説明

床構造

【課題】 マンションのベランダなどに設置されて、屋内外のバリアフリーを可能とする床構造の提供。
【解決手段】屋内フロアと段差を介し構築された屋外フロアの床構造であって、多数枚の単位パネル1を一平面に集合して形成される上側床パネル100と、多数枚の単位パネル2を一平面に集合して形成される下側床パネル200とを備え、下側床パネルを屋外フロアを形成する床下地面30上に高さ調整機能を有する下部嵩上げ脚3で支持し、下部嵩上げ脚で下側床パネルと床下地面間に連続する下部空間S2を形成すると共に、上側床パネルを下側床パネル上に上部嵩上げ脚7で支持し、上部嵩上げ脚で下側床パネルと上側床パネル間に連続する上部空間S1を形成し、下側床パネルの上下位置を下部嵩上げ脚を介して調整することにより、上側床パネルと屋内フロアとの段差を吸収する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、マンションやビルなどにおいて、屋内フロアと段差を介して構築されるベランダやバルコニーなどの屋外フロアに設けられる床構造に関し、詳しくは、屋内外のバリアフリーを可能とする床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、上記屋外フロアたるベランダやバルコニーなどに対しては、紫外線を遮断して、ベランダやバルコニーの防水層を熱や劣化から守るために、その床下地面に多数枚のパネルが縦横に連続して敷設されている。
【0003】
このパネルには、特許文献1に示すように、合成樹脂製の座板と該座板の上面で成形硬化され同上面に層着された表面材とを有し、該座板の上面に表面材中に埋設される多数のアンカーを突設し、座板の下面にパネル自体を支持する多数の支持脚を突設したものが使用されて、ベランダなどの床下地面に該各支持脚を介して敷設されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−155956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、斯かる従来の床構造は、上記パネルをベランダなどの床下地面に集合して敷設するものであるが、この場合には、床下地面上に直に置き敷きして広面積の床を構築するものであるから、当該ベランダなどに敷設されたパネルと屋内フロアとの間に段差が生じていると、屋内外のバリアフリーが得られなくなって、高齢者や障害者にとっては障害となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、斯かる従来の床構造が抱える課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、屋内フロアと段差を介し構築された屋外フロアの床構造であって、多数枚の単位パネルを一平面に集合して形成される上側床パネルと、多数枚の単位パネルを一平面に集合して形成される下側床パネルとを備え、該下側床パネルを上記屋外フロアを形成する床下地面上に高さ調整機能を有する下部嵩上げ脚で支持し、該下部嵩上げ脚で下側床パネルと床下地面間に連続する下部空間を形成すると共に、上記上側床パネルを下側床パネル上に上部嵩上げ脚で支持し、該上部嵩上げ脚で下側床パネルと上側床パネル間に連続する上部空間を形成し、上記下側床パネルの上下位置を上記下部嵩上げ脚を介して調整することにより、上記上側床パネルと上記屋内フロアとの段差を吸収する構成とし、更に上記下側床パネルの単位パネルを多孔板で形成すると共に、上記上側床パネルの対向する単位パネルの周縁部間に外部と連通する隙間を形成し、水分を該隙間を介して上部空間から上記下側床パネルの多孔を経て下部空間側へ排水する構成としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1を前提として、上記下部嵩上げ脚の下側床パネルを支持する上面に第一緩衝プレートを配し、該下部嵩上げ脚の床下地面に当接する下面に第二緩衝プレートを配したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1乃至請求項2を前提として、上記下側床パネルの単位パネルの下面には多数の凹空間部が一定の間隔をおいて形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3を前提として、サッシレールの側面と上側床パネルの側面間に排水用の空隙を形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項2を前提として、上記第一緩衝プレートは、軟質な合成樹脂で一体に成形されて、下部嵩上げ脚の上部に嵌合される基体を有し、該基体の上面に切断可能な複数のリブ壁を立設して、該各リブ壁で下側床パネルの単位パネルを位置決めすることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項2を前提として、上記第二緩衝プレートは、軟質な合成樹脂で一体に成形されて、床下地面上に敷設される基体を有し、該基体の周縁に方向性を示す部分が付されて、床下地面の勾配を水平に調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
依って、請求項1記載の発明にあっては、床自体を上側床パネルと下側床パネルの二段構造となして、下側床パネルを床下地面上に高さ調整機能を有する下部嵩上げ脚で支持し、上側床パネルを下側床パネル上に上部嵩上げ脚で支持して、上記下側床パネルの上下位置を上記下部嵩上げ脚を介して調整することにより、上側床パネルと屋内フロアとの段差を吸収する関係で、例え、上側床パネルと屋内フロアとの間に段差が生じていても、下部嵩上げ脚の高さ調整機能で、当該段差を簡単に吸収することが可能となるので、屋内外に亘るバリアフリーを容易に構築できる。
【0013】
又、上部嵩上げ脚で下側床パネルと上側床パネル間に連続する上部空間を形成すると共に、下部嵩上げ脚で下側床パネルと床下地面間に連続する下部空間を形成する関係で、上下二段に亘って断熱効果と遮音効果を有する床構造が提供できる。
【0014】
更に、下側床パネルの単位パネルが多孔板で形成され、且つ上側床パネルの対向する単位パネルの周縁部間に外部に連通する隙間を形成した関係で、上側床パネル上に降った雨水などを当該隙間を介して上部空間から上記下側床パネルの多孔を経て下部空間側へ導けるので、良好な排水性が十分に確保できる。
【0015】
請求項2記載の発明にあっては、下部嵩上げ脚の上下面に第一・第二の緩衝プレートが配されている関係で、歩行音を減少して不陸に対応できる。
【0016】
請求項3記載の発明にあっては、下側床パネルの単位パネルの下面に多数の凹空間部が形成されている関係で、当該単位パネル自体の軽量化が期待できることは言うまでもないが、特に、施工現場で単位パネルを切断する必要が生じたような場合には、この凹空間部の存在によって、単位パネルが肉薄となるので、単位パネルを容易に切断することが可能となり、加工性が向上する。
【0017】
請求項4記載の発明にあっては、サッシレールの側面と上側床パネルの側面間に排水用の空隙を形成した関係で、この空隙を利用して、雨水などを下側床パネルを経て床下地面側に効率良く排水できるので、例え、バリアフリーであっても、屋内フロア側に雨水などが浸入することがない。
【0018】
請求項5記載の発明にあっては、下部嵩上げ脚の下側床パネルを支持する上面に軟質な合成樹脂で成形された第一緩衝プレートを配した関係で、歩行音の減少と不陸に対応できると共に、基板の上面に切断可能な複数のリブ壁を設けた関係で、該リブ壁を適宜選択すれば、下側床パネルを形成する単位パネルを確実に位置決めできる。
【0019】
請求項6記載の発明にあっては、下部嵩上げ脚の床下地面に当接する下面に柔軟な合成樹脂で成形された第二緩衝プレートを配した関係で、歩行音の減少と不陸に対応できると共に、基体の周縁に方向性を示す部分を付した関係で、基体の敷設方向を確認でき、作業性が向上し、且つ、床下地面の勾配を容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(A)は上側床パネルを形成する上単位パネルの平面図、(B)は同正面図である。
【図2】(A)は上単位パネルが有する座板の平面図、(B)は同底面図である。
【図3】連結具を示す斜視図である。
【図4】上単位パネル同士が連結具を介して連結された要部底面図である。
【図5】(A)は下側床パネルを形成する下単位パネルの平面図、(B)は同底面図である。
【図6】(A)は図5AのA−A線断面図、(B)は図5AのB−B線断面図である。
【図7】(A)は高さが低く調整された下部嵩上げ脚の一例を示す正面図、(B)は高さが高く調整された下部嵩上げ脚の一例を示す正面図である。
【図8】(A)は位置決めプレートの斜視図、(B)は図8AのC−C線断面図である。
【図9】(A)は勾配の大きな場所で使用される傾斜調整プレートを示す平面図、(B)は同側面図、(C)は勾配の小さな場所で使用される傾斜調整プレートを示す平面図、(D)は同側面図である。
【図10】一般床下地面に勾配の小さな傾斜調整プレートを配置した状態を示す要部斜視図である。
【図11】床下地面の排水溝部に勾配の大きな傾斜調整プレートを配した状態を示す要部斜視図である。
【図12】各傾斜調整プレートに下部嵩上げ脚を据え付けて、水平器でレベルを調整している状態を示す要部斜視図である。
【図13】各下部嵩上げ脚の昇降体に位置決めプレートを嵌合した状態を示す要部斜視図である。
【図14】位置決めプレートにおけるリブ壁の使用例を示す要部平面図である。
【図15】(A)・(B)は位置決めプレートにおけるリブ壁の他の使用例を示す要部平面図である。
【図16】下側床パネルをベランダの床下地面に敷設した状態を示す要部斜視図である。
【図17】下側床パネル上に支持される上単位パネルを連結具を介して連結する状態を示す要部斜視図である。
【図18】下側床パネル上に上単位パネルを敷設する作業を示す要部斜視図である。
【図19】上側床パネル及び下側床パネルとサッシレールの関係を示す要部断面図である。
【図20】完成したバリアフリーの床構造を示す要部斜視図である。
【図21】同バリアフリーの床構造を示す断面図である。
【図22】一般床下地面側の同要部拡大断面図である。
【図23】排水溝部側の同要部拡大断面図てある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、床自体を上側床パネルと下側床パネルの二段構造となして、下側床パネルを床下地面上に高さ調整機能を有する下部嵩上げ脚で支持し、上側床パネルを下側床パネル上に上部嵩上げ脚で支持して、上記下側床パネルの上下位置を上記下部嵩上げ脚を介して調整することにより、上側床パネルと屋内フロアとの段差を吸収して、屋内外に亘るバリアフリーを構築せんとするものである。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を図示する好適な実施例に基づいて詳述すれば、該実施例に係る床構造は、マンションやビルなどの屋内フロアと段差を介して構築されたベランダやバルコニーなどの屋外フロアを対象として開発されたもので、多数枚の上単位パネル1を一平面に集合して形成される上側床パネル100と、多数枚の下単位パネル2を一平面に集合して形成される下側床パネル200とを備え、該下側床パネル200を上記屋外フロアを形成する床下地面30上に高さ調整機能を有する下部嵩上げ脚3で支持し、該下部嵩上げ脚3で下側床パネル200と床下地面30間に連続する下部空間S2を形成すると共に、上記上側床パネル100を下側床パネル200上に上部嵩上げ脚7で支持し、該上部嵩上げ脚7で下側床パネル200と上側床パネル100間に連続する上部空間S1を形成し、上記下側床パネル200の上下位置を上記下部嵩上げ脚3を介して調整することにより、上記上側床パネル100と上記屋内フロアとの段差を吸収できる構成となっている。
【0023】
これを詳しく説明すると、上側床パネル100を一平面に集合して形成する上単位パネル1は、図1・図2に示す如く、合成樹脂製の座板4と該座板4の上面で成形硬化され同上面に層着された表面材5とを有し、座板4の上面に表面材5中に埋設されて両者4・5を連結する多数のアンカー6を突設し、座板4の下面に上単位パネル1自体を支持する多数の上部嵩上げ脚7を突設したもので、上側床パネル100が下側床パネル200の上面に支持されると、該各上部嵩上げ脚7をもって、上側床パネル100の下面と下側床パネル200の上面間に上記上部空間S1を連続して形成する構成となっている。尚、上記表面材5としては、セメントと細骨材を混練したセメント混練材を使用する。
【0024】
又、隣接する上単位パネル1同士は連結具8を介して下側床パネル200上で縦横に連続して連結されるもので、当該連結具8は、図3に示す如く、合成樹脂の一体成型品で、一方の上単位パネル1の下面に突設された上部嵩上げ脚7群中、座板4の辺縁部下面に配置された一対の第一上部嵩上げ脚7を嵌合する一対の第一連結リング9と、他方の上単位パネル1の下面に突設された上部嵩上げ脚7群中、座板4の辺縁部下面に配置された一対の第二上部嵩上げ脚7を嵌合する一対の第二連結リング10とを有し、上記一対の第一連結リング9同士と一対の第二連結リング10同士はアーム11で連結され、且つ、一方の第一連結リング9と一方の第二連結リング10、他方の第一連結リング9と他方の第二連結リング10とは個々に対向して結合されている。
【0025】
そして、この連結具8を用いて隣接する上単位パネル1同士を連結した場合には、図4に示す如く、各上単位パネル1の対向する座板4の辺縁部間に外部と連通する排水用の隙間12が形成され、上単位パネル1上に降った雨水などをこの隙間12を介して上部空間S1から下側床パネル200側に排水できる構成となっている。
【0026】
下側床パネル200を一平面に集合して形成する下単位パネル2は、上単位パネル1の6倍の面積を有する多孔板のレジンコンクリートから成り、図5・図6に示す如く、その上面側には多数の排水孔13が形成され、同下面側には外部に開放された多数の凹空間部14が規則的に間隔をおいて形成されて、該各凹空間部14内に上記対応する5個の排水孔13が連通しているが、該各排水孔13は逆漏斗状に付形され、凹空間部14は逆椀状に付形されている。
【0027】
又、多数の各凹空間部14を規則的に画成するその周囲壁内に補強鉄筋15を縦横に連続して埋め込んで、上単位パネル1を支持する下単位パネル2自体の強度の向上を図る構成となっている。
【0028】
この下単位パネル2と上記床下地面30の間に介設される高さ調整機能を有する下部嵩上げ脚3は、図7に示す如く、昇降体16とベース体17の2部品から成り、昇降体16の下面側には雄ネジ部18が垂設され、ベース体17の上面側には雌ネジ部19が立設されて、該雌ネジ部19と雄ネジ部18の螺合により、下単位パネル2(下側床パネル200)を支持する下部嵩上げ脚3の高さを無段階に調整できる構成となっている。尚、下部嵩上げ脚3は、上下の単位パネル1・2を支持する必要上、硬質なポリプロピレン系樹脂で成形されている。
【0029】
従って、屋内外に亘りバリアフリーを構築する場合には、上記各下部嵩上げ脚3をその据付位置において高さを調整しながら配置し、各下単位パネル2を個々に支持すれば、該下単位パネル2で形成された下側床パネル200の上下位置が正確に決定できるので、これにより、上側床パネル100と上記屋内フロアとの段差を吸収して、バリアフリーが簡単に構築できる。
【0030】
又、本実施例では、上記各下部嵩上げ脚3の昇降体16の上面と下単位パネル2の下面間に第一緩衝プレートたる位置決めプレート20を配し、同各下部嵩上げ脚3のベース体17の下面と床下地面30間に第二緩衝プレートたる傾斜調整プレート21・22を配する。
【0031】
前者の位置決めプレート20は、図8に示す如く、下部嵩上げ脚3の昇降体16に多少の遊びをもって嵌合される円盤状の基体23を有し、該基体23の上面に切断可能な4枚のリブ壁24を十字状に立設して、必要に応じて、この十字状のリブ壁24を個々に切断しながら、当該リブ壁24を下単位パネル2の側面に当接させることにより、各下単位パネル2を下部嵩上げ脚3に対して位置決めしながら支持できる構成となっている。尚、この位置決めプレート20は、軟質な熱可塑性エラストマー系樹脂で一体成形されている。
【0032】
後者の傾斜調整プレート21・22は、ベランダなどの床下地面30の勾配を水平に調整するために、上記下部嵩上げ脚3のベース体17の下面と床下地面30間に配置されるもので、図9のA・Bに示す21は、比較的勾配の大きな排水溝部30b側で使用されるもので、その基体25に水上及び水下を示す目印模様26が付され、同図のC・Dに示すもの22は、比較的勾配の小さな一般床下地面30a側で使用されるもので、円弧状の基板27に水上を示す直線部28が付されている。又、この各傾斜調整プレート21・22も、位置決めプレート20と同様に、軟質な熱可塑性エラストマー系樹脂で一体成形されている。
【0033】
従って、本実施例にあっては、上記下部嵩上げ脚3の上面と下単位パネル2の下面間に軟質の位置決めプレート20を配し、同下部嵩上げ脚3の下面と床下地面30間に軟質の各傾斜調整プレート21・22を配する構成を採用したので、その軟質性を積極的に利用して、歩行音の減少と不陸に十分に対応できる。
【0034】
又、下単位パネル2と床下地面30の間に下部嵩上げ脚3を介設して、該各下単位パネル2上に上単位パネル1を支持すると、該上単位パネル1の下面と下単位パネル2の上面間には、上記した上部嵩上げ脚7の高さに応じた上部空間S1が連続して形成され、下単位パネル2の下面と床下地面30間には、上記下部嵩上げ脚3の高さに応じた下部空間S2が連続して形成されて、いずれの空間S1・S2も断熱効果と遮音効果を発揮する(図22・図23参照)。
【0035】
依って、上記構成の床構造で屋内外に亘るバリアフリーを構築する場合には、予め、ベランダなどの屋外フロアに防水層と防水保護シートを施して床下地面30を形成し、図10に示す如く、勾配の小さな一般床下地面30aに対しては、各下部嵩上げ脚3の据付位置に、上記図9のC・Dに示す傾斜調整プレート22を設置する。又、勾配の大きな排水溝部30b側に対しては、やはり、その下部嵩上げ脚3の据付位置に、図11に示す如く、上記図9のA・Bに示す傾斜調整プレート21を設置して、床下地面30全体の水平を得る。
【0036】
そして、上記の各傾斜調整プレート21・22に対して下部嵩上げ脚3を個々に据え付けることとなるが、この場合には、バリアフリーとするための段差を考慮して、下部嵩上げ脚3の仕上がり高さを決定し、図12に示す如く、水平器31でレベルを調整しながら各下部嵩上げ脚3を対応する各傾斜調整プレート21・22上に据え付ける。
【0037】
その後、今度は、図13に示す如く、据え付けられた各下部嵩上げ脚3の昇降体16に下単位パネル2の位置固定を行なうための位置決めプレート20を嵌合する。尚、この場合には、本実施例にあっては、原則的に、6枚の位置決めプレート20(6個の下部嵩上げ脚3)で1枚の下単位パネル2を支持する関係で、この1枚の下単位パネル2の前後・左右の4端部で使用される位置決めプレート20は、前後・左右に隣接する下単位パネル2の端部をも支持する必要上、図8のAに示すように、その基板23の上面に4枚のリブ壁24を十字状に立設したものを使用するが、連結継ぎ目のない側面で使用されるものは、図14に示す如く、交差する2枚のリブ壁24を切断して、残りの2枚のリブ壁24で側面を支持する。
【0038】
尚、上記位置決めプレート20は、斯かる使用態様に限定されるものではなく、ベランダなどの周縁部の据付個所などによっては、図15に示す如く、1本のリブ壁24を切断して、残りの3本のリブ壁24で隣接する下単位パネル2同士を支持したり、或いは、全てのリブ壁24を切断して、その基板23の円盤状上面で下単位パネル2の下面を支持することも可能である。
【0039】
又、ベランダなどの周縁部に沿って設置される下単位パネル2について、その設置スペースを考慮して、基本となる寸法よりも小さくする必要がある場合には、その設置スペースに合わせて切断して使用することとなるが、この下単位パネル2はその下面側に多数の凹空間部14が形成されて肉薄となっているので、切断加工が容易となる。そして、この切断加工された下単位パネル2を含めて、図16に示す如く、ベランダ全体に下単位パネル2で一平面に集合して形成された下側床パネル200を敷設する。
【0040】
ベランダなどの屋外フロアの床下地面30に下側床パネル200を敷き詰めた後は、図17・図18に示す如く、今度は、この1枚の下単位パネル2毎に6枚の上単位パネル1を支持して縦横に連続させることとなるが、この場合には、上記した連結具8を各上単位パネル1の2辺に取り付けながら隣接する上単位パネル1同士を順に連結していく。
【0041】
又、上単位パネル1についても、ベランダなどの周縁部との関係で端部加工を行なう必要があるので、この場合も、下単位パネル2と同様に、その設置スペースに合わせて切断して使用することとなるが、特に、サッシレール34の側面と上単位パネル1の側面間には、図19に示す如く、角型バッカー32を使用して一定の隙間(実施例では5mm)を確保して、これを排水用空隙33として利用する。尚、この場合には、排水効率を図るために、図示する如く、下単位パネル2の側面にも角型バッカー32を貼着して同等の空隙33を確保する。
【0042】
これにより、図20・図21に示す如く、各上単位パネル1の目地通りやガタを確認して、上単位パネル1をその多数の上部嵩上げ脚7を介して対応する下側床パネル200上に敷設すれば、上側床パネル100と上記屋内フロアとの段差を吸収して、屋内外側をバリアフリーとした床構造が簡単に構築される。
【0043】
しかも、斯かる構築状態にあっては、既述した如く、連結具8の寸法・形状などの関係で、各上単位パネル1の対向する座板4の辺縁部間に外部と連通する排水用の隙間12が形成されることとなるので、上単位パネル1上に降った雨水などは、この排水用の隙間12を介して上部空間S1から下単位パネル2に形成されている多数の排水孔13と、各下単位パネル2の対向縁に位置するリブ壁24の肉厚分の隙間とから下部空間S2に導かれ、床下地面30に流れ込んで効率良く排水されることとなる。
【0044】
又、図22・図23に示す如く、多数の上部嵩上げ脚7の存在により、上側床パネル100の下面と下側床パネル200の上面間には上部空間S1が連続して形成され、多数の下部嵩上げ脚3の存在により、下側床パネル200の下面と床下地面30間には下部空間S2が連続して画成されるので、この両空間S1・S2の作用で、断熱効果と遮音効果も大いに期待できる。
【0045】
更に、下部嵩上げ脚3の介設に際しては、下単位パネル2との間に軟質な熱可塑性エラストマー系樹脂から成る位置決めプレート20(第一緩衝プレート)を配し、床下地面30との間に同じく軟質な熱可塑性エラストマー系樹脂から成る傾斜調整プレート21・22(第二緩衝プレート)を配した関係で、歩行音の減少と不陸に十分に対応できる。
【0046】
又、サッシレール34の側面と上側床パネル100及び下側床パネル200の側面間には、角型バッカー32を使用して一定の隙間を確保されているので、この空隙を利用して、雨水などを床下地面側に効率良く排水できるので、例え、バリアフリーであっても、屋内フロア側に雨水などが浸入することがない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る床構造は、多数枚の単位パネルを一平面に集合して形成される上側床パネルと、多数枚の単位パネルを一平面に集合して形成される下側床パネルの二段構造となして、下側床パネルの上下位置を下部嵩上げ脚を介して調整することにより、上側床パネルと屋内フロアとの段差を吸収して、屋内外に亘るバリアフリーを構築できるので、これを屋内フロアと段差を介して構築されるベランダなどの屋外フロアの床構造として応用すれば、頗る好都合なものとなる。
【符号の説明】
【0048】
1 上単位パネル
2 下単位パネル
3 下部嵩上げ脚
4 座板
5 表面材
6 アンカー
7 上部嵩上げ脚
8 連結具
9 第一連結リング
10 第二連結リング
11 アーム
12 隙間
13 排水孔
14 凹空間部
15 補強鉄筋
16 昇降体
17 ベース体
18 雄ネジ部
19 雌ネジ部
20 位置決めプレート(第一緩衝プレート)
21 傾斜調整プレート(第二緩衝プレート)
22 傾斜調整プレート(第二緩衝プレート)
23 基体
24 リブ壁
25 基体
26 目印模様
27 基体
28 直線部
30 床下地面
30a 一般床下地面
30b 排水溝部
31 水平器
32 バッカー
33 空隙
34 サッシレール
100 上側床パネル
200 下側床パネル
S1 上部空間
S2 下部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内フロアと段差を介し構築された屋外フロアの床構造であって、多数枚の単位パネルを一平面に集合して形成される上側床パネルと、多数枚の単位パネルを一平面に集合して形成される下側床パネルとを備え、該下側床パネルを上記屋外フロアを形成する床下地面上に高さ調整機能を有する下部嵩上げ脚で支持し、該下部嵩上げ脚で下側床パネルと床下地面間に連続する下部空間を形成すると共に、上記上側床パネルを下側床パネル上に上部嵩上げ脚で支持し、該上部嵩上げ脚で下側床パネルと上側床パネル間に連続する上部空間を形成し、上記下側床パネルの上下位置を上記下部嵩上げ脚を介して調整することにより、上記上側床パネルと上記屋内フロアとの段差を吸収する構成とし、更に上記下側床パネルの単位パネルを多孔板で形成すると共に、上記上側床パネルの対向する単位パネルの周縁部間に外部と連通する隙間を形成し、水分を該隙間を介して上部空間から上記下側床パネルの多孔を経て下部空間側へ排水する構成としたことを特徴とする床構造。
【請求項2】
上記下部嵩上げ脚の下側床パネルを支持する上面に第一緩衝プレートを配し、該下部嵩上げ脚の床下地面に当接する下面に第二緩衝プレートを配したことを特徴とする請求項1記載の床構造。
【請求項3】
上記下側床パネルの単位パネルの下面には多数の凹空間部が一定の間隔をおいて形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の床構造。
【請求項4】
サッシレールの側面と上側床パネルの側面間に排水用の空隙を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の床構造。
【請求項5】
上記第一緩衝プレートは、軟質な合成樹脂で一体に成形されて、下部嵩上げ脚の上部に嵌合される基体を有し、該基体の上面に切断可能な複数のリブ壁を立設して、該各リブ壁で下側床パネルの単位パネルを位置決めすることを特徴とする請求項2記載の床構造。
【請求項6】
上記第二緩衝プレートは、軟質な合成樹脂で一体に成形されて、床下地面上に敷設される基体を有し、該基体の周縁に方向性を示す部分が付されて、床下地面の勾配を水平に調整することを特徴とする請求項2記載の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−14900(P2013−14900A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147226(P2011−147226)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(591281459)マックストン株式会社 (25)
【Fターム(参考)】