説明

撮像装置

【課題】動画像に対して適切にダイナミックレンジ拡大処理を行うこと。
【解決手段】撮像装置は、連続するフレームの各フレームにおいて露光時間が異なる複数の画像をそれぞれ取得する撮像手段11,12,16と、露光時間が異なる複数の画像に基づいて合成画像を生成する画像合成手段19と、露光時間が異なる複数の画像ごとに、nフレーム目と(n−1)フレーム目との間の輝度差をそれぞれ検出する輝度差検出手段18と、輝度差検出手段18によって検出された複数の画像ごとの輝度差に基づいて、画像合成手段19がnフレーム目に対する合成画像を生成する際に異なる合成処理をさせる制御手段16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
露光量が異なる複数の画像を取得して暗い部分の再現に適した画像と明るい部分の再現に適した画像とを組み合わせて見かけのダイナミックレンジを拡大する処理を、時系列に連続的に取得した画像(いわゆる動画像)に対して適用する技術が知られている(特許文献1参照)。被写体が変化する場合にダイナミックレンジ拡大処理を行うことによって生じるぶれなどの不具合を避けるために、被写体の動きを検知するとダイナミックレンジ拡大処理を行わないように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−36742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、被写体の動きの有無によってダイナミックレンジ拡大処理をしたりしなかったりするので、得られる画像に違和感が生じるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による撮像装置は、連続するフレームの各フレームにおいて露光時間が異なる複数の画像をそれぞれ取得する撮像手段と、露光時間が異なる複数の画像に基づいて合成画像を生成する画像合成手段と、露光時間が異なる複数の画像ごとに、nフレーム目と(n−1)フレーム目との間の輝度差をそれぞれ検出する輝度差検出手段と、輝度差検出手段によって検出された複数の画像ごとの輝度差に基づいて、画像合成手段がnフレーム目に対する合成画像を生成する際に異なる合成処理をさせる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、動画像に対して適切にダイナミックレンジ拡大処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態による電子カメラの構成を例示するブロック図である。
【図2】DSPが実行する処理の流れを説明するフローチャートである。
【図3】録画シーケンスを説明する図である。
【図4】輝度差を算出する注目エリアを説明する図である。
【図5】画像合成処理を説明する図である。
【図6】画像合成処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態による電子カメラの構成を例示するブロック図である。図1において、電子カメラ1は、撮像センサー11と、フロントエンド部(AFE)12と、鏡筒13と、モータードライブ部14と、フラッシュメモリ15と、DSP16と、RAM17と、輝度差検出部18と、画像合成部19と、動画処理部(H.264)20と、ノイズ除去部(3D-NR)21と、カードインターフェース22と、操作部材23とを含む。
【0009】
撮像センサー11の受光面には、鏡筒13内に構成されている撮影レンズによって被写体像が結像される。撮像センサー11は、受光素子が受光面に二次元配列されたCMOSイメージセンサなどによって構成される。撮像センサー11は、結像された被写体像を光電変換する。光電変換信号は、フロントエンド部(AFE)12によってゲインコントロールやA/D変換などの処理が施され、DSP16へ入力される。
【0010】
DSP16は、デジタル画像データに対して各種の画像処理(色補間処理、階調変換処理の他、後述するダイナミックレンジの拡張処理、ノイズ低減処理など)を施す。フラッシュメモリ15は、電源オフ時にも記憶内容を保持するメモリである。フラッシュメモリ15は、DSP16が実行するプログラムなどを記憶する。
【0011】
カードインターフェース22は不図示のコネクタを有し、該コネクタに、たとえばSDメモリカードなどの記憶媒体が接続される。カードインターフェース18は、接続された記憶媒体に対するデータの書き込みや、記憶媒体からのデータの読み込みを行う。
【0012】
RAM17は、電源オフ時に記憶内容を消失するメモリである。RAM17は、画像バッファとしてDSP16による画像処理の前工程や後工程でのデジタル画像データを一時的に記憶する他、DSP16によるプログラム実行時のワークメモリとして用いられる。
【0013】
DSP16は、フラッシュメモリ15が記憶するプログラムを実行することにより、電子カメラが行う動作を制御する。DSP16は、AF(オートフォーカス)動作制御や、自動露出(AE)演算も行う。AF動作は、たとえば、ライブビュー画像のコントラスト情報に基づいてフォーカシングレンズ(不図示)の合焦位置を求める。ライブビュー画像は、撮影指示前に撮像センサー11によって所定の時間間隔(たとえば60フレーム/毎秒)で繰り返し取得されるモニタ用画像のことをいう。
【0014】
輝度差検出部18は、所定のフレーム画像間で対応するエリアにおける輝度差を検出する。画像合成部19は、所定のフレーム画像に対してダイナミックレンジの拡張処理を施す。ダイナミックレンジの拡張処理は、たとえば、露光時間を変えて露光量が異なる複数のフレーム画像を取得し、暗い部分の再現には露光時間が長い方のフレーム画像のデータを用いて再現し、明るい部分の再現には露光時間が短い方のフレーム画像のデータを用いて再現し、暗い部分と明るい部分の中間は双方のフレーム画像を用いて再現する。この拡張処理により、見かけのダイナミックレンジを拡げる。
【0015】
動画処理部20は、たとえば、公知のH.264手法を用いて動画圧縮処理を行う。ノイズ除去部21は、たとえば、公知の3D-NR手法を用いてフレーム画像に重畳したノイズを低減する。操作部材23は、不図示のシャッターボタンや録画ボタン、ズームスイッチやメニュースイッチなどを含み、各ボタンやスイッチの操作に応じた操作信号をDSP16へ送出する。
【0016】
本実施形態は、上述した電子カメラが備える録画時(動画撮影時)に行うダイナミックレンジの拡張処理に特徴を有するので、以降の説明は録画時に行うダイナミックレンジの拡張処理を中心に説明する。
【0017】
図2は、DSP16が実行する処理の流れを説明するフローチャートである。DSP16は、操作部材23を構成する録画ボタンから操作信号が入力されると、図2による処理を起動する。図2のステップS11において、DSP16は、被写体輝度に応じて撮影条件を設定する。たとえば、録画時のフレームレートに応じた露光時間Tで適正露出が得られるように、撮像センサー11の感度を設定してステップS12へ進む。なお、感度設定に加えて、あるいは感度設定の代わりに不図示の絞りを変更してもよい。
【0018】
図3は、本実施形態による録画シーケンスを説明する図である。DSP16は、たとえば30フレーム/毎秒のフレームレートで動画像を取得するように制御する。DSP16はさらに、ダイナミックレンジ拡張処理に用いるために、1フレームにつき長露光画像Lと短露光画像Sとをそれぞれ取得させる。本実施形態では、1フレームを構成する1/30秒のうち半分の1/60秒を長露光画像用の露光時間Tとする。上記設定した撮像センサー11の感度(または絞り値)は、長露光画像Lを適正露出に近づけるように決定された値である。DSP16はさらに、長露光画像用の露光時間Tの半分であるT/2(本例では1/120秒)を短露光画像用の露光時間とする。これら複数の露光時間T、およびT/2により、1フレーム内で異なる露光時間による複数の露光画像を得る。図3において、注目フレームをnフレームとし、前フレームを(n−1)フレーム、次フレームを(n+1)フレームと表す。
【0019】
図2のステップS12において、DSP16は撮像センサー11を制御し、露光時間Tおよび露光時間T/2でそれぞれ画像を取得させてステップS13へ進む。取得した長露光画像Lおよび短露光画像Sは、それぞれRAM17に格納される。ステップS13において、DSP16は輝度差検出部18へ指示を送り、長露光画像Lnと、前フレームの長露光画像L(n-1)との間で注目エリアごとの輝度差を算出させる。
【0020】
図4は、画像において輝度差を算出する注目エリアを説明する図である。注目エリアは、たとえば注目画素を中心とする横3画素×縦3画素の計9画素で構成する。輝度差検出部18は、長露光画像Lnおよび長露光画像L(n-1)の同じ画素位置についてそれぞれ注目エリアを設定し、これら注目エリア間において輝度値の差を算出する。たとえば、注目エリア内の画素データの最大値および最小値を除き、該注目エリア内の残りの7画素データについて、注目画素からの距離に応じた重みを加味した輝度値を算出する。そして、長露光画像Lnおよび長露光画像L(n-1)のそれぞれで算出した注目エリアの輝度値の差を算出する。なお、輝度変換式は、たとえば、Y=0.29891×R+0.58661×G+0.11448×Bを用いる。ただし、RはR色のカラーフィルタが設けられている画素のデータ、GはG色のカラーフィルタが設けられている画素のデータ、およびBはB色のカラーフィルタが設けられている画素のデータである。
【0021】
図2のステップS14において、DSP16は輝度差検出部18へ指示を送り、短露光画像Snと、前フレームの短露光画像S(n-1)との間で上記注目エリアごとの輝度差を算出させる。輝度差検出部18は、長露光画像Lの場合と同様に、短露光画像Snおよび短露光画像S(n-1)の同じ画素位置についてそれぞれ注目エリアを設定し、これら注目エリア間において輝度値の差を算出する。
【0022】
ステップS15において、DSP16は、輝度差検出部18で算出された輝度差が判定閾値以内か否かを判定する。DSP16は、長露光画像についての隣接フレーム間の輝度差、および短露光画像についての隣接フレーム間の輝度差の双方があらかじめ定めた判定閾値以内である場合に、ステップS15を肯定判定してステップS16へ進む。DSP16は、長露光画像についての隣接フレーム間の輝度差、および短露光画像についての隣接フレーム間の輝度差の少なくとも一方があらかじめ定めた判定閾値を超える場合には、ステップS15を否定判定してステップS22へ進む。
【0023】
ステップS15を肯定判定したDSP16は、(n−1)フレームとnフレームとの間において主要被写体の動きがないとみなす。この場合のDSP16は、上記注目エリアにおいて、ステップS16〜ステップS18の処理からなる画像合成処理を行う。図5は、ステップS16〜ステップS18による画像合成処理を説明する図である。図5において、短露光画像の帯は、上記注目エリアにおける短露光画像がとり得る輝度値の範囲を示す。また、長露光画像の帯は、上記注目エリアにおける長露光画像が取り得る輝度値の範囲を示す。それぞれの帯において、帯の左に近いほど輝度が低く、帯の右に近いほど輝度が高い。通常、長露光画像が短露光画像の2倍の露光時間である場合は、長露光画像の帯の長さは短露光画像の帯の長さの2倍である。
【0024】
DSP16は、nフレームの短露光画像において、たとえば、輝度値がフルスケール(8ビットで例示する場合に255)の15%の値j1以下に相当する画素データについては、nフレームの長露光画像において対応する輝度値の画素データLdnに基づいて合成後の画像を求める。具体的には、DSP16がステップS16において画像合成部19へ指示を送り、長露光画像において輝度値0〜j1に対応する画素データLdnに基づいて、次式(1)によって合成後の画像を構成するデータを算出させてステップS17へ進む。画素データLdnは、図5において長露光画像の帯内の領域52に対応する。
出力値=Ldn×a1+c1 (1)
ただし、出力値は合成後の画像の画素データであり、出力値の範囲は0〜k1である。また、a1は所定の係数、c1は所定のオフセット係数である。
【0025】
DSP16は、nフレームの長露光画像において、たとえば、輝度値がフルスケール(8ビットで例示する場合に255)の90%以上の値に相当する画素データ(長露光画像の帯内の領域53に対応)については、nフレームの短露光画像において対応する輝度値j2以上の画素データに基づいて合成後の画像を求める。具体的には、DSP16がステップS17において画像合成部19へ指示を送り、輝度値が230(=255×0.9)〜255に相当する範囲については、短露光画像において輝度値j2以上の画素データSenに基づいて、次式(2)によって合成後の画像を構成するデータを算出させてステップS18へ進む。画素データSenは、図5において短露光画像の帯内の領域51に対応する。
出力値=Sen×a4+c4 (2)
ただし、出力値は合成後の画像の画素データであり、出力値の範囲はk2〜255である。また、a4は所定の係数、c4は所定のオフセット係数である。出力値の最大は255で制限する。
【0026】
DSP16は、上述した輝度値j1〜j2に相当する画素データについては、nフレームの短露光画像において対応する輝度値の画素データSjn、nフレームの長露光画像において対応する輝度値の画素データLjnの双方に基づいて合成後の画像を求める。具体的には、DSP16がステップS18において画像合成部19へ指示を送り、次式(3)によって合成後の画像を構成するデータを算出させる。
出力値=Ljn×a2+c2+Sjn×a3+c3 (3)
ただし、出力値は合成後の画像の画素データであり、出力値の範囲はk1〜k2である。また、a2、a3はそれぞれ所定の係数、c2、c3はそれぞれ所定のオフセット係数である。DSP16は、画像合成部19により以上の合成処理が行われると、ステップS19へ進む。なお、上述した係数a1〜a4およびオフセット係数c1〜c4は、合成後の出力値k1およびk2における階調の継ぎ目を滑らかにするようにあらかじめ定められている。
【0027】
ステップS15を否定判定したDSP16は、(n−1)フレームとnフレームとの間において主要被写体の動きがあるとみなす。この場合のDSP16は、上記注目エリアにおいて、ステップS22の処理からなる画像合成処理を行う。図6は、ステップS22による画像合成処理を説明する図である。図6において、短露光画像の帯は、上記注目エリアにおける短露光画像が取り得る輝度値の範囲を示す。階調合わせ画像の帯は、上記注目エリアにおける短露光画像が取り得る輝度値の範囲を階調合わせのために所定倍したものである。
【0028】
ステップS22において、DSP16は画像合成部19へ指示を送り、nフレームの短露光画像の画素データに基づいて合成後の画像を求めさせる。画像合成部19は、nフレームの短露光画像において、たとえば、輝度値がフルスケール(8ビットで例示する場合に255)の15%の値j1以下に相当する画素データについては、階調合わせ画像において輝度値0〜j1に対応する画素データLdnに基づいて、上式(1)によって合成後の画像を構成するデータを算出する。画素データLdnは、図6において階調合わせ画像の帯内の領域61'に対応する。
【0029】
画像合成部19はさらに、nフレームの階調合わせ画像において、たとえば、輝度値がフルスケール(8ビットで例示する場合に255)の90%以上の値に相当する画素データ(階調合わせ画像の帯内の領域62'に対応)については、nフレームの短露光画像において対応する輝度値j2以上の画素データSenに基づいて、上式(2)によって合成後の画像を構成するデータを算出する。画素データSenは、図6において短露光画像の帯内の領域62に対応する。
【0030】
また、画像合成部19は、上述した輝度値j1〜j2に相当する画素データについては、nフレームの短露光画像において対応する輝度値の画素データSjn、nフレームの階調合わせ画像において対応する輝度値の画素データLjnの双方に基づいて上式(3)によって合成後の画像を構成するデータを算出する。DSP16は、画像合成部19により以上の合成処理が行われると、ステップS19へ進む。
【0031】
ステップS19において、DSP16は、画像内の全ての注目エリアについて上記ステップS13〜ステップS18、またはステップS13〜ステップS15およびステップS22の処理を終了したか否かを判定する。DSP16は、注目画素の位置をずらしながら、長露光画像および短露光画像の全域にわたって上述した処理を終了した場合には、ステップS19を肯定判定してステップS20へ進む。DSP16は、全ての注目エリアを対象に上述した処理を終了していない場合にはステップS19を否定判定し、注目画素を1つずらした上でステップS13へ戻り、上述した処理を繰り返す。
【0032】
ステップS20において、DSP16は、終了指示が行われたか否かを判定する。DSP16は、操作部材23を構成する録画ボタンから再度操作信号が入力されると、ステップS20を肯定判定して図2による処理を終了する。DSP16は、操作部材23を構成する録画ボタンから再度操作信号が入力されない場合は、ステップS20を否定判定してステップS21へ進む。
【0033】
ステップS21において、DSP16は、対象とするフレーム番号nを1つ進めてステップS11へ戻り、上述した処理を繰り返す。なお、録画中(動画取得中)のDSP16が2フレーム目以降の撮影条件を設定する際、撮像センサー11の感度および不図示の絞り値を固定したままとし、露光時間TおよびT/2を変化させることによって撮影条件を変更する。たとえば、短露光画像Sにおける最高輝度値をフルスケール(8ビットで例示する場合に255)の50%以下に抑えるように短露光画像用の露光時間T'/2を決定し、さらに短露光用の露光時間T'/2の2倍の露光時間T'を長露光画像用の露光時間T'とする。なお、本例の場合はT'の値の上限は1/60秒であるので、高輝度の被写体が現れた場合は必要に応じて露光時間を短く変更し、被写体の輝度が低下した場合は露光時間を長くする上限を1/60秒とする。
【0034】
図3において、nフレームの長露光画像Lnの取得が終われば、長露光画像についての隣接フレーム間の輝度差を算出(ステップS13)でき、nフレームの短露光画像Snの取得が終われば、短露光画像についての隣接フレーム間の輝度差を算出(ステップS13)できる。ステップS16〜S18による合成処理、またはステップS22による合成処理後の高ダイナミックレンジ画像(HDR画像)は、両輝度差についてそれぞれ判定閾値との比較が終われば算出できる。なお、図3ではnフレームの短露光画像Snおよびnフレームの長露光画像Lnに基づく合成処理後のnフレームのHDR画像を画像Rnと表す。同様に、(n+1)フレームの短露光画像S(n+1)および(n+1)フレームの長露光画像L(n+1)に基づく合成処理後の(n+1)フレームのHDR画像を画像R(n+1)と表す。
【0035】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電子カメラは、連続するフレームの各フレームにおいて露光時間が異なる複数の画像S、Lをそれぞれ取得する撮像センサー11、フロントエンド部12、DSP16と、露光時間が異なる複数の画像S、Lに基づいて合成画像Rを生成する画像合成部19と、露光時間が異なる複数の画像S、Lごとに、nフレーム目と(n−1)フレーム目との間の輝度差をそれぞれ検出する輝度差検出部18と、輝度差検出部18によって検出された複数の画像S、Lごとの輝度差に基づいて、画像合成部19がnフレーム目に対する合成画像Rnを生成する際に異なる合成処理をさせるDSP16と、を備えるようにしたので、動画像に対して適切にダイナミックレンジ拡大処理を行うことができる。
【0036】
(2)上記(1)の電子カメラにおいて、DSP16は、輝度差検出部18によって検出された複数の画像S、Lごとの輝度差の全てが所定値以下の場合に画像合成部19にS16〜S18による合成処理を行わせ、複数の画像S、Lごとの輝度差のうち少なくとも1つが所定値を超える場合に画像合成部19にS22による合成処理を行わせるようにした。これにより、輝度差の検出結果に基づいて適切に主要被写体の動きの有無を判断できる。そして、主要被写体の動きの有無を適切に判断したことで、動きのない場合にのみ選択的にダイナミックレンジ拡大処理を行える。動きがある場合は異なる処理を施し、動きがある被写体にダイナミックレンジ拡大処理を行うことによって生じるぶれなどの発生を防止できる。
【0037】
(3)上記(2)の電子カメラにおいて、S16〜S18による合成処理は、露光時間が最短の短露光画像における第1輝度値j1以下に対応する合成データを露光時間が最長の長露光画像における第1輝度値j1以下に対応する画像データLdnを用いて生成し、長露光画像における第2輝度値j2以上に対応する合成データを短露光画像における第2輝度値j2以上に対応する画像データSenを用いて生成し、短露光画像における第1輝度値j1から第2輝度値j2に対応する合成データを、露光時間が異なる複数の画像S、Lの第1輝度値j1から第2輝度値j2に対応する画像データSjn、Ljnを用いて生成する。たとえば、短露光画像において黒つぶれのおそれがある第1輝度値j1以下については、長露光画像において対応する画像データLdnを用いたので、黒つぶれの影響を抑えることができる。また、長露光画像において白飛びのおそれがある第2輝度値j2以上については、短露光画像において対応する画像データSenを用いたので、白飛びの影響を抑えることができる。上記第1輝度値j1から第2輝度値j2の範囲は、複数の画像S、Lにおいて対応する画像データSjn、Ljnを用いて生成するので、滑らかな階調でダイナミックレンジを拡大できる。
【0038】
(4)上記(2)の電子カメラにおいて、S22による合成処理は、露光時間が最短の短露光画像における画像データを用いて合成データを生成するので、何もせずに短露光画像を出力する場合と異なり、ダイナミックレンジを拡大したフレーム画像とダイナミックレンジを拡大しないフレーム画像との間の違和感を軽減することができる。
【0039】
(5)上記(4)の電子カメラにおいて、S22による合成処理は、短露光画像における画像データに対する階調合わせ処理を含むので、ダイナミックレンジを拡大したフレーム画像とダイナミックレンジを拡大しない場合のフレーム画像との間で、階調に起因する違和感をさらに軽減することができる。
【0040】
(6)上記(1)〜(5)の電子カメラにおいて、輝度差検出部18は所定の注目エリアごとに輝度差を検出し、画像合成部19は注目エリアごとに合成画像を生成するので、高精細の合成処理を行うことができる。
【0041】
(変形例1)
上記実施形態では、長露光画像についての隣接フレーム間の輝度差、および短露光画像についての隣接フレーム間の輝度差の双方が判定閾値以内である場合に当該隣接フレーム画像間で主要被写体の動きがないとみなす例を説明した。この代わりに、少なくとも最も短い露光画像について隣接フレーム間の輝度差が判定閾値以内であれば、当該隣接フレーム画像間で主要被写体の動きがないとみなすようにしてもよい。この場合、最も短い露光画像について隣接フレーム間の輝度差が判定閾値を超えれば、当該隣接フレーム画像間で主要被写体の動きがあるとみなす。
【0042】
(変形例2)
上述した説明では、1フレームの1/2の時間Tを長露光画像用の露光時間とし、T/2を短露光画像用の露光時間とする例を説明した。この代わりに、1フレームの2/3の時間Txを長露光画像用の露光時間とし、Tx/2(=1/3フレーム)を短露光画像用の露光時間としてもよい。この場合は、1フレームの中で非露光の時間をなくすことができる。
【0043】
(変形例3)
1フレームにおいて、先に長露光画像を取得してから短露光画像を取得する例を説明したが、先に短露光画像を取得してから長露光画像を取得する構成にしても構わない。
【0044】
(変形例4)
上述した説明では、1フレーム内で異なる露光時間による2つの露光画像を得る例を説明したが、異なる露光時間による複数の露光画像は、2つに限ることなく、3つでも4つでもよい。3つの露光画像を得る場合には、たとえば、1フレームの1/2の時間Tを1番長い露光時間とし、T/2を2番目の露光時間とし、T/4を3番目の露光時間とすることにより、1フレーム内で異なる露光時間による3つの露光画像が得られる。この場合は、上記ステップS18に相当する処理において、3つの露光画像に基づいて合成後の画像を求めることから、合成画像出力の中間階層域(k1〜k2の範囲)を滑らかに表現でき、高品位の画像が得られる。
【0045】
(変形例5)
また、1フレーム内で異なる露光時間による3つの露光画像を得る場合に、1フレームの4/7の時間Tyを1番長い露光時間とし、Ty/2(=2/7フレーム)を2番目の露光時間とし、Ty/4(=1/7フレーム)を3番目の露光時間とする。変形例5の場合も、1フレームの中で非露光の時間をなくすことができる。
【0046】
(変形例6)
上述したダイナミックレンジの拡大処理において、隣接フレームを加算することによってノイズ低減をはかってもよい。この場合、上式(1)〜(3)に代えて、それぞれ次式(4)〜(6)を用いる。
出力値=(Ld(n-1)+Ldn)×b1+d1 (4)
ただし、出力値は合成後の画像の画素データであり、出力値の範囲は0〜k1である。Ld(n-1)は(n−1)フレームの長露光画像において対応する輝度値の画素データ、Ldnはnフレームの長露光画像において対応する輝度値の画素データである。また、b1は所定の係数、d1は所定のオフセット係数である。
【0047】
出力値=(Se(n-1)+Sen)×b4+d4 (5)
ただし、出力値は合成後の画像の画素データであり、出力値の範囲はk2〜255である。Se(n-1)は(n−1)フレームの短露光画像において対応する輝度値の画素データ、Senはnフレームの短露光画像において対応する輝度値の画素データである。また、b4は所定の係数、d4は所定のオフセット係数である。
【0048】
出力値=(Lj(n-1)+Ljn)×b2+d2+(Sj(n-1)+Sjn)×b3+d3 (6)
ただし、出力値は合成後の画像の画素データであり、出力値の範囲はk1〜k2である。Lj(n-1)は(n−1)フレームの長露光画像において対応する輝度値の画素データ、Ljnはnフレームの長露光画像において対応する輝度値の画素データである。Sj(n-1)は(n−1)フレームの短露光画像において対応する輝度値の画素データ、Sjnはnフレームの短露光画像において対応する輝度値の画素データである。また、b2、b3はそれぞれ所定の係数、d2、d3はそれぞれ所定のオフセット係数である。
【0049】
変形例6によれば、画像の取得時刻が異なる隣接フレームの画像を加算するようにしたので、フレーム間で平滑化されるため、ランダムノイズの低減に有効である。なお、連続するフレーム画像を平滑化する変形例6以外の手法として、たとえば、上式(1)〜(3)を用いて合成処理した後の画像に対し、後から公知の3D-NR手法を採用してもよい。
【0050】
(変形例7)
1フレーム内において短い露光時間のみで複数の画像を取得してもよい。たとえば、1フレームの1/4の露光時間Tzで4つの画像を取得する。取得時刻が隣接する画像間で主要被写体の動きがないとみなす場合(すなわち、対応する注目エリアの輝度差が判定閾値以内の場合)は、4つの画像を加算して合成することにより、ランダムノイズの低減が図れる。動きがあるとみなす場合(すなわち、対応する注目エリアの輝度差が判定閾値を超える場合)は、合成後の階調を維持できるように合成する画像の数に応じたゲイン処理を行う。低輝度域から高輝度域までを細分化して合成する画像の数を設定することにより、ハイコントラストの被写体を再現できる。露光時間や合成する画像の数は、被写体条件やRAM17にバッファできる画像数によって適宜設定してよい。なお、上述した説明において、ゲイン処理(階調合わせ)はゲインコントロールによって行う他に、ルックアップテーブル(LUT)を用いた輝度階調変換処理として行う構成にしてもよい。
【0051】
(変形例8)
以上の説明では、画像の注目エリアについて輝度差を検出し、該注目エリアごとに画像合成処理を施す例を説明した。この代わりに、画像の注目エリアについて輝度差を検出し、画像合成処理は画像全体で行うようにしてもよい。この場合は、少なくとも1つの注目エリアで動きがあるとみなす場合(すなわち、少なくとも1つの注目エリアで輝度差が判定閾値を超える場合)は、画像の全域についてステップS22に相当する合成処理を行う。一方、全ての注目エリアで動きがないとみなす場合(すなわち、全ての注目エリアの輝度差が判定閾値以下の場合)は、画像の全域についてステップS16〜S18に相当する合成処理を行う。
【0052】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
11…撮像センサー
12…フロントエンド部
16…DSP
17…RAM
18…輝度差検出部
19…画像合成部
23…操作部材
Ln-1、Ln、Ln+1…長露光画像
Rn、Rn+1…合成画像
Sn-1、Sn、Sn+1…短露光画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続するフレームの各フレームにおいて露光時間が異なる複数の画像をそれぞれ取得する撮像手段と、
前記露光時間が異なる複数の画像に基づいて合成画像を生成する画像合成手段と、
前記露光時間が異なる複数の画像ごとに、nフレーム目と(n−1)フレーム目との間の輝度差をそれぞれ検出する輝度差検出手段と、
前記輝度差検出手段によって検出された前記複数の画像ごとの輝度差に基づいて、前記画像合成手段が前記nフレーム目に対する合成画像を生成する際に異なる合成処理をさせる制御手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記制御手段は、前記輝度差検出手段によって検出された前記複数の画像ごとの輝度差のうち、少なくとも前記露光時間が最短の画像における輝度差が所定値以下の場合に前記画像合成手段に第1の合成処理を行わせ、前記露光時間が最短の画像における輝度差が前記所定値を超える場合に前記画像合成手段に第2の合成処理を行わせることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記制御手段は、前記輝度差検出手段によって検出された前記複数の画像ごとの輝度差の全てが所定値以下の場合に前記画像合成手段に第1の合成処理を行わせ、前記複数の画像ごとの輝度差のうち少なくとも1つが前記所定値を超える場合に前記画像合成手段に第2の合成処理を行わせることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の撮像装置において、
前記第1の合成処理は、前記露光時間が最短のS画像における第1輝度値以下に対応する合成データを前記露光時間が最長のL画像における前記第1輝度値以下に対応する画像データを用いて生成し、
前記L画像における第2輝度値以上に対応する合成データを前記S画像における前記第2輝度値以上に対応する画像データを用いて生成し、
前記S画像における前記第1輝度値から前記第2輝度値に対応する合成データを、前記露光時間が異なる複数の画像の全てにおいて前記第1輝度値から前記第2輝度値に対応する画像データを用いて生成することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載の撮像装置において、
前記第2の合成処理は、前記露光時間が最短のS画像における画像データを用いて合成データを生成することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項5に記載の撮像装置において、
前記第2の合成処理は、前記S画像における画像データに対する階調合わせ処理を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記輝度差検出手段は、所定の画像領域ごとに前記輝度差を検出し、
前記画像合成手段は、前記画像領域ごとに合成画像を生成することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−231273(P2012−231273A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97827(P2011−97827)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】