、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めて蓄熱層を積層し、
該収納スペースに面状発熱体の配線コードを格納して、蓄熱層の上に面状発熱体を積層し、さらに収納スペースに潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填し、
その上に、床材層を積層することを特徴とする床暖房構造体の施工方法。
【請求項4】
基材の上に、潜熱蓄熱材を含有する蓄熱シートを敷き詰めて蓄熱層を積層し、
該蓄熱層の一部に、面状発熱体の配線コードを格納するための収納スペースを設け、
該収納スペースに面状発熱体の配線コードを格納して、蓄熱層の上に面状発熱体を積層し、さらに収納スペースに潜熱蓄熱材を含有する蓄熱体を充填し、
さらにその上に、床材層を積層することを特徴とする床暖房構造体の施工方法。
【請求項5】
蓄熱層と面状発熱体との間に、耐熱層を積層することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の床暖房構造体の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−249308(P2008−249308A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93907(P2007−93907)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]