説明

旋回駆動装置、旋回制御装置、旋回制御方法、および建設機械

【課題】 簡単な構成の旋回駆動装置、旋回制御装置、旋回制御方法、および建設機械を提供すること。
【解決手段】電動旋回ショベルの旋回駆動装置5は、電力により回転駆動するモータを備えた電動モータ50と、この電動モータ50に接続され、電動モータ50の回転数を減少させて第3駆動軸513Cを駆動させる第1ないし第3減速部511,512,513と、第1減速部511および第2減速部512の間に設けられて、第1駆動軸511Cの回転を制動するメカニカルブレーキ520と、第3駆動軸513Cの第3駆動歯車513Dと噛合して旋回体4を旋回させるスイングサークル3とを備えている。これにより、メカニカルブレーキ520は、第1減速部511にて減速された第1駆動軸511Cを制動する。したがって、メカニカルブレーキ520のサイズを小型化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回駆動装置、旋回制御装置、旋回制御方法、および建設機械に係り、特にメカニカルブレーキが設けられた旋回駆動装置、この旋回駆動装置を制御する旋回制御装置、メカニカルブレーキの制動制御を含む旋回制御方法、およびこれらによって旋回駆動させる旋回体を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧モータ装置により旋回体を駆動する建設機械が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の油圧モータ装置は、油圧モータ部と減速機部とを備え、上部旋回体側の旋回フレームに設置される。この油圧モータ装置の油圧モータ部は、ハウジング内部に斜板式油圧モータを備え、この斜板式油圧モータは、シリンダ、駆動軸、斜板、およびバルブプレートを備えて構成されている。そして、油圧モータ部のシリンダの外周部とハウジング内周部との間には、メカニカルブレーキが組み込まれている。
【0004】
また、近年、旋回体を旋回用電動モータで駆動する建設機械が注目されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この特許文献2に記載の旋回用電動モータは、ショベルの上部旋回体に設置され、旋回用減速機構を介して当該旋回体を駆動する。そして、旋回用電動モータと減速機構との間には、機械的にブレーキ力を発生するメカニカルブレーキが設けられている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−357260号公報(第3頁右欄ないし第7頁左欄、図1ないし図4)
【特許文献2】特開2004−36304号公報(第4頁ないし第7頁、図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のような油圧モータ装置を建設機械に用いた場合には、制御バルブで分流される油圧にて旋回体とブームやアームといった作業機とを駆動することになるため、制御バルブなどでのロスが生じ、燃費改善に大きな制限があるという問題がある。
【0008】
そこで、特許文献2のように、旋回動作を電動モータにて行うことにより作業機などの油圧駆動側でのロスを少なくすることが考えられる。しかしながら、旋回用の油圧モータを単に電動モータに置き換えたのでは、油圧モータと同程度のトルクを得るために大容量の電動モータが必要になる。したがって、電動モータ自身が格段に大きくなるため、旋回体に設置される電動モータとしては実用的ではないという問題がある。そこで電動モータを小型化するためには、減速機構の減速比を大きくとることが望ましい。しかし、その場合、電動モータを用いるにあたって、特許文献2に記載のような構成を採用したのでは、旋回用の電動モータと減速機構との間にメカニカルブレーキが設けられるため、メカニカルブレーキは、電動モータの高速回転軸を制動する必要があり、この点でメカニカルブレーキで大きな損失が生じてしまううえ、構成が複雑化するという問題がある。
【0009】
本発明は、前記のような問題に鑑み、簡単な構成で小型化できる旋回駆動装置、この旋回駆動装置を制御する旋回制御装置、旋回制御方法、および建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る旋回駆動装置は、電動モータの駆動力をスイングサークルに伝達することで旋回体を旋回駆動する旋回駆動装置であって、前記電動モータおよび前記スイングサークルの間に設けられた複数段の減速部と、前記複数段の減速部を構成するいずれかの出力軸を制動する制動部とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に係る旋回駆動装置は、請求項1に記載の旋回駆動装置において、前記電動モータおよび前記制動部の間に配置される回転駆動軸には、当該制動部で制動される部位よりも前段位置に耐衝撃性の低い低衝撃性部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に係る旋回駆動装置は、請求項2に記載の旋回駆動装置において、前記低衝撃性部は、前記電動モータの回転駆動軸に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に係る旋回駆動装置は、請求項2または請求項3に記載の旋回駆動装置において、前記低衝撃性部は、他部よりも径寸法が小さく縮径されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に係る旋回制御装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の旋回駆動装置を制御する旋回制御装置であって、前記電動モータの実際の回転速度を認識するモータ回転速度認識手段と、前記旋回体を旋回させる旋回要求速度を認識する旋回要求速度認識手段と、前記モータ回転速度および前記旋回要求速度に基づいて、前記電動モータの回転速度および前記旋回要求速度との偏差量を演算する偏差演算手段と、前記偏差量に応じて前記電動モータの回転速度を制御するとともに、前記旋回駆動装置の前記制動部を制御する速度制御手段とを備え、前記速度制御手段は、前記偏差量が所定の規定量以内であり、かつ前記電動モータの回転速度の変化量が所定の変化量以上である場合に、前記制動部にて前記回転駆動軸を制動させることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6に係る旋回制御装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の旋回駆動装置を制御する旋回制御装置であって、前記電動モータの実際の回転速度を認識するモータ回転速度認識手段と、前記旋回体を旋回させる旋回要求速度を認識する旋回要求速度認識手段と、前記モータ回転速度および前記旋回要求速度に基づいて、前記電動モータの回転速度および前記旋回要求速度との偏差量を演算する偏差演算手段と、前記偏差量に応じて前記電動モータの回転速度を制御するとともに、前記旋回駆動装置の前記制動部を制御する速度制御手段とを備え、前記速度制御手段は、前記偏差量が所定の規定量を越える値であり、かつ前記電動モータが前記偏差量に応じた回転トルクを出力していない場合、前記制動部にて前記回転駆動軸を制動させることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7に係る旋回制御装置は、請求項5または請求項6に記載の旋回制御装置において、前記速度制御手段にて前記制動部が制御されると、制動部が動作した旨の信号を警報手段に出力する警報信号出力手段を備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項8に係る旋回制御方法は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の旋回駆動装置を制御する旋回制御方法であって、前記電動モータの実際の回転速度を認識し、前記旋回体を旋回させる旋回要求速度を認識し、前記モータ回転速度および前記旋回要求速度に基づいて、前記電動モータの回転速度および前記旋回要求速度との偏差量を演算し、前記偏差量に応じて前記電動モータの回転速度を制御するとともに、前記旋回駆動装置の前記制動部を制御するとともに、前記偏差量が所定の規定量以内であり、かつ前記電動モータの回転速度の変化量が所定の変化量以上である場合に、前記制動部にて前記回転駆動軸を制動させることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項9に係る旋回制御方法は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の旋回駆動装置を制御する旋回制御方法であって、前記電動モータの実際の回転速度を認識し、前記旋回体を旋回させる旋回要求速度を認識し、前記モータ回転速度および前記旋回要求速度に基づいて、前記電動モータの回転速度および前記旋回要求速度との偏差量を演算し、前記偏差量に応じて前記電動モータの回転速度を制御するとともに、前記旋回駆動装置の前記制動部を制御するとともに、前記偏差量が所定の規定量を越える値であり、かつ前記電動モータが前記偏差量に応じた回転トルクを出力していない場合、前記制動部にて前記回転駆動軸を制動させることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項10に係る建設機械は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の旋回駆動装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、旋回駆動装置は、電力により回転駆動する電動モータに接続される複数段の減速部と、これらの複数段の減速部のうちいずれかの減速部の出力軸に設けられて、その駆動力を制動する制動部とを備えている。これにより、制動部は、電動モータから出力された駆動力を減退させて回転駆動される出力軸を制動するので、電動モータによる高速回転を直接制動する必要がなく、制動部の制動力として大きな力が不要になる。したがって、制動部のサイズの小型化が可能となり、旋回駆動装置の生産コストも最小限に抑えられる。さらに、回転駆動力による回転速度が減速されて駆動する回転駆動軸を制動するため、連れ回りトルクが小さくなり、旋回駆動の効率低下を防止できる。さらには、高速回転軸を制動する専用のブレーキなどを用いる必要がなく、従来の例えば油圧式のブレーキなどが利用できる。
【0021】
請求項2の発明によれば、電動モータおよび制動部の間の回転駆動軸の一部に低衝撃性部が形成されている。これにより、例えば旋回駆動装置に強い衝撃が加わった際、この低衝撃性部に付加が集中して、回転駆動軸は低衝撃性部で破損する。したがって、例えば回転駆動軸が破損した状態でも、制動部で回転駆動軸の下方側を制動させることができ、旋回体スイングサークルを制動できる。よって、旋回駆動装置が破損した際の旋回体の旋回を防止できる。
【0022】
請求項3の発明によれば、前記の発明と同様に、モータ駆動軸の一部は衝撃に弱い低衝撃性部を備えている。これにより、例えば旋回駆動装置に強い衝撃が加わった際、この低衝撃性部に応力がかかると、モータ駆動軸は低衝撃性部で破損する。したがって、例えばモータ駆動軸が破損した状態でも、制動部で回転駆動軸の下方側を制動させることができ、旋回体スイングサークルを制動できる。さらに、故障箇所が交換が容易にできるモータ駆動軸に特定でき、モータ駆動軸を交換するだけで容易に故障を直すことができ、メンテナンス性も良好にできる。
【0023】
請求項4の発明によれば、モータ駆動軸もしくは回転駆動軸の一部を例えば切削して径寸法を小さく縮径することで、容易に低衝撃性部を形成することができる。また、このような低衝撃性部は、モータ駆動軸もしくは回転駆動軸を同軸上に配置され、かつモータ駆動軸もしくは回転駆動軸と一体形成されるため、これらの軸の通常回転時にかかる衝撃などでは破損することがない。
【0024】
請求項5の発明によれば、速度制御手段は、前記偏差量が規定量以内であり、電動モータのモータ回転速度の変化量、すなわち角加速度が所定量以上である場合に、作動させて旋回体の旋回を止める。例えば、旋回駆動装置を操作する操作者にて指定された旋回要求速度およびモータ回転速度の偏差量が規定量以内であったとしても、例えば衝撃により回転駆動軸が折損している場合、回転駆動力がスイングサークルに伝達されない。このような場合、電動モータが空回りするためにモータ回転速度の変化量が著しく大きな値となる。このような場合でも、本発明では、速度制御手段は、モータ回転速度の変化量が所定量以上となることを認識すると、制動部を作動させて回転駆動軸を制動する。これにより、回転駆動軸からスイングサークルは制動部により制動され、旋回体の旋回が制動される。したがって、旋回体の旋回動作が制御不能に陥ることがない。
【0025】
請求項6の発明によれば、速度制御手段は、前記偏差量が所定の規定量を越える値であるにも関わらず、電動モータのモータ回転トルクが出力されていない場合、整合部を作動させて旋回動作を制動する。これにより、電動モータや電動モータをモニタするセンサなどの部材の故障を察知可能となる。そして、故障を察知すると、制動部を作動させるので、旋回体の故障を早期に発見することができる。
【0026】
請求項7の発明によれば、前記のように、異常が発生すると、警報信号出力手段は、旋回駆動装置の制動部が動作した旨の信号を警報手段に出力し、操作者に警報する。これにより、旋回駆動装置の故障などを早期に操作者に知らせることができる。
【0027】
請求項8の発明によれば、モータ回転数および旋回要求速度により演算される偏差量が規定量以内であり、電動モータのモータ回転速度の変化量が所定量以上である場合に、制動部を作動させる。これにより、回転駆動軸からスイングサークルまでが制動部により制動され、旋回体の旋回が制動され、旋回体の旋回動作が制御不能に陥ることがない。
【0028】
請求項9の発明によれば、前記偏差量が所定の規定量を越える値であるにも関わらず、電動モータのモータ回転トルクが出力されていない場合、制動部を作動させて旋回動作を制動する。これにより、電動モータや電動モータをモニタするセンサなどの部材の故障を察知でき、旋回体の故障を早期に発見することができる。
【0029】
請求項10の発明によれば、制動部の制動力に大きな力を必要としないため、制動部のサイズの小型化が可能となり、旋回駆動装置の生産コストも最小限に抑えられる。したがって、建設機械の小型化や生産コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明における一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る電動旋回ショベル(建設機械)1を示す平面図である。図2は、電動旋回ショベル1の要部を説明するためのブロック図である。図3は、旋回制御装置12の制御器13の概略構成を模式的に示すブロック図である。図4は、電動旋回ショベル1に搭載された旋回駆動装置5の断面図である。
【0031】
〔電動旋回ショベルの構成〕
電動旋回ショベル1は、図1および図2に示すように、下部走行体2を構成するトラックフレーム上にスイングサークル3を介して設置された旋回体4を備え、この旋回体4がスイングサークル3と噛合する電動駆動式の旋回駆動装置5によって旋回駆動される。旋回駆動装置5の電力源は、旋回体4に搭載された発電機18であり、この発電機18がエンジン15によって駆動される。
【0032】
旋回体4には、それぞれ図示しない油圧シリンダによって動作されるブーム6、アーム7、およびバケット8が設けられており、これらによって作業機9が構成されている。各油圧シリンダの油圧源は、エンジン15で駆動される油圧ポンプ16である。したがって、電動旋回ショベル1は、油圧駆動の作業機9と電気駆動の旋回体4とを備えたハイブリッド建設機械である。また、旋回体4には、キャブ10が設けられている。このキャブ10には、例えば、下部走行体2および作業機9の動作や旋回体4を操作するための複数の操作レバー11などが設けられている。図2において、特に旋回体4の操作用の操作レバー11は、旋回体4の内部に搭載される旋回制御装置12に接続され、操作レバー11の操作量に応じた操作信号を旋回制御装置12に出力する。また、キャブ10には、旋回制御装置12や旋回駆動装置5などの異常を報知する図示しない警報ランプ(警報手段)が設けられている。
【0033】
旋回制御装置12は、操作レバー11から入力される操作信号に応じて、旋回駆動装置5に所定の動作信号を出力し、その動作を制御する。そして、この旋回制御装置12は制御器13とインバータ14とを備えている。
【0034】
制御器13は、図3に示すように、モータ回転速度認識手段131と、旋回要求速度認識手段132と、偏差演算手段133と、偏差量比較手段134と、速度変化演算手段135と、出力判断手段136と、速度制御手段137と、警報信号出力手段138とを備えている。
【0035】
モータ回転速度認識手段131は、電動モータ50に取り付けられた回転検出器からの回転検出信号をインバータ14を介して入力し、電動モータ50の実際のモータ回転速度を認識する。
旋回要求速度認識手段132は、操作レバー11から入力される操作信号を認識する。
【0036】
偏差演算手段133は、旋回要求速度認識手段132にて認識される操作信号に基づいた旋回要求速度と、モータ回転速度認識手段131にて認識される実際のモータ回転速度とを比較し、その偏差量を演算する。
【0037】
偏差量比較手段134は、偏差演算手段133にて演算された偏差量と予め規定された規定量とを比較し、偏差量がこの規定量以内であるか否かを判断する。ここで、規定量としては、例えば作業機9を旋回方向に押し付けて作業する場合には、旋回要求速度と実際のモータの回転速度との偏差量が大きくなることを想定し、比較的大きな値を設定することが好ましく、例えば速度制御範囲、すなわち旋回要求速度の1/2から1/3に設定されている。
【0038】
速度変化演算手段135は、モータ回転速度認識手段131にて認識されたモータ回転数、および後述する旋回駆動装置5の減速部51の減速比に基づき、所定時間内での旋回体4の旋回速度変化量を演算する。また、速度変化演算手段135は、電動モータ50に供給される電流およびモータ回転速度に基づいて演算される電動モータ50の出力トルクを旋回速度変化量で除算し、この除算により得られる値に基づいて、旋回時の回転慣性に相当する次元数の値を演算する。さらに、速度変化演算手段135は、演算した次元数の値が予め設定される規定範囲以内であるか否かを判断する。ここで、規定値としてはやはり、旋回の回転慣性に相当する次元数の値が設定される。この値は、作業機9の姿勢やバケット8内にある堀削土砂量により大きく変化するが、例えば作業機9の姿勢を旋回内側に巻き込んだ状態とし、かつ堀削土砂が無い状態における回転慣性に相当する値とすることが好ましい。
【0039】
出力判断手段136は、電動モータ50の出力トルクおよび偏差演算手段133にて演算される偏差量に基づいて、電動モータ50が偏差量に応じた出力トルクを出力しているか否かを判断する。
【0040】
速度制御手段137は、偏差演算手段133にて演算された偏差量に応じた速度指令をインバータ14に出力する。また、速度制御手段137は、後述するメカニカルブレーキ520を作動させて旋回を制動させる旨の旋回制動信号を油圧バルブ17に出力する。具体的には、速度制御手段137は、速度変化演算手段135にて旋回速度変化量が所定の規定範囲外であると判断された場合、および出力判断手段136にて電動モータ50が偏差量に応じた出力トルクを出力していないと判断された場合に、メカニカルブレーキ520を作動させる。
【0041】
警報信号出力手段138は、速度制御手段137にてメカニカルブレーキ520が作動されたことを認識すると、メカニカルブレーキ520が作動された旨の警報信号を警報ランプに出力する。なお、警報信号出力手段138は、速度制御手段137にて旋回駆動装置5に異常がある場合、すなわち、速度変化演算手段135にて旋回速度変化量が所定の規定範囲外であると判断された場合、および出力判断手段136にて電動モータ50が偏差量に応じた出力トルクを出力していないと判断された場合にのみ警報信号を出力するものであり、作業者が入力した制動命令によりメカニカルブレーキ520が作動された場合には警報信号を出力しない。
【0042】
インバータ14は、旋回駆動装置5の電動モータ50に設けられた回転検出器により検出されるモータ回転数を常時監視し、モータ回転数に応じた回転検出信号を制御器13に出力する。また、インバータ14は、制御器13の速度制御手段137から入力される速度指令に比例したトルクを電動モータ50にて出力させるように、電動モータ50への電流通電量を制御する。
【0043】
次に、旋回駆動装置5を図4に基づいて説明する。
図4において、旋回駆動装置5は、電動モータ50と減速部51とを備えて構成されている。
【0044】
電動モータ50は、前述したように、旋回制御装置12の制御により所定の電力が供給されて回転する。この電動モータ50は、従来の油圧モータとほぼ同じ大きさのものが用いられている。また、電動モータ50は、従来の油圧モータに相当する出力トルクを生じさせるために、油圧モータに比べて高速回転型とされている。この電動モータ50には、前述したように、図示しない回転検出器が設けられている。この回転検出器は、旋回制御装置12のインバータ14に電気的に接続され、検出したモータの回転数に応じた信号を常時出力する。
【0045】
電動モータ50の下部側には、モータ駆動軸501が突出している。このモータ駆動軸501の先端には、モータ歯車502が設けられている。モータ歯車502は、モータ駆動軸501の先端を歯車形状に加工したものであり、モータ駆動軸501と一体に形成されている。
【0046】
減速部51は、電動モータ50の回転を減速しつつ、駆動トルクを増大させながら、下部走行体2に設けられたスイングサークル3に駆動力を伝達する3段式の遊星減速機構である。したがって、この減速部51は、電動モータ50に接続される第1減速部511と、第1減速部511に接続される第2減速部512と、第2減速部512に接続される第3減速部513とを備えている。また、第1減速部511および第2減速部512の間には、メカニカルブレーキ(制動部)520が設けられており、これらの第1減速部511、第2減速部512、第3減速部513、およびメカニカルブレーキ520が円筒状のケーシング510内に収納されている。
【0047】
ケーシング510は、上方から順に、内部に第1減速部511が配設される第1ケーシング510Aと、内部にメカニカルブレーキ520が配設されるブレーキケーシング510Bと、内部に第2減速部512および第3減速部513の一部が配設される第2ケーシング510Cと、内部に第3減速部513の他の部分が配設される第3ケーシング510Dとを備えている。そして、このケーシング510では、例えばボルト止めなどにより、旋回体4の下部に第3ケーシング510Dが取り付けられ、この第3ケーシング510D上に第2ケーシング510Cが取り付けられ、第2ケーシング510Cにブレーキケーシング510Bが取り付けられ、ブレーキケーシング510Bに第1ケーシング510Aが取り付けられる。
【0048】
このうち、第1ケーシング510Aの筒内部の軸心上には、電動モータ50のモータ駆動軸501が挿通される。モータ歯車502の歯に対向する第1ケーシング510Aの内周面には、内歯510A1が形成されている。第1ケーシング510Aの下面側には、上方に向かって複数のばね挿通孔510A2が設けられている。
【0049】
ブレーキケーシング510Bには、外周面から内周面までを連通する油圧ポート挿通孔510B1が設けられ、この油圧ポート挿通孔510B1には油圧バルブ17(図2参照)が接続される油圧ポート530が挿通されている。ブレーキケーシング510Bの内周には、下側が縮径した段差部分が形成され、この段差部分の上面に油圧ポート挿通孔510B1に連通する図示略の連通孔が設けられている。ブレーキケーシング510Bの下端部には、内方側に向かってパッド固定部510B2が突出している。このパッド固定部510B2には、後述するブレーキパッド523が取り付けられている。
【0050】
第2ケーシング510Cの内周面にも、内歯510C1が形成されている。
【0051】
第1減速部511は、電動モータ50から駆動力が伝達されて回転駆動する第1遊星歯車511Aと、モータ駆動軸501と同軸上で回転可能に配設される第1キャリア511Bと、第1キャリア511Bに一体形成されるとともにモータ駆動軸501と同軸上で回転可能に配設される第1駆動軸(回転駆動軸、出力軸)511Cとを備えている。
【0052】
第1遊星歯車511Aは、モータ歯車502および第1ケーシング510Aの内周面の間に配設され、モータ歯車502と内周面に形成される内歯510A1との双方に噛合されている。また第1遊星歯車511Aの軸である第1遊星軸511A1は、第1キャリア511Bに固定されている。そして、この第1遊星歯車511Aは、第1ケーシング510Aの内歯510A1に噛合しているので、モータ歯車502の回転により回転すると、内歯510A1に沿って、モータ歯車502の外周を公転する。
【0053】
第1キャリア11Bは、略円盤状に形成され、この円盤中心に第1駆動軸511Cが固定されている。これにより、第1キャリア511Bが回転することで、第1駆動軸511Cが第1キャリア511Bと同軸上で回転駆動する。この第1キャリア511Bの回転速度は、モータ駆動軸501の外周を回転移動する第1遊星歯車511Aの公転速度となり、モータ歯車502の回転速度よりも減速される。
【0054】
また、第1駆動軸511Cの下端部には、第2減速部512に接続される第1駆動歯車511Dが形成されている。さらに、第1駆動歯車511Dの上方の一部には、他部より径寸法が小さく縮径された凹状部511Eが周方向に連続して形成されている。この凹状部511Eは、他部よりも耐衝撃性が弱くなるため、例えば旋回駆動装置5に強い衝撃などが加わった際に衝撃により最初に破損する。これにより、衝撃による破損が生じた場合でも、破損箇所が容易に特定可能となる。また、凹状部511Eが破損した状態で電動モータが駆動したとしても、凹状部511Eがメカニカルブレーキ520での制動部位よりも電動モータに近接する位置に設けられているので、メカニカルブレーキ520の制御により旋回体4の旋回を制動させることが可能となる。
【0055】
第2減速部512は、第1駆動軸511Cから駆動力が伝達されて回転駆動する第2遊星歯車512Aと、第2遊星歯車512Aの第2遊星軸512Aが固定される第2キャリア512Bと、第2キャリア512Bに固定された第2駆動軸512Cとを備えている。
【0056】
第2遊星歯車512Aは、第1駆動歯車511Dと第2ケーシング510Cの内歯510C1との双方に噛合され、第1駆動歯車511Dの回転によりこの第1駆動歯車511Dの外周を公転する。第2遊星歯車512Aの公転により、第2キャリア512Bおよび第2駆動軸512Cが回転する。第2駆動軸512Cの回転は、第1駆動軸511Cの外周を回転移動する第2遊星歯車512Aの公転により、この第2遊星歯車512Aの公転速度に減速される。
【0057】
第3減速部513は、第2駆動軸512Cの第2駆動歯車512Dと噛合する第3遊星歯車513Aと、第3遊星歯車513Aの第3遊星軸513A1が固定される第3キャリア513Bと、第3キャリア513Bに固定された第3駆動軸513Cとを備えている。
【0058】
第3遊星歯車513Aは、第1駆動歯車512Dと第2ケーシング510Cの内歯510C1との双方に噛合され、第2駆動歯車512Dの回転によりこの第2駆動歯車512Dの外周を公転する。第3遊星歯車513Aの公転により、第3キャリア513Bおよび第3駆動軸513Cが回転する。そして、この第3駆動軸513Cの回転速度は、第2駆動歯車512Dの外周を回転移動する第3遊星歯車513Aの回転速度となり、第2駆動軸512Cの回転速度よりも減速される。また、第3駆動軸513Cの下端部には、第3駆動歯車513Dが形成されている。この第3駆動歯車513Dは、第3ケーシング510Dの下端面より下方に突出し、下部走行体2に取り付けられるスイングサークル3に噛合している。
【0059】
メカニカルブレーキ520は、第1減速部511および第2減速部512の間に配設され、第一減速部511の出力軸である第1駆動軸511Cを制動する。このメカニカルブレーキ520は、第1駆動軸511Cの凹状部511Eと第1駆動歯車511Dとの間にスプライン接合やセレーション接合などにより接合されたブレーキ連結部521と、ブレーキ連結部521の外周部に設けられたブレーキディスク522と、ブレーキディスク522の上下に対向して設けられるブレーキパッド523と、最上部のブレーキパッド523の上さらに上部に設けられるブレーキピストン524とを備えている。なお、本実施形態において、1枚のブレーキディスク522を用いる例を示すが、これに限られず、複数枚のブレーキディスク522を用いてもよい。
【0060】
ブレーキパッド523は、ブレーキディスク522の両面に対向する位置に1対設けられている。このうちブレーキディスク522の下方側に設けられる下部ブレーキパッド523Aは、ブレーキケーシング510Bのパッド固定部510B2に固定される。一方、ブレーキディスク522の上方側に設けられる上部ブレーキパッド523Bは、上下方向に進退自在に設けられるブレーキピストン524の下端部に取り付けられている。そして、ブレーキピストン524が下側に移動し、ブレーキディスク522を下部ブレーキパッド523Aとで挟むことで、ブレーキディスク522の回転を制動する。
【0061】
ブレーキピストン524は、略環状に形成された部材であり、ブレーキケーシング510Bの段差部分に対向した別の段差部分を備えている。そして、これらの段差部分により油圧室524Aが形成されることになり、この油圧室524Aを介してブレーキピストン524が上下方向に進退自在に設けられている。つまり、ブレーキケーシング510Bの油圧ポート挿通孔510B1からは、油圧室524Aに圧油が注入されることになり、ブレーキピストン524は上方側に押し上げられる。これにより、ブレーキケーシング510Bの下端部に取り付けられる上部ブレーキパッド523Bがブレーキディスク522から離反し、第1駆動軸511Cの回転駆動が制動されない状態となる。
【0062】
また、ブレーキピストン524の上方には、ばね525が設けられている。このばね525は、ブレーキピストン524の上端部を下方に付勢している。したがって、ブレーキピストン524は、油圧ポート530から油圧が付加されない状態では、ばね525の付勢力により下方側に押し下げられ、ブレーキパッド523にてブレーキディスク522を挟みこみ、第1駆動軸511Cの回転を制動する。
【0063】
[電動旋回ショベルの動作]
次に電動旋回ショベル1の動作について図面に基づいて説明する。
【0064】
〔電動旋回所別の旋回制御処理〕
図5は、電動旋回ショベル1を操作した際の旋回制御装置12の処理を示すフローチャートである。
図5において、旋回制御装置12は、まず、操作レバー11が操作され、所定の操作信号が入力されたか否かを判断する(ステップS101)。そして、このステップS101において、操作レバー11が操作されていない状態では、制御器13は、油圧バルブ17を制御してメカニカルブレーキ520の油圧室524Aに圧油が供給されない状態を維持し、ばね525の付勢力によりブレーキピストン524を下方側に付勢させて第1駆動軸511Cの回転を停止させておく。
【0065】
一方、ステップS101において、操作レバー11が操作されたことにより、所定の操作信号が入力されたことを認識すると、旋回制御装置12の制御器13は、メカニカルブレーキ520の油圧室524Aに油圧を付加し、ブレーキピストン524を押し上げて第1駆動軸511Cを回転駆動可能な状態にする(ステップS102)。
【0066】
次に、制御器13の旋回要求速度認識手段132は、操作信号に基づいた旋回要求速度を認識する。さらに、モータ回転速度認識手段131は、インバータ14にて検知した旋回体4の現在の旋回速度、すなわち電動モータ50のモータ回転速度を認識する。そして、偏差演算手段133は、これらの旋回要求速度およびモータの回転速度を比較して偏差量を演算する。この後、偏差量比較手段134は、演算した偏差量が予め設定された規定量以内であるか否かを判断する(ステップS103)。
【0067】
そして、速度変化演算手段135は、このステップS103において、偏差量比較手段134にて偏差量が規定量以内であると判断された場合、旋回体4の旋回速度変化量を演算し、この旋回速度変化量が所定の規定範囲内であるか否かを判断する(ステップS104)。
【0068】
このステップS104において、速度変化演算手段135にて速度変化量が規定範囲以内であると判断された場合、速度制御手段137は、偏差量に基づいた速度指令をインバータ14に出力する。そして、インバータ14は、速度指令に応じた電流を電動モータ50に供給し、電動モータ50を所定の出力トルクにて回転駆動させる。
【0069】
一方、ステップS104において、速度変化演算手段135にて速度変化量が規定範囲外であると判断された場合、例えば速度変化量が規定範囲よりも小さいと判断された場合、速度制御手段137は、油圧バルブ17を制御し、メカニカルブレーキ520を緊急に作動させる、すなわち油圧バルブ17を制御してメカニカルブレーキ520の油圧室524A内から圧油を戻し、第1駆動軸511Cの回転駆動を制動する(ステップS105)。例えば第1駆動軸511Cの凹状部511Eが何らかの理由により折損した場合、電動モータ50には負荷が全くかからないために出力トルクが0に近い値となるが、電動モータ50の回転速度が著しく大きくなって旋回速度変化量が大きくなるため、ステップS104における値(出力トルクを旋回速度変化量で除した値)は規定範囲よりも小さくなる。速度制御手段137は、このような場合を検知すると、メカニカルブレーキ520にて第1駆動軸511Cを制動させて旋回を確実に停止させることが可能となる。
【0070】
他方、ステップS103において、偏差量比較手段134にて旋回要求速度とモータの回転速度との偏差量が規定量を越えると判断された場合、出力判断手段136は、電動モータ50の出力トルクが偏差量に比例して出力されているか否かを判断する(ステップS106)。ここで、電動モータ50が偏差量に応じた出力トルクを出していない場合、電動モータ50やインバータ14の故障あるいは異常などが考えられるため、速度制御手段137は、ステップS105の処理を実施し、やはりメカニカルブレーキ520を緊急に作動させる。
【0071】
以上に対して、ステップS106において、出力判断手段136にて電動モータ50が偏差量に応じたトルクを出力していると判断した場合には、通常の制御が実施される。つまり、速度制御手段137は、インバータ14に偏差量に応じた速度指令を出力する。また、インバータ14は、この速度指令に基づいて、電動モータ50の供給する電流を制御する。
【0072】
さらに、制御器13の警報信号出力手段138は、ステップS105においてメカニカルブレーキ520を作動させる際、すなわちステップS104にてモータの速度変化量が規定値より小さいと判断した場合、およびステップS106において、モータの出力トルクが偏差量に比例して出力されていない場合、例えばキャブ10内の緊急ランプを点灯させて操作者に対してメカニカルブレーキ520が緊急に作動された旨を報知する。なお、警報を鳴らすなどして、メカニカルブレーキ520の緊急作動を報知してもよい。
【0073】
〔実施形態の作用効果〕
前記したように、本実施形態の電動旋回ショベル1では、スイングサークル3に駆動力を伝達する旋回駆動装置5は、電力により回転駆動する電動モータ50と、この電動モータ50に接続され、電動モータ50の回転数を減少させて第1ないし第3減速部511,512,513と、第1減速部511および第2減速部512の間に設けられて、第1駆動軸511Cの回転を制動するメカニカルブレーキ520とを備えている。このため、メカニカルブレーキ520は、電動モータ50から出力された駆動力を1段階減速させて回転駆動される第1駆動軸511Cを制動することができる。したがって、電動モータによる高速回転を直接制動する必要がないため、メカニカルブレーキ520の制動力に大きな力を必要としない。よって、メカニカルブレーキ520のサイズを小型化することができ、例えば従来の油圧モータと同サイズのブレーキを利用することができ、旋回駆動装置5の生産コストも最小限に抑えることができる。さらに、回転速度がモータ歯車502より減少する第1駆動軸511Cを制動するため、連れ回りトルクを小さくでき、旋回駆動の効率低下を防止できる。さらには、高速回転軸を制動する専用のブレーキを用いる必要がなく、ブレーキパッド523およびブレーキディスク522により構成されるメカニカルブレーキ520を用いることができる。したがって、メカニカルブレーキ520のコスト削減に貢献できる。
【0074】
また、第1減速部511は、第1遊星歯車511Aがモータ駆動軸501の外周を公転し、この公転により第1キャリア511Bおよび第1駆動軸511Cが自転する。このため、第1駆動軸511Cは、第1遊星歯車511Aの公転速度で回転することになり、モータ歯車502に比べて減速される。同様に、第2減速部512および第3減速部513も、第1駆動軸511Cの回転速度、第2駆動軸512Cの回転速度を減速させて第2駆動軸512C、第3駆動軸512Cに回転駆動力を伝達する。このため、電動モータ50を高速回転させた場合でも、簡単な構成で回転速度を減速させて旋回体4を旋回させるための適当な回転速度を得ることができる。
【0075】
さらに、第1駆動軸511Cのメカニカルブレーキ520の上方に凹状部511Eが形成されている。この構成では、例えば電動旋回ショベル1に強い衝撃が加わった際、この凹状部511Eに応力が集中して、第1駆動軸511Cは凹状部511Eで破損する。このため、例えば第1駆動軸511Cが破損した状態でも、メカニカルブレーキ520で第1駆動軸511Cの下方側を制動させることができ、旋回体4の旋回を止めることができる。したがって、旋回駆動装置5が破損した際に旋回体4が旋回してしまったりすることがなく、メカニカルブレーキ520で第1駆動軸511Cを制動することで安全を確保できる。
【0076】
そして、この電動旋回ショベル1では、旋回制御装置12の制御器13にて、操作レバー11から送信される操作信号およびインバータ14から送信される回転検出信号に基づいて、旋回要求速度およびモータ回転速度を認識し、これらの旋回要求速度およびモータ回転速度の偏差量を演算する。この際、旋回制御装置12の制御器13は、前記偏差量が規定量以内であり、電動モータ50のモータ回転速度の変化量、すなわち角加速度が所定量以上である場合に、メカニカルブレーキ520を緊急作動させて旋回体4の旋回を止める。例えば、操作レバー11にて指定された旋回要求速度およびモータ回転速度の差が規定量以内であったとしても、例えば衝撃により第1駆動部511Cの凹状部511Eが折損している場合、回転駆動力が第1駆動歯車511Dに伝達されない。したがって電動モータ50のモータ回転速度の変化量が著しく大きな値となる。このような場合でも、前記のように、旋回制御装置12の制御器13は、モータ回転速度の変化量が所定量以上となることを認識すると、メカニカルブレーキ520を作動させて第1駆動軸511Cを制動させることができる
【0077】
さらに、旋回制御装置12の制御器13は、前記偏差量が規定量を越える値であるにもかかわらず、電動モータ50のモータ回転トルクが出力されていない場合、メカニカルブレーキ520を緊急作動させて旋回動作を制動する。このため、インバータ14や電動モータ50に故障が生じた場合でも、制御器13にて察知し、メカニカルブレーキ520を緊急作動させることで、旋回体4の故障を早期に発見することができる。
【0078】
さらには、前記のような異常が発生すると、制御器13は、キャブ10に設けられる警報ランプを点灯させたり、警報を鳴らしたりする。このため、旋回駆動装置5の故障やインバータ14の故障などを早期に操作者に知らせることができる。
【0079】
また、減速部51を収納するケーシング510は、第1ケーシング510A、ブレーキケーシング510B、第2ケーシング510C、第3ケーシング510Dから構成され、これらをねじ止めなどして固定している。このため、例えば減速部51の故障時などにおいて、故障箇所に対応したケーシング510A〜510Dを取り外して修理することができる。したがって、故障時の部品交換が容易に実施でき、メンテナンス性も良好にできる。
【0080】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
【0081】
すなわち、前記本実施形態において、本発明の旋回駆動装置を搭載する電動旋回ショベル1について説明したが、これに限定されない。例えば、下部に設けられる下部部材に対して上部に設けられる旋回体を旋回させる建設機械や、作業機械、製造用ロボットなどに適用することができる。
【0082】
また、前記実施形態では、第1駆動軸511Cのメカニカルブレーキ520および電動モータ50の間に凹状部511Eを設ける構成を示したが、これに限らない。例えば図6に示すような構成としてもよい。図6において、電動モータ60は、モータにより回転駆動する取付部601と、この取付部601に取り付けられるモータ駆動軸(回転駆動軸)602とを備えている。モータ駆動軸602の一端部に取付孔部602Aが形成され、この取付孔部602Aに取付部601を嵌合させることでモータ駆動軸602が取付部601に取り付けられる。また、モータ駆動軸602の他端部には、モータ歯車502が一体形成され、第1遊星歯車511Aに噛合される。さらに、モータ駆動軸602のモータ歯車502および取付孔部602Aの間には、モータ駆動軸602の他部よりも径寸法が小さく縮径された凹状部604が設けられている。この凹状部604は、前記実施形態の凹状部511Eと同様に、旋回駆動装置5に強い衝撃が加わった際に、径寸法が他部より小さい凹状部604に最も応力集中して折損する。また、モータ駆動軸602に凹状部604を設けたので、この凹状部604が折損した際には、電動モータ60を取り外して、モータ駆動軸602を取付部からはずして取り換えるだけで容易に故障の修理ができる。したがって、メンテナンス性を良好にできる。
【0083】
さらに、凹状部604は、メカニカルブレーキ520および電動モータ50の間にあり、電動モータ50のモータ駆動軸501の軸心にあればよい。例えば、メカニカルブレーキ520が第2減速部512および第3減速部513の第2駆動軸512Cを制動する位置に設けられている場合、第2駆動軸512Cに設けられていてもよい。さらには、メカニカルブレーキ520が減速部51の下端部、すなわち減速部51とスイングサークルとの間に設けられている構成としてもよい。例えば、第1ないし第3減速部511,512,513により最も減速された第3駆動軸513Cにメカニカルブレーキ520を取り付けてもよい。このような場合、メカニカルブレーキ520のブレーキ力を弱めたとしても十分に旋回体4を制動することができるので、メカニカルブレーキ520のサイズをより小型化することができる。
【0084】
さらには、第1駆動軸511Cに低衝撃性部として凹状部511Eを設ける構成を示したが、これに限らない。低衝撃性部としては、例えば第1駆動軸511Cの一部に耐久度が低い素材にて形成された低耐久部を設ける構成としてもよい。
【0085】
また、前記において、ケーシング510は、第1ケーシング510A、ブレーキケーシング510B、第2ケーシング510C、第2ケーシング510Dにより構成されていることを例示したが、これに限定されない。すなわち、各フレームが一体成形されて構成されたものであってもよい。また、凹状部511Eが設けられる位置に対応して、第1ケーシング510Aおよびブレーキケーシング510Bが別体とされ、第2および第3フレームが一体形成されたものであってもよい。
【0086】
さらに、前記実施形態において、電動モータ50は、モータ駆動軸501が一体に形成されている例を示したが、これに限定されない。例えば、図6に示したように、取付孔部602Aを有し、電動モータに形成されて回転駆動する取付部を嵌合するものであってもよい。
【0087】
また、油圧式のメカニカルブレーキ520を前記にて例示したが、本発明にかかる制動部としてはこれに限定されず、例えば電動式のブレーキが用いられてもよい。例えば、電力によりブレーキピストン524が進退し、この進退によりブレーキディスク522がブレーキパッド523に挟持されて制動される構成としてもよい。
【0088】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、電動モータにより旋回する旋回体の旋回制御装置および建設機械に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動旋回ショベルを示す平面図。
【図2】本実施形態に係る電動旋回ショベルの旋回制御処理を説明するためのブロック図。
【図3】本実施形態に係る電動旋回ショベルの制御器の概略構成を模式的に示すブロック図。
【図4】本実施形態に係る電動旋回ショベルに搭載された旋回駆動装置の断面図。
【図5】本実施形態に係る電動旋回ショベルを操作した際のコントローラの処理を示すフローチャート。
【図6】他の実施形態に係る旋回駆動装置の断面図。
【符号の説明】
【0091】
1…建設機械としての電動旋回ショベル、3…スイングサークル、4…旋回体、5…旋回駆動装置、131…モータ回転速度認識手段、132…旋回要求速度認識手段、133…偏差演算手段、137…速度制御手段、50,60…電動モータ、51…減速部、602…回転駆動軸としてのモータ駆動軸、511C…回転駆動軸としての第1駆動軸、511E,604…低衝撃性部としての凹状部、520…制動部としてのメカニカルブレーキ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ(50)の駆動力をスイングサークル(3)に伝達することで旋回体(4)を旋回駆動する旋回駆動装置(5)であって、
前記電動モータ(50)および前記スイングサークル(3)の間に設けられた複数段の減速部(51)と、
前記複数段の減速部(51)を構成するいずれかの出力軸(511C)を制動する制動部(520)とを備えている
ことを特徴とする旋回駆動装置(5)。
【請求項2】
請求項1に記載の旋回駆動装置(5)において、
前記電動モータ(50)および前記制動部(520)の間に配置される回転駆動軸(511C,602)には、当該制動部(520)で制動される部位よりも前段位置に耐衝撃性の低い低衝撃性部(511E,604)が設けられている
ことを特徴とする旋回駆動装置(5)。
【請求項3】
請求項2に記載の旋回駆動装置(5)において、
前記低衝撃性部(604)は、前記電動モータ(50)の回転駆動軸(602)に設けられている
ことを特徴とする旋回駆動装置(5)。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の旋回駆動装置(5)において、
前記低衝撃性部(511E,604)は、他部よりも径寸法が小さく縮径されている
ことを特徴とする旋回駆動装置(5)。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の旋回駆動装置(5)を制御する旋回制御装置(12)であって、
前記電動モータ(50)の実際の回転速度を認識するモータ回転速度認識手段(131)と、
前記旋回体(4)を旋回させる旋回要求速度を認識する旋回要求速度認識手段(132)と、
前記モータ回転速度および前記旋回要求速度に基づいて、前記電動モータ(50)の回転速度および前記旋回要求速度との偏差量を演算する偏差演算手段(133)と、
前記偏差量に応じて前記電動モータ(50)の回転速度を制御するとともに、前記旋回駆動装置(5)の前記制動部(520)を制御する速度制御手段(137)とを備え、
前記速度制御手段(137)は、前記偏差量が所定の規定量以内であり、かつ前記電動モータ(50)の回転速度の変化量が所定の変化量以上である場合に、前記制動部(520)にて前記回転駆動軸(511C)を制動させる
ことを特徴とする旋回制御装置(12)。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の旋回駆動装置(5)を制御する旋回制御装置(12)であって、
前記電動モータ(50)の実際の回転速度を認識するモータ回転速度認識手段(131)と、
前記旋回体(4)を旋回させる旋回要求速度を認識する旋回要求速度認識手段(132)と、
前記モータ回転速度および前記旋回要求速度に基づいて、前記電動モータ(50)の回転速度および前記旋回要求速度との偏差量を演算する偏差演算手段(133)と、
前記偏差量に応じて前記電動モータ(50)の回転速度を制御するとともに、前記旋回駆動装置(5)の前記制動部(520)を制御する速度制御手段(137)とを備え、
前記速度制御手段(137)は、前記偏差量が所定の規定量を越える値であり、かつ前記電動モータ(50)が前記偏差量に応じた回転トルクを出力していない場合、前記制動部(520)にて前記回転駆動軸(511C)を制動させる
ことを特徴とする旋回制御装置(12)。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の旋回制御装置(12)において、
前記速度制御手段(137)にて前記制動部(520)が制御されると、制動部(520)が動作した旨の信号を警報手段に出力する警報信号出力手段(138)を備えている
ことを特徴とする旋回制御装置(12)。
【請求項8】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の旋回駆動装置(5)を制御する旋回制御方法であって、
前記電動モータ(50)の実際の回転速度を認識し、
前記旋回体(4)を旋回させる旋回要求速度を認識し、
前記モータ回転速度および前記旋回要求速度に基づいて、前記電動モータ(50)の回転速度および前記旋回要求速度との偏差量を演算し、
前記偏差量に応じて前記電動モータ(50)の回転速度を制御するとともに、前記旋回駆動装置(5)の前記制動部(520)を制御するとともに、前記偏差量が所定の規定量以内であり、かつ前記電動モータ(50)の回転速度の変化量が所定の変化量以上である場合に、前記制動部(520)にて前記回転駆動軸(511C)を制動させる
ことを特徴とする旋回制御方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の旋回駆動装置(5)を制御する旋回制御方法であって、
前記電動モータ(50)の実際の回転速度を認識し、
前記旋回体(4)を旋回させる旋回要求速度を認識し、
前記モータ回転速度および前記旋回要求速度に基づいて、前記電動モータ(50)の回転速度および前記旋回要求速度との偏差量を演算し、
前記偏差量に応じて前記電動モータ(50)の回転速度を制御するとともに、前記旋回駆動装置(5)の前記制動部(520)を制御するとともに、前記偏差量が所定の規定量を越える値であり、かつ前記電動モータ(50)が前記偏差量に応じた回転トルクを出力していない場合、前記制動部(520)にて前記回転駆動軸(511C)を制動させる
ことを特徴とする旋回制御方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の旋回駆動装置(5)を備えていることを特徴とする建設機械(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−39990(P2007−39990A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225691(P2005−225691)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】