説明

床暖房構造

【課題】 床暖房構造において、敷き詰めるフローリング材の接合部に大きな隙間が形成されるのを防止する。
【解決手段】 床下地20と、その上に配置される熱源を有する床暖房パネル30と、その上に配置されるフローリング材10とを少なくとも備える床暖房構造において、長尺状のフローリング材10を複数個の小片ピース11を長手方向に実接合により組み付けて構成し、該実接合部には常温硬化型であるが床暖房時に発生する温度で軟化する温度依存性のある弾性接着剤14を塗布しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床暖房構造に関し、特に、床暖房運転時に生じるフローリング材間の隙間の変化を分散させることにより目立たないようにした床暖房構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートスラブあるいはその上に張られた捨て張り合板のような床下地の上に、基材中に熱源である温水パイプを配設した床暖房パネルを設置し、その上に、フローリング材を敷設するようにした床暖房構造は知られている(特許文献1、特許文献2等参照)。床暖房の性質上、敷設されたフローリング材は温湿度の上昇と降下を繰り返すこととなるが、その際、特に長手方向の伸縮量が大きくなり、敷き詰めたフローリング材とフローリング材との間の長手方向の継ぎ目部分に盛り上がりや隙間が生じることが起こりうる。
【0003】
それを解消するための床暖房用のフローリング材として、特許文献3には、長手方向を相互に突き合わせることにより該突き合わせ部の裏面側に長手方向の空間が形成される形状となっている複数の小幅な単位板を互いに突き合わせ、そこに形成された長手方向の空間にホットメルト樹脂が充填され、かつ裏面には緩衝材が貼着されている床材において、該小幅な単位板の一部又は全部は長手方向に少なくとも2分割されており、該分割された面の突き合わせ部の裏面側には短手方向に第2の空間が形成され、該第2の空間にもホットメルト樹脂が充填されていることを特徴とするフローリング材が記載されている。
【0004】
上記のフローリング材では、フローリング材を構成する小幅な単位板が長手方向に分割されているために、暖房床のように温湿度変化の大きい場所に敷設した場合であっても、単位板全体としての温湿度変化による伸縮量は抑制されることができ、かつ分割された面の突き合わせ部の裏面側に形成される第2の空間にはホットメルト樹脂が充填されているために、分割された小幅な単位板が長手方向にそれぞれ異なる熱挙動を示すような場合でも、ホットメルト樹脂の接合作用により、当該接合面が分離してそこに隙間が生じるのを阻止している。
【0005】
【特許文献1】特開平7−217920号公報
【特許文献2】特開平11−132476号公報
【特許文献3】特開平10−266538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載のフローリング材は、フローリング材を構成する長尺状の小幅な単位板を側数個に分割し、その分割した面の突き合わせ部の裏面側に第2の空間が形成して、そこにホットメルト樹脂を充填したことにより、床暖房時にフローリング材に生じる伸縮に起因する不都合を回避することができる。
【0007】
しかし、このフローリング材は、長尺状の小幅な単位板の複数枚をその長手方向を相互に突き合わせることにより構成されるものであり、全体の構成がやや複雑であり、施工も容易でない。また、各小幅な単位板の長手方向の伸縮挙動は、やはりホットメルト樹脂を介在して長手方向で相互に突き合わされている他の小幅な単位板からの影響を受けることから、1枚のフローリング材を構成する複数枚の小幅な単位板の床暖房時におけ長手方向での伸縮挙動にバラツキが生じ、結果として、隣接するフローリング材の短辺同士の突き合わせ部の隙間に不規則なバラツキが生じることがある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、フローリング材の構成を簡素化し、同時に、隣接するフローリング材の短辺同士の突き合わせ部に大きな隙間が生じないようにして、フローリング材を敷き詰めた暖房床表面の外観性を損なわないようにした床暖房構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による床暖房構造は、床下地と、その上に配置される熱源を有する床暖房パネルと、その上に配置されるフローリング材とを少なくとも備える床暖房構造において、フローリング材は複数個の小片ピースを長手方向に実接合により組み付けた長尺状のものであり、当該実接合部には床暖房時に発生する温度で軟化する温度依存性のある弾性接着剤が塗布されていることを特徴とする。
【0010】
塗布する弾性接着剤が軟化を開始する温度は、当該床暖房構造が設置される地域や居住者の住環境によって異なるが、通常、軟化を開始する温度が30℃〜50℃の間の温度である弾性接着剤を塗布する。具体的には、塗布する弾性接着剤は、酢酸ビニル系接着剤、ホットメルト系接着剤、シリコン系接着剤等を挙げることができる。
【0011】
本発明による床暖房構造で用いるフローリグ材は、小片ピースを長手方向に単に実接合するだけであり、その構成はきわめて簡単であり、施工も容易となる。そして、実接合部には上記した温度依存性のある弾性接着剤が塗布されているので、床暖房時には弾性接着剤が軟化し、床暖房時に長尺状の1枚のフローリング材に生じる内部応力を、複数個の小片ピースに分散させることができる。その結果として、隣接するフローリング材の短辺同士の突き合わせ部に生じる隙間は各小片ピース間に分散することとなり、製品間、すなわち隣接するフローリング材の短辺同士の間に大きな隙間が生じるのを回避できる。それにより、フローリング材を敷き詰めた暖房床表面の高い外観性を維持することができる。
【0012】
本発明において、熱源を有する床暖房パネルは任意であり、前記特許文献1、特許文献2に記載されるようなものであってよい。熱源は温水バイプ内を循環する温水でもよく、熱線ヒータでもよく、面ヒータであってもよい。
【0013】
フローリング材は、合板や木質繊維板等である基材の表面に、表面材として突板のような化粧材を貼着したものが用いられ、その大きさは、1尺×6尺、1尺×3尺、1尺×4尺、等である。小片ピースは、好ましくは、1尺×1尺のような尺角タイプ(この場合には、6枚の小片ピースが長手方向に弾性接着剤を介して接合されて1尺×6尺タイプのフローリング材となる)であるが、これに限らない。各小片ピースの木口面には定法に従い実加工が施され、雌実側に弾性接着剤を塗布した後、相互に実接合される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、床暖房時に隣接するフローリング材の短辺同士の突き合わせ部に大きな隙間が生じるのを回避でき、フローリング材を敷き詰めた暖房床表面の高い外観性を維持することのできる床暖房構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態により説明する。図1は本発明による床暖房構造を形成するためのフローリング材の一例を示しており、図1aは斜視図、図1bは図1aのA−A線による断面図である。図2は図1に示すフローリング材を敷き詰めた状態を上から見た図であり、図3は本発明による床暖房構造の一例を示す断面図である。
【0016】
この例において、フローリング材10は1尺×6尺の大きさであり、1尺×1尺の大きさの小片ピース11が6枚、長手方向に接合されている。各小片ピース11は4周の木口面に雌実12と雄実13とからなる実加工が施されており、実接合部には、常温硬化型であるが床暖房時に発生する温度で軟化する温度依存性のある弾性接着剤14(例えば、酢酸ビニル系樹脂接着剤)が塗布された状態で、雌実12と雄実13の実接合がなされている。この形態のフローリング材10が所要枚数だけ施工現場に搬入され、敷き込まれる。
【0017】
床暖房構造の施工に際しては、図3に示すように、床下地20であるコンクリートスラブ21あるいはその上に配置した捨て張り合板22の上に、従来知られた熱源を有する床暖房パネル30を敷き詰める。この例で、床暖房パネル30は、発泡ポリエチレン板のような基材31の表面側に凹溝32が形成され、該凹溝32の中に架橋ポリエチレンパイプのような温水配管33がループを描くようにして挿入されている。この温水配管33に温水が供給されて熱源となる。さらに、基材31の適所には荷重を支持するための小根太34が取り付けてあり、該小根太34を利用して床暖房パネル30の床下地20への固定も行われる。図示しないが、温水配管33に変えて熱線ヒータを用いることもできる。面ヒータを用いることもできる。
【0018】
このような床暖房パネル30の複数枚を、各温水配管33が閉鎖したループを描くように接続しながら床下地20上へ敷き詰め、その上に、必要な場合には均熱シート35を敷き詰めた後、上記したフローリング材10を縦横方向に配置していく。フローリング材10とフローリング材10との短手方向の接合部16および長手方向の接合部17は、エポキシ樹脂系接着剤のような接着剤によってもよく、図示のように釘36で小根太34に打ち付け固定してもよく、接着剤と釘との双方によってもよい。
【0019】
図2はそのようにして複数枚のフローリング材10を敷き詰めた状態を上から見て示している。本発明によるフローリング材10は、上記のように小片ピース11を、常温硬化型であるが床暖房時に発生する温度では軟化する温度依存性のある弾性接着剤14を介在させて長手方向に接合した形態であり、床暖房のオン・オフに起因してフローリング材10に伸縮作用が反復して作用しても、その内部応力は各小片ピース11によって分散されるので、全体が1ピースで作られるフローリング材の場合でのように、隣接するフローリング材の短辺同士の間に隙間が集中して生じるのを回避でき、隙間が生じる場合でも、それは小片ピース11同士の接合部P等の複数箇所に分散して生じるようになる。そのために、隙間は目立たなくなり、床暖房構造の表面外観が損なわれることはない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による床暖房構造を形成するフローリング材の一例を示しており、図1aは斜視図、図1bは図1aのA−A線による断面図である。
【図2】図1に示す複数枚のフローリング材を敷き詰めた状態を上から見た図。
【図3】本発明による床暖房構造の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0021】
10…フローリング材、11…小片ピース、12…雌実、13…雄実、14…常温硬化型であるが床暖房時に発生する温度では軟化する温度依存性のある弾性接着剤、20…床下地、30…床暖房パネル、31…基材、32…凹溝、33…温水配管、34…小根太、35…均熱シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地と、その上に配置される熱源を有する床暖房パネルと、その上に配置されるフローリング材とを少なくとも備える床暖房構造において、
フローリング材は複数個の小片ピースを長手方向に実接合により組み付けた長尺状のものであり、当該実接合部には床暖房時に発生する温度で軟化する温度依存性のある弾性接着剤が塗布されていることを特徴とする床暖房構造。
【請求項2】
軟化を開始する温度が30℃〜50℃の間の温度である弾性接着剤を塗布することを特徴とする請求項1に記載の床暖房構造。
【請求項3】
塗布する弾性接着剤は、酢酸ビニル系接着剤、ホットメルト系接着剤、シリコン系接着剤のいずれかである請求項2に記載の床暖房構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−46028(P2006−46028A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232426(P2004−232426)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】