説明

散布装置

【課題】 粒状物を損傷させることなく、連続して一定量の粒状物を散布することができる散布装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 一定量の肥料(粒状物)を放出可能な散布装置であって、肥料の収納空間11が設けられているとともに、収納空間11の底板12の下方で水平方向に移動可能なスライド部材40を有する収納部10と、収納部10の底部から下方に突出している放出管20と、収納部10に設けられた取っ手部30とを備え、スライド部材40の充填孔41は、収納空間11の底板12を貫通している排出孔14と連通しており、スライド部材40を移動させることにより、充填孔41の上端開口部が底板12によって閉塞され、充填孔41の下端開口部が放出管20と連通するように構成され、排出孔14の放出管20側の内面が、弾性体である緩衝板15によって覆われていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定量の粒状物を放出可能な散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉢植えの土壌に対して、一定量の肥料を散布して施すことができる散布装置としては、図9(a)に示すように、粒状物である肥料を貯留する収納空間111が設けられているとともに、収納空間111の底部に設けられた底板112の下方で、水平方向に移動可能なスライド部材140を有する収納部110と、収納部110の底部から下方に突出している放出管120とを備えた散布装置100がある。この散布装置100では、スライド部材140に設けられた充填孔141の上端開口部が、収納空間111の底板112を貫通している排出孔114と連通しており、スライド部材140を移動させることにより、充填孔141の上端開口部が底板112によって閉塞され、充填孔141の下端開口部が放出管120と連通するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記散布装置100を用いた施肥作業では、まず、収納空間111に肥料を投入することにより、収納空間111の排出孔114を通じてスライド部材140の充填孔141に肥料を充填する。そして、図9(b)に示すように、操作手段130によって、スライド部材140を放出管120に向けて(図9(b)の左側に向けて)移動させ、充填孔141の上端開口部を底板112によって閉塞するとともに、充填孔141の下端開口部を放出管120と連通させることにより、充填孔141に充填された肥料を放出管120の先端部から外部に放出することができる。このようにして、操作手段130を操作するごとに、スライド部材140の充填孔141に充填された一定量の肥料が放出管120から放出されるため、多数の鉢植えに対して連続して一定量の肥料を散布して施すことができる。
【特許文献1】特開2004−180590号公報(段落0007、図3〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記散布装置100では、放出管120に向けてスライド部材140を移動させた際に、底板112とスライド部材140との境に貯留された肥料が、排出孔114の下端開口縁と、充填孔141の上端開口縁との間に挟まれることにより、肥料が損傷してしまうという問題がある。特に、肥料を1粒づつコーティングすることにより、その内容成分を除々に放出させて効果を持続させる肥料では、損傷箇所から内容成分が早期に放出されてしまうため、所定の効果を得ることができなくなってしまう。
【0005】
また、排出孔114の下端開口縁と、充填孔141の上端開口縁との間に挟まれた肥料によって、スライド部材140を放出管120に向けて移動させることができなくなってしまう場合があり、このような場合には、スライド部材140を一旦反対側に移動させた後に、再度、放出管120に向けて移動させる必要があるため、連続して肥料を施すことができなくなってしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、肥料、薬剤、種子等の粒状物を損傷させることなく、連続して一定量の粒状物を施すことができる散布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、一定量の粒状物を放出可能な散布装置であって、粒状物を貯留するための収納空間が設けられているとともに、収納空間の底部に設けられた底板の下方で、水平方向に移動可能なスライド部材を有する収納部と、収納部の底部から下方に突出している放出管と、収納部に設けられた取っ手部とを備え、スライド部材に設けられた充填孔の上端開口部は、底板を貫通している排出孔と連通しており、取っ手部に設けられた操作手段によって、スライド部材を移動させることにより、充填孔の上端開口部が底板によって閉塞され、充填孔の下端開口部が放出管と連通するように構成され、排出孔の放出管側の内面が、弾性体である緩衝部材によって覆われていることを特徴としている。
【0008】
ここで、粒状物とは、粒状の肥料、薬剤、種子等であり、粒状の固体であれば、特に限定されるものではない。
【0009】
このように、本発明の散布装置では、排出孔の放出管側の内面が、弾性体である緩衝部材によって覆われているため、スライド部材を移動させた際に、スライド部材と底板との境に貯留された粒状物は、柔らかい緩衝部材に当接することよって、排出孔側に押し出され、或いは、充填孔に押し込められる。これにより、排出孔の下端開口縁と、充填孔の上端開口縁との間に粒状物が挟まれてしまうことを防ぐことができ、充填孔に充填された粒状物の損傷を防ぐことができる。
これは、肥料や薬剤を1粒づつコーティングすることにより、その内容成分を徐々に放出させて効果を持続させる肥料や薬剤に対して特に有効であり、肥料や薬剤の内容成分が損傷箇所から早期に放出されてしまうことを防ぐことができ、所定の効果を得ることができる。また、種子を散布する場合には、種子の種皮が損傷してしまうことを防ぐことができるため、種子の発芽を妨げることがない。
【0010】
さらに、スライド部材と底板との境に貯留された粒状物は、弾性体である緩衝部材に当接することによって、排出孔側に押し出され、或いは、充填孔に押し込められるため、粒状物を円滑に移動させることができる。これにより、排出孔の下端開口縁と、充填孔の上端開口縁との間に粒状物が挟まれてしまうことを防ぐことができ、スライド部材を確実に移動させて、充填孔と放出管とを連通させることができるため、連続して粒状物を散布することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の散布装置であって、緩衝部材は、収納空間の内面に設けられた支持部材によって支持されており、排出孔の放出管側の内面は、排出孔内に挿入された緩衝部材の下端部によって覆われていることを特徴としている。
【0012】
このように、本発明の散布装置では、収納空間に設けられた支持部材に支持された緩衝部材の下端部によって、排出孔の放出管側の内面を覆っているため、緩衝部材を簡易に取り付けることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の散布装置であって、支持部材には中空部が形成されており、中空部には弾性体が嵌め込まれていることを特徴としている。
【0014】
このように、本発明の散布装置では、緩衝部材を支持している支持部材に形成された中空部に弾性体が嵌め込まれており、支持部材が弾性を備えた状態となっている。これにより、支持部材の弾性によって、緩衝部材の柔軟性を高めることができるため、粒状物が当接した際の押圧力を逃すことができ、スライド部材と底板との境に貯留された粒状物の損傷を確実に防ぐことができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の散布装置であって、排出孔の放出管側の内面と、緩衝部材との間には隙間が設けられていることを特徴としている。
【0016】
このように、本発明の散布装置では、排出孔における放出管側の内面と、緩衝部材との間に隙間を設けることにより、弾性体である緩衝部材の柔軟性を高めることができるため、粒状物が当接した際の押圧力を逃すことができ、スライド部材と底板との境に貯留された粒状物の損傷を確実に防ぐことができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の散布装置であって、スライド部材は、底板の下方に形成された案内溝の内部を摺動するように構成されており、スライド部材の外面部に形成された切り欠き部によって、スライド部材と案内溝の内面との間に隙間が形成されていることを特徴としている。
【0018】
このように、本発明の散布装置では、スライド部材と案内溝との間に隙間が形成されており、スライド部材と案内溝との摩擦抵抗が少なくなっているため、スライド部材を滑らかに移動させることができる。
また、薬剤のように非常に小さい粒状物がスライド部材と案内溝との間に入り込んでしまった場合であっても、スライド部材を確実に移動させて、粒状物を散布することができる。
【発明の効果】
【0019】
このような散布装置によれば、排出孔の放出管側の内面が弾性体である緩衝部材によって覆われているため、スライド部材を移動させた際に、スライド部材と底板との境に貯留された粒状物は、柔らかい緩衝部材に当接して移動することになる。これにより、排出孔の下端開口縁と充填孔の上端開口縁との間に粒状物が挟まれてしまうことを防ぐことができるため、充填孔に充填された粒状物の損傷を防ぐことができるとともに、スライド部材を確実に移動させることができ、連続して一定量の粒状物を散布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の散布装置を示した図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。図2は、本実施形態の散布装置を示した側断面図である。図3は、本実施形態の散布装置を示した図で、(a)は図2のA−A断面図、(b)は図2のB−B断面図である。図4は、本実施形態の散布装置を示した図で、(a)は正面図、(b)は図2のC−C断面図である。図5は、本実施形態の散布装置において、スライド部材を前進させた状態を示した図で、(a)は平面断面図、(b)は側断面図である。
なお、本実施形態において、前方とは図1(b)の左側に対応し、後方とは図1(b)の右側に対応している。
【0021】
本実施形態では、粒状物である肥料を鉢植えに散布して施すための散布装置を想定して説明する。
散布装置1は、図1に示すように、肥料を貯留する円筒状の容器である収納部10と、収納部10の底部から下方に突出している放出管20と、収納部10の下面に設けられた取っ手部30とを備えており、収納部10に貯留された肥料を一定量ごとに放出管20から放出する施肥装置である。なお、本実施形態の散布装置1は、作業員が片手で取っ手部30を把持して持ち運び可能な大きさおよび重量であり、放出管20の先端部を鉢植えの土壌に向けることにより、所望の位置に一定量の肥料を散布して施すことができる。
【0022】
収納部10は、図1および図2に示すように、円筒状に形成された硬質樹脂製の容器であり、肥料を貯留する収納空間11が設けられているとともに、収納空間11の底面を構成する底板12の下方で前後方向に移動可能なスライド部材40を有しており、収納空間11の上端開口部を閉塞するように、着脱自在な上蓋13が被せられている。なお、上蓋13の中央部には、透明な覗き窓13aが設けられており、この覗き窓13aを通じて、収納空間11内の肥料の貯留量を確認することができる。
【0023】
収納空間11の底板12の略中央部には、図3に示すように、平面視で長方形に形成された排出孔14が貫通している。
また、排出孔14の前側(図2の左側)の内面は、弾性体であるゴム板によって形成された緩衝板15(請求項における「緩衝部材」)によって覆われている。
【0024】
緩衝板15は、その両平面を前後方向に向けた状態で、収納空間11内に設けられており、その下端部が排出孔14内に挿入されることにより、排出孔14の前側の内面を覆っている。
なお、緩衝板15の上部は、収納空間11の内面から内方に向けて突出した直方体である支持部材15aの後端面に取り付けられており、緩衝板15の下端部の前面と、排出孔14の前側の内面との間には、隙間14aが形成されている。
【0025】
また、底板12には、図3(a)および図4(b)に示すように、収納空間11において、図4(b)の左右両側の内面から底板12の上面に向けて下方に傾斜している傾斜部16,16が形成されており、この傾斜部16,16によって、収納空間11に投入された肥料が底板12の中央部に集まるように構成されている。
【0026】
さらに、図2、図3および図4に示すように、底板12の下方において、図4(b)の左右方向の中央部には、前後方向に延長された凹溝である案内溝17が設けられており、案内溝17は底板12の排出孔14と連通している。この案内溝17の前端部は外部に通じており、後端部は閉塞された状態となっている。また、案内溝17の前端開口部は、収納部10の外面に2本のビス17b,17bによって着脱自在に固定された板状のシャッタ17aによって閉塞されている。
【0027】
スライド部材40は、図2、図3および図4に示すように、案内溝17内に嵌め込まれた状態で、前後方向に移動可能な硬質樹脂製の直方体であり、案内溝17の軸断面と同一な軸断面となっている。
また、スライド部材40の前端面とシャッタ17aとの間には、コイルバネ17cが介設されており、スライド部材40は、コイルバネ17cと、後記する取っ手部30のレバー部材31との間に配置されることにより、案内溝17の軸方向における略中央部に位置決めされている。
【0028】
さらに、スライド部材40には、平面視で円形の充填孔41が上下方向に貫通している。この充填孔41の上端開口部は、スライド部材40が案内溝17内で位置決めされた状態において、底板12の排出孔14の前側に連通しており、その開口面積は排出孔14よりも小さくなっている。
【0029】
また、スライド部材40の後方下部には、後記する取っ手部30のレバー部材31の上端部が係合する係合溝42が前後方向に延長して設けられている。
そして、係合溝42に係合したレバー部材31の上端部によってスライド部材40が前方に押されることにより、図5に示すように、スライド部材40は前方に移動し、案内溝17内を摺動して前進する。このとき、スライド部材40の前方に配置されたコイルバネ17cが縮退するため、レバー部材31による押圧力を解除した場合には、図2に示すように、コイルバネ17cの付勢力によって、スライド部材40は案内溝17内で後進して、元の位置に戻る。
【0030】
また、収納部10の下板18には、その下面から案内溝17内に連通している放出孔18aが貫通している。この放出孔18aは充填孔41と同一径に形成されており、レバー部材31の上端部によって、スライド部材40を最も前進させた際に、放出孔18aの上端開口部が充填孔41の下端開口部と連通するように構成されている。
【0031】
さらに、放出孔18aの下端開口縁には下方に突出した管状の取付部18bが、斜め前方に向けて形成されている。
この取付部18bには、硬質樹脂製のパイプである放出管20の上端部が外嵌されており、放出管20の内部と放出孔18aとが連通した状態となっている。
【0032】
取っ手部30は、下端部を斜め後方に向けた状態で、収納部10の下板18の下面に取り付けられている把持部32と、把持部32の前方に配置されたレバー部材31と、上端部が収納部10の下板18の下面に取り付けられており、レバー部材31を支持している支持部33とから構成されている。
【0033】
レバー部材31は、軸方向が上下方向に配置されており、軸方向の略中央部に設けられた水平ピン34によって鉛直方向に回動自在な状態で、支持部33に取り付けられている。また、収納部10の下板18には、案内溝17内に連通している挿入溝18dが前後方向に延長して設けられており、レバー部材31の上端部は挿入溝18dを通じて、スライド部材40に設けられた係合溝42の前側の内面に係合している。
【0034】
ここで、取っ手部30の動作について説明する。図5に示すように、作業員が把持部32を把持し、手指でレバー部材31の下部を把持部32に引き寄せることにより、レバー部材31は水平ピン34を中心として回動する。このレバー部材31の回動により、前方に移動したレバー部材31の上端部によって、スライド部材40が前方に押されることになる。その状態からレバー部材31を放した場合には、図2に示すように、コイルバネ17cの付勢力によってスライド部材40が案内溝17内で後方に移動し、後進したスライド部材40に押されてレバー部材31の上端部が移動することになり、レバー部材31全体が水平ピン34を中心として回動することにより、レバー部材31が元の位置に戻る。
【0035】
次に、本実施形態の散布装置1は、次のように動作して本発明の作用効果を奏する。
図6は、本実施形態の散布装置において、肥料を放出する態様を示した図で、(a)は肥料を充填孔に充填した状態の側断面図、(b)はスライド部材を前進させた態様の側断面図、(c)は肥料を放出管から放出している態様の側断面図である。
ここでは、1粒づつコーティングされることにより、その内容成分が徐々に放出され、効果が長期間に渡って持続するように構成された粒状物である肥料を散布して施肥する場合について説明する。
【0036】
本発明の散布装置1を用いて施肥作業を行う場合には、まず、図1に示すように、収納部10の上蓋13を取り外して、収納空間11内に粒状物である肥料を投入した後に、上蓋13を収納部10に被せる。なお、上蓋13には、覗き窓13aが設けられているため、この覗き窓13aを通じて、収納空間11内の肥料の貯留量を随時把握することができる。
【0037】
収納空間11内に投入された肥料は、図4および図6(a)に示すように、傾斜部16,16によって、底板12の中央部に集中し、底板12に設けられた排出孔14を通じて、スライド部材40の充填孔41内に充填される。このとき、排出孔14の開口面積が充填孔41の開口面積よりも大きいため、肥料が排出孔14内に詰まることなく、円滑かつ確実に充填孔41内に充填される。
【0038】
続いて、図6(b)に示すように、作業員が把持部32を把持し、手指でレバー部材31の下部を把持部32に引き寄せることにより、レバー部材31の上端部によって、スライド部材40を前方に押し出す。これにより、スライド部材40の充填孔41の上端開口部が底板12によって閉塞され、所定量の肥料が充填孔41内に充填された状態となる。
【0039】
このとき、排出孔14の前側の内面は、ゴム板である緩衝板15によって覆われているため、スライド部材40を移動させた際に、スライド部材40と底板12との境に貯留された肥料は、柔らかい緩衝板15に当接することによって、排出孔14側に押し出され、或いは、充填孔41に押し込められる。
また、排出孔14の前側の内面と、緩衝板15との間には、隙間14aが形成されており、緩衝板15の下端部の柔軟性が高まっているため、肥料が当接した際に、緩衝板15の下端部が前方に曲がることにより、その押圧力を逃すことができる。これにより、スライド部材40と底板12との境に貯留された肥料の損傷を確実に防ぐことができる。
このように、充填孔41に充填された肥料の損傷を防ぐことができるため、肥料の内容成分が損傷箇所から早期に放出されてしまうことを防ぐことができる。
【0040】
また、スライド部材40と底板12との境に貯留された肥料は、ゴム板である緩衝板15の後面に当接することによって、排出孔14側に押し出され、或いは、充填孔41に押し込められるため、肥料を円滑に移動させることができる。これにより、排出孔14の下端開口縁と、充填孔41の上端開口縁との間に肥料が挟まれてしまうことを防ぐことができ、スライド部材40を確実に移動させることができる。
【0041】
そして、図6(c)に示すように、充填孔41の下端開口部と、下板18の放出孔18aとが連通する位置までスライド部材40を移動させ、充填孔41に充填された肥料を放出孔18aから放出管20内に落下させることにより、充填孔41に充填されていた一定量の肥料を、放出管20の先端部から放出して、土壌に施すことができる。
【0042】
肥料を放出した後には、図2に示すように、レバー部材31を放すことにより、コイルバネ17cの付勢力によってスライド部材40が案内溝17内で後方に移動し、後進したスライド部材40に押されてレバー部材31の上端部が移動する。このようにして、レバー部材31が水平ピン34を中心として回動することにより、スライド部材40およびレバー部材31が元の位置に戻る。
【0043】
排出孔14に連通したスライド部材40の充填孔41には、前記動作と同様にして、収納空間11に貯留された肥料が充填されるため、再度、作業員がレバー部材31を把持部32に引き寄せることにより、一定量の肥料の放出を繰り返すことができる。このとき、緩衝板15によって、排出孔14の下端開口縁と、充填孔41の上端開口縁との間に肥料が挟まれてしまうことが防止されているため、スライド部材40を確実に移動させることができ、連続して一定量の肥料を散布して施すことができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。図7は、本実施形態の散布装置における他の構成を示した図で、支持部材の内部に弾性体が嵌め込まれている構成の側断面図である。図8は、本実施形態の散布装置における他の構成を示した図で、(a)は切り欠き部が形成されたスライド部材の側面図、(b)は切り欠き部が形成されたスライド部材の正面図である。
【0045】
例えば、図7に示すように、樹脂材によって形成された支持部材15bの内部に中空部15cを形成し、この中空部15cにスポンジ等の弾性体15dを嵌め込むことにより、支持部材15bが弾性を備えているように構成することができる。この構成では、支持部材15bの弾性によって、緩衝板15の柔軟性をさらに高めることができるため、肥料が当接した際の押圧力を確実に逃すことができ、スライド部材40と底板12との境に貯留された肥料の損傷を確実に防ぐことができる。
また、図7に示した構成では、支持部材15bの後端下部に、隙間14aに連通する切り欠き部15eを形成することにより、緩衝板15の下端部の柔軟性を高めている。
さらに、図7に示した構成では、底板12の排出孔14を案内溝17の前端部まで延長し、支持部材15bの内部に嵌め込まれている弾性体15dの下端部を排出孔14内に突出させている。この構成では、スライド部材40を前方に移動させたときに、スライド部材40と底板12との境に貯留された肥料は、底板12に当接することなく、緩衝板15を介して弾性体15dに押し付けられることになるため、その押圧力を確実に逃がすことができる。
なお、支持部材全体を硬質ゴム等の弾性体によって形成することにより、支持部材が弾性を備えているように構成した場合でも、前記した支持部材15bと同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、図8に示すように、外面部に切り欠き部が形成されたスライド部材40´を用いてもよい。図8に示したスライド部材40´では、上端縁にフランジ部43が形成されるように側面部を切り欠くとともに、下方に突出した突出部44、44が形成されるように下面部を切り欠いている。
この構成では、スライド部材40´に形成された切り欠き部によって、スライド部材40´と案内溝17の内面との間に隙間17dが形成され、スライド部材40´と案内溝17との摩擦抵抗が少なくなっているため、スライド部材40´を滑らかに移動させることができる。また、薬剤のように非常に小さい粒状物がスライド部材40´と案内溝17との間に入り込んでしまった場合であっても、スライド部材40´を確実に移動させることができる。
なお、スライド部材40´に形成する切り欠き部は、スライド部材40´と案内溝17との摩擦抵抗が少なくなるとともに、スライド部材40´が案内溝17内で傾くことなく安定して移動することができるのであれば、その構成は限定されるものではない。
【0047】
また、本実施形態では、図2に示すように、硬質樹脂製の放出管20を用いているが、軟質樹脂製の放出管20を用いてもよく、この構成では、鉢植え等に植えられた植物に放出管20が当接した場合であっても、植物の損傷を防ぐことができるため、放出管20の先端部を土壌の近傍まで移動させて施肥作業を行うことができる。
【0048】
また、底板12に設けられた排出孔14の下端開口縁、およびスライド部材40に設けられた充填孔41の上端開口縁に切り欠き部を設けてもよく、この構成では、排出孔14の下端開口縁と、充填孔41の上端開口縁との間に挟まれた肥料が、切り欠き部の傾斜面によって、排出孔14側、或いは、充填孔41側に向けて円滑に移動するため、排出孔14の下端開口縁と、充填孔41の上端開口縁との間に肥料が挟まれてしまうことを確実に防ぐことができる。
【0049】
また、緩衝板15の下端部をブラシ状に形成した場合には、緩衝板15に当接した肥料の損傷をより確実に防ぐことができる。なお、緩衝板15の下端部をブラシ状に形成する構成としては、例えば、ブラシ状の部材を緩衝板15の下端部に取り付ける構成や、緩衝板15の下端部に複数の縦スリットを形成してブラシ状にする構成がある。
【0050】
また、本実施形態では、図4(a)に示すように、案内溝17の前端開口部を閉塞するシャッタ17aが、収納部10の外面に2本のビス17b,17bによって固定されているが、シャッタ17aの側端部を嵌め込むための凹溝を収納部10に設け、シャッタ17aを下方からスライドさせて凹溝に嵌め込むことにより、案内溝17の前端開口部を閉塞するように構成した場合には、シャッタ17aを簡易に着脱することができる。そして、シャッタ17aを取り外して、スライド部材40を案内溝17の前端開口部から取り出し、充填孔41内の容量が異なるスライド部材40に交換することにより、散布装置1から一回に施される肥料の量を簡易に変更することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、粒状物である肥料を散布する構成について説明したが、同様の構成の散布装置1を用いて、粒状物である薬剤や種子を散布することも可能であり、散布装置1から放出される粒状物は限定されるものではない。
そして、本実施形態の散布装置を用いて、1粒づつコーティングされた薬剤を散布する場合には、前記肥料を散布した場合と同様に、薬剤の損傷しないため、薬剤の内容成分が損傷箇所から早期に放出されてしまうことを防ぐことができ、所定の効果を得ることができる。また、種子を散布する場合には、種子の種皮が損傷してしまうことを防ぐことができるため、種子の発芽を妨げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態の散布装置を示した図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】本実施形態の散布装置を示した側断面図である。
【図3】本実施形態の散布装置を示した図で、(a)は図2のA−A断面図、(b)は図2のB−B断面図である。
【図4】本実施形態の散布装置を示した図で、(a)は正面図、(b)は図2のC−C断面図である。
【図5】本実施形態の散布装置において、スライド部材を前進させた状態を示した図で、(a)は平面断面図、(b)は側断面図である。
【図6】本実施形態の散布装置において、肥料を放出する態様を示した図で、(a)は肥料を充填孔に充填した状態の側断面図、(b)はスライド部材を前進させた態様の側断面図、(c)は肥料を放出管から放出している態様の側断面図である。
【図7】本実施形態の散布装置における他の構成を示した図で、支持部材の内部に弾性体が嵌め込まれている構成の側断面図である。
【図8】本実施形態の散布装置における他の構成を示した図で、(a)は切り欠き部が形成されたスライド部材の側面図、(b)は切り欠き部が形成されたスライド部材の正面図である。
【図9】従来の散布装置において肥料を放出する態様を示した図で、(a)は肥料を充填孔に充填した状態の側断面図、(b)は肥料を放出管から放出している態様の側断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 散布装置
10 収納部
11 収納空間
12 底板
14 排出孔
14a 隙間
15 緩衝板
15a 支持部材
16 傾斜部
17 案内溝
17c コイルバネ
18 下板
18a 放出孔
20 放出管
30 取っ手部
31 レバー部材
40 スライド部材
41 充填孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定量の粒状物を放出可能な散布装置であって、
粒状物を貯留するための収納空間が設けられているとともに、前記収納空間の底部に設けられた底板の下方で、水平方向に移動可能なスライド部材を有する収納部と、
前記収納部の底部から下方に突出している放出管と、
前記収納部に設けられた取っ手部と、を備え、
前記スライド部材に設けられた充填孔の上端開口部は、前記底板を貫通している排出孔と連通しており、
前記取っ手部に設けられた操作手段によって、前記スライド部材を移動させることにより、前記充填孔の上端開口部が前記底板によって閉塞され、前記充填孔の下端開口部が前記放出管と連通するように構成され、
前記排出孔の前記放出管側の内面が、弾性体である緩衝部材によって覆われていることを特徴とする散布装置。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記収納空間の内面に設けられた支持部材によって支持されており、
前記排出孔の前記放出管側の内面は、前記排出孔内に挿入された前記緩衝部材の下端部によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の散布装置。
【請求項3】
前記支持部材には中空部が形成されており、前記中空部には弾性体が嵌め込まれていることを特徴とする請求項2に記載の散布装置。
【請求項4】
前記排出孔の前記放出管側の内面と、前記緩衝部材との間には隙間が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の散布装置。
【請求項5】
前記スライド部材は、前記底板の下方に形成された案内溝の内部を摺動するように構成されており、
前記スライド部材の外面部に形成された切り欠き部によって、前記スライド部材と前記案内溝との間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−296408(P2006−296408A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184385(P2005−184385)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000188940)株式会社マツモト (11)
【Fターム(参考)】