説明

搬送ロボット

【課題】ワークを搬送するときの位置決め精度を確保することができると共に、ワーク運搬用箱を搬送する際にエンドエフェクタに対して作用するモーメント荷重をほとんどなくすことができ、エンドエフェクタに必要とされる許容モーメントを小さくすることができる搬送ロボットを提供すること。
【解決手段】搬送ロボット1は、把持部5によってワークを把持するときには、ロック機構部6によってバランスハンド部4を原位置に固定してエンドエフェクタ21を移動させるよう構成してある。搬送ロボット1は、把持部5によってワーク運搬用箱8Bを把持するときには、ロック機構部6によってバランスハンド部4の原位置への固定を解除することにより、バランスハンド部4、把持部5及びワーク運搬用箱8Bを合わせた重心Gが揺動軸42の下方に位置するようバランスハンド部4が揺動した状態で、エンドエフェクタ21を移動させるよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元に移動可能なロボットのエンドエフェクタに、ワークを把持する部分を設けてなる搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の組付工場等においては、種々のワークを複数個まとめてワーク運搬用箱に収容し、所定の場所へ運搬している。かかる運搬作業を、作業者によって行うのではなく、3次元にエンドエフェクタを移動可能にしたロボットによって行うことがある。ロボットは、ワーク搬送用箱からワークを取り出して所定の位置へ逐次搬送し、その後、ワーク搬送用箱を他の所定の位置へ搬送する。
例えば、特許文献1のパレタイジング装置においては、複数のワークをパレット上に積み付けるパレタイジングロボットのハンド装置に、ワークを保持する装置とは別にパレットを保持する装置を一体に備えることが開示されている。そして、一つのハンド装置でワークを汚すことなく省スペースでワークとパレットの両方を保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−142662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ワーク運搬用箱は、ワークに比べてサイズが大きく、搬送する際にロボットによって把持する箇所がワーク運搬用箱の開口端部の近傍になる。そのため、ワーク運搬用箱を搬送する場合は、ワークを搬送する場合に比べて、エンドエフェクタ(ロボット)に大きなモーメント荷重が作用することになる。そして、大きなモーメント荷重に耐え得るよう、エンドエフェクタの剛性及びエンドエフェクタに取り付けたハンド部の剛性を高くしなければならず、可搬質量の大きなロボットを使用しなければならなかった。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、ワークを搬送するときの位置決め精度を確保することができると共に、ワーク運搬用箱を搬送する際にエンドエフェクタに対して作用するモーメント荷重をほとんどなくすことができ、エンドエフェクタに必要とされる許容モーメントを小さくすることができる搬送ロボットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、3次元に移動可能なロボットのエンドエフェクタに取り付けたベース部と、
該ベース部に対して揺動軸によって軸支してなるバランスハンド部と、
該バランスハンド部に配設され、該バランスハンド部に配設した駆動源によってワークとワーク運搬用箱とを別々に把持するよう構成してなる把持部と、
上記ベース部に対する上記バランスハンド部の揺動の固定と該固定の解除とが可能なロック機構部とを備え、
上記把持部によって上記ワークを把持するときには、上記ロック機構部によって上記バランスハンド部を原位置に固定して上記エンドエフェクタを移動させるよう構成してあり、一方、上記把持部によって上記ワーク運搬用箱を把持するときには、上記ロック機構部によって上記バランスハンド部の上記原位置への固定を解除することにより、上記バランスハンド部、上記把持部及び上記ワーク運搬用箱を合わせた重心が上記揺動軸の下方に位置するよう該揺動軸を中心に上記バランスハンド部が揺動した状態で、上記エンドエフェクタを移動させるよう構成してあることを特徴とする搬送ロボットにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の搬送ロボットは、バランスハンド部及び把持部をロボットのエンドエフェクタに対して揺動可能に配設することにより、ワーク運搬用箱を搬送する際にエンドエフェクタ(ロボット)に加わるモーメント荷重を低減する工夫を行っている。
具体的には、エンドエフェクタに取り付けたベース部に対して、把持部を配設したバランスハンド部を揺動可能にし、ロック機構部によってベース部に対するバランスハンド部の揺動の固定とこの固定の解除とを可能にしている。
搬送ロボットによってワークの搬送を行うときには、把持部によってワークを把持し、ロック機構部によってバランスハンド部を原位置に固定してエンドエフェクタを移動させる。これにより、ワークの搬送を行う場合には、バランスハンド部を原位置に固定して、ワークを着脱するときの位置決め精度を確保することができる。
【0008】
一方、搬送ロボットによってワーク運搬用箱の搬送を行うときには、把持部によってワーク運搬用箱の開口端部の近傍を把持し、ロック機構部によってバランスハンド部の原位置への固定を解除する。なお、バランスハンド部の原位置への固定の解除は、把持部によってワーク運搬用箱を把持する前又は把持すると同時に行うことができる。
ロボットによってワーク運搬用箱を持ち上げたときには、揺動軸を中心にバランスハンド部が揺動し、バランスハンド部、把持部及びワーク運搬用箱を合わせた重心が揺動軸の下方に位置する。そして、このバランスハンド部の揺動状態でエンドエフェクタを移動させる。そのため、ワーク運搬用箱を搬送する際に、エンドエフェクタに対して作用するモーメント荷重をほとんどなくすことができ、エンドエフェクタに必要とされる許容モーメントを小さくすることができる。
【0009】
それ故、本発明の搬送ロボットによれば、ワークを搬送するときの位置決め精度を確保することができると共に、ワーク運搬用箱を搬送する際にエンドエフェクタに対して作用するモーメント荷重をほとんどなくすことができ、エンドエフェクタに必要とされる許容モーメントを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例にかかる、バランスハンド部が揺動状態にある搬送ロボットを示す説明図。
【図2】実施例にかかる、揺動状態にあるバランスハンド部の周辺を示す説明図。
【図3】実施例にかかる、バランスハンド部が固定状態にある搬送ロボットを示す説明図。
【図4】実施例にかかる、固定状態にあるバランスハンド部の周辺を示す説明図。
【図5】実施例にかかる、バランスハンド部の周辺を上方から見た状態で示す説明図。
【図6】実施例にかかる、バランスハンド部の周辺を示す図で、図5におけるA−A線矢視説明図。
【図7】実施例にかかる、バランスハンド部の周辺を示す図で、図5におけるB−B線矢視説明図。
【図8】実施例にかかる、搬送ロボットの電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した本発明の搬送ロボットにおける好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記ロック機構部は、上記バランスハンド部に設けた保持部と、該保持部に対して移動可能に設けたロックアームとを有しており、該ロックアームは、上記バランスハンド部に当接させるためのストッパー部と、該ストッパー部から連続形成した接触部とを有しており、かつ、上記ストッパー部を上記バランスハンド部に当接させて該バランスハンド部の揺動を停止させるロック位置と、上記ストッパー部を上記バランスハンド部から離隔して該バランスハンド部の揺動を可能にするロック解除位置とに移動可能であると共に、上記エンドエフェクタを移動させる際に上記接触部を外部に接触させて、上記ロック位置から上記ロック解除位置に移動可能であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、ストッパー部及び接触部を有するロックアームを用いることにより、バランスハンド部の揺動の停止及び揺動の許可を簡単かつ確実に行うことができる。
また、エンドエフェクタの移動を利用して、接触部を外部(ワーク、ワーク搬送用箱等を載置する架台等)に接触させることができ、ロックアームをロック位置からロック解除位置へ容易に復帰させることができる。
【0012】
また、上記バランスハンド部及び上記把持部のうち上記揺動軸に対して一方側に位置する一方側部分の重力は、上記バランスハンド部及び上記把持部のうち上記揺動軸に対して他方側に位置する他方側部分の重力よりも小さくなっており、上記ロック機構部によって上記バランスハンド部の上記原位置への固定を解除した状態において、上記把持部によって上記ワーク運搬用箱を把持したときには、上記一方側部分の重力が上記他方側部分の重力よりも大きくなって、上記一方側部分が下方になるよう上記バランスハンド部が揺動し、上記把持部から上記ワーク運搬用箱を放したときには、上記他方側部分の重力が上記一方側部分の重力よりも大きくなって、上記バランスハンド部が上記原位置に戻るよう構成してあることが好ましい(請求項3)。
この場合には、一方側部分に作用する重力と、他方側部分に作用する重力との差を利用して、ワーク搬送用箱を把持部から放したときのバランスハンド部の原位置への復帰を簡単に行うことができる。
【0013】
また、上記把持部は、互いに向き合う方向に配設した一方側指部と他方側指部との間隔を可変させて、上記ワーク又は上記ワーク運搬用箱を把持するよう構成してあり、上記他方側指部は、上記一方側指部に対向する内側対向面に、上記ワーク運搬用箱の開口端部の近傍において外方に突出して形成された鍔部を引っ掛けるための掛止突起を有していることが好ましい(請求項4)。
この場合には、掛止突起によってワーク搬送用箱の鍔部を引っ掛けて、一方側指部及び他方側指部によってワーク搬送用箱を把持することにより、このワーク搬送用箱を安定して搬送することができる。
【実施例】
【0014】
以下に、本発明の搬送ロボットに係る実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の搬送ロボット1は、図1に示すごとく、以下のベース部3、バランスハンド部4、把持部5及びロック機構部6をロボット2のエンドエフェクタ21に配設してなる。ベース部3は、3次元に移動可能なロボット2のエンドエフェクタ21に取り付けてある。バランスハンド部4は、ベース部3に対して揺動軸42によって軸支してある。図2、図4に示すごとく、把持部5は、バランスハンド部4に配設され、バランスハンド部4に配設した駆動源43によってワーク8Aとワーク運搬用箱8Bとを別々に把持するよう構成してある。ロック機構部6は、ベース部3に対するバランスハンド部4の揺動の固定と、この固定の解除とが可能である。
【0015】
搬送ロボット1は、図4に示すごとく、把持部5によってワーク8Aを把持するときには、ロック機構部6によってバランスハンド部4を原位置401に固定してエンドエフェクタ21を移動させるよう構成してある。また、搬送ロボット1は、図2、図3に示すごとく、把持部5によってワーク運搬用箱8Bを把持するときには、ロック機構部6によってバランスハンド部4の原位置401への固定を解除することにより、図1に示すごとく、バランスハンド部4、把持部5及びワーク運搬用箱8Bを合わせた重心Gが揺動軸42の下方に位置するようバランスハンド部4が揺動した状態で、エンドエフェクタ21を移動させるよう構成してある。
【0016】
以下に、本例の搬送ロボット1につき、図1〜図8を参照して詳説する。
図8は、搬送ロボットの電気的構成をブロック図にして示す。同図に示すごとく、本例のロボット2は、モータ22によって駆動する5〜7軸の関節を有する多関節ロボットであり、ロボット2のコントローラ(制御盤)11に接続されたティーチングユニット12によってエンドエフェクタ21の位置、姿勢の教示を行って、動作させるものである。また、ロボット2のコントローラ11は、エンドエフェクタ21の位置、姿勢の制御の他に、把持部5の動作(駆動源43R、43L)も制御することができる。
本例のワーク8Aは、車両に対して組付を行う車両組付部品であり、本例のワーク運搬用箱8Bは、複数の車両組付部品を整列して配置する容器として形成されている。
図3に示すごとく、ワーク運搬用箱8Bは、開口端部81の近傍において外方に突出して形成された鍔部82を有している。この鍔部82は、ワーク運搬用箱8Bの全周において、開口端部81の近傍に複数並んで形成されている。
【0017】
図4、図5に示すごとく、ベース部3は、エンドエフェクタ21に取り付けた部分から、エンドエフェクタ21の平面に沿った方向に伸びて形成されている。ベース部3は、エンドエフェクタ21に取り付けたベースプレート部31と、ベースプレート部31に対して設けられ、エンドエフェクタ21の平面に沿った方向に伸びる一対のプレート部32とを有しており、一対のプレート部32には、揺動軸42を形成する軸受穴321が形成されている。
本例においては、揺動軸42を境界にしたバランスハンド部4の一方側部分41Aと他方側部分41Bとが並ぶ方向を前後方向Dといい、この前後方向Dに直交する方向を左右方向Wという。
【0018】
図5に示すごとく、バランスハンド部4は、ベース部3における一対のプレート部32に対する左側に左側配設部41Lを設け、ベース部3における一対のプレート部32に対する右側に右側配設部41Rを設けてなる。また、左側配設部41Lと右側配設部41Rとは、揺動軸42に対して前後方向Dの一方側に位置する一方側連結部411A及び揺動軸42に対して前後方向Dの他方側に位置する他方側連結部411Bによって連結されている。
一方側連結部411Aにおける左右方向Wの中心部分には、左側配設部41Lと右側配設部41Rとの間に配置される中心配設部41Cが設けてあり、バランスハンド部4は、図4に示すごとく、中心配設部41Cとベース部3における一対のプレート部32の軸受穴321とに揺動軸42を架け渡して揺動可能である。
【0019】
把持部5を駆動する本例の駆動源43は、モータを用いて構成されており、モータの出力軸にボールねじを接続し、ボールねじに螺合するナットを、内蔵リニヤガイドによって直線上にガイドして移動させるよう構成されている。つまり、本例の駆動源43は、モータによる回転動作を直線動作に変換する機構を含めて形成されている。
駆動源43は、バランスハンド部4の左側配設部41Lと右側配設部41Rとにそれぞれ配設されている。
【0020】
図2、図4に示すごとく、本例の把持部5は、互いに向き合う方向に配設した一方側指部51と他方側指部52との間隔を可変させて、ワーク8A又はワーク運搬用箱8Bを把持するよう構成してある。
左側配設部41Lに配設された駆動源43Lにおけるナットに固定された出力部431は、後述する環状部材44、リニヤガイド45等を介して把持部5の一方側指部51に連結されており、右側配設部41Rに配設された駆動源43Rにおけるナットに固定された出力部431は、後述する環状部材44、リニヤガイド45等を介して把持部5の他方側指部52に連結されている。
【0021】
図4、図5に示すごとく、一方側指部51は、駆動源43Lによる駆動を受けてバランスハンド部4の一方側から他方側へスライドし、他方側指部52は、駆動源43による駆動を受けてバランスハンド部4の他方側から一方側へスライドする。一方側指部51と他方側指部52とが互いに反対側へスライドしたときには、一方側指部51と他方側指部52とは、揺動軸42の下方位置において対面するよう構成されている。
【0022】
図6、図7に示すごとく、駆動源43は、左側配設部41L及び右側配設部41Rの上面に配設してあり、左側配設部41L及び右側配設部41Rの下面には、リニヤガイド45のレール451が配設してある。駆動源43における出力部431は、駆動源43の上側部分に設けられており、出力部431は、リニヤガイド45のレール451上をスライドするスライダー452に対して、駆動源43の周りを囲む環形状の環状部材44によって連結されている。つまり、環状部材44によって、駆動源43の出力部431のスライド動作位置は、駆動源43に対する上側位置から下側位置に変換されている。
【0023】
図6に示すごとく、一方側指部51は、バランスハンド部4の左右方向Wの中心位置の下方に配置されており、屈曲部材511を介して左側配設部41Lに設けた環状部材44の下部に連結されている。他方側指部52は、一方側指部51の左右両側の位置に分岐して配置されており、屈曲部材521を介して右側配設部41Rに設けた環状部材44の下部に連結されている。一方側指部51と他方側指部52とによるワーク8A又はワーク運搬用箱8Bの挟持は、互いに左右方向Wにオフセットした位置において行われる。
【0024】
図2、図4に示すごとく、一方側指部51及び他方側指部52において、互いに向き合う内側対向面には、ワーク8A及びワーク運搬用箱8Bに接触する樹脂材料から構成した樹脂部53が設けてある。他方側指部52の内側対向面には、ワーク運搬用箱8Bにおける鍔部82を引っ掛けるための掛止突起54が形成されている。掛止突起54は、樹脂材料から構成してある。把持部5は、一方側指部51における樹脂部53と他方側指部52における樹脂部53及び掛止突起54との間に、ワーク8A又はワーク運搬用箱8Bを挟持するよう構成されている。掛止突起54によってワーク運搬用箱8Bの鍔部82を引っ掛けて、一方側指部51及び他方側指部52によってワーク運搬用箱8Bを把持することにより、ワーク運搬用箱8Bを傾けて搬送する際に、このワーク運搬用箱8Bを支えて、安定して搬送することができる。
【0025】
図4、図5に示すごとく、左側配設部41Lと右側配設部41Rとの間に位置する中心配設部41Cには、ワーク8A又はワーク運搬用箱8Bを撮影して画像認識を行うためのカメラ71、及びカメラ71による撮影部分を照明する照明器具72が配設してある。そして、搬送ロボット1は、カメラ71によって撮影したワーク8A又はワーク運搬用箱8Bの画像を認識して、エンドエフェクタ21を移動させ、把持部5によってワーク8A又はワーク運搬用箱8Bを把持するよう構成されている。
【0026】
ワーク8A又はワーク運搬用箱8Bを把持していない状態の搬送ロボット1においては、バランスハンド部4及び把持部5のうち揺動軸42に対して前後方向Dの一方側に位置する一方側部分41Aの重力は、バランスハンド部4及び把持部5のうち揺動軸42に対して前後方向Dの他方側に位置する他方側部分41Bの重力よりも小さくなっている。本例においては、特に、図2、図4に示すごとく、左右の駆動源43におけるモータ431を、左側配設部41Lの他方側部分41B及び右側配設部41Rの他方側部分41Bに配設していることにより、他方側部分41Bの重力が一方側部分41Aの重力よりも大きくなっている。
【0027】
搬送ロボット1は、図3に示すごとく、ロック機構部6によってバランスハンド部4の原位置401への固定を解除した状態において、把持部5によってワーク運搬用箱8Bを把持したときには、図2に示すごとく、一方側部分41Aの重力が他方側部分41Bの重力よりも大きくなって、一方側部分41Aが下方になるようバランスハンド部4が揺動位置402へ揺動するよう構成してある。また、搬送ロボット1は、把持部5からワーク運搬用箱8Bを放したときには、他方側部分41Bの重力が一方側部分41Aの重力よりも大きくなって、バランスハンド部4が原位置401に戻るよう構成してある。そして、本例の搬送ロボット1は、一方側部分41Aに作用する重力と、他方側部分41Bに作用する重力との差を利用して、ワーク運搬用箱8Bを把持部5から放したときのバランスハンド部4の原位置401への復帰を簡単に行うことができる。
【0028】
図5に示すごとく、本例のロック機構部6は、バランスハンド部4に設けた保持部61と、保持部61に対して移動可能に設けたロックアーム62とを有している。ロックアーム62は、保持部61に設けた軸受部611に対して軸支された回動中心部621と、バランスハンド部4に当接させるためのストッパー部622と、ストッパー部622から連続形成した2箇所の接触部623A、623Bとを有している。
ロックアーム62は、ストッパー部622をバランスハンド部4に当接させてバランスハンド部4の揺動を停止させるロック位置601と、ストッパー部622をバランスハンド部4から離隔してバランスハンド部4の揺動を可能にするロック解除位置602(図5において2点鎖線で示す。)とに回動可能である。
【0029】
同図に示すごとく、保持部61とロックアーム62とには、ロックアーム62の回動位置を保持するための位置保持機構63が設けてある。本例の位置保持機構63は、ロックアーム62に、圧縮バネの付勢力を受けた鋼球(又は突出部)634の先端を突出させたボールプランジャ633を設け、保持部61に設けたブロック631に、ボールプランジャ633の鋼球634を嵌合させる嵌合凹部632を設けて構成されている。嵌合凹部632は、ロック位置601とロック解除位置602とに合わせて設けてある。ボールプランジャ633の鋼球634が嵌合凹部632に嵌合することによって、ロックアーム62の回動位置を固定することができる。
【0030】
図5に示すごとく、ロックアーム62は、エンドエフェクタ21を移動させる際に接触部623A又は623Bを外部(ワーク8A、ワーク運搬用箱8B等を載置する架台等)に接触させることによって、ロック位置601とロック解除位置602との間で移動可能である。本例のロックアーム62は、エンドエフェクタ21の移動を利用して、駆動源を用いることなく、ロック位置601とロック解除位置602との間で容易に回動させることができる。
【0031】
ベース部3の一方のプレート部32の外側に配設した部材には、ロックアーム62のストッパー部622が挿入されて、このストッパー部622を掛止して、バランスハンド部4の揺動を固定するための揺動掛止部(穴)612が形成してある。また、ベース部3の一方のプレート部32には、ロックアーム62のストッパー部622が接近したか否かを検出するセンサ(近接センサ)613が配設してある。センサ613によって、ロックアーム62がロック位置601にあることを検出することができる。
【0032】
次に、本例の搬送ロボット1の動作について説明する。
本例の搬送ロボット1は、ワーク8Aの搬送と、このワーク8Aを工場の各作業工程に運搬するためのワーク運搬用箱8Bの搬送とを、エンドエフェクタ21に取り付けた同じ把持部5によって行うよう構成されている。
搬送ロボット1によって、ワーク運搬用箱8Bと作業台、搬送架台等との間でワーク8Aの搬送を行う際には、図4に示すごとく、ロック機構部6のロックアーム62をロック位置601に固定し、バランスハンド部4の揺動を固定した状態で(バランスハンド部4を原位置401に固定した状態で)、把持部5によってワーク8Aを把持する。このとき、把持部5による把持は、カメラ71によってワーク8Aを撮影し、画像処理を行ってワーク8Aの正確な位置を検出して行うことができる。そして、ロボット2のティーチングデータに基づいて、エンドエフェクタ21を移動させ、ワーク8Aを所定の位置へ搬送することができる。こうして、ワーク8Aの搬送を行う場合には、ワーク8Aを着脱するときの位置決め精度を確保することができる。
【0033】
一方、搬送ロボット1によって、すべてのワーク8Aを取り出した後のワーク運搬用箱8Bの搬送を行う際には、図3に示すごとく、把持部5によってワーク運搬用箱8Bの開口端部81の近傍を把持し、ロック機構部6によってバランスハンド部4の原位置401への固定を解除する。なお、バランスハンド部4の原位置401への固定の解除は、把持部5によってワーク運搬用箱8Bを把持する前又は把持すると同時に行うことができる。また、把持部5によってワーク運搬用箱8Bを把持する際には、他方側指部52における掛止突起54によって、ワーク運搬用箱8Bの開口端部81の近傍における鍔部82を引っ掛ける。
【0034】
そして、ロボット2によってワーク運搬用箱8Bを持ち上げたときには、バランスハンド部4、把持部5及びワーク運搬用箱8Bを合わせた全体による一方側部分41Aの重力が他方側部分41Bの重力よりも大きくなって、一方側部分41Aが下方になるよう揺動軸42を中心にバランスハンド部4が揺動する。これにより、図2に示すごとく、バランスハンド部4が揺動位置402に揺動し、バランスハンド部4、把持部5及びワーク運搬用箱8Bを合わせた重心Gが揺動軸42の下方に位置する。そして、ロボット2のティーチングデータに基づいて、エンドエフェクタ21を移動させ、ワーク運搬用箱8Bを所定の位置へ搬送することができる。
こうして、ワーク運搬用箱8Bを搬送する際には、エンドエフェクタ21に対して作用するモーメント荷重をほとんどなくすことができ、エンドエフェクタ21に必要とされる許容モーメントを小さくすることができる。
【0035】
それ故、本例の搬送ロボット1によれば、ワーク8Aを搬送するときの位置決め精度を確保することができると共に、ワーク運搬用箱8Bを搬送する際にエンドエフェクタ21に対して作用するモーメント荷重をほとんどなくすことができ、エンドエフェクタ21に必要とされる許容モーメントを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 搬送ロボット
2 ロボット
21 エンドエフェクタ
3 ベース部
4 バランスハンド部
401 原位置
402 揺動位置
41A 一方側部分
41B 他方側部分
41L 左側配設部
41R 右側配設部
42 揺動軸
43 駆動源
5 把持部
51 一方側指部
52 他方側指部
54 掛止突起
6 ロック機構部
601 ロック位置
602 ロック解除位置
61 保持部
62 ロックアーム
621 回動中心部
622 ストッパー部
623A、B 接触部
8A ワーク
8B ワーク運搬用箱
81 開口端部
82 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元に移動可能なロボットのエンドエフェクタに取り付けたベース部と、
該ベース部に対して揺動軸によって軸支してなるバランスハンド部と、
該バランスハンド部に配設され、該バランスハンド部に配設した駆動源によってワークとワーク運搬用箱とを別々に把持するよう構成してなる把持部と、
上記ベース部に対する上記バランスハンド部の揺動の固定と該固定の解除とが可能なロック機構部とを備え、
上記把持部によって上記ワークを把持するときには、上記ロック機構部によって上記バランスハンド部を原位置に固定して上記エンドエフェクタを移動させるよう構成してあり、一方、上記把持部によって上記ワーク運搬用箱を把持するときには、上記ロック機構部によって上記バランスハンド部の上記原位置への固定を解除することにより、上記バランスハンド部、上記把持部及び上記ワーク運搬用箱を合わせた重心が上記揺動軸の下方に位置するよう上記バランスハンド部が揺動した状態で、上記エンドエフェクタを移動させるよう構成してあることを特徴とする搬送ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送ロボットにおいて、上記ロック機構部は、上記バランスハンド部に設けた保持部と、該保持部に対して移動可能に設けたロックアームとを有しており、
該ロックアームは、上記バランスハンド部に当接させるためのストッパー部と、該ストッパー部から連続形成した接触部とを有しており、かつ、上記ストッパー部を上記バランスハンド部に当接させて該バランスハンド部の揺動を停止させるロック位置と、上記ストッパー部を上記バランスハンド部から離隔して該バランスハンド部の揺動を可能にするロック解除位置とに移動可能であると共に、上記エンドエフェクタを移動させる際に上記接触部を外部に接触させて、上記ロック位置から上記ロック解除位置に移動可能であることを特徴とする搬送ロボット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送ロボットにおいて、上記バランスハンド部及び上記把持部のうち上記揺動軸に対して一方側に位置する一方側部分の重力は、上記バランスハンド部及び上記把持部のうち上記揺動軸に対して他方側に位置する他方側部分の重力よりも小さくなっており、
上記ロック機構部によって上記バランスハンド部の上記原位置への固定を解除した状態において、上記把持部によって上記ワーク運搬用箱を把持したときには、上記一方側部分の重力が上記他方側部分の重力よりも大きくなって、上記一方側部分が下方になるよう上記バランスハンド部が揺動し、上記把持部から上記ワーク運搬用箱を放したときには、上記他方側部分の重力が上記一方側部分の重力よりも大きくなって、上記バランスハンド部が上記原位置に戻るよう構成してあることを特徴とする搬送ロボット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送ロボットにおいて、上記把持部は、互いに向き合う方向に配設した一方側指部と他方側指部との間隔を可変させて、上記ワーク又は上記ワーク運搬用箱を把持するよう構成してあり、
上記他方側指部は、上記一方側指部に対向する内側対向面に、上記ワーク運搬用箱の開口端部の近傍において外方に突出して形成された鍔部を引っ掛けるための掛止突起を有していることを特徴とする搬送ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−40646(P2012−40646A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184216(P2010−184216)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】