説明

木質製品の製造方法

【課題】熱圧締時間を短縮して木質製品を効率よく製造することのできる木質製品の製造方法及びこれを可能とする接着剤を提供すること。
【解決手段】本発明の木質製品の製造方法は、接着剤を含む製造中間体を熱圧締して木質製品を得る木質製品の製造方法であり、前記接着剤として、微細炭素繊維を配合した接着剤を用いることを特徴とする。本発明の木質製品製造用の水性接着剤は、水性接着剤に微細炭素繊維を配合してなる。木質製品は、例えば、木質材からなる基材の片面又は両面に前記接着剤を介して表面化粧材を接合して得られる木質複合材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合板、パーティクルボード(PB)、MDF等の木質材の製造や、これらを基材とし、該基材に単板を接合して化粧板等を製造する場合には、蒸気プレス等のホットプレスを利用した熱圧締が広く行われている。
熱圧締による木質材等の製造においては、その熱圧締時間が、生産性を大きく左右する因子である。そのため、熱圧締時間の短縮化を図る種々の技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、パーティクルボードの製造に用いる接着剤に硬化促進剤としてMDI(ジ・フェニルメタン、ジ・イソシアネート)を添加する方法が提案され、特許文献2には、熱圧締の前に、被着材を高周波により予め加熱しておく方法が提案されている。
また、特許文献3には、接着剤の塗布後、加圧下に5〜2000Hzの振動を付与する方法が提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1のように、硬化促進剤として副材料を配合する場合には、粘度上昇や硬化が促進され、接着剤として使用可能な時間が短縮されるため、頻繁に、接着剤の調製が必要となったり、大掛かりな装置が必要になる等の不都合がある。
また、特許文献2や3のように、外部装置を用いる場合には、製造ラインに大掛かりな設備投資が必要となるといった問題があった。
【0004】
ところで、接着剤にカーボンナノチューブを配合する技術が知られている。例えば、特許文献4には、金属粒子の代わりにカーボンナノチューブを接着剤に配合し、導電性接着剤の剛性を向上させる技術が記載されており、特許文献5には、ラバーを貼付して卓球のラケットとされる卓球ラケット用ブレードの構成部材どうしを接着する接着剤にカーボンナノチューブを用いることが記載されている。
しかし、これらはカーボンナノチューブの電気伝導性や反発弾性向上能に着目して配合したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−254411号公報
【特許文献2】特開2006−289759号公報
【特許文献3】特開2008−044330号公報
【特許文献4】特開2004−27134号公報
【特許文献5】特開2005−006924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、熱圧締時間を短縮して木質製品を効率よく製造することのできる木質製品の製造方法及びこれを可能とする接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、接着剤を含む製造中間体を熱圧締して木質製品を得る木質製品の製造方法において、前記接着剤として、微細炭素繊維を配合した接着剤を用いることを特徴とする木質製品の製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、水性接着剤に微細炭素繊維を配合してなる木質製品製造用の水性接着剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の木質製品の製造方法及び接着剤によれば、熱圧締時間を短縮して木質製品を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明で製造する木質製品としては、(1)単板間が接着剤を介して接着された合板若しくは単板積層材である木質材、又は木材の小片や繊維等のエレメントどうしが接着剤を介して一体化した木質ボード等の木質材、(2)木質材からなる基材の片面又は両面に、接着剤を介して表面化粧材を接合した木質複合材等が挙げられる。
【0011】
(1)木質材
(1)の木質材としては、合板、単板積層材(LVL)、パーティクルボード(PB)、ファイバーボード(MDF等)、OSB(Oriented Strand Board)、集成材、ブロックボード等が挙げられる。
【0012】
合板は、木材を薄くスライスして得た単板を、繊維方向が互い違いとなるように複数枚重ねて熱圧接着した木質ボードであり、層間が接着剤を介して接合されている。合板は、厚み方向の一部に、繊維の配向方向を揃えた2層又は3層の単板が存在するようなものであってもよい。
単板積層材(LVL)は、木材を薄くスライスして得た単板を、繊維方向を同方向に向けて複数枚重ね熱圧接着した木質ボードであり、層間が接着剤を介して接合されている。
木質材として、合板及び単板積層材を製造する場合、総ての層間又は一部の層間の接着に用いる接着剤として、微細炭素繊維配合の接着剤を用いる。
【0013】
パーティクルボードは、木材の切削や破砕等により得た小片(エレメント)を接着剤と共に混合してマット状としたのもの(製造中間体)を熱圧締して得られる木質ボードであり、エレメントどうしを結合するバインダーとして接着剤が用いられる。
ファイバーボードは、木材の蒸射・解繊等により得た木材繊維(エレメント)を接着剤と混合してマット状としたもの(製造中間体)を熱圧締して得られる木質ボードであり、エレメントどうしを結合するバインダーとして接着剤が用いられる。ファイバーボードとしては、MDF(中比重繊維板)、やハードボード(HB)、インシュレーションボードが挙げられるが、本発明は、乾式でフォーミングするパーティクルボードやMDFの製造に適している。製造中間体は乾式フォーミングにより得られたものであることが好ましい。
OSB(Oriented Strand Board)は、薄い削片状にした原料のエレメントを配向させて積層、接着したものである。エレメントは、パーティクルボードに用いられるものより面積が大きく薄い形状をしており木材の異方性をより多く残している。
木質製品として、パーティクルボード、ファイバーボード及びOSBを製造する場合、エレメントどうしを結合させる接着剤として、微細炭素繊維配合の接着剤を用いる。
【0014】
集成材は、ひき板又は小角材などを、繊維方向を互いに平行にして長さ、幅、厚さ方向に集成接着したものである。ひき板又は小角材を相互間に接着剤を介在させて所定形状に並べたものが製造中間体である。
ブロックボードは、ブロック状の小片を、板状に集成接着したものである。
木質材として、集成材及びブロックボードを製造する場合、ひき板、小角材又は
ブロック状の小片どうしを結合させる接着剤として、微細炭素繊維配合の接着剤を用いる。
【0015】
(2)木質複合材
(2)の木質複合材としては、合板、単板積層材、パーティクルボード、ファイバーボード、OSB、集成材、ブロックボード等の木質材を基材とし、その基材の片面又は両面に、接着剤を介して、突板等の表面化粧材を接合してなるものが挙げられる。基材の片面又は両面上に、接着剤を介在して表面化粧材を重ねたものが、接着剤を含む製造中間体である。
基材として用いる木質材は、微細炭素繊維を配合していない接着剤を用いて製造された従来品を用いてもよいし、微細炭素繊維配合の接着剤を用いて製造した木質材であってもよい。基材に積層接着させる表面化粧材としては、突板、紙、オレフィン樹脂製シートや塩ビ製シート等の合成樹脂製シート、メラミン含浸紙等が挙げられる。突板は、天然木から得た単板の他、植林木から得た単板であってもよい。
基材の形状としては、フィルム、シート、板、立体成形物など様々な形状が挙げられる。
【0016】
また基材には、用途に応じて、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、ガラス繊維等の繊維補強剤、無機充填剤等を1種または2種以上含有させたものを用いることができる。
【0017】
次に、本発明で用いる接着剤について説明する。
本発明で用いる接着剤は、微細炭素繊維含有水性接着剤であることが好ましい。
微細炭素繊維は、その外径が、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5〜150nmのものである。
【0018】
本発明で使用する微細炭素繊維は、単層、二層および多層の微細炭素繊維であり、それぞれ目的に応じて用いることができる。多くの用途において、より好ましくは、多層の微細炭素繊維が用いられる。微細炭素繊維の製造方法に関しては、特に限定されないが、触媒を用いる気相成長法、アーク放電法、レーザー蒸発法およびHiPco法(High−pressure carbon monoxide process)等、従来公知のいずれの製造方法も用いることができる。
【0019】
例えば、レーザー蒸着法により単層の微細炭素繊維を作製する方法を以下に示す。原料としてグラファイトパウダーと、ニッケルおよびコバルト微粉末混合ロットを用意する。この混合ロットを665hPa(500Torr)のアルゴン雰囲気下、電気炉により1250℃で熱し、そこに350mJ/PulseのNd:YAGレーザーの第二高調波パルスを照射し、炭素と金属微粒子を蒸発させることにより、単層の微細炭素繊維を作製することができる。
【0020】
以上の作製方法は、あくまで典型例であり、金属の種類、ガスの種類、電気炉の温度、レーザーの波長等を変更してもよい。また、レーザー蒸着法以外の作製法、例えばHiPco法、気相成長法、アーク放電法、一酸化炭素の熱分解法、微細な空孔中に有機分子を挿入して熱分解するテンプレート法、フラーレン・金属共蒸着法等、他の手法によって単層の微細炭素繊維を調製してもよい。
【0021】
例えば、定温アーク放電法により二層の微細炭素繊維を作製する方法を以下に示す。
基板は表面処理されたSi基板を用い、処理方法としては触媒金属および触媒助剤金属を溶解した溶液中に、アルミナ粉末を30分間浸し、さらに3時間超音波処理により分散させて得られた溶液をSi基板に塗布し、空気中において120℃で2時間乾操させる。微細炭素繊維製造装置の反応室に基板を設置し、反応ガスとして水素とメタンの混合ガスを用い、ガスの供給量は水素を500sccm、メタンを10sccmとし、反応室の圧力を70Torrとする。陰極部はTaよりなる棒状の放電部を用いる。次に陽極部と陰極部および陽極部と基板との間に直流電圧を印加し、放電電流が2.5Aで一定になるように放電電圧を制御する。放電により陰極部の温度が2300℃になると正規グロー放電状態から異常グロー放電状態になり、放電電流が2.5A、放電電圧が700V、反応ガス温度が3000℃での状態を10分間行うことで、基板全体に単層および二層の微細炭素繊維を作製することができる。
【0022】
以上の作製方法は、あくまで一例であり、金属の種類、ガスの種類等、諸条件を変更してもよい。また、アーク放電法以外の作製法によって二層の微細炭素繊維を調製してもよい。
【0023】
例えば、気相成長法により三次元構造を有する多層の微細炭素繊維を作製する方法を以下に示す。
基本的には、遷移金属超微粒子を触媒として炭化水素等の有機化合物をCVD法で化学熱分解して繊維構造体(以下、中間体)を得、これをさらに高温熱処理することで多層の微細炭素繊維を作製することができる。
【0024】
原料有機化合物としては、べンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素、一酸化炭素、エタノール等のアルコール類が使用できるが、炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることが好ましい。なお、少なくとも2つ以上の炭素化合物とは、必ずしも原料有機化合物として2種以上のものを使用するというものではなく、原料有機化合物としては1種のものを使用した場合であっても、繊維構造体の合成過程においては、例えば、トルエンやキシレンの水素脱アルキル化などのような反応を生じて、その後の熱分解反応系においては分解温度の異なる2つ以上の炭素化合物となっているような態様を含むものである。雰囲気ガスには、アルゴン、へリウム、キセノン等の不活性ガスや水素を用い、触媒としては鉄、コバルト、モリブデンなどの遷移金属あるいはフェロセン、酢酸金属塩などの遷移金属化合物と硫黄あるいはチオフェン、硫化鉄などの硫黄化合物の混合物を使用する。
【0025】
中間体の合成は、通常行われている炭化水素などのCVD法を用い、原料となる炭化水素および触媒の混合液を蒸発させ、水素ガス等をキャリアガスとして反応炉内に導入し、800〜1300℃での温度で熱分解する。これにより、15〜100nmの外径を有する炭素繊維が、相互に前記触媒の粒子を核として成長した粒状体部で結合した疎な三次元構造を有する微細炭素繊維構造体(中間体)が複数集まった数cmから数十cmの大きさの集合体が合成される。
【0026】
原料となる炭化水素の熱分解反応は、主として触媒粒子ないしこれを核として成長した粒状体表面において生じ、分解によって生じた炭素の再結晶化が当該触媒粒子ないし粒状体より一定方向に進むことで、繊維状に成長する。
しかしこの熱分解速度と成長速度とのバランスの意図的な変化、例えば上記したように炭素源として分解温度の異なる少なくとも2つ以上の炭素化合物を用いることで、一次元的方向にのみ炭素物質を成長させることなく、粒状体を中心として三次元的に炭素物質を成長させる。このような三次元的な微細炭素繊維の成長は、熱分解速度と成長速度とのバランスにのみ依存するものではなく、触媒粒子の結晶面選択性、反応炉内における滞留時間、炉内温度分布等によっても影響を受ける。概して、上記したような原料有機化合物の熱分解速度よりも炭素原子の再結晶化による成長速度の方が速いと、炭素物質は繊維状に成長し、一方、成長速度よりも熱分解速度の方が速いと、炭素物質は触媒粒子の周面方向に成長する。従って、熱分解速度と成長速度とのバランスを意図的に変化させることで、上記したような炭素物質の成長を一定方向とすることなく、制御下に多方向化して、三次元構造を形成することができるものである。なお、生成する中間体において、繊維が粒状体により相互に結合された前記のような三次元構造を容易に形成させるためには、触媒等の組成、反応炉内における滞留時間、反応温度およびガス温度等も最適化することが好ましい。
【0027】
触媒および炭化水素の混合ガスを800〜1300℃での範囲の一定温度で加熱生成して得られた中間体は、炭素原子からなるパッチ状のシート片を貼り合わせたような構造を有し、ラマン分光分析では、欠陥が多いことを示すDバンドが非常に大きく出る。また、生成した中間体は、未反応原料、非繊維状炭素物、タール分および触媒金属を含んでいる。
【0028】
従って、このような中間体から触媒金属等の残留物を除去し、欠陥が少ない所期の微細炭素繊維構造体を得るために、適切な方法で2400〜3000℃の高温熱処理を行う。
【0029】
すなわち、例えば、この中間体を800〜1200℃で加熱して未反応原料やタール分などの揮発分を除去した後、2400〜3000℃の高温でアニール処理することによって所期の構造体を調製し、同時に繊維に含まれる触媒金属を蒸発させて除去する。なお、この際、物質構造を保護するために不活性ガス雰囲気中に還元ガスまたは微量の一酸化炭素ガスを添加してもよい。
【0030】
前記中間体を2400〜3000℃の範囲の温度でアニール処理すると、炭素原子からなるパッチ状のシート片は、それぞれ結合して複数のグラフェンシート状の層を形成する。
【0031】
また、このような高温熱処理前もしくは処理後において、微細炭素繊維構造体の円相当平均径を数cmに解砕処理する工程と、解砕処理された微細炭素繊維構造体の円相当平均径を50〜100μmに粉砕処理する工程とを経ることで、所望の円相当平均径を有する微細炭素繊維を作製する。
【0032】
以上の作製方法は、あくまで一例であり、金属の種類、ガスの種類等、諸条件を変更してもよい。また、気相成長法以外の作製法によって作製された多層の微細炭素繊維を使用してもよい。
【0033】
微細炭素繊維含有水性接着剤は、公知の水性接着剤に対して微細炭素繊維を添加することにより得られる。水性接着剤に微細炭素繊維を添加して微細炭素繊維含有水性接着剤を製造する場合、微細炭素繊維の添加量は、熱伝導性の向上及び微細炭素繊維の安定な分散状態を得る観点から、水性接着剤100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜20質量部であり、更に好ましくは0.5〜15質量部である。
【0034】
また、同様の観点から、微細炭素繊維の添加量は、水性接着剤中の主剤固形分(特に接着剤中の樹脂分)100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部であり、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
【0035】
また、微細炭素繊維を添加する水性接着剤としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができるが、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン、アクリル−スチレン系樹脂エマルジョン、スチレン・ブタジエン系樹脂ラテックス(以下、SBRと称する)等の、合成樹脂ポリマーが水中に分散したエマルジョン型接着剤や、メラミン−ホルムアルデヒド縮合系樹脂、ユリア・メラミン−ホルムアルデヒド共縮合系樹脂、フェノール縮合系樹脂、レゾルシノール縮合系樹脂等の熱硬化性縮合型接着剤や、水性高分子イソシアネート系接着剤であることが好ましい。
通常、木質製品用としては水性接着剤が使用されるが、ポリエステル樹脂等から得られる化粧シートを木質基材に接着する場合には、アクリル系、ポリウレタン系等の溶剤系接着剤が使用されることもあり、この場合、当該接着剤に微細炭素繊維を添加してもよい。
【0036】
酢酸ビニル系樹脂エマルジョンに含まれる樹脂成分としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の酢酸ビニル系モノマーの単独重合体又は共重合体、酢酸ビニルモノマーと他のビニル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。ここでいう「他のビニル系モノマー」としては、例えば、特開2005−344084号公報の段落〔0010〕に記載のものが挙げられる。
SBRに含まれる樹脂成分としては、スチレン系モノマーとブタジエン系モノマーとの共重合体、又はこれらのモノマーと他のビニル系モノマーとの共重合体が挙げられる。ここでいう「他のビニル系モノマー」としては、例えば、特開2005−344084号公報の段落〔0017〕に記載のものが挙げられる。
アクリル系樹脂エマルジョンに含まれる樹脂成分としては、アクリル酸エステルモノマーの単独重合又は共重合体、或いはアクリル酸エステルモノマーと他のビニル系モノマーとの共重合体が挙げられる。ここでいう「他のビニル系モノマー」としては、例えば特開2005−344084号公報の段落〔0015〕に記載のものが挙げられる。
これらの接着剤は、一種を単独で用いることもできるし、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0037】
微細炭素繊維含有水性接着剤は、水性接着剤に対して、微細炭素繊維を添加して調製することが好ましい。また、微細炭素繊維の安定な分散状態を得る観点から、微細炭素繊維と共に微細炭素繊維分散剤を添加することも好ましい。微細炭素繊維及び微細炭素繊維分散剤を添加する場合、両者を同時に添加してもよく、順次添加してもよい。また、交互に添加してもよい。順次添加する場合、微細炭素繊維分散剤を水性接着剤に添加した後に微細炭素繊維を添加する方が好ましい。また、微細炭素繊維分散剤を水性接着剤に添加した後に微細炭素繊維を添加して分散処理をし、微細炭素繊維分散液を調製した後で添加剤を添加したほうがよい。また、微細炭素繊維の凝集体を十分に解繊・分散させ、該凝集体が5μm以下となる微細炭素繊維分散液を得ることが好ましいが、そのためには、水性接着剤に対して、少なくとも前記の微細炭素繊維分散剤と微細炭素繊維を添加し、あらかじめ微細炭素繊維の凝集体を十分に解繊・分散せしめた後、所望の各種添加剤を加えるほうが好ましい。特に、水性接着剤中で粘性を示す樹脂成分等の添加剤については、該添加剤の添加を、微細炭素繊維の分散操作時に、あるいは分散操作に先だって行うと、その粘性のために微細炭素繊維の凝集体の十分な解繊・分散が得られず、5μmを超える凝集体が残り、所望の分散状態の微細炭素繊維分散液が得られない恐れがある。
【0038】
さらに、水性接着剤100質量部に対して、5質量部を超える微細炭素繊維を分散させようとする場合は、あらかじめ水性接着剤に微細炭素繊維分散剤を添加し溶解させた後、微細炭素繊維を添加するほうが、微細炭素繊維の良好な分散のために好ましい。
【0039】
水性接着剤に微細炭素繊維を分散させる分散処理には、一般的な分散機を用いることができる。例えば、ビーズミル分散機、TKラボディスパー、TKフィルミックス、TKパイプラインミクサー、TKホモミックラインミル、TKホモジェッター、TKユニミキサー、TKホモミックラインフロー、TKアジホモディスパー(以上、特殊機化工業(株)製)、ホモジナイザー・ポリトロン((株)セントラル科学貿易製)、ホモジナイザー・ヒストロン((株)日音医理科機器製作所製)、バイオミキサー((株)日本精機製作所製)、ターボ型撹拌機((株)小平製作所製)、ウルトラディスパー(浅田鉄鋼(株)製)、エバラマイルザー(荏原製作所(株)製)、超音波装置または超音波洗浄機(アズワン(株)製)等が挙げられる。これらの機器を用いて分散処理を行なう際の、該機器等の条件設定は、所望する微細炭素繊維の分散状態に応じて、適宜設定すればよい。
【0040】
微細炭素繊維分散剤としては、アニオン性、カチオン性又はノニオン性の界面活性剤を用いることができるが、溶剤系接着剤の場合は、使用される溶剤に溶解する界面活性剤が好ましく、水性接着剤の場合は、水溶性の界面活性剤を用いることが好ましい。微細炭素繊維分散剤は、一種を単独で用いることもできるし、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0041】
水性接着剤に対する微細炭素繊維分散剤の添加量は、該微細炭素繊維の添加量に対して0.1〜200質量%が好ましく、より好ましくは1〜100質量%である。
【0042】
また、微細炭素繊維含有水性接着剤は、更に、熱圧接着時に発生し得る膨れや反り等の様々な不具合の防止ないし軽減、製品の仕上がりや接着剤の充填効果の向上等を目的として、架橋剤や小麦粉等の充填剤等の添加剤を含むことができ、その種類や添加量は特に制限されない。
【0043】
また、微細炭素繊維含有水性接着剤には、必要に応じ、その種類の水性接着剤に従来配合されている各種公知の成分を配合することもできる。
【0044】
本発明の木質製品の製造方法により、上述した木質複合材を製造するには、例えば、上述した基材の両面又は片面に上述した微細炭素繊維含有水性接着剤を塗布し、その塗布面に突板等の表面化粧材を重ね蒸気プレス等のホットプレスに導入して熱圧締する。熱圧締の温度は、熱圧締時間の短縮と製品の含水率や反り等への影響とのバランスをとる観点等から90〜140℃が好ましく、より好ましくは100〜120℃である。また、熱圧締の時間は、適宜に決定することができるが、熱圧締時間の短縮と使用する接着剤の硬化性とのバランスをとる観点等から、例えば、約0.3mm厚の湿式化粧単板を接着して天然木化粧合板を製造する場合には、25〜45秒が好ましく、より好ましくは35〜40秒である。
【0045】
本発明の木質製品の製造方法によれば、接着剤に熱伝導性に優れた微細炭素繊維を含ませることによって、ホットプレスからの熱が接着剤に良好に伝達されるため、接着剤の硬化速度が向上し、個々の木質製品の熱圧締に要する時間の短縮化を図ることができる。これにより、木質製品の生産性が向上する。
また、微細炭素繊維の被着材へのアンカー効果によって初期接着力が高まると推察され、熱圧締時間の短縮化に寄与する。これに対して、炭素粒子やカーボンファイバーを添加した接着剤を配合した場合には、これらは外径が数十μmで、微細炭素繊維に比して嵩高く絡みにくいため、むしろ接着力が低下する。
【0046】
また、本発明で使用する微細炭素繊維は、MDIのような硬化促進剤ではないため、接着剤の可使時間への影響も小さい。
また、微細炭素繊維を分散した接着剤に関して、長時間での保存安定性が極めて良好であり、微細炭素繊維を分散していないものと比較しても、遜色のない保存安定性が確保できる。
【0047】
微細炭素繊維含有水性接着剤を基材に塗布する方法としては、各種公知の塗布方法を特に制限なく用いることができるが、例えば、ハケ、ブラシ、ハンドローラーによる塗布、ロールコーター、ロールスプレッダーによる塗布、エアースプレー、エアレススプレー、低圧霧化スプレーによる塗布、バーコーダー法による塗布、スピンコーター、ディップコーターを用いた塗布等が挙げられる。
【0048】
本発明の木質製品の製造方法は、前述のように、木質製品として、天然木化粧合板等の特殊加工合板等の、基材の片面又は両面に表面化粧材を熱圧接着した木質複合材を製造するのに代えて、木質製品として、合板、単板積層材(LVL)、パーティクルボード(PB)、ファイバーボード、OSB、集成材、ブロックボード等の木質材を製造するものであってもよい。これらの場合、従来の方法と同様にして、これらの木質材を製造するに当たり、単板間に微細炭素繊維を含む接着剤を介在させたり、エレメントどうしを結合させるバインダーとして、微細炭素繊維を含む接着剤を用いる。
【0049】
例えば、合板又は単板積層材を製造する場合には、複数枚の単板を、単板どうし間に微細炭素繊維を含む接着剤を介在させて積層した後、これらを、ホットプレスにより一体的に熱圧締して、合板又は単板積層材を得る。
また、パーティクルボード(PB)、ファイバーボード、OSBを製造する場合には、エレメント(切削片、小片,繊維等)と微細炭素繊維を含む接着剤とを混合してフォーミングした後、これらを、ホットプレスにより一体的に熱圧締して、パーティクルボード(PB)、ファイバーボード又はOSBを得る。
また、集成材、ブロックボード等を製造する場合には、ひき板、小角材、ブロック状の小片を、目的とする形状になるように並べ、それらの相互間を、微細炭素繊維を含む接着剤で接合した後、それらを、ホットプレスにより一体的に熱圧締して、集成材、ブロックボードを得る。
このような木質製品を製造する場合にも、上述した微細炭素繊維を含有する接着剤が好ましく用いられる。
【0050】
本発明の木質製品の製造方法で製造した木質材や複合木質材は、多様な用途に好ましく用いることができ、用途は特に制限はないが、例えば、天井、床、建具等の造作材、机(天板等)、箱棚、タンス、ベッド等の家具、床材、化粧フローリング材、階段の踏み板、間仕切り壁の構成材等として用いることができる。また、木質材や複合木質材は、人の目に触れる側の表面等に、樹脂フィルムや化粧紙等の化粧シートを貼着したり、強度を向上させたり色を変化させたりする塗装を更に施してもよい。
【実施例】
【0051】
次に、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。以下の説明において、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
【0052】
1.接着剤の調製
〔接着剤a1〕
酢酸ビニル系の水性接着剤(住友林業クレスト株式会社製、商品名「インスターボンドKH−1093」、固形分(樹脂分)51%)100部に、硬化剤A(住友林業クレスト株式会社製、商品名「ハードナーH−4000」)10部他を混合して接着剤a1を得た。
〔接着剤a2〕
接着剤a1と同一の水性接着剤(固形分(樹脂分)51%)に、該固形分の3%に相当する量の微細炭素繊維を配合して分散させた。そして、この分散液100部に対して、硬化剤A10部他を混合して接着剤a2を得た。
【0053】
〔接着剤a3〕
接着剤a1と同一の水性接着剤(固形分(樹脂分)51%)に、該固形分の2.25%に相当する量の微細炭素繊維を配合して分散させた。そして、この分散液100部に対して、硬化剤A10部他を混合して接着剤a3を得た。
〔接着剤a4〕
接着剤a1と同一の水性接着剤(固形分(樹脂分)51%)に、該固形分の1.5%に相当する量の微細炭素繊維を配合して分散させた。そして、この分散液100部に対して、硬化剤A10部他を混合して接着剤a4を得た。
【0054】
〔接着剤b1〕
SBR系の水性接着剤(住友林業クレスト株式会社製、商品名「インスターボンドLB370」、固形分(樹脂分)38%)100部に対して硬化剤B(住友林業クレスト株式会社製、商品名「ハードナーH−370」)5部他を混合して、接着剤b1を得た。
〔接着剤b2〕
接着剤b1と同一の水性接着剤(固形分(樹脂分)38%)に、該固形分の3%に相当する量の微細炭素繊維を配合して分散させた。そして、この分散液100部に対して硬化剤B5部他を混合して、接着剤b2を得た。
【0055】
〔接着剤c1〕
SBR系の水性接着剤(固形分(樹脂分)38%)100部に、50部のユリア・メラミン−ホルムアルデヒド縮合系接着剤(固形分(樹脂分)52%)、小麦粉30部及び塩化アンモニウム0.1部を均一に混合して、接着剤c1を得た。
〔接着剤c2〕
接着剤c1と同一の水性接着剤(固形分(樹脂分)38%)に、該固形分の3%に相当する量の微細炭素繊維を配合して分散させた。そして、この分散液100部に対して、50部のユリア・メラミン−ホルムアルデヒド縮合系接着剤(固形分(樹脂分)52%)、小麦粉30部及び塩化アンモニウム0.1部を均一に混合して、接着剤c2を得た。
【0056】
表1に、得られた各接着剤について、水性接着剤の樹脂分100部に対する微細炭素繊維の配合量(部)を示した。表1中、「硬化剤A」より上の各項目における括弧内の数値は、各項目に記載の接着剤(以下、主剤接着剤という)100部中の固形分割合(部)を示し、「硬化剤A」から「塩化アンモニウム」までの各項目は、前記の主剤接着剤100部に対して添加した物質の添加量(水分を含む量、部)及びその固形分量(部)を示し、「計」の項の括弧内の数値は、最終的に得られた接着剤中の固形分割合(実測値)を示す。なお、硬化剤Aの固形分割合は15%、硬化剤Bの固形分割合は8%、小麦粉の固形分割合は85%であった。
接着剤a2〜a4,b2,c2には、微細炭素繊維として、平均直径が60nmの微細炭素繊維を用いた。
【0057】
【表1】

【0058】
2.複合木質材の製造及び評価
実施例1〜12及び比較例1〜8のそれぞれについて、縦横300mm、厚さ12mmの合板に、表2に示す接着剤を、表2に示す量(67又は100g/m2)塗布し、0.3mm厚のナラ湿潤単板を乗せた。そして、ホットプレス(平板プレス)を用いて、110℃で40秒間又は60秒間熱圧接着した。プレス圧は0.6MPa(一定)とした。解圧直後にナイフ試験を行った。また、これを24時間養生した後に、合板の日本農林規格に基づいて75mm×75mmの大きさにカットして試験片とし、一類浸漬剥離試験を行った。それらの結果を表2に示した。
【0059】
【表2】

【0060】
ナイフ試験
プレス解圧直後にナイフで化粧単板に×印のキズを入れ、キズを入れた箇所から強制的に表面単板を引き剥がし、引き剥がす際の抵抗を評価した。引き剥がす際の抵抗感を人の感覚及び目視で判定し、抵抗感が極めて強く、また、接着層の材破率が極めて高いものを「◎」、引き剥がす際の抵抗感が強く、また、接着層の材破率が高いものを「○」、引き剥がす際の抵抗感が弱く、接着層の材破率が低いものを「△」として、相対比較を行った。
【0061】
一類浸漬剥離試験(煮沸繰返し試験)
合板の日本農林規格(JAS特殊合板・1類浸漬はくり試験)に準拠して、試験片を沸騰水中に4時間浸漬した後、60℃の温度で20時間乾燥し、これを沸騰水中に4時間浸漬し、更に60℃で3時問乾燥した。試験後、規格の適合基準に基づいて、同一接着層において剥離が生じなかったものを「◎」、25mm以上の剥離が生じなかったものを「○」、25mm以上の剥離が生じたものを「△」とした。
【0062】
表2の比較例1と比較例2を比較すると、プレス時間(熱圧締時間)の短縮によりナイフ試験の結果が悪化している。これに対して、表2の比較例1と実施例2とを比較すると、実施例2の方がプレス時間(熱圧締時間)が短いにも拘わらずに、ナイフ試験及び1類浸漬剥離試験の結果は同等である。また、比較例3と比較例4を比較すると、プレス時間(熱圧締時間)の短縮によりナイフ試験及び1類浸漬剥離試験の結果が悪化しているのに対して、比較例3と実施例4とを比較すると、実施例4の方がプレス時間(熱圧締時間)が短いにも拘わらずに、ナイフ試験及び1類浸漬剥離試験の結果は同等である。
即ち、微細炭素繊維を添加することで、接着状態の悪化や接着強度等を犠牲にすることなく、熱圧締時間を短縮化させることができることが判る。
【0063】
また、表2の比較例1と実施例3とを比較すると、実施例3の方が、接着剤の量を減らしているにも拘わらずにナイフ試験の結果が向上している。即ち、微細炭素繊維を添加することで、熱圧締時間を増加させることなく、接着剤の量を減らすことができることが判る。
【0064】
表2に示すように、接着剤に微細炭素繊維を添加すると初期接着が向上し、プレス時間を短縮しても、接着性の良好な単板化粧合板(複合木質材)が得られることが判る。
(酢酸ビニル系接着剤)
微細炭素繊維入り接着剤では、プレス時間を2/3にしても、通常条件とほぼ同等の接着性が得られた。また、プレス時間を2/3かつ接着剤塗布量2/3にしても、通常条件とほぼ同等の接着性が得られた。
(SBRラテックス系接着剤、SBRラテックス/ユリア・メラミン−ホルムアルデヒド縮合系接着剤)
これらの接着剤についても、微細炭素繊維入り接着剤では、プレス時間を2/3にしても、通常条件とほぼ同等の接着性が得られた。また、プレス時間を2/3かつ接着剤塗布量2/3にしても、通常条件とほぼ同等の接着性が得られた。
【0065】
このように、本発明によれば、例えば、熱圧プレスでのプレス時間を2/3に短縮することができ、熱圧プレス工程の生産効率を現状の1.5倍に向上させることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を含む製造中間体を熱圧締して木質製品を得る木質製品の製造方法において、前記接着剤として、微細炭素繊維を配合した接着剤を用いることを特徴とする木質製品の製造方法。
【請求項2】
前記木質製品が、合板、単板積層材、パーティクルボード、ファイバーボード、OSB、集成材又はブロックボードである、請求項1記載の木質製品の製造方法。
【請求項3】
前記木質製品が、木質材からなる基材の片面又は両面に、前記接着剤を介して表面化粧材を接合して得られる木質複合材である、請求項1記載の木質製品の製造方法。
【請求項4】
水性接着剤に微細炭素繊維を配合してなる木質製品製造用の水性接着剤。

【公開番号】特開2013−22757(P2013−22757A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156802(P2011−156802)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(501195625)住友林業クレスト株式会社 (43)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】