説明

成形型の製造方法

【課題】凹凸のピッチが5nm以上200nm以下である転写用パターンの凹部においてノッチ量を低減することができる成形型の製造方法を提供する。
【解決手段】母材1の表面上にSi膜2,4,6とSiO膜3,5,7とを交互に積層した積層膜10を形成し、その積層膜10上に、凸部15bの形状に対応する形状のハード膜マスク11Aを形成する。このハード膜マスク11Aをマスクにして、積層膜10の膜2〜7に対して上層から下層に向かってそれぞれ異方性ドライエッチングの処理を行うことで凹部15a及び凸部15bが繰り返し連続した転写用パターン15を形成する。その後、ハード膜マスク11Aを除去することで成形型100の製造が終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性ドライエッチング方法を用いて形成される成形型の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形型を用いて光学素子等の基板の表面に微細な凹凸構造体を成形するナノインプリント法が知られている。ナノインプリント法は、ナノオーダーからなる凹凸構造体を作製しようとする基板面上に、熱可塑性樹脂や紫外線硬化樹脂など成形材料を塗布する。次いで、成形材料に流動性を付与させた状態で凹凸の転写用パターンを有する成形型を押圧し、成形型の凹部に成形材料を充填させる。成形材料が充填された状態で硬化成形させた後、基板と成形型を離型させることで、成形型の形状を精密に反転させた形状を有する成形材料からなる凹凸構造体を基板上に成形転写させる方法である。それ故に、ナノインプリント法で成形転写される凹凸構造体の形状精度は、成形転写に用いられる成形型の形状精度に依存する。
【0003】
ナノオーダーからなる所望の形状に制御された凹凸構造体を成形するのに用いる、高精度に形状制御された成形型の製造方法としては、ドライエッチングによる加工方法が用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、ナノインプリント用の金型基板上にドライエッチングのストッパー層として金属酸化物層が形成され、その上に被エッチング層からなる転写用パターンが形成された金型をドライエッチングにて作製する製造方法が開示されている。金属酸化物層としては200nm厚のTiO膜が金型用基板とする石英基板上に作製され、その上にパターン化された被エッチング層として300nm厚のSi膜あるいはSiO膜が作製されている。被エッチング層へのパターンの作製には、被エッチング層上に被エッチング層をパターン状にドライエッチングする際のマスク膜とするWSi膜が30nm厚作製される。さらにWSi膜上にはWSi膜をドライエッチングにてパターニングする際のマスクとするレジストが150nm厚塗布される。
【0005】
次に、レジストを露光描画、現像してパターンを形成後、レジストパターンをマスクにしてRIE(リアクッティブイオンエッチング)などのドライエッチングによりWSi膜をドライエッチングしてマスクを形成する。
【0006】
Si膜からなる被エッチング層のドライエッチングではパターニングされたWSi膜をマスクにして、CFガスとHガスとを用いたRIEにより、下層のTiO膜との選択比を10以上にして作製している。選択比を10以上にすることで、プラズマの面内不均一がもたらす被エッチング層の部分的な進行に対して、下層のエッチングされにくいTiO膜にて、転写用パターンの凹部の溝深さのバラツキを小さくし、再現性良く作製できるとしている。次に、残存したマスクはSFガスなどを用いたRIEにより除去することでナノインプリント用金型を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−202352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の従来例では、Si膜あるいはSiO膜からなる被エッチング層の下層に設けたTiO膜からなるエッチングストッパー層にて、ドライエッチングの深耕速度が遅くなる為、面内のエッチング深さは改善される。
【0009】
しかし、被エッチング層の下層に設けたエッチングストッパー層で、エッチング速度を遅くすることにより、凹部側面の底部へのエッチング(ノッチ)が顕在化し、成形型の凹部側面が粗面化してしまうという問題があった。
【0010】
具体的に説明すると、ドライエッチングの深耕速度が遅くなっているオーバーエッチング状態でも、プラズマ源からはドライエッチングに要する活性種としてイオンが継続して入射されてくる。オーバーエッチングの際にイオンが凹部に入射されてくると、凹部の底部に電荷が滞留し、オーバーエッチングで引き続き凹部の底部に入射してくるイオンに対してはイオンの進行方向を歪曲させるように作用させる。これにより、被エッチング層の凹部側面がエッチングされる。このようなドライエッチングにおけるオーバーエッチングの際に生じるノッチ現象は、転写用パターンの凹凸のピッチがマイクロオーダーの場合では問題視される程の面粗さではない。しかし、転写用パターンの凹凸のピッチが5nm以上200nm以下の場合では、成形型を用いて作製される光学素子の光学特性や成形型の離型性などに影響を与える荒さとなってくる。
【0011】
そこで、本発明は、凹凸のピッチが5nm以上200nm以下である転写用パターンの凹部においてノッチ量を低減することができる成形型の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、凹部及び凸部が繰り返し連続する転写用パターンの凹凸のピッチが5nm以上200nm以下であるナノインプリント用の成形型の製造方法において、母材の表面上にSi膜とSiO膜とを交互に積層した積層膜を形成する積層膜形成工程と、前記積層膜形成工程にて形成された前記積層膜上に、前記凸部の形状に対応する形状のマスク膜を形成するマスク膜形成工程と、前記マスク膜形成工程にて前記マスク膜を形成後、前記Si膜及び前記SiO膜に対してそれぞれ異方性ドライエッチングの処理を行うことで前記転写用パターンを形成するドライエッチング工程と、前記ドライエッチング工程の終了後に前記マスク膜を除去するマスク膜除去工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異方性ドライエッチングされる膜を多層構造の積層膜としたので、形成する凹部の深さに対して1層当たりの膜厚を薄くすることができ、エッチングの深さ分布も小さくすることができる。そして、このように1層当たりの膜厚を薄くすることで、オーバーエッチングに要する時間を各層に分散低減させることができる。このように、オーバーエッチング時間を各層に分散することで、凹部に滞留する電荷の量を低減することができ、オーバーエッチングで引き続き凹部に入射してくるイオン数も減らせるので、凹部側面をエッチングする量(ノッチ量)を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る成形型の製造方法を説明するための概略断面図である。(a)は積層膜形成工程を説明するための図、(b)〜(d)はマスク膜形成工程を説明するための図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る成形型の製造方法を説明するための概略断面図である。(a)〜(c)はドライエッチング工程を説明するための図、(d)はマスク膜除去工程を説明するための図である。
【図3】アスペクト比に対するノッチ発生量を表した図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る成形型の製造方法を説明するための概略断面図である。(a)積層膜形成工程を説明するための図、(b)はマスク膜形成工程を説明するための図、(c)はドライエッチング工程を説明するための図、(d)はマスク膜除去工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
[第1実施形態]
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係る成形型の製造方法を説明するための概略断面図である。本第1実施形態では、図2(d)に示すような凹部15a及び凸部15bが繰り返し連続する転写用パターン15の凹凸のピッチpが5nm以上200nm以下であるナノインプリント用の成形型100を製造する製造方法について説明する。なお、凹部15aは、図2(d)で紙面に直交する方向に延びる溝である場合について説明するが、凹凸の凹部がドット状の穴であってもよいし、凹凸の凸部が柱状となる形状等、いかなる凹凸形状であってもよい。
【0017】
まず、図1(a)を参照して説明する。成形型を作製しようとする母材1を洗浄、乾燥し、スパッタ装置の基板ホルダーに成膜面を上にして取り付ける。母材1としては、面精度が良好なるSiウエハや合成石英ウエハが適している。ここでは合成石英ウエハを使用する。スパッタ装置内を高真空に排気した後、母材1上にSi膜2、SiO膜3、Si膜4、SiO膜5、Si膜6、SiO膜7の順に、各膜厚が所定の膜厚になるように成膜条件を制御して積層する。つまり、Si膜とSiO膜とを交互に積層して6層の膜からなる積層膜10を母材1の表面上に形成する(積層膜形成工程)。なお、本第1実施形態では、積層膜10を6層構造としたが、これに限定するものではなく、2層以上であれば何層構造であってもよい。この積層膜10の全体の膜厚は、最終的に形成される凹部15a(図2(d)参照)の深さ(凸部15bの高さ)tに相当する。本明細書におけるSi膜とは、Siを主成分とした膜であって、ドライエッチングの選択比に影響を与えないくらいの不純物、添加物が含まれていてもよいものとする。同様に本明細書におけるSiO膜とは、SiOを主成分とした膜であって、ドライエッチングの選択比に影響を与えないくらいの不純物、添加物が含まれていてもよいものとする。
【0018】
次に、積層膜上にマスク膜を形成するマスク膜形成工程について説明する。まず、図1(b)に示すように、ドライエッチングにて下層の積層膜10(被エッチング層)に転写用パターンとなる凹凸構造体を形成する為のハードマスクとなるCr膜11を積層膜10上に形成する。更に、Cr膜11をパターン化するマスクとしてSiO膜12を、Cr膜11上に形成する。その後、該スパッタ装置をリークして、母材1を大気に取り出す。母材1上の最上層に位置するSiO膜12上に、有機系反射防止膜(以下、Bottom Anti−Reflection Coatingの頭文字を取り「BARC」と略す)13を塗布する。その上に、フォトレジスト14を塗布して、プリベーク処理を施す。
【0019】
次に、フォトレジスト14に、図1(c)に示すように、露光、現像、ポストベーク処理を施すことで、凹凸のピッチが5nm以上200nm以下となるように所定のパターンを形成してフォトレジストパターン14Aを形成する。次に、ドライエッチング装置の下部電極となるウエハチャックにパターン形成した面がドライエッチングされるように設置する。ドライエッチング装置内を高真空に排気した後、パターン形成されたフォトレジストからなるフォトレジストパターン14AをマスクにしてBARC13を矩形にエッチングする。
【0020】
その後、フォトレジストからなるフォトレジストパターン14Aとパターン化されたBARC13をマスクにして、SiO膜12をパターンエッチングし、続いて、Cr膜11をパターンエッチングする。これにより、図1(d)に示すように、積層膜10上にパターニングされたCr膜からなるマスク膜(ハード膜マスク)11Aが形成される。このハード膜マスク11Aは、図2(d)に示す転写用パターン15の凸部15bとなる形状に対応する形状、即ち凸部15bとなる形状と同一の形状に形成されている。なお、このハード膜マスク11A上には、SiO膜のエッチング残膜12Aが残っていることもある。
【0021】
次に、ハード膜マスク11Aを形成後、ドライエッチング装置においてチャンバー内の残留ガスを排気、クリーニングするか、別のドライエッチング装置のチャンバーに移動させることで、積層膜10へのエッチング変動要因を予め除去しておく。そして、パターン化したハード膜マスク11Aをマスクにして、積層膜10を異方性ドライエッチングする(ドライエッチング工程)。その際、夫々の膜界面で溝深さを面内で均一化するのに必要とするオーバーエッチング時間を付加、制御しながら順次ドライエッチングを実施する。つまり、SiO膜とSi膜とを交互に異方性ドライエッチングする。
【0022】
以下、このドライエッチング工程について詳細に説明する。まず、図2(a)に示すように、ハード膜マスク11Aをマスクにして最上層のSiO膜7のドライエッチングを行う。このSiO膜7のドライエッチングでは、CHFガスを主体にしてSiO膜7をエッチングするのに要する時間とプラズマ状態を制御しながら異方性ドライエッチングを行う。このSiO膜7の下層に位置するSi層6は、CHFガスではエッチングがされにくく、エッチングストッパー層として機能する。
【0023】
ここで、SiO膜7のドライエッチングが終了しても、面内でエッチング深さを均一化するためにCHFガスではエッチングがされにくい下層のSi膜6をオーバーエッチングする。このためSiO膜7の凹部側面の底部7aにノッチが発生するが、SiO膜7が、凹部15a(図2(d)参照)の深さ、つまり積層膜10全体の膜厚tに対して薄いので、オーバーエッチング時間が短くなり、ノッチ発生量が低減される。
【0024】
次に、図2(b)に示すように、ハード膜マスク11AをマスクにしてSiO膜7の下層であるSi膜6のドライエッチングを行う。このSi膜6のドライエッチングでは、SFガスを主体にしてSi膜6をエッチングするのに要する時間とプラズマ状態を制御しながら異方性ドライエッチングを行う。このSi層6の下層に位置するSiO膜7は、SFガスではエッチングがされにくく、エッチングストッパー層として機能する。
【0025】
ここで、Si膜6のドライエッチングが終了しても、面内でエッチング深さを均一化するためにSFガスではエッチングがされにくい下層のSiO膜5をオーバーエッチングする。このためSi膜6の凹部側面の底部6aにノッチが発生するが、Si膜6が凹部15a(図2(d)参照)の深さ、つまり積層膜10全体の膜厚tに対して薄いので、オーバーエッチング時間が短くなり、ノッチ発生量が低減される。
【0026】
次に、残りのSiO膜5,Si膜4,SiO膜3,Si膜2に対しても同様にそれぞれ異方性ドライエッチングの処理を行うことで、最終的に図2(c)に示すような、凹部15a及び凸部15bが繰り返し連続してなる転写用パターン15が形成される。
【0027】
このように、各膜2〜7の凹部側面の底部にノッチが発生するが、各膜厚を薄くしているので、各オーバーエッチング時間を短くでき、ノッチ発生量を低減でき、凹部15aの側壁面を平滑な面にドライエッチングできる。
【0028】
ここで、ドライエッチングにて下層の膜に矩形形状からなる一様な深さの溝を形成する際には、プラズマの不均一性を解消する為に、エッチングストッパー層をオーバーエッチングして深さの均一化を行う必要がある。但し、ノッチは、オーバーエッチングの際に入射してくるイオンが溝底部に滞留することで、引き続きオーバーエッチングで溝に入射してくるイオンに対してイオンの進行方向を歪曲させることにより発生する溝底部側面のエッチングである。それ故に、オーバーエッチングの効果を弱めるように、ドライエッチングの速度差(選択比)を小さくする膜種材料を用いて積層膜10を構成することで、ノッチの発生が防げることになる。
【0029】
選択比の小さい膜材料としては種々挙げられるが、成膜性が良い、膜質が安定している、ドライエッチングでのプロセス制御精度が良い等の条件を満たす膜材料として、Si膜とSiO膜とからなる2種類の膜材料を用いて積層するのがよい。したがって、本第1実施形態では、積層膜10は、Si膜とSiO膜とを交互に積層して構成されている。Si膜とSiO膜の交互層構造であるので、高選択比からなるエッチングストッパー層を用いるよりは下層に対しドライエッチングしやすくなるので、イオンの滞留を低減させることでノッチ量を低減することができる。
【0030】
ドライエッチング工程の終了後、チャンバー内を高真空に排気し、大気にリークして、積層膜10をドライエッチング処理した母材1をドライエッチング装置から取り出す。次に、母材1をCrエッチング溶液に浸漬し、ハード膜マスク11Aに使用したCr膜を除去する(マスク膜除去工程)。そして、洗浄及び乾燥することで、図2(d)に示すような、母材1上にピッチpが5nm以上200nm以下からなる凹凸構造体である転写用パターン15が形成された成形型100が製造される。
【0031】
以上、本第1実施形態では、異方性ドライエッチングされる膜を多層構造の積層膜10としたので、形成する凹部15aの深さに対して1層当たりの膜厚を薄くすることができ、エッチングの深さ分布も小さくすることができる。そして、このように1層当たりの膜厚を薄くすることで、オーバーエッチングに要する時間を各層2〜7に分散低減させることができる。このように、オーバーエッチング時間を各層2〜7に分散することで、凹部の底部に滞留する電荷の量を低減することができ、オーバーエッチングで引き続き凹部に入射してくるイオン数も減らせる。したがって、凹部側面をエッチングする量(ノッチ量)を減らすことができる。
【0032】
なお、積層膜10をドライエッチングして矩形形状からなる溝深さが一様な凹凸構造体を形成するために、積層膜10の下層にエッチングストッパー層を設けてもよい。これにより、プラズマの面内不均一性を解消され、エッチングストッパー層をオーバーエッチングすることで溝深さを均一化することができる。
【0033】
ところで、作製しようとする成形型の凹凸構造体のピッチpが200nm以下であると、オーバーエッチングしている際に凹部側面にサイドエッチング(ノッチ)が生成される。このノッチ現象は凹凸のピッチpが200nm以下では、図3に示すように、アスペクト比が2を超えると確認され始め、アスペクト比の増加に伴ってノッチ量が増える傾向を示す。つまり、この図3からは、アスペクト比が2を超えると、ノッチの発生量が顕在化する傾向が読み取れる。
【0034】
それ故に、作製しようとする成形型100の凹凸のピッチpが200nm以下の場合には、積層膜10の夫々の膜2〜7の膜厚t2〜t7をアスペクト比で2以下になるように設定するのがよい。具体的には、凹部の幅をwとすると、膜厚に対する凹部の幅の比率であるアスペクト比t2/w,t3/w,t4/w,t5/w,t6/w,t7/wのそれぞれが2以下となるように各膜2〜7を積層形成する。これにより、ノッチの発生をより効果的に抑制することができる。
【0035】
ここで、凹凸のピッチPの最小サイズはノッチ現象が現状の分析装置で充分に確認できる最小の底面幅として5nmに設定するのがよい。また、アスペクト比の下限値は通常の成膜装置で1層あたり、膜として制御性良く安定に成膜でき、またドライエッチングでは制御性あるドライエッチングが行える最小アスペクト比として0.05に設定するのがよい。
【0036】
つまり、作製しようとする成形型100の凹凸のピッチPが5nm以上200nm以下の場合には、アスペクト比で0.05以上2以下になるように夫々の膜厚t2〜t7を設定するのがよい。これにより、凹部15aの深さtに対する凹部15aの幅wの比率であるアスペクト比(t/w)が2を超えるような凹部15aを形成しても、ノッチの発生を抑制することができる。
【0037】
また、積層膜10を構成する各膜2〜7の膜厚が母材1の表面に向かって漸次薄くなるように成膜条件を制御して積層膜10を形成するのがよい。言い換えれば、積層膜10の各膜2〜7の膜厚が母材1の表面から大気側に向かって漸次厚くなるように成膜条件を制御して積層膜10を形成するのがよい。つまり、膜厚をt7>t6>t5>t4>t3>t2となるように積層膜10を形成するのがよい。
【0038】
即ち、ドライエッチングにて下層の膜を矩形形状からなる溝深さが一様な凹凸構造体を形成するには、プラズマの不均一性を解消する為に、エッチングストッパー層として機能する下層の膜をオーバーエッチングして溝深さの均一化を行う必要がある。ところが、オーバーエッチング時間が長くなると、エッチングストッパー層があるとはいえ、エッチング速度は遅いがエッチングは進行しているので、エッチング時間が長くなるほどエッチング深さは深くなり、溝深さの面内不均一化は大きくなる。
【0039】
したがって、本第1実施形態では、母材1上の積層膜10の各膜厚を漸次薄くしているので、プラズマの不均一性による溝深さの分布発生量を少なくでき、オーバーエッチングの必要量、すなわち時間を短縮できる。これにより、転写用パターン15(凹凸構造体)の凹部15aの溝深さの分布を均一化できる。更に、凹部15aの側面底部においてもノッチの発生を効果的に抑制することができる。
【0040】
本第1実施形態では、母材1上に形成された凹凸構造型である転写用パターン15が格子形状をなしており、アスペクト比で2を超える高アスペクト比で、且つ凹部15aの深さが面内で均一化された転写用パターン15が得られている。このような格子形状からなる転写用パターン15の凹部15aの側面には層間にわずかな荒れが見られる箇所があるが、ピッチpが200nmからなる凹凸構造体型からすると、成形型として用いるのに形状上問題となる大きさには至らない。
【0041】
次に、成形型100を用いて構造転写基板上に成形材料とするゾルゲル法による硬化性物質を用いて成形型100の反転形状を有する凹凸構造物を製造する。構造転写基板としては、光学ガラスを使用する。光学ガラス基板上にゾルゲル法による硬化性物質を流動性がある状態で一様にスピンコートする。
【0042】
あらかじめ離型剤を一様に吸着させておいた成形型100の転写用パターン(凹凸構造面)15に押圧させ、転写用パターン15の空隙部に流動性を有する状態でゾルゲル法による硬化性物質を充填させる。この押圧状態で硬化性物質及び構造転写基板を所定の温度に加熱制御して、硬化性物質を熱硬化させる。
【0043】
その後、構造転写基板から成形型100を離型させるが、凸部頂部側面での荒れが少ない成形型100を用いているので容易に離型がなされる。光学ガラス基板上に、成形型100の反転形状を精密に転写した、ピッチが200nm以下からなり、且つアスペクト比が2以上からなり、側壁が平滑なる凹凸構造物である光学素子が製造できる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る成形型の製造方法について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る成形型の製造方法を説明するための概略断面図である。本第2実施形態では、図4(d)に示すような凹部35a及び凸部35bが繰り返し連続する転写用パターン35の凹凸のピッチpが5nm以上200nm以下であるナノインプリント用の成形型200を製造する製造方法について説明する。なお、凹部35aは、図4(d)で紙面に直交する方向に延びる溝である場合について説明するが、凹凸の凹部がドット状の穴であってもよいし、凹凸の凸部が柱状となる形状等、いかなる凹凸形状であってもよい。
【0045】
まず、図4(a)を参照して説明する。成形型を作製しようとする母材21を洗浄、乾燥し、スパッタ装置の基板ホルダーに成膜面を上にして取り付ける。母材21としては、面精度が良好なるSiウエハや合成石英ウエハが適している。ここでは合成石英ウエハを使用する。スパッタ装置内を高真空に排気した後、母材21上に、WSi膜22、Si膜23、SiO膜24、WSi膜25、Si膜26、SiO膜27の順に、各膜厚が所定の膜厚になるように成膜条件を制御して積層する。つまり、WSi膜、Si膜及びSiO膜を有する積層膜30を母材21の表面上に形成する(積層膜形成工程)。なお、本第2実施形態では、積層膜30を6層構造としたが、これに限定するものではなく、WSi膜、Si膜、及びSiO膜からなる3層以上であれば何層構造であってもよい。この積層膜30の全体の膜厚は、最終的に形成される凹部35a(図4(d)参照)の深さ(凸部35bの高さ)に相当する。
【0046】
次に、積層膜30上に、上記第1実施形態と同様、図4(b)に示すように、Cr膜からなるマスク膜(ハード膜マスク)31Aを形成する(マスク膜形成工程)。このハード膜マスク31Aは、図4(d)に示す転写用パターン35の凸部35bとなる形状に対応する形状、即ち凸部35bとなる形状と同一の形状に形成されている。なお、このハード膜マスク31A上には、SiO膜のエッチング残膜32Aが残っていることもある。
【0047】
次に、ハード膜マスク31Aを形成後、ドライエッチング装置においてチャンバー内の残留ガスを排気、クリーニングするか、別のドライエッチング装置のチャンバーに移動させることで、積層膜30へのエッチング変動要因を予め除去しておく。そして、図4(b)に示すパターン化したハード膜マスク31Aをマスクにして、積層膜30を異方性ドライエッチングする(ドライエッチング工程)。その際、夫々の膜界面で溝深さを面内で均一化するのに必要とするオーバーエッチング時間を付加、制御しながら順次ドライエッチングを実施する。つまり、SiO膜、Si膜及びWSi膜を順次異方性ドライエッチングする。
【0048】
以下、このドライエッチング工程について詳細に説明する。まず、ハード膜マスク31Aをマスクにして最上層のSiO膜27のドライエッチングを行う。このSiO膜27のドライエッチングでは、CHFガスを主体にしてSiO膜27をエッチングするのに要する時間とプラズマ状態を制御しながら異方性ドライエッチングを行う。
【0049】
次に、ハード膜マスク31AをマスクにしてSiO膜27の下層であるSi膜26のドライエッチングを行う。このSi膜26のドライエッチングでは、SFガスを主体にしてSi膜26をエッチングするのに要する時間とプラズマ状態を制御しながら異方性ドライエッチングを行う。
【0050】
次に、ハード膜マスク31AをマスクにしてSi膜26の下層であるWSi膜25のドライエッチングを行う。このWSi膜25のドライエッチングでは、Si膜と同様、SFガスを主体にしてWSi膜25をエッチングするのに要する時間とプラズマ状態を制御しながら異方性ドライエッチングを行う。
【0051】
次に、残りのSiO膜24,Si膜23,WSi膜22に対しても同様にそれぞれ異方性ドライエッチングの処理を行うことで、最終的に図4(c)に示すような、凹部35a及び凸部35bが繰り返し連続してなる転写用パターン35が形成される。
【0052】
このように、各膜22〜27の凹部側面の底部にノッチが発生するが、各膜厚が凹部の深さ、即ち積層膜全体の膜厚に対して薄いので、各オーバーエッチング時間を短くでき、ノッチ発生量を低減でき、凹部35aの側壁面を平滑な面にドライエッチングできる。
【0053】
ドライエッチング工程の終了後、チャンバー内を高真空に排気し、大気にリークして、積層膜30をドライエッチング処理した母材21をドライエッチング装置から取り出す。次に、母材21をCrエッチング溶液に浸漬し、ハード膜マスク31Aに使用したCr膜を除去する(マスク膜除去工程)。そして、洗浄及び乾燥することで、図4(d)に示すような、母材21上にピッチpが5nm以上200nm以下からなる凹凸構造体である転写用パターン35が形成された成形型200が製造される。
【0054】
以上、本第2実施形態では、異方性ドライエッチングされる膜を多層構造の積層膜30としたので、形成する凹部35aの深さに対して1層当たりの膜厚を薄くすることができ、エッチングの深さ分布も小さくすることができる。そして、このように1層当たりの膜厚を薄くすることで、オーバーエッチングに要する時間を各層22〜27に分散低減させることができる。このように、オーバーエッチング時間を各層22〜27に分散することで、凹部の底部に滞留する電荷の量を低減することができ、オーバーエッチングで引き続き凹部に入射してくるイオン数も減らせる。したがって、凹部側面をエッチングする量(ノッチ量)を減らすことができる。
【0055】
また、本第2実施形態では、作製しようとする成形型200の凹凸のピッチpが5nm以上200nm以下の場合には、アスペクト比で0.05以上2以下になるように各膜22〜27の膜厚を設定している。これにより、凹部35aの深さに対する凹部35aの幅の比率であるアスペクト比が2を超えるような凹部35aを形成しても、ノッチの発生を抑制することができる。
【0056】
また、本第2実施形態では、積層膜30を構成する各膜22〜27の膜厚が母材21の表面に向かって漸次薄くなるように成膜条件を制御して積層膜30を形成している。これにより、プラズマの不均一性による溝深さの分布発生量を少なくでき、オーバーエッチングの必要量、すなわち時間を短縮できる。そして、転写用パターン35(凹凸構造体)の凹部35aの溝深さの分布を均一化できる。更に、凹部35aの側面底部においてもノッチの発生を効果的に抑制することができる。
【0057】
なお、上記実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記第1実施形態では、母材が石英ウエハであり、母材の表面が石英であるので、積層膜の最下層をSi膜としたが、これに限定するものではない。母材が、シリコンウエハと、シリコンウエハの表面に設けられたSiO膜からなるエッチングストッパー層と、で構成される場合であっても、積層膜の最下層をSi膜とすればよい。また、石英ウエハの表面にSi膜からなるエッチングストッパー層を設けて構成される母材の場合やシリコンウエハの場合等、母材の表面がSiの場合には、積層膜の最下層はSiO膜とするのがよい。
【0058】
また、上記第2実施形態では、母材が石英ウエハであり、母材の表面が石英であるので、積層膜の最下層をWSi膜としたが、Si膜としてもよい。また、母材の表面がSiである場合は、積層膜の最下層はSiO膜とするのがよい。
【実施例】
【0059】
[実施例1]
次に、図1及び図2を参照しながら、実施例1に係る成形型100の製造方法について説明する。
【0060】
まず、図1(a)において、Φ6インチ、厚み625μmからなる合成石英ウエハの母材1を洗浄、乾燥して清浄な面を得る。次に、スパッタ装置内を高真空に排気した後、母材1上にSi膜2、SiO膜3、Si膜4、SiO膜5、Si膜6、SiO膜7の順に、膜厚が所望の膜厚になるように成膜条件を制御して積層する。これにより、積層膜10全体としてはSiとSiOとの材料からなる2層の膜を3回、複数積層した6層からなる膜構成が形成される。この母材1上の積層膜10を被エッチング層として、この後のドライエッチング処理にて凹凸構造体を構成する型とする。
【0061】
Si膜2,4,6はSiをターゲットにしてArガスを300sccm導入し、圧力を1Pa、投入RFパワー400wの条件でスパッタ時間を制御して所望の膜厚になるようにスパッタ法により成膜した。本実施例1ではSi膜2,4,6の膜厚を夫々、5nm、45nm、73nmとした。SiO膜3,5,7はSiOをターゲットにしてOガスを10sccm、Arガスを100sccm導入し、圧力を3Pa、投入RFパワー800wの条件でスパッタ時間を制御して所望の膜厚になるようにスパッタ法により成膜した。本実施例1ではSiO膜3,5,7の膜厚を夫々、12nm、58nm、95nmとした。これによりSi膜とSiO膜とからなる6層の合計膜厚を300nmとした。
【0062】
次に、図1(b)に示すように、SiO膜7上にマスクとなるCr膜11を50nm厚積層させた。その際、CrをターゲットにしてArガスを200sccm導入し、圧力を1.5Pa、投入パワー250wの条件でスパッタ時間を制御して所望の膜厚になるように成膜した。
【0063】
Cr膜11の上にSiO膜12を70nm厚積層した。スパッタ成膜条件は下層SiO膜3,5,7と同条件でスパッタ時間を制御して所望の膜厚になるように成膜した。尚、本実施例1では上記成膜条件を使用して積層膜10、Cr膜11及びSiO膜を成膜したが、成膜条件はこれに限定されるものではない。
【0064】
スパッタ装置を一度高真空に排気した後、大気にリークして、該スパッタ成膜した母材1をスパッタ装置から取り出した。次に、該スパッタ成膜した母材1上にスパッタ成膜した面を上にしてスピンナーの所定塗布位置に設置した。所望の回転スピードにて母材1のスパッタ成膜面上にBARC13を塗布した。スピンナーから母材1を取り外し、ホットプレート上に設置して、所望の温度、時間にてベークした。これにより所望の厚みに塗布された下層の該スパッタ成膜からの適切な反射防止機能を発揮するBARC13が形成された。本実施例1では厚みが一様に70nmからなるBARC13を作製した。
【0065】
次に、BARC13上に、前記と同様のスピンナーとホットプレート装置を用いて、化学増幅型のフォトレジストを所望の厚みに塗布し、プリベークした。本実施例1では厚みが一様に145nmからなるフォトレジスト14を形成した。尚、BARC13とフォトレジスト14の厚みは本実施例1に限定されるものではない。
【0066】
次に、露光ステージに母材1を設置して、フォトレジスト14にピッチpが140nmにて配列されてなるL/Sパターンを露光した。次に現像、PEB処理を所望の条件にて行うことで、図1(c)に示すように、ピッチが140nmで配列してなるL/Sを有するフォトレジストパターン14Aを形成した。本実施例1ではL/Sが50/90nmからなる、ピッチが140nmで配列してなるL/Sパターンを形成した。露光には通常のステッパ露光法、EB描画露光法、干渉露光法などの方法が適用できる。
【0067】
次に母材1を通常のICPドライエッチング装置のウエハチャックに設置した。チャンバー内を一度高真空に排気した後、ClガスとOガスとを流量計にて所望の流量でチャンバー内に導入した。そして、チャンバー内の圧力を所望の圧力で一定になるように排気弁の開閉度を調整した。次いで、圧力が安定したらパワーを投入してプラズマ放電を開始し、フォトレジストパターン14Aをマスクにして下層のBARC13を異方性にドライエッチングした。本実施例1ではClガス流量4sccm、Oガス流量12sccm、圧力0.5Paの条件で異方性にドライエッチングした。これにより、BARC13にはフォトレジストパターン14Aと同等のピッチが140nmで配列してなるL/Sが50/90nmからなるパターンが形成された。これにより、フォトレジストとBARCとからなる有機系パターンマスクが形成された。
【0068】
次に、チャンバー内を一度排気した後、CHFガスとArガスとを所望の流量でチャンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を所望の圧力で一定になるように排気弁の開閉度を調整した。圧力が安定したらパワーを投入してプラズマ放電を開始し有機系パターンマスクをマスクにしてSiO膜12を異方性にドライエッチングした。本実施例1ではCHFガス流量20sccm、Arガス流量10Sccm圧力0.5Paの条件にて所望の時間、異方性にドライエッチングした。これにより、SiO膜12にはフォトレジストパターン14Aと同等のピッチが140nmで配列してなるL/Sが50/90nmからなるパターンが形成された。
【0069】
次に、チャンバー内を一度排気した後、ClガスとOガスとを所望の流量でチャンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を所望の圧力で一定になるように排気弁の開閉度を調整した。圧力が安定したらパワーを投入してプラズマ放電を開始し、有機系パターンマスクと下層のパターン化したSiO膜とをマスクにCr膜11を異方性にドライエッチングした。本実施例1ではClガス流量8sccm、Oガス流量24Sccm、Arガス流量10sccm、圧力2Paの条件にて所望の時間、異方性にドライエッチングした。これにより、図1(d)に示すように、フォトレジストパターン14Aと同等のピッチが140nmで配列してなるL/Sが50/90nmからなるハード膜マスク11Aが形成された。
【0070】
尚、ハード膜マスク11A上には、Cr膜11を異方性にドライエッチングしている際にマスクに用いたSiO膜12がドライエッチングにてエッチングを受けSiO膜12のエッチング残膜12Aとして残った。フォトレジストパターン14A、フォトレジストパターン14Aの下層のパターン化したBARCは、Cr膜11をドライエッチングしている際にエッチングされてしまい残膜としては残らなかった。
【0071】
ハード膜マスク11Aをドライエッチングで作製するまでのドライエッチング工程では、上記のようにフォトレジストパターンのL/Sに対し、2以下のアスペクト比になるように、最外層のマスクがドライエッチングで除去されるのでノッチ発生は抑制される。それ故に、ピッチが140nmで配列してなるL/Sが50/90nmのハード膜マスク11Aにはノッチの発生はなく、上層に対し下層のエッチング速度が極端に遅い膜材料なので面内で溝深さが均一化した矩形形状からなるハード膜マスク11Aが形成される。
【0072】
次に、母材1を一旦、チャンバーから取り除いた状態でアッシング、クリーニング後、再度ウエハチャックに母材1を設置するか、あるいは別の清浄なチャンバーに移動して母材1をチャックに設置する。これは、ハード膜マスク11Aを作製するのに用いたClガスがチャンバー内壁等に付着しており、次工程のドライエッチングでのプラズマエッチング状態を変動させる要因となるので、事前にクリーンなチャンバー雰囲気を作製しておく為である。
【0073】
次に、チャンバー内を一度排気した後、CHFガスとArガスとを所望の流量でチャンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を所望の圧力で一定になるように排気弁の開閉度を調整した。そして、圧力が安定したらパワーを投入してプラズマ放電を開始し、図2(a)に示すように、ハード膜マスク11AをマスクにしてSiO膜7を異方性にドライエッチングした。
【0074】
SiO膜7のドライエッチングがパターン内の一部エリアで終了しても、エッチング深さが母材1の面内で一様になるように、引き続き所望の時間、下層のSi膜6を異方性にドライエッチングしてオーバーエッチングを行った。このオーバーエッチングでSiO膜7の底面側壁がプラズマ源から入射されるイオンの歪曲によりサイドエッチング(ノッチ)された。しかしながら、SiO膜7のドライエッチング条件では下層Si膜6に対しエッチング選択比が3.8と低いので、高選択比10以上を示すAl膜よりはノッチ発生量が少なくなった。ピッチが200nm以下からなる凹凸構造体では形状状問題とならない荒さであり、平滑な側壁面が得られた。本実施例1ではCHFガス流量30sccm、Arガス流量5sccm圧力0.5Pa、アンテナパワー200w、バイアスパワー50wの条件にて所望の時間、異方性にドライエッチングした。
【0075】
次に、チャンバー内を一度排気した後、SFガスとArガスとを所望の流量でチャンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を所望の圧力で一定になるように排気弁の開閉度を調整した。そして、圧力が安定したらパワーを投入してプラズマ放電を開始し、図2(b)に示すように、ハード膜マスク11AをマスクにしてSi膜6を異方性にドライエッチングした。
【0076】
Si膜6のドライエッチングがパターン内の一部エリアで終了しても、エッチング深さが母材1の面内で一様になるように、引き続き所望の時間、下層のSiO膜5を異方性にドライエッチングしてオーバーエッチングを行った。このオーバーエッチングでSi膜6の底面側壁がプラズマから入射されるイオンの歪曲によりサイドエッチング(ノッチ)された。しかしながら、Si膜6のドライエッチング条件では下層SiO膜5に対しエッチング選択比が2.8と低いので、高選択比10以上を示すAl膜よりはノッチ発生量が少なくなった。ピッチが200nm以下からなる凹凸構造体では形状状問題とならない荒さであり、平滑な側壁面が得られた。本実施例1ではSFガス流量30sccm、Arガス流量10sccm圧力2.0Pa、アンテナパワー200w、バイアスパワー150wの条件にて所望の時間、異方性にドライエッチングした。
【0077】
更に、SiO膜5、Si膜4、SiO膜3、Si膜2を上層から順にハード膜マスク11Aをマスクにして上記と同様に異方性ドライエッチングを行い、図2(c)に示すように、母材1の面を露出させた。これによりSi膜とSiO膜とからなる6層の300nm厚の積層膜10(被エッチング層)にピッチpが140nmで配列してなるL/Sが50/90nmからなる溝側壁面の平滑な凹凸構造が形成された。
【0078】
ドライエッチングがパターン内の一部エリアで終了し、母材1の面が露出しても、エッチング深さが母材1の面内で一様になるように、引き続き所望の時間、異方性にエッチングしてオーバーエッチング後、ドライエッチングを終了した。尚、本実施例1で用いたドライエッチング条件はこれに限定されるものではない。
【0079】
次に、チャンバー内をガス置換、排気処理後、チャンバー内を大気にリークして母材1をドライエッチング装置から取り出した。次に、母材1を過塩素酸・硝酸2セリウムアンモニウム溶液に浸漬し、ドライエッチングのマスクとして使用したハード膜マスク11Aを剥離後、清浄、乾燥させた。これにより、図2(d)に示すような、母材1上にSiとSiOとからなるピッチ140nmで配列したL/Sが50/90nmからなる凹凸構造体である転写用パターン15が形成された成形型100が得られた。
【0080】
得られた成形型100の断面を観察すると、90mm角のパターンエリア内での溝深さの差が2.6nmであった。また、ノッチの発生は6層の各膜間で発生するが、最も大きく発生した膜間でのノッチを形状特性の対象とし、ここでは最大2.8%で、少ない量であった。
【0081】
ノッチの発生量は300nm厚を単層SiO膜で構成し、エッチングストッパー層に選択比10以上からなるAl膜を用いて、同じサイズのパターンマスクにて同条件のドライエッチングで生ずる最大ノッチ量を基準に規格化したノッチ発生規格値である。本実施例1のように、エッチング選択比が3.8ないし2.8と低い値の2種類の材料からなる積層膜10の構成でありながら、アスペクト比を3.3と高くしても、溝内壁の荒れが少なく平滑な側壁を有する矩形形状からなる凹凸構造体を有する成形型が得られた。尚、本実施例によれば、L/S構造体のみならず、ドット構造体、ピラー構造体にも同様の効果を発揮する。また、隣接する凹凸との間隔が5nm以上200nm以下の形状に適用できる。また、各膜2〜7におけるアスペクト比は0.05以上2以下の形状に適用できる。本実施例1の膜構成とノッチ発生規格値、オーバーエッチング量、側壁平滑性を表1に示す。
【0082】
[実施例2]
本実施例2では、合成石英ウエハと、合成石英ウエハの表面上に形成したSi膜からなるエッチングストッパー層とで母材を構成し、このエッチングストッパー層上にSiO膜、Si膜及びSiO膜からなる3層構造の積層膜を成膜した。そして、上記実施例1と同様に、ドライエッチングにて凹凸構造体である転写用パターンを有する成形型を作製した。本実施例2の膜構成とノッチ発生規格値、オーバーエッチング量、側壁平滑性を表1に示す。
【0083】
得られた成形型の断面を観察すると、90mm角のパターンエリア内での溝深さの差が16.5nmであった。また、ノッチの発生は各膜間で最大4.3%と少ない量であった。積層膜が3層と成膜工程数が少なく、母材面側の膜厚と大気側の膜厚とが同じ100nm厚でも単層構成と比較して、ピッチが200nm以下、アスペクト比3.3でありながら平滑な側壁面を有する矩形形状からなる凹凸構造体を有する成形型が得られた。
【0084】
[実施例3]
本実施例3では、合成石英ウエハを母材とし、母材の表面に20nm厚のSi膜と80nm厚のSiO膜とを交互に積層し、6層構造の積層膜を成膜した。そして、上記実施例1と同様に、ドライエッチングにて凹凸構造体である転写用パターンを有する成形型を作製した。本実施例3の膜構成とノッチ発生規格値、オーバーエッチング量、側壁平滑性を表1に示す。
【0085】
得られた成形型の断面を観察すると、90mm角のパターンエリア内での溝深さの差が7.6nmであった。また、ノッチの発生は各膜間で最大2.8%と少ない量であった。合計6層の積層膜としたことで、3層構成の場合と比較して、ピッチが200nm以下、アスペクト比3.3でありながら、溝深さが一様で、溝内壁の荒れがより少なく平滑な矩形形状からなる凹凸構造体を有する成形型が得られた。
【0086】
[実施例4]
本実施例4では、合成石英ウエハを母材とし、母材の表面にSi膜とSiO膜とを交互に積層し、10層構造の積層膜を成膜した。そして、上記実施例1と同様に、ドライエッチングにて凹凸構造体である転写用パターンを有する成形型を作製した。本実施例4の膜構成とノッチ発生規格値、オーバーエッチング量、側壁平滑性を表1に示す。
【0087】
得られた成形型の断面を観察すると、90mm角のパターンエリア内での溝深さの差が2.2nmであった。また、ノッチの発生は各膜間で最大2.4%と少ない量であった。合計10層の積層膜としたことで、6層構成の場合と比較して、ピッチが200nm以下、アスペクト比3.3でありながら、溝深さがより一様になり、溝内壁の荒れもより少なく平滑な矩形形状からなる凹凸構造体を有する成形型が得られた。
【0088】
[実施例5]
本実施例5では、合成石英ウエハを母材とし、母材の表面に、WSi膜、Si膜及びSiO膜からなる3種類の材料を用いて、2回積層した6層構造の積層膜を成膜した。WSi膜の成膜には、Si膜の成膜と同様の工程とし、Arガスをチャンバー内に300sccm導入し、圧力を1Pa、投入RFパワー350wの条件でスパッタ時間を制御して所望の膜厚になるように成膜した。
【0089】
また、WSi膜のドライエッチングには、Si膜の異方性ドライエッチングと同様の工程とし、SFガス流量25sccm、Arガス流量10sccm、圧力2.0Pa、アンテナパワー150w、バイアスパワー150wにて所望の時間ドライエッチングした。それ以外は実施例1と同様に作製した。上記条件のドライエッチングではWSi膜に対するSi膜の選択比は1.9、SiO膜に対するWSi膜の選択比は1.9である。
【0090】
得られた成形型の断面を観察すると、90mm角のパターンエリア内での溝深さの差が2.4nmであった。また、ノッチの発生は各膜間で最大1%以下と少ない量であった。本実施例5では、積層する膜種を3種類に増やして6層構造の積層膜とした。この6層構造で、2種類の材料からなる10層積層膜の構成と比較して、ピッチが200nm以下、アスペクト比3.3でありながら、溝深さ、溝内壁の荒れ共に均一化された矩形形状からなる凹凸構造体を有する成形型が得られた。
【0091】
[実施例6]
実施例1で作製したピッチが140nmで、L/Sが50/90nm、且つアスペクト比が3.3の6層積層で構成した成形型を用いて構造転写基板上に成形材料とするゾルゲル法による硬化性物質を用い成形型の反転形状を有する凹凸構造物を製造した。構造転写基板としては、高屈折率の光学ガラスを使用した。
【0092】
光学ガラス基板上にゾルゲル法による硬化性物質を流動性がある状態で一様に膜厚が140nmになるようにスピンコートした。この塗布面に成形型の予め離型剤を一様に吸着させておいた凹凸構造面を700Nで押圧させた。成形型の空隙部に流動性を有する状態でゾルゲル法による硬化性物質を充填させた。この押圧状態で成形型並びに構造転写基板を段階的に所定の温度、室温から80度、80度から250度に加熱して、硬化性物質を硬化させた。
【0093】
その後、構造転写基板から成形型を離型させるが、凸部頂部側面での荒れが少ない成形型を用いているので容易に離型がなされた。光学ガラス基板上に成形型により成形した凹凸構造の形状を観察すると、成形型の形状を精密に反転形状した、ピッチが200nm以下からなり、且つアスペクト比が3、3からなり、L/Sが90/50nmからなる凹凸構造体を製造できた。
【0094】
[比較例1]
比較例1では、合成石英ウエハと、合成石英ウエハの表面上に形成したAl膜からなるエッチングストッパー層とで母材を構成し、このエッチングストッパー層上にSiO膜からなる1層構造の単層膜を成膜した。
【0095】
Al膜の成膜は、SiO膜の成膜工程と同様とし、Alターゲットを用いチャンバー内にArガスを200sccm、Oガスを200sccm導入し、圧力0.6Pa、投入RFパワー600wの条件でスパッタ時間を制御して所望の膜厚に成膜した。そして、上記実施例1と同様に、ドライエッチングにて凹凸構造体である転写用パターンを有する成形型を作製した。本比較例1の膜構成とノッチ発生規格値、オーバーエッチング量、側壁平滑性を表1に示す。
【0096】
得られた成形型の断面を観察すると、90mm角のパターンエリア内での溝深さの差が10nmであった。また、ノッチの発生は各膜間で最大43.9%にもなった。SiO膜のドライエッチング速度に対し、極めてドライエッチング速度が遅いAl膜をエッチングストッパー層に使用したことで、オーバーエッチング量は実施例2の3層分割構成よりも良いが、ノッチの発生量が極めて多くなった。凹凸のピッチが200nm以下、凹部のアスペクト比が3.3では、溝内壁の荒れが大きく良好な矩形形状からなる凹凸構造体を有する成形型が得られなかった。
【0097】
[比較例2]
比較例2では、合成石英ウエハと、合成石英ウエハの表面上に形成したSi膜からなるエッチングストッパー層とで母材を構成し、このエッチングストッパー層上にSiO膜からなる1層構造の単層膜を成膜した。そして、上記実施例1と同様に、ドライエッチングにて凹凸構造体である転写用パターンを有する成形型を作製した。本比較例1の膜構成とノッチ発生規格値、オーバーエッチング量、側壁平滑性を表1に示す。
【0098】
得られた成形型の断面を観察すると、90mm角のパターンエリア内での溝深さの差が33nmであった。また、ノッチの発生は各膜間で最大8.6%であった。SiO膜のドライエッチング速度に対し、ドライエッチング速度が近いSi膜をエッチングストッパー層に使用すると、オーバーエッチング量は比較例1の3倍強も高くなるが、選択比が小さくなった分、ノッチの発生量は0.2倍程度の少なさになっている。凹凸のピッチが200nm以下、凹部のアスペクト比が3.3では、内壁の荒れは比較例1より格段に改善されたが溝深さが不均一化し、良好な矩形形状からなる凹凸構造体を有する成形型が得られなかった。
【0099】
[比較例3]
比較例3では、合成石英ウエハを母材とし、母材の表面に10nm厚のAl膜と90nm厚のSiO膜とを交互に積層し、6層構造の積層膜を成膜した。そして、上記実施例1と同様に、ドライエッチングにて凹凸構造体である転写用パターンを有する成形型を作製した。本比較例3の膜構成とノッチ発生規格値、オーバーエッチング量、側壁平滑性を表1に示す。
【0100】
得られた成形型の断面を観察すると、90mm角のパターンエリア内での溝深さの差が2.5nmであった。また、ノッチの発生は各膜間で最大8.9%と単層構成からなる比較例1よりは複数層からなる積層膜にしたことで少なくなっていた。
【0101】
しかし、比較例3では、積層膜が上記実施例3のような6層構造ではあるが、選択比の小さいSi膜ではなく、Si膜よりも選択比の大きいAl膜としているので、上記実施例3よりもノッチ発生量が大きくなっている。言い換えれば、実施例3は同じ6層構成ではあるが選択比の高いAl膜ではなく、選択比の小さいSi膜を採用しているので比較例3と比較してノッチ発生量が格段に改善されている。
【0102】
つまり、比較例3では、積層膜が6層構造ではあるが高い選択比膜を採用したことにより、実施例3の場合と比較して、ピッチが200nm以下、アスペクト比3.3では、溝深さ均一性と溝内壁の荒さが共に荒れた形状からなる凹凸構造体の成形型が得られた。
【0103】
[比較例4]
比較例1で作製したピッチが140nmで、L/Sが50/90nm、且つアスペクト比が3.3の単層で構成した成形型を用いて構造転写基板上に成形材料とするゾルゲル法による硬化性物質を用い成形型の反転形状を有する凹凸構造物を製造した。構造転写基板としては、高屈折率の光学ガラスを使用した。
【0104】
光学ガラス基板上にゾルゲル法による硬化性物質を流動性がある状態で一様に膜厚が140nmになるようにスピンコートした。この塗布面に成形型の予め離型剤を一様に吸着させておいた凹凸構造面を700Nで押圧させた。成形型の空隙部に流動性を有する状態でゾルゲル法による硬化性物質を充填させた。この押圧状態で成形型並びに構造転写基板を段階的に所定の温度、室温から80度、80度から250度に加熱して、硬化性物質を硬化させた。
【0105】
その後、構造転写基板から成形型を離型させるが、凸部頂部側面の荒れが大きい成形型を用いているので容易に離型されなかった。光学ガラス基板上に成形型により成形した凹凸構造の形状を観察すると、成形型の形状を反転してはいるが、凹凸構造体の一部が欠損している箇所が見られた。
【0106】
【表1】

【符号の説明】
【0107】
1…母材、2,4,6…Si膜、3,5,7…SiO2膜、10…積層膜、11A…ハード膜マスク(マスク膜)、15…転写用パターン、15a…凹部、15b…凸部、21…母材、22,25…WSi膜、23,26…Si膜、24,27…SiO2膜、30…積層膜、31A…ハード膜マスク(マスク膜)、35…転写用パターン、35a…凹部、35b…凸部、100…成形型、200…成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部及び凸部が繰り返し連続する転写用パターンの凹凸のピッチが5nm以上200nm以下であるナノインプリント用の成形型の製造方法において、
母材の表面上にSi膜とSiO膜とを交互に積層した積層膜を形成する積層膜形成工程と、
前記積層膜形成工程にて形成された前記積層膜上に、前記凸部の形状に対応する形状のマスク膜を形成するマスク膜形成工程と、
前記マスク膜形成工程にて前記マスク膜を形成後、前記Si膜及び前記SiO膜に対してそれぞれ異方性ドライエッチングの処理を行うことで前記転写用パターンを形成するドライエッチング工程と、
前記ドライエッチング工程の終了後に前記マスク膜を除去するマスク膜除去工程と、を備えたことを特徴とする成形型の製造方法。
【請求項2】
凹部及び凸部が繰り返し連続する転写用パターンの凹凸のピッチが5nm以上200nm以下であるナノインプリント用の成形型の製造方法において、
母材の表面上に、WSi膜、Si膜及びSiO膜を有する積層膜を形成する積層膜形成工程と、
前記積層膜形成工程にて形成された前記積層膜上に、前記凸部の形状に対応する形状のマスク膜を形成するマスク膜形成工程と、
前記マスク膜形成工程にて前記マスク膜を形成後、前記WSi膜、前記Si膜及び前記SiO膜に対してそれぞれ異方性ドライエッチングの処理を行うことで前記転写用パターンを形成するドライエッチング工程と、
前記ドライエッチング工程の終了後に前記マスク膜を除去するマスク膜除去工程と、を備えたことを特徴とする成形型の製造方法。
【請求項3】
前記積層膜形成工程では、前記積層膜を構成する各膜の膜厚が前記母材の表面に向かって漸次薄くなるように、前記積層膜を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の成形型の製造方法。
【請求項4】
前記積層膜形成工程では、前記積層膜を構成する各膜を、膜厚に対する前記凹部の幅の比率であるアスペクト比で0.05以上2以下となるように形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成形型の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−245775(P2012−245775A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121917(P2011−121917)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】