説明

携帯型作業機におけるエンジンの操作装置

【課題】 ランオン現象等を防止しながら、スロットルレバーの操作性を向上した携帯型作業機のエンジン操作装置を提供する。
【解決手段】 エンジン8と、エンジン8に接続された作業装置9と、作業装置9による作業中に操作可能な部位に設けられた、エンジンを操作する操作手段と、を備えている、携帯型作業機におけるエンジンの操作装置であって、前記操作手段が、エンジン8のスロットルバルブを全閉から全開の範囲で操作する第1操作具18と、エンジンを可動状態又は停止状態に切り換えるためのスイッチ39と、該スイッチを操作する第2操作具19と、を有し、前記第2操作具19が、前記スイッチ39をエンジン8の可動状態に操作したときに前記第1操作具18の操作位置を所定に規制し、前記スイッチ39をエンジン8の停止状態に操作したときに前記第1操作具18によるスロットルバルブの全閉操作を許容するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロワ、刈り払い機等の携帯型作業機におけるエンジンの操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯型作業機、例えば、ブロワは、落ち葉やゴミ等に強い空気流を吹き付けて集め、清掃等をするものであり、図1に示すように、作業者が動き回って作業を行えるよう、エンジン8及び送風機11を背負うようになっている。送風機11の導出管11Aには、フレキシブル管13を介して噴射管12が接続されている。噴射管12には、操縦ハンドル14が設けられ、作業者は、操縦ハンドル14を握って噴射管12を操るようになっている(例えば、特許文献1参照)。操縦ハンドル14には、通常、エンジン8のスロットルバルブを操作するスロットルレバーや、エンジンを電気的に停止する停止スイッチが設けられる。
【0003】
一方、下記特許文献2、3には、携帯型作業機の操縦ハンドルに用いられるスロットルレバーやエンジン停止スイッチに関する技術が開示されている。この技術は、操縦ハンドルに、エンジンのスロットルバルブをワイヤーを介して遠隔操作するスロットルレバーを設け、スロットルレバーを一方向に回動させることで、混合気の供給量を増加させてエンジンの回転数を増加し、他方向に回動させることで、混合気の供給量を減少させてエンジンの回転数を減少するようになっている。スロットルレバーには、エンジンを電気的に停止する停止スイッチが内蔵され、エンジンの回転を下げる方向にスロットルレバーを操作したときに、停止スイッチが操作され、エンジンを停止するようになっている。
【0004】
特許文献4に開示された技術は、操縦ハンドルに、スロットルレバーと、スロットルレバーの操作を規制するスロットルラッチと、スロットルラッチを操作するスロットルロックレバーと、を設け、スロットルレバーによってエンジンの回転を増減し、スロットルラッチによってスロットルレバーを保持する。スロットルロックレバーは、スロットルラッチによるスロットルレバーの保持を解除する。また、操縦ハンドルには、スロットルラッチにより操作されるエンジン停止スイッチが設けられている。停止スイッチは、スロットルロックレバーを操作してスロットルラッチによりスロットルレバーを保持したときに、エンジン停止状態に操作され、スロットルロックレバーを操作してスロットルラッチによるスロットルレバーの保持を解除したときに、エンジン可動状態に操作される。
【0005】
【特許文献1】特開2002−303148号公報
【特許文献2】特開2001−159320号公報
【特許文献3】実公昭57−52341号公報
【特許文献4】特許第3237997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図1に示したブロアの作業は、次のように行われる。まず、エンジン8を始動し、スロットルレバーを操作しながら噴射管12を作業箇所に向ける。スロットルレバーを操作することによって、エンジン8の回転数を増減し、作業状態に応じた風量に調節する。そして、所望の作業を終えた後、スロットルレバーを戻してエンジン8をアイドリング状態にし、エンジン停止スイッチを操作してエンジン8を停止する。
【0007】
エンジン停止スイッチを操作したとき、通常、エンジン8は即座には停止せず、送風機11側の慣性力等によって少し回転する。このとき、スロットルバルブはアイドリングの開度にあるため、エンジン8のシリンダ内には混合気が吸い込まれる。
【0008】
一方、エンジン8は、作業を行っている間に温度が上昇し、エンジン停止スイッチを操作するときにも、温度はさほど下がっていないのが普通である。したがって、高温のシリンダ内に混合気が吸引され、エンジンの回転で圧縮されて混合気の温度が上昇することとなる。そして、シリンダ内がある空燃比、温度に達したときに混合気が自然に着火し、エンジン8の回転が低速で短時間続く場合がある(ランオン現象)。また、刈り払い機のように回転慣性力の小さい作業機では、自己着火が持続せず、マフラー内において短時間に急速燃焼し、音を発生する場合もある(アフターバーン現象)。
【0009】
近年、排ガス対策として、燃費率等を向上するために希薄混合気による燃焼を行うエンジンが用いられており、シリンダ内がより高温化している。そのため、ランオン等の現象を生じる可能性が高くなっている。
【0010】
上記のようなランオン現象等を防止する方法として、エンジン停止スイッチを操作するときに、スロットルバルブを完全に閉じ、混合気の吸引を完全に遮断してやることが考えられる。
【0011】
前述の特許文献2,3に記載の技術は、スロットルレバーをスロットル閉方向に操作したときにエンジン停止スイッチが同時に切れるようになっている。そのため、スロットルバルブを完全に閉じて混合気の吸引を遮断した状態で、停止スイッチを切ることができ、ランオン現象等を防止可能である。
【0012】
しかしながら、特許文献2,3のスロットルレバーは、バネによって回動抵抗が与えられ、ある位置に操作したまま手を離すと、その位置で保持されるようになっているため、操作感が重たくなっている。また、バネの抵抗によって作業に最適な操作位置にスロットルレバーを保持することができるが、その位置から一旦スロットルレバーを動かしてしまうと、再度同じ位置に戻すには作業者自身が再調節しなければならない。したがって、特許文献2,3の技術は、スロットルレバーの操作性が悪い。
【0013】
一方、特許文献4の技術は、上記のようなランオン現象等を防止することができない。すなわち、エンジンを停止するようにスロットルロックレバーを操作したとしても、スロットルレバーはスロットルラッチによってアイドリング操作位置に保持されるため、エンジンのシリンダ内に混合気を吸い込む可能性がある。また、スロットルラッチは、エンジン停止中にスロットルレバーを保持するだけで、エンジン運転中はスロットルレバーに何ら作用しない。したがって、作業を行っている間は、常にスロットルレバーを握って操作しておかなければならない。
【0014】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、ランオン現象等を防止しながら、スロットルレバーの操作性を向上しうる携帯型作業機におけるエンジンの操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1記載の発明は、エンジンと、エンジンに接続された作業装置と、作業装置による作業中に操作可能な部位に設けられた、エンジンを操作する操作手段と、を備えている、携帯型作業機におけるエンジンの操作装置であって、前記操作手段が、エンジンのスロットルバルブを全閉から全開の範囲で操作する第1操作具と、エンジンを可動状態又は停止状態に切り換えるためのスイッチと、該スイッチを操作する第2操作具と、を有し、前記第2操作具が、前記スイッチをエンジンの可動状態に操作したときに前記第1操作具の操作位置を所定に規制し、前記スイッチをエンジンの停止状態に操作したときに前記第1操作具によるスロットルバルブの全閉操作を許容するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
これによれば、携帯型作業機による作業中は、第1操作具によってエンジンのスロットルバルブを操作することができ、第2操作具を用いることにより、作業に最適な操作位置で第1操作具を位置規制することができる。作業を終えたときは、第2操作具によってスイッチをエンジン停止状態に操作することでエンジンを停止することができる。その際、第2操作具による第1操作具の位置規制が解除され、スロットルバルブを全閉に操作できるため、シリンダ内に混合気が吸い込まれるのを防止することができる。したがって、ランオン現象やアフターバーン現象を防止することができる。第2操作具は、スイッチの操作と第1操作具の位置規制との双方の機能を備えているため、部品兼用による構造の簡素化及びコスト低減を図ることができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第2操作具が、前記スイッチをエンジンの可動状態に操作したときに、前記第1操作具のスロットル閉方向への操作限界位置を規制し且つ該操作限界位置からスロットル開方向への操作を許容するように構成されており、さらに、前記第1操作具を少なくともスロットル全開操作位置とアイドリング操作位置との間で任意に位置規制可能に構成されていることを特徴とする。
【0018】
これによれば、第2操作具によって、携帯型作業機の作動範囲(アイドリング〜スロットル全開)のなかで第1操作具を最適な操作位置に規制することができる。第2操作具により第1操作具の操作位置を規制したとしても、第1操作具は、スロットル開方向への操作が許容されるので、必要に応じてエンジンの出力を高めることができ、再度、第1操作具を、第2操作具により規制された操作位置に簡単に戻すことができる。したがって、操作性がより向上する。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記第1操作具が、操作力を付与していないときにスロットル閉操作方向に戻るように、付勢されており、前記第2操作具が、第1操作具を連動して操作することにより、前記スロットルバルブを操作可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
これによれば、第2操作具により位置規制された第1操作具を、スロットル開方向に操作したとき、第1操作具から手を離して操作力を解除することで、第1操作具を、第2操作具により規制された位置にすぐに戻すことができる。また、第2操作具の操作に連動して第1操作具を操作し、スロットルバルブを操作することができるので、操作性がより向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ランオン現象等を防止しながら、スロットルレバーの操作性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、携帯型作業機の使用状態を示す斜視図である。本実施形態の携帯型作業機はブロワ10であり、該ブロワ10は、エンジン8と、エンジン8に接続された作業装置9とを備えている。作業装置9は、送風機11と、送風機11の導出管11Aに接続された噴射管12と、を備え、エンジン8の出力で送風機11を駆動し、噴射管12を介して強い風を吹き出すようになっている。エンジン8と送風機11とは、一対の背負いバンド24を介して背中に背負うことができるようになっている。噴射管12は、導出管11Aにフレキシブル管13を介して接続され、先端の向きを自由に変えることができるようになっている。
【0023】
噴射管12の基端部には、操縦ハンドル14が設けられている。図2は、操縦ハンドル14を示す斜視図であり、図3は、図2のIII矢視図である。操縦ハンドル14は、ハンドル本体15と、該ハンドル本体15を噴射管12に取り付ける取付具16とを備えている。ハンドル本体15は、片手で握ることができるように細長い棒状に形成され、左右略対称の一対の分割体15A,15Bを互いに結合することにより構成されている。取付具16は、噴射管12の外周を囲繞してボルトによって締め付けるように構成されている。
【0024】
ハンドル本体15の上部前面には、エンジン8(図1)のスロットルバルブを操作するスロットルレバー(第1操作具)18が設けられ、上部側面には、スロットルレバー18の操作位置を規制する規制レバー(第2操作具)19が設けられている。図2に示すように、ハンドル本体15を片手で握ったとき、人差し指でスロットルレバー18を操作可能であり、親指で規制レバー19を操作可能である。規制レバー19は、他方の手で操作してもよい。
【0025】
図4は、図3のIV−IV矢視図であり、図5は、図4のV−V矢視断面図である。図6は、ハンドル本体15の内部を示す側面図であって、ハンドル本体15の一方の分割体15Aを取り除いた状態を示す。スロットルレバー18は、図6に示すように、側面視でL字状に形成され、角のボス部20が、ハンドル本体15の内部に設けた左右方向の軸17に回動自在に外嵌されている。スロットルレバー18の一端部は、ハンドル本体15の前面に形成された開口21から突出しており、この突出部分が、指を引っ掛けて操作する操作部22とされている。スロットルレバー18の他端部にはワイヤー23の一端が係合され、ワイヤー23の他端は、エンジン8のスロットルバルブに結合されている。ワイヤー23は、ハンドル本体15の内部から噴射管12、フレキシブル管等に沿ってエンジン8に到っている。スロットルレバー18のボス部20には、上方へ突出する係合片18Aが設けられている。
【0026】
スロットルバルブは、全開〜全閉の範囲でスロットルレバー18により操作され、全閉のときにシリンダ内への混合気の吸引を完全に遮断するようになっている。スロットルバルブは、バネ等によって閉方向に付勢されており、この付勢によりワイヤー23が図6の矢印a方向に引っ張られている。スロットルレバー18は、ワイヤー23に引っ張られることによって、矢印c方向への付勢力が付与されている。
【0027】
操縦ハンドル14を手で握り、人差し指でスロットルレバー18の操作部22を矢印d方向に操作すると、スロットルバルブが開方向に操作される。操作部22から指を離すと、付勢力によってスロットルレバー18が矢印c方向に回動し、スロットルバルブが閉方向に操作される。図6中の25は、スロットルレバー18のスロットル開方向の限界位置を規制するストッパである。
【0028】
図4に示すように、規制レバー19は、円形のボス部26と、ボス部26から径方向外方に突出する操作部27とを有している。ボス部26の中央には軸ピン28が挿通され、軸ピン28は、図5に示すように、ハンドル本体15の側面から内部に挿入されている。軸ピン28の途中には溝29が形成され、溝29とハンドル本体15の側壁との間には、ワッシャ30及びウェーブワッシャ31が装着され、ウェーブワッシャ31を撓ませながら、軸ピン28の抜け止めをする止め輪32を溝29に装着している。ボス部26は、ウェーブワッシャ31によってハンドル本体15の外側面に圧接され、回動抵抗が付与されている。ワッシャ30間には、ウェーブワッシャ31に変えてコイルバネ等を介在させてもよい。
【0029】
図4に示すように、規制レバー19は、操作部27がA位置に指向する位置からC位置に指向する位置の間で、軸ピン28を中心として回動可能となっている。図9は、図4のIX−IX矢視図であり、ハンドル本体15の側面には、複数の半円突起33が形成され、規制レバー19には複数の凹部35が形成されている。この半円突起33と凹部35とは、操作部27がA〜Cの各位置に指向したときに互いに係合することによって、規制レバー19に操作感を与え、操作部27がA〜Cの各位置にあることを感知できるようにしている。凹部35の周囲はなだらかな傾斜面36に形成されており、凹部35からの半円突起33の離脱を容易ならしめている。
【0030】
図5及び図6に示すように、規制レバー19のボス部26には、被係合片19Aが突設されている。被係合片19Aは、軸ピン28を中心とした円弧板形状に形成され、ハンドル本体15の側壁に形成されたスリット38を介してハンドル本体15内に軸方向に延びている。被係合片19Aは、規制レバー19を軸ピン28回りに回動することによって共に回動する。また、被係合片19Aは、スロットルレバー18の係合片18Aに係合することによって、スロットルレバー18の回動を規制するようになっている。
【0031】
図7及び図8は、図6と同様に、ハンドル本体15内を示す側面図である。特に、図6は、スロットルレバー18がアイドリング操作位置で規制レバー19の被係合片19Aにより規制されている状態を示し、図7は、スロットルレバー18がスロットル全開の操作位置で規制されている状態を示している。図8は、スロットルレバー18が規制レバー19によって規制されず、スロットル全閉の操作位置にある状態を示している。
【0032】
規制レバー19の操作部27が図4のB位置に指向しているとき、被係合片19Aは、図6に示す位置にある。スロットルレバー18の係合片18Aは、被係合片19Aの一端に係合している。スロットルレバー18は、矢印c方向の回動、すなわち、スロットルバルブを閉じる方向の回動が被係合片19Aによって規制されており、スロットルバルブをアイドリングに操作している。また、スロットルレバー18は、スロットルバルブを開く方向の回動は何ら規制されておらず、自由にスロットルバルブを開くことができる。
【0033】
規制レバー19の操作部27が図4のC位置に指向しているとき、被係合片19Aは、図7に示す位置にある。スロットルレバー18の係合片18Aは、被係合片19Aの一端に係合している。スロットルレバー18は、2点鎖線で示すアイドリング操作位置よりも更にワイヤー23を引っ張り、スロットルバルブを全開にし、ストッパ25に当接している。したがって、スロットルレバー18は、それ以上スロットル開方向、閉方向のいずれにも回動することができず、実質的に固定される。
【0034】
規制レバー19の被係合片19Aは、図6の状態から図7の状態に移動するとき、係合片18Aに当接してスロットルレバー18を共に回動させ、スロットルバルブを操作するようになっている。すなわち、規制レバー19は、スロットルレバー18を介してスロットルバルブを間接的に操作可能となっている。
【0035】
規制レバー19の操作部27が図4のA位置に指向しているとき、被係合片19Aは、図8に示す位置にある。スロットルレバー18の係合片18Aは、被係合片19Aに係合してしない。したがって、スロットルレバー18は、スロットルバルブを全閉〜全開の範囲で操作することができる。スロットルレバー18を操作しない場合(スロットルレバー18に操作力を付与しない場合)、スロットルバルブは、付勢力によって全閉になる。なお、図8には、スロットル全閉の操作位置のスロットルレバー18を実線で示し、その比較として、アイドリング操作位置のスロットルレバー18を2点鎖線で示している。
【0036】
図6に示すように、操縦ハンドル14には、エンジン8を可動状態又は停止状態に切り換えるスイッチ39が設けられている。このスイッチ39は、被係合片19Aを間に挟んで係合片18Aの反対側に配置されている。スイッチ39は、一端が軸を介してハンドル本体内に支持された2枚の導電性を有する板材(金属製スイッチ片)42A,42Bよりなり、両板材42A,42Bは、一定の隙間を隔てて対向配置されている。一方の板材にはエンジン8の点火コイルの一次線40が、他方の板材にはアース線41が接続されている。したがって、両板材442A,42Bを接触させることにより、点火コイルの一次線40が接地し、エンジン8が停止する。また、両板材42A,42Bが離れることによって、エンジン8が運転可能な状態(可動状態)になる。ハンドル本体15には、両板材42A,42Bの間隔を保持する突起43が設けられている。
【0037】
上記スイッチ39は、規制レバー19の被係合片19Aによって操作されるようになっている。すなわち、規制レバー19を図4のA位置に操作し、被係合片19Aを図8に示すように位置づけたとき、被係合片19Aの端部が、一方の板材42Bを押して揺動し、他方の板材42Aに接触させる。これによりエンジン8が停止する。このとき、スロットルレバー18は、被係合片19Aによって何ら位置規制されていないので、操作力を付与しなければ、スロットルの全閉操作位置に配置される。
【0038】
〔本実施形態の作用効果〕
以下、本実施形態のブロア10を用いて清掃等の作業を行う場合について説明する。
まず、エンジン8を始動するとき、規制レバー19を図4のB位置に位置づける。スロットルレバー18は、図6に示すように、被係合片19Aによってアイドリング操作位置に規制される。被係合片19Aはスイッチ39に当接しておらず、スイッチ39の両板材42A,42Bは互いに離反している。したがって、エンジン8は可動の状態となる。
【0039】
エンジン8を始動したあと、スロットルレバー18をスロットル開方向(図6の矢印d方向)に操作することで、エンジン8出力を自由に調整することができる。したがって、噴射管(図1)から吹き出す風量を自由に調整し、ゴミM等を適切に吹き飛ばし、収集することができる。スロットルレバー18は、スロットル閉操作方向(図6の矢印c方向)に付勢されているので、スロットル開方向の操作力を付与するか、その操作力を緩めるだけで、軽快に操作を行うことができる。
【0040】
スロットルレバー18の操作を止めると、該スロットルレバー18は、付勢力によってスロットル閉方向(図6の矢印c方向)に戻り、係合片18Aが被係合片19Aに当接することによって、アイドリング操作位置に規制される。
【0041】
スロットルレバー18を所望の操作位置で保持し、一定のエンジン出力で作業を行いたい場合は、規制レバー19を、図4におけるB位置とC位置との間で回動する。このとき、例えば図7に示すように、被係合片19Aが係合片18Aに係合しているので、スロットルレバー18を回動し、間接的にスロットルバルブが操作される。所望のエンジン出力になったところで、規制レバー19の回動を止めれば、その位置でスロットルレバー18の回動も規制される。規制レバー19を操作することによって、スロットルレバー18を連動し、スロットルバルブを調整できるため、規制レバー19とスロットルレバー18とをそれぞれ個別に操作する必要がなく、簡単に操作をすることができる。
【0042】
スロットルレバー18を所望の操作位置で規制した後、エンジン出力を一時的に高めたい場合は、スロットルレバー18をスロットル開方向に操作する。そして、元の操作位置に戻したい場合は、スロットルレバー18から手を離せば、付勢力によって被係合片19Aに規制された位置まですぐに戻る。
【0043】
作業が終了し、エンジン8を停止させる場合は、スロットルレバー18から手を離した状態で、規制レバー19を図4のA位置に回動する。これによって、図8に示すように、被係合片19Aがスイッチ39を操作し、エンジン8が停止する。このとき、スロットルレバー18は、付勢力によってスロットル全閉操作位置に戻る。これにより、シリンダ内へ混合気の吸引が遮断され、ランオン現象やアフターバーン現象が防止される。
【0044】
規制レバー19は、スロットルレバー18の位置規制と、スイッチ39の操作との双方の機能を有しているので、部品兼用による構造の簡素化やコスト低減を図ることができ、これらの機能を、被係合片19Aのみで達成しているので、一層の構造の簡素化等を図ることができる。
【0045】
また、規制レバー19の被係合片19Aは、係合片18Aに対して、スロットル閉操作方向に対向して配置され、スイッチ39は、被係合片19Aを挟んで係合片18Aの反対側に配置され、規制レバー19の操作によって、被係合片19Aが係合片18Aとスイッチ39との間を移動するようになっているので、被係合片18Aを移動させるだけで、スロットルレバー18の位置規制とスイッチ39の操作との双方を簡単な構成で実現できる。
【0046】
〔他の実施形態〕
本発明は、次のように実施することもできる。
(1)スイッチ39は、2枚の板材によらず、他の形態にすることができる。但し、上記実施形態の如く2枚の板材を並設して設けることによって、操縦ハンドルの小さいスペースに、簡単な構造でコンパクトに収めることができる。
【0047】
(2)スロットルレバー18は、ハンドル本体15との間で回動抵抗を与えることにより、操作した位置に保持する構成とすることもできる。
【0048】
(3)本発明は、ブロワに限らず、刈り払い機等のあらゆる携帯型作業機10に採用することができる。ただし、ブロワは、エンジン8と送風機11の間にクラッチがなく、送風用の羽根による慣性力でエンジン8が停止し難いため、ランオン現象等を防止するうえで本発明が特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】携帯型作業機10の使用状態を示す斜視図である。
【図2】操縦ハンドル14を示す斜視図である。
【図3】図2のIII矢視図である。
【図4】図3のIV−IV矢視図である。
【図5】図4のV−V矢視断面図である。
【図6】ハンドル本体15の内部を示す側面図である。
【図7】ハンドル本体15の内部を示す側面図である。
【図8】ハンドル本体15の内部を示す側面図である。
【図9】図4のIX−IX矢視断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 携帯型作業機
14 操縦ハンドル
18 スロットルレバー(第1操作具)
19 規制レバー(第2操作具)
39 スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、エンジンに接続された作業装置と、作業装置による作業中に操作可能な部位に設けられた、エンジンを操作する操作手段と、を備えている、携帯型作業機におけるエンジンの操作装置であって、
前記操作手段が、エンジンのスロットルバルブを全閉から全開の範囲で操作する第1操作具と、エンジンを可動状態又は停止状態に切り換えるためのスイッチと、該スイッチを操作する第2操作具と、を有し、
前記第2操作具が、前記スイッチをエンジンの可動状態に操作したときに前記第1操作具の操作位置を所定に規制し、前記スイッチをエンジンの停止状態に操作したときに前記第1操作具によるスロットルバルブの全閉操作を許容するように構成されていることを特徴とする携帯型作業機におけるエンジンの操作装置。
【請求項2】
前記第2操作具が、前記スイッチをエンジンの可動状態に操作したときに、前記第1操作具のスロットル閉方向への操作限界位置を規制し且つ該操作限界位置からスロットル開方向への操作を許容するように構成されており、さらに、第1操作具を少なくともスロットル全開操作位置とアイドリング操作位置との間で任意で位置規制可能に構成されている、請求項1記載の携帯型作業機におけるエンジンの操作装置。
【請求項3】
前記第1操作具が、操作力を付与していないときにスロットル閉操作方向に戻るように、付勢されており、
前記第2操作具が、第1操作具を連動して操作することにより、前記スロットルバルブを操作可能に構成されている、請求項1又は2に記載の携帯型作業機におけるエンジンの操作装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−283740(P2006−283740A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108703(P2005−108703)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】