説明

映像表示装置

【課題】電子カメラを搭載したシースルー型のHMDにおいて、使用者の操作に拠ることなく、観察対象物の距離に係らず観察対象物を視認することが可能なHMDを提供する。
【解決手段】頭部または顔面に取り付けられ、使用者が外界をシースルー可能な映像表示装置であって、外界の観察対象物を撮影する撮像手段と、撮像手段で撮影された画像をトリミングするトリミング手段と、トリミング手段でトリミングされた画像を拡大する電子ズーム手段と、電子ズーム手段で拡大された画像を表示するシースルー可能な表示手段と、トリミング手段、及び電子ズーム手段の作動を制御する表示制御手段と、観察対象物の距離を検知する距離検知手段と、を有し、表示制御手段は、距離検知手段が検知した距離に基づいて、トリミング手段、及び電子ズーム手段の作動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置に関し、特に頭部装着式映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、観察者の頭部や顔面に着脱自在に装着され、小型のCRTや液晶表示素子等の映像表示素子から得られる映像(画像)を、接眼光学系によって観察者の眼球に直接投影させることで、恰も該映像が空中に拡大投影されているかの様な虚像の観察を可能にした頭部装着式映像表示装置、すなわちHMD(Head Mount Display)が知られている。
【0003】
HMDは、映画やビデオ等のコンテンツ画像の観賞用や、産業機器若しくは医療機器等の遠隔操作用としての表示装置として利用され、その用途は多岐に渡っている。
【0004】
また、このHMDには従来より、コンテンツ画像や、操作者の操作用の各種情報をHMDの画像表示部を通して入射する外界光による自然画像に重ね合わせて表示する所謂シースルー型のものと、外界光の入射を一切遮断して電子カメラ等によって撮影され加工された撮影画像を表示する遮蔽型のものとがある。
【0005】
遮蔽型のHMDでは、コンテンツ画像や、操作者に提供する各種情報を電子カメラ等によって撮影された撮影画像に重ね合わせて表示する機能の他に、外界情景を撮影した撮影画像を種々に加工して表示する機能も発表されている。そして最近では、この様な機能を用いて、HMDを視覚補助装置として使用する方法が提案されている。
【0006】
例えば、外界をシースルー可能なHMDにおいて、望遠鏡を有した電子カメラを備え、電子カメラで撮影された外界情景の拡大画像を画像表示部に表示することにより、スポーツ観戦や自然観察等の野外活動において、望遠鏡を携帯することなく、HMD単体で望遠鏡と同じ様に所望の倍率で外界情景を観察することができ、また、観察対象物までの距離を測定する測距手段を備え、測距手段によって測定された観察対象物までの距離情報や、望遠鏡の撮影倍率等の付加情報を電子カメラによって撮影された画像に重ね合わせて表示することにより、観察対象物に係る情報を得ることができる様にした、技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−331731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この様に、HMDを視覚補助装置として使用する方法がこれまでも種々検討されてきた。
【0008】
特許文献1に開示されているHMDは、望遠鏡を有した電子カメラで撮影された外界情景の拡大画像を画像表示部に表示することにより、望遠鏡を携帯することなく、HMD単体で望遠鏡と同じ様に所望の倍率で外界情景を観察できる様にしている。また、観察対象物までの距離を測定する測距手段を備え、測距手段によって測定された観察対象物までの距離情報や、望遠鏡の撮影倍率等の付加情報を電子カメラによって撮影された画像に重ね合わせて表示する様にしている。しかしながら、撮影倍率は使用者の操作によって調整されるものであり、また、測距手段によって得られた距離情報は表示されるのみである。すなわち、撮影倍率を使用者の操作に拠らず観察対象物の距離に連動させて調整するという思想を示唆するものではない。また、特許文献1に開示されているHMDにおいては、遠方の観察対象物は拡大画像が表示されることにより視認することができる様になる。しかしながら、老眼の進んだ人が、例えば、書物等の小さい文字を視認する為に、顔を書物に近づけるとピントが合わず視認することが困難なるといった、近距離側における問題に対する視覚補正を行う技術を示唆するものでもない。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、電子カメラを搭載したシースルー型のHMDにおいて、使用者の操作に拠ることなく、観察対象物の距離に係らず観察対象物を視認することが可能なHMDを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の1乃至9のいずれか1項に記載の発明によって達成される。
【0011】
1.頭部または顔面に取り付けられ、使用者が外界をシースルー可能な映像表示装置であって、
外界の観察対象物を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段で撮影された画像をトリミングするトリミング手段と、
前記トリミング手段でトリミングされた画像を拡大する電子ズーム手段と、
前記電子ズーム手段で拡大された画像を表示するシースルー可能な表示手段と、
前記トリミング手段、及び前記電子ズーム手段の作動を制御する表示制御手段と、
前記観察対象物の距離を検知する距離検知手段と、を有し、
前記表示制御手段は、前記距離検知手段が検知した距離に基づいて、前記トリミング手段、及び前記電子ズーム手段の作動を制御することを特徴とする映像表示装置。
【0012】
2.前記撮像手段は、ズームレンズを有し、
前記表示制御手段は、前記距離検知手段が検知した距離に基づいて、前記ズームレンズのズーム倍率を設定することを特徴とする前記1に記載の映像表示装置。
【0013】
3.前記表示制御手段は、前記距離検知手段が検知した距離が、予め設定した第一の基準距離より近い場合、前記トリミング手段が前記撮像手段で撮影された画像を、前記距離検知手段が検知した距離に応じたトリミング領域でトリミングし、
前記電子ズーム手段が前記トリミング手段でトリミングされた画像を、前記距離検知手段が検知した距離に応じた拡大倍率で拡大する様に、前記トリミング手段、及び前記電子ズーム手段の作動を制御することを特徴とする前記1または2に記載の映像表示装置。
【0014】
4.前記表示制御手段は、前記距離検知手段が検知した距離が、前記第一の基準距離よりも遠い距離に予め設定した第二の基準距離より遠い場合、前記トリミング手段が前記撮像手段で撮影された画像を、前記距離検知手段が検知した距離に応じたトリミング領域でトリミングし、
前記電子ズーム手段が前記トリミング手段でトリミングされた画像を、前記距離検知手段が検知した距離に応じた拡大倍率で拡大する様に、前記トリミング手段、及び前記電子ズーム手段の作動を制御することを特徴とする前記1乃至3のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【0015】
5.前記第一の基準距離及び前記第二の基準距離、またはそのいずれかを設定する距離設定手段を有することを特徴とする前記1乃至4のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【0016】
6.前記観察対象物の明るさを検知する輝度検知手段を有し、
前記表示制御手段は、前記輝度検知手段が検知した明るさに基づいて、前記第一の基準距離及び前記第二の基準距離、またはそのいずれかを補正することを特徴とする前記1乃至5のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【0017】
7.外界から前記表示手段への入射光を遮光する遮光手段を有し、
前記表示制御手段は、前記遮光手段の作動を制御するものであって、
前記表示手段に画像が表示される場合、
前記表示制御手段は、外界から前記表示手段への入射光が遮光される様に前記遮光手段の作動を制御することを特徴とする前記1乃至6のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【0018】
8.前記撮像手段で撮影された画像において、文字を検知する文字検知手段と、
画像のコントラストを反転するネガ/ポジ反転手段と、を有し、
前記表示制御手段は、ネガ/ポジ反転手段の作動を制御するものであって、
前記文字検知手段が、文字を検知した場合、
前記表示制御手段は、前記撮像手段で撮影された画像において、文字の背景を黒くし、文字を白くする様に前記ネガ/ポジ反転手段の作動を制御することを特徴とする前記1乃至7のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【0019】
9.前記文字検知手段は、文字の大きさを検知するものであって、
前記表示制御手段は、前記文字検知手段が検知した文字の大きさに基づいて、前記電子ズーム手段の最大拡大倍率を設定することを特徴とする前記1乃至8のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、頭部または顔面に取り付けられ、使用者が外界をシースルー可能な映像表示装置において、表示制御手段は、観察対象物の距離を検知する距離検知手段が検知した距離に基づいて、撮像手段で撮影された画像をトリミングするトリミング手段、及びトリミング手段でトリミングされた画像を拡大する電子ズーム手段の作動を制御する様にした。すなわち、撮像手段によって撮影された画像のトリミング領域やトリミングされた画像の拡大倍率を観察対象物の距離に応じて、変化させることができる様になる。例えば、書物等の小さい文字を視認する為に、顔を書物に近づけるとピントが合わず視認することが困難になる老眼の進んだ使用者に対しては、書物の距離に応じて、使用者が視認し易い大きさの画像に拡大して表示することができる様になる。したがって、使用者は操作に拠ることなく、小さな文字が拡大されて大きく表示されることにより容易に視認することができる。また、使用者の視線中心と撮像装置の光軸との位置のずれにより発生するパララックスに対しては、書物の距離に応じて、使用者の視線中心に撮像装置の光軸が仮想的に一致する様に撮像手段によって撮影された画像をトリミングすることにより、使用者はパララックスの影響が低減された画像を視認することができる。一方、書物が顔から遠ざかるとピントが合わず視認することが困難になる近視の進んだ使用者に対しても、前述の老眼の進んだ使用者の場合と同様にして、書物の距離に応じて、使用者が視認し易い大きさの画像に拡大して表示することができる様になる。したがって、使用者は操作に拠ることなく、小さな文字が拡大されて大きく表示されることにより容易に視認することができる。
【0021】
また、撮像手段は、ズームレンズを備え、表示制御手段は、距離検知手段が検知した距離に基づいて、ズームレンズのズーム倍率を設定する様にした。したがって、例えば、観察対象物がパララックスの影響が比較的小さい遠い距離に位置し、パララックスの補正を行う必要がない場合には、ズームレンズにより観察対象物を光学的に拡大して撮影した画像を表示することにより、使用者は、観察対象物をより鮮明に視認することができる。
【0022】
また、表示制御手段は、距離検知手段が検知した距離が、予め設定した第一の基準距離より近い場合、トリミング手段が撮像手段で撮影された画像を、距離検知手段が検知した距離に応じたトリミング領域でトリミングし、電子ズーム手段がトリミング手段でトリミングされた画像を、距離検知手段が検知した距離に応じた拡大倍率で拡大する様に、トリミング手段、及び電子ズーム手段の作動を制御する様にした。例えば、書物の距離が所定の距離より近づくとピントが合わず、視認することが困難になる老眼の進んだ使用者に対しては、視認することが困難になる距離(第一の基準距離)を予め設定しておき、書物が第一の基準距離よりも近づくと、距離に応じた拡大倍率で画像を拡大して表示することができる様になる。したがって、使用者はピントの甘い文字が拡大されて大きく表示されることにより視認することができる。また、とりわけパララックスの影響が大きくなる近距離側において、距離に応じたトリミング領域でトリミングすることにより、使用者はパララックスの影響が低減された画像を視認することができる。
【0023】
また、表示制御手段は、距離検知手段が検知した距離が、第一の基準距離よりも遠い距離に予め設定した第二の基準距離より遠い場合、トリミング手段が撮像手段で撮影された画像を、距離検知手段が検知した距離に応じたトリミング領域でトリミングし、電子ズーム手段がトリミング手段でトリミングされた画像を、距離検知手段が検知した距離に応じた拡大倍率で拡大する様に、トリミング手段、及び電子ズーム手段の作動を制御する様にした。例えば、書物の距離が所定の距離より遠ざかるとピントが合わず、視認することが困難になる近視の進んだ使用者に対しては、視認することが困難になる距離(第二の基準距離)を予め設定しておき、書物が第二の基準距離よりも遠ざかると、距離に応じた拡大倍率で画像を拡大して表示することができる様になる。したがって、使用者はピントの甘い文字が拡大されて大きく表示されることにより視認することができる。
【0024】
また、映像表示装置は、第一の基準距離及び第二の基準距離、またはそのいずれかを設定する距離設定手段を備える様にした。視力は、使用者によって異なるものである。したがって、観察対象物を視認することが困難になる距離、すなわち第一の基準距離、第二の基準距離を使用者の視力に応じて設定できる様にすることにより、使用者は、使用者の視力に係らず観察対象物を視認することができる。
【0025】
また、映像表示装置は、観察対象物の明るさを検知する輝度検知手段を備え、表示制御手段は、輝度検知手段が検知した明るさに基づいて、第一の基準距離及び第二の基準距離、またはそのいずれかを補正する様にした。老眼の進んだ使用者は、観察対象物の明るさが暗くなると、より遠い距離から視認することが困難になる(夜目)場合がある。したがって、観察対象物の明るさに応じて、第一の基準距離、第二の基準距離を補正する様にすることにより、使用者は、観察対象物の明るさに係らず観察対象物を視認することができる。
【0026】
また、映像表示装置は、外界から表示手段への入射光を遮光する遮光手段を備え、表示手段に画像が表示される場合、表示制御手段は、外界から表示手段への入射光が遮光される様に遮光手段の作動を制御する様にした。すなわち、表示手段に画像が表示される場合は、外界から表示手段への入射光を遮光して、シースルーを不能にする様にしたので、使用者は、注目したい画像のみをより鮮明に視認することができる。
【0027】
また、映像表示装置は、撮像手段で撮影された画像において、文字を検知する文字検知手段と、画像のコントラストを反転するネガ/ポジ反転手段と、を備え、文字検知手段が、文字を検知した場合、表示制御手段は、撮像手段で撮影された画像において、文字の背景を黒くし、文字を白くする様に前記ネガ/ポジ反転手段の作動を制御する様にした。すなわち、撮影画像の文字を白抜き文字で表示することにより、シースルーによる外界観察対象物の光像と撮影画像が重なって観察される場合においても、文字をより鮮明に視認することができる。
【0028】
また、表示制御手段は、文字検知手段が検知した文字の大きさに基づいて、電子ズーム手段の最大拡大倍率を設定する様にした。したがって、拡大することにより撮影画像の文字が大きくなりすぎて視認することが困難になることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下図面に基づいて、本発明に係る映像表示装置の代表的な実施形態の1つであるHMD(Head Mount Display)について説明する。
【0030】
最初に、HMD1の外観を図1を用いて説明する。図1(a)は、本発明に係るHMD1の平面図、図1(b)は正面図である。
【0031】
HMD1は、使用者の眼球の近傍に配置されて使用される頭部装着式映像表示装置である。HMD1の要部は、表示ユニット6、カメラユニット7、及び制御ユニット8等から構成され、カメラユニット7で撮影された画像や、制御ユニット8に設けられた後述の外部I/F824から取り込まれた例えばビデオやテレビ等のコンテンツ画像等を、表示ユニット6に表示する。
【0032】
HMD1は、図1(a)に示す様に、フレーム2、テンプル3、鼻当て4を備えている。
【0033】
フレーム2の左右には、テンプル3が一対となって設けられ、可撓性を有する弾性材等により構成された長尺状の部材であり、使用者の耳や側頭部に掛止され、HMD1の装着者に対する頭部への保持及び装着位置の調整を行うためのものである。なお、テンプル3は、回動部3aにおいてフレーム2の方向に回動可能に構成されており、HMD1を使用しない場合には、テンプル3をフレーム2の方向に回動させて後述の透明基板5に沿わせることにより、コンパクト化することができる。
【0034】
また、図1(b)に示す様に、フレーム2には、透明基板5が設けられている。透明基板5は、一方の眼球に対応した位置にU字型のスペース5sを形成する略平板状の透明体である。また、透明基板5に囲まれて形成されるU字型のスペース5sには、後述の接眼光学系65が嵌め込まれている。
【0035】
また、透明基板5、及び後述の接眼光学系65の前面側(接眼面と反対側)には、図示しない後述の液晶シャッタ653が設けられている。
【0036】
また、フレーム2には、後述のLCD表示部61及び接眼光学系65から構成される表示ユニット6が設けられている。表示ユニット6は、本発明における表示手段に該当し、後述のカメラユニット7で撮影された画像や、制御ユニット8に設けられた後述の外部I/F824から取り込まれた例えばビデオやテレビ等のコンテンツ画像等を表示する。
【0037】
また、フレーム2には、カメラユニット7が設けられている。カメラユニット7は、本発明における撮像手段に該当し、後述のレンズ710、CCD(Charge Coupled Device)701、画像処理部706等から構成され、外界の観察対象物(被写体)を撮影するものであり、レンズ710によって結像された被写体光学像を、CCD701によって光電変換して画像信号を生成し、画像処理部706等により画像信号に所定の画像処理を施し画像を生成する。
【0038】
また、フレーム2には、制御ユニット8が設けられている。制御ユニット8は、マイクロコンピュータからなり、表示ユニット6の表示動作やカメラユニット7の撮影動作、及び画像信号処理動作を統括的に制御するものである。
【0039】
尚、図1の構成においては、カメラユニット7、及び表示ユニット6をフレーム2の正面左側にそれぞれ1台ずつ設けたが、図2(a)、図2(b)に示す様に、カメラユニット7、及び表示ユニット6をフレーム2の左右にそれぞれ1台ずつ設けて、それぞれのカメラユニット7で撮影した画像をそれぞれ対応する表示ユニット6に表示する様にしてもよい。また、この様な構成においては、制御ユニット8は、図2(a)に示す様に、一方のテンプル3の後端からケーブル9を介して表示ユニット6や、カメラユニット7等と接続されている。
【0040】
ここで、表示ユニット6の構成を、図3を用いて説明する。図3は、本発明に係るHMD1における表示ユニット6の左側面からの側断面図であり、主に表示ユニット6の内部構成を示している。
【0041】
図3に示す様に、表示ユニット6は、筐体611、LED(Light Emitting Diode)612、コリメータレンズ613、LCD(Liquid Crystal Display)614からなるLCD表示部61、及びプリズム651、HOE(Holographic Optical Element)652、からなる接眼光学系65から構成される。
【0042】
LCD表示部61の筐体611の内部には、LED612、コリメータレンズ613、及びLCD614が内蔵された状態で、該筐体611が接眼光学系65のプリズム651の上端部において上斜め前方(図3では右斜め上方向)に突出する態様で取り付けられている。
【0043】
LED612は、所定波長色を含む白色発光ダイオード(LED)からなる点光源である。
【0044】
コリメータレンズ613は、LED612の光をほぼ平行光にしてLCD614に投光するものである。
【0045】
LCD614は、カメラユニット7で生成された画像信号や、制御ユニット8に設けられた後述の外部I/F824から取り込まれた例えばビデオやテレビ等のコンテンツ画像信号等に基づき映像を生成するものであり、例えば透過型の液晶表示パネルである。
【0046】
プリズム651は、ガラスや透明樹脂等からなる略板状の透明部材であり、LCD614からの光を内部で複数回の反射を行わせるものである。プリズム651の上端部は、LCD614からの光の大部分を内部に採光できるように、上方に向かってより肉厚となるように前面側(接眼面と反対側)が突き出るように楔形状に形成された肉厚部651aが形成されている。
【0047】
また、プリズム651の下端部には、傾斜面651bが形成されており、プリズム651は、透明基板5に形成された傾斜面5aに対しHOE652を介して接合(例えば接着)されている。また、プリズム651の表裏面は、透明基板5の表裏面に対して面一とされている。これにより、プリズム651は、透明基板5と一枚の板状に一体化されている。
【0048】
HOE652は、光学的に軸非対称な所謂自由曲面で構成されて正のパワーを有する体積位相型のホログラム光学素子であり、プリズム651の下端部において所定の傾斜角を有して支持されている。HOE652は、プリズム651により導光された光が照射されることにより、光の干渉現象を用いてホログラム映像を眼球Eに提供する。
【0049】
以上のような構成を有する表示ユニット6においては、LED612から射出された光は、コリメータレンズ613を通してLCD614を照明し、この照明によりLCD614で生成された像光は、プリズム651内で複数回の全反射を行った後、HOE652により回折し虚像として使用者の眼球Eに導かれる。
【0050】
さらに、プリズム651は、前方から入射する光を使用者の眼球に導くようになっている。これにより、使用者は、外界(前方の被写体)をシースルー可能となり、カメラユニット7により撮影された画像(映像)を外界(前方の被写体)と重畳して視認することとなる。
【0051】
尚、透明基板5に形成された傾斜面5aは、プリズム651の傾斜面651bでの光の屈折をキャンセル(相殺)する、すなわち、傾斜面651bにおけるプリズム効果により矢印W側からの光が上方に屈曲するのを防止する為、使用者は、プリズム651、透明基板5、及びHOE652を通して、外界光を歪むことなく観察することができる。
【0052】
また、プリズム651、及び透明基板5の前面側(接眼面と反対側)には、本発明における遮光手段に該当する、例えば、液晶シャッタ653が設けられている。液晶シャッタ653は、後述の制御ユニット8中の制御部801の制御によってプリズム651、透明基板5、及びHOE652を通して入射する外界光を遮光し、シースルーを不能にすることができる。
【0053】
次に、HMD1の電気回路構成について図4を用いて説明する。図4は、本発明に係わるHMD1の電気回路のブロック図である。尚、図4では、図1乃至図3に示した部材と同じ部材には同一の番号を付与した。
【0054】
HMD1の要部電気回路ブロックは、表示ユニット6、カメラユニット7、及び制御ユニット8等から構成される。
【0055】
表示ユニット6は、LCD表示部61、接眼光学系65から構成され、各部位で行われる動作については前述したので詳細な説明は省略する。
【0056】
LED612の駆動電流は、後述の制御ユニット8中の制御部801で生成され、LED612の発光輝度は、制御部801によって制御される。
【0057】
LCD614は、制御ユニット8を介して出力されるカメラユニット7で生成された画像信号や、制御ユニット8に設けられた後述の外部I/F824から取り込まれた例えばビデオやテレビ等のコンテンツ画像信号等に基づき映像を表示する。
【0058】
カメラユニット7は、レンズ710、CCD701、CDS回路702、AGC回路703、A/D変換器704、タイミングジェネレータ705、及び画像処理部706等から構成される。
【0059】
CCD701は、R(赤)光、G(緑)光、B(青)光の各色透過フィルタをピクセル単位(画素単位)で市松模様状に配置させたカラーエリア撮像センサで、レンズ710により結像された被写体光像を、R(赤)光、G(緑)光、B(青)光の各色成分の画像信号(各画素単位で受光された画素信号の信号列からなる信号)に光電変換するものである。
【0060】
タイミングジェネレータ705は、後述の制御ユニット8から送信される基準クロックに基づいて、CCD701の駆動制御信号を生成するものである。タイミングジェネレータ705で生成される駆動制御信号には、例えば、CCD701における露出開始、及び終了タイミングを制御する積分開始/終了のタイミング信号、各画素の信号電荷の読出し制御信号(水平同期信号、垂直同期信号、転送信号等)等のクロック信号が挙げられ、これらのクロック信号がCCD701に供給されるとCCD701では各クロック信号に対応した駆動制御が行われる。
【0061】
CDS(相関二重サンプリング)回路702は、CCD701から読み出された画像信号より読み出し時に発生するノイズの低減や、OBクランプ動作を行って黒レベルの補正を行うものである。
【0062】
AGC(自動利得制御)回路703は、後述の制御ユニット8の制御により、CDS回路702で処理された画像信号のゲインを、例えば被写体の明るさ等に応じて調整する。
【0063】
A/D変換器704は、AGC回路703から入力された画像信号を構成する各画素信号をデジタル信号に変換するものである。A/D変換器704は、制御ユニット8から送信されるA/D変換用クロックに基づき、アナログ信号の各画素信号を例えば14ビットのデジタル信号に変換する。
【0064】
この様に、CCD701で読み出された画像信号は、CDS回路702、AGC回路703、及びA/D変換器704で所定の処理が施されて、デジタル画像信号に変換される。デジタル化された画像信号は、画像処理部706に取り込まれて所定の処理が行われる。以下、画像処理部706で行われるデジタル画像信号への処理について説明する。
【0065】
最初に、画像処理部706に取り込まれたデジタル画像信号は、CCD701から出力される画像信号の読出しに同期して後述の制御ユニット8中の画像メモリ821に書き込まれる。すなわち、画像処理部706で行われる処理に使用されるデジタル画像信号は、画像メモリ821にいったん記録したものを画像メモリ821から取り出し、画像処理部701中の各部位における処理に使用される。
【0066】
画像処理部706は、図示しない例えば、黒レベル補正部、画素補間部、解像度変換部、ホワイトバランス制御部、ガンマ補正部、マトリックス演算部、シェーディング補正部、及び画像圧縮部等から構成され、画像メモリ821より取り出したデジタル画像信号に周知の画像信号処理を施すものである。そして、これらの部位で所定の処理を施されたデジタル画像信号は、再度、画像メモリ821に格納される。
【0067】
次に、制御ユニット8は、制御部801、画像メモリ821、VRAM(Video Random Access Memory)822、記録部823、外部I/F824、及び操作部830等から構成される。
【0068】
制御部801は、各制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、演算処理や制御処理等のデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)、及び制御プログラム等をROMから読み出して実行するCPU(中央演算処理装置)等からなり、後述の操作部830に設けられた各操作スイッチからの信号を受けて、表示ユニット6の表示動作やカメラユニット7の撮影動作、及び画像信号処理動作を統括的に制御するものである。
【0069】
制御部801は、図4に示す様に、距離検知部802、輝度検知部803、文字検知部804、デジタルズーム部805、トリミング部806、ネガ/ポジ反転部807、及び表示制御部808等から構成される。
【0070】
距離検知部802は、本発明に係る距離検知手段に該当し、カメラユニット7のAF(Auto Focus;自動焦点)制御を行い、AF動作によって調整されたレンズ710を構成する各レンズ群の停止位置情報より、被写体距離を検知する。具体的には、距離検知部802は、画像メモリ821に書き込まれた画像データ(デジタル画像信号)より、予め設定されてある撮像面上の測距エリアに関する画像データを読み出し、読み出した画像データのコントラスト検出により合焦位置を求める測距演算を行い、その結果に基づいて図示しないフォーカスモータを駆動して、AF制御を行う。そして、距離検知部802は、例えば、AF動作によって調整されたレンズ710を構成する各レンズ群の停止位置情報より、被写体距離を検知する。
【0071】
トリミング部806は、本発明に係るトリミング手段に該当し、使用者の視線中心とカメラユニット7の光軸との位置のずれにより発生するパララックスを低減する為に、後述の表示制御部808の制御の下で、距離検知部802が検知した被写体距離に応じたトリミング領域でカメラユニット7で撮影された画像をトリミングする。
【0072】
ここで、パララックスについて図5を用いて説明する。図5は、使用者の視線中心L1とカメラユニット7の光軸L2との位置のずれにより発生するパララックスの様子を示す模式図である。図5において。被写体Xは、例えば、文字からなる書物等であり、また、被写体Xの中心は使用者の視線中心L1に位置するものとする。
【0073】
図5に示す様に、被写体Xが視線中心L1とカメラユニット7の光軸L2との間隔より非常に遠い距離Dfに位置する場合は、パララックスの影響が比較的小さく、被写体Xにおける文字領域A3は、カメラユニット7の撮影画角A2の中心寄りに位置して撮影される。一方、被写体Xが遠い距離Dfより近い距離Dnに位置する場合は、パララックスの影響が大きく、被写体Xにおける文字領域A3は、カメラユニット7の撮影画角A2の周辺寄りに位置して撮影される。すなわち、被写体距離によって、使用者の視野における文字領域A3の位置とカメラユニット7で撮影される撮影画像における文字領域A3の位置が大きく異なる。そこで、トリミング部806は、後述の表示制御部808の制御の下で、使用者の視線中心L1にカメラユニット7の光軸L2が仮想的に一致する様に、距離検知部802が検知した被写体距離に応じたトリミング領域でカメラユニット7によって撮影された画像をトリミングするものである。尚、トリミング部806で行われる動作の詳細は後述する。
【0074】
図4に戻り、デジタルズーム部805は、本発明に係る電子ズーム手段に該当し、後述の表示制御部808の制御の下で、距離検知部802が検知した被写体距離に応じた拡大倍率でトリミング部806でトリミングされた画像を拡大する。尚、デジタルズーム部805で行われる動作の詳細は後述する。
【0075】
次に、表示制御部808は、本発明に係る表示制御手段に該当し、予め設定されている例えば、第一の基準距離D1、及び第二の基準距離D2と、距離検知部802が検知した被写体距離とを比較し、比較した結果に基づいて、トリミング部806、デジタルズーム部805の作動を制御する。尚、第一の基準距離D1は、例えば、老眼の進んだ使用者において、書物等の被写体が目に近づくとピントが合わず文字を視認することが困難になる距離。また、第二の基準距離D2は、近視の進んだ使用者において、書物等の被写体が目から遠ざかるとピントが合わず文字を視認することが困難になる距離とし、D2>D1とする。
【0076】
この様な構成のHMD1において、本発明は、表示制御部808が、距離検知部802で検知された被写体距離に基づいて、トリミング部806、デジタルズーム部805の作動を制御して、カメラユニット7によって撮影された画像のトリミング領域やトリミングされた画像の拡大倍率を変化させることにより、使用者が、操作に拠ることなく、被写体距離に係らず被写体を容易に視認することができる様に、HMD1で行われる画像表示動作を制御するものである。
【0077】
ここで、HMD1で行われる画像表示動作の詳細を、図6を用いて説明する。図6(a)は、被写体Xが第一の基準距離D1より近い距離に位置する場合の視野A1に映る文字の様子を示す模式図。図6(b)は、図6(a)と同じ距離に位置する被写体Xをカメラユニット7で撮影した時の撮影画角A2における文字の様子を示す模式図。図6(c)は、図5(b)で撮影された画像をトリミングし、拡大した時の表示画像IM1を示す模式図である。また、図6(d)は、被写体Xが第二の基準距離D2より遠い距離に位置する場合の視野に映る文字の様子を示す模式図。図6(e)は、図6(d)と同じ距離に位置する被写体Xをカメラユニット7で撮影した時の撮影画角A2における文字の様子を示す模式図。図6(f)は、図6(e)で撮影された画像をトリミングし、拡大した時の表示画像IM2を示す模式図である。
【0078】
最初に、被写体Xが第一の基準距離D1より近い距離に位置する場合の画像表示動作について説明する。被写体Xが第一の基準距離D1より近い距離に位置する場合、カメラユニット7で撮影された画像における文字の位置は、図6(b)に示す様に、パララックスの影響を大きく受け、撮影画角A2の周辺寄り(図では左側)に位置している。すなわち、図6(a)に示す様に、使用者の視野A1における文字の位置とカメラユニット7で撮影された撮影画像における文字の位置が大きく異なる。そこで、表示制御部808は、使用者の視線中心L1にカメラユニット7の光軸L2を仮想的に一致させる為に、図6(b)に示す様に、距離検知部802が検知した被写体距離に応じたトリミング領域T1でカメラユニット7によって撮影された画像をトリミングする様に、トリミング部806を制御する。そして、デジタルズーム部805は、図6(c)に示す様に、距離検知部802が検知した被写体距離に応じた拡大倍率K1でトリミング部806でトリミングされた画像を拡大する。
【0079】
これにより、例えば、書物等の被写体Xが第一の基準距離D1より近づくとピントが合わず、視認することが困難になる老眼の進んだ使用者に対しては、書物が第一の基準距離D1よりも近づくと、カメラユニット7で撮影された画像が距離に応じた拡大倍率K1で拡大されて表示される様になる。したがって、使用者はピントの甘い文字が視認可能な大きさまで拡大されて大きく表示されることにより視認することができる。また、とりわけパララックスの影響が大きくなる近距離側において、距離に応じたトリミング領域T1でトリミングすることにより、使用者はパララックスの影響が低減された画像を視認することができる。
【0080】
次に、被写体Xが第二の基準距離D2より遠い距離に位置する場合の画像表示動作について説明する。被写体Xが第二の基準距離D2より遠い距離に位置する場合、カメラユニット7で撮影された画像における文字の位置は、図6(e)に示す様に、パララックスの影響が比較的小さく、撮影画角A2の中心寄りに位置している。すなわち、図6(d)に示す様に、使用者の視野A1における文字の位置とカメラユニット7で撮影された撮影画像における文字の位置は僅かではあるが異なっている。そこで、表示制御部808は、使用者の視線中心L1にカメラユニット7の光軸L2を仮想的に一致させる為に、図6(e)に示す様に、距離検知部802が検知した被写体距離に応じたトリミング領域T2でカメラユニット7によって撮影された画像をトリミングする様に、トリミング部806を制御する。そして、デジタルズーム部805は、図6(f)に示す様に、距離検知部802が検知した被写体距離に応じた拡大倍率K2でトリミング部806でトリミングされた画像を拡大する。
【0081】
これにより、例えば、書物等の被写体Xが第二の基準距離D2より遠ざかるとピントが合わず、視認することが困難になる近視の進んだ使用者に対しては、書物が第二の基準距離D2よりも遠ざかると、カメラユニット7で撮影された画像が距離に応じた拡大倍率K2で拡大されて表示される様になる。したがって、使用者はピントの甘い文字が拡大されて大きく表示されることにより視認することができる。また、パララックスの影響が小さい遠距離側においても、距離に応じたトリミング領域T2でトリミングすることにより、使用者はパララックスの影響が低減された画像を視認することができる。
【0082】
この様にして、生成された表示画像IM1、またはIM2の見え方を図7に示す。図7(a)は、シースルーによる被写体光像SXにおける文字の様子を示した模式図。図7(b)は、HMD1によって生成された表示画像IM1、またはIM2の見え方を示す模式図である。
【0083】
図7(a)に示す様に、文字が小さく、シースルーでは視認することが困難であった文字は、図7(b)に示す様に、パララックスの影響が低減され、大きく拡大されて表示されることにより、容易に視認することができる。
【0084】
また、表示画像は、図8に示す様に、例えば、カメラユニット7で撮影された画像を、文字1行分程度に狭くしたトリミング領域でトリミングし、トリミングした画像を拡大し、拡大した画像にシースルーによる被写体光像SXにおける拡大位置を示す指標Mを付加して表示画像IM3として表示する様にしてもよい。これにより、シースルーによる被写体光像SXにおいて、どの位置が拡大されて表示されているかを容易に把握できる。
【0085】
尚、本実施形態においては、デジタルズーム部805によって、画像の拡大を行う様にしたが、カメラユニット7にズームレンズを備え、表示制御部808は、距離検知部802が検知した被写体距離に基づいて、デジタルズーム部805の作動を制御して画像を拡大する様にしてもよい。これにより、例えば、被写体がパララックスの影響が比較的小さい遠い距離に位置し、パララックスの補正を行う必要がない場合には、ズームレンズにより被写体を光学的に拡大して撮影した画像を表示することにより、使用者は、被写体をより鮮明に視認することができる。
【0086】
また、第一の基準距離D1、第二の基準距離D2は、後述の操作部830に設けられ、本発明に係る距離設定手段に該当する距離設定スイッチ830bによって使用者の視力に応じて設定することができる。視力は、使用者によって異なるものである。したがって、被写体を視認することが困難になる距離、すなわち第一の基準距離D1、第二の基準距離D2を使用者の視力に応じて設定できる様にすることにより、使用者は、使用者の視力に係らず被写体を視認することができる。
【0087】
次に、図4において、輝度検知部803は、本発明に係る輝度検知手段に該当し、カメラユニット7のAE(Auto Exposure;自動露出)制御を行い、AE動作によって調整されたシャッタ速度、絞り値、またAGC回路703のゲイン等により、被写体の明るさを検知する。具体的には、輝度検知部803は、画像メモリ821に書き込まれた画像データ(デジタル画像信号)より、予め設定されてある撮像面上の測光エリアに関する画像データを読み出し、読み出した画像データに基づいて露出制御データを算出する。そして算出した露出制御データと予め設定されているプログラム線図に基づいて、シャッタ速度、絞り値、AGC回路244のゲイン等を調整してAE動作を行う。そして、輝度検知部803は、
例えば、AE動作によって調整されたシャッタ速度、絞り値、またAGC回路703のゲイン等により、被写体の明るさを検知する。
【0088】
この様にして、輝度検知部803によって検知された被写体の明るさにに基づいて、表示制御部803は、前述の第一の基準距離D1、第二の基準距離D2を補正することができる。例えば、老眼の進んだ使用者は、被写体の明るさが暗くなると、より遠い距離から視認することが困難になる(夜目)場合がある。したがって、被写体の明るさに応じて、第一の基準距離D1、第二の基準距離D1を補正する様にすることにより、使用者は、被写体の明るさに係らず被写体を視認することができる
次に、文字検知部804は、本発明に係る文字検知手段に該当し、カメラユニット7で撮影された画像より、周知の画像信号処理により、文字を検知する。
【0089】
また、ネガ/ポジ反転部807は、本発明に係るネガ/ポジ反転手段に該当し、カメラユニット7で撮影された画像において、文字の背景を黒くし、文字を白くする等して、文字画像のコントラストを反転させる。
【0090】
そして、表示制御部808は、文字検知部804がカメラユニット7で撮影された画像において文字を検知した場合、画像のコントラストを反転させる様に、ネガ/ポジ反転部807を制御することもできる。この様に、画像のコントラストを反転させて、例えば、文字を白抜き文字で表示することにより、図9に示す様に、シースルーによる被写体光像SXと文字の表示画像IM4が重なって観察される場合においても、文字をより鮮明に視認することができる。
【0091】
また、文字検知部804は、文字の大きさを検知することができ、表示制御部808は、文字検知部804が検知した文字の大きさにに基づいて、デジタルズーム部805の最大拡大倍率を設定することもできる。これにより、拡大することにより撮影画像の文字が大きくなりすぎて視認することが困難になることを防止することができる。
【0092】
また、表示制御部808は、表示ユニット6に画像が表示される場合、外界から表示ユニット6への入射光が遮光される様に液晶シャッタ653の作動を制御することもできる。この様に、シースルーによる被写体光像と画像が重なって観察される場合は、外界から表示ユニット6への入射光を遮光して、シースルーを不能にすることにより、注目したい画像のみをより鮮明に視認することができる。
【0093】
次に、画像メモリ821は、カメラユニット7中の画像処理部706や制御ユニット8中の制御部801により画像信号に対する各種処理を行う為の作業領域として用いられる一時メモリである。
【0094】
VRAM822は、LCD表示部61中のLCD614の画素数に対応した画像信号の記録容量を有し、LCD614に再生表示される画像を構成する画素信号のバッファメモリである。
【0095】
記録部823は、例えばメモリカードが装填され、カメラユニット7で撮影された画像を記録するメモリである。
【0096】
外部I/F824は、例えば、ビデオやテレビ、パーソナルコンピュータ等のHMD1の図示しない外部機器から画像信号を入力するインターフェースである。
【0097】
操作部830には、HMD1の電源スイッチ830a、距離設定スイッチ830b等、各種操作スイッチが設けられている。
【0098】
ここで、本発明に係るHMD1で行われる、表示制御動作の流れを図10に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0099】
最初に、電源スイッチ830bを操作しHMD1の電源をONにして撮影動作を開始する(ステップS1)。撮影動作が開始されると、輝度検知部803は、カメラユニット7で取り込まれ、画像メモリ821に書き込まれた画像データを読出し、読み出した画像データに基づいて被写体の明るさを検知する(ステップS2)。そして、表示制御部808は、輝度検知部803が検知した被写体輝度と予め設定しておいた基準輝度とを比較し、比較した結果、被写体輝度が基準輝度よりも暗い場合は(ステップS3;No)、第一の基準距離D1をより遠い距離(D1=D1+Δd、Δdは補正値とする。)に補正する(ステップS4)。例えば、老眼の進んだ使用者は、被写体の明るさが暗くなると、より遠い距離から視認することが困難になる(夜目)場合がある。したがって被写体が暗い場合には、第一の基準距離D1をより遠い距離に補正するものである。一方、被写体輝度が基準輝度よりも明るい場合は(ステップS3;Yes)は、第一の基準距離D1の補正は行わない。
【0100】
次に、距離検知部802は、画像メモリ821に書き込まれた画像データを読出し、読み出した画像データに基づいて被写体距離を検知する(ステップS5)。そして、表示制御部808は、距離検知部802が検知した被写体距離と予め設定しておいた第一の基準距離D1とを比較する。比較した結果、被写体距離が第一の基準距離D1よりも近い場合は(ステップS6;Yes)、被写体距離に応じたトリミング領域T1、及び拡大倍率K1を決定する(ステップS7)。一方、被写体距離が第一の基準距離D1よりも遠い場合は(ステップS6;No)、表示制御部808は、次に、距離検知部802が検知した被写体距離と予め設定しておいた第二の基準輝度D2とを比較する。比較した結果、被写体距離が第二の基準距離D2よりも遠い場合は(ステップS8;Yes)、被写体距離に応じたトリミング領域T2、及び拡大倍率K2を決定する(ステップS9)。この様にして、例えば、老眼や近視の進んだ使用者が、裸眼では視認することが困難な距離に被写体が位置する場合は、それぞれの距離に応じたトリミング領域T1またはT2、及び拡大倍率K1またはK2が決定される。
【0101】
次に、トリミング部806は、画像メモリ821に書き込まれた画像データを読出し、読み出した画像データを表示制御部808で決定されたトリミング領域T1またはT2でトリミングする(ステップS10)。そして、デジタルズーム部805は、トリミング部806でトリミングされた画像データを、表示制御部808で決定された拡大倍率K1またはK2で拡大する(ステップS11)。
【0102】
次に、表示制御部808は、液晶シャッタ653を制御し、外界から表示ユニット6への入射光を遮光して、シースルーを不能にする(ステップS12)。そして、表示制御部808は、デジタルズーム部805で拡大された画像を表示ユニット6に表示する(ステップS13)。
【0103】
一方、ステップS8において、被写体距離が第二の基準距離D2よりも近い場合(ステップS8;No)、すなわち、被写体が第一の基準距離D1と第二の基準距離D2の間に位置する場合は、老眼や近視の進んだ使用者においても、裸眼で被写体を視認することができるので、表示制御部808は、表示ユニット7に画像表示を行わない。すなわち、この様な場合には、使用者は、シースルーにて被写体光像を視認することができる。
【0104】
この様にして、本発明に係るHMD1においては、表示制御部808が、距離検知部802で検知された被写体距離に基づいて、トリミング部806、デジタルズーム部805の作動を制御して、カメラユニット7によって撮影された画像のトリミング領域やトリミングされた画像の拡大倍率を変化させることにより、使用者が、操作に拠ることなく、被写体距離に係らず被写体を容易に視認することができる。すなわち、シースルーでは視認することが困難であった小さな文字は、パララックスの影響が低減され、大きく拡大されて表示されることにより、容易に視認することができる様になる。
【0105】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は前述の実施の形態に限定して解釈されるべきでなく、適宜変更、改良が可能であることは勿論である。例えば、前述の実施の形態における表示制御動作の流れを示すフローチャートにおいては、シースルーによる被写体光像と撮影画像が重なって観察される場合は、外界から表示ユニット6への入射光を遮光して、シースルーを不能にすることにより、注目したい撮影画像のみをより鮮明に視認することができる様にしたが、例えば、ネガ/ポジ反転部807により、撮影画像のコントラストを反転させて、文字を白抜き文字で表示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に係るHMDの一例による外観模式図である。
【図2】本発明に係るHMDの別例による外観模式図である。
【図3】本発明に係るHMDにおける表示ユニットの側断面図である。
【図4】本発明に係るHMDの電気回路ブロック構成図である。
【図5】パララックスを示す模式図である。
【図6】本発明に係るHMDにおけるトリミング、画像拡大動作を示す模式図である。
【図7】本発明に係るHMDの表示ユニットにおける表示の一例を示す模式図である。
【図8】本発明に係るHMDの表示ユニットにおける表示の別例を示す模式図である。
【図9】本発明に係るHMDの表示ユニットにおける表示の他の別例を示す模式図である。
【図10】本発明に係るHMDの表示制御動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0107】
1 HMD
2 フレーム
3 テンプル
4 鼻当て
5 透明基板
6 表示ユニット
61 LCD表示部
611 筐体
612 LED
613 コリメータレンズ
614 LCD
65 接眼光学系
651 プリズム
652 HOE
653 液晶シャッタ
7 カメラユニット
701 CCDエリアセンサ
702 CDS回路
703 AGC回路
704 A/D変換器
705 タイミングジェネレータ
706 画像処理部
710 レンズ
8 制御ユニット
801 制御部
802 距離検出部
803 輝度検出部
804 文字検出部
805 デジタルズーム部
806 トリミング部
807 ネガ/ポジ反転部
808 表示制御部
821 画像メモリ
822 VRAM
823 記録部
824 外部I/F
830 操作部
830a 電源スイッチ
830b 距離設定スイッチ
851 音声出力部
852 音声入力部
860 電源部
9 ケーブル
E 目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部または顔面に取り付けられ、使用者が外界をシースルー可能な映像表示装置であって、
外界の観察対象物を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段で撮影された画像をトリミングするトリミング手段と、
前記トリミング手段でトリミングされた画像を拡大する電子ズーム手段と、
前記電子ズーム手段で拡大された画像を表示するシースルー可能な表示手段と、
前記トリミング手段、及び前記電子ズーム手段の作動を制御する表示制御手段と、
前記観察対象物の距離を検知する距離検知手段と、を有し、
前記表示制御手段は、前記距離検知手段が検知した距離に基づいて、前記トリミング手段、及び前記電子ズーム手段の作動を制御することを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、ズームレンズを有し、
前記表示制御手段は、前記距離検知手段が検知した距離に基づいて、前記ズームレンズのズーム倍率を設定することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記距離検知手段が検知した距離が、予め設定した第一の基準距離より近い場合、前記トリミング手段が前記撮像手段で撮影された画像を、前記距離検知手段が検知した距離に応じたトリミング領域でトリミングし、
前記電子ズーム手段が前記トリミング手段でトリミングされた画像を、前記距離検知手段が検知した距離に応じた拡大倍率で拡大する様に、前記トリミング手段、及び前記電子ズーム手段の作動を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記距離検知手段が検知した距離が、前記第一の基準距離よりも遠い距離に予め設定した第二の基準距離より遠い場合、前記トリミング手段が前記撮像手段で撮影された画像を、前記距離検知手段が検知した距離に応じたトリミング領域でトリミングし、
前記電子ズーム手段が前記トリミング手段でトリミングされた画像を、前記距離検知手段が検知した距離に応じた拡大倍率で拡大する様に、前記トリミング手段、及び前記電子ズーム手段の作動を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記第一の基準距離及び前記第二の基準距離、またはそのいずれかを設定する距離設定手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記観察対象物の明るさを検知する輝度検知手段を有し、
前記表示制御手段は、前記輝度検知手段が検知した明るさに基づいて、前記第一の基準距離及び前記第二の基準距離、またはそのいずれかを補正することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項7】
外界から前記表示手段への入射光を遮光する遮光手段を有し、
前記表示制御手段は、前記遮光手段の作動を制御するものであって、
前記表示手段に画像が表示される場合、
前記表示制御手段は、外界から前記表示手段への入射光が遮光される様に前記遮光手段の作動を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項8】
前記撮像手段で撮影された画像において、文字を検知する文字検知手段と、
画像のコントラストを反転するネガ/ポジ反転手段と、を有し、
前記表示制御手段は、ネガ/ポジ反転手段の作動を制御するものであって、
前記文字検知手段が、文字を検知した場合、
前記表示制御手段は、前記撮像手段で撮影された画像において、文字の背景を黒くし、文字を白くする様に前記ネガ/ポジ反転手段の作動を制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の映像表示装置。
【請求項9】
前記文字検知手段は、文字の大きさを検知するものであって、
前記表示制御手段は、前記文字検知手段が検知した文字の大きさに基づいて、前記電子ズーム手段の最大拡大倍率を設定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−214964(P2007−214964A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33617(P2006−33617)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】