説明

振動アクチュエータ、レンズユニット、及び撮像装置

【課題】振動アクチュエータの組立性を向上させる。
【解決手段】振動アクチュエータ100は、ロータ160、ステータ120、及び電気機械変換部130に挿通され、ベース部150と螺合しており、ベース部150と共にステータ120及び電気機械変換部130を締付ける締付部116と、ステータ120からロータ160の側へ延びる外延部112とが設けられた軸部材110と、外延部112が挿通されると共にステータ120に接するように配され、外延部112と螺合し、ステータ120から振動を付与される振動体210とを備え、軸部材110とベース部150との螺合部と、外延部112と振動体210との螺合部とが互いに逆ネジの関係にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、当該振動アクチュエータを備えるレンズユニット、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型の圧電素子によりステータに発生される振動によりロータを回転させる超音波モータとして、ロータを回転自在に支持すると共にステータ及び圧電素子を締め付ける軸部材に、筒状の弾性体を固定したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この弾性体には、圧電素子からステータを介して振動が付与される。このため、振動子がステータと弾性体とにより構成され、振動子の重量が増加することから、ロータを回転させる駆動周波数が低下される。
【特許文献1】特開2005−287246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記超音波モータでは、筒状の弾性体を軸部材と一体で形成することは困難であることから、これらを別部品として形成して接着、螺合等させることにより一体化させている。ここで、弾性体と軸部材とを接着する場合には、接着剤が固化するのを待ってからでなければ、また、弾性体と軸部材とを螺合させる場合には、これらを完全に締付した後でなければ、軸部材とステータ等との組付作業を実施できないことから、組立作業に時間を要して組立作業の効率が悪いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態において、振動アクチュエータは、回転自在なロータと、前記ロータの回転軸方向に、前記ロータに接して配されたステータと、前記ロータの回転軸方向について前記ロータとの間で前記ステータを挟む位置に配され、前記ステータに対して前記ロータの回転軸周りに遷移する振動を付与する電気機械変換部と、前記ロータの回転軸方向について前記ステータとの間で前記電気機械変換部を挟む位置に配された狭持部材と、前記ロータ、前記ステータ、及び前記電気機械変換部に挿通され、前記狭持部材と螺合しており、前記狭持部材と共に前記ステータ及び前記電気機械変換部を締付ける締付部と、前記ステータから前記ロータの側へ延びる外延部とが設けられた軸部材と、前記ロータの内周側において前記外延部が挿通されると共に前記ステータに接するように配され、前記外延部と螺合し、前記ステータから振動を付与される振動体と、を備え、前記軸部材及び前記狭持部材の相互の螺合方向と、前記外延部及び前記振動体の相互の螺合方向とが、互いに逆方向であることを特徴とする。
【0005】
また、本発明の第2の形態において、レンズユニットは、振動アクチュエータと、前記振動アクチュエータにより移動される光学部材と、前記振動アクチュエータと前記光学部材とを収容するレンズ鏡筒とを備え、前記振動アクチュエータは、回転自在なロータと、前記ロータの回転軸方向に、前記ロータに接して配されたステータと、前記ロータの回転軸方向について前記ロータとの間で前記ステータを挟む位置に配され、前記ステータに対して前記ロータの回転軸周りに遷移する振動を付与する電気機械変換部と、前記ロータの回転軸方向について前記ステータとの間で前記電気機械変換部を挟む位置に配された狭持部材と、前記ロータ、前記ステータ、及び前記電気機械変換部に挿通され、前記狭持部材と螺合しており、前記狭持部材と共に前記ステータ及び前記電気機械変換部を締付ける締付部と、前記ステータから前記ロータの側へ延びる外延部とが設けられた軸部材と、前記ロータの内周側において前記外延部が挿通されると共に前記ステータに接するように配され、前記外延部と螺合し、前記ステータから振動を付与される振動体と、を備え、前記軸部材及び前記狭持部材の相互の螺合方向と、前記外延部及び前記振動体の相互の螺合方向とが、互いに逆方向であることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の第3の形態において、撮像装置は、振動アクチュエータと、前記振動アクチュエータにより移動される光学部材と、前記光学部材によって結像された画像を撮像する撮像部とを備え、前記振動アクチュエータは、回転自在なロータと、前記ロータの回転軸方向に、前記ロータに接して配されたステータと、前記ロータの回転軸方向について前記ロータとの間で前記ステータを挟む位置に配され、前記ステータに対して前記ロータの回転軸周りに遷移する振動を付与する電気機械変換部と、前記ロータの回転軸方向について前記ステータとの間で前記電気機械変換部を挟む位置に配された狭持部材と、前記ロータ、前記ステータ、及び前記電気機械変換部に挿通され、前記狭持部材と螺合しており、前記狭持部材と共に前記ステータ及び前記電気機械変換部を締付ける締付部と、前記ステータから前記ロータの側へ延びる外延部とが設けられた軸部材と、前記ロータの内周側において前記外延部が挿通されると共に前記ステータに接するように配され、前記外延部と螺合し、前記ステータから振動を付与される振動体と、を備え、前記軸部材及び前記狭持部材の相互の螺合方向と、前記外延部及び前記振動体の相互の螺合方向とが、互いに逆方向であることを特徴とする。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1には、一実施形態に係る振動アクチュエータ100を斜視図にて示している。なお、軸部材110の軸方向における駆動出力側を出力側、その反対側を非出力側として説明する。また、軸部材110の軸方向から振動アクチュエータ100を見た場合を平面視、軸部材110の径方向から振動アクチュエータ100を見た場合を側面視として説明する。
【0010】
この図に示すように、振動アクチュエータ100は、ロータ160と、ステータ120と、電気機械変換部130と、狭持部材としてのベース部150と、軸部材110とを備えている。ロータ160、ステータ120、電気機械変換部130、及びベース部150は、出力側から記載順で配されており、これらには、軸部材110が挿通されている。
【0011】
また、電気機械変換部130とベース部150との間には、配線板140が配され、ロータ160の出力側には、歯車180、トッププレート190、及びナット220が配されている。また、ベース部150の外周部には、保持部154が形成されている。この保持部154は、ロータ160の回転軸を中心として回転対称に配された4個の平面により構成されている。
【0012】
図2には、振動アクチュエータ100を側断面図にて示している。この図に示すように、軸部材110は、円柱状に形成されており、軸方向における非出力側にはネジ部117が形成され、出力側にはネジ部118が形成されている。
【0013】
ロータ160は、平面視にて円状の円筒状に形成されており、ロータ160の回転軸は、軸部材110の軸方向に沿って延びている。ロータ160の内周部166と軸部材110との間には空間が形成されており、この空間には、付勢部材170と振動体210とが配されている。
【0014】
振動体210は、円筒状の金属製弾性体であって、軸部材110が挿通されている。振動体210の内周部212における非出力側、即ちステータ120側の端部には、ネジ部214が形成されている。一方、軸部材110には、ネジ部214と螺合するネジ部114が形成されている。よって、振動体210におけるステータ120側の端部と、軸部材110とが固定されている。
【0015】
ネジ部114は、軸部材110におけるステータ120から出力側、即ちロータ160側へ延びる外延部112の基端部、即ちステータ120側の端部に形成されており、振動体210のステータ120側の端部と、外延部112のステータ120側の端部とが固定されている。また、振動体210における非出力側、即ちステータ120側の端部は、ステータ120に当接されている。一方で、振動体210における出力側、即ちステータ120の反対側の端部は、軸部材110に対して非固定、且つ歯車180と非接触であることから自由端部となっている。
【0016】
振動体210の内周部212には、非出力側の内径が出力側の内径より小さい段差部218が形成されている。この段差部218は、ネジ部114の出力側端部の近傍に配されている。また、外延部112には、外周側へ張り出した円環状のフランジ部である締付部116が形成されている。この締付部116は、段差部218に当接して配されている。
【0017】
また、振動体210の外周部におけるステータ120側の端部には、工具嵌合部216が形成されている。この工具嵌合部216は、振動体210の軸心を中心として回転対称な位置に配された4個の平面で構成されており、四角レンチ等の締付工具と嵌合させることができる。このため、締結工具で振動体210を回転させてネジ部214とネジ部114とを螺合させることにより、振動体210と軸部材110とを組み付けることができる。
【0018】
また、ロータ160の内周部166における非出力側の端部には、内径側へ張り出したフランジ部168が形成されており、このフランジ部168には、付勢部材170の非出力側の端部が当接している。付勢部材170は、圧縮コイルバネであって、内部に軸部材110及び振動体210が挿通されており、軸部材110の軸方向に弾性収縮する。
【0019】
ステータ120は、平面視にて円状の所謂ディスク状の金属製弾性体となっている。また、電気機械変換部130は、平面視にて円状に形成され、軸部材110の軸方向についてロータ160との間でステータ120を挟む位置に配されている。
【0020】
配線板140は、円盤状に形成された円盤部142と、円盤部142から外径側へ延出する外延部144とを備えている。また、ベース部150は、軸部材110の軸方向についてステータ120との間で電気機械変換部130、及び円盤部142を挟む位置に配されている。
【0021】
ステータ120、電気機械変換部130、円盤部142及びベース部150の中心には軸部材110が挿通されている。ここで、ベース部150の中心には、ネジ孔152が形成され、軸部材110の外延部112に形成された締付部116は、振動体210の内周部212に形成された段差部218に当接している。このため、振動体210がステータ120に当接した状態で、軸部材110のネジ部117とベース部150のネジ孔152とが螺合することによって、ステータ120、電気機械変換部130、及び円盤部142が、締付部116及び振動体210とベース部150とにより締め付けられている。
【0022】
なお、上述したように、ベース部150の外周部には保持部154が形成されており、ベース部150をクランプ等の保持具により保持することができる。また、振動体210のステータ120側の端部には、工具嵌合部216が形成されており、四角レンチ等の締結工具と嵌合させることができる。このため、ベース部150を保持具で保持した状態で、締付工具で振動体210を軸部材110と共に時計回り方向に回転させることにより、ステータ120、電気機械変換部130、及び円盤部142が、締付部116及び振動体210とベース部150とによって締め付けられる。
【0023】
ここで、ネジ部117、ネジ孔152は、軸部材110を時計回り方向へ回転させた場合に、ネジ部117がネジ孔152に対して相対的に非出力側へ進行する順ネジとなっている。これに対して、ネジ部114、214は、軸部材110を時計回り方向へ回転させた場合に、ネジ部114がネジ部214に対して相対的に出力側へ進行する逆ネジとなっている。このため、ネジ部117とネジ孔152、ネジ部114とネジ部214を螺合させた状態で、振動体210を締結工具で保持してベース部150に対して相対的に時計回り方向へ回転させると、ネジ部117がネジ孔152に対して相対的に非出力側へ進行した後、ネジ部114がネジ部214に対して相対的に出力側へ進行する。これにより、ネジ部117とネジ孔152が締まり合うと共に、ネジ部114とネジ部214も締まり合う。
【0024】
ロータ160の出力側の面には、軸部材110の軸心を中心とする円状のリブ164が形成されている。また、歯車180の非出力側の面には、リブ164と嵌合する円状の凹部182が形成されている。また、トッププレート190の中心には、非出力側へ突出した円柱状のボス192が形成され、歯車180の出力側の面には、ボス192が相対回転自在に嵌合する円状の凹部184が形成されている。また、ナット220が軸部材110のネジ部118と螺合している。
【0025】
ここで、付勢部材170の出力側の端部は、歯車180に当接している。また、上述したように、付勢部材170の非出力側の端部は、ロータ160のフランジ部168に当接しており、付勢部材170は、弾性収縮されている。このため、ロータ160はステータ120側へ付勢され、歯車180及びトッププレート190はナット220側へ付勢されている。
【0026】
ロータ160の非出力側の面、即ちステータ120と対向する面には、円環状のリブ162が形成されており、この円環状のリブ162が、付勢部材170の付勢力によりステータ120に圧接されている。また、歯車180がトッププレート190に、トッププレート190がナット220にそれぞれ、付勢部材170の付勢力により圧接されている。
【0027】
図3は、電気機械変換部130を分解斜視図にて示している。この図に示すように、電気機械変換部130は、軸部材110の軸方向に積層された複数の電気機械変換素子層138を備えている。電気機械変換素子層138の各々は、圧電材料板136と、圧電材料板136の表面に形成された複数の電極131、132、133、134とを備えている。
【0028】
電極131、132、133、134は、略セクタ状の同形状とされており、軸部材110を中心として回転対称に配されている。また、同符号が付された電極の全体同士が軸方向に重なり合うように、電気機械変換素子層138が積層されており、各電極は、電気機械変換部130の側面に形成された導線により、配線板140の電極に導通される。また、圧電材料板136の電極形成面の裏側にはグランド電極が形成されており、各層のグランド電極は、電気機械変換部130の側面に形成された導線により、配線板140のグランド電極に導通される。
【0029】
圧電材料板136は、駆動電圧を印加された場合に伸張する圧電材料を含んでいる。具体的には、チタン酸チタン酸ジルコン酸鉛、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の圧電材料を含んでいる。なお、多くの圧電材料は脆いので、りん青銅等の高弾性金属材料で補強することが好ましい。また、上記電極は、ニッケル、金等の電極材料を用いて、鍍金、スパッタ、蒸着、厚膜印刷等の方法で、圧電材料の表面に直接に形成すればよい。
【0030】
図4には、電極131、132、133、134と工具嵌合部216を構成する4個の平面との位置関係を平面図にて示している。この図に示すように、電極の分割数と工具嵌合部216を構成する複数の平面の数とは同数であり、また、電極131、132、133、134と、工具嵌合部216を構成する四平面は、共に軸部材110を中心として回転対称な位置に配されている。即ち、工具嵌合部216を構成する各平面と各電極とが、相対位置が一定となるように配されている。
【0031】
次に、本実施形態における作用について説明する。図5A〜図5Dは、ステータ120及び電気機械変換部130の動作を誇張して斜視図にて示している。図5A、図5B、図5Cおよび図5Dの相互の間に記入された矢印は、ステータ120及び電気機械変換部130の状態が遷移することを示すと共に、状態の遷移が循環してステータ120及び電気機械変換部130が周期的に動作することを示す。
【0032】
電極131、132、133、134のいずれかに対して駆動電圧が印加された場合、電気機械変換部130の軸方向の長さは、駆動電圧が印加された電極131、132、133、134に対応する部位で増加する。一方、駆動電圧が印加されていない電極131、132、133、134に対応する部位では、電気機械変換部130の軸方向の長さは変化しない。ステータ120は、電気機械変換部130の軸方向の長さが増加した部位において持ち上げられる。これにより、ステータ120は傾斜する。
【0033】
電極131、132、133、134に対して順次駆動電圧が印加されると、電極131、132、133、134に対応する部位で、電気機械変換部130の軸方向の長さが順次増加する。例えば、電極131、132、133、134に対して、π/4ずつ位相が異なる交流電圧が印加される。これにより、ステータ120の傾斜方向が、軸心周りの一方向へと遷移していくと共に、当該方向へ遷移する振動が発生する。ステータ120には、共振周波数の振動を発生させる。
【0034】
ロータ160は、付勢部材170に付勢されて、ステータ120に対して定常的に当接している。このため、ロータ160は、傾斜方向を周回させつつ揺動するステータ120から摩擦駆動力及び軸周りに遷移する共振を受けて回転する。また、ロータ160のリブ164と歯車180の凹部182とは、付勢部材170の付勢力により圧接されており、ロータ160と歯車180とは、リブ164と凹部184との間に生じる摩擦力により一体で回転する。これにより、モータ駆動力が出力される。
【0035】
ここで、ステータ120に当接した振動体210は、電気機械変換部130からステータ120を介して振動を付与される。これにより、振動子がステータ120と振動体210とで構成されることから、振動子の重量が増加するので、ステータ120の共振周波数を低く設定できる。即ち、振動体210が、ステータ120の共振周波数を調整する周波数調整部材として機能することから、ステータ120の共振周波数を適当に設定でき、以って、電気機械変換部130の駆動周波数を適当に設定できる。
【0036】
また、振動体210は、ステータ120に当接した軸方向の端部において軸部材110と螺合されており、また、軸方向の反対側の端部は自由端部となっている。このため、振動体210の剛性をより低く設定でき、ステータ120の振動周波数を低下させる効果を増大できる。また、振動体210の軸方向長さが、外径より長いことによっても、ステータ120の振動周波数を低下させる効果が増加される。
【0037】
また、振動体210の外周部に形成された工具嵌合部216を構成する四面が、軸心を中心として回転対称に配されていることから、振動体210における周方向の位置による振動周波数のバラツキを抑制できる。よって、ステータ120の振動周波数を安定化させることができる。また、工具嵌合部216を構成する複数の平面と、電気機械変換部130の電極の分割数とを同一にしたことにより、各平面と電極とが相対位置が一定となっていることから、振動体210における周方向の位置による振動周波数のバラツキをより一層抑制でき、ステータ120の振動周波数をより一層安定化させることができる。
【0038】
次に、振動アクチュエータ100の組立方法について説明する。図6には、振動アクチュエータ100の組立工程における一工程を側断面図(図7の6−6断面図)にて示している。この図に示すように、当該工程では、まず、軸部材110の外延部112を振動体210に挿通してネジ部114とネジ部214とを螺合させる。ここでは、外延部112と振動体210とが完全に締結されていなくてもよい。
【0039】
次に、図7、図8に示すように、軸部材110とステータ120、電気機械変換部130、配線板140、及びベース部150との組付を実施する。これらを組付する工程においては、ベース部150の外周部に形成された複数の平面から構成される保持部154をクランプ等の保持具で保持する。
【0040】
そして、軸部材110の非出力側をステータ120、電気機械変換部130、配線板140、ベース部150の中心の孔に挿通して軸部材110を回転させる。軸部材110は、ネジ部117をベース部150のネジ孔152に合わせ、レンチ等の締付工具を工具嵌合部216に嵌合させて当該締付工具を回転させることにより回転させる。これにより、締付部116及び振動体210とベース部150とにより、ステータ120、電気機械変換部130、及び配線板140が締め付けられる。
【0041】
ここで、図9に示すように、振動体210をベース部150等に対して相対的に時計回り方向に回転させることにより、順ネジのネジ部117がネジ孔152に対して相対的に非出力側へ進行する。そして、振動体210がステータ120に当接すると、ネジ部117に対して逆ネジの関係にあるネジ部114はネジ部214に対して相対的に出力側へ進行することから、段差部218が締付部116に当接する。これにより、締付部116及び振動体210とベース部150とによるステータ120等の時計回り方向の締付力(実線矢印で図示)が強まると共に、振動体210と外延部112との反時計回り方向の締付力(破線矢印で図示)が強まる。
【0042】
即ち、振動体210と軸部材110との締結が完全ではない状態で、軸部材110とステータ120等との組付を実施することにより、軸部材110及び振動体210とベース部150とによりステータ120等を締め付けると共に、振動体210と軸部材110とを完全に締結させることができる。従って、振動体210と軸部材110との締結作業に要する時間を減少でき、以って、振動アクチュエータ100の組立作業の効率を向上できる。
【0043】
なお、本実施形態では、軸部材110とベース部150との螺合部を順ネジとして、外延部112と振動体210との螺合部を逆ネジとしたので、他機種のベース部150をそのまま本実施形態における振動アクチュエータ100で使用する等、汎用性を高めることができる。しかしながら、これは必須ではなく、軸部材110とベース部150との螺合部を逆ネジとして、外延部112と振動体210との螺合部を順ネジとしてもよい。
【0044】
図10には、振動アクチュエータ100を備える撮像装置700の概略構成を側断面図にて示している。なお、上記実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0045】
この図に示すように、撮像装置700は、光学部材420と、レンズ鏡筒430と、振動アクチュエータ100と、撮像部500と、制御部550と、を備える。レンズ鏡筒430は光学部材420を収容する。
【0046】
振動アクチュエータ100は、光学部材420を移動させる。撮像部500は、光学部材420によって結像された画像を撮像する。制御部550は、振動アクチュエータ100および撮像部500を制御する。
【0047】
また、撮像装置700は、光学部材420、レンズ鏡筒430、及び振動アクチュエータ100を備えるレンズユニット410と、ボディ460を含む。レンズユニット410は、マウント450を介して、ボディ460に対して着脱自在に装着される。
【0048】
光学部材420は、図中で左側にあたる入射端から順次配列された、フロントレンズ422、コンペンセータレンズ424、フォーカシングレンズ426およびメインレンズ428を含む。フォーカシングレンズ426およびメインレンズ428の間には、アイリスユニット440が配置される。
【0049】
振動アクチュエータ100は、光軸方向についてレンズ鏡筒430の中程にあって相対的に小径なフォーカシングレンズ426の下方に配置される。これにより、レンズ鏡筒430の径を拡大することなく、振動アクチュエータ100はレンズ鏡筒430内に収容される。振動アクチュエータ100は、例えばギア列を介してフォーカシングレンズ426を光軸方向に前進または後退させる。
【0050】
ボディ460は、メインミラー540、ペンタプリズム470、接眼系490を含む光学部材を収容する。メインミラー540は、レンズユニット410を介して入射した入射光の光路上に傾斜して配置される待機位置と、入射光を避けて上昇する撮影位置(図中に点線で示す)との間を移動する。
【0051】
待機位置にあるメインミラー540は、入射光の大半を、上方に配置されたペンタプリズム470に導く。ペンタプリズム470は、入射光の鏡映を接眼系490に向かって出射するので、フォーカシングスクリーンの映像を接眼系490から正像として見ることができる。入射光の残りは、ペンタプリズム470により測光ユニット480に導かれる。測光ユニット480は、入射光の強度およびその分布等を測定する。
【0052】
なお、ペンタプリズム470および接眼系490の間には、ファインダ液晶494に形成された表示画像を、フォーカシングスクリーンの映像に重ねるハーフミラー492が配置される。表示画像は、ペンタプリズム470から投影された画像に重ねて表示される。
【0053】
また、メインミラー540は、入射光の入射面に対する裏面にサブミラー542を有する。サブミラー542は、メインミラー540を透過した入射光の一部を、下方に配置された測距ユニット530に導く。これにより、メインミラー540が待機位置にある場合は、測距ユニット530が被写体までの距離を測定する。なお、メインミラー540が撮影位置に移動した場合は、サブミラー542も入射光の光路から退避する。
【0054】
更に、入射光に対してメインミラー540の後方には、シャッタ520、光学フィルタ510および撮像部500が順次配置される。シャッタ520が開放される場合、その直前にメインミラー540が撮影位置に移動するので、入射光は直進して撮像部500に入射される。これにより、入射光の形成する画像が電気信号に変換される。これにより、撮像部500は、レンズユニット410によって結像された画像を撮像する。
【0055】
撮像装置700において、レンズユニット410とボディ460とは電気的にも結合されている。従って、例えば、ボディ460側の測距ユニット530が検出した被写体までの距離の情報に応じて振動アクチュエータ100の回転を制御することにより、オートフォーカス機構を形成できる。また、測距ユニット530が振動アクチュエータ100の動作量を参照することにより、フォーカスエイド機構を形成することもできる。振動アクチュエータ100および撮像部500は、制御部550により上記の通り制御される。
【0056】
なお、振動アクチュエータ100によりフォーカシングレンズ426を移動させる場合について例示したが、アイリスユニット440の開閉、ズームレンズのバリエータレンズの移動等を振動アクチュエータ100で駆動できることはいうまでもない。この場合も、電気信号を介して測光ユニット480、ファインダ液晶494等と情報を参照し合うことにより、振動アクチュエータ100は、露出の自動化、シーンモードの実行、ブラケット撮影の実行等に寄与する。
【0057】
以上のように、振動アクチュエータ100は、撮影機、双眼鏡等の光学系において、合焦機構、ズーム機構、手振れ補正機構等の駆動に好適に使用できる。さらに、精密ステージ、より具体的には電子ビーム描画装置、検査装置用各種ステージ、バイオテクノロジ用セルインジェクタの移動機構、核磁気共鳴装置の移動ベッド等の動力源に使用されうるが、用途がこれらに限られないことはいうまでもない。
【0058】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】一実施形態に係る振動アクチュエータ100を示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る振動アクチュエータ100を示す側断面図である。
【図3】電気機械変換部130を示す分解斜視図である。
【図4】ステータ120及び振動体210を示す平面図である。
【図5A】ステータ120及び電気機械変換部130の動作を説明する斜視図である。
【図5B】ステータ120及び電気機械変換部130の動作を説明する斜視図である。
【図5C】ステータ120及び電気機械変換部130の動作を説明する斜視図である。
【図5D】ステータ120及び電気機械変換部130の動作を説明する斜視図である。
【図6】一実施形態に係る振動アクチュエータ100の組立方法を説明する図7の6−6断面図である。
【図7】一実施形態に係る振動アクチュエータ100の組立方法を説明する平面図である。
【図8】一実施形態に係る振動アクチュエータ100の組立方法を説明する図7の8−8断面図である。
【図9】一実施形態に係る振動アクチュエータ100の組立方法を説明する拡大側断面図である。
【図10】撮像装置700の概略構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0060】
100 振動アクチュエータ、110 軸部材、112 外延部、114 ネジ部、116 締付部、117 ネジ部、118 ネジ部、120 ステータ、130 電気機械変換部、131 電極、132 電極、133 電極、134 電極、136 圧電材料板、138 電気機械変換素子層、140 配線板、142 円盤部、144 外延部、150 ベース部、152 ネジ孔、154 保持部、160 ロータ、162 リブ、164 リブ、166 内周部、168 フランジ部、170 付勢部材、180 歯車、182 凹部、184 凹部、190 トッププレート、192 ボス、210 振動体、212 内周部、214 ネジ部、216 工具嵌合部、218 段差部、220 ナット、410 レンズユニット、420 光学部材、422 フロントレンズ、424 コンペンセータレンズ、426 フォーカシングレンズ、428 メインレンズ、430 鏡筒、440 アイリスユニット、450 マウント、460 ボディ、470 ペンタプリズム、480 測光ユニット、490 接眼系、492 ハーフミラー、494 ファインダ液晶、500 撮像部、510 光学フィルタ、520 シャッタ、530 測距ユニット、540 メインミラー、542 サブミラー、550 制御部、700 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在なロータと、
前記ロータの回転軸方向に、前記ロータに接して配されたステータと、
前記ロータの回転軸方向について前記ロータとの間で前記ステータを挟む位置に配され、前記ステータに対して前記ロータの回転軸周りに遷移する振動を付与する電気機械変換部と、
前記ロータの回転軸方向について前記ステータとの間で前記電気機械変換部を挟む位置に配された狭持部材と、
前記ロータ、前記ステータ、及び前記電気機械変換部に挿通され、前記狭持部材と螺合しており、前記狭持部材と共に前記ステータ及び前記電気機械変換部を締付ける締付部と、前記ステータから前記ロータの側へ延びる外延部とが設けられた軸部材と、
前記ロータの内周側において前記外延部が挿通されると共に前記ステータに接するように配され、前記外延部と螺合し、前記ステータから振動を付与される振動体と、
を備え、
前記軸部材及び前記狭持部材の相互の螺合方向と、前記外延部及び前記振動体の相互の螺合方向とが、互いに逆方向であることを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記軸部材と前記狭持部材との螺合部が順ネジであり、前記外延部と前記振動体との螺合部が逆ネジであることを特徴とする請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記外延部における前記ステータ側の端部と前記振動体とが螺合していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記振動体における前記ステータの反対側の端部が自由端であることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記振動体は、前記ロータの回転軸方向を長手方向としていることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記振動体の外周部に締付工具が嵌合する工具嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記工具嵌合部は、前記ロータの回転軸を中心として回転対称に配された複数の平面を有することを特徴とする請求項6に記載の振動アクチュエータ。
【請求項8】
前記工具嵌合部における前記平面の数は、前記電気機械変換部の前記ロータの回転軸の周りに分割された電極の数と同一であることを特徴とする請求項7に記載の振動アクチュエータ。
【請求項9】
振動アクチュエータと、
前記振動アクチュエータにより移動される光学部材と、
前記振動アクチュエータと前記光学部材とを収容するレンズ鏡筒と
を備え、
前記振動アクチュエータは、
回転自在なロータと、
前記ロータの回転軸方向に、前記ロータに接して配されたステータと、
前記ロータの回転軸方向について前記ロータとの間で前記ステータを挟む位置に配され、前記ステータに対して前記ロータの回転軸周りに遷移する振動を付与する電気機械変換部と、
前記ロータの回転軸方向について前記ステータとの間で前記電気機械変換部を挟む位置に配された狭持部材と、
前記ロータ、前記ステータ、及び前記電気機械変換部に挿通され、前記狭持部材と螺合しており、前記狭持部材と共に前記ステータ及び前記電気機械変換部を締付ける締付部と、前記ステータから前記ロータの側へ延びる外延部とが設けられた軸部材と、
前記ロータの内周側において前記外延部が挿通されると共に前記ステータに接するように配され、前記外延部と螺合し、前記ステータから振動を付与される振動体と、
を備え、
前記軸部材及び前記狭持部材の相互の螺合方向と、前記外延部及び前記振動体の相互の螺合方向とが、互いに逆方向であることを特徴とするレンズユニット。
【請求項10】
振動アクチュエータと、
前記振動アクチュエータにより移動される光学部材と、
前記光学部材によって結像された画像を撮像する撮像部と
を備え、
前記振動アクチュエータは、
回転自在なロータと、
前記ロータの回転軸方向に、前記ロータに接して配されたステータと、
前記ロータの回転軸方向について前記ロータとの間で前記ステータを挟む位置に配され、前記ステータに対して前記ロータの回転軸周りに遷移する振動を付与する電気機械変換部と、
前記ロータの回転軸方向について前記ステータとの間で前記電気機械変換部を挟む位置に配された狭持部材と、
前記ロータ、前記ステータ、及び前記電気機械変換部に挿通され、前記狭持部材と螺合しており、前記狭持部材と共に前記ステータ及び前記電気機械変換部を締付ける締付部と、前記ステータから前記ロータの側へ延びる外延部とが設けられた軸部材と、
前記ロータの内周側において前記外延部が挿通されると共に前記ステータに接するように配され、前記外延部と螺合し、前記ステータから振動を付与される振動体と、
を備え、
前記軸部材及び前記狭持部材の相互の螺合方向と、前記外延部及び前記振動体の相互の螺合方向とが、互いに逆方向であることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−41781(P2010−41781A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199885(P2008−199885)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】