説明

木質ボードの製造方法

【課題】ホルムアルデヒド系樹脂接着剤の安定性の低下を招くことなく、木質ボードの高い接着強度を維持し、かつホルムアルデヒド系樹脂接着剤に起因する遊離ホルムアルデヒド放散量を低減することができる。
【解決手段】木質原料とホルムアルデヒド系樹脂接着剤を使用した木質ボードの製造方法の改良であり、ホルムアルデヒド系樹脂接着剤を添加する前の木質原料に対して、平均粒子径が50〜1000μmの粉末状尿素及び平均粒子径が0.1〜100μmの無機充填剤をそれぞれ添加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティクルボード、木質繊維板(MDF)等の木質ボードの製造方法に関する。更に詳しくは、木質ボードに使用するホルムアルデヒド系樹脂接着剤に起因する遊離ホルムアルデヒドの放散量を効果的に低減することが可能な木質ボードの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーティクルボード、木質繊維板などの木質ボードは、一般に木質原料に接着剤を混合した後、これを加熱及び加圧して接着剤を硬化させることにより製造される。接着剤としては、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂或いはこれらの共縮合樹脂、いわゆるホルムアルデヒド系樹脂等が広範囲に使用されている。
【0003】
しかし、このような木質ボードからは、接着剤に使用しているホルムアルデヒド系樹脂に起因する少量の遊離ホルムアルデヒドが大気中に放出されるため、生活環境の悪化並びに健康へ害を及ぼす原因物質として問題視されている。
【0004】
上記問題を解決する方策として、樹脂接着剤中のホルムアルデヒドの含有率を下げた低モル比のホルムアルデヒド系樹脂接着剤を使用して、遊離ホルムアルデヒドの放散量を低減する方法が考えられる。
【0005】
しかしながら、ホルムアルデヒドのモル比を下げると、得られた樹脂の貯蔵安定性が悪化し、かつ接着性能が低下するため、製造した木質ボードの強度性能が低下するという問題を有する。
【0006】
また、別の方策として、ホルムアルデヒドと反応しうる化合物(アルデヒド捕捉剤、キャッチャー剤ともいう。)を添加する方法が提案されている。
【0007】
このアルデヒド捕捉剤の添加方法としては、(1)ボード製造後の木質ボードにアルデヒド捕捉剤を噴霧や塗布する方法が最も一般的である。例えば、ホットプレス工程の直後にホルムアルデヒド捕捉剤水溶液を30〜60℃に加温した状態で表面に付着させる方法(例えば、特許文献1参照。)が開示されている。
【0008】
また、(2)木質ボード製造前の木質原料に塗布する方法が知られている。例えば、木質繊維板の全層又はいずれかの層の木質繊維にホルムアルデヒド捕捉剤をアミノ樹脂を混合する前又は後に混合して、加圧、成形する木質繊維板を製造する方法(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【0009】
同様に、尿素、亜硫酸塩及び無機性燐酸塩或いは有機酸塩を含んだアルデヒド捕集剤を接着工程前の単板、木質繊維やチップ等の素材に塗布するか或いは、接着工程後の木質材料の表面に塗布する方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。
【0010】
また、(3)ホルムアルデヒド系樹脂接着剤に尿素水溶液を添加する方法が知られている。この方法は、上記ボード製造後の木質ボードにアルデヒド捕捉剤を噴霧や塗布する方法と併用で行われる方法であり、一般的に実施されている。例えば、特許文献4が開示されている。
【特許文献1】特開平11−147206号公報(特許請求の範囲の請求項1)
【特許文献2】特開平10−119010号公報(特許請求の範囲の請求項2)
【特許文献3】特開2002−331504号公報(特許請求の範囲の請求項1及び発明の詳細な説明の段落[0015])
【特許文献4】特開昭50−24404号公報(特許請求の範囲及び第3頁〜第4頁の実施例1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記(1)ボード製造後の木質ボードにアルデヒド捕捉剤を噴霧や塗布する方法では、塗布や噴霧するためにアルデヒド捕捉剤水溶液を使用するので、水溶液が表面から浸透して表層が膨潤してしまい、量産化した場合、それぞれのボード厚みを均一に保つことができなかった。また、木質ボード表面の表面状態が悪化してしまっていた。更に、二次加工接着時に接着剤への悪影響が懸念される。
【0012】
また、上記(2)木質ボード製造前の木質原料に塗布する方法では、アルデヒド捕捉剤として粉末尿素や尿素水溶液を使用しているが、一般的に市販されている平均粒子径が1500〜5000μmと大きな粉末尿素では、遊離ホルムアルデヒドの拡散量を十分に低減することができないため、必要以上に多く添加しなければならず、アルデヒド捕捉剤の添加量を増やすと、ホルムアルデヒド系樹脂接着剤の安定性が低下してしまう不具合を生じていた。
【0013】
また、上記(3)ホルムアルデヒド系樹脂接着剤に尿素水溶液を添加する方法では、接着剤の硬化性が著しく悪くなり、また接着強度も低下する問題があった。
【0014】
更に、これら(1)〜(3)の技術では、遊離ホルムアルデヒド量の低減にはそれなりの効果が認められるが、いずれも製品の接着強度が低下する問題が避けられない。
【0015】
本発明の目的は、ホルムアルデヒド系樹脂接着剤の安定性の低下を招くことなく、木質ボードの高い接着強度を維持し、かつホルムアルデヒド系樹脂接着剤に起因する遊離ホルムアルデヒド放散量を効果的に低減することができる、木質ボードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は、木質原料とホルムアルデヒド系樹脂接着剤を使用した木質ボードの製造方法の改良である。その特徴ある構成は、ホルムアルデヒド系樹脂接着剤を添加する前の木質原料に対して、平均粒子径が50〜1000μmの粉末状尿素及び平均粒子径が0.1〜100μmの無機充填剤をそれぞれ添加するところにある。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、木質原料に対する粉末状尿素と無機充填剤の添加が、粉末状尿素と無機充填剤とを均一混合して混合物を得た後、混合物を木質原料に添加して均一に混合することにより行われる木質ボードの製造方法である。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、粉末状尿素の添加量が、乾燥木質原料100質量部に対して0.05〜5質量部(固形分基準)である木質ボードの製造方法である。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、無機充填剤の添加量が、乾燥木質原料100質量部に対して0.1〜10質量部(固形分基準)である木質ボードの製造方法である。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4いずれか1項に係る発明であって、粉末状尿素の平均粒子径が、無機充填剤の平均粒子径の1.0〜10000倍である木質ボードの製造方法である。
【0021】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5いずれか1項に係る発明であって、粉末状尿素と無機充填剤との添加割合が、粉末状尿素100質量部に対して、無機充填剤が10〜1000質量部である木質ボードの製造方法である。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6いずれか1項に係る発明であって、無機充填剤が炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、焼成タルク、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、硼酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスバルーン、セメント、ガラス粉末、珪藻土、三酸化アンチモン及び水和アルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種である木質ボードの製造方法である。
【0023】
請求項8に係る発明は、請求項1に係る発明であって、木質原料の形態が、粉、チップ、繊維、ストランド、ウェハー及びフレークからなる群より選ばれた少なくとも1種である木質ボードの製造方法である。
【0024】
請求項9に係る発明は、請求項1に係る発明であって、木質ボードがパーティクルボード又は木質繊維板である木質ボードの製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の木質ボードの製造方法によれば、ホルムアルデヒド系樹脂接着剤を添加する前の木質原料に対して、特定の平均粒子径を有する粉末状尿素及び特定の平均粒子径を有する無機充填剤を均一混合した後に添加することで、無機充填剤が粉末状尿素の凝集防止剤として作用し、ホルムアルデヒド系樹脂接着剤の安定性の低下を招くことなく、木質ボードの高い接着強度を維持し、かつホルムアルデヒド系樹脂接着剤に起因する遊離ホルムアルデヒド放散量を効果的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0027】
本発明の木質ボードの製造方法は、木質原料とホルムアルデヒド系樹脂接着剤を使用したものである。この木質ボードとしては、パーティクルボードや木質繊維板を含む。木質原料の形態としては、粉、チップ、繊維、ストランド、ウェハー及びフレークからなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。ホルムアルデヒド系樹脂接着剤としては、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、或いはこれらの共縮合樹脂が挙げられる。これらは、いわゆるホルムアルデヒド系熱硬化性樹脂である。樹脂接着剤は、使用に際し必要に応じて、硬化剤、撥水剤、難燃剤、防虫剤、防腐剤等と混合使用しても良い。
【0028】
本発明の木質ボードの製造方法は、ホルムアルデヒド系樹脂接着剤を添加する前の木質原料に対して、平均粒子径が50〜1000μmの粉末状尿素及び平均粒子径が0.1〜100μmの無機充填剤をそれぞれ添加することを特徴とする。
【0029】
上記範囲内の平均粒子径を有する粉末状尿素は、従来より使用され、一般的に市販されている平均粒子径が1500〜5000μmと大きな尿素粉末に比べて、比表面積が大きく、アルデヒド捕捉剤としての効果が大きいため、その分、木質ボードに添加する量を抑制することができる。従って、従来のような遊離アルデヒドを捕捉するために捕捉剤の添加量を増やすことによる、ホルムアルデヒド系樹脂接着剤の安定性の低下を招くことがなく、また、木質ボードの高い接着強度を維持することができる。
【0030】
また、単に上記範囲内の平均粒子径を有する粉末状尿素を使用しただけでは、粉末状尿素は容易に凝集してしまうため、木質ボードの製造をする際の粉末状尿素の取扱いが難しく、作業性が低下する。なお、このような凝集した粉末状尿素をそのまま木質原料に対して添加しても、アルデヒド捕捉剤としての効果を十分に得ることができない。
【0031】
そのため本発明では、上記範囲内の平均粒子径を有する粉末状尿素とともに、上記範囲内の平均粒子径を有する無機充填剤を併用する。上記範囲内の平均粒子径を有する無機充填剤を使用することで、上記範囲内の平均粒子径を有する粉末状尿素を使用しても粉末状尿素が凝集することなく、木質原料に均一に混合される。無機充填剤を併用することで粉末状尿素が凝集しない技術的理由としては、無機充填剤が粉末状尿素の表面のところどころに付着して、粉末状尿素同士の接触が防止されることによるものと考えられる。このように、粉末状尿素が凝集しない状態を保持したまま木質ボードを形成することができるため、結果として、ホルムアルデヒド系樹脂接着剤に起因する遊離ホルムアルデヒド放散量を効果的に低減することができる。
【0032】
現行の建築基準法によれば、ホルムアルデヒド放散量によるボードの区分は次の表1の通りである。
【0033】
【表1】

本発明の木質ボードの製造方法によれば、建築基準法が定めるF☆☆☆の規制値を満足する木質ボードを得ることができる。
【0034】
粉末状尿素による、遊離ホルムアルデヒドの捕捉の作用機構は明らかではないが、一般に尿素の結晶の構造には、小分子が入るのにちょうど良い大きさの空孔が存在するため、過酸化水素、ヘキサン等の様々な低分子化合物と安定な包接化合物を形成することから、おそらく木質ボードの製造過程において使用するホルムアルデヒド系樹脂接着剤から遊離したホルムアルデヒド分子は尿素と安定な包接化合物を形成する形で効果的に捕捉されるものと考えられる。
【0035】
粉末状尿素の平均粒子径を上記範囲内に規定したのは、下限値未満の粒子径に制御することが技術的に難しいこと、また、下限値未満の粒子径に制御できたとしても、その取扱いが難しく、作業性が低下するためであり、上限値を越えると、比表面積が小さくなって遊離ホルムアルデヒドの捕捉効果が乏しくなるためである。このうち、100〜700μmの平均粒子径を有する粉末状尿素が特に好ましい。
【0036】
粉末状尿素の添加量としては、乾燥木質原料100質量部に対して0.05〜5質量部(固形分基準)の割合であれば、木質ボードの高い接着強度を維持しつつ、遊離ホルムアルデヒド放散量を低減することができる。添加量が下限値未満では、遊離ホルムアルデヒドの捕捉が十分に行われず、放散量を低減することができない不具合を生じ、添加量が上限値を越えると、木質ボードの接着強度に劣る不具合を生じる。このうち、乾燥木質原料100質量部に対して0.1〜3質量部(固形分基準)の割合が特に好ましい。
【0037】
また、本発明において、粉末状尿素との併用により、遊離ホルムアルデヒドの捕捉に対して相乗的な有利な効果を与える無機充填剤の役割は明らかではないが、おそらく尿素微粒子の凝集を防止して粉末状尿素の高度な分散状態を維持する作用があるものと推測される。
【0038】
無機充填剤の平均粒子径を上記範囲内に規定したのは、下限値未満の粒子径に制御することが技術的に難しいこと、また、下限値未満の粒子径に制御できたとしても、粉末状尿素の凝集を抑えるには、多量の無機充填剤を添加しなければならず、粉末状尿素の遊離ホルムアルデヒドの捕捉効果を阻害してしまうなどの不具合を生じるためである。また、上限値を越えると、粉末状尿素の凝集を十分に抑制することができなくなるためである。このうち、0.5〜70μmの平均粒子径を有する無機充填剤が特に好ましい。
【0039】
無機充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、焼成タルク、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、硼酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスバルーン、セメント、ガラス粉末、珪藻土、三酸化アンチモン及び水和アルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。このうち、炭酸カルシウムやタルクが最適粒子径の選択並びにコストの点から、特に好ましい。
【0040】
無機充填剤の添加量としては、乾燥木質原料100質量部に対して0.1〜10質量部(固形分基準)の割合であれば、粉末状尿素の凝集を十分に防止することができる。添加量が下限値未満では、粉末状尿素の凝集が一部生じてしまう不具合を生じ、添加量が上限値を越えると、木質ボードの接着強度に劣る不具合を生じる。このうち、乾燥木質原料100質量部に対して0.3〜7質量部(固形分基準)の割合が特に好ましい。
【0041】
粉末状尿素の平均粒子径は、無機充填剤の平均粒子径の1.0〜10000倍である。粉末状尿素の平均粒子径が、無機充填剤の平均粒子径の1.0〜10000倍となるような組み合わせであれば、尿素微粒子の凝集を防止して粉末状尿素の高度な分散状態を維持する作用が、最も少ない無機充填剤量で達成できる。このうち、粉末状尿素の平均粒子径が、無機充填剤の平均粒子径の1.5〜3000倍となるような組み合わせが特に好ましい。
【0042】
また、粉末状尿素と無機充填剤との添加割合は、粉末状尿素100質量部に対して、無機充填剤が10〜1000質量部の割合であれば、粉末状尿素の凝集を十分に防止することができる。このうち、粉末状尿素100質量部に対して、無機充填剤が20〜50質量部の割合が特に好ましい。
【0043】
なお、木質原料への粉末状尿素及び無機充填剤の添加方法としては、粉末状尿素と無機充填剤をあらかじめ均一混合して混合物を調製し、得られた混合物を木質原料に対して添加して均一に混合することにより行われる。混合物を調製する際に、粉末状尿素が凝集し難い条件で、粉末状尿素と無機充填剤を混合すれば、より均一に混合することができる。粉末状尿素が凝集し難い条件としては、例えば60〜90℃といった高い温度範囲内で粉末状尿素と無機充填剤を混合して混合物を調製したり、恒温恒湿槽内で低湿条件を保ちながら粉末状尿素と無機充填剤を混合して混合物を調製する方法などが挙げられる。混合時の温度が90℃を越えると尿素が徐々に分解してアンモニアガスを発生するため好ましくない。
【0044】
粉末状尿素が単独で存在している場合は、粉末状尿素は吸湿して容易に凝集してしまうが、このように調製した混合物は凝集することがないため、木質原料に混合する前に、事前に大量に混合物を調製しておき、保管しておくことができる。
【0045】
この木質原料への粉末状尿素及び無機充填剤の添加に続いて、木質原料、粉末状尿素及び無機充填剤を含む混合物にホルムアルデヒド系樹脂接着剤をスプレー等により塗布する。次に、木質原料を所定の形状を有するコールプレート上に載せ、マットを形成した後、ホットプレス等を用いて熱圧成形することにより、木質ボードが得られる。
【0046】
得られた木質ボードは、遊離ホルムアルデヒドの捕捉効果が大きな平均粒子径が細かい粉末状尿素が均一に混合されているため、ホルムアルデヒド系樹脂接着剤に起因する遊離ホルムアルデヒド放散量を効果的に低減することができる。また、遊離ホルムアルデヒドの捕捉効果が大きな平均粒子径が細かい粉末状尿素の使用により、粉末状尿素の添加量を増やす必要がないため、ホルムアルデヒド系樹脂接着剤の安定性の低下を招くこともなく、また、木質ボードの高い接着強度を維持できる。
【実施例】
【0047】
次に本発明の実施例を参考例、比較例とともに詳しく説明する。なお、各例中、特に断らない限り、部及び%は質量基準である。
【0048】
<実施例1>
先ず、見開き寸法1.7mmの篩いを通過する大きさに粉砕した表裏層用木質チップを用意した。また、該篩いを通過せずに残った比較的大きな材料を芯層用木質チップとして用意した。
【0049】
次いで、アルデヒド捕捉剤として、平均粒子径500μmの尿素粉末及び平均粒子径5μmの炭酸カルシウムをそれぞれ用意した。この尿素粉末と炭酸カルシウムを以下の表3に示す表裏層添加量となるように25℃で混合して混合物を調製した。得られた混合物を表裏層用木質チップに対して添加して、表裏層用木質チップに尿素粉末と炭酸カルシウムを均一に混合させた。また、この尿素粉末と炭酸カルシウムを以下の表3に示す芯層添加量となるように25℃で混合して混合物を調製した。得られた混合物を芯層用木質チップに対して添加して、芯層用木質チップに尿素粉末と炭酸カルシウムを均一に混合させた。
【0050】
次に、表裏層用木質チップに対して、メラミン樹脂(以下、MFという。)に硬化剤とワックスを所定の割合で添加した接着剤をスプレーで塗布した。また、芯層用木質チップに対して、MFとユリア樹脂(以下、UFという。)が90質量部と10質量部の割合で配合されたものに硬化剤とワックスを所定の割合で添加した接着剤をスプレーで塗布した。
【0051】
次に、表層用木質チップと芯層用木質チップと裏層用木質チップをこの順にチップ重量比率で、20%、60%及び20%となるように、400mm平方で厚さ1.2mmの鉄製コールプレート(caul plate)上に載せ、厚さ20mmのマットを形成させた。そのマットの上に鉄製の別のコールプレートを載せ、220℃の温度に保持したホットプレスに挿入し、30kg/cm2(≒3.04MPa)の圧力を加えて140秒間保持し、10kg/cm2(≒1.01MPa)の圧力を加えて30秒間保持し、5kg/cm2(≒0.5MPa)の圧力を加えて30秒間保持し、圧力を加えずに5秒間保持することにより熱圧成形した。成形後ホットプレスからコールプレートを取り出して400mm×400mm×20mmの木質ボードを得た。以下の表2及び表3に木質ボード製造条件をそれぞれ示す。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

<参考例>
表裏層用木質ボード及び芯層用木質ボードに何もアルデヒド捕捉剤を加えなかった以外は実施例1と同様にして木質ボードを得た。
【0054】
<比較例1>
アルデヒド捕捉剤として、一次粒子の平均粒子径が500μmの尿素粉末を用意した。しかし、木質チップとの混合時点において一次粒子同士の凝集が見られたが、以下の試験にそのまま使用した。即ち、上記表3に示す表裏層添加量となるように表裏層用木質チップに対して添加して、表裏層用木質チップに尿素粉末を混合させた。また、この尿素粉末を上記表3に示す芯層添加量となるように芯層用木質チップに対して添加して、芯層用木質チップに尿素粉末を混合させた。それ以外は実施例1と同様にして木質ボードを得た。即ち、この比較例1では、アルデヒド捕捉剤として無機充填剤は使用していない。
【0055】
<比較例2>
アルデヒド捕捉剤として、一次粒子の平均粒子径が3000μmの尿素粉末を用意し、この尿素粉末を上記表3に示す表裏層添加量となるように表裏層用木質チップに対して添加して、表裏層用木質チップに尿素粉末を均一に混合させた。また、この尿素粉末を上記表3に示す芯層添加量となるように芯層用木質チップに対して添加して、芯層用木質チップに尿素粉末を均一に混合させた。それ以外は実施例1と同様にして木質ボードを得た。即ち、この比較例2では、アルデヒド捕捉剤として無機充填剤は使用していない。
【0056】
<比較評価>
得られた実施例1、参考例及び比較例1〜2の木質ボードの性能をJIS A 5908−2003に規定する試験方法により各試験について8サンプルずつ試験した。その結果を表4に示す。なお、表4中の「平均値」は試験した8サンプルの結果の平均値を示し、「最大〜最小」は試験した8サンプルの結果の最大値と最小値を示す。
【0057】
【表4】

表4より明らかなように、遊離ホルムアルデヒド放散量は、実施例1、比較例2、参考例の順で低くなる傾向が見られた。比較例1の遊離ホルムアルデヒド放散量は、高くしかもバラツキが大きかった。アルデヒド捕捉剤を使用していない参考例は、吸水厚さ膨張率は一番小さい数値を示したが、遊離ホルムアルデヒド放散量が高い結果となった。平均粒子径が3000μmの尿素粉末をアルデヒド捕捉剤として使用した比較例2は、遊離ホルムアルデヒド放散量は参考例に比べると低減されているが、その低減の効果は十分でなく、かつ吸水厚さ膨張率も高くなる傾向が見られた。これらの結果は、アルデヒド捕捉剤である粉末状尿素の平均粒子径が大きいことが原因ではないかと考えられる。見かけの一次粒子の平均粒子径が500μmの尿素粉末のみをアルデヒド捕捉剤として使用した比較例1では、使用した尿素粉末は、一次粒子同士による二次凝集体を形成していたため、粒子径肥大に伴う比表面積の減少によってホルムアルデヒド低減効果が十分でなく、更に接着強度のバラツキもあり好ましくない。
【0058】
一方、比較例1で使用したアルデヒド捕捉剤と同じ平均粒子径を有する粉末尿素を用いるとともに、併せて炭酸カルシウムを用いた実施例1では、木質ボードの製造時に尿素粉末の凝集体は形成されておらず、木質チップに均一に添加混合することができており、遊離ホルムアルデヒドの放散量の低減に効果があることが判った。
【0059】
以上の結果から、実施例1の木質ボードのように、アルデヒド捕捉剤として、所定の粒子径を有する粉末状尿素と、所定の粒子径を有する無機充填剤を併用することで、接着強度を犠牲にすることなく遊離ホルムアルデヒドを効果的に低減することができ、かつ生産性に優れることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質原料とホルムアルデヒド系樹脂接着剤を使用した木質ボードの製造方法において、
前記ホルムアルデヒド系樹脂接着剤を添加する前の前記木質原料に対して、平均粒子径が50〜1000μmの粉末状尿素及び平均粒子径が0.1〜100μmの無機充填剤をそれぞれ添加することを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項2】
木質原料に対する粉末状尿素と無機充填剤の添加が、前記粉末状尿素と前記無機充填剤とを均一混合して混合物を得た後、前記混合物を前記木質原料に添加して均一に混合することにより行われる請求項1記載の木質ボードの製造方法。
【請求項3】
粉末状尿素の添加量が、乾燥木質原料100質量部に対して0.05〜5質量部(固形分基準)である請求項1又は2記載の木質ボードの製造方法。
【請求項4】
無機充填剤の添加量が、乾燥木質原料100質量部に対して0.1〜10質量部(固形分基準)である請求項1又は2記載の木質ボードの製造方法。
【請求項5】
粉末状尿素の平均粒子径が、無機充填剤の平均粒子径の1.0〜10000倍である請求項1ないし4いずれか1項に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項6】
粉末状尿素と無機充填剤との添加割合が、粉末状尿素100質量部に対して、無機充填剤が10〜1000質量部である請求項1ないし5いずれか1項に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項7】
無機充填剤が炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、焼成タルク、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、硼酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスバルーン、セメント、ガラス粉末、珪藻土、三酸化アンチモン及び水和アルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし6いずれか1項に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項8】
木質原料の形態が、粉、チップ、繊維、ストランド、ウェハー及びフレークからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の木質ボードの製造方法。
【請求項9】
木質ボードがパーティクルボード又は木質繊維板である請求項1記載の木質ボードの製造方法。

【公開番号】特開2009−23095(P2009−23095A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185287(P2007−185287)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(390001339)光洋産業株式会社 (46)
【Fターム(参考)】