説明

振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラ

【課題】環境温度の影響を受けにくい振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明の振動アクチュエータ10は、駆動信号により励振される電気機械変換素子13と、前記電気機械変換素子13に接合され、前記励振により振動波を生じる弾性体11と、前記弾性体11における前記電気機械変換素子13に接合された側と反対側に加圧接触され、前記振動波によって駆動されて前記弾性体11に対して相対移動する相対移動部材15と、前記電気機械変換素子13、前記弾性体11及び前記相対移動部材15の周囲を覆う断熱部材50と、を備えること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動アクチュエータは、低温になるとその性能が劣化する。低温時の性能劣化の原因の一つとして、弾性体と移動子との間における熱膨張率の差があげられる。この弾性体と移動子との間の熱膨張率の差により、振動アクチュエータにおいて回転ムラが生じたり、また異音が発生したりする。このため、従来、環境温度による弾性体の変形に合わせて、移動子も変形させることにより、弾性体と移動子との間の接触不良を防止する振動アクチュエータがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−328582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術における、環境温度に合わせて振動アクチュエータを変化させるという発想とは異なる観点より、低温時の性能劣化を防止すべく、環境温度の影響を受けにくい振動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0006】
請求項1に記載の発明は、駆動信号により励振される電気機械変換素子(13)と、前記電気機械変換素子(13)に接合され、前記励振により振動波を生じる弾性体(11)と、前記弾性体(11)における前記電気機械変換素子(13)に接合された側と反対側に加圧接触され、前記振動波によって駆動されて前記弾性体(11)に対して相対移動する相対移動部材(15)と、前記電気機械変換素子(13)、前記弾性体(11)及び前記相対移動部材(15)の周囲を覆う断熱部材(50)と、を備えること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータ(10)であって、前記断熱部材(50)には、前記電気機械変換素子(13)に接続される電気配線(14A)が外部へ延びる開口部が設けられていること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の振動アクチュエータ(10)であって、前記断熱部材(50)は、前記振動アクチュエータ(10)の前記相対移動部材(15)側を覆う第1部分(62)と、前記振動アクチュエータ(10)における前記第1部分(62)が覆う側と反対側を覆う第2部分(61)とを有し、前記開口部は、前記第1部分(62)と前記第2部分(61)とが結合されることにより連続する内側面で覆われた穴として形成されること、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の振動アクチュエータ(10)であって、前記第1部分(62)は、前記振動アクチュエータ(10)の前記電気機械変換素子(13)、前記弾性体(11)及び前記相対移動部材(15)に対して非接触の状態で、前記振動アクチュエータ(10)の前記電気機械変換素子(13)、前記弾性体(11)及び前記相対移動部材(15)の周囲を覆うこと、を特徴とする振動アクチュエータ(10)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10)を備えるレンズ鏡筒(3)である。
請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10)を備えるカメラ(1)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環境温度の影響を受けにくい振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態におけるカメラの概念的な構成図である。
【図2】駆動ユニットの斜視図である。
【図3】駆動ユニットの分解斜視図である。
【図4】第1実施形態における超音波モータ部分の断面図である。
【図5】第1実施形態における断熱カバーの外観斜視図である。
【図6】第2実施形態における超音波モータ部分の断面図である。
【図7】第2実施形態における断熱カバーの斜視図であって、(a)は上部カバーと下部カバーとを組み合わせた状態、(b)は上部カバーと下部カバーとを分解した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す図には、説明と理解を容易にするために、適宜XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。
【0010】
図1は、本実施形態におけるカメラ1の概念的な構成図である。図2は、駆動ユニット40の斜視図、図3は、駆動ユニット40の分解斜視図である。図4は、駆動ユニット40の超音波モータ10の部分の断面図である。
本実施形態におけるカメラ1は、撮像素子4を備えるカメラボディ2と、レンズ31を有するレンズ鏡筒3とを備えている。
【0011】
レンズ鏡筒3は、カメラボディ2に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒3は、交換レンズである例を示したが、これに限らず、例えば、カメラボディと一体型のレンズ鏡筒としてもよい。
レンズ鏡筒3は、レンズ31、カム筒32、駆動ユニット40等を備えている。
駆動ユニット40は、ユニット本体41に、超音波モータ10と、複数のギアによって構成されるギア列42とを備えて構成されている。本実施形態における駆動ユニット40は、カメラ1のフォーカス動作時にレンズ31を駆動するものである。超音波モータ10の回転力は、ギア列42を介してカム筒32に伝えられる。レンズ31は、カム筒32に保持されており、駆動ユニット40によって光軸OA方向(Z軸方向)に移動駆動されて焦点調節を行う。すなわち、レンズ31はフォーカスレンズである。
【0012】
カメラ1は、図1において、レンズ鏡筒3内に設けられたレンズ31を含む不図示のレンズ群によって、カメラボディ2における撮像素子4の撮像面に被写体像が結像される。そして、撮像素子21によって、結像された被写体像が電気信号に変換され、その信号をA/D変換することによって、画像データが得られる。
【0013】
つぎに、図4を参照して、駆動ユニット40における超音波モータ10について説明する。なお、超音波モータ10は断熱カバー50を備えるが、これについては後述する。
超音波モータ10は、振動子11、移動子15、出力軸18、加圧部材19等を備え、振動子11側を固定とし、移動子15を回転駆動する形態となっている。
振動子11は、弾性体12と、弾性体12に接合された圧電体13とを有する略円環形状の部材である。
【0014】
弾性体12は、共振先鋭度が大きな金属材料によって形成され、その形状は、略円環状である。この弾性体12は、櫛歯部12a、ベース部12b、フランジ部12cを有する。
櫛歯部12aは、圧電体13が接合される面とは反対側の面に、複数の溝を切って形成され、この櫛歯部12aの先端面は、移動子15に加圧接触され、移動子15を駆動する駆動面12dとなる。この駆動面には、Ni−P(ニッケル−リン)メッキ等の潤滑性の表面処理が施されている。櫛歯部12aを設ける理由は、圧電体13の伸縮により駆動面に生じる進行波の中立面をできる限り圧電体13側へ近づけ、これにより駆動面の進行波の振幅を増幅させるためである。
【0015】
ベース部12bは、弾性体12の周方向に連続した部分であり、ベース部12bの櫛歯部12aとは反対側の面(弾性体側接合面12e)に、圧電体13が接合されている。
フランジ部12cは、弾性体12の内径方向に突出した鍔状の部分である。このフランジ部12cにより、振動子11は、固定部材16に固定されている。
【0016】
圧電体13は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する電気機械変換素子である。なお、本実施形態では、圧電体13として圧電素子を用いているが、電歪素子を用いてもよい。
圧電体13は、略円環形状の部材であり、弾性体12の周方向に沿って2つの相(A相、B相)の電気信号が入力される範囲に分かれている。各相には、1/2波長毎に分極が交互となった要素が並べられており、A相とB相との間には1/4波長分間隔があくように設けてある。
圧電体13は、半田部材を用いて弾性体12と接合されている。
【0017】
フレキシブルプリント基板14は、その配線が圧電体13の各相の電極に接続されている。フレキシブルプリント基板14には、所定幅の接続部14Aを介して図示しない増幅部から駆動信号が供給されるようになっている。この駆動信号によって、圧電体13が伸縮する。
振動子11には、この圧電体13の伸縮により、弾性体12の駆動面にたとえば4波の進行波が発生する。
【0018】
移動子15は、アルミニウム等の軽金属によって形成され、弾性体12の駆動面12dに生じる進行波によって回転駆動される部材である。移動子15は、振動子11(弾性体12の駆動面12d)と接触する面の表面に、耐磨耗性向上のためのアルマイト等の表面処理が施されている。
出力軸18は、略円柱形状の部材である。出力軸18は、一方の端部がゴム部材23を介して移動子15に接しており、移動子15と一体に回転するように設けられている。
【0019】
ゴム部材23は、ゴムにより形成された略円環形状の部材である。このゴム部材23は、ゴムによる粘弾性で移動子15と出力軸18とを一体に回転可能とする機能と、移動子15からの振動を出力軸18へ伝えないように振動を吸収する機能とを有しており、ブチルゴム、シリコンゴム、プロピレンゴム等が用いられている。
【0020】
加圧部材19は、振動子11と移動子15とを加圧接触させる加圧力を発生する部材であり、出力ギア20とベアリング受け部材21との間に設けられている。本実施形態では、加圧部材19は、圧縮コイルバネを用いているが、これに限定されるものではない。
【0021】
出力ギア20は、出力軸18のDカットに嵌まるように挿入され、Eリング等のストッパ22で固定され、回転方向及び軸方向に出力軸18と一体となるように設けられている。出力ギア20は、駆動ユニット40におけるギア列42の入力ギア42A(図4には示さず。図2および図3参照)と噛合しており、出力軸18の回転とともに回転して回転力をギア列42に伝達(出力)する。
【0022】
ベアリング受け部材21は、ベアリング17の内径側に配置され、ベアリング17は、固定部材16の内径側に配置された構造となっている。
加圧部材19は、振動子11を移動子15側へ、出力軸18の軸方向に加圧しており、この加圧力によって、移動子15は、振動子11の駆動面に加圧接触し、回転駆動される。なお、加圧部材19とベアリング受け部材21との間には、加圧力調整ワッシャーを設けて、超音波モータ10の駆動に適正な加圧力が得られるようにしてもよい。
【0023】
上記のように構成された超音波モータ10は、フレキシブルプリント基板14を介して供給される駆動信号によって圧電体13が伸縮し、この圧電体13の伸縮によって弾性体12の駆動面12dに進行波が発生する。この進行波によって、移動子15が回転駆動される。移動子15の回転は、ゴム部材23を介して出力軸18に伝達され、その結果、出力軸18に固定された出力ギア20が回転する。これにより、出力ギア20が噛合した入力ギア42A(図2および図3参照)に回転力を出力する。
【0024】
(第1実施形態)
つぎに、前述した図1〜図4に加えて図5を参照し、駆動ユニット40と、本実施形態における特徴部分である超音波モータ10の断熱構造について説明する。図5は、断熱カバー50の外観斜視図である。
【0025】
図2および図3に示すように、超音波モータ10は、ユニット本体41に固定されて、ギア列42と共に駆動ユニット40を構成している。
【0026】
ユニット本体41の一方の端部には、板状のモータ装着部41Aが延設されており、このモータ装着部41Aに、超音波モータ10が固定されている。
すなわち、図4に示すように、超音波モータ10は、その固定部材16がモータ装着部41Aのギア列42(図2および図3参照)構成側とは逆側の面にモータ装着部41Aを貫通した図示しない固定ネジによって固着され、これによってモータ装着部41Aに固定されている。
超音波モータ10の出力軸18は、モータ装着部41Aを貫通してギア列42側に突出し、出力ギア20がギア列42の入力ギア42Aと噛合している。これにより、超音波モータ10の回転駆動力がギア列42に入力されるようになっている。
【0027】
ここで、超音波モータ10には、断熱カバー50が設けられている。
断熱カバー50は、図4に示すように、カバー本体51と、カバー本体51の内部に配設された断熱材52とにより構成されている。
カバー本体51は、たとえばABS樹脂等の合成樹脂素材等によって、超音波モータ10の固定部材16より振動子11側の端部を覆い得る有底円筒状に所定の肉厚で形成されている。
カバー本体51の開口側の端部には、内側に向かって張り出した延在部51Aが設けられている。そして、その延在部51Aには、ネジ孔51Cが周方向に複数(図2〜図4には一箇所しか表れていない)設けられている。また、カバー本体51の開口端の所定位置には、所定幅の接続用切り欠き51Bが形成されている。接続切り欠き51Bの形成位置および形状(幅および深さ)は、超音波モータ10におけるフレキシブルプリント基板14と対応するように設定されている。
【0028】
断熱材52は、フォームポリスチレンやウレタンフォーム等、断熱性が高く(熱伝導率が低く)成形性の良い素材によって形成されている。断熱材52は、その外形がカバー本体51の内周面に嵌合する形状となっており、所定の厚さを有している。また、断熱材52の、カバー本体51における接続用切り欠き51Bと対応する位置には、同様の形状の切り欠き52Aが形成されている。
【0029】
そして、断熱材52はカバー本体51の内面に隙間無く嵌合し、これによってカバー本体51と断熱材52とは一体化して断熱カバー50を構成している。なお、断熱カバー50は、断熱性と強度を兼ね備えた素材を用いれば、カバー本体51と断熱材52との二部品で構成せずに一部品によって形成しても良い。
【0030】
上記のように構成された断熱カバー50は、図3に示すように、超音波モータ10の振動子11側の端部に被せられ、固定部材16に固定ネジ53によって締着固定されている。すなわち、断熱カバー50は、カバー本体51の開口側の延在部51Aが固定部材16の外周側に張り出して形成された装着座16Aに当接し、装着座16Aを貫通して延在部51Aのネジ孔51Cに螺合する固定ネジ53によって締着固定されている。断熱材52は、超音波モータ10における振動子11および移動子15の周囲を、所定間隔を有して(接触することなく)覆って、固定部材16より振動子11側に略閉塞した空間を形成している。
【0031】
また、カバー本体51における接続用切り欠き51Bと、断熱材52における切り欠き52Aとが、固定部材16における装着座16Aの上面との間に隙間を形成し、この隙間を介してフレキシブルプリント基板14がカバー本体51の外部に導出されるようになっている。このカバー本体51における接続切り欠き51Bによって形成される隙間は、断熱性保持のためにフレキシブルプリント基板14が挿通可能な限りにおいて極力小さく(たとえば1mm以下)設定する。なお、断熱材52が接続部14Aに当接して容易に変形し得るのであれば、特に切り欠き52Aを形成しなくても良い。
【0032】
以上、本第1実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)本構成では、断熱カバー50が超音波モータ10の振動子11の周囲を覆うため、断熱カバー50が外気と振動子11との間での熱伝導を抑制する。これにより、環境温度の変化による振動子11への影響を小さくすることができる。すなわち、弾性体12と圧電体13の熱膨張率の違いから生ずる振動子11の変形に起因する回転抵抗の増大(特に振動子11の温度が低下した場合に大きい)等を抑制することができる。その結果、環境温度の変化にかかわらず、超音波モータ10の円滑で安定した回転が可能となる。
(2)本構成では、超音波モータ10(圧電体13)に駆動信号を供給するフレキシブルプリント基板14は、カバー本体51における接続用切り欠き51Bによって形成された狭い隙間から断熱カバー50の外部に導出されるように構成されている。このため、断熱カバー50の断熱性の破綻を小さく抑えることができる。
(3)断熱カバー50を備える超音波モータ10を用いるカメラ1によれば、円滑で静粛なレンズ31の移動駆動が可能となる。
【0033】
(第2実施形態)
つぎに、図6および図7に示す本発明の第2実施形態に係る断熱カバー60を説明する。
図6は、超音波モータ10部分の断面図である。図7は、断熱カバー60の斜視図であって、(a)は上部カバーと下部カバーとを組み合わせた状態、(b)は上部カバーと下部カバーとを分解した状態を示す。
第2実施形態では、超音波モータ10を覆って設けられるカバー60の構成が、前述した第1実施形態と異なる。なお、本実施形態における超音波モータ10の構成は、前述した第1実施形態と全く同様であり、同一の構成要素には同符号を付して説明は省略する。
【0034】
断熱カバー60は、外径が等しい下部カバー61と上部カバー62とによって構成されている。断熱カバー60は、前述した第1実施形態とは異なり、駆動ユニット40におけるユニット本体41のモータ装着部41Aに固定され、超音波モータ10の略全体を覆っている。
下部カバー61は、たとえばABS樹脂等の合成樹脂素材等によって、超音波モータ10に上下に開放する円筒状に所定の肉厚で形成されている。下部カバー61の内周には、下部断熱材63が配設されている。
【0035】
下部カバー61の一方の開口側端部(基端部)も内側に張り出して延在部61Aが形成されている。下部カバー61の他方の開口端(上端部)の外周には、結合ネジ61Bが軸方向に所定長さに形成されている。結合ネジ61Bの外径は、下部カバー61の外径より僅かに小径となっており、結合ネジ61Bと当該結合ネジ61Bが形成されない部位との間には段差が形成されている。
【0036】
また、下部カバー61の上端部の所定位置には、所定幅の接続用切り欠き61Cが形成されている。
接続用切り欠き61Cは、結合ネジ61Bの形成域よりZ軸方向に所定量深く形成されている。接続用切り欠き61Cの幅および深さは、下部カバー61が駆動ユニット40におけるユニット本体41のモータ装着部41Aに装着された状態において、超音波モータ10におけるフレキシブルプリント基板14の接続部14Aと対応するように設定されている。
【0037】
下部断熱材63は、フォームポリスチレンやウレタンフォーム等、断熱性が高く成形性の良い素材によって、下部カバー61の内周に嵌合する外径で所定肉厚の円筒状に形成されている。下部断熱材63の軸方向の長さは、基端部を一致させて下部カバー61の内部に挿置した状態において、他端(上端)が接続用切り欠き61Cの底部と一致するように設定されている。
【0038】
上部カバー62は、たとえばABS樹脂等の合成樹脂素材等によって、超音波モータ10の固定部材16より振動子11側の端部を覆い得る有底円筒状に、所定の肉厚で形成されている。
上部カバー62の開口側の端部の内周には、下部カバー61における結合ネジ61Bと螺合する内周ネジ62Aが形成されている。
上部カバー62の内部には、上部断熱材64が配設されている。
【0039】
上部断熱材64は、フォームポリスチレンやウレタンフォーム等、断熱性が高く成形性の良い素材によって形成されている。上部断熱材64は、その開放側端面を下部断熱材63の端面に合致させた状態において、上部カバー62の内部に隙間なく嵌合する外形となっている。
【0040】
上部断熱材64の開放側端部の外周部は、下部カバー61の開放端部の内周に嵌合可能に小径化されている。また、上部断熱材64の開放側端部の、下部カバー61における接続用切り欠き61Cと対応する位置には、対応する幅の切り欠き64Aが形成されている。
切り欠き64AのZ軸方向の深さは、上部断熱材64の下部開口部を下部断熱材63の上部開口部に合致させた状態において、下部断熱材63との間に超音波モータ10におけるフレキシブルプリント基板14の接続部14Aを挿通可能な隙間を形成するように設定されている。
【0041】
上記のように構成された断熱カバー60は、内部に下部断熱材63を備える下部カバー61が、超音波モータ10に外挿されて、駆動ユニット40におけるユニット本体41のモータ装着部41Aに固定ネジ65によって締着固定される。その下部カバー61に上部カバー62が螺合装着され、上部カバー62の内部には上部断熱材64が配設される。
【0042】
上部カバー62と下部カバー61とは、上部カバー62の内周ネジ62Aが下部カバー61の結合ネジ61Bに螺合して結合され、上部カバー62の開放端縁が下部カバー61における結合ネジ61Bの段差に当接することで位置が決まる。
これにより、断熱カバー60は、図5に示すように、超音波モータ10の略全体の周囲に略閉塞空間を形成するように覆い、振動子11の温度変化を抑制する。
【0043】
超音波モータ10におけるフレキシブルプリント基板14の接続部14Aは、上部断熱材64における切り欠き64Aと下部断熱材63の端面との間、および、下部カバー61における接続用切り欠き61Cと上部カバー62の開放端縁との間に形成される隙間を通って外部に導出される。このため、上部カバー62を下部カバー61に結合する際には、上部カバー62のみを回転させて行う。つまり、上部カバー62を下部カバー61に結合する際には、上部断熱材64を、その切り欠き64Aにフレキシブルプリント基板14の接続部14Aが位置するように下部断熱材63に対して配置した後、上部カバー62のみを回転させて下部カバー61に螺合装着する。
【0044】
以上、本第2実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)本構成では、断熱カバー60は超音波モータ10の略全体の周囲を覆い、断熱カバー50が外気と当該超音波モータ10との熱伝導を抑制する。これにより、環境温度の変化による超音波モータ10への影響を小さくすることができ、環境温度の変化にかかわらず、超音波モータ10の円滑で安定した回転が可能となる。
【0045】
(2)断熱カバー60は、下部カバー61と上部カバー62とに軸方向に分割され、超音波モータ10(圧電体13)に駆動信号を供給するフレキシブルプリント基板14の接続部14Aは両者の間から断熱カバー60の外部に導出されるように構成されている。このため、断熱カバー50の断熱性の破綻を小さく抑えることができ、環境温度の変化による超音波モータ10への影響を極めて小さくできる。
【0046】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、超音波領域の振動を用いる超音波モータを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、超音波領域以外の振動を用いる振動アクチュエータに適用してもよい。
【0047】
(2)本実施形態においては、超音波モータ10が、カメラ1の焦点調節の駆動源として用いられる例を示したが、これに限らず、例えば、カメラのズーム動作の駆動源や、カメラの撮像系の一部を駆動して手振れを補正する手振れ補正機構の駆動源、複写機の駆動部、自動車のハンドルチルト装置、時計の駆動装置等に適用することができる。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0048】
1:カメラ、4:撮像素子、10:超音波モータ、11:振動子、12:弾性体、13:圧電体、14:フレキシブルプリント基板、16:固定部材、16A:装着座、31:レンズ、40:駆動ユニット、50;断熱カバー、51;カバー本体、51B:接続用切り欠き、52:断熱材、52A:切り欠き、60:断熱カバー、61:下部カバー、61C:接続用切り欠き、62:上部カバー、63:下部断熱材、64:上部断熱材、64A:切り欠き、OA:光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号により励振される電気機械変換素子と、
前記電気機械変換素子に接合され、前記励振により振動波を生じる弾性体と、
前記弾性体における前記電気機械変換素子に接合された側と反対側に加圧接触され、前記振動波によって駆動されて前記弾性体に対して相対移動する相対移動部材と、
前記電気機械変換素子、前記弾性体及び前記相対移動部材の周囲を覆う断熱部材と、を備えること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動アクチュエータであって、
前記断熱部材には、前記電気機械変換素子に接続される電気配線が外部へ延びる開口部が設けられていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の振動アクチュエータであって、
前記断熱部材は、前記振動アクチュエータの前記相対移動部材側を覆う第1部分と、前記振動アクチュエータにおける前記第1部分が覆う側と反対側を覆う第2部分とを有し、
前記開口部は、前記第1部分と前記第2部分とが結合されることにより連続する内側面で覆われた穴として形成されること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載の振動アクチュエータであって、
前記第1部分は、前記振動アクチュエータの前記電気機械変換素子、前記弾性体及び前記相対移動部材に対して非接触の状態で、前記振動アクチュエータの前記電気機械変換素子、前記弾性体及び前記相対移動部材の周囲を覆うこと、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えるレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えるカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−34485(P2012−34485A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171772(P2010−171772)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】