説明

底生生物の調査方法およびその方法に使用する調査用基盤

【課題】 水底の砂泥環境で生活する底生生物の生態系を再現性よく調査する方法および
その方法に使用する調査用基盤を得る。
【解決手段】 植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体からなるブロックであって該線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙7が形成されてい
る立体形状のブロックと,該ブロックの前記間隙7に装填された砂泥8とからなる基盤を,底生生物の調査対象域の水底11に,少なくとも該線状体の一部が水底11から露出するよ
うに設置し,所定の期間を経たあと水底11から引き上げて底生生物の生息状況を観察する底生生物の調査方法である。この調査用基盤の線状体の表面には凹凸が設けられている。
また線状体は,MgOおよびP25を主成分とする低pHセメントを結合材に使用して
構成することができ,植物繊維としては綿や麻を使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,底生生物の生息状況を再現性よく調査する方法およびその方法に使用する調
査用基盤に関する。
【背景技術】
【0002】
干潟や浅場に生息する稚貝の生態調査を例とすると,一定枠内の底質を採集し,その内
の個体を測定するコドラート法(非特許文献1)が従来より行われている。
【非特許文献1】(社)全国沿岸漁業振興開発協会:沿岸漁業整備開発事業,増殖場造成計画指針,ヒラメ・アサリ編,pp201
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のコドラート法では,採集地点の設定や採集分別作業等において作業者の個人差が生じ,これが精度に関係するという課題がある。そのため人為的な作用を小さくする調査
方法への転換が近い将来必要となる。本発明は,この要求を満たすことを課題としたもの
である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の課題を解決する方法として,本発明によれば,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体からなるブロックであって,該線状体同士が部分的に結着し且つ
該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックと,該ブロックの前記間隙に装填された砂泥分とからなる基盤を,底生生物の調査対象域の水底に,少なくとも該線
状体の一部が水底から露出するように設置し,所定の期間を経たあと水底から引き上げて底生生物の生息状況を観察する底生生物の調査方法を提供する。該ブロックの線状体の表
面に凹凸を形成しておくのが好ましく,モルタルまたはコンクリートとしてはMgOおよびP25を主成分とする低pHセメントを結合材としたものを使用するのがよい。調査
対象域は海域,汽水域あるいは淡水域のいずれでもよく,調査対象の底生生物としては,貝類,ゴカイ等の多毛類,カニ,アナジャコ等の甲殻類,ハゼ,ウナギ等の魚類およびこ
れに類する底生動物である。また,水草,海草,藻類等の底生植物も調査対象とすること
ができる。
【0005】
また,本発明によれば,前記の調査を実施するための基盤として,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの凹凸表面をもつ線状体からなるブロックであって,該線状
体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックと,該ブロックの前記間隙に装填された砂泥分と,該ブロックおよび砂泥分を収容する
通水性容器とからなる底生生物調査用基盤を提供する。加えて,本発明によれば,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの凹凸表面をもつ線状体からなるブロックであ
って,該線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックと,該ブロックの前記間隙に装填された砂泥分と,該ブロックの上面に取
外し可能に載置されたブロック体とからなる底生生物調査用基盤を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば,調査対象域に順応した底生生物の生活環境と変わらない試験域を取替え可能に人為的に作り出すことができる。そして,この試験域となる調査用基盤は普通コ
ンクリートと同等の強度を有して耐久性にも優れ且つ取り扱いも簡便である。このため,専門家でなくても精度のよい調査結果が迅速に得られると共に,どこの干潟や浅場等でも
適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は,主として一般の底生動物,例えば干潟や浅場に生息する貝類,ゴカイ等の多毛類,カニ,アナジャコ等の甲殻類,ハゼ,ウナギ等の魚類およびこれに類する動物の生
息状況の調査法に係るものであり,この調査を行うために用いる新しい調査用基盤に関す
る。
【0008】
近年,アサリ,ハマグリ,シジミ,マテガイ等に代表される二枚貝の資源減少は著しく,水産庁や地方自治体等もその対応の研究,保護,保全,資源回復の検討・施策を試みて
いるが,効果が上がっている状況ではない。二枚貝減少の原因には,乱獲による人為的な作用,大小を問わずに行われている開発行為による生物生息域の消失,食物連鎖の破壊に
よる餌(被食者)の減少,水質悪化による生息環境の改変などがある。
【0009】
そこで,このような貝類に対する資源を回復するには,あらゆる方面からの調査と研究がなされねばならないが,そのためには貝類だけでなく底生生物の生息状況の情報が精度
よく入手できる調査方法が確立されねばならない。
【0010】
以下では説明の便宜上,底生生物のうち,貝類例えばアサリを中心にして本発明を説明するが,アサリに限らず,これに類する底生動物,そして藻類等の底生植物に対しても本
発明は調査対象にできるものである。
【0011】
アサリの成育段階は,卵及び精子,受精卵,トロコフォラ,D状期幼生,アンボ期幼生,フルグロウン期幼生,着底稚貝,稚貝,初期成貝,成貝に区分でき,トロコフォラから
フルグロウン期までを浮遊幼生としている。そして浮遊幼生は着底期になると足を使って盛んに底質をさぐり着底場所を探し,やがて足から分泌した足糸によって,小石や貝殻の
表面に付着し,着底稚貝は変態を進行させて稚貝に成長する。そして着底条件が良い場所には,パッチ状に高密度の生息があり,またアマモ根部やノリ網支柱,転石などの固形物
に重なって蝟集する特性があり,干潟全面に平均した生息分布することは稀でアサリ専業者は経験的に知っている。加入とは,アサリの場合,着底後の底生定着期に入ることを指
し,殻長1mmに達することを加入と定義している。この加入は浮遊幼生の着底の成功の有無,加入群の定着と生残り,加入から成貝への成育状況等,資源を検討する重要な起点
であり,それを知ることが必要となっている。
【0012】
一般的に生物の生息空間を創り出すコンクリート製品として,砕石をモルタル等のバインダーで結合したポーラスコンクリートが知られている。しかし,ポーラスコンクリート
は,生物が求める空間形成には,材料等の形状が一定のために自由度が低い。このため,固形体の中で空間形状が異なるものを自由に製造工程で調整でき,さらに保水性が極端に
低い砕石に代わって土に近い性質を有する材料が求められている。
【0013】
この要求を満たす底生生物の調査用基盤として,本発明は,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体からなるブロックであって,該線状体同士が部分的に結着
し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状のブロックを基体材料とし,このブロックの間隙に砂泥分を装填し,このブロック内の間隙を底生生物の生息のための空
間に利用する。特に,アサリ等の稚貝や成貝では体内から出す糸状物質(足糸)を該基体材料の表面に付着させてその体を固定しやすくして流れや堀り返しから守る。貝類が出す
足糸が該基体材料の表面に付着しやすいように,該基体材料の線状体の表面には凹凸を設けておくのがよく,このような凹凸は線状体の軸方向に沿った多数の表面溝によって形成
されているのがよい。線状体表面の凹凸は,底生動物の餌(被食者)となる藻類や菌類などの有機物を付着しやすくすると共に,表面積の増大によってその発生量も多くなり,そ
の凹凸によって多様な環境か創り出されるので異種のものが増殖しやすくなる。このブロックを構成する結合材(セメント)としては,MgOおよびP25を主成分とする低p
Hセメントを用いると生物の生活環境に与える影響も少ない。
【0014】
セメント系モルタルまたはコンクリートに適量の植物繊維を配合すると,硬化した状態では保水機能と強度を具備した硬化体が得られ,未だ固まらない状態では,ノズル口から
押し出した場合に,その連続した線状体は線状形状を保持しながら変形できる性質が得られる。すなわち,植物繊維を配合することによってセメントマトリックス中に水が含浸で
きる硬化体組織が得られると共に,フレッシュ状態では線状体に押し出し成形ができるような粘った混練物を得ることが可能となり,ノズル口から押し出された線状体は変形が自
在でありながらその線状の形状を硬化するまで保持し得るので,この線状体を未だ固まらないうちに曲げ絡み合わせると,あたかも即席乾燥麺に見られるような,線状体が捲縮し
て絡み合った接合組織が得られ,このものは,線状体同士が部分的に結着して硬化してい
るために適当な間隙をもつ任意形状の立体ブロックとなり得る。
【0015】
以下に図1〜6を参照しながら,本発明の調査用基盤の形状・構造および製造法を具体
的に説明する。
【0016】
図1は,本発明に従う立体形状のブロックの一つの形状例を示したもので,図2は,図1のX−Y矢視断面を示している。図示のように,植物繊維を配合したセメント系硬化体
(モルタルまたはコンクリート)からなる線状体1が曲げ絡み合って立体形状のブロック2を形成している。このブロック2は,硬化した線状体1が部分的に結着し,線状体同士
の間に間隙7を形成した構造を有しており,一見したところ,即席乾燥麺(インスタント
ラーメン)のような麺の捲縮固化物を拡大したような立体形状を有している。
【0017】
このようなセメント系硬化体のブロック2を作製するには,例えば図3に示したように,植物繊維配合の未だ固まらないモルタルまたはコンクリート3(以下これを略して“植
物繊維入り生モルタル”と呼ぶ)の混練物をグラウトポンプ4でノズル5に圧送することにより,ノズル5から植物繊維入り生モルタル3の連続した線状体として押し出し,これ
を型枠6内に曲げ絡み合わせながら打設する。そのさい,植物繊維を適量配合し且つ水セメント比および単位水量を調節すると,ノズル5から押し出された生モルタル3の線状体
は直角はもとより180o近く曲げても破断することなく,くねくねと自在に曲がる。植物繊維を配合しない場合には,そのような性質を具備させることは困難で,形状保持力を
もつような硬練として線状体に押し出した場合には,曲げるとすぐに折れてしまう。
【0018】
前記の図例では,型枠6内に打設するさいに,作業員がノズル5を前後・左右に移動させることによって,網目状のものが積層した形状とする例を示したが,これを機械化して
行なうことも勿論可能である。また,立体形状は,この例に限らず,線状体が部分的に結着し且つ線状体の間には所定の間隙7が形成されているのであれば,あらゆる形状のもの
が可能である。例えば側面が3面体,4面体,5面体,6面体その他の多面体からなる多角形状の立体ブロック,或いは側面が円筒や楕円筒からなる円筒形状等の様々な形状の立
体ブロックを作り出すことができる。
【0019】
ノズル5から押し出す生モルタル3の線状体の径については,直径が5〜100mm,好ましくは10〜30mmのものが底生生物の調査には都合がよい。ブロック2の線状体
1は径が全て同一でなくてもよく,例えば調査用基盤の底部に位置する線状体1の径を他の線状体よりも太くしておくと,調査用基盤を水底に設置したさいに安定性が増す。植物
繊維入り生モルタル3の配合については後述するが,使用する植物繊維としては,長さが2〜12mm,径が0. 1〜1. 0mm程度のものが好適であり,配合量としては,植物
繊維の種類によってその適正な範囲は異なるが,10〜80Kg/m3,好ましくは20〜60Kg/m3の範囲とするのがよく,植物繊維の配合量が多いほど硬化した線状体1
の湿潤性能(保水性能)および生モルタル3の線状体の変形性能が高まる。しかし,あまり多いと,骨材表面が植物繊維で覆われるところが増え,骨材・セメント間の接合強度を
低下させることにもなるので,80Kg/m3以下,好ましくは60Kg/m3以下とするのがよい。練り混ぜに際しては,セメントペーストに植物繊維を先練りし,この植物繊
維入りセメントペーストを骨材と混り混ぜる方法が好ましい。
【0020】
植物繊維の使用にあたっては,その乾燥体をよくほぐした状態で使用するのがよい。植物繊維の性質上,その繊維一本一本の径や長さ,さらには表面状態や形状(針状か板状か
など)はランダムであるが,要するところ,その植物繊維の性質に応じてモルタル中またはコンクリート中によく分散できるような寸法形状とすればよい。綿や麻を用いる場合に
は,長さがほぼ2〜12mmで,径がほぼ0. 2〜0. 7mm程度のものを練り混ぜ中の材料に少しづつ投入して分散させればよい。そのさい,水を混入する前の空練りを60秒
以上行うことが好ましい。
【0021】
コンクリート用分散剤を使用して植物繊維の分散を促進させることも好ましい。使用できる分散剤には各種のものがあるが,例えば高性能減水剤(商品名レオビルド8000E
Sなど)が挙げられる。また,必要に応じて水溶性高分子等の増粘剤を使用することがで
きる。
【0022】
使用するセメントとしては普通セメントが使用できるが,低pHセメントを使用すると,低pH(低アルカリ)の植物繊維入り生モルタル3が得られ,低pHの本発明に従うブ
ロック基材(調査用基盤)を作ることができる。低pHセメントとしては,MgOおよびP25を主成分とする低pHセメントを使用できる。このような低pHセメントとして
は,例えば特開2001−200252号公報に記載された軽焼マグネシアを主成分とする土壌硬化剤組成物が挙げられる。またこれに相当する低pHセメントは商品名マグホワ
イトとして市場で入手できる。さらに,セメントの一部を,必要に応じて高炉スラグ微粉
末,フライアッシュ,シリカヒュームなどで置換することもできる。
【0023】
骨材成分としては通常の細骨材および粗骨材を使用できるが,粗骨材を使用する場合には最大寸法がノズル5の口径より小さいものを使用する必要があり,最大寸法5mm以下
とするのがよい。細骨材としては通常の川砂のほか,土質成分のもの例えば火山灰土,黒土,粘土等を使用可能である。また,石灰石粉等の微粉末,粒径0.2mm以下のケイ砂
,粉状の火山砂礫等を配合することもできる。さらに軽量細骨材を使用することもできる

【0024】
植物繊維を15Kg/m3以上,好ましくは20Kg/m3以上配合し,水セメント比を従来のポーラスコンクリートの場合と同等もしくはこれよりも高くして(例えばポーラ
スコンクリートでは水セメントが25〜35%程度である)練り混ぜると,スランプ値は高くても1. 0cmまでの混練物が得られ,その硬化体は,透水係数が 1.0〜3.0 cm/sec
で,単位吸水率が10〜40%の保水性コンクリート(モルタル)を得ることができる。したがって,該混練物をノズル5から押し出し,曲げ絡み合わせて立体形状となし,これ
を硬化してなる本発明のブロック2は,単位吸水率が10〜40%の保水性を示す硬化した線状体1からなる。このため,線状体1そのものが保水性を示すので,生物生息用基材
として非常に好適な材料である。
【0025】
さらに,本発明に従うブロック2は,圧縮強度250〜330kgf/cm2 ,曲げ強度40〜50kgf/cm2 を示す硬化体製品となり得る。すなわち,普通コンクリートまたはモ
ルタルと同等の強度特性を得ることが可能である。そして,図1に示したように,硬化した線状体1は曲げ絡み合って部分的に結着した構造の立体形状を有するので,線状体1の
間には多くの間隙7を有している。ここまでは,特開2003−265039号公報に記
載されているプロックとほぼ同様である。
【0026】
しかし,底生生物の調査用基盤として使用するには,特開2003−265039号公報に記載されたものでは必ずしも適しないことがわかった。第一は,該ブロックの間隙に
そのまま底生動物とくに貝類を定着させることはできない。このため,ブロック2に適切な間隙7を持たせてその間隙7に貝類の生息に適した砂泥分(後述の図4の砂泥8)を充
填することが必要である。この砂泥分としては,水底の砂,泥,礫,石,岩等が挙げられる。第二に,該ブロック2の線状体1の表面が滑らかであると,貝類が出す糸状物質(図
6の足糸13)をその表面に固定するのが難しく,足糸13で自重を支えられないことが起きる。このため,表面に足糸13が付着されるに十分な凹凸(図6の凹凸12)を設けることが
必要である。また,表面に凹凸12を設けるとブロック2中の植物繊維が部分的に表面から
露出するようになり,この植物繊維が足糸付着用に一層寄与することがわかった。
【0027】
線状体1からなるブロック2の間隙7の容積を間隙率として表すと,この間隙率は線状体1の曲げ絡み合いの程度を調節することによって自由に制御ができ,例えば間隙率20
〜80%のブロック2,好ましくは間隙率30〜60%のブロック2とする。
【0028】
この間隙7に砂泥8を装填することによって,水底の砂泥中で生活する底生生物の調査用基盤として好適な部材となり,間隙7に装填された砂泥8(図4)が生息空間となる。
したがって,底生生物の種類に応じて,その間隙7の大きさひいては装填される砂泥分の内容や粒径等を選定することができる。通常は,その間隙7の大きさは幅10〜50mm
程度であればよい。砂泥8の粒径は3mm以下程度であればよく,調査対象が貝類の場合は砂泥8に礫や小石などの粒状物例えば直径3〜5mm程度の砕石などが適量含まれてい
ると,それらの表面にも貝類は足糸16を付着させてその体を固定することができるので好
ましい。
【0029】
図4は,線状体1からなる立体形状のブロック2の間隙7に砂泥8を人為的に装填する状況を示しており,ブロック2を容器9内にセットしたうえ,含水量が調節された砂泥8
のスラリーを容器9内に流入させることによって,ブロック2の間隙7に砂泥8を装填することができる。容器9を使用する代わりに,多数のブロック2を敷き並べ,その上に砂
泥スラリーを打設する方法によれば,さらに効率よく装填することができる。
【0030】
間隙7への砂泥8の装填は,水底で自然に行わせることもできる。すなわち,図1のような立体形状のブロック2を砂泥質の水底に設置しておくと,水底の砂泥が自然に該ブロ
ック2の間隙7内に入り込み,砂泥入りブロックとなる。
【0031】
図5は,本発明に従う砂泥入りブロック10が砂泥質の水底11の表面部に,少なくとも線状体1の一部(ブロック10の最上部の線状体1)が水底11から露出するように設置された
状況を示している。このようにブロック10を完全に水底11に埋設しないようにすることにより,水底11から露出した線状体1の表面に底生動物の餌(被食者)となる藻類や菌類等
の有機物が付着し,調査に適した態様となる。この砂泥入りブロック10は,予め砂泥8を間隙7に装填したうえで水底に設置された場合であっても,或いは,砂泥無装填のブロッ
ク2を水底11に設置しておくことにより,水底11の砂泥が空隙7に自然に充填されたものであってもよく,いずれにしても,水底11において底生生物の調査用基盤として機能する

【0032】
図6は,線状体1の表面に凹凸を形成した状態を示している。図6の例では線状体1の表面に軸方向に多数の溝12を並設することにより凹凸を形成してある。この並設溝12は,
図3のようにノズル5から植物繊維入り生モルタル3を押し出すさいに,口径内面に凹凸をもった異形ノズルを使用することによって形成することができる。溝12の深さと間隔は
調査対象の底生生物の種類によって適切に選定するが,底生動物例えばアサリのような場合には深さ2〜7mm,ピッチ幅が2〜7mm程度の並設溝12を形成するのがよい。この
ような溝状凹凸12を設けると,貝類から出る糸状物質(足糸)が付着しやすくなり,流れや堀り起こしによる貝類の流失が効果的に防止できることがわかった。また,線状体1の
表面に溝状凹凸12を設けると,ブロック内の植物繊維がその凹凸表面に部分的に露出しやすくなる。この露出した植物繊維が足糸の固定端として機能する。図6において,13はア
サリ14から出た足糸を示している。
【0033】
特開2003−265039号公報に記載されたブロック(表面が滑らかな線状体からなる)を用いてアサリの着床を図ってみたが必ずしも良好な成果は得られなかった。本発
明の調査用基盤でアサリ等の二枚貝の生息状況を調査する場合,その好ましい形態は次の
とおりである。
1.線状体1同士の間の間隙7は貝殻の全長(最大長)に対して,いずれも1.5〜3倍程度とするのがよい。砂泥8を装填する深さも貝殻の全長の少なくとも2〜3倍を必要と
する。線状体1の層は3層以上とし,その多層によって全体の重量を確保することで,水底11中での移動を防ぐ。また多層内に入った砂泥8や小石等は波や流れによる移動も小さ
く安定することで,定着した貝類のストレスを低減する。
2.線状体1の断面形状は丸型でよいが,前記のように貝類の足糸13の付着と,ノズル5から押し出される生モルタル3の表面荒れ(植物繊維を露出させるための荒れ)を促進す
るために,断面形状が丸鋸の歯型やギヤ歯のようなギザギザをもつ丸型がよい。このものは,前記のように線状体1の軸方向に多数の溝12を並設した状態となる。この表面凹凸12
は線状体1同士の間隙7に存在する砂泥8の流失抵抗ともなり,また波や流れに対しても
複雑な小さな渦を生じさせて間隙7に入る水流の影響を小さくする。
3.線状体1の太さは10〜30mm程度で構成し,基盤全体の大きさは人力で運べる一片が50cm以下のものでも,機械搬送用の50cm以上のものでもよい。水底11への設
置は,予め固定用ブロックを事前に設け,この固定用ブロックに本発明の基盤を固定しておくと基盤を経時的に交換するのに手間がかからない。固定用ブロックには当該基盤を設
置する穴や金具を取付けておくのがよい。
4.線状体1の層を多層にする場合,いくつかの層を分離可能にして積層すると,基盤内に生息している貝類の状況を観察しやすいし,回収も容易になる。層を分離可能にして設
置する場合には,水中での層間の移動を防止するために固定金具や冶具を用いて各層を固
定するのがよい。
【0034】
また,水底11から引き上げた基盤を人工環境下すなわち実験室,施設等の水槽やプールにおいて管理して底生生物を肉眼で識別できる大きさまで成育せてからその生息状況を観
察することが望ましい。これは,調査対象の底生生物によって成育初期の大きさが全長1mmに満たないと,砂泥分との区別や,種の同定が容易でないからである。本発明の基盤
は,ブロック2が所定の大きさに分割可能な態様とすることもできるので,人工環境下で管理するにも都合がよい。基盤から分割したブロックは所定の間隔で水底から引き上げて
基盤設置地点の底生生物の生息状況を継続的に観察するにも役立つ。このような分割可能な基盤としては,例えばほぼ同一のブロック2を敷き並べて一つのブロック2となるよう
に金具や治具等で仮止めして構成すればよい。
【0035】
以下に,アサリの生態調査を本発明に従って実施した例を説明する。
【0036】
〔本発明基盤によるアサリの調査〕
アサリの調査に用いた基盤は,低pHのソイル系セメント(商品名マグホワイト)を結合材にして,土,砂,植物繊維,水,混和材等で作製したものであり,その調査用基盤の
平均的な概要を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
(1) 調査の試行
調査のきっかけは,本発明の前記基盤を使用し,アマモの栄養株移植基盤を2002年5月14日に神奈川県横浜市金沢区野島地先の潮間帯低潮部の砂泥地に埋没した。同8月9日に
基盤を砂中から掘起こして回収し,アマモの成育状況を測定する際,当該基盤内に多数のアサリ稚貝の付着が認められ,この状況からアサリ稚貝着生用としての役割を感じた。し
かし,アマモの根部分やノリ網の支柱に稚貝が蝟集することが知られており,アマモの根
による効果とも考えられるので,アマモなしでの試行を検討した。
2003年度は前年同様の野島地先で実施を予定したが,赤潮の発生や人為的なブロックの
掘り返しの問題が発生し,試行を中止した。
このため2004年度は,一般者の入場禁止の東京都品川区大井埠頭中央公園の人工干潟を試行地とし,稚貝の着生状況を観察した。この結果,野島と同様,当該基盤内に多数の稚
貝が認められ,試行で求めた着生効果が示された。
この着生効果を再現するために,2004年11月から神奈川県葉山町の鹿島建設水域環境研究室の室内水槽に当該基盤を設置し,そこに人工採苗した浮遊幼生を収容し,成長にした
がって当該基盤に着生する状況を観察した。
表2に試行に関する概要を示した。
【0039】
【表2】

【0040】
(2) 金沢八景野島の結果
2002年5月14日潮間帯低潮部に埋設した当該基盤に植え付けた10株(平均根節数4.7 )のアマモ栄養株は,同年8月9日に当該基盤を掘起こした回収時には8株になり,その平
均根節数は 9.1に増加した。これは, 当該基盤に隣接した自然育成のアマモの平均根節数 9.7に近い値となり,アマモ栄養株移植基盤として使用可能であることを示した.この回
収で,当該基盤表面の砂泥を洗浄すると,線状体にアサリ稚貝の付着が認められ,それを
採集したものを着生稚貝とした.
【0041】
稚貝は,殻長6mmを中心に3mm〜14mmの範囲で分布し,総数41個体であった.当該基盤の効果を比較するため,埋設部分に隣接した2ヵ所で砂泥を採取し,当該基盤と同容
量を1mmのふるいを通してアサリ稚貝を採集した.
【0042】
2ヶ所での結果は,殻長6mmを中心に3〜21mm,総数25個体を示し,この内には,17〜21mmの成貝に近いものがあった.また,他の二枚貝では,当該基盤には出現してなかっ
たマテガイの稚貝が含まれていた。当該基盤の隣接部の稚貝の殻長は類似傾向にあるが,当該基盤では,より正規分布を示し,総数も2 倍程度認められ,着生の良いことを示して
いた(図7)
【0043】
(3) 大井埠頭中央公園の結果
2002 年の野島結果は,アマモが稚貝着生に寄与している可能性が課題となった.その課題を解くために当該基盤だけの試行を実施した.2004年4月23日と9月16日に全ての当該
基盤を埋設し,稚貝着生と成育を観察しながら,当該基盤を順次掘り上げ回収し,そこに
着生した稚貝を測定する方法を実施した.
1.埋設方法
埋設は大潮時の低潮部とし,埋設地点は中央公園の人工干潟北側2ヶ所,一つは造成時と同じ干潟部分,他は造成後設置された石積堤に囲まれ,山砂を敷設した試験用干潟部分
で,以下,前者を干潟,後者を試験用と称する。
【0044】
埋設した当該基盤は,縦,横 400mm,高さ 100mm,空隙率30%として線状体直径は15mm,円型と2〜3mmの凹凸を持ったものを使用した。埋設方法は,スコップで当該基盤より
大きめの穴を掘り,干潟表面より15〜20mm下部に当該基盤の上部が位置するように収容し,掘り上げた砂泥を当該基盤内に戻し,最終的には当該基盤の埋設部分が隣接した干潟表
面と見分けが出来ない状況にした。
【0045】
2.回収方法
埋設した当該基盤の回収は,第一回目は,2004年6月28日,8月16日,9月16日,10月14日に実施し,第二回目は,9月16日に埋設したものを2005年5月27日に回収した。掘り
上げた当該基盤は1mmのふるいに収容し,当該基盤上に堆積した砂泥を洗い流し,露出した線状体に付着したり空隙に収まっている稚貝を映像で記録し,今回は研究室に持ち帰り
,当該基盤を解体して内部に隠れている稚貝を摘出,洗い落とした砂泥内の稚貝も加えて
当該基盤に着生した稚貝として殻長を測定した。
【0046】
そして,コードラート法と同じ手法で,埋設部分に隣接した砂泥を当該基盤と同容量採取し,1mmのふるいに通して,残った稚貝の個体数と殻長を測定した結果を,当該基盤の
結果と比較検討した。また,自然着生する稚貝とは別に,4月23日の埋設時に金沢八景で採集した殻長20mmの稚貝を各当該基盤に20個体収容したものが成長し,大型のアサリと
なっていた。
【0047】
3.回収結果
回収した当該基盤と隣接した砂泥(基盤外)の殻長20mm以下の稚貝着生状況は,8月16日では干潟の当該基盤3〜5mm,基盤外7mmをピークとし,試験用の当該基盤7〜8mm,
基盤外4mmにピークがあった。同地点でも殻長の分布が異なる状況を示し,干潟当該基盤と試験用基盤外,干潟基盤外と試験用当該基盤の分布は類似した。そして両基盤は,基盤
外の殻長分布の一部を内包している状況もあった。個体数は干潟の当該基盤67,基盤外118 ,試験用当該基盤75であるが試験用基盤外は18と前3者と比べると極端に小さい値を示
した(図8)。
【0048】
9月16日では,干潟の当該基盤は3〜12mmの分布の中に4mmと7〜8mmにピークがあり
,個体数は44と減少したが,8月からの成育を示す分布が示された。
基盤外は8月に出現した7mmを中心にした関係の分布は出現せず,2〜4mmの小型のものが出現し,個体数は24に減少した。試験用当該基盤は3〜16mmと広い分布が示され,そ
のなかに6〜8mmと11〜12mmのピークがあり,前者は8月に一部内包した基盤外で出現した4mmを中心にしたものが成育し,後者は当該基盤の8mmを中心にしたものが成育した状
況を示している。試験用の基盤外も分布傾向は類似しているが,8月に出現していない8〜9mmが成育したと思われる12〜13mmのものが出現し,他の場所が減少傾向にあるのとは
異なり,個体数は8月の4倍の74を示した(図9)。
【0049】
10月14日では,干潟の当該基盤は6,8,10,14mmに各個体合計4個体を示し,基盤外は3〜10mmの分布の中で4mmにピークがあり,個体数は14と減少しているが,これは9月
に出現した小型のものが成育した結果であろう。試験用の当該基盤では個体数29と減少したが,3〜17mmの広い分布のなかで5〜6mmと11mmを中心にピークがあり,9月の分布と
類似した。試験用の基盤外は4〜10mmの分布のなかでピークが8〜9mmにあり,9月に出
現した12mmに関係した分布は全く示されなかった(図10)。
【0050】
第二回目のものでは,冬期の2例では当該基盤では2〜7mmを中心に 134個体, 76個体, 61個体の稚貝が出現し,基盤外の36個体, 37個体, 20個体と比較して, 当該基盤内では
多数の稚貝が認められた(図11および図12)。
【0051】
以上の結果から,干潟と試験用の当該基盤は,時間経過に伴って殻長の分布は成育を示した。そして,砂泥を掘り上げて得られた基盤外の結果では,9月14日の干潟は予想した
10〜12mm前後分布は出現せず,逆に試験用は8月の状況から出現予想していなかった12mmを中心とする分布があり,10月には,これに関係した分布がないなど,稚貝が着生し成育
する一連の経過を検討するには不安定な状況を示した。しかし,第2回目では当該基盤と
基盤外とも殻長の分布は様似していたが,稚貝の着床数が異なった。
【0052】
当該基盤内内の稚貝着生の状態は,表面層の15〜20mmの部分とその空隙にある砂泥に集中し,それ以下の深い所は成長した大型のものが着生していた。堆積した砂泥を洗浄した
当該基盤表面には全体の80%以上の稚貝がみとめられ,他は砂泥か線状体の下部に着生したものであった。特に,当該基盤表面や側面の個体は,線状体と足糸で結ばれ,当該基盤
を取り扱っている際に稚貝の落ちこぼれる状況はなかった。
【0053】
(4) 室内水槽での着生確認
野島と大井の干潟での結果を確認するため,室内水槽に当該基盤を設置し,着生の確認を観察した.2004年11月21日,当該基盤を砂中に埋設した水槽に,人工産卵させアボン期
に達した浮遊幼生を収容し,植物プランクトンを餌料に少量の換水を行って成育させた稚貝は,線状体に付着し,一部は足を使って移動する状況が観察できた。継続的に観察を行
った結果,2005年4月1日には砂中の線状体に2mm前後の稚貝の蝟集があり,特に足糸によって付着する状況が観察できた。現時点では稚貝が線状体およびパスタを嫌う状況はな
く,水槽内での着生を確認している。
【0054】
図13は,本発明の調査用基盤の別の態様として,線状体1同士の間に間隙7が形成されている立体形状のブロック2と,間隙7内の砂泥8とを,上面が開口した容器15 内に
収容することによって本発明の調査用基盤を形成した例を示している。容器15 の底部および/または側部は,砂泥8が流出し難いが通水性を有する材料(例えば網目状のプラス
チック)を用いて構成してあり,この通水性容器15内に収容するブロック2は,線状体1の層が2層以上とするが,その厚さは,代表的には30mm±20mm程度である。この
線状体1の層を容器15内に収容するにあたっては,図示のように,容器15に先ず砂泥8を装填したあと,その砂泥8の表面をほぼ覆うようにブロック2を載置し,このブロック2
の線状体1同士の間隙7に砂泥8を装填する。したがって,容器15の底近くには砂泥8の下層(約150mm±50mm程度)があり,その上に線状体1と砂泥8からなる上層(
30mm±20mm程度が存在することになる。
【0055】
図13において,20はブロック2が容器15内に沈下するのを防止するストッパーの役割を果たす支持部である。支持部20は容器15の側部内側に設けられており,この支持部20
によってブロック2は所定の位置に支持される。なお支持部20は,図示例のような突起状だけでなく,側部内側で略水平に架設された棹状とすることもできる。この場合,底生生
物の生息を妨げない間隔で架設するのが望ましい。
【0056】
図13の態様のように,本発明によれば,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体1からなるブロックであって,該線状体1同士が部分的に結着し且つ該線状
体同士の間に間隙7が形成されている立体形状のブロック2と,該ブロック2の前記間隙7に装填された砂泥分と,該ブロック2および砂泥分を収容する通水性容器15とからなる
底生生物の調査用基盤を提供する。
【0057】
図14は,本発明の調査用基盤のさらに別の態様として,線状体1同士の間に間隙7が形成されている立体形状のブロック2と,間隙7内の砂泥分と,該ブロック2の上面に取
外し可能に載置されたブロック体16とによって,本発明の底生生物調査用基盤を形成した例を示している。ブロック体16は,図15に示したように,ブロック2とは切り離すこと
ができる独立した板状のブロックであり,その表面が祖面に形成されている。さらに板状ブロック体16は図示例のようにその表面に溝17を有していてもよい。調査にあたっては
,砂泥分を内包した立体形状のブロック2の上にこの板状ブロック体16を載置した状態で水底に所定の期間設置し,ブロック体16のみを水底から引き上げて稚貝等が着生する状態
を観察する。なお,ブロック体16は板状が好ましいが,板状以外の形状であってもよい。また,立体形状のブロック2の上面にブロック体16の嵌め込み可能な窪みを備えておくと
ブロック体16を確実に載置できる。
【0058】
このブロック体16を用いた調査によると,ブロック体16はブロック2から離して観察できるので,その表裏の稚貝等の付着状況を精査することができ,サンプル採取具として取
り扱いが便利である。ブロック2から外したブロック体16の観察により,基盤を水底から引き上げるタイミングの目安とすることが期待される。また,新しいブロック体16をブロ
ック2に載せて再び調査に供するという処法によれば,長期に亘る所定期間毎の経時的な
変化を観察することもできる。
【0059】
このようにブロック体16への底生生物の着生を有利にするために,このブロック体16も,立体形状のブロック2と同様の植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートを用い
て構成するのがよい。さらに,ブロック体16は凹凸表面をもつ,すなわち粗面に形成し,或いは適宜本数の溝17を設けることによって,稚貝等の付着性が好適に改善できる。例え
ばアサリの着底稚貝は200μm〜300μm程度の大きさであることから,ブロック体16の表面に200μm以上の凹凸を有することが好ましく,このためになるべく粗面に形
成し,また溝17を設けておくと,その溝17内に稚貝が定着しやすくなると共に,水底から
の回収の際にも,稚貝が脱落するのを防止する役割を果たす。
また,ブロック体16は調査対象となる底生生物の餌(被食者)例えば藻類や菌類等の有機物も付着しやすく餌場としての機能も備える。さらに底生生物に対する誘引物或いは天
敵の忌避物を配置・放出するための部材として用いることもできる。
【0060】
本発明に従う立体形状のブロック2を作るための,代表的な植物繊維入り生モルタル3
の材料配合例を挙げると,例えば,
低pHセメント(商品名マグホワイト):500Kg/m3±50Kg/m3
黒土 :500Kg/m3±50Kg/m3
砂 :400Kg/m3±40Kg/m3
水 :420Kg/m3±40Kg/m3
植物繊維(綿の場合) :20Kg/m3±5Kg/m3
混和剤として,
ソイルセメント用混和剤(商品名レオソイル100A):5Kg/m3±1Kg/m3
ソイルセメント用混和剤(商品名レオソイル100B):3Kg/m3±1Kg/m3
を例示できる。これによって例えば気乾比重=1. 5±0. 2,湿潤比重=2. 1±0.
2の硬化体とすることができる。この硬化体(立体形状のブロック2を構成するための線状体1)は,例えば圧縮強度300kgf/cm2 ±50kg/m3,曲げ強度45kgf/cm2 ±
10kg/m3で,単位吸水率が30%±10%程度の保水性を示す硬化体となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に従う立体形状のブロックの一例を示す略平面図である。
【図2】図1のX−Y矢視断面図である。
【図3】本発明に従う植物繊維入り生モルタルの線状体を型枠内に装填する例を示す略図である。
【図4】立体形状のブロックの空隙に砂泥を装填する状態を示す略断面図である。
【図5】本発明に従う砂泥入りブロックを水底に設置した状態を示す略断面図である。
【図6】表面に並設溝を形成した線状体の例を示す斜視図である。
【図7】本発明の基盤に着床したアサリの固体数と殻長との関係を示す図である。
【図8】本発明の基盤に着床したアサリの固体数と殻長との他の関係を示す図である。
【図9】本発明の基盤に着床したアサリの固体数と殻長との他の関係を示す図である。
【図10】本発明の基盤に着床したアサリの固体数と殻長との他の関係を示す図である。
【図11】本発明の基盤に着床したアサリの固体数と殻長との他の関係を示す図である。
【図12】本発明の基盤に着床したアサリの固体数と殻長との他の関係を示す図である。
【図13】基盤を通水性容器内に収容してなる本発明の調査用基盤の例を示す略断面図である。
【図14】立体形状のブロックに板状ブロック体を組合せた本発明の調査用基盤の例を示す略平面図である。
【図15】図14の板状ブロック体の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1 植物繊維配合のセメント系硬化体からなる線状体
2 立体形状のブロック
3 植物繊維入り生モルタル
4 グラウトポンプ
5 ノズル
6 型枠
7 線状体同士の間の間隙
8 砂泥
9 容器
10 砂泥入りブロック
11 水底
12 線状体表面の並設溝(凹凸)
13 貝類の糸状物質(足糸)
14 アサリ
15 通水性容器
16 板状ブロック体
17 板状ブロック体表面の溝
20 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの線状体からなるブロックであって,該線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されている立体形状の
ブロックと,該ブロックの前記間隙に装填された砂泥分とからなる基盤を,底生生物の調査対象域の水底に,少なくとも該線状体の一部が水底から露出するように設置し,所定の
期間を経たあと水底から引き上げて底生生物の生息状況を観察する底生生物の調査方法。
【請求項2】
水底から引き上げた基盤を人工環境下で管理して底生生物の生息状況を観察する請求項
1に記載の底生生物の調査方法。
【請求項3】
ブロックは所定の大きさに分割されている請求項1または2に記載の底生生物の調査方
法。
【請求項4】
線状体は,その表面に凹凸を有している請求項1,2または3に記載の底生生物の調査
方法。
【請求項5】
モルタルまたはコンクリートは,MgOおよびP25を主成分とする低pHセメント
を結合材としたものである請求項1ないし4に記載の底生生物の調査方法。
【請求項6】
植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの凹凸表面をもつ線状体からなるブロックであって,該線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されて
いる立体形状のブロックと,該ブロックの前記間隙に装填された砂泥分とからなる底生生
物調査用基盤。
【請求項7】
植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの凹凸表面をもつ線状体からなるブロックであって,該線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されて
いる立体形状のブロックと,該ブロックの前記間隙に装填された砂泥分と,該ブロックお
よび砂泥分を収容する通水性容器とからなる底生生物調査用基盤。
【請求項8】
ブロックは所定の大きさに分割されている請求項6または7に記載の底生生物調査用基
盤。
【請求項9】
線状体の径が5〜100mmである請求項6,7.または8に記載の底生生物調査用基
盤。
【請求項10】
線状体の表面の凹凸は,線状体軸方向に並設された多数の溝によって形成されている請
求項6ないし9に記載の底生生物調査用基盤。
【請求項11】
植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートの凹凸表面をもつ線状体からなるブロックであって,該線状体同士が部分的に結着し且つ該線状体同士の間に間隙が形成されて
いる立体形状のブロックと,該ブロックの前記間隙に装填された砂泥分と,該ブロックの
上面に取外し可能に載置されたブロック体とからなる底生生物調査用基盤。
【請求項12】
ブロック体は,植物繊維を配合したモルタルまたはコンクリートから構成されている請
求項11に記載の底生生物調査用基盤。
【請求項13】
ブロック体は板状であり,その表面が粗面に形成されている請求項11または12に記
載の底生生物調査用基盤。
【請求項14】
植物繊維の配合量が10Kg/m3以上である請求項6ないし13に記載の底生生物調
査用基盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−185149(P2007−185149A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6524(P2006−6524)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年7月13日・14日 社団法人土木学会 海洋開発委員会主催の「第30回海洋開発シンポジウム」において文書をもって発表
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【出願人】(301050278)日本ミクニヤ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】