説明

拡張遮断性能を得るため信号および干渉電力を用いる自動利得制御

アナログ部、デジタル部、これらアナログ部とデジタル部の間の少なくとも1つのA/D変換器、および、デジタル部内に少なくとも部分的に実現される無線の選択を備える無線受信機において、広帯域電力見積りが広帯域しきい値を超えたことの決定に基づいて、AGCコントローラが第1可変利得増幅器(VGA)(302)を低利得に設定する。広帯域しきい値は、A/D変換器の飽和の発生を低減させるために選択される。広帯域電力見積りが広帯域しきい値よりも小さい場合、そのとき、アナログ部内のそれぞれのVGA(302)のために、狭帯域電力見積りがそのVGA(302)に対応して狭帯域しきい値にヒステリシス値をプラスした値を超えたか否かについて決定がなされ、この場合、VGA(302)は低利得に設定され;または、狭帯域電力見積りが狭帯域しきい値からヒステリシス値を引いた値であるか否かについて決定がなされ、この場合、VGA(302)は高利得に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、自動利得制御回路に関し、特に、少なくとも部分的にデジタル領域で実現されるチャネル選択機能を有すると共に、単一経路内に1つまたはそれ以上のアナログ・デジタル変換器を用いる無線受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線受信機の設計は、アナログ領域で要求される選択機能を実現した。このようなアナログ・フィルタリング(濾波)は、多年にわたって無線受信機内で使用されてきた。より最近では、時々デジタル・フィルタリングとして引用される、デジタル信号処理技術が発展してきており、かつては独占的にアナログ領域内で実現されていた無線受信機における種々の機能を実現するために適切なものとなっている。しかし、デジタル信号処理の長所を役立たせるために、デジタル信号処理のために提示されるのに先立って、アナログ信号がデジタル信号へと変換されることは高く評価されるであろう。アナログ信号をデジタル信号へと変換するために用いられる回路またはシステムのための一般的な術語は、アナログ・デジタル変換器(Analog-to-Digital Converter―ADC―)であることは、さらに高く評価されるであろう。
【0003】
種々の受信機基本設計概念は、アナログおよびデジタル信号処理の結合を利用する。図1を参照しながら、デジタル選択を利用する、従来の無線受信機基本設計概念が示される。ダイレクト・コンバージョン(直接変換)無線受信機のこの例において、I(すなわち、同相―in-phase―)信号およびQ(すなわち、直交―quadrature―)信号がデジタル方式に変換され、それに続くデジタル信号処理またはフィルタリングがチャネルフィルタ応答を完了させるために用いられる。これは、全てではないが大部分がアナログ領域で選択的に行なわれていた古い基本設計概念とは対照的である。したがって、これら古い基本設計概念は、大きな帯域外周波数信号が既にアナログ領域内でフィルタリングされているので、A/D変換器用の優れた保護を提供していた。このようにして、帯域外周波数信号エネルギーは、A/D変換器へと提供された信号の振幅に寄与することを止められる。
【発明の概要】
【0004】
必要とされるものは、デジタル領域で選択的に実施する無線受信機内のアナログ・デジタル変換器の最大受容入力レベルを上回る信号を低減または除去する方法および装置である。
【0005】
簡単に言えば、この発明の実施形態は、アナログ信号処理部およびデジタル信号処理部、このアナログ信号処理部およびデジタル信号処理部の間に配置された少なくとも1つのアナログ・デジタル変換器を含み、前記受信機の選択機能は、少なくとも部分的にはデジタル領域に実現されている無線受信機の改善された動作を備える。AGCコントローラは、広帯域信号エネルギーの見積りが広帯域しきい値を超えたという決定に基づいて、第1の可変利得増幅器を低利得状態に設定する。このような広帯域しきい値は、少なくとも1つのA/D変換器の飽和の発生を低減または防止するために選択される。広帯域信号エネルギーの見積りが広帯域しきい値よりも少ないときには、その後、受信信号経路のアナログ部における可変利得増幅器のために、狭帯域信号エネルギーの見積りがその可変利得増幅器にしたがって狭帯域のしきい値を超えたか否かについて決定がなされて、この場合、可変利得増幅器は低利得状態に設定され;または、狭帯域信号エネルギーの見積りが狭帯域しきい値からヒステリシス値を差し引いた値よりも小さいか否かについて決定がなされて、この場合、可変利得増幅器は高利得状態に設定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
無線受信機のアナログ部とデジタル部との間に配置されるA/D変換器を飽和させることの発生を防止または逓減させるための方法および装置は、受信機のA/D変換器に達する全体の信号エネルギーに基づいて1つまたはそれ以上の可変利得増幅器の制御を提供する。
【0007】
この明細書における「一実施形態」、「ある実施形態」または同様の表現への参照は、実施形態に関連して説明される個別の特徴、構成、作用、特性がこの発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味している。したがって、この明細書におけるこのような言い回しまたは定型句の出現は、同一実施形態に対して必ずしも全て引用しているものではない。さらに、種々の個別の特徴、構成、作用または特性が、1つまたはそれ以上の実施形態における何れかの適切なやり方により結合されても良い。
【0008】
A/Dは、アナログからデジタルを示し、これはしばしばA/D変換器(ADC)を引用する文脈の中で用いられる。
【0009】
頭字語AGCは、自動利得制御[automatic gain control]を示す。
【0010】
頭字語ALCは、自動レベル制御[automatic level control]を示す。
【0011】
頭字語CDMAは、符号分割多重アクセス[multiple code division multiple access]を示す。
【0012】
頭字語ERPは、有効放射(輻射)電力[effective radiated power]を示す。
【0013】
頭字語PCSは、個人通信サービス[personal communication service]を示す。
【0014】
頭字語RSSIは、受信信号強度標識[received signal strength indicator]を示す。
【0015】
直接変換の表現は、1つの混合動作、すなわち、何れの中間周波数(IF)ステージを用いないで、入来する信号を第1の周波数から、第2の、所望の周波数へと変換する無線通信のことを示す。
【0016】
この発明は、少なくとも一部分はデジタル領域で実施されるそれらのチャネル選択を有すると共に、信号経路に1つまたはそれ以上のA/D変換器を用いる無線受信機に関する。この発明の1つのアスペクトにおいて、帯域外周波数電力を含み、A/D変換器の入力に到来する全体の信号電力は、安全動作限界の範囲内で維持される。このような安全動作限界は、信号経路が強い干渉により遮られないことを保証する。この発明の第2のアスペクトにおいて、完全に濾波されたオン・チャネル信号のデジタル自動レベル制御が、所定の制限された語の大きさ内での信号の改善された表示を提供する。上述のアスペクトを具体化するこの発明の種々の実施形態は、明確な限界の範囲内での所望の信号の振幅の制御を提供することができる。所望の信号は、無線受信機のアナログ部における自動利得制御を説明し、比較し、または評価するために典型的に用いられる測定基準[metric]である。
【0017】
従来、AGCシステム(またはサブシステムまたは回路)は、チャネル選択が完了された後に、所望の信号のレベルを制御するように設計されている。それゆえに、AGC制御ループにおけるオフ・チャネル信号の衝撃を最小にすることは、従来の設計の目標である。デジタル・フィルタリングの最終段の出力、すなわち、デジタルベースバンド、からのAGC電力レベル検出を引き出すことにより、デジタル受信機におけるこの動作を再生することは可能である。しかし、充分な無歪限界は、弱く濾波された、および/または、線形的に取り扱われるべき強力な干渉を許容するため、A/Dはアナログ変換器内で、“空の[vacant]”まま放置されなくてはならない。
【0018】
帯域周波数外電力を制御するために何の試みもなされないとき、この電力は、信号経路のための好ましくない成り行きと共に、A/D変換器の線形範囲を超えても良い。このような好ましくない成り行きは、突然に失われる全ての通信の破滅的な成り行きを含んでいても良い。この発明の実施形態は、これが所望の信号のための幾つかの信号対雑音比を犠牲にすることを意味しているとしても、A/D変換器での全体の電力放射が、これらのA/D変換器の範囲を取り扱う線形信号を超えることはないことを確実にすることにより、この欠陥を克服している。
【0019】
この発明の図示された実施形態において、A/D変換器に対する入力における信号の広帯域電力は見積もられて、この情報は信号として有益なものとされ、この信号はここでは電力信号として引用される。要求される分解能およびサンプルレートで直接サンプルするこのようなタイプのA/D変換器のために、このような信号が、同相チャネルおよび直交チャネルからのデジタルサンプルの二乗の合計、および、低域通過フィルタのこれらの合計を取ることにより提供されても良い。シグマ・デルタA/D変換器の場合、電力見積りが1ビット変換器からの量子化雑音により支配されることを防止するために、まさに充分な低域通過濾波を行なうことが必要である。しかしながら、それが引き出されまたは決定されるかも知れないが、電力センス信号の帯域幅は、アナログ領域における部分的なチャネルのフィルタリングによっては適切には保護されていない周波数帯域を保護するのに充分に広くされるべきである。したがって、(従来のAGCループ回路を含んでいるがこれに限定されない)AGCループ技術は、A/D入力端子での全体の入射電力を、無歪限界を提供することに一致するように可能な限り高く保持することを目的として適用される。この発明の例示された種々の実施形態において、A/D入力端子での全体の入射電力は、A/D変換器の前目的な入力より低く10dBから15dBの間であり、これにより無歪限界を提供できる。この無歪限界は、AGCループを介する遅延された反応のための幾つかの許容と共に、入力信号および干渉信号のピーク対平均の比を許容するために意図されている。
【0020】
適切なデシメーションとチャネルフィルタは、所望のチャネルが最終の信号を決定するように信号を処理する。この点で、幾つかのデジタル自動レベル制御は、さらなる処理のための制限された語の大きさにおける信号の最上位非ゼロビットに適合するように用いられる。このようなデジタル自動レベル制御は、信号電力というよりもむしろ干渉電力により決定されるかも知れない利得における変化が、望まれる信号の最後の出力、すなわち、復調されるべき信号に影響を与えないことを提供する。フィードバック利得制御状態とフィードフォワードデジタル自動レベル制御状態との両方が、どんなときにも周知であり、穏やかな決定の誘導と受信機における経路損失の見積りのために必要とされるかもしれない所望信号の絶対レベルを決定するために用いることができる。
【0021】
例えば、900MHzでの強い単一トーンによる干渉の状態の下で動作する直接変換CDMA受信機用の信号連鎖解析について考える。下記の表1は、所望の信号と900MHzの単一トーンの干渉の両方のための幾つかの実例となる信号レベルを提供する。
【表1】

【0022】
表1に示された実例の筋書きにおいて、出力信号が949mVppであり、この信号は、7.5mvVの所望信号と比較して、335.4mVr.m.s.での望ましくない単一のトーンの電力により支配されていることが理解できる。明らかに、(およそ40dBの)重要なデジタル選択性が、望ましくないトーンを所望の信号より低いレベルに至らせるために必要である。この実例の筋書きにおける前提は、A/Dへの入力が1Vppで飽和して、それゆえに信号連鎖がこの実施例のまさに限界の範囲内となり、A/D変換器への出力として949mVppを予測する。しかし、干渉がたった1dB〜24dBにより増加した場合、シグマ・デルタ変換器への入力は、1Vppを超えるであろうし、不安定な状態を掴みまたは不安定になるであろうし、潜在的に所望の信号の完全な損失を招くかも知れない。
【0023】
上述した脆弱性が900kHzのオフセット周波数に限定されないことは注意を要する。アナログフィルタリングにおける省略的な転送機能の使用によって、帯域外の減衰は、図2に示された周波数と共にゆっくりと増加する。図2を参照することにより分かるように、+/−10MHzの過剰におけるオフセットは、余剰の10dBの減衰を保証するために要求される。
【0024】
30W ERPを伴う望まれない基地局の送信機を検討し、携帯受信機用の0dBi利得(すなわち、等方性放射パターンについての0dB利得)を仮定すると、−2.5dBmの望ましくない受信電力を結果することを許される最小の経路損失を計算できる。30Wは+45dBmであるので、全体の経路損失は単純に45+25=70dBである。この種の経路損失は、極めて接近した視野方向の状況に常に結び付けられ、これは以下の自由空間経路損失式により良好に近似可能である:
A=20 log10 4πd/λ
λ=3×10/800×10=0.375m、および、d=100mを代入すると、A=70.5dBを得る。
【0025】
これは、800MHzで、10MHzを超えない周波数オフセットで30W送信機により引き起こされる半径でのおよそ100mのブロッキングゾーンである。PCS周波数では、このブロッキングゾーンは、半径およそ40mである同じやり方で計算可能である。
【0026】
従来、AGC信号が所望の信号の電力から排他的に導き出されるべきであり、オフ・チャネル信号によって影響されたり捕捉されたりされるべきではないことは一般的な考え方であった。この従来の原理に合致して、AGCを駆動するために用いられるRSSI信号がベースバンドプロセッサによるデジタル・フィルタリングの後に導き出されるべきである。この原理は、図3に例示されている。
【0027】
図3を参照すれば、AGCアルゴリズムがI+Qから引き出されたオンチャネル信号電力の見積りにより駆動されていることが理解できる。典型的には、低域通過フィルタリングおよび対数機能がステップ利得増幅器302の状態を決定するために用いられる決定変数を作成するために適用される。この滑らかにされた対数の距離関数は、時々、受信信号強度表示部(RSSI―Received Signal Strength Indicator―)として引用される。
【0028】
しかし、種々の性能は、図3に示された受信機のAGCアルゴリズムにおける所望信号強度のみを用いることから生じている。より詳細には、ベースバンドプロセッサで用いられるデジタル・フィルタリングによって、AGCアルゴリズムは、A/D変換器の許容される入力レベルを超えることを表明する帯域外周波数信号を検出することができない。ひとたびユーザ(すなわち、受信機)が上述したようなブロッキングゾーンにはいったときに、この脆弱性は、突然で完全な通信の損失において、それ自身で明らかにされ易い。この受信機のAGCアルゴリズムにおける所望の信号強度鑿を用いるときに生じても良い、その他の電位の性能の結果は、より低い利得の設定を求めさせる高利得状態のときに、AGCをトリガーする歪みの生成からの帯域内エネルギーによって、このAGCの不安定な状態である。より低い利得の設定が求められるとすぐに、歪み(例えば、クリッピング)の原因が除去されて、高利得状態が再び求められる。したがって、これら2つの状態の間で発振が生じる可能性があり、これにより、この受信機を事実上、そのAGCアルゴリズムにおける所望の信号の強度を用いるだけの状態にすることができる。
【0029】
種々の性能が受信機のAGCアルゴリズムにおける所望信号の強度のみを用いることから生じることになるものと仮定すると、この発明の種々の実施形態は、強いブロッキング信号によりADCの捕獲を避けるように有利に設計されている。より詳しくは、この発明の種々の実施形態は、受信機のA/D変換器に到達する全体の信号エネルギーが、これらのA/D変換器によるアナログからデジタルへの安定した線形変換用に可能な最大入力振幅を超えないように設計されている。
【0030】
この発明の種々の実施形態は、まさに帯域内信号電力よりもむしろADCに到達する全体の信号電力が受信機内の利得を制御するために発行される方式を実施するためにAGCを用いても良いことは注目される。さらに、このような実施において、干渉波によりトリガーされたAGCが、1つまたはそれ以上の受信機の可変利得増幅器を低利得状態に設定するときに、弱い所望信号がさらに雑音を低くさせる可能性があることも注目される。しかし、A/D入力を許容することと過負荷との間で選択がなされて、これによりあるいは完全に通信を遮断することができ、弱い信号をさらに雑音を低減させることにより信号の品質を低下させることになり、後者の方が好ましい。
【0031】
大きな信号の過負荷を避けるためにデジタルAGCを用いることを含むこの発明の種々の実施形態に関して、AGCアルゴリズムはA/D変換器で出射される信号電力の広帯域見積りへのアクセスを有する。これを提供する1つの方法は、デジタルチャネルフィルタに先行して信号電力を受け取ること、および、補助的なエネルギー見積りを作成するためにそれを用いることである。図4は、この発明の1つの実施形態において、広帯域の電力見積りを実現するために用いられる、追加的な信号経路402a、402bおよび402cを示す。
【0032】
図4の実証となる構成において、AGC機構の従来の部分は、時間の大部分の間用いられる。すなわち、(典型的には完全にフィルタされた信号である)所望信号は、AGC制御された増幅器が高利得対低利得の状態にあるべきであることに関する決定のための基礎となる受信信号強度を駆動している。しかしながら、この発明によれば、広帯域信号経路からのエネルギーが(定型的には最大耐用信号強度に近い)所定のしきい値を超えたときに、このAGCアルゴリズムは、結果的に利得を低減させるAGC制御された増幅器を指揮する。
【0033】
図5は、この発明によるAGCアルゴリズムの実証的な例が示されたC言語符号フラグメントを示している。図5に提供されたC言語のセグメントは、広帯域信号電力見積りが所定のしきい値を超えた場合に、第1のAGC増幅器の利得の設定が、狭帯域信号電力見積りとは関係なく、低利得モードに設定されることを示している。
【0034】
図5に示された実証的な例の目的のために、獲得_広帯域_RSSI_測定()は、デジタルチャネルフィルタリングを用いないで測定されたdBm(ここで、dBmは1mWに比例する電力の測定である)における受信機の入力レベルに数値的に等価な広帯域RSSI測定に復帰する関数であり、獲得_狭帯域_RSSI_測定()は、デジタルチャネルフィルタリングを用いながら引き出された等価な関数である。これらの関数の両方が、受信機連鎖の全体の入力へと戻る信号レベルを参照するためにAGC制御された増幅器の状態を考慮している。
【0035】
この発明によるAGCプロセスの論理が、ハードウェア、ソフトウェア(またはファームウェア)、またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより、実現されても良いことは注目される。このようなソフトウェアは、従来のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、または、前記ソフトウェアを実行するため、またはそうでなければ処理するために適した、慣習的に設計されたハードウェアにより、実行されても良い。
【0036】
図6を参照すると、電力見積り用に用いられる広帯域信号へのアクセスを示すシグマ・デルタA/D変換器構成の一部分が示されている。このようなシグマ・デルタA/D変換器構成は、削減およびフィルタリングプロセス連鎖における中間点から信号を取り出すことにより広帯域電力を見積もるための機会を提供する。より詳細には、図6は、この発明の実施形態に用いるのに適した典型的なデシメーション[decimation―削減・破壊・解雇―]およびフィルタリング[filtering―濾波―]構成の1つのチャネルを示している。各削減濾波ステージは、信号の分解能を増加させている間に帯域幅を低減させる。シグマ・デルタA/D変換器内の雑音の形成によって、削減および濾波の幾つかのステージが高周波数量子化雑音の衝撃を低減させるために必要とされる。したがって、電力予測のために、削減連鎖における個別の点を選択するのに一般的に妥協がなされる。この交換は、帯域外周波数の干渉のために充分な帯域幅を保証している間に、量子化雑音による過度の優勢を避けることを目的としている。
【0037】
上述した種々の実証的な実施形態において、2つのタイプの電力見積り、すなわち、広帯域および帯域内電力見積りがAGCアルゴリズムにおいて用いられている。この発明の代替的な実施形態において、実施の複雑さは、広帯域電力見積りを用いることのみによって低減される。このような実施形態において、AGCは、ADC入力の過負荷を防止することが必要なときにのみ動作する。これは、これらのトーンが受信機内の1つまたはそれ以上のアナログ−デジタル変換器を保護するための受信機利得における“緊急”低減をトリガーするのに充分に強い場合を除いて、混変調トーンに対する受信機の粗雑さを実現するために用いられるべきAGCを許容しない。この代替的な実施形態が(そのAGCプロセスのための広帯域電力見積りを用いているのみであるから)より少ない複雑な実施を提供しているとはいっても、この実施形態はAGCの充分に早い動作を一般的には許さないので、混変調減少から受信機を保護することができる。
【0038】
この明細書により提供された種々の実証的な説明において、デジタル信号処理部を含み、デジタル選択可能性における確かな限度を基にする受信機が、所望の周波数から900KHzないし10MHzの間のオフセットでの単一のトーンの干渉に対して脆弱であるかもしれない。帯域内周波数の信号電力によってのみ駆動される従来のAGC方式は、たとえ望まない信号が通信を遮断する兆候を示した場合でも、このような希望しない信号に反応を示さなくても良い。この発明によるAGC構成の改善は、受信機をブロックするには脆弱なレベルに信号が到達するときにこのような信号を検出し、これに応答して、その偶然性に対する保護のために受信機の利得を低減させるメカニズムを提供する。1つの実証的な実施形態において、信号は、削減および濾波の連鎖の中の適切な点で、その信号が広帯域周波数電力の情報へと戻るように取り込まれる。
【0039】
種々の変形例や代替例は、例示の目的のためであるがこれに限定されず、受信信号経路における異なる可変利得増幅器のために異なるヒステリシス値を与えることを含み、あるいは何れかの適切な要素に基づいて種々の広帯域周波数しきい値、狭帯域周波数しきい値および/またはヒステリシス値を動的に割り当てるこの発明の範囲内で実施されても良い。
【0040】
この発明が上述された実施形態に限定されないが、追加された請求項の範囲内の何れかまたは全ての実施形態を包含することは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】アナログ部およびデジタル部の両方を有すると共にデジタル選択を用いる無線受信機の概略ブロック図である。
【図2】広帯域感受性を示すアナログ転送機能の周波数対振幅特性図である。
【図3】アナログ部およびデジタル部の両方を有すると共にデジタル選択を用いる無線受信機、および、チャネル上(すなわち帯域内)信号エネルギーからのみ引き出される自動利得制御を特に詳細に説明する概略ブロック図である。
【図4】この発明による広帯域電力見積りを達成するために用いられる追加の信号経路を示す無線受信機のデジタル部の概略ブロック図である。
【図5】この発明によるAGCアルゴリズムを示すC言語セグメントの説明図である。
【図6】デシメーション(10分の1に減らす/削減)およびフィルタリング(濾波)スキームの1つのチャネルであって、この発明による電力見積りのために用いられる広帯域信号へのアクセスを示す高レベル概略ブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A/D変換器に結合されたアナログ部と、デジタル信号処理部に結合された前記A/D変換器とを有する無線受信機を制御する方法であって、前記A/D変換器に達する全体の信号電力が最大許容入力振幅を超えるのを防止することを備える方法。
【請求項2】
前記A/D変換器に達する全体の信号電力が最大許容入力振幅を超えるのを防止することは、所定の第1しきい値よりも大きい広帯域信号電力を検出すること、および、これに応答して、前記A/D変換器の入力端子に結合された少なくとも1つの増幅器の利得を低減させること、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記A/D変換器は、シグマ・デルタA/D変換器である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
所定の第2しきい値よりも大きい帯域内信号電力を検出すること、および、これに応答して、前記A/D変換器の入力端子に結合された少なくとも1つの増幅器の利得を低減させること、を備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記無線受信機は第1可変利得増幅器を備え、前記方法はさらに、広帯域信号電力が第1しきい値よりも大きい場合、前記第1可変利得増幅器を低利得状態にすることを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記無線受信機は第1可変利得増幅器を備え、前記方法はさらに、広帯域信号電力が第1しきい値よりも小さいことを検出すること、および、狭帯域信号電力が第2しきい値よりも大きい場合、前記第1可変利得増幅器を低利得状態にすること、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1可変利得増幅器は、狭帯域信号電力が少なくとも第1ヒステリシス値により前記第2しきい値よりも大きい場合、低利得状態に置かれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1可変利得増幅器は、狭帯域信号電力が少なくとも第2ヒステリシス値により前記第2しきい値よりも小さい場合、高利得状態に置かれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1ヒステリシス値および前記第2ヒステリシス値は、同じである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
デジタルチャネル選択回路を有する無線受信機内のシグマ・デルタA/D変換器の飽和を防止する方法であって:広帯域電力見積りと狭帯域電力見積りとを獲得すること、前記広帯域電力見積りが第1所定値よりも大きい場合に複数の増幅器のうちの第1の増幅器の増幅器利得を低減させること、および、前記広帯域電力見積りが前記第1所定値よりも大きくない場合であって前記狭帯域電力見積りが第2所定値よりも大きい場合に前記複数の増幅器のうちの少なくとも1つの増幅器の利得を低減させること、を備える方法。
【請求項11】
前記第1所定値は、帯域外周波数信号電力によってADC飽和の発生を低減させるために選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複数の直列結合された可変利得増幅器を含むアナログダウンコンバージョン(周波数逓降変換)部と、少なくとも部分的には、周波数選択機能を実行するデジタル部とを有する無線受信機を制御する方法であって、
a) 複数の可変利得増幅器のそれぞれを高利得状態に設定する、
b) 広帯域信号電力見積りを獲得する、
c) 狭帯域信号電力見積りを獲得する、
d) 広帯域信号電力見積りが広帯域しきい値よりも大きい場合を決定する、
e) (d)における決定が肯定的な場合に、前記複数の可変利得増幅器のうちの第1の増幅器を低利得状態に設定する、
f) (d)における決定が否定的な場合に、前記狭帯域信号電力見積りが狭帯域しきい値よりも大きい場合を決定する、
g) 前記狭帯域信号電力見積りが前記狭帯域しきい値にヒステリシス値をプラスした値よりも大きい場合に、前記複数の可変利得増幅器のうちの前記第1の増幅器を低利得状態に設定する、
を備える方法。
【請求項13】
前記広帯域しきい値に、動的に値を割り当てることをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記狭帯域しきい値に、動的に値を割り当てることをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
直列に結合された複数の可変利得増幅器を含むアナログダウンコンバータと、前記複数の可変利得増幅器のうちの1つに接続されたアナログ−デジタル変換器と、選択回路、および広帯域信号電力見積りと狭帯域信号電力見積りを受信するように構成された自動利得制御回路、を含むデジタルベースバンドプロセッサと、を備える無線受信機。
【請求項16】
前記複数の可変利得増幅器は、前記自動利得制御回路に結合される、請求項15に記載の無線受信機。
【請求項17】
前記アナログ−デジタル変換器は、シグマ・デルタアナログ−デジタル変換器である、請求項16に記載の無線受信機。
【請求項18】
前記自動利得制御回路はさらに、広帯域電力しきい値および少なくとも1つの強帯域しきい値を受信するように構成される、請求項15に記載の無線受信機。
【請求項19】
前記自動利得制御回路はさらに、少なくとも1つのヒステリシス値を受信するように構成される、請求項18に記載の無線受信機。
【請求項20】
前記選択回路は、デジタルフィルタを備える、請求項16に記載の無線受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−506885(P2006−506885A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552998(P2004−552998)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005133
【国際公開番号】WO2004/047323
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】