振動型駆動装置
【課題】 振動子と被駆動体との接触部において、内径側の摩耗量が進行することで寿命が低下する可能性があった。
【解決手段】 本発明の振動型駆動装置は、異なる振動モードの振動を組み合わせることにより接触部に楕円運動を行わせる振動子と、前記接触部に接触し前記楕円運動により前記振動子と相対的に回転する被駆動体と、を備える。そして、前記接触部の前記被駆動体との接触圧は、前記回転の半径方向において外径側より内径側のほうが小さい。
【解決手段】 本発明の振動型駆動装置は、異なる振動モードの振動を組み合わせることにより接触部に楕円運動を行わせる振動子と、前記接触部に接触し前記楕円運動により前記振動子と相対的に回転する被駆動体と、を備える。そして、前記接触部の前記被駆動体との接触圧は、前記回転の半径方向において外径側より内径側のほうが小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型駆動装置に関する。特に、異なる振動モードの振動を組み合わせることにより被駆動体を相対的に回転させる振動型駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる振動モード(形状)の振動を組み合わせるタイプの振動子を用いた振動型駆動装置において、回転駆動を行う形態が提案されている。特許文献1では、略矩形平板形状の振動子を略円盤状の被駆動体の底面に加圧接触させて、被駆動体に相対的な回転運動を発生させる形態を開示している。図12はこのような形態の振動型駆動装置の模式図であり、主要な構成部品を記載している。被駆動体5は自身の中心軸回りに回転可能に保持されている。図では振動子1と被駆動体5とは間隔を空けてあるが、実際は突起部2−1,2−2の上面と被駆動体5とは加圧力を与えられて接触している。振動子1は図12のX方向に駆動力を発生するものであり、被駆動体5を接線方向に回転運動させるように振動子1は配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−304887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明に関わる振動型駆動装置の課題に関して図13を用いて説明する。ここでは必要な内容のみを説明し、詳しくは後述する。
【0005】
振動子1は被駆動体5との接触部として2つの突起部2−1,2−2を備えており、これらは、図中Y方向には振動子1の略中央となる位置、X方向には対称な位置となるように振動子1の上面に形成されている。以下、1つの突起部2−1に関して詳述する。
【0006】
突起部2−1のY方向両端部を点P,点Qで表わす。また、被駆動体5との相対回転運動の中心点を点Oで表わす。点Oは点Pの側に位置しており、点Pが内周側(内径側)、点Qが外周側(外径側)である。
【0007】
振動子1は振動の励振により、突起部2−1にXZ面内の略楕円運動を発生させる。この楕円運動の相対回転運動を生じさせる運動方向(突起部が被駆動体を駆動する駆動方向)はX方向である。点P,点QのX方向の速度(以下、駆動速度という)をVp,Vqと表わす。VpとVqの関係は、
Vp=Vq (1)
である。点P,点Qにおける被駆動体の相対回転運動の周方向の速度(以下、周速という)をUp,Uqと表わす。周速は回転速度と回転半径との積なので、Up,Uqの関係は
|Up|<|Uq| (2)
である。
【0008】
一般に、速度の伝達効率は100%未満であるため、駆動速度に対して被駆動体の回転速度は小さな値となる。つまり、駆動速度と周速との大小関係は、
|Vp|>|Up| , |Vq|>|Uq| (3)
である。よって次の式(4)の関係となる。
|Up|/|Vp|<|Uq|/|Vq|<1 (4)
式(4)より、点Pの方が点Qと比較して駆動速度の伝達効率が低くなっており、振動子と被駆動体の相対的な滑りが多く発生していることが分かる。
【0009】
さらに、X軸に対する周速の成す角度θp,θqは
|θp|>|θq| (5)
である。つまり、点Pの方が点Qと比較して駆動速度の方向と周速の方向のずれが大きく、振動子と被駆動体の相対的な滑りが多く発生していることが分かる。
【0010】
よって、式(4),(5)から点Pの方が点Qと比較して摩耗が多く発生する。つまり、全体が均一に摩耗せず、内径側の摩耗が先に進行することになる。このような不均一な摩耗状態であると、均一に摩耗している状態と比較して振動型駆動装置の寿命が低下してしまう。また、摩耗状態が不均一であると、振動子と被駆動体との接触状態が悪化し、振動型駆動装置の性能低下が生じる可能性がある。
【0011】
振動子のX方向及びY方向の略中央部に接触部としての突起部を一箇所備えている場合に関しても、上記(4)で示す状態で駆動されるため、やはり内径側の摩耗が先に進行することとなる。
【0012】
上記課題に鑑み、本発明は、接触部での外径側の摩耗に対する内径側の摩耗の進行を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の振動型駆動装置は、異なる振動モードの振動を組み合わせることにより接触部に楕円運動を行わせる振動子と、前記接触部に接触し前記楕円運動により前記振動子と相対的に回転する被駆動体と、を備える振動型駆動装置であって、前記接触部の前記被駆動体との接触圧は、前記回転の半径方向において外径側より内径側のほうが小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、接触部での外径側の摩耗に対する内径側の摩耗の進行を抑制することができ、振動型駆動装置の寿命の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1の振動型駆動装置の斜視図。
【図2】本発明の実施形態1の振動型駆動装置の部分斜視図。
【図3】本発明の実施形態1が適用できる振動子の振動モードを表わす斜視図。
【図4】本発明の実施形態1の振動型駆動装置の上面図。
【図5】本発明の実施形態1の振動型駆動装置の特性を示す図。
【図6】本発明の実施形態1の変形例を表わす振動型駆動装置の斜視図。
【図7】本発明の実施形態2の振動型駆動装置の斜視図。
【図8】本発明の実施形態2の振動型駆動装置の部分断面図。
【図9】本発明の実施形態3の振動型駆動装置の斜視図。
【図10】本発明の実施形態3の振動子ユニットの(a)平面図、(b)断面図。
【図11】本発明の実施形態3の変形例を表わす振動型駆動装置の部分断面図。
【図12】本発明に関わる背景技術の振動型駆動装置の斜視図
【図13】本発明の課題を表わす模式図。
【図14】本発明の適用できる振動子の形状及び振動モードを表わす模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述する。一般に振動型駆動装置における接触部の摩耗量は接触部における加圧力(以下、接触圧という)に依存することが知られており、接触圧が大きいほど駆動量に対する摩耗量は多くなる。本発明では、外径側に対して内径側の摩耗量が多くなることを、内径側の接触圧を外径側と比較して小さくすることで相殺することができる。
【0017】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における振動型駆動装置10の主要部の構成を示す斜視図である。図1の振動型駆動装置10は、3個の振動子ユニットS1,S2,S3と、振動子ユニットを保持する保持部材4と、振動子ユニットS1,S2,S3に対して加圧接触状態で保持される円環状の被駆動体5とを備える。3個の振動子ユニットS1,S2,S3は円環状の被駆動体の中心軸(「被駆動体の相対的な回転運動の回転軸」と同義)に対して略同心円上で、且つ円周を略3等分する位置に配置される。振動子ユニットの個数は本発明においては任意であり、1つでも良く、2つ以上の複数でも良い。必要な特性に応じて個数を選択すると良い。
【0018】
図1、図2に示すように、各振動子ユニットS1,S2,S3は、被駆動体5との接触部としての突起部2−1,2−2の上面(接触面)がXY面に平行となるように保持部材4に固定される。振動子ユニットS1,S2,S3は全て同一の形状であり、振動子ユニットは、振動子1と振動子1を保持部材4に連結する連結部材3とで構成される。振動子1は、被駆動体5との接触部として2つの突起部を有する板状の弾性体からなる振動板6と、振動板6に接合した略矩形形状の電気−機械エネルギー変換素子7とを備える。振動板6にはマルテンサイト系ステンレス等の強磁性体材料が用いられている。また、振動子1には、電気−機械エネルギー変換素子7と外部との電気的な接続を行う不図示のフレキシブルプリント基板が設けられている。電気−機械エネルギー変換素子としては、圧電素子や電歪素子と呼ばれる素子を用いることができる。連結部材3はリン青銅などの薄板状の材料を用いて板バネとしての特性を備えている。連結部材3は振動子1を弾性的に保持固定している。
【0019】
ここで、図3を用いて本実施形態の振動子1に励起される2つの振動モードの振動について説明する。本実施形態では、振動子1の電気−機械エネルギー変換素子7に交流電圧を印加して振動子1に2つの面外曲げ振動モード(MODE−AとMODE−B)を励振する。MODE−Aは、振動子1の長手方向である図中X軸方向に平行に2つの節が現れる一次の面外曲げ振動モードである。MODE−Aの振動により、突起部2−1、2−2には、被駆動体と接触する面と垂直な方向(Z軸方向)に変位する振幅が励起される。MODE−Bは振動子1の図中Y軸方向に略平行に3つの節が現れる二次の面外曲げ振動モードである。MODE−Bの振動によって、突起部2−1、2−2には、被駆動体と接触する面と平行な方向(X軸方向)に変位する振幅が励起される。
【0020】
これら二つの振動モードを組み合わせることで接触部である突起部2−1,2−2の上面に略XZ面内の楕円運動が発生し、X軸方向に略一致する方向に被駆動体を駆動させる力が発生する。この駆動力により、被駆動体は振動子と相対的に回転する。ただし、本発明は上記した振動子の構成に限定されず、他の面外曲げ振動モードの振動を励起する振動子でも良く、また、図14に示すような他の振動モードを励起する構成の振動子を用いても良い。図14(a)に示す振動子1は略直方体形状であり、振動子1には、図14(b)に示すように、X軸方向に伸縮する一次の伸縮振動モード(MODE−A)と、Y軸方向に略平行に3つの節が現れる二次の面外曲げ振動モード(MODE−B)と、が励起される。この2つの異なる振動モードの重ね合わせにより、突起部2−1,2−2の上面に略XZ面内の楕円振動が生成される。よって、このように振動子を動作させることで、図3に示した振動子と同様に本発明に適用することができる。
【0021】
図1に戻り、本実施形態の振動型駆動装置の構成について説明する。被駆動体5は永久磁石として希土類磁石材料により円環状に形成され、Z方向に着磁処理が成されている。この被駆動体5の磁力で振動子1を吸引して、被駆動体5と振動子1との間の接触圧を発生させている。また、本実施形態においては、振動子側に永久磁石を設け、被駆動体を強磁性体により形成することもできる。つまり、振動子と被駆動体の一方に永久磁石を備え、他方に強磁性体を備えていると良い。さらには、振動子と被駆動体との両方に永久磁石を設ける構成も可能である。
【0022】
被駆動体5の図中下部の底面側は耐摩耗性を備えるようにNiメッキ等が施され、更にXY面に平行となるようにフラットに形成されて摺動面を形成している。この摺動面が振動子1と接触する。振動子1は連結部材3により弾性的に保持されているので、被駆動体5の摺動面と突起部2−1,2−2の上端が常に倣うように保持される。これは、接触部が常に安定して接触していることで振動子1の駆動力が安定して被駆動体5に伝達されるようにするためである。被駆動体5は円環状の中心軸回りに回転可能となるように、不図示のガイド部材で他の軸回りや直線移動が規制されている。
【0023】
被駆動体5と振動子1との間で発生する磁気吸引力の関係を、図4、図5を用いて説明する。図4は振動子1と被駆動体との位置関係を表わす上面図である。振動子1はY方向(接触部の駆動方向と垂直な方向)に略対称形状であり、この対称軸をA1で表わす。振動子1の対称軸A1よりY方向マイナス側の範囲を領域R1、プラス側の範囲を領域R2とする。領域R1と領域R2との吸引力の差をΔFとする。ΔFは、領域R2に対して領域R1の吸引力が大きい時にプラスとする。
【0024】
また、被駆動体5の径方向の中心線をA2とする。Y方向においてA2を基準としたA1の位置を相対位置としてDで表わしている。Dは、振動子1をY方向のマイナス側に位置させるとマイナスになる。例えば、振動子1をY方向のマイナス側に動かす、すなわち相対位置Dがマイナスになるようにすると、振動子1における被駆動体5の投影位置はY方向プラス側となる。磁力の発生源である被駆動体5の位置が外径側となるので、吸引力は外径側より内径側の方が小さくなる。振動子1と被駆動体5のY方向の相対位置を変えることで吸引力の内外径差を調整することができる。
【0025】
図5は相対位置Dと、吸引力の差ΔFの関係を表わすグラフである。ここではコンピュータシミュレーションで求めた値を記載している。図5より、吸引力の差ΔFの値は相対位置Dにより変化することが確認できる。本発明においては、内径側の接触圧を外径側の接触圧と比較して小さな値とすれば良い。つまり、図5において、Dの値として−1.0mmより小さな値を選択すれば、吸引力は外径側より内径側のほうが小さくなるため、接触圧も外径側より内径側が小さくなる。
【0026】
以上説明したように、磁気による吸引力が外径側より内径側のほうが小さくなるように振動子と被駆動体との半径方向の位置を規定することにより、接触圧の内外径差を与えて摩耗量の内外径差をコントロールすることが可能となる。そして、回転駆動による内径側の摩耗量増大を抑制することで摩耗量の均一化が実現できる。
【0027】
また、本実施形態は、図6に示す構成(変形例)の振動型駆動装置にも適用できる。図6において被駆動体5は不図示としている。3個の振動子1は中心軸に対して略同心円上で、且つ円周を略3等分する位置で保持部材4に固定される。各振動子1の突起部2−1,2−2の上端面はXY面に略一致するように調整されている。調整方法としては、振動子1と保持部材4の接合時に高さを調整したり、接合後に突起部2−1、2−2上面を定盤を用いて磨いたりして調整することができる。
【0028】
本変形例においては、図1、図2に示す構成と比較すると、連結部材3を備えておらず、振動子1の保持部材4との固定部における弾性率が高いため、力による振動子1の姿勢変化は僅かである。しかしながら、僅かな姿勢変化が接触状態の悪化を招き、振動型駆動装置の出力低下を招く可能性がある。つまり、外径側に対して内径側の摩耗が進むと振動型駆動装置の性能が悪化してしまう。よって、この様な構成においても、図4や図5を用いて説明した接触圧の調整を適用して摩耗量の均一化を行うことにより、振動型駆動装置の性能の安定化が実現できる。
【0029】
(実施形態2)
本実施形態では、実施形態1と異なり、永久磁石の磁束密度に内外径差を与えることにより、外径側の磁気吸引力より内径側の磁気吸引力を小さくする形態について説明する。図7は本発明の実施形態2における振動型駆動装置10の主要部の構成を示す斜視図である。図8は図7の振動型駆動装置10において、振動子ユニットS1を含む面での断面図である。
【0030】
振動子ユニットS1,S2,S3と、保持部材4は図1等で説明した構成と同一であり説明を略す。被駆動体5は希土類磁石材料により略円環状に形成され、Z方向に着磁処理が成されている。被駆動体5の振動子1と対向する面にはリング状の摩擦部材8を接着して一体化している。被駆動体5は外径側に比して内径側のZ方向(回転軸方向)の厚みを大きくして、外径側に対して内径側の磁束密度が小さくなるように構成している。このように被駆動体5を構成することで、振動子1との間に発生する磁気吸引力も外径側に比べて内径側が小さくなる。よって、実施形態1と同様に、接触部の外径側の接触圧よりも内径側の接触圧を小さくすることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態においても実施形態1と同様に、振動子側に永久磁石を設け、被駆動体を強磁性体により形成することもできる。つまり、振動子と被駆動体の一方に永久磁石を備え、他方に強磁性体を備えていると良い。さらには、振動子と被駆動体との両方に永久磁石を設ける構成も可能である。このような構成においても、永久磁石の厚みに内外径差を持たせて、外径側に対して内径側の磁束密度が小さくなるように構成することで、本発明を適用できる。
【0032】
(実施形態3)
本実施形態は、実施形態1、2と異なり、振動子を被駆動体側に加圧する加圧部材を備え、加圧部材の弾性変形によって生じる復元力により接触圧を与える形態について説明する。
【0033】
図9は本発明の実施形態3における振動型駆動装置10の主要部の構成を示す斜視図である。図1等で説明した構成と同一箇所の説明は略し、異なる箇所を以下で説明する。
被駆動体5はマルテンサイト系ステンレスにより略円環状に形成されており、表面に窒化処理を施すことで耐摩耗性を向上させている。
【0034】
図10(a)は1つの振動子ユニットの平面図である。Y軸方向のプラス側が外径側、マイナス側が内径側である。図10(b)は1つの振動子ユニットの断面図である。振動子ユニットを構成する振動子1は実施形態1と同一である。振動子1は金属材料で形成されるスペーサ部品12を介して加圧部材11と一体化される。加圧部材11は振動子1の保持及び、振動子1と被駆動体5との接触圧を発生させる用途を併せ持つ。加圧部材11にはリン青銅等バネ部品に適する薄板状の材料が用いられている。加圧部材11は、スペーサ部品12との接合部、保持部材4との接合部、2箇所の第一変形部11−1、2箇所の第二変形部11−2を備えている。第一変形部11−1は第二変形部11−2より幅を狭くしてある。よって第一変形部11−1の剛性は第2変形部11−2と比較して小さな値となっている。
【0035】
振動型駆動装置10に振動子ユニットが実装されている状態では、被駆動体5を介して振動子1がマイナスZ方向に所望量押し込まれるように保持されている。つまり第一及び第二変形部11−1、11−2がZ方向に撓んだ状態で保持され、これらの復元力で振動子1と被駆動体5の接触圧を発生させている。上記のように第一変形部11−1の剛性は第二変形部11−2より小さいため接触圧も外径側より内径側が小さな値となる。
【0036】
本実施形態における変形例の構成を図11に示す。本変形例の加圧部材11の第一変形部11−1と第二変形部11−2は略同一幅に形成されており、略同一の剛性とされている。ただし、本変形例においては、保持部材4の加圧部材取付け部13には、外径側がZ軸方向(回転軸方向)に高くなるように傾斜が設けられており、ここに取り付けられる振動子ユニットも外径側が高くなる。つまり、振動子の突起部が、内径側より外径側が高くなる。この状態で被駆動体5を介して振動子1がマイナスZ方向に押し込まれると第一変形部11−1と第二変形部11−2に撓みが生じて各々に復元力が発生する。被駆動体5の摺動面と振動子1の接触部とが倣うので、第一変形部11−1より第二変形部11−2の撓み量及び復元力が大きくなる。この結果、接触部の接触圧も外径側に対して内径側が小さな値となる。また、本変形例においては、保持部材のZ軸方向の高さに内外径差を持たせたが、振動子等その他の部材の高さに内外径差を持たせることにより、第一変形部11−1より第二変形部11−2の復元力を大きくすることもできる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態においては、加圧部材の弾性変形による復元力を、外径側より内径側を小さくすることにより、接触圧も外径側より内径側を小さくすることが可能となる。よって、摩耗量の内外径差を均一化することが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
1 振動子
3 連結部材
4 保持部材
5 被駆動体
6 振動板
7 電気−機械エネルギー変換素子
8 摩擦部材
10 振動型駆動装置
11 加圧部材
12 スペーサ部材
S1,S2,S3 振動子ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型駆動装置に関する。特に、異なる振動モードの振動を組み合わせることにより被駆動体を相対的に回転させる振動型駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる振動モード(形状)の振動を組み合わせるタイプの振動子を用いた振動型駆動装置において、回転駆動を行う形態が提案されている。特許文献1では、略矩形平板形状の振動子を略円盤状の被駆動体の底面に加圧接触させて、被駆動体に相対的な回転運動を発生させる形態を開示している。図12はこのような形態の振動型駆動装置の模式図であり、主要な構成部品を記載している。被駆動体5は自身の中心軸回りに回転可能に保持されている。図では振動子1と被駆動体5とは間隔を空けてあるが、実際は突起部2−1,2−2の上面と被駆動体5とは加圧力を与えられて接触している。振動子1は図12のX方向に駆動力を発生するものであり、被駆動体5を接線方向に回転運動させるように振動子1は配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−304887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明に関わる振動型駆動装置の課題に関して図13を用いて説明する。ここでは必要な内容のみを説明し、詳しくは後述する。
【0005】
振動子1は被駆動体5との接触部として2つの突起部2−1,2−2を備えており、これらは、図中Y方向には振動子1の略中央となる位置、X方向には対称な位置となるように振動子1の上面に形成されている。以下、1つの突起部2−1に関して詳述する。
【0006】
突起部2−1のY方向両端部を点P,点Qで表わす。また、被駆動体5との相対回転運動の中心点を点Oで表わす。点Oは点Pの側に位置しており、点Pが内周側(内径側)、点Qが外周側(外径側)である。
【0007】
振動子1は振動の励振により、突起部2−1にXZ面内の略楕円運動を発生させる。この楕円運動の相対回転運動を生じさせる運動方向(突起部が被駆動体を駆動する駆動方向)はX方向である。点P,点QのX方向の速度(以下、駆動速度という)をVp,Vqと表わす。VpとVqの関係は、
Vp=Vq (1)
である。点P,点Qにおける被駆動体の相対回転運動の周方向の速度(以下、周速という)をUp,Uqと表わす。周速は回転速度と回転半径との積なので、Up,Uqの関係は
|Up|<|Uq| (2)
である。
【0008】
一般に、速度の伝達効率は100%未満であるため、駆動速度に対して被駆動体の回転速度は小さな値となる。つまり、駆動速度と周速との大小関係は、
|Vp|>|Up| , |Vq|>|Uq| (3)
である。よって次の式(4)の関係となる。
|Up|/|Vp|<|Uq|/|Vq|<1 (4)
式(4)より、点Pの方が点Qと比較して駆動速度の伝達効率が低くなっており、振動子と被駆動体の相対的な滑りが多く発生していることが分かる。
【0009】
さらに、X軸に対する周速の成す角度θp,θqは
|θp|>|θq| (5)
である。つまり、点Pの方が点Qと比較して駆動速度の方向と周速の方向のずれが大きく、振動子と被駆動体の相対的な滑りが多く発生していることが分かる。
【0010】
よって、式(4),(5)から点Pの方が点Qと比較して摩耗が多く発生する。つまり、全体が均一に摩耗せず、内径側の摩耗が先に進行することになる。このような不均一な摩耗状態であると、均一に摩耗している状態と比較して振動型駆動装置の寿命が低下してしまう。また、摩耗状態が不均一であると、振動子と被駆動体との接触状態が悪化し、振動型駆動装置の性能低下が生じる可能性がある。
【0011】
振動子のX方向及びY方向の略中央部に接触部としての突起部を一箇所備えている場合に関しても、上記(4)で示す状態で駆動されるため、やはり内径側の摩耗が先に進行することとなる。
【0012】
上記課題に鑑み、本発明は、接触部での外径側の摩耗に対する内径側の摩耗の進行を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の振動型駆動装置は、異なる振動モードの振動を組み合わせることにより接触部に楕円運動を行わせる振動子と、前記接触部に接触し前記楕円運動により前記振動子と相対的に回転する被駆動体と、を備える振動型駆動装置であって、前記接触部の前記被駆動体との接触圧は、前記回転の半径方向において外径側より内径側のほうが小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、接触部での外径側の摩耗に対する内径側の摩耗の進行を抑制することができ、振動型駆動装置の寿命の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1の振動型駆動装置の斜視図。
【図2】本発明の実施形態1の振動型駆動装置の部分斜視図。
【図3】本発明の実施形態1が適用できる振動子の振動モードを表わす斜視図。
【図4】本発明の実施形態1の振動型駆動装置の上面図。
【図5】本発明の実施形態1の振動型駆動装置の特性を示す図。
【図6】本発明の実施形態1の変形例を表わす振動型駆動装置の斜視図。
【図7】本発明の実施形態2の振動型駆動装置の斜視図。
【図8】本発明の実施形態2の振動型駆動装置の部分断面図。
【図9】本発明の実施形態3の振動型駆動装置の斜視図。
【図10】本発明の実施形態3の振動子ユニットの(a)平面図、(b)断面図。
【図11】本発明の実施形態3の変形例を表わす振動型駆動装置の部分断面図。
【図12】本発明に関わる背景技術の振動型駆動装置の斜視図
【図13】本発明の課題を表わす模式図。
【図14】本発明の適用できる振動子の形状及び振動モードを表わす模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述する。一般に振動型駆動装置における接触部の摩耗量は接触部における加圧力(以下、接触圧という)に依存することが知られており、接触圧が大きいほど駆動量に対する摩耗量は多くなる。本発明では、外径側に対して内径側の摩耗量が多くなることを、内径側の接触圧を外径側と比較して小さくすることで相殺することができる。
【0017】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における振動型駆動装置10の主要部の構成を示す斜視図である。図1の振動型駆動装置10は、3個の振動子ユニットS1,S2,S3と、振動子ユニットを保持する保持部材4と、振動子ユニットS1,S2,S3に対して加圧接触状態で保持される円環状の被駆動体5とを備える。3個の振動子ユニットS1,S2,S3は円環状の被駆動体の中心軸(「被駆動体の相対的な回転運動の回転軸」と同義)に対して略同心円上で、且つ円周を略3等分する位置に配置される。振動子ユニットの個数は本発明においては任意であり、1つでも良く、2つ以上の複数でも良い。必要な特性に応じて個数を選択すると良い。
【0018】
図1、図2に示すように、各振動子ユニットS1,S2,S3は、被駆動体5との接触部としての突起部2−1,2−2の上面(接触面)がXY面に平行となるように保持部材4に固定される。振動子ユニットS1,S2,S3は全て同一の形状であり、振動子ユニットは、振動子1と振動子1を保持部材4に連結する連結部材3とで構成される。振動子1は、被駆動体5との接触部として2つの突起部を有する板状の弾性体からなる振動板6と、振動板6に接合した略矩形形状の電気−機械エネルギー変換素子7とを備える。振動板6にはマルテンサイト系ステンレス等の強磁性体材料が用いられている。また、振動子1には、電気−機械エネルギー変換素子7と外部との電気的な接続を行う不図示のフレキシブルプリント基板が設けられている。電気−機械エネルギー変換素子としては、圧電素子や電歪素子と呼ばれる素子を用いることができる。連結部材3はリン青銅などの薄板状の材料を用いて板バネとしての特性を備えている。連結部材3は振動子1を弾性的に保持固定している。
【0019】
ここで、図3を用いて本実施形態の振動子1に励起される2つの振動モードの振動について説明する。本実施形態では、振動子1の電気−機械エネルギー変換素子7に交流電圧を印加して振動子1に2つの面外曲げ振動モード(MODE−AとMODE−B)を励振する。MODE−Aは、振動子1の長手方向である図中X軸方向に平行に2つの節が現れる一次の面外曲げ振動モードである。MODE−Aの振動により、突起部2−1、2−2には、被駆動体と接触する面と垂直な方向(Z軸方向)に変位する振幅が励起される。MODE−Bは振動子1の図中Y軸方向に略平行に3つの節が現れる二次の面外曲げ振動モードである。MODE−Bの振動によって、突起部2−1、2−2には、被駆動体と接触する面と平行な方向(X軸方向)に変位する振幅が励起される。
【0020】
これら二つの振動モードを組み合わせることで接触部である突起部2−1,2−2の上面に略XZ面内の楕円運動が発生し、X軸方向に略一致する方向に被駆動体を駆動させる力が発生する。この駆動力により、被駆動体は振動子と相対的に回転する。ただし、本発明は上記した振動子の構成に限定されず、他の面外曲げ振動モードの振動を励起する振動子でも良く、また、図14に示すような他の振動モードを励起する構成の振動子を用いても良い。図14(a)に示す振動子1は略直方体形状であり、振動子1には、図14(b)に示すように、X軸方向に伸縮する一次の伸縮振動モード(MODE−A)と、Y軸方向に略平行に3つの節が現れる二次の面外曲げ振動モード(MODE−B)と、が励起される。この2つの異なる振動モードの重ね合わせにより、突起部2−1,2−2の上面に略XZ面内の楕円振動が生成される。よって、このように振動子を動作させることで、図3に示した振動子と同様に本発明に適用することができる。
【0021】
図1に戻り、本実施形態の振動型駆動装置の構成について説明する。被駆動体5は永久磁石として希土類磁石材料により円環状に形成され、Z方向に着磁処理が成されている。この被駆動体5の磁力で振動子1を吸引して、被駆動体5と振動子1との間の接触圧を発生させている。また、本実施形態においては、振動子側に永久磁石を設け、被駆動体を強磁性体により形成することもできる。つまり、振動子と被駆動体の一方に永久磁石を備え、他方に強磁性体を備えていると良い。さらには、振動子と被駆動体との両方に永久磁石を設ける構成も可能である。
【0022】
被駆動体5の図中下部の底面側は耐摩耗性を備えるようにNiメッキ等が施され、更にXY面に平行となるようにフラットに形成されて摺動面を形成している。この摺動面が振動子1と接触する。振動子1は連結部材3により弾性的に保持されているので、被駆動体5の摺動面と突起部2−1,2−2の上端が常に倣うように保持される。これは、接触部が常に安定して接触していることで振動子1の駆動力が安定して被駆動体5に伝達されるようにするためである。被駆動体5は円環状の中心軸回りに回転可能となるように、不図示のガイド部材で他の軸回りや直線移動が規制されている。
【0023】
被駆動体5と振動子1との間で発生する磁気吸引力の関係を、図4、図5を用いて説明する。図4は振動子1と被駆動体との位置関係を表わす上面図である。振動子1はY方向(接触部の駆動方向と垂直な方向)に略対称形状であり、この対称軸をA1で表わす。振動子1の対称軸A1よりY方向マイナス側の範囲を領域R1、プラス側の範囲を領域R2とする。領域R1と領域R2との吸引力の差をΔFとする。ΔFは、領域R2に対して領域R1の吸引力が大きい時にプラスとする。
【0024】
また、被駆動体5の径方向の中心線をA2とする。Y方向においてA2を基準としたA1の位置を相対位置としてDで表わしている。Dは、振動子1をY方向のマイナス側に位置させるとマイナスになる。例えば、振動子1をY方向のマイナス側に動かす、すなわち相対位置Dがマイナスになるようにすると、振動子1における被駆動体5の投影位置はY方向プラス側となる。磁力の発生源である被駆動体5の位置が外径側となるので、吸引力は外径側より内径側の方が小さくなる。振動子1と被駆動体5のY方向の相対位置を変えることで吸引力の内外径差を調整することができる。
【0025】
図5は相対位置Dと、吸引力の差ΔFの関係を表わすグラフである。ここではコンピュータシミュレーションで求めた値を記載している。図5より、吸引力の差ΔFの値は相対位置Dにより変化することが確認できる。本発明においては、内径側の接触圧を外径側の接触圧と比較して小さな値とすれば良い。つまり、図5において、Dの値として−1.0mmより小さな値を選択すれば、吸引力は外径側より内径側のほうが小さくなるため、接触圧も外径側より内径側が小さくなる。
【0026】
以上説明したように、磁気による吸引力が外径側より内径側のほうが小さくなるように振動子と被駆動体との半径方向の位置を規定することにより、接触圧の内外径差を与えて摩耗量の内外径差をコントロールすることが可能となる。そして、回転駆動による内径側の摩耗量増大を抑制することで摩耗量の均一化が実現できる。
【0027】
また、本実施形態は、図6に示す構成(変形例)の振動型駆動装置にも適用できる。図6において被駆動体5は不図示としている。3個の振動子1は中心軸に対して略同心円上で、且つ円周を略3等分する位置で保持部材4に固定される。各振動子1の突起部2−1,2−2の上端面はXY面に略一致するように調整されている。調整方法としては、振動子1と保持部材4の接合時に高さを調整したり、接合後に突起部2−1、2−2上面を定盤を用いて磨いたりして調整することができる。
【0028】
本変形例においては、図1、図2に示す構成と比較すると、連結部材3を備えておらず、振動子1の保持部材4との固定部における弾性率が高いため、力による振動子1の姿勢変化は僅かである。しかしながら、僅かな姿勢変化が接触状態の悪化を招き、振動型駆動装置の出力低下を招く可能性がある。つまり、外径側に対して内径側の摩耗が進むと振動型駆動装置の性能が悪化してしまう。よって、この様な構成においても、図4や図5を用いて説明した接触圧の調整を適用して摩耗量の均一化を行うことにより、振動型駆動装置の性能の安定化が実現できる。
【0029】
(実施形態2)
本実施形態では、実施形態1と異なり、永久磁石の磁束密度に内外径差を与えることにより、外径側の磁気吸引力より内径側の磁気吸引力を小さくする形態について説明する。図7は本発明の実施形態2における振動型駆動装置10の主要部の構成を示す斜視図である。図8は図7の振動型駆動装置10において、振動子ユニットS1を含む面での断面図である。
【0030】
振動子ユニットS1,S2,S3と、保持部材4は図1等で説明した構成と同一であり説明を略す。被駆動体5は希土類磁石材料により略円環状に形成され、Z方向に着磁処理が成されている。被駆動体5の振動子1と対向する面にはリング状の摩擦部材8を接着して一体化している。被駆動体5は外径側に比して内径側のZ方向(回転軸方向)の厚みを大きくして、外径側に対して内径側の磁束密度が小さくなるように構成している。このように被駆動体5を構成することで、振動子1との間に発生する磁気吸引力も外径側に比べて内径側が小さくなる。よって、実施形態1と同様に、接触部の外径側の接触圧よりも内径側の接触圧を小さくすることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態においても実施形態1と同様に、振動子側に永久磁石を設け、被駆動体を強磁性体により形成することもできる。つまり、振動子と被駆動体の一方に永久磁石を備え、他方に強磁性体を備えていると良い。さらには、振動子と被駆動体との両方に永久磁石を設ける構成も可能である。このような構成においても、永久磁石の厚みに内外径差を持たせて、外径側に対して内径側の磁束密度が小さくなるように構成することで、本発明を適用できる。
【0032】
(実施形態3)
本実施形態は、実施形態1、2と異なり、振動子を被駆動体側に加圧する加圧部材を備え、加圧部材の弾性変形によって生じる復元力により接触圧を与える形態について説明する。
【0033】
図9は本発明の実施形態3における振動型駆動装置10の主要部の構成を示す斜視図である。図1等で説明した構成と同一箇所の説明は略し、異なる箇所を以下で説明する。
被駆動体5はマルテンサイト系ステンレスにより略円環状に形成されており、表面に窒化処理を施すことで耐摩耗性を向上させている。
【0034】
図10(a)は1つの振動子ユニットの平面図である。Y軸方向のプラス側が外径側、マイナス側が内径側である。図10(b)は1つの振動子ユニットの断面図である。振動子ユニットを構成する振動子1は実施形態1と同一である。振動子1は金属材料で形成されるスペーサ部品12を介して加圧部材11と一体化される。加圧部材11は振動子1の保持及び、振動子1と被駆動体5との接触圧を発生させる用途を併せ持つ。加圧部材11にはリン青銅等バネ部品に適する薄板状の材料が用いられている。加圧部材11は、スペーサ部品12との接合部、保持部材4との接合部、2箇所の第一変形部11−1、2箇所の第二変形部11−2を備えている。第一変形部11−1は第二変形部11−2より幅を狭くしてある。よって第一変形部11−1の剛性は第2変形部11−2と比較して小さな値となっている。
【0035】
振動型駆動装置10に振動子ユニットが実装されている状態では、被駆動体5を介して振動子1がマイナスZ方向に所望量押し込まれるように保持されている。つまり第一及び第二変形部11−1、11−2がZ方向に撓んだ状態で保持され、これらの復元力で振動子1と被駆動体5の接触圧を発生させている。上記のように第一変形部11−1の剛性は第二変形部11−2より小さいため接触圧も外径側より内径側が小さな値となる。
【0036】
本実施形態における変形例の構成を図11に示す。本変形例の加圧部材11の第一変形部11−1と第二変形部11−2は略同一幅に形成されており、略同一の剛性とされている。ただし、本変形例においては、保持部材4の加圧部材取付け部13には、外径側がZ軸方向(回転軸方向)に高くなるように傾斜が設けられており、ここに取り付けられる振動子ユニットも外径側が高くなる。つまり、振動子の突起部が、内径側より外径側が高くなる。この状態で被駆動体5を介して振動子1がマイナスZ方向に押し込まれると第一変形部11−1と第二変形部11−2に撓みが生じて各々に復元力が発生する。被駆動体5の摺動面と振動子1の接触部とが倣うので、第一変形部11−1より第二変形部11−2の撓み量及び復元力が大きくなる。この結果、接触部の接触圧も外径側に対して内径側が小さな値となる。また、本変形例においては、保持部材のZ軸方向の高さに内外径差を持たせたが、振動子等その他の部材の高さに内外径差を持たせることにより、第一変形部11−1より第二変形部11−2の復元力を大きくすることもできる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態においては、加圧部材の弾性変形による復元力を、外径側より内径側を小さくすることにより、接触圧も外径側より内径側を小さくすることが可能となる。よって、摩耗量の内外径差を均一化することが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
1 振動子
3 連結部材
4 保持部材
5 被駆動体
6 振動板
7 電気−機械エネルギー変換素子
8 摩擦部材
10 振動型駆動装置
11 加圧部材
12 スペーサ部材
S1,S2,S3 振動子ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる振動モードの振動を組み合わせることにより接触部に楕円運動を行わせる振動子と、前記接触部に接触し前記楕円運動により前記振動子と相対的に回転する被駆動体と、を備える振動型駆動装置であって、
前記接触部の前記被駆動体との接触圧は、前記回転の半径方向において外径側より内径側のほうが小さいことを特徴とする振動型駆動装置。
【請求項2】
前記振動子と前記被駆動体とは、一方に永久磁石を備え、他方に強磁性体を備えており、前記接触圧は、前記永久磁石と前記強磁性体との間に生じる吸引力により発生し、
前記吸引力が、外径側より内径側のほうが小さいことにより、前記接触部の前記被駆動体との接触圧が、外径側より内径側のほうが小さいことを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
【請求項3】
前記吸引力が、外径側より内径側のほうが小さくなるよう、前記振動子と前記被駆動体との前記半径方向の位置を規定していることを特徴とする請求項2に記載の振動型駆動装置。
【請求項4】
前記被駆動体側に永久磁石を備え、前記被駆動体の前記回転の軸方向の厚みが外径側より内径側のほうが大きいことにより、前記吸引力が外径側より内径側のほうが小さいことを特徴とする請求項2に記載の振動型駆動装置。
【請求項5】
振動子を前記被駆動体側に加圧する加圧部材を備え、前記接触圧は、前記加圧部材の弾性変形によって生じる復元力により発生し、
前記復元力が、外径側より内径側のほうが小さいことにより、前記接触部における前記被駆動体との接触圧が、外径側より内径側のほうが小さいことを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
【請求項6】
前記加圧部材は、内径側に位置し弾性変形する第一変形部と、外径側に位置し弾性変形する第二変形部とを備え、前記第二変形部より前記第一変形部のほうが剛性が小さいことを特徴とする請求項5に記載の振動型駆動装置。
【請求項7】
前記第二変形部より前記第一変形部のほうが幅が狭いことを特徴とする請求項6に記載の振動型駆動装置。
【請求項8】
前記復元力が、外径側より内径側のほうが小さくなるよう、前記回転の軸方向における前記振動子又は前記振動子を保持する保持部材の高さが、外径側より内径側のほうが低くなっていることを特徴とする請求項5に記載の振動型駆動装置。
【請求項9】
複数の前記振動子で前記被駆動体を相対的に回転させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
【請求項1】
異なる振動モードの振動を組み合わせることにより接触部に楕円運動を行わせる振動子と、前記接触部に接触し前記楕円運動により前記振動子と相対的に回転する被駆動体と、を備える振動型駆動装置であって、
前記接触部の前記被駆動体との接触圧は、前記回転の半径方向において外径側より内径側のほうが小さいことを特徴とする振動型駆動装置。
【請求項2】
前記振動子と前記被駆動体とは、一方に永久磁石を備え、他方に強磁性体を備えており、前記接触圧は、前記永久磁石と前記強磁性体との間に生じる吸引力により発生し、
前記吸引力が、外径側より内径側のほうが小さいことにより、前記接触部の前記被駆動体との接触圧が、外径側より内径側のほうが小さいことを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
【請求項3】
前記吸引力が、外径側より内径側のほうが小さくなるよう、前記振動子と前記被駆動体との前記半径方向の位置を規定していることを特徴とする請求項2に記載の振動型駆動装置。
【請求項4】
前記被駆動体側に永久磁石を備え、前記被駆動体の前記回転の軸方向の厚みが外径側より内径側のほうが大きいことにより、前記吸引力が外径側より内径側のほうが小さいことを特徴とする請求項2に記載の振動型駆動装置。
【請求項5】
振動子を前記被駆動体側に加圧する加圧部材を備え、前記接触圧は、前記加圧部材の弾性変形によって生じる復元力により発生し、
前記復元力が、外径側より内径側のほうが小さいことにより、前記接触部における前記被駆動体との接触圧が、外径側より内径側のほうが小さいことを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
【請求項6】
前記加圧部材は、内径側に位置し弾性変形する第一変形部と、外径側に位置し弾性変形する第二変形部とを備え、前記第二変形部より前記第一変形部のほうが剛性が小さいことを特徴とする請求項5に記載の振動型駆動装置。
【請求項7】
前記第二変形部より前記第一変形部のほうが幅が狭いことを特徴とする請求項6に記載の振動型駆動装置。
【請求項8】
前記復元力が、外径側より内径側のほうが小さくなるよう、前記回転の軸方向における前記振動子又は前記振動子を保持する保持部材の高さが、外径側より内径側のほうが低くなっていることを特徴とする請求項5に記載の振動型駆動装置。
【請求項9】
複数の前記振動子で前記被駆動体を相対的に回転させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−23883(P2012−23883A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160592(P2010−160592)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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