説明

最適環境設定システム

【課題】複数の作業者にとって最適な環境に設定する最適環境設定システムを提供する。
【解決手段】複数人の作業者が使用する加工機械2を各作業者Pにとって最適な環境に設定する最適環境設定システムであって、作業者Pの個人情報が予め記憶された個人情報記憶部と作業者Pにとって加工機械2の最適環境設定情報が予め記憶された設定個人情報記憶部とを有するカード3と、加工機械2に設けられてカード3に記憶された個人情報と最適環境設定情報とを読み取ると共に加工機械2での作業実績をカード3に書き込み可能なデータ読み取り書き込み部と、加工機械2に設けられてこのデータ読み取り書き込み部で読み取られた個人情報と最適環境設定情報とに基づいて加工機械2の環境を設定する環境設定部とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の人間によって使用される加工機を使用する作業者にとって最適な環境に設定する最適環境設定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一台の工作機械を一人の作業者が専用に用いる場合には、専用に用いる作業者にとって最適な使用環境に工作機械をセッティングしておけば、作業者はいつでも最適な使用環境で工作機械を使用することができる。
【0003】
しかし、一台の工作機械を複数の作業者がそれぞれ使用する場合は、工作機械で作業をする前に、作業者は自身が使いやすいように、工作機械のセッティングを行う。例えば、NC工作機械等では、NC画面の操作高さ、画面の文字の大きさ、テンキーの位置、画面の明るさ、作業位置における照明の明るさ、画面の配色、音声ガイダンスの大きさ、空調、作業台の高さ、自身が着座する座席の高さ、工作機械の動作速度等を使用する作業者にとって最適となるようにセッティングする。
【0004】
そして、工作機械を使用する前に、作業者にとって最適な使用環境に工作機械をセッティングすることにより、快適で安全な作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−58204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、工作機械による作業を開始する前に、工作機械の使用環境を一一自身にとって最適な環境にセッティングしていると、実際の作業時間に加えて、セッティングのための時間が必要となりトータルの作業時間数が長くなってしまう。
【0007】
また、一台の工作機械のセッティングを使用するたびに繰り返し行う場合、同様なセッティングができず、セッティングの状態にばらつきが生じる。このため快適で安全な作業を常に行うことができないおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、複数の作業者が一台の工作機械を共用して使用する場合に、セッティングが容易で、セッティングにばらつきが生じることがなく、複数の作業者にとって最適な使用環境に設定することができる最適環境設定システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、請求項1の発明では、複数人の作業者が使用する加工機械を各作業者にとって最適な環境に設定する最適環境設定システムであって、作業者の個人情報が予め記憶された個人情報記憶部と作業者にとって加工機械の最適環境設定情報が予め記憶された設定個人情報記憶部とを有するカードと、前記加工機械に設けられて前記カードに記憶された前記個人情報と前記最適環境設定情報とを読み取ると共に加工機械での作業実績をカードに書き込み可能なデータ読み取り書き込み部と、前記加工機械に設けられてこのデータ読み取り書き込み部で読み取られた前記個人情報と前記最適環境設定情報とに基づいて加工機械の環境を設定する環境設定部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の最適環境設定システムであって、前記カードには、前記加工機械が行った作業内容を記憶する作業実績記憶部を有することを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の最適環境設定システムであって、前記個人情報は、作業者の身体的情報であり、前記設定個人情報は、加工機械が有する表示画面の操作面高さ、表示画面の表示文字の大きさ、テンキーの位置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、作業者が代わった場合であっても、カードを加工機械に接続することで、複数の作業者の作業内容に最適な環境を表示し、表示手段の表示に従って加工機械の使用環境を変更することで作業者にとって最適な環境に設定することができる。
【0013】
また、繰り返し使用環境を設定してもばらつくことがない。従って、快適で安全な作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の最適環境設定システムの簡略図。
【図2】本発明の加工機械とカードを簡略に示した図。
【図3】本発明の最適環境設定システムの手順を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明において最適環境設定システムは、複数人の作業者が使用する加工機械2と作業者の情報を予め記憶したカード3からなっている。
【0017】
加工機械2は、材料を所望の形状に加工する機械本体4と、加工機械2に近接して接続配置された制御部5とからなっている。
【0018】
機械本体4は、作業者Pが材料を所望の形状に加工する加工機で、制御部5が近接して接続配置されている。
【0019】
制御部5は、制御部5に電源を供給するための電源スイッチ6と後述するカード3が挿入されるデータ読み取り書き込み部7とデータ読み取り書き込み部7にて読み込んだ情報に基づいて加工機械2の環境を設定する環境設定部とからなっている。
【0020】
データ読み取り書き込み部7は、制御部5に設けられて、後述するカード3がカード挿入口13から挿入されてカード3に記憶された作業者Pの情報を読み取っている。このカード3に記憶された作業者Pの情報を環境設定部8の表示画面9に表示することで、作業者Pが最適な環境を視認することができる。また、表示画面9にタッチパネルを使用することで、表示された情報から作業者Pが必要とする情報を適宜選択することができる。
【0021】
データ読み取り書き込み部7に挿入されるカード3は、作業者Pの身体的情報を記憶する個人情報記憶部10と作業者Pが作業するのに最適な環境を記憶する設定個人情報記憶部11と作業者Pが加工機械2にて行った作業内容を記憶する作業実績記憶部12とからなっている。
【0022】
個人情報記憶部10は、加工機械2で作業する作業者Pの身長、体重などの身体的情報を記憶している。
【0023】
設定個人情報記憶部11は、環境設定部8が有する表示画面9の高さ、表示画面9に表示される文字の大きさ、テンキーの位置などの作業者Pにとって最適な環境の情報を記憶している。
【0024】
このように、個人情報記憶部10と設定個人情報記憶部11に記憶された作業者Pの身体的情報に基づいて表示画面9に表示する操作面の高さ、文字の大きさやテンキーの位置の変更を指示する。
【0025】
作業実績記憶部12は、作業者Pが加工機械2にて行った作業内容を記憶する。このように作業者Pが加工機械2にて行った作業内容を記憶させることで、次に同じ加工を行う場合、カード3をデータ読み取り書き込み部7に挿入し、最適な環境を表示画面に表示することができる。
【0026】
次に、本発明の最適環境設定システム1の動作について図3を用いて説明する。
【0027】
まず、S1にて制御部5に設けられた電源スイッチ6の電源をONにする。次に、S2にて個人情報記憶部10、設定個人情報記憶部11などの作業者Pの情報を入力したカード3を制御部5に設けられたデータ読み取り書き込み部7に挿入する。
【0028】
S3にて、データ読み取り書き込み部7に挿入されたカード3に入力された作業者Pの個人情報をデータ読み取り書き込み部7が読み取る。S4にて、カード3に入力された作業者Pの設定個人情報をデータ読み取り書き込み部7が読み取る。
【0029】
S5にて、環境設定部8がデータ読み取り書き込み部7にて読み込んだ作業者Pの情報に基づいて加工機械2の環境を設定し、表示画面9に最適な環境を表示する。
【0030】
S6にて、データ読み取り書き込み部7が作業者Pが行う作業内容を作業実績記憶部12に情報を記憶する。
【0031】
S7にて、作業者Pが作業を継続する場合は、S6に戻り、作業者Pが行う作業内容を作業実績記憶部12に情報を記憶する。また、作業者Pの作業が終了する場合は、S8にてカード3を取り出し、作業者Pの作業を終了させる。
【0032】
このように構成することで、作業者が代わった場合であっても、カードを加工機械に接続することで、複数の作業者の作業内容に最適な環境を表示し、表示手段の表示に従って加工機械の仕様を変更することで作業者にとって最適な環境に設定することができる。また、作業者が行う作業内容を作業実績記憶部に記憶することで、作業者の作業によって最適な環境を表示することができる。
【0033】
なお、本発明で説明する加工機械は、板金加工機械(ベンディング、パンチング、レーザー複合機、シャーリングマシン)、旋盤、歯切り盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、研削盤、放電加工機、ブローチ盤、ウォータージェット加工機、レーザー加工機、電子ビーム加工機、ホーニング加工機、電解加工機、裁断機等の工作機を示している。
【0034】
また、本実施例では、カードをデータ読み取り書き込み部に接続する構成となっているが、半導体集積回路(IC)をカードに埋め込んで、使用しても良い。すなわち、半導体集積回路に個人情報記憶部、設定個人情報記憶部、作業実績記憶部の情報をカードに入力し、制御部に情報を入力することによって、非接触で作業者の最適な環境の仕様情報を加工機械に伝達することもできる。
【0035】
また、繰り返し使用環境を設定してもばらつくことがないので、快適で安全な作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、種々の加工機に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 最適環境設定システム
2 加工機械
3 カード
4 機械本体
5 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数人の作業者が使用する加工機械を各作業者にとって最適な環境に設定する最適環境設定システムであって、
作業者の個人情報が予め記憶された個人情報記憶部と作業者にとって加工機械の最適環境設定情報が予め記憶された設定個人情報記憶部とを有するカードと、
前記加工機械に設けられて前記カードに記憶された前記個人情報と前記最適環境設定情報とを読み取ると共に加工機械での作業実績をカードに書き込み可能なデータ読み取り書き込み部と、
前記加工機械に設けられてこのデータ読み取り書き込み部で読み取られた前記個人情報と前記最適環境設定情報とに基づいて加工機械の環境を設定する環境設定部とを備えていることを特徴とする最適環境設定システム。
【請求項2】
請求項1記載の作業者の最適環境設定システムであって、
前記カードには、前記加工機械が行った作業内容を記憶する作業実績記憶部を有することを特徴とする最適環境設定システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の作業者の最適環境設定システムであって、
前記個人情報は、作業者の身体的情報であり、
前記設定個人情報は、加工機械が有する表示画面の操作面高さ、表示画面の表示文字の大きさ、テンキーの位置の情報を記憶することを特徴とする最適環境設定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−212375(P2012−212375A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78409(P2011−78409)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】