説明

床材およびその製造方法

【課題】耐傷性、耐水性に優れた薄型の木質系床材を提供する。
【解決手段】ケナフ繊維およびポリオレフィン系樹脂を含有するフェルト材を圧縮してなる木質繊維ボード層12と、木質繊維ボード層12の表面に積層された表面側ポリオレフィン系フィルム層14と、木質繊維ボード層12の裏面に積層された裏面側ポリオレフィン系フィルム層16と、表面側ポリオレフィン系フィルム層12上に形成されたポリオレフィン系プライマー層18と、ポリオレフィン系プライマー層18に積層された化粧シート層20と、化粧シート層上に形成された塗装層22とを具備する床材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅や店舗のフローリングなどに使用される床材に関し、さらに詳述すると、耐傷性、耐水性に優れた薄型の木質系床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅や店舗のフローリング用床材としては、厚さ9〜15mmの合板の表面に化粧シートを接着し、さらにその表面に塗装を施したものが多用されている。
【0003】
上記フローリング用床材には、キャスターを取り付けた家具を動かした場合などに表面が傷付きにくいこと、すなわち耐傷性が求められている。
【0004】
また、近年では、フローリング用床材を台所、洗面所といった水を使用する場所の床に用いることが多くなり、そのためフローリング用床材には耐水性が求められている。
【0005】
さらに、近年では、床のリフォームに使用する際の施工性などの点から、薄型のフローリング用床材が求められるようになっている。
【0006】
これに対し、耐傷性、耐水性に優れた薄型の木質系フローリング用床材として、特許文献1のものが提案されている。特許文献1の床材は、木質系基板の表面に化粧シートを接着した床材において、木質系基板を3層構造とし、最下層を比重が小さく軟らかい材質、その上の2層を比重が大きく硬い材質で形成したもので、具体的には、上記木質系基板を、比重0.2〜0.6で厚さ0.4〜1.2mmの裏面材と、比重0.6〜1.0で厚さ1.0〜2.0mmの中間材と、比重0.8〜1.2で厚さ0.4〜1.2mmの表面材とを積層することにより形成したものである。
【0007】
【特許文献1】特開2002−225009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の床材は、比重および厚さが異なる3種類の材質を用いて木質系基板を形成するため、木質系基板の製造が面倒であった。
【0009】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、耐傷性、耐水性に優れ、かつ木質系基板の製造が容易な薄型の木質系床材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の目的を達成するため、ケナフ繊維およびポリオレフィン系樹脂を含有するフェルト材を圧縮してなる木質繊維ボード層と、前記木質繊維ボード層の表面に積層された表面側ポリオレフィン系フィルム層と、前記木質繊維ボード層の裏面に積層された裏面側ポリオレフィン系フィルム層と、前記表面側ポリオレフィン系フィルム層上に形成されたポリオレフィン系プライマー層と、前記ポリオレフィン系プライマー層に積層された化粧シート層と、前記化粧シート層上に形成された塗装層とを具備することを特徴とする床材を提供する。
【0011】
また、本発明は、前述の目的を達成するため、(a)ケナフ繊維およびポリオレフィン系樹脂を含有するフェルト材を圧縮してなる木質繊維ボード層と、前記木質繊維ボード層の表面に積層された表面側ポリオレフィン系フィルム層と、前記木質繊維ボード層の裏面に積層された裏面側ポリオレフィン系フィルム層とを具備する木質系基板の前記表面側ポリオレフィン系フィルム層の表面に湿式サンダー加工を施す工程と、(b)前記湿式サンダー加工を施した表面側ポリオレフィン系フィルム層上にポリオレフィン系プライマー層を形成する工程と、(c)前記ポリオレフィン系プライマー層に化粧シート層を積層する工程と、(d)前記化粧シート層上に塗装層を形成する工程とを具備することを特徴とする床材の製造方法を提供する。
【0012】
本発明では、ケナフ繊維およびポリオレフィン系樹脂を含有するフェルト材を圧縮してなる耐傷性、耐水性の高い木質繊維ボード層を木質系基板に用いたので、優れた耐傷性、耐水性を有する床材を得ることができる。また、上記木質繊維ボード層の両面にポリオレフィン系フィルム層を積層したので、木質系基板の表面における樹脂の割合が大きくなり、その結果、床材の耐傷性、耐水性がより向上する。さらに、上記木質系基板は、前述したフェルト材の両面にそれぞれポリオレフィン系フィルムを積層した積層体を加熱加圧成形よって圧縮することにより作製できるので、木質系基板の製造が簡単である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐傷性、耐水性に優れ、しかも木質系基板の製造が簡単な薄型の木質系床材を得ることができる。また、本発明では、木質繊維ボード層にケナフという単独の木質繊維を用いるとともに、木質繊維ボード層、その両面のフィルム層およびプライマー層にいずれもポリオレフィン系樹脂という同種の樹脂を使用したので、床材の反りを効果的に防止することができる。本発明の床材は、上記のように耐傷性、耐水性に優れ、かつ反りが生じにくいため、通常のフローリングのみならず、リフォーム用床材や床暖房床板の表面材などとしても有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。図1は本発明に係る床材の一実施形態を示す断面図である。
【0015】
本例の床材10は、木質繊維ボード層12と、木質繊維ボード層12の表面に積層された表面側ポリオレフィン系フィルム層14と、木質繊維ボード層12の裏面に積層された裏面側ポリオレフィン系フィルム層16と、表面側ポリオレフィン系フィルム層12上に形成されたポリオレフィン系プライマー層18と、ポリオレフィン系プライマー層18に積層された化粧シート層20と、化粧シート層上に形成された塗装層22と、裏面側ポリオレフィン系フィルム層16に積層された両面粘着テープ24とを具備するものである。
【0016】
木質繊維ボード層12は、ケナフ繊維およびポリオレフィン系樹脂を含有するフェルト材を加熱加圧成形により圧縮したものである。ケナフ繊維とは、植物の1種であるケナフ(学名:Hibiscus cannabinus)から採取した植物繊維である。本発明において、ケナフ繊維の繊維長は、10〜50mmとすることが適当である。また、ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができるが、ポリプロピレンが特に好ましい。上記フェルト材は、ケナフ繊維とポリオレフィン系樹脂の繊維または粒子との混合物に熱および圧力を加えてマット状に成形することにより作製することができる。この場合、上記混合物におけるケナフ繊維:ポリオレフィン系樹脂の質量比は40:60〜60:40とすることが好ましく、また、フェルト材の厚さは8〜12mmとすることが適当である。さらに、木質繊維ボード層12の密度は0.8g/cm以上、特に0.8〜1.0cmとすることが好ましい。
【0017】
表面側ポリオレフィン系フィルム層14および裏面側ポリオレフィン系フィルム層16を形成するポリオレフィン系フィルムとしては、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を用いることができるが、ポリプロピレンフィルムが特に好ましい。また、木質繊維ボード層12、表面側ポリオレフィン系フィルム層14および裏面側ポリオレフィン系フィルム層16からなる木質系基板の厚さは2〜5mm、特に約3mmとすることが好ましい。
【0018】
ポリオレフィン系プライマー層18を形成するポリオレフィン系プライマーとしては、例えば大日精化工業株式会社製LAP−MDBプライマーを用いることができる。
【0019】
化粧シート層20を形成する化粧シートとしては、例えば表面に印刷を施した紙シートあるいは樹脂シートや、つき板等を挙げることができる。
【0020】
塗装層22を形成する塗料としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料等を挙げることができる。
【0021】
なお、本発明の床材には、実加工等の任意の加工を施すことができる。また、本発明の床材の大きさに限定はないが、例えば幅250〜350mm、長さ400〜1100mmの長方形とすることができる。
【0022】
次に、図1に示した床材の製造方法について説明する。図1の床材10は、下記手順(1)〜(5)によって製造した。
【0023】
(1)図2に示すように、2枚のフェルト材30a、30bを重ね合わせ、さらに重ね合わせたフェルト材30a、30bの表面および裏面にそれぞれ2枚のポリオレフィン系フィルム32a、32b、34a、34bを重ね合わせて積層体36を得た。各フェルト材としては、ケナフ繊維とポリプロピレン繊維とを50:50の質量比で混合した混合物を熱プレスにより厚さ10mmに圧縮したものを用いた。各ポリオレフィン系フィルムとしては、厚さ60μmのポリプロピレンフィルムを用いた。上記のように2枚のフェルト材を重ね合わせることにより、密度の均一化が図られるという効果を得ることができる。
【0024】
(2)積層体36を加熱加圧成形によって圧縮することにより、図1に示す木質繊維ボード層12、表面側ポリオレフィン系フィルム層14および裏面側ポリオレフィン系フィルム層16からなる厚さ3mmの木質系基板を作製した。より具体的には、積層体36を熱プレス機にて3mm厚まで熱圧し、コールドプレスにて平板に成形した。これにより、フェルト材30a、30bによって木質繊維ボード層12が形成され、ポリオレフィン系フィルム32a、32bによって表面側ポリオレフィン系フィルム層14が形成され、ポリオレフィン系フィルム34a、34bによって裏面側ポリオレフィン系フィルム層16が形成された。上記のように木質繊維ボード層12の両面にポリオレフィン系フィルムを積層することで、木質系基板の表面の樹脂率が高まり、耐傷性および耐水性をより向上させることができる。
【0025】
(3)上記木質系基板の表面側ポリオレフィン系フィルム層14の表面に湿式サンダー加工を施した。湿式サンダー加工とは、研磨を施す面に水分を存在させた状態でサンダーにより研磨を行う加工法であり、例えば水をサンドペーパーに噴霧してサンドペーパーに水を含ませたり、研磨を施す面に水を噴霧してから研磨したりすることができる。すなわち、上記木質系基板は、そのままの状態では表面に凹凸があるため表面研磨を行うものであるが、通常のサンダー加工では、摩擦熱によりポリオレフィン系樹脂が溶け出し、サンドペーパーを目詰まりさせるため、木質系基板の表面に水を噴霧してから研磨するものである。このように湿式サンダー加工による表面研磨を行うことで、木質系基板の表面平滑性を向上させることができるとともに、後から塗布するプライマーの密着強度を向上させることができる。
【0026】
(4)湿式サンダー加工を施した表面側ポリオレフィン系フィルム層14上にポリオレフィン系プライマーを塗装機(ロールコーター)で塗布し、その後プライマー剤を自然乾燥させることにより、ポリオレフィン系プライマー層18を形成した。すなわち、表面側ポリオレフィン系フィルム層はそのままでは接着性がよくないため、プライマー剤を表面に塗布した。このプライマー剤は、表面側ポリオレフィン系フィルム層に特別な処理(コロナ放電処理等)を行わなくても化粧シートを接着可能にするポリオレフィン系樹脂(大日精化工業株式会社製LAP−MDBプライマー)である。なお、裏面側ポリオレフィン系フィルム層16にも湿式サンダー加工を施すとともに、ポリオレフィン系プライマーを塗布してもよい。
【0027】
(5)ポリオレフィン系プライマー層18に化粧シートを接着剤(EVA系エマルジョン)により接着することにより、化粧シート層20を形成した。
【0028】
(6)得られた板材を規定のサイズにカットし、4辺あいじゃくり加工を行った。
【0029】
(7)化粧シート層20にアクリル樹脂系塗料を塗布することにより、塗装層22を形成した。
【0030】
(8)剥離紙の付いた両面粘着テープ24を裏面側ポリオレフィン系フィルム層16に貼り合わせた。この両面粘着テープ24は、床材の施工時に使用するものである。
【実施例】
【0031】
図1に示した床材を用い、デュポン衝撃試験および吸水試験を行うとともに、木質繊維ボード層の密度を測定した。
【0032】
(デュポン衝撃試験)
デュポン式衝撃試験機(JIS−K−5400−8.3.2)を用い、下記手順(1)〜(5)により床材表面の凹み量を測定した。床材の試験片としては、約100×50mmの長方形状の試験片を用いた(N数:3以上)。
(1)試験前に、試験片1枚につき4箇所の衝撃点を決め、ダイヤルゲージを用い衝撃点の厚み(D0)を1/100mmまで測定する。
(2)半径6.35±0.03mmの撃ち型と受け台とを取り付け、試験片の表面を上向きにして、撃ち型が試験片の衝撃点にくるように試験片を挟み、質量500gのおもりを高さ300mmから撃ち型の上に落とす。
(3)4箇所について(2)の操作を繰り返す。
(4)試験後、(1)と同様に衝撃点の厚み(D1)を測定する。
(5)試験片表面の凹み量(=D0−D1)を求める。
【0033】
その結果、試験片表面の凹み量の平均値は0.14mmであり、本発明の床材は耐傷性に優れていることが確認された。なお、上記凹み量の平均値は0.6mm以下で耐傷性が合格と判定できる。
【0034】
(吸水試験)
複数の床材の試験片を25℃において水中に3日間放置し、吸水による試験片の厚さの変化率を調べた。その結果、上記変化率の平均値は2.56%であり、本発明の床材は耐水性に優れていることが確認された。なお、上記変化率は6.0%以下で耐水性が合格と判定できる。
【0035】
(密度)
複数の木質繊維ボード層の試験片の密度を測定した。その結果、上記密度の平均値は0.96g/cm(0.90〜1.02g/cm)であった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る床材の一実施形態を示す断面図である。
【図2】フェルト材の両面にポリオレフィン系フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 床材
12 木質繊維ボード層
14 表面側ポリオレフィン系フィルム層
16 裏面側ポリオレフィン系フィルム層
18 ポリオレフィン系プライマー層
20 化粧シート層
22 塗装層
24 両面粘着テープ
30a、30b フェルト材
32a、32b、34a、34b ポリオレフィン系フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケナフ繊維およびポリオレフィン系樹脂を含有するフェルト材を圧縮してなる木質繊維ボード層と、前記木質繊維ボード層の表面に積層された表面側ポリオレフィン系フィルム層と、前記木質繊維ボード層の裏面に積層された裏面側ポリオレフィン系フィルム層と、前記表面側ポリオレフィン系フィルム層上に形成されたポリオレフィン系プライマー層と、前記ポリオレフィン系プライマー層に積層された化粧シート層と、前記化粧シート層上に形成された塗装層とを具備することを特徴とする床材。
【請求項2】
前記木質繊維ボード層、表面側ポリオレフィン系フィルム層および裏面側ポリオレフィン系フィルム層は、前記フェルト材の両面にそれぞれポリオレフィン系フィルムを積層してなる積層体を圧縮することにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の床材。
【請求項3】
前記表面側ポリオレフィン系フィルム層の表面に湿式サンダー加工が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の床材。
【請求項4】
前記木質繊維ボード層の密度が0.8g/cm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の床材。
【請求項5】
(a)ケナフ繊維およびポリオレフィン系樹脂を含有するフェルト材を圧縮してなる木質繊維ボード層と、前記木質繊維ボード層の表面に積層された表面側ポリオレフィン系フィルム層と、前記木質繊維ボード層の裏面に積層された裏面側ポリオレフィン系フィルム層とを具備する木質系基板の前記表面側ポリオレフィン系フィルム層の表面に湿式サンダー加工を施す工程と、(b)前記湿式サンダー加工を施した表面側ポリオレフィン系フィルム層上にポリオレフィン系プライマー層を形成する工程と、(c)前記ポリオレフィン系プライマー層に化粧シート層を積層する工程と、(d)前記化粧シート層上に塗装層を形成する工程とを具備することを特徴とする床材の製造方法。
【請求項6】
前記木質系基板は、前記フェルト材の両面にそれぞれポリオレフィン系フィルムを積層してなる積層体を圧縮することにより形成することを特徴とする請求項5に記載の床材の製造方法。
【請求項7】
前記木質繊維ボード層の密度が0.8g/cm以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の床材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−154409(P2007−154409A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346342(P2005−346342)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(591059685)南海プライウッド株式会社 (17)
【Fターム(参考)】